説明

スイッチモジュール用粘着テープ及びスイッチモジュール

【課題】 長期の打鍵試験において剥がれやズレが発生しないスイッチモジュール用粘着テープを提供する。
【解決手段】 半球形のクリックバネが粘着テープで被弊され、当該粘着テープ上に紫外線硬化樹脂からなる突起部が設けられたスイッチモジュールに使用される粘着テープであって、基材と、UV硬化樹脂による突起部が設けられるプライマー層と、クリックバネに貼り付けられる粘着剤層とを有し、プライマー層が、ポリエステル系樹脂を主成分とするプライマー組成物から形成され、ゲル分率が50〜85%であり、プライマー層中のポリエステル系樹脂が、水酸基価が5以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂を20質量%以上含有するスイッチモジュール用粘着テープにより、打鍵試験後も剥がれやズレが生じにくく、クリック感が良好なスイッチモジュールを実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイッチモジュールに貼着して使用されるスイッチモジュール用粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
押しボタンスイッチモジュールは、携帯電話、携帯音楽プレイヤー、電子手帳、等において益々小型化された電子機器の入力装置として用いられている。従来、このような押しボタンスイッチとしては、基板の上面に固定接点が配設され、該固定接点の上面に球面クリックバネが配置されると共に、該基板及び該球面クリックバネはカバーシート(粘着テープ)にて被覆され、更に、該球面クリックバネの上方に上下動自在に押しボタンが装着されており、該押しボタンの下面に押し部材が設けられた構成が使用されている。そして、該押し部材を介して該押しボタンを打鍵することにより、前記球面クリックバネが押圧されてスイッチング動作が実行される。この際、該球面クリックバネの頂部が下降して該球面クリックバネが反転し、使用者に該押しボタンのクリック感を付与しながら、該球面クリックバネの頂部裏面が前記固定接点に接触してスイッチオンすることになる。更に、該押しボタンに対する押圧力を解除することにより、該球面クリックバネの弾性復元力により、元の状態に復帰することになる(例えば、実用新案文献1参照)。
【0003】
また、押しボタンの下面と球面クリックバネを被弊したカバーシートの頂部を接着剤にて接着したものも提案されている。当該構成のスイッチモジュールでは押しボタンの打鍵時に、該押しボタンを押下して、球面クリックバネが反転するとき、押しボタンの下端部が該球面クリックバネの上面を滑動して中心からずれることがある。そこで、この滑動作用を防止するように構成して確実なるスイッチング動作を可能にしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上述した従来の押しボタンスイッチは、押しボタンを打鍵する際、球面クリックバネの中心頂部を押圧して該球面クリックバネを反転できるように構成されている。しかし、該球面クリックバネが湾曲しているため、該押しボタンの下端部が該球面クリックバネの上面を滑動して中心部からずれ、前記球面クリックバネが反転したときのクリック感が劣化して感触不良となることがある。このずれを防止するため、該球面クリックバネの位置決め精度や押しボタンの組み立て作業に多大な労力と時間を要している。また、該押しボタンと該球面クリックバネとを接着して上記ずれを防止する押しボタンスイッチにおいても、該球面クリックバネの頂部と該押しボタンの下端部とを正確に接着しなくてはならないため、該押しボタンスイッチの組み立て時の位置決め精度は緩和されるとしても、製造に要する時間と労力とが多大となる。
そこで、球面クリックバネを用いた押しボタンスイッチにおいて、該球面クリックバネの位置決め精度を充分に考慮することなく簡易に組み立て、更に、安定したクリック感を得るため、該クリックバネを被覆したカバーシート上面にUV硬化樹脂にて形成した凸部を固着したことを特徴とした押しボタンスイッチが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、上記構成で押しボタンスイッチを作成した場合、打鍵試験中にカバーシートとUV硬化樹脂の界面で剥がれる問題や、基板(回路基板)からのカバーシートのズレや剥がれの問題があった。例えば、スイッチ部品には数十万〜百万回の打鍵信頼性が要求されるが、数万回の打鍵により剥がれる問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開2001−262134
【特許文献2】特開2004−119213
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、長期の打鍵試験において剥がれやズレが発生しないスイッチモジュール用粘着テープ及び当該粘着テープを使用した押しボタンスイッチモジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討した結果、基材フィルム表面に特定のプライマー層を設けた片面テープにより、上記課題を解決できることを見出した。プライマー層に水酸基価が5以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステル樹脂を20質量%以上含有させることで、プライマー層に対するUV硬化樹脂の濡れが向上し、またプライマー層のゲル分率を50%〜85%とすることでUV硬化樹脂の硬化収縮にプライマー層が適度に追従し、且つUV硬化樹脂とプライマー層が強固に投錨し、UV硬化樹脂とプライマー層の密着が良好となることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、半球形のクリックバネが粘着テープで被弊され、当該粘着テープ上に紫外線硬化樹脂からなる突起部が設けられたスイッチモジュールに使用される粘着テープであって、
少なくとも基材と、前記紫外線硬化樹脂による突起部が設けられるプライマー層と、前記クリックバネに貼り付けられる粘着剤層とを有し、
