説明

スイッチング素子

スイッチングの再現性が高く、かつ、オン状態での高い電流値が得られるスイッチング素子を提供する。
このスイッチング素子は、印加される電圧に対して2種類の安定な抵抗値を持つ双安定材料層30が、第1電極層20aと第2電極層20bとの間に薄膜として配置され、双安定材料層30がフラーレン類からなり、電極のうち少なくとも一方が金を含有する電極である。フラーレン類はC60及び/又はC70であることが好ましく、双安定材料層30の厚さが10オングストローム〜100μmであることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機ELを用いたディスプレーパネルの駆動用スイッチング素子や、高密度メモリ等に利用されるスイッチング素子に関し、更に詳しくは、双安定材料を少なくとも2つの電極間に配置したスイッチング素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機電子材料の特性は目覚しい進展をみせている。特に電荷移動錯体などの低次元導体のなかには、金属―絶縁体遷移などの特徴ある性質を持つものがあり、有機ELディスプレーパネルの駆動用スイッチング素子や、高密度メモリなどへの適用が検討されている。
【0003】
上記のスイッチング素子への適用が可能な材料として、有機双安定材料が注目されている。有機双安定材料とは、材料に電圧を印加していくと、ある電圧以上で急激に回路の電流が増加してスイッチング現象が観測される、いわゆる非線形応答を示す有機材料である。
【0004】
図3には、上記のようなスイッチング挙動を示す有機双安定材料の、電圧−電流特性の一例が示されている。
【0005】
図3に示すように、有機双安定材料においては、高抵抗特性51(off状態)と、低抵抗特性52(on状態)との2つの電流電圧特性を持つものであり、あらかじめVbのバイアスをかけた状態で、電圧(電位差)をVth2以上にすると、off状態からon状態へ遷移し、Vth1以下にすると、on状態からoff状態へと遷移して抵抗値が変化する、非線形応答特性を有している。つまり、この有機双安定材料に、Vth2以上、又はVth1以下の電圧を印加することにより、いわゆるスイッチング動作を行なうことができる。ここで、Vth1、Vth2は、パルス状の電圧として印加することもできる。
【0006】
このような非線形応答を示す有機双安定材料としては、各種の有機錯体が知られている。例えば、R.S.Potember等は、Cu−TCNQ(銅−テトラシアノキノジメタン)錯体を用い、電圧に対して、2つの安定な抵抗値を持つスイッチング素子を試作している(非特許文献1参照)。
【0007】
また、熊井等は、K−TCNQ(カリウム−テトラシアノキノジメタン)錯体の単結晶を用い、非線形応答によるスイッチング挙動を観測している(非特許文献2参照)。
【0008】
更に、安達等は、真空蒸着法を用いてCu−TCNQ錯体薄膜を形成し、そのスイッチング特性を明らかにして、有機ELマトリックスへの適用可能性の検討を行なっている(非特許文献3参照)。
【0009】
また、同様の材料を用いたメモリ素子として、Yang Yangらは、アミノイミダゾールジカーボニトリル(AIDCN)、アルミキノリンやポリスチレン、ポリメチルメタクレート(PMMA)等の低導電率材料中に、金、銀、アルミニウム、銅、ニッケル、マグネシウム、インジウム、カルシウム、リチウム等などの高導電率材料を薄膜形成、もしくは分散微粒子として存在させることにより、前記の双安定特性が安定して得られること開示している(特許文献1参照)。
【0010】
ここで、上記のスイッチング素子はすべて、ドナー性分子、もしくはドナー性を持つ金属元素と、TCQNのようなアクセプタ性分子との組み合わせによりなる2成分系、あるいは低導電率材料と高導電率材料との組み合わせによりなる2成分系であり、スイッチング素子の作製にあたっては、2成分の構成比を厳密に制御する必要がある。このため、双安定特性にバラツキのない、均一な品質のスイッチング素子を量産することが困難であるという問題点がある。これに対してA. Bandyopadhyayらは、1成分の有機材料であるローズベンカル(Rose Bengal)を用いて双安定性が得られることを開示している(非特許文献4参照)。
