説明

スイッチング電源装置

【課題】駆動トランスに発生するリンギングに起因して生じる主発振素子の誤動作を、簡単な回路構成で、大きな損失を伴うことなく防止可能なスイッチング電源装置を提供する。
【解決手段】入力電圧をオン・オフして交流電圧を発生させる主発振素子Q1,Q1と、所定のパルス幅変調された制御パルスを生成する制御パルス生成部16を有する。制御パルスと同位相の駆動パルスを出力して、主発振素子Q1,Q2を駆動する駆動回路18を備える。駆動回路18は、駆動トランスT2の1次側巻線に交流電圧を発生させる主スイッチ素子Q3を有する。駆動トランスT2の2次側巻線に接続され、主スイッチ素子Q3のオン・オフによって、主発振素子Q1,Q2を駆動する駆動パルスを出力する主発振素子駆動部26a,26bを備える。主スイッチ素子Q3がオフの期間中に、駆動トランスT2の1次側巻線における正方向の電圧発生を抑制する巻線クランプ部24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定の周波数でオン・オフ駆動される主発振素子により電力変換を行うスイッチング電源装置であって、駆動トランスを用いた駆動回路によって主発振素子を作動させるスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば2石フォワード方式のように、ハイサイド側とローサイド側で各々オン・オフ駆動される2つの主発振素子を備えたスイッチング電源装置では、ハイサイド側の主発振素子のグランド端子は、スイッチングによって電位が変動する。従って、ハイサイド側の主発振素子のグランド端子と制御パルスを生成する制御回路のグランドを、駆動トランスを用いて分離して、ハイサイド側の主発振素子を作動させる駆動回路が採用されている。しかし、パルス伝達経路に駆動トランスを介在させることによって新たに弊害が生じることが考えられ、それらの弊害を解決するための技術が盛んに提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示されているように、駆動トランスの1次側巻線に、主スイッチ素子のオン・オフよって直流電圧を断続的に印加し、2次側巻線から主発振素子の駆動パルスを取り出す駆動回路において、駆動トランスの2次側に、抵抗とダイオードで構成するリセット回路を設けたスイッチング電源駆動用ドライブ回路が提案されている。これは、主スイッチ素子がオンの期間中に駆動トランスに蓄積された励磁エネルギーを放出する際のリセット電圧の波形を、リセット回路の抵抗によって整形し、このリセット電圧に起因する主発振素子の誤動作を抑制しようとする技術である。
【0004】
また、駆動トランスを用いた駆動回路に関する技術ではないが、特許文献2に開示されているように、フライバックトランスの1次側巻線と並列に、スイッチ素子とダイオードの直列回路でなるクランプ回路を接続し、主発振素子がオフのときにクランプ回路を導通させることによって、フライバックトランスに発生するリンギングパルスを低減し、ノイズを抑制する共振型電源回路が提案されている。
【特許文献1】特開2007−6665号公報
【特許文献2】特開2002−199720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のスイッチング電源駆動用ドライブ回路にあっては、主スイッチ素子の誤動作を防止できるレベルまでリセット電圧を整形するためには、リセット回路の抵抗値をかなり小さな値に設定する必要があった。従って、駆動回路全体の損失が増大する他、この発熱の処理のために駆動回路をコンパクトに構成することができないという問題があった。
【0006】
また、特許文献2の共振型電源回路にあっては、クランプ回路が有するダイオードが導通する方向に発生しようとするリンギングパルスをクランプするものであるが、逆方向に発生するリンギングパルスに対しては作用しない。従って、その逆方向に発生するリンギングパルスに起因して生じる周辺回路の誤動作を防止できるものではなかった。
【0007】