前記プライマー層が、ポリエステルを主成分とするポリエステル樹脂組成物から形成され、水酸基価が5以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステルを20質量%以上含有し、ゲル分率が50〜85%であることを特徴とするスイッチモジュール用粘着テープである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のスイッチモジュール用粘着テープは、UV硬化樹脂との密着性に優れ、打鍵試験後も剥がれやズレが生じにくく、スイッチ用テープとして有用である。また本発明の押しボタンスイッチモジュールは、打鍵信頼性に優れ、クリック感がよく、組み立て作業性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明の粘着テープを、その構成要素に基づいて、更に詳しく説明する。
【0012】
本発明の粘着テープは基材上にプライマー層を有し、その反対面に粘着剤層を有する。本発明の粘着テープは半球形のクリックバネが粘着テープで被弊され、当該粘着テープ上にUV硬化樹脂からなる突起部が設けられたスイッチモジュールに使用した場合に、プライマー層とUV硬化樹脂の密着性に優れるため、打鍵信頼性に優れるスイッチモジュールになる。
【0013】
[プライマー層]
本発明の粘着テープに使用するプライマー層は、ポリエステル系樹脂を主成分とするプライマー組成物から形成され、ゲル分率が50〜85%のプライマー層である。そして、プライマー層中のポリエステル系樹脂が、水酸基価が5以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂を、ポリエステル系樹脂の総量中の20質量%以上含有する。プライマー層に水酸基価が10以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステル樹脂を20質量%以上含有させることで、プライマー層に対するUV硬化樹脂の濡れが向上し、またプライマー層のゲル分率を50%〜85%とすることでUV硬化樹脂の硬化収縮にプライマー層が適度に追従し、且つUV硬化樹脂とプライマー層が強固に投錨し、UV硬化樹脂とプライマー層の密着が良好となる。
【0014】
(プライマー組成物)
本発明に使用するプライマー組成物は、ポリエステル系樹脂を主成分とする組成物であり、好適にはポリエステル系樹脂及び架橋剤を溶剤中で混合して得られる組成物である。プライマー組成物に使用するポリエステル系樹脂としては、一種のポリエステル系樹脂を使用しても、複数のポリエステル系樹脂を混合しても良い。当該ポリエステル系樹脂としては、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合物であるポリエステルや、ジイソシアネート化合物とポリエステルポリオール化合物及び鎖伸長剤の縮重合物であるポリエステルウレタンを好ましく使用できる。
【0015】
ポリエステルやポリエステルウレタンの質量平均分子量は5,000〜100,000のものが好ましく、より好ましくは9,000〜25,000である。質量平均分子量が5000未満では耐ブロッキング性が不足し、100000を超える場合には塗工適性が不足しやすい。前記平均質量分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件として、カラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いる。
【0016】
多価カルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸またはピロメリット酸、不飽和脂肪酸から誘導されたダイマー酸類など、あるいはこれらの酸無水物などが挙げられ、これらのカルボン酸は通常単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0017】
多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,4ブタンジオール、1,3ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。また、カルボン酸基を含む多価アルコールを多価アルコールとして用いてもよく、特に代表的なものとしてはジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジフェノール酸などが挙げられる。
【0018】
ジイソシアネート化合物としては、例えば、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に置換したダイマージイソシアネートなどの鎖状脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの環状脂肪族ジイソシアネート;4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネートなどのジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルテトラメチルメタンジイソシアネートなどのテトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;リジンジイソシアネートなどのアミノ酸ジイソシアネートなどが挙げられる。これらのジイソシアネート化合物をはじめとする前記ポリイソシアネート化合物は、単独でまたは2種以上を混合して用いられる。
【0019】
ポリエステルポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ヘキサメチレングリコール、オクタンジオール、1,4−ブチンジオール、ジプロピレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA等の飽和または不飽和の低分子量グリコール類とアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、しゅう酸、マロン酸、グルタル酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、ダイマー酸等の二塩基酸またはこれらに対応する酸無水物等を脱水縮合して得られる化合物等が挙げられる。なかでも芳香族ジカルボン酸とジオールを脱水縮合したものが適度な弾性を持つため好ましい。
【0020】
