説明

スイッチング回路、ハーフブリッジ回路および三相インバータ回路

【課題】リカバリサージ電圧の発生を抑制することにより素子破壊を防ぐ、スイッチング回路、ハーフブリッジ回路および三相インバータ回路提供すること。
【解決手段】回路開閉端子と制御信号用端子とボディダイオードとを有する第1および第2のスイッチング素子が逆直列に接続された直列回路と、直列回路に第1のスイッチング素子のボディダイオードと同じ導通方向で並列に接続された外付けダイオードと、第1のスイッチング素子に流れる電流方向を検出する電流検出回路と、電流検出回路で検出した電流方向が第1のスイッチング素子のボディダイオードに対して順方向に流れる場合には第1および第2のスイッチング素子を閉制御し、電流検出回路で検出した電流方向が第1のスイッチング素子のボディダイオードに対して逆方向に流れる場合には第1および第2のスイッチング素子をゲート信号に基づいて開閉制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディダイオードを有するスイッチング素子を組合せて構成されるスイッ
チング回路、ハーフブリッジ回路および三相インバータ回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スイッチング回路においては、還流ダイオードの逆回復電流が流れることで生じる損失の低減化を図った回路が提案されている。例えば、主MOSFETと従MOSFETを逆直列に接続した直列回路と、その直列回路に外付けダイオードを主MOSFETのボディダイオードと同一方向に並列に接続することにより、スイッチング動作時の還流電流を外付けダイオードに流すことで、MOSFETのボディダイオードで発生するリカバリ電流を抑制していた。(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−193839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のスイッチング回路では、定常動作時には主および従MOSFETをオンさせる必要があり、このときに主MOSFETのボディダイオードに電流が流れ、ボディダイオード内に電荷が蓄積される。その結果、スイッチング動作時に主MOSFETのボディダイオードでリカバリ電流が発生し、大きなリカバリ損失が発生してしまうと共に、リカバリ電流発生時に電圧が印加されることで非常に大きなリカバリサージ電圧が発生し、素子破壊に至る危険があるという問題があった。
【0005】
本発明は前記のような問題を解決するためになされたもので、リカバリサージ電圧の発生を抑制することにより素子破壊を防ぐスイッチング回路、ハーフブリッジ回路および三相インバータ回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によるスイッチング回路は、回路開閉端子と制御信号用端子とボディダイオードとを有する第1および第2のスイッチング素子が逆直列に接続された直列回路と、直列回路に第1のスイッチング素子のボディダイオードと同じ導通方向で並列に接続された外付けダイオードと、第1のスイッチング素子または外付けダイオードに流れる電流方向を検出する電流検出回路と、電流検出回路で検出した電流方向が第1のスイッチング素子のボディダイオードまたは外付けダイオードに対して順方向に流れる場合には第1および第2のスイッチング素子を閉制御し、電流検出回路で検出した電流方向が第1のスイッチング素子のボディダイオードまたは外付けダイオードに対して逆方向に流れる場合には第1および第2のスイッチング素子をゲート信号に基づいて開閉制御する制御手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、回路開閉端子と制御信号用端子とボディダイオードとを有する第1および第2のスイッチング素子が逆直列に接続された直列回路と、直列回路に第1のスイッチング素子のボディダイオードと同じ導通方向で並列に接続された外付けダイオードと、第1のスイッチング素子または外付けダイオードに流れる電流方向を検出する電流検出回路と、電流検出回路で検出した電流方向が第1のスイッチング素子のボディダイオードまたは外付けダイオードに対して順方向に流れる場合には第1および第2のスイッチング素子を閉制御し、電流検出回路で検出した電流方向が第1のスイッチング素子のボディダイオードまたは外付けダイオードに対して逆方向に流れる場合には第1および第2のスイッチング素子をゲート信号に基づいて開閉制御する制御手段とを備えているので、第1のスイッチング素子のボディダイオードによるリカバリサージ電圧の発生を抑制し、素子破壊を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1によるスイッチング回路を用いた三相インバータ回路の構成図である。