この発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであって、駆動トランスに発生するリンギングに起因して生じる主発振素子の誤動作を、簡単な回路構成で、かつ、大きな損失を伴うことなく防止することができるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、入力電圧をオン・オフして交流電圧を発生させる主発振素子と、前記交流電圧を整流平滑して直流の出力電圧に変換する整流平滑回路と、前記出力電圧に基づいて所定のパルス幅変調された制御パルスを生成する制御パルス生成部と、前記制御パルスと同位相の駆動パルスを出力して前記主発振素子を駆動する駆動回路とを備えたスイッチング電源装置において、前記駆動回路は、前記制御パルスによって駆動され、直流電源をオン・オフして駆動トランスの1次側巻線に交流電圧を発生させる主スイッチ素子と、前記駆動トランスの2次側巻線に接続され、前記主スイッチ素子のオン・オフによって前記駆動トランスの2次側巻線に発生するパルス電圧に基づいて、前記主発振素子を駆動する駆動パルスを出力する主発振素子駆動部と、前記駆動トランスの1次側巻線に並列に接続されたダイオードとスイッチ素子の直列回路を有し、前記主スイッチ素子がオフの期間中に、前記駆動トランスの1次側巻線における正方向の電圧発生を抑制する巻線クランプ部とを備えている。
【0009】
さらに前記主発振素子駆動部は、前記駆動トランスの2次側巻線における前記主スイッチ素子がオンの期間中に電流が流入する側の一端であって、前記主発振素子のグランド端子が接続されるグランド電位と、前記駆動トランスの2次側巻線の他の一端にアノード側が接続され、前記主スイッチ素子がオンの期間中に導通する第一のダイオードと、前記第一のダイオードと並列接続されたコンデンサと、前記第一のダイオードのカソード側にアノード側が接続され、カソード側が前記主発振素子の駆動端子に接続された第二のダイオードと、エミッタ端子が前記第二のダイオードのアノード端子に接続され、ベース端子が前記第二のダイオードのカソード端子に接続され、コレクタ端子が前記グランド電位に接続されたPNP型の第一のトランジスタと、エミッタ端子が前記第一のトランジスタのベース端子に接続され、コレクタ端子が前記グランド電位に接続されたPNP型の第二のトランジスタと、前記第二のトランジスタのベース端子と前記第一のダイオードのアノード側との間に接続された抵抗とを備えたスイッチング電源装置である。
【0010】
また、同位相でオン・オフする複数の主発振素子を備えたスイッチング電源装置であって、前記駆動回路は、前記駆動トランスの2次側巻線と、その2次側巻線に接続された前記主発振素子駆動部とが、前記複数の主発振素子と同数設けられているスイッチング電源装置である。
【0011】
さらに、前記駆動回路は、前記駆動トランスに設けられた補助巻線を含み、前記主スイッチ素子がオフの期間中に前記補助巻線に発生する負方向の電圧を所定の電圧以下に制限する電圧制限回路を備えるスイッチング電源装置である。
【発明の効果】
【0012】
この発明のスイッチング電源装置によれば、主発振素子の駆動回路おいて、主スイッチ素子がオフの期間中に駆動トランスの2次側巻線に発生するリンギングノイズのうち、正方向に発生しようとする電圧成分は、巻線クランプ部の動作によって抑制される。また、リンギングノイズのうち負方向に発生する電圧成分に起因する誤動作は、上記第二のトランジスタの動作によって回避される。従って、このリンギングノイズの影響で主発振素子の誤動作を確実に防止することができる。
【0013】
また、上記駆動回路において、誤動作防止の動作に伴う電力損失はほとんど発生しない他、上記第二のトランジスタの動作によって主発振素子のターンオフスピードの高速化作用により、主発振素子のクロス損失が低減される効果が期待でき、スイッチング電源装置の高効率化に寄与する。
【0014】
また、上記駆動回路は、同一の2次側巻線と主発振素子駆動部を複数組構成し、一の主スイッチ素子のオン・オフ動作によって駆動パルスを生成するため、複数の主発振素子のオン・オフ動作のタイミングを厳密に一致させることができ、そのタイミングの不一致による異常動作が生じることがない。
【0015】