鎖伸長剤としては、各種公知のジアミン類およびグリコール類が挙げられる。ジアミン類としては、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、へキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン‐4,4’−ジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジー2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の分子内に水酸基を有するジアミン類およびダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等が代表例として挙げられる。
【0021】
多価カルボン酸と多価アルコールの縮合反応は、公知慣用の種々の合成法に従って得られるものであって、その一例を挙げると、多価カルボン酸と多価アルコールとを、一緒に加えて、高温条件下で脱水縮合(エステル化)する合成法が一般的である。
【0022】
また、多価カルボン酸と多価アルコールとの縮合反応では、三価以上のカルボン酸あるいはアルコールを使用すれば、得られる縮合物に分岐構造を付与することもできる。
【0023】
プライマー組成物は、架橋剤を含有させることが好ましく、当該架橋剤によりポリエステル系樹脂を架橋させたプライマー層とすることが耐熱性や基材への密着性の点から好ましい。当該架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。イソシアネート系架橋剤としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネートなどがあげられる。なかでも特に、脂肪族イソシアネートや脂環族イソシアネートが、架橋物が透明になることから好ましく用いられる。より具体的には、たとえば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートL)、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHL)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(日本ポリウレタン工業社製、商品名コロネートHX)などのイソシアネート付加物、ポリエーテルポリイソシアネート、ポリエステルポリイソシアネート、ならびにこれらと各種のポリオールとの付加物、イソシアヌレート結合、ビューレット結合、アロファネート結合などで多官能化したポリイソシアネートなどをあげることができる。プライマー組成物中の架橋剤の含有量は、使用するポリエステル系樹脂100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、さらに好ましくは5〜15質量部である。含有量が多すぎると、プライマーの追従性が低下しUV硬化樹脂との密着性が低下しやすくなり、少なすぎると耐熱性が低下する。
【0024】
(ゲル分率)
プライマー層のゲル分率は50〜85%である。ゲル分率が50%未満の場合はプライマーが柔らかくなりすぎ、基材やUV硬化樹脂との投錨力が不足し、密着性が低下する。ゲル分率が85%を超える場合はプライマーが硬くなりすぎ、UV硬化樹脂の硬化時の収縮に追従できず、UV硬化樹脂との密着性が低下する。尚、ゲル分率は架橋後のプライマー層をトルエンに24時間浸漬した後の不溶分である。
【0025】
(ガラス転移温度)
本発明においては、プライマー層は水酸基価が5以上且つガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂を、ポリエステル系樹脂の総量中の20質量%以上含有する。なかでも、水酸基価が5以上且つガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂の含有量としては、30〜50質量%であることがUV硬化樹脂との密着性と耐ブロッキング性を両立できるため好ましい。なお、プライマー層およびポリエステル系樹脂のガラス転移温度は次の方法で測定する。エスアイアイ・ナノテクノロジー製粘弾性測定機「DMS6100」を用い、引っ張り−正弦波振動モードで、振動数1Hz、昇温速度2℃/min、−55℃〜250℃までの温度領域における、貯蔵弾性率E’、損失弾性率E’’、損失正接tanδを測定する。tanδのピーク温度をガラス転移温度とした。
【0026】
(水酸基価)
ポリエステル系樹脂の水酸基価はJIS K0070に従い測定される。水酸基価が5以上且つガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂の水酸基価は、10〜25であることが好ましく、10〜20であることが更に好ましい。
【0027】
(他のポリエステル系樹脂)
プライマー層に使用するポリエステル系樹脂としては、上記の水酸基価が5以上且つガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂単独であっても良いが、他のポリエステル系樹脂を併用することも好ましい。併用する他のポリエステル系樹脂としては、特に制限されないが、ガラス転移温度が40℃以上、好ましくは、50〜100℃のポリエステル系樹脂を使用することで、耐ブロッキング性が好適に向上し、良好な量産性に寄与する。また、その水酸基価は3〜10であることが好ましい。
【0028】
(プライマー層の弾性率、ガラス転移温度)
本発明において、プライマー層の150℃における貯蔵弾性率E’は3×10Pa以上であることが好ましく、3×10〜4×10Paであることが特に好ましい。貯蔵弾性率を当該範囲とすることで、UV硬化樹脂の硬化時の体積収縮を緩和しやすくなり、プライマー層とUV硬化樹脂の密着性向上に優位である。また、プライマー層のガラス転移温度が10℃以上であることが好ましく、40〜80℃であることが特に好ましい。ガラス転移温度を10℃以上とすることでUV硬化樹脂の投錨性向上に寄与し、また40℃以上とすることで、耐ブロッキング性の向上に優位となる。
【0029】
(プライマー層の厚み)
プライマー層の厚みは特に限定されるものではないが、0.1〜20μmが好ましく、さらに好ましくは、3〜10μmである。この範囲にあるとUV硬化樹脂との密着性とテープの薄型化を両立しやすい。
【0030】
[基材]