【図2】本発明の実施の形態1によるスイッチング回路の動作を説明するための要部抽出図である。
【図3】本発明の実施の形態1によるスイッチング回路の電圧および電流の様子を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2によるスイッチング回路を用いた三相インバータ回路の要部抽出図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1
図1は、本発明の実施の形態1によるスイッチング回路を用いた三相インバータ回路の一例を示したものである。図1において、三相インバータ回路は、本発明に係る6つのスイッチング回路9(以下、説明及び図において個別に区別を要するときは符号9a〜9fを付して区別し、共通的に表すときは単にスイッチング回路9と称する。スッイチング回路の構成要素についても、同じである。)を三相ブリッジに構成したものである。
【0010】
第1のスイッチング素子である主MOSFET1は、回路開閉端子であるドレイン端子dとソース端子sと、制御信号用端子であるゲート端子gと、主MOSFET1に寄生する主ボディダイオード2とから構成される。第2のスイッチング素子である従MOSFET3は、回路開閉端子であるドレイン端子dとソース端子sと、ゲート端子gと、従MOSFET3に寄生する従ボディダイオード4とから構成される。
【0011】
スイッチング回路9は、主MOSFET1と従MOSFET3とがその主ボディダイオード2と従ボディダイオード4とが逆極性になるようにして直列に接続されるとともに、各ソース端子s同士およびゲート端子g同士が接続されている。また、直列に接続された主MOSFET1と従MOSFET3の直列回路に並列に接続された外付けダイオード5を有する。外付けダイオード5は、カソードkが主MOSFET1のドレイン端子dに、アノードaが従MOSFET3のドレイン端子dに接続されて、主ボディダイオード2と同極性(同じ導通方向)になるようにして接続されている。
【0012】
従MOSFET3と外付けダイオード5の接点には、電流検出回路7が接続されている。駆動回路6は、ゲート信号8および電流検出回路7の出力値をもとに、電流検出回路7により検出した電流が主MOSFET1のボディダイオード2および外付けダイオード5に対して逆方向に流れる場合にのみ、各ソース端子sの電位を基準として各ゲート端子gにゲート信号8に同期した制御信号としての開閉信号を与え開閉制御する。また、電流検出回路7により検出した電流が主MOSFET1のボディダイオード2および外付けダイオード5に対して順方向に流れる場合には、駆動回路6は各ソース端子sの電位を基準として各ゲート端子gに閉信号を与え閉制御する。
【0013】
各スイッチング回路9は、正ラインPと負ラインNの間に直列に接続された3組のハーフブリッジを構成し、各ハーフブリッジの中性点Cに負荷モータ10が接続されている。
【0014】
次に動作について説明する。図2は、スイッチング回路9の動作を説明するためにスイッチング回路9a,9dで構成される一組のハーフブリッジ回路を抜き出したものである。図3は、主MOSFET1a、外付けダイオード5a、主MOSFET1d,外付けダイオード5dの電圧および電流の様子を示している。図3において、実線は電圧、点線は電流を示している。図2において、中性点Cから負荷モータ10に向かって負荷電流J1が流れており、スイッチング回路9aの主MOSFET1aおよび従MOSFET3aが共にオフし、スイッチング回路9dの主MOSFET1dおよび従MOSFET3dが共にオフしている状態を想定する(状態1)。このとき、負荷電流J1は外付けダイオード5dを介して還流電流J12として流れており、電流検出回路7dにより駆動回路6dは主MOSFET1dおよび従MOSFET3dを共にオフとなるように閉制御される。この還流期間中に電流検出回路7dにより、駆動回路6dは常に主MOSFET1dおよび従MOSFET3dを共にオフとなるように閉制御されるため、主MOSFET1dのボディダイオード2dに流れる電流は従MOSFET3dにより遮断される。
【0015】