さらに、補助巻線を含む電圧制限回路によって主スイッチ素子に加わる電圧ストレスが緩和され、主スイッチ素子として定格電圧の低い安価な部品を選定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、この発明の一実施形態のスイッチング電源装置10について、図に基づいて説明する。スイッチング電源装置10は、2石式フォワード方式であって、入力端12に接続されたコンデンサC1に、MOS−FET等の電界効果形トランジスタを用いたハイサイド側の主発振素子Q1、出力トランスT1の1次側巻線T1p、電界効果形トランジスタを用いたローサイド側の主発振素子Q2の直列回路が並列に接続されている。出力トランスT1の2次側巻線T1sには、ダイオードD1,D2、インダクタL1、コンデンサC2で構成された整流平滑回路が接続されている。また、コンデンサC2の両端に発生する出力電圧Voに基づいて所定のパルス幅変調された制御パルスVaを出力する制御パルス生成部16と、制御パルスVaに基づく駆動バルスを発振素子Q1,Q2のゲート端子に出力し、発振素子Q1,Q2をオン・オフさせる駆動回路18とを備えている。そしてスイッチング電源装置10は、入力端12の外部に入力電源E1が接続され、出力端14の外部に接続された負荷LDに電力を供給する。
【0017】
駆動回路18は、図2に示すように、駆動トランスT2の1次側に、直流電源E2に接続された駆動トランスT2の1次側巻線T2pと主スイッチ素子Q3との直列回路と、抵抗R11,R12で構成された主スイッチ素子駆動部20と、ダイオードD21とトランジスタTR21の直列回路を含み、1次側巻線T2pに並列に接続された巻線クランプ部24とを備えている。
【0018】
また、駆動トランスT2には補助巻線T2rが設けられ、ダイオードD11と直列接続された電圧制限部24を備えている。
【0019】
また、駆動トランスT2の2次側には、2次側巻線T2s1,T2s2に各々主発振素子駆動部26a,26bが接続され、その出力は主発振素子Q1,Q2のゲート・ソース端子間に各々接続されている。なお、2次側巻線T2s1,T2s2は巻数が等しく、主発振素子駆動部26a,26bは同一のものである。
【0020】
次に、駆動回路18の各機能ブロック内部の構成について個別に説明する。主スイッチ素子Q3は電界効果形トランジスタである。そして、主スイッチ素子駆動部20は、制御パルス生成部16の出力と主スイッチ素子Q3のゲート端子との間に接続され、ゲート端子の充放電電流を制限する抵抗R11と、ゲート端子をソース端子にプルダウンする抵抗R12とで構成されている。従って、主スイッチ素子駆動部20に制御パルスVaが入力されると、制御パルスVaがハイレベルの期間は主スイッチ素子Q3がオンし、1次側巻線T2pに正方向に直流電圧Vccが印加される。一方、制御パルスVaがローレベルの期間は主スイッチQ3がオフして直流電源E2が切り離される。なお、必要に応じて、抵抗R11は短絡除去、R12は開放除去してもよく、本発明に係る作用効果に影響するものではない。
【0021】
巻線クランプ部24は、PNP型のトランジスタTR21とダイオードD21の直列回路を備え、トランジスタTR21のコレクタ端子とダイオードD21のアノード端子が接続されている。そして、この直列回路は、トランジスタTR21のエミッタ端子が、直流電源E2のプラス側と1次側巻線T2pとの接続点に接続され、ダイオードD21のカソード端子側が、1次側巻線T2pの他の一端に接続されている。また、トランジスタTR21のエミッタ端子とベース端子との間に抵抗R22が、制御パルス生成部16の出力とベース端子との間に抵抗R21が各々設けられ、制御パルスVaがローレベルの期間にTR21がオンし、ハイレベルの期間はオフするように設定されている。従って、制御パルスVaがローレベルの期間はトランジスタTR21がオンしているので、1次側巻線T2pに正方向に電圧が発生しようするとダイオードD21が導通し、正方向の電圧の発生を抑制する。ただし、1次側巻線T2pに負方向の電圧が発生した場合には、ダイオードD21は導通しないため、その負方向の電圧の発生を抑制することはできない。
【0022】