本発明に使用する基材としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム等が上げられる。そのなかでも、絶縁性に優れるポリエステルフィルム、ポリイミドフィルムや柔軟性に優れるポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムが好ましい。基材の厚みは特に限定されるものではないが、3〜50μmが好ましく、さらに好ましくは6〜38μmである。この範囲にあることでテープの追従性と打鍵信頼性を両立できる。
【0031】
基材の色は特に限定されるものではないが、透明又は白色であることが好ましい。基材が透明である場合は、粘着テープ側からUV光がUV硬化樹脂に届きやすく、硬化性・生産性に優れる。一方、白色である場合は照光機能付きスイッチモジュールに使用した際、光を反射させ有効利用できる。
【0032】
基材にはプライマーや粘着剤との密着性を向上させる目的で、コロナ処理等の易接着処理を設けることが好ましい。
【0033】
[粘着剤層]
本発明に使用する粘着剤層は、基材と良好な密着性を有するものを使用でき、公知のアクリル系、ゴム系、シリコン系の粘着樹脂を使用することができる。そのなかでも、反復単位として炭素数2〜14のアルキル基を有するアクリル酸エステルに由来する反復単位を含有するアクリル系共重合体が、耐光性・耐熱性の点から好ましい。
【0034】
アクリル系共重合体としては、例えば、n−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、エチルアクリレート等に由来する反復単位を含むアクリル系共重合体があげられる。
【0035】
さらに反復単位として、側鎖に水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの極性基を有するアクリル酸エステルやその他のビニル系単量体に由来する反復単位を0.1〜15質量%の範囲で含有するのが好ましい。また、アクリル酸単位を2〜10質量%の範囲で含有するのが、粘着性に優れ好ましい。
【0036】
アクリル系共重合体は、溶液重合法、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法、紫外線照射法、電子線照射法によって共重合させることにより得ることができる。アクリル系共重合体の平均質量分子量は塗工性と粘着物性を両立するため、40万〜140万が好ましく、更に好ましくは、60万〜120万である。前記平均質量分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算である。測定条件として、カラムはTSKgel GMHXL[東ソー製]を用い、カラム温度40℃、溶離液はテトラヒドロフラン、流量は1.0mL/分とし、標準ポリスチレンはTSK標準ポリスチレンを用いる。
【0037】
さらに粘着剤の凝集力をあげるために、架橋剤を添加するのが好ましい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、キレート系架橋剤等があげられる。特に粘着剤層を設ける場合は、イソシアネート系架橋剤またはエポキシ系架橋剤を使用するのが好ましい。架橋剤の添加量としては、粘着剤層のゲル分率が25〜80%になるよう調整するのが好ましい。さらに好ましいゲル分率は、30〜70%である。そのなかでも35〜60%が最も好ましい。ゲル分率が25%以上であると粘着剤が適度な凝集力をもつため、打鍵試験でズレが生じにくい。一方、ゲル分率が80%以下であると粘着剤が硬くなりすぎず、基板等の被着体への接着力が良好である。接着性が低下する。ゲル分率は、養生後の粘着剤層の組成物をトルエン中に浸漬し、24時間放置後に残った不溶分の乾燥後の質量を測定し、元の質量に対する百分率で表す。
【0038】
さらに粘着剤層の粘着力を向上させるため、粘着付与樹脂を添加するのが好ましい。本発明の粘着テープの粘着剤層に添加する粘着付与樹脂は、ロジンやロジンのエステル化物等のロジン系樹脂;ジテルペン重合体やα−ピネン−フェノール共重合体等のテルペン系樹脂;脂肪族系(C5系)や芳香族系(C9)等の石油樹脂;その他、スチレン系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。また、前記アクリル共重合体以外のアクリル樹脂を粘着付与樹脂として添加しても良い。
【0039】
粘着付与樹脂の添加量としては、粘着剤樹脂がアクリル系共重合体である場合は、アクリル系共重合体100質量部に対して10〜60質量部を添加するのが好ましい。接着性を重視する場合は、20〜50質量部を添加するのが最も好ましい。また、粘着剤樹脂がゴム系の樹脂である場合は、ゴム系の樹脂100質量部に対して、粘着付与樹脂を80〜150質量部添加するのが好ましい。なお、一般的に粘着剤樹脂がシリコン系樹脂である場合は、粘着付与樹脂を添加しない。
【0040】
また、必要に応じて、他の公知慣用の添加剤を添加することができる。他の添加剤としては、例えば、可塑剤、軟化剤、充填剤、顔料、難燃剤等が例示できる。
【0041】
粘着剤層の厚みは特に限定されるものではないが、5〜50μmが好ましく、さらに好ましくは7〜30μmである。この範囲にあることで接着性とテープの薄型化の両立がしやすい。
【0042】
[スイッチモジュール用粘着テープ]
本発明のスイッチモジュール用粘着テープは、上記の基材を中芯とし、一方の表面がプライマー層、他方の表面が粘着剤層の粘着テープである(図1)。当該粘着テープは、半球形のクリックバネが粘着テープで被弊され、当該粘着テープ上に紫外線硬化樹脂からなる突起部が設けられたスイッチモジュールに使用され、プライマー層側にUV硬化樹脂による突起部が設けられ、粘着剤層側がクリックバネに貼り付けられる。
【0043】
粘着テープの接着力は打鍵試験でのテープのハガレを防止するため、6N/25mm以上であることが好ましい。更に好ましくは10〜30N/25mmである。尚、接着力は被着体をSUS板とし、JIS Z0237に従い測定される。接着力が上記範囲の場合はハガレが発生しにくい。
【0044】
粘着テープの保持力は打鍵試験でのテープのズレを防止するため、10時間以上落下しないことが好ましい。更に好ましくは24時間以上である。尚、保持力は被着体をSUS板とし、JIS Z0237に従い、測定温度70℃、荷重0.5kg/25mm×25mmの条件で測定される。保持力が上記範囲の場合はズレが発生しにくい。
【0045】
本発明の粘着テープは、その総厚さが120μm以下であることが好ましく、15〜80μmであることが特に好ましい。当該厚さとすることで、携帯電子端末等の薄型、小型電子機器への適用に際して好適である。薄型、小型電子機器においては、スイッチモジュールの構成や、使用する材料が制限されるため、本願発明の粘着テープを使用することが特に好適となる。