ここで、制御信号としてスイッチング回路9aのオン信号が入り、主MOSFET1aと従MOSFET3aがともにオンすると、負荷電流J1は還流電流J12から順電流J11に転流すると同時に外付けダイオード5dのリカバリ特性によって、外付けダイオード5の導通方向とは逆向きのリカバリ電流J13が流れる(状態2)。従MOSFET3dによって遮断されるため、主ボディダイオード2dには一切の電流が流れないのでリカバリは生じず、従って主ボディダイオード2dのリカバリ電流J14も流れない。
【0016】
外付けダイオード5dを流れるリカバリ電流J13は外付けダイオード5dにリカバリ損失を生じさせるが、外付けダイオード5dに使用するダイオードの特性は主MOSFET1dの特性に関係なく設定することができ、主ボディダイオード2dと比較して十分に高速でソフトリカバリ特性を有するダイオードを選択することが可能になり、リカバリ損失やリカバリノイズを抑制することができる。
【0017】
また、従MOSFET3dのドレイン端子-ソース端子間電圧は、主MOSFET1dが遮断することによってほとんど印加されない。仮に主MOSFET1dと従MOSFET3dのオンオフ動作に多少のずれを生じたとしても、外付けダイオード5dの順方向電圧によってクランプされるため、従MOSFET3dのドレイン端子-ソース端子間電圧は僅少となり、回路配線のインダクタンスに起因するサージ電圧を考慮しても従MOSFET3dのドレインソース間耐電圧は20〜60Vもあれば十分である。
【0018】
低耐圧品であれば低オン抵抗のMOSFETを安価で調達できるうえ、本実施の形態では主MOSFET1dと従MOSFET3dの各ソース端子s同士ゲート端子g同士を接続し、ゲート端子に駆動回路6dから開閉信号を与えるようにしたので、主MOSFET1dと従MOSFET3dの駆動は同じ駆動回路6dでできるので、従MOSFET3dの追加によるコストアップは僅かですむ。
【0019】
以上、スイッチング回路9dについて説明したが、スイッチング回路9a〜9c、スイ
ッチング回路9e,9fにおいても同様の動作となる。
【0020】
なお、電流検出回路7の電流検出レベルは通常0(ゼロ)に設定されるが、この場合、負荷電流が0アンペア付近のとき、負荷電流の電流リプルによって駆動回路6の動作が不安定になる。一般的に、MOSFETのソース端子からドレイン端子方向に通電する際に、ボディダイオードの順方向電圧よりもMOSFETのオン電圧が低い電流領域では、MOSFETをオンしてもボディダイオードには電流が流れない。このことから、電流検出回路7の電流検出レベルは、ボディダイオードの順方向電圧よりもMOSFETのオン電圧が低くなる電流レベルに設定することで、ボディダイオードでのリカバリ電流を抑制しつつ負荷電流が0アンペア付近のときの動作を安定させることができる。
【0021】
実施の形態2
図4は、本発明の実施の形態2によるスイッチング回路を用いた三相インバータ回路の要部抽出図である。図4を実施の形態1によるスイッチング回路を用いた三相インバータ回路の要部抽出図である図2と比べると、駆動回路6aが駆動回路6aaに、駆動回路6dが駆動回路6ddに置き換えられ、電流検出回路7adが中性点Cと負荷モータ10との間に接続されており、電流検出回路7adの検出結果が駆動回路6aaと駆動回路6ddに出力されている以外は、同じである。
【0022】
駆動回路6aaは、電流検出回路7adにより検出した電流が中性点Cから負荷モータ10に向かって流れる場合には、主MOSFET1aおよび従MOSFET3aのゲート端子gにゲート信号8aに同期した制御信号としての開閉信号を与えて開閉制御する。また、電流検出回路7adにより検出した電流が負荷モータ10から中性点Cに向かって流れる場合には、駆動回路6aaは主MOSFET1aおよび従MOSFET3aのゲート端子gに閉信号を与え閉制御する。
【0023】
駆動回路6ddは、電流検出回路7adにより検出した電流が負荷モータ10から中性点Cに向かって流れる場合には、主MOSFET1dおよび従MOSFET3dのゲート端子gにゲート信号8dに同期した制御信号としての開閉信号を与えて開閉制御する。また、電流検出回路7adにより検出した電流が中性点Cから負荷モータ10に向かって流れる場合には、駆動回路6ddは主MOSFET1dおよび従MOSFET3dのゲート端子gに閉信号を与え閉制御する。
【0024】
これにより、スイッチング回路9aとスイッチング回路9dにおいて電流検出回路がそれぞれ1つずつ合わせて2つ必要であったものを、スイッチング回路9aとスイッチング回路9dにおいて1つの電流検出回路で実施の形態1と同じ効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0025】