【特許文献1】国際公開第02/37500号パンフレット
【非特許文献1】R.S.Potember et al. Appl. Phys. Lett. 34, (1979) 405
【非特許文献2】熊井等 固体物理 35 (2000) 35
【非特許文献3】安達等 応用物理学会予稿集 2002年春 第3分冊 1236
【非特許文献4】A. Bandyopadhyay et al. Appl. Phys. Lett. 72, (2003) 1215)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、2成分系のスイッチング素子は、当該スイッチング現象における再現性が充分ではなく、同じ製造条件で作製した素子においてもスイッチング特性がすべての素子で観測されるに到っていない。すなわち、スイッチング(転移)する素子の出現確率(転移確率)が低いという問題があった。また、転移が観測される場合も、特にoff状態からon状態への転移電圧が一定しないという問題点があった。
【0012】
また、上記の非特許文献4における1成分系のスイッチング素子では、スイッチング特性は得られるものの、オン状態での電流が1mA/cm程度と低く、実際に有機ELを駆動する場合に必要と考えられる電流値である100mA/cmと比較して1桁以上小さいという問題があった。
【0013】
本発明は、上記従来技術の問題点を鑑みてなされたもので、双安定材料を電極間に配置したスイッチング素子において、スイッチングの再現性が高く、かつ、オン状態での高い電流値が得られるスイッチング素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明のスイッチング素子は、印加される電圧に対して2種類の安定な抵抗値を持つ双安定材料を、少なくとも2つの電極間に薄膜として配置してなるスイッチング素子であって、前記双安定材料がフラーレン類であり、前記電極のうち少なくとも一方が金を含有することを特徴とする。この場合、前記フラーレン類が、C60及び/又はC70であることが好ましく、前記フラーレン類からなる薄膜の厚さが、10オングストローム〜100μmであることがより好ましい。
【0015】
本発明のスイッチング素子によれば、スイッチングの再現性が高く、かつ、オン状態での高い電流値が得られる。この理由は下記のように考えられる。
【0016】
フラーレン薄膜は電子輸送性であり、フラーレン薄膜の最低非占有軌道準位(LUMO):−3.6eVは、金電極の仕事関数:−5.1eVよりも高くなっている。したがって、金電極に負の電圧を印加した時には、金電極からフラーレン薄膜へは基本的に電子は注入されない。ここで、金電極に負の電圧を印加していくとこの界面に対抗電極から注入された正の電荷が蓄積し、局所的に電界が上昇すると推定される。
【0017】
この電荷蓄積のメカニズムは明らかではないが、(i)金薄膜が球状の微粒子形状でありフラーレン薄膜との接触面積が小さいために、有機膜に袋小路部が多く存在し、そこに電荷が蓄積する、(ii)金はフラーレン中に拡散しやすく、拡散した金に電荷が蓄積される、などのメカニズムが想定される。いずれも金特有の物性に起因する現象である。
【0018】
ここで、局所的な電界がある値以上になると絶縁破壊を起こして金電極からフラーレン薄膜に電子が注されるようになり、金電極/フラーレン薄膜界面の抵抗が極端に低下し、素子はオン状態になる。そして金電極に正の電圧を印加すると金電極からフラーレン薄膜への電子注入は止まり、金電極/フラーレン薄膜界面の抵抗は元の高抵抗状態(オフ状態)に戻るものと考えられる。
【0019】
一方、金電極に正の電圧を印加したときは、他方の電極の仕事関数によっては導電性にも絶縁性にもなりうるが、他方の電極に仕事関数−4eV以下の金属を用いると、前述のフラーレン薄膜への正の電荷注入が容易になるとともに、金電極に正の電圧を印加した際にも絶縁性となるので、例えば有機ELパネルを駆動する場合などに用いる双安定素子として好適である。
【0020】