【0046】
本発明の粘着テープは粘着面を剥離フィルムや剥離紙で覆い保護するのが好ましい。そのなかでもUV光の透過性に優れる透明な剥離フィルムが好ましい。また作業性の点から38μm〜100μmのPET剥離フィルムが好ましい。
【0047】
[スイッチモジュール]
上記のスイッチモジュール用粘着テープは、図2又は図3に示した構成のスイッチモジュールに好適に適用できる。当該スイッチモジュールは、基板7上に固定接点8及び9が設けられ、当該固定接点上面に半球形のクリックバネ6が湾曲凸面を上向きにして設けられる。そして、当該クリックバネ6が粘着テープ1により被弊される。この際、クリックバネの全体を被覆するように、上記スイッチモジュール用粘着テープ1の粘着剤層側がクリックバネに貼り付けられる。さらに、当該粘着テープ1のプライマー層上にUV硬化樹脂からなる凸状の突起部が設けられる。当該突起部は半球形のクリックバネの頂部にのみUV硬化樹脂を塗布して設けられた構成(図2)であっても、粘着テープ1全体がUV樹脂で被覆され、クリックバネの頂部に相当する部分のみに突起部が設けられた構成(図3)であっても良い。なかでも全体を被覆して塗布する構成(図3)は耐久性に優れるため好ましい。
【0048】
当該スイッチモジュールにおいて、固定接点8及び9は、クリックバネ6との接点を確保できる構成であれば特に制限されないが、図示したように、クリックバネ6の外縁部が外側の固定接点8に接触し、クリックバネ6の頂部が中央の固定接点9の上方に位置するように配置される構成が好適である。
【0049】
当該スイッチモジュールは、その上部にさらにキートップが配設されることで、押しボタンスイッチを構成する。押しボタンスイッチの構成例としては、例えば図4又は図5に示した構成を例示できる。図4の構成においては、独立したボタン状のキートップ10が、スイッチモジュールの上方に設けられた構成であり、キートップ10の中央部が、スイッチモジュール中のUV硬化樹脂からなる突起部の上方に配設された構成である。当該構成においては、携帯電子端末の筐体やキーシート等を構成する被覆材11に設けられる貫通口に、キートップ10が上下動可能なように配設される。また、図5の構成においては、弾性体からなるベースシート13上にキートップ12が接着剤や粘着剤により固定されたキーシートが、スイッチモジュールの上方に配設された押しボタンスイッチであり、キートップ12の中央部が、スイッチモジュール中のUV硬化樹脂からなる突起部の上方に配設された構成である。当該構成の押しボタンスイッチは、薄型化に優位であり、キートップとUV硬化樹脂からなる突起部との滑りが生じにくいため好ましい。
【0050】
上記の押しボタンスイッチは、キートップ10、12を打鍵することにより、キートップ10、12が押し下げられ、UV硬化樹脂からなる突起部に接触し、当該突起部を介してクリックバネ6が押圧される。そして、押圧されたクリックバネ6の頂部近傍が固定接点9に接触し、押しボタンスイッチが動作を為す。また押圧を解除すると、クリックバネ6の弾性復元力により、クリックバネ6と固定接点の接触が解除される。
【0051】
当該スイッチング動作においては、UV硬化樹脂からなる突起部により、打鍵した際のクリックバネ6が固定接点9との接触しやすくなり、打鍵する部位がキートップ10や12の中央部からずれた場合や傾斜して打鍵した場合にも、クリックバネ6の中央部を好適に押し下げることができ、良好なスイッチング動作が可能となる。また、UV硬化樹脂からなる突起部は、クリックバネ6の頂部に設けられているため、打鍵する部位がキートップ10や12の中央部からずれた場合や傾斜して打鍵した場合にもクリックバネが好適に押圧されるため、クリック感の向上にも寄与する。
【0052】
一方で、当該構成の押しボタンスイッチにおいては、UV硬化樹脂からなる突起部が集中的に押圧されるため、当該突起部と粘着テープ1との界面においては局所的に応力が集中することになり、クリックバネが変形及び復元を繰り返すことにより、界面での剥離が生じやすくなる。本発明のスイッチモジュール用粘着テープは、UV硬化樹脂との好適な密着性を有することから、当該押しボタンスイッチを構成するスイッチモジュールに好適に適用でき、本発明のスイッチモジュール用粘着テープを当該押しボタンスイッチのスイッチモジュールに適用することにより、数十万を越える打鍵試験においても剥離が生じず好適なスイッチングが可能となる。
【0053】
上記スイッチモジュールを形成する方法の例としては、本発明のスイッチモジュール用粘着テープを形成した後に、当該粘着テープのプライマー層上にUV硬化樹脂からなる突起部を形成する。当該突起部は、粘着テープのプライマー層上に突起部を形成する型が設けられたメタルマスクを配設し、当該メタルマスクに設けられた型にUV硬化樹脂を充填して紫外線硬化した後、メタルマスクを引き上げて形成される。次いで、UV硬化樹脂からなる突起部が形成された粘着テープを、必要に応じて裁断し、別途形成した固定接点とクリックバネとを有する基板上に、クリックバネの頂部にUV硬化樹脂からなる突起部をあわせてクリックバネ上に粘着テープを貼り付けることで、スイッチモジュールを得ることができる。これら工程において、UV硬化樹脂の突起部、クリックバネ及び固定接点の大きさや配置は、使用する態様に応じて所望の大きさや配置にて形成すればよい。
【0054】
(UV硬化樹脂)
突起部を形成するUV硬化樹脂の種類は特に限定されるものではないが、硬化性やクリック感の点からアクリル系樹脂やアクリル−ウレタン樹脂等が好ましい。UV硬化樹脂の硬化後の硬度は、クリック感からデュロメータAで20度以上のものが好ましく、そのなかでもデュロメータDで60度のものが好ましい。
【0055】
(クリックバネ)
上記スイッチモジュールに使用されるクリックバネは、固定接点との接触により導電等によりスイッチング動作が可能であり、押圧による変形や押圧解消時に変形が回復して復元する弾性体であれば特に制限されないが、SUS等の導電性を有する金属から形成されたクリックバネが製造容易であり、好適な導電性や耐久性を確保しやすいため好ましい。市販品としては新光電気製メタルードーム等があげられる。
【0056】
(固定接点、基板)