電圧制限部22は、一端が直流電源E2のプラス側に接続された補助巻線T2rと、補助巻線T2rの他の一端にアノード端子が接続され、カソード端子が直流電源E2のグランドに接続されたダイオードD11を備えている。上述したように、主スイッチ素子Q3がオフの期間中は、補助巻線T2rに、励磁エネルギーを放出するための負の電圧が発生する。そして、その発生電圧が直流電源E2の直流電圧Vccを超えようとすると、ダイオードD11が導通し、電圧の上昇が制限される。結果、前記1次側巻線に発生する負の電圧は、直流電圧Vccと各巻線の巻数比とで定まる所定の電圧以下に制限され、主スイッチ素子Q3等に加わる電圧ストレスを軽減する動作を行う。
【0023】
主発振素子駆動部26aは、コンデンサ51とダイオードD51との並列回路、抵抗R51、ダイオードD52、抵抗R52が順番に接続された直列回路が設けられ、2次側巻線T2s1の一端は、その直列回路を介して主発振素子Q1のゲート端子に接続される。また、主発振素子Q1のゲート端子には抵抗R53が接続され、ゲート端子をソース端子にプルダウンしている。なお、上記ダイオードD51,D52は、主スイッチ素子Q3がオンの期間中に2次側巻線T2s1に発生する正方向の電圧によって導通し、発振素子Q1のゲート電圧Vg1をハイレベルにする向きに接続されている。
【0024】
また、PNP型トランジスタである第一のトランジスタTR51が設けられ、そのベース端子はダイオードD52のアノード端子に、エミッタ端子はダイオードD52のカソード端子に、コレクタ端子は主発振素子Q1のソース端子に各々接続されている。さらに、PNP型トランジスタである第二のトランジスタTR52が設けられ、そのベース端子は抵抗R54を介してダイオードD51のアノード端子に、エミッタ端子はトランジスタTR51のベース端子に、コレクタ端子は主発振素子Q1のソース端子に各々接続され、さらに、トランジスタTR52のコレクタ端子からベース端子の方向にダイオードD53が接続されている。トランジスタTR52は、主スイッチ素子Q3がオフの期間中に2次側巻線T2s1に発生する負方向の電圧によってオンし、トランジスタTR51のベース端子をローレベルに低下させる。それによって、トランジスタTR51がオンし、発振素子Q1のゲート電圧Vg1をローレベルに低下させる動作を行う。なお、必要に応じて、抵抗R51,R52は短絡除去、R53は開放除去してもよく、本発明に係る作用効果に影響するものではない。また、ダイオードD53は、主スイッチ素子Q3がオフの期間中に導通して、トランジスタTR52のコレクタ・ベース間に加わる電気ストレスを軽減するに発生するものであるが、必要に応じて削除してもよく、本発明に係る作用効果に影響するものではない。
【0025】
次に、スイッチング電源装置10の動作について説明する。制御パルス生成部16は、出力電圧Voに基づいてパルス幅変調され、所定の時比率に生成された制御パルスVaを出力し、出力電圧Voを所定の直流電圧に安定化する。
【0026】
制御パルスVaがハイレベルの期間t1は、主スイッチ素子Q3がオンし、1次側巻線T2pに直流電圧Vccが正方向に印加される。一方、巻線クランプ部24のTR21はオフしている。この状態では、図3に示すように、2次側巻線T2s1の電圧Vs1は、直流電圧Vccに比例した正方向の一定電圧となる。そして、この一定電圧は、ダイオードD51、コンデンサC51、抵抗R51、ダイオードD52および抵抗R52を介して主発振素子Q1のゲート端子に印加され、主発振素子Q1はオンする。なお、電圧Vs1は正方向の電圧であるため、TR51,TR52はオフしており、上記の動作に関与しない。
【0027】
次に、制御パルスVaがローレベルに反転する期間t2に入ると、主スイッチ素子Q3がオフし、1次側巻線T2pから直流電源E2が切り離される。一方、巻線クランプ部24のトランジスタTR21はオンの状態となる。この状態で、駆動トランスT2は蓄積された励磁エネルギー放出するため、2次側巻線T2s1の電圧Vs1は負方向に上昇する。
【0028】
期間t21においては、電圧制限部22のダイオードD11が導通して補助巻線T2rに発生する負方向の電圧を、直流電圧Vccを超えないように制限し、2次側巻線T2s1の電圧Vs1は、直流電圧Vccに比例した負方向の一定電圧に制限されて推移する。また電圧Vs1は負方向の電圧であるため、TR51,TR52がオンしてゲート電圧Vg1をローレベルに低下し、主発振素子Q1はオフする。