また、フラーレン薄膜中の電子の移動度は1cm/Vs程度である。これは双安定材料として有機化合物を用いた場合の移動度である1×10−3〜1×10−5cm/Vsと比較して数桁大きい。このため、フラーレン薄膜に電子が注入されオン状態となった時には大きなオン電流が実現できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、オン電流が非常に大きな双安定性を得ることができ、量産に適するスイッチング素子を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のスイッチング素子の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】実施例1におけるスイッチング素子の電流−電圧特性を示す図表である。
【図3】従来のスイッチング素子の電圧−電流特性の概念を示す図表である。
【符号の説明】
【0023】
10:基板
20a:第1電極層
20b:第2電極層
30:双安定材料層
51、71:高抵抗状態
52、72:低抵抗状態
Vth1:低閾値電圧(電位差)
Vth2:高閾値電圧(電位差)
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明する。図1は、本発明のスイッチング素子の一実施形態を示す概略構成図である。
【0025】
図1に示すように、このスイッチング素子は、基板10上に、第1電極層20a、双安定材料層30、第2電極層20bが薄膜として順次積層された構成となっている。
【0026】
基板10としては絶縁性であればよく特に限定されないが、従来公知のガラス基板等が好ましく用いられる。
【0027】
第1電極層20a、第2電極層20bのうち、少なくとも一方は金を含んでいる電極であることが必要であり、金電極であることが好ましい。この場合、他方の電極材料は、アルミニウム、金、銀、銅、ニッケル、鉄などの金属材料や、ITO、カーボン等の無機材料、共役系有機材料、液晶等の有機材料、シリコンなどの半導体材料などが適宜選択可能であり特に限定されないが、仕事関数として−4eV以下の材料を用いることが好ましい。
【0028】
これによって、上記のように双安定材料層30への正の電荷注入が容易になるとともに、金電極に正の電圧を印加したときに絶縁性となり、例えば有機ELパネルを駆動する場合などに用いる双安定素子として好適な構成となる。このような仕事関数−4eV以下の材料としては、具体的には、アルミニウム、金、銀、銅、クロム、ニッケル、鉄、ITOなどが挙げられる。
【0029】
なお、本発明において電極は薄膜には限定されず、例えば金属板、炭素板、薄膜、導電性塗料膜等いずれの形態でも使用できる。
【0030】
薄膜の形態で使用するときは、金属箔、蒸着膜、スパッタリング膜、電着膜、スプレー熱分解膜等の手段で薄膜化して使用できる。また、導電性塗料(例えば銀、炭素含有塗料)を塗布して電極を形成することもできる。ここで、製膜あるいは塗布によって電極を設ける場合には、スイッチング素子は、図1に示すような基板10上に形成されることが好ましい。また、金属板、炭素板等の板状の電極を用いるときは、特に基板を用いなくてもよい。
【0031】
電極の構成としては、図1に示すように、双安定材料層30を挟むように電極が設けられるサンドイッチ電極を用いてもよく、例えば、平行電極あるいは櫛の歯電極等のギャップ電極を用いてもよく特に限定されない。また、電極の膜厚は任意とすることができ特に限定されない。
【0032】
次に、本発明においては、双安定材料層30としてフラーレン類からなる薄膜を用いることを特徴としている。
【0033】
ここで、フラーレン類とは、sp炭素よりなる球状あるいはラグビーボール状のカーボンクラスタの総称であり、一般にC60、C70、C76、C78、C84等が知られている。これらは、炭素をアーク放電あるいは抵抗加熱して気化させ、ヘリウム等の不活性ガスで急冷して生成したすすの中等に含有され(例えば、Kraetschmer等、Nature、347号、354頁(1990)等)、C60が最も多く含有されている。そしてこのすすから、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン、メシチレン、二硫化炭素等の溶媒で抽出することによって上記カーボンクラスタの混合物が得られる。
【0034】