上記スイッチモジュールに使用される固定接点は、導電性を実現しやすいSUS、銅、銀等の金属性の固定接点であることが好ましい。また、固定接点を固定する基板は非導電性の材料からなるものであれば特に制限されないが、ポリイミド等の各種樹脂フィルムからなる基板が好適に使用できる。
【0057】
[用途]
本発明の粘着テープを使用したスイッチモジュール及び押しボタンスイッチは、小型化、薄型化された各種の携帯電子端末に適用しても、好適なクリック感で、良好なスイッチング動作が可能であり、かつ長期に渡る繰り返しの打鍵がなされても、当該好適なクリック感や良好なスイッチング動作に寄与するUV硬化樹脂の突起部の脱落や剥がれが生じにくい。このため、長期間に渡り日常的に多数の打鍵がなされる携帯電話、携帯音楽プレイヤー、あるいは、電子手帳等の各種の小型電子端末の押しボタンスイッチに好適に適用できる。
【実施例】
【0058】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下に表示する部は、質量部である。
【0059】
[プライマー組成物及びプライマーコートフィルムの製造]
(プライマー組成物A及びプライマーコートフィルム(A))
DIC製ポリエステルウレタン樹脂「ディックドライLX−500」(Tg=−2℃、水酸基価12(固形分として))を固形分として17部(NV60%溶液のため、溶液として28.3部)、DIC製ポリエステル樹脂「ディックドライLX−703VL」(Tg=6℃、水酸基価18(固形分として))17部(NV62%溶液のため、溶液として27.4部)を、東洋紡績製ポリエステル樹脂「バイロンGK880」(Tg=84℃、水酸基価4)66部とを、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)5部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Aを得た。
【0060】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」(厚さ25μm)の易接着コート面にプライマー組成物Aを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(A)を得た。ゲル分率は65%であった。
【0061】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Aを乾燥厚みが2μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(A’)を得た。ゲル分率は65%であった。
【0062】
(プライマー組成物B及びプライマーコートフィルム(B))
DIC製ポリエステルウレタン樹脂「ディックドライLX−500」(Tg=−2℃、水酸基価12(固形分として))を固形分として17部(NV60%溶液のため、溶液として28.3部)を、DIC製ポリエステル樹脂「ディックドライLX−703VL」(Tg=6℃、水酸基価18(固形分として))17部(NV62%溶液のため、溶液として27.4部)を、東洋紡績製ポリエステル樹脂「バイロンGK880」(Tg=84℃、水酸基価4)66部とを、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)8部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Bを得た。
【0063】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Bを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(B)を得た。ゲル分率は75%であった。
【0064】
(プライマー組成物C及びプライマーコートフィルム(C))
DIC製ポリエステルウレタン樹脂「ディックドライLX−500」(Tg=−2℃、水酸基価12(固形分として))を固形分として17部(NV60%溶液のため、溶液として28.3部)を、DIC製ポリエステル樹脂「ディックドライLX−703VL」(Tg=6℃、水酸基価18(固形分として))17部(NV62%溶液のため、溶液として27.4部)を、東洋紡績製ポリエステル樹脂「バイロンGK110」(Tg=50℃、水酸基価7)66部とを、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)8部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Cを得た。
【0065】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Cを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(C)を得た。ゲル分率は65%であった。
【0066】
(プライマー組成物D及びプライマーコートフィルム(D))
DIC製ポリエステルウレタン樹脂「ディックドライLX−500」(Tg=−2℃、水酸基価12(固形分として))を固形分として50部(NV60%溶液のため、溶液として83.3部)を、DIC製ポリエステル樹脂「ディックドライLX−703VL」(Tg=6℃、水酸基価18(固形分として))50部(NV62%溶液のため、溶液として80.6部)を、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)3部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Dを得た。
【0067】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Dを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(D)を得た。ゲル分率は65%であった。
【0068】
(プライマー組成物E及びプライマーコートフィルム(E))
東洋紡績社製ポリエステルウレタン樹脂(Tg=−30、水酸基価5)を34部、東洋紡績製ポリエステル樹脂「バイロンGK880」(Tg=84℃、水酸基価4)66部とを、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)12部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Gを得た。