【0029】
期間t22は、駆動トランスT2のインダクタンスと各巻線に形成される寄生容量等との間で生じる共振現象によって上記励磁エネルギーが移動し、負方向の電圧が低下する。従って、電圧制限部22のダイオードD11が非導通の状態となっている。
【0030】
期間t23に入ると、負方向の電圧が正方向に転じようとする。しかし、巻線クランプ部24のトランジスタTR21のオンの状態となっているため、ダイオードD21が導通し、1次側巻線T2pに正方向に電圧が発生するのを抑制する。従って、2次側巻線T2s1の電圧Vs1は、ほぼゼロボルトで推移し、TR51,TR52はオン状態を維持し、主発振素子Q1のオフが継続される。
【0031】
このように、スイッチング電源装置10においては、制御パルスVaが規定するハイレベル/ローレベルのタイミングは、駆動回路18を介して主スイッチ素子Q3のゲート端子に正確に伝達され、主スイッチ素子Q1をオン・オフさせることができる。
【0032】
次に、本実施形態に係る駆動回路18の動作と、一般的な駆動回路の動作とを比較する。図4に示す駆動回路30は、従来技術を用いて構成されたものである。駆動回路30は、巻線クランプ部24を備えていない点と、主発振素子駆動部32a,32bにおいてはトランジスタTR52及び抵抗R54が削除されている点で、駆動回路18と構成が異なる。その他の構成は同様であるので、駆動回路18と同一符号を付して説明を省略する。
【0033】
駆動回路30の動作波形を図5に示す。駆動回路18と異なり、期間t22,t23において、2次側巻線の電圧Vs1に励磁エネルギーの共振現象によるリンギングノイズが現れ、特に、期間t23において、正方向に電圧が発生している。その影響で、発振素子Q1のゲート電圧Vg1が同様に正方向に上昇している。すなわち、期間t2の間は主発振素子Q1のオフ状態を維持したいところ、ゲート電圧Vg1の上昇によって主発振素子Q1が誤ってオンしてしまうという問題が生じている。
【0034】
図6に示す駆動回路40は、駆動回路30に巻線クランプ部24を付加したもので、他の構成は駆動回路30と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
駆動回路40の動作波形を図7に示す。駆動回路40では、巻線クランプ部24の作用によって、励磁エネルギーの共振現象によるリンギングノイズがクランプされ、期間t23に2次側巻線の電圧Vs1に発生していた正方向の電圧の上昇がなくなった。しかしながら、主発振素子Q1のゲート電圧Vg1は、期間t22に正方向に上昇し、期間t23でその正方向の電圧に保持されている。すなわち、駆動回路30に比べ、期間t2におけるゲート電圧Vg1の上昇はやや抑制されたものの、十分とはいえず、主発振素子Q1が誤ってオンしてしまうという問題は解決されない。
【0036】
期間t22におけるゲート電圧Vg1の上昇は、負方向に発生していた電圧Vs1が低下すると同時に、2次側巻線T2s1からD53を通してコンデンサC51を充電する電流が流れることによって発生する。そして、期間t23に入ると巻線クランプ部24の作用によって充電電流は停止するが、抵抗R55は比較的大きな抵抗値であるため、充電された電荷は、ほとんど放電されず、ゲート電圧Vg1は、一定の電圧に保持されているのである。
【0037】
それに対して、本発明の一実施形態の駆動回路26aにおいては、トランジスタTR52と抵抗R54を付加されているので、期間t2の期間中はC51の両端が低インピーダンスに短絡され、コンデンサC51に充電電流が流れることはない。従って、図3に基づいて説明したとおり、主発振素子Q1が誤ってオンしてしまうという問題は発生しない。
【0038】
また、トランジスタTR52と抵抗R54を付加することによって、トランジスタTR51のターンオン動作に対するバッファ作用によって、トランジスタTR51のターンオンのスピードを速くすることができる。従って、期間t1から期間t2に切り替わる際のゲート電圧Vg1の低下時間Δtが短くなるので、主発振素子Q1のスイッチング動作におけるクロス損失を低減する効果も生じる。
【0039】