更に、この混合物を精製し、各々単離するには、通常有機化合物の精製に用いられるクロマトグラフィーの手法(例えば、Kraetschmer等、Nature、347号、354頁(1990)等)を用いることができる。本発明においては、合成、単離が容易なC60またはC70、あるいはこれらを含有するすすから抽出、不溶性不純物除去を施して得られる混合フラーレンが、入手が容易で低コストである点から好ましく用いられる。なお、これらのフラーレン類は、例えば東京化成工業等より市販されており、この市販品を用いることができる。
【0035】
フラーレン類からなる薄膜である双安定材料層30は、上記のフラーレン類を、従来公知の各種の製膜方法により薄膜化することで形成できる。例えば、真空蒸着膜、キャスト膜およびポリマー分散膜等を用いることができる。
【0036】
真空蒸着膜は、例えば、一般的な真空蒸着の手法に従い(薄膜ハンドブック、日本学術振興会薄膜第131委員会編、オーム社(1984)等)、5×10−5torr以下の真空下で、金属性ボートあるいはアルミナ性ボートなどを用いてフラーレン類を加熱し、その上部あるいは下部に基板を置くことで薄膜を形成できる。この際、必要に応じ、基板を加熱あるいは冷却しても良い。基板を冷却した場合、薄膜はアモルファス状態となり、また、室温あるいはそれ以上に加熱した場合は結晶状態として得られる。このフラーレン類の真空蒸着膜は空気中で安定であり、かつ非常に硬く強固である。
【0037】
キャスト膜は、例えばフラーレン類がベンゼン、トルエン、メシチレン等芳香族炭化水素、二硫化炭素、n−ヘキサン等に溶解する性質を利用するもので、簡便に薄膜を作成しうる手段である。すなわち上記溶媒等に溶解せしめ、基板上に滴下する、あるいは基板をスピンナー上に固定し、上記溶解液を滴下した後、スピンナーを適当な回転数で回転せしめ薄膜化する、あるいは基板上に滴下した溶液をバーコーターまたはドクターブレード等を用いて薄膜化するなどの手段で薄膜化し、次いで自然乾燥、あるいは熱または真空乾燥するなどの手段で乾燥することによって製膜することができる。
【0038】
ポリマー分散膜は、例えばポリマーの溶液中にフラーレン類を添加し、溶解あるいは分散せしめた後、上記キャスト膜と同様の手段で製膜することができる。分散方法としては、ペイントシェーカー、スペックスミキサーミル、サンドミル、ボールミル、アトラーター、ニーダー等の顔料分散手法を用いることができる。
【0039】
上記ポリマーとしては特に制限はないが、例えば、飽和ポリエステル、不飽和ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニール、ポリ酢酸ビニール、ポリビニールカルバゾール、スチレン等のビニール系ポリマー、フッ化ポリビニリデン、フッ化ポリビニル等のフッ素化ポリマー、スチレンーマレイン酸等のコポリマー等が挙げられる。また、例えば、ポリアクリレート系液晶高分子、ポリシロキサン系液晶高分子等の液晶高分子を用いることもできる。
【0040】
双安定材料層30の膜厚、すなわちフラーレン類からなる薄膜の膜厚については、ギャップ電極を用いる場合は、最低1分子の厚みがあれば良く、具体的には、10オングストローム〜100μmが好ましく、10オングストローム〜10μmがより好ましい。10オングストローム未満では単分子未満の厚さとなるのでフラーレン類を形成できない。また、100μmを超えるとスイッチング時の転移電圧が高くなりすぎるので好ましくない。
【0041】
なお、サンドイッチ電極を用いる場合は、薄すぎるとお互いの電極が短絡するので、ある程度の厚さが必要である。この場合、フラーレン薄膜の膜厚は100オングストローム〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは、200オングストローム〜10μmである。
【実施例】
【0042】
以下、実施例を用いて、本発明のスイッチング素子について更に詳細に説明する。
<実施例1>
【0043】
以下の手順で、図1に示すような構成のスイッチング素子を作成した。
【0044】
基板10としてガラス基板を用い、真空蒸着法により、第1電極層20aとして銅を、双安定材料層30としてフラーレン(C60:東京化成工業製)を、第2電極層20bとして金を順次連続して薄膜を形成し、実施例1のスイッチング素子を形成した。
【0045】