【0069】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Eを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(E)を得た。ゲル分率は55%であった。
【0070】
(プライマー組成物F及びプライマーコートフィルム(F))
DIC製ポリエステルウレタン樹脂「ディックドライLX−500」(Tg=−2℃、水酸基価12(固形分として))を固形分として17部(NV60%溶液のため、溶液として28.3部)を、DIC製ポリエステル樹脂「ディックドライLX−703VL」(Tg=6℃、水酸基価18(固形分として))17部(NV62%溶液のため、溶液として27.4部)を、東洋紡績製ポリエステル樹脂「バイロンGK880」(Tg=84℃、水酸基価4)66部とを、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)12部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Fを得た。
【0071】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Fを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(F)を得た。ゲル分率は90%であった。
【0072】
(プライマー組成物G及びプライマーコートフィルム(G))
東洋紡績製ポリエステル樹脂「バイロンGK880」(Tg=84℃、水酸基価4)100部を、メチルエチルケトンとトルエンの質量比が1:1である混合溶剤を用いて、固形分量が30%となるように調整した。この組成物にイソシアネート化合物としてDIC製バーノックDN980(ヘキサメチレンジイソシアネート型)15部を添加し、10分攪拌した後、1時間放置して泡抜けさせ、プライマー組成物Gを得た。
【0073】
次に東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の易接着コート面にプライマー組成物Gを乾燥厚みが5μmになるよう1回バーコートした。さらに40℃で3日間養生し、プライマーコートフィルム(G)を得た。ゲル分率は60%であった。
【0074】
[アクリル系共重合体及びアクリル系粘着剤組成物の製造]
(アクリル系共重合体1及びアクリル系粘着剤組成物1の調製)
冷却管、攪拌機、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器にn−ブチルアクリレート92.9部、酢酸ビニル5.0部、アクリル酸2.0部、β−ヒドロキシーエチルアクリレート0.1部と、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.2部とを酢酸エチル100部に溶解し、窒素置換後、80℃で8時間重合して質量平均分子量50万のアクリル系共重合体1を得た。
【0075】
上記アクリル系共重合体1を100部、荒川化学社製「スーパーエステルA100」を15部、及び荒川化学社製「ペンセルD135」を5部をトルエンで希釈し、固形分45%のアクリル系粘着剤組成物1を得た。
【0076】
(アクリル系共重合体2及びアクリル系粘着剤組成物2の調整)
攪拌機、寒流冷却器、温度計、滴下漏斗及び窒素ガス導入口を備えた反応容器に、ブチルアクリレート44.9質量部、2−エチルヘキシルアクリレート50質量部、酢酸ビニル3質量部、アクリル酸2質量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.1質量部とを、酢酸エチル100質量部に溶解した。これを70℃で10時間重合して、質量平均分子量80万のアクリル系共重合体(2)溶液を得た。
【0077】
次に、アクリル系共重合体(2)100質量部に対し、荒川化学工業製「ペンセルD135」10質量部を添加し、酢酸エチルを加えて均一に混合して、固形分40%のアクリル系粘着剤組成物2を得た。
【0078】
(実施例1)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(A)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。粘着剤層のゲル分率は45%であった。
【0079】
(実施例2)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(B)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。
【0080】
(実施例3)
アクリル系共重合体1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を2.0部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(A)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。粘着剤層のゲル分率は55%であった。
【0081】
(実施例4)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(C)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。
【0082】
(実施例5)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(D)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。
【0083】
(実施例6)
アクリル系粘着剤組成物1にかえて、アクリル系粘着剤組成物2を使用した以外は実施例1と同様にして、プライマー付き粘着テープを得た。粘着剤層のゲル分率は40%であった。
【0084】
(実施例7)
プライマーコートフィルム(A)にかえて、プライマーコートフィルム(A’)を使用した以外は実施例1と同様にして、プライマー付き粘着テープを得た。
【0085】
(実施例8)
プライマーコートフィルム(A)にかえて、プライマーコートフィルム(E)を使用した以外は実施例1と同様にして、プライマー付き粘着テープを得た。
【0086】
(比較例1)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(F)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。