1a〜1f 主MOSFET
2a〜2f 主ボディダイオード
3a〜3f 従MOSFET
4a〜4f 従ボディダイオード
5a〜5f 外付けダイオード
6a〜6f 駆動回路
7a〜7f 電流検出回路
8a〜8f ゲート信号
9a〜9f スイッチング回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路開閉端子と制御信号用端子とボディダイオードとを有する第1および第2のスイッチング素子が逆直列に接続された直列回路と、
前記直列回路に前記第1のスイッチング素子のボディダイオードと同じ導通方向で並列に接続された外付けダイオードと、
前記第1のスイッチング素子または前記外付けダイオードに流れる電流方向を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路で検出した電流方向が前記第1のスイッチング素子のボディダイオードまたは前記外付けダイオードに対して順方向に流れる場合には前記第1および第2のスイッチング素子を閉制御し、前記電流検出回路で検出した電流方向が前記第1のスイッチング素子のボディダイオードまたは前記外付けダイオードに対して逆方向に流れる場合には前記第1および第2のスイッチング素子をゲート信号に基づいて開閉制御する制御手段とを備えるスイッチング回路。
【請求項2】
第1および第2のスイッチング素子の制御信号用端子は、共通に接続されることを特徴とする請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
第2のスイッチング素子の主開閉端子間耐電圧は、第1のスイッチング素子の主開閉端子間耐電圧よりも低いことを特徴とする請求項1または2に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
電流検出回路は、第1のスイッチング素子のオン電圧が第1のスイッチング素子のボディダイオードの順方向電圧より低くなる電流レベルを超える電流の電流方向を検出することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のスイッチング回路を用いたことを特徴とする三相インバータ回路。
【請求項6】
回路開閉端子と制御信号用端子とボディダイオードとを有する第1および第2のスイッチング素子が逆直列に接続された直列回路と、
前記直列回路に前記第1のスイッチング素子のボディダイオードと同じ導通方向で並列に接続された外付けダイオードとから構成される第1および第2のスイッチング回路と、
前記第1のスイッチング回路および第2のスイッチング回路が直列に接続された中性点と負荷モータとの間に流れる電流方向を検出する電流検出回路と、
前記電流検出回路で検出した電流方向が中性点から負荷モータに向かって流れる場合には前記第1のスイッチング回路に含まれる第1および第2のスイッチング素子をゲート信号に基づいて開閉制御するとともに前記第2のスイッチング回路に含まれる第1および第2のスイッチング素子を閉制御し、前記電流検出回路で検出した電流方向が負荷モータから中性点に向かって流れる場合には前記第1のスイッチング回路に含まれる第1および第2のスイッチング素子を閉制御するとともに前記第2のスイッチング回路に含まれる第1および第2のスイッチング素子をゲート信号に基づいて開閉制御する制御手段とを備えるハーフブリッジ回路。
【請求項7】
第1および第2のスイッチング素子の制御信号用端子は、共通に接続されることを特徴とする請求項6に記載のハーフブリッジ回路。
【請求項8】
第2のスイッチング素子の主開閉端子間耐電圧は、第1のスイッチング素子の主開閉端子間耐電圧よりも低いことを特徴とする請求項6または7に記載のハーフブリッジ回路。
【請求項9】
電流検出回路は、第1のスイッチング素子のオン電圧が第1のスイッチング素子のボディダイオードの順方向電圧より低くなる電流レベルを超える電流の電流方向を検出することを特徴とする請求項6から8のいずれか1項に記載のハーフブリッジ回路。
【請求項10】
請求項6から9のいずれか1項に記載のハーフブリッジ回路を用いたことを特徴とする三相インバータ回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−110123(P2012−110123A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256819(P2010−256819)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】