なお、第1電極層20a、双安定材料層30、第2電極層20bは、それぞれ、100nm、80nm、100nmの厚さとなるように成膜した。また、蒸着装置は拡散ポンプ排気で、3×10-6torrの真空度で行なった。また、銅および金の蒸着は、抵抗加熱方式により成膜速度は3Å/sec、フラーレンの蒸着は、抵抗加熱方式で成膜速度は2Å/secで行った。各層の蒸着は同一蒸着装置で連続して行い、蒸着中に試料が空気と接触しない条件で行った。
<実施例2>
【0046】
双安定材料層30としてフラーレン(C70:東京化成工業製)を用いた以外は、実施例1と同一の条件で成膜して、実施例2のスイッチング素子を得た。
<実施例3>
【0047】
第1電極層20aとして銅の代わりにクロムを用いた以外は、実施例1と同一の条件で成膜して、実施例3のスイッチング素子を得た。
<実施例4>
【0048】
第1電極層20aとして金を、第2電極層20bとして銅を用いた以外は、実施例1と同一の条件で成膜して、実施例4のスイッチング素子を得た。
<試験例>
【0049】
上記の実施例1〜4のスイッチング素子について、電流−電圧特性を室温環境で測定し、図3における閾値電圧である、高閾値電圧(電位差)Vth2、オン状態における電流密度Ionを測定した結果をまとめて表1に示す。ここで電圧(電位差)は、第2電極層20b側に電圧を印加し、実施例1〜3においては、第1電極層20a(銅電極)を0電位として、第2電極層20bの電位を示しており、実施例4においては、第1電極層20a(金電極)を0電位として、第2電極層20b(銅電極)の電位を示している。また、図2には、実施例1のスイッチング素子についての電流−電圧特性を示す。なお、測定は、電圧源の出力電流を最大1A/cmに制限して、過電流による素子の損傷を抑制した。
【0050】
【表1】

【0051】
図2の結果より、実施例1のスイッチング素子においては高抵抗状態71、及び低抵抗状態72の双安定性が得られた。
【0052】
すなわち、図2の実施例1において、低閾値電圧(電位差)Vth1が0Vでは、低抵抗状態72から高抵抗状態71へ(on状態からoff状態へ)遷移して抵抗値が変化した。また、高閾値電圧(電位差)Vth2が−7.6Vにおいて、高抵抗状態71から低抵抗状態72へ(off状態からon状態へ)遷移した。そして、このとき、低抵抗状態では電流値は1A/cm以上であり、低抵抗状態/高抵抗状態の比としては少なくとも10以上が得られていることがわかる。
【0053】
また、この双安定性は実施例1〜4のすべてのスイッチング素子で得られた。高閾値電圧(電位差)Vth2は、実施例2、3ではそれぞれ−8.2V、−5.8V、第1電極層20aに金を用いた実施例4では9.4Vであり、すべての素子においてオン電流は制限電流値である1A/cm以上であった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のスイッチング素子は、有機EL等のディスプレーパネルの駆動用スイッチング素子や、高密度メモリ等に好適に利用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印加される電圧に対して2種類の安定な抵抗値を持つ双安定材料を、少なくとも2つの電極間に薄膜として配置してなるスイッチング素子であって、前記双安定材料がフラーレン類からなり、前記電極のうち少なくとも一方が金を含有することを特徴とするスイッチング素子。
【請求項2】
前記フラーレン類が、C60及び/又はC70である請求項1に記載のスイッチング素子。
【請求項3】
前記フラーレン類からなる薄膜の厚さが、10オングストローム〜100μmである請求項1又は2に記載のスイッチング素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/060005
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【発行日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516353(P2005−516353)
【国際出願番号】PCT/JP2004/018882
【国際出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】