【0087】
(比較例2)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これをプライマーコートフィルム(G)のプライマー未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。
【0088】
(比較例3)
アクリル系粘着剤組成物1に日本ポリウレタン工業社製「コロネートL−45」(イソシアネート系架橋剤)を1.5部配合し、充分に撹拌した後、離型処理した75μmのPET剥離フィルムに、乾燥後の厚さが20μmとなるよう塗工して、85℃で2分間乾燥して粘着剤層を得た。これを東レ社製易接着コート付きポリエステルフィルム「T11#25」の未処理面にコロナ処理して転写する。さらに、40℃で2日間養生して、プライマー付き粘着テープを得た。
【0089】
実施例、比較例で作成した粘着テープについて、以下に示す方法により、接着力、打鍵による寿命試験、量産性を評価した。評価結果は、表1、2に記載した。
【0090】
(接着力)
接着力はJIS−Z0237(2000)の180度引き剥がし接着力の試験方法に従って下記の手順により求めた。
SUS板に25mm幅の実施例及び比較例の粘着テープを、環境温度23℃、湿度50%の条件下において、2kgのローラーで1往復加圧貼付し1時間放置後、テンシロン万能引張試験機(オリエンテック製、RTA100)を用い、同一の温度湿度条件下で300mm/minの速度で引っ張って、180度引き剥がし接着力S25を測定した。
【0091】
(打鍵による寿命試験)
鋳型にDIC製UV硬化樹脂「UVTクリヤーIT−001PB」(アクリレート型UV硬化樹脂)を流し込み、粘着テープのプライマー面と貼り合せた後、粘着テープの剥離フィルム面から160W/cmのメタハライドランプにて照射強度370mW/cm、積算光量1000mJ/cm照射し、図のようにφ1.5mmの凸状にUV硬化樹脂を形成する。凸状に形成したサンプルをクリックバネ(φ4/200gf)上に配置し、押し荷重300gfの力で打鍵し、何回で剥がれが発生するか評価する。打鍵速度は1回/1秒とする。
◎:200万回以上
○:100万回以上〜200万回未満
△:50万回以上〜100万回未満
×:50万回未満
【0092】
(ブロッキング性)
粘着テープのプライマー面をPETフィルムと重ね合わせ、23℃で1時間放置する。その際、粘着テープのプライマー面がPETフィルムから抵抗なく剥がれるかを評価した。
◎:全く抵抗なく剥がれる。
○:若干の抵抗があるが、剥がれる。
×:接着し剥がれない。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
上記表1〜2から明らかなように、本願発明の粘着テープはUV硬化樹脂との密着性に優れ、打鍵試験においてもUV硬化樹脂の脱落や粘着テープの脱離が生じなかった。一方、比較例1〜3の粘着テープは、100万回を越える打鍵試験に耐え得るものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明のスイッチモジュール用粘着テープの模式図である。
【図2】本発明のスイッチモジュール用粘着テープを使用したスイッチモジュールの一例を示す図である。
【図3】本発明のスイッチモジュール用粘着テープを使用したスイッチモジュールの一例を示す図である。
【図4】本発明のスイッチモジュールを使用した押しボタンスイッチの一例を示す図である。
【図5】本発明のスイッチモジュールを使用した押しボタンスイッチの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0097】
1 スイッチモジュール用粘着テープ
2 プライマー層
3 基材
4 粘着剤層
5 UV硬化樹脂からなる突起部
6 クリックバネ
7 基板
8,9 固定接点
10,12 キートップ
11 被覆材
13 ベースシート
14 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半球形のクリックバネが粘着テープで被弊され、当該粘着テープ上に紫外線硬化樹脂からなる突起部が設けられたスイッチモジュールに使用される粘着テープであって、
少なくとも基材と、前記UV硬化樹脂による突起部が設けられるプライマー層と、前記クリックバネに貼り付けられる粘着剤層とを有し、
前記プライマー層が、ポリエステル系樹脂を主成分とするプライマー組成物から形成され、ゲル分率が50〜85%であり、
前記プライマー層中のポリエステル系樹脂が、水酸基価が5以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂を20質量%以上含有することを特徴とするスイッチモジュール用粘着テープ。
【請求項2】
JIS Z0237によって規定される23℃下の180°ピール接着力の6N/25mmであり、70℃下の荷重:0.5kg/25mm×25mmの条件での保持力が24時間以上である請求項1に記載のスイッチ用粘着テープ。
【請求項3】
前記プライマー層の150℃における貯蔵弾性率(E’)が、3×10Pa以上である請求項1又は2に記載のスイッチモジュール用粘着テープ。
【請求項4】
前記プライマー層中の水酸基価が10以上かつガラス転移温度が10℃以下のポリエステル系樹脂の含有量が、30〜50質量%である請求項1〜3のいずれかに記載のスイッチモジュール用粘着テープ。
【請求項5】
前記プライマー組成物が、イソシアネート系架橋剤を含有する請求項1〜4のいずれかに記載のスイッチモジュール用粘着テープ。
【請求項6】
前記プライマー層の厚さが、3〜10μm、前記粘着剤層の厚さが5〜50μmである請求項1〜5のいずれかに記載のスイッチモジュール用粘着テープ。
【請求項7】
半球形のクリックバネが粘着テープで被弊され、当該粘着テープ上に紫外線硬化樹脂からなる突起部が設けられ、前記粘着テープが請求項1〜6のいずれかに記載の粘着テープであることを特徴とするスイッチモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−96547(P2011−96547A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−250294(P2009−250294)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】