以上説明したように、スイッチング電源装置10においては、制御パルスVaが規定するハイレベル/ローレベルのタイミングは、駆動回路18を介して主スイッチ素子Q1のゲート端子に正確に伝達され、主スイッチ素子Q1を常に意図通りにオン・オフさせることができる。
【0040】
また、主発振素子Q2は、2次側巻線T2s1と同一巻数の2次側巻線T2s2、及び主発振素子駆動部26aと同一構成の主発振素子駆動部26bによって駆動される。従って、一の主スイッチ素子Q3のオン・オフによって主発振素子Q1,Q2が駆動されるため、主発振素子Q1,Q2のオン・オフ動作のタイミングを厳密に一致させることができ、そのタイミングの不一致による異常動作が生じることはない。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、スイッチング方式は、一以上の主発振素子を備えたもの、または、二以上の主発振素子が全て同位相でオン・オフ動作する方式によるものであれば、一石式の降圧チョッパ方式、昇圧チョッパ方式、シングルフォワード方式、フライバック方式や、2石シングルフォワード方式や、4石式のフルブリッジ方式等、特に限定されない。また、フルブリッジ方式にあっては、同位相でオン・オフ動作する一対の主発振素子を2組備えているので、例えば各一対の主発振素子を、2組の駆動回路18によって各々駆動する構成としてもよい。
【0042】
また、主発振素子がハイサイド側に設けられた構成のスイッチング電源装置に限定するものではなく、ローサイド側に主発振素子が設けられた構成であってもよい。主発振素子がローサイド側に設けられた場合であっても、主発振素子の駆動電流が流れるパワー・グランドと、各種制御回路のシグナル・グランドを分離することによって、各種制御回路のノイズ安定性を高めることができる等の優れた効果が得られることは、ハイサイド側に接続された場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】この発明のスイッチング電源装置の一実施形態を示す概略回路図である。
【図2】この実施形態の駆動回路の構成を示す回路図である。
【図3】この実施形態の駆動回路の動作を示すタイムチャートである。
【図4】一般的な駆動回路の一例を示す回路図である。
【図5】図4に示す駆動回路の動作を示すタイムチャートである。
【図6】一般的な駆動回路に電圧制限部を付加した回路図である。
【図7】図6に示す駆動回路の動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0044】
10 スイッチング電源装置
16 制御パルス生成部
18,30,40 駆動回路
22 電圧制限部
24 巻線クランプ部
26a,26b,32a,32b 主発振素子駆動部
Q1,Q2 主発振素子
Q3 主スイッチ素子
T1 出力トランス
T2 駆動トランス
T2p 1次側巻線
T2s1,T2s2 2次側巻線
T2r 補助巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電圧をオン・オフして交流電圧を発生させる主発振素子と、
前記交流電圧を整流平滑して直流の出力電圧に変換する整流平滑回路と、
前記出力電圧に基づいて所定のパルス幅変調された制御パルスを生成する制御パルス生成部と、
前記制御パルスと同位相の駆動パルスを出力して前記主発振素子を駆動する駆動回路とを備えたスイッチング電源装置において、
前記駆動回路は、
前記制御パルスによって駆動され、直流電源をオン・オフして駆動トランスの1次側巻線に交流電圧を発生させる主スイッチ素子と、
前記駆動トランスの2次側巻線に接続され、前記主スイッチ素子のオン・オフによって前記駆動トランスの2次側巻線に発生するパルス電圧に基づいて、前記主発振素子を駆動する駆動パルスを出力する主発振素子駆動部と、
前記駆動トランスの1次側巻線に並列に接続されたダイオードとスイッチ素子の直列回路を有し、前記主スイッチ素子がオフの期間中に、前記駆動トランスの1次側巻線における正方向の電圧発生を抑制する巻線クランプ部とを備え、
前記主発振素子駆動部は、
前記駆動トランスの2次側巻線における前記主スイッチ素子がオンの期間中に、電流が流入する側の一端であって、前記主発振素子のグランド端子が接続されるグランド電位と、
前記駆動トランスの2次側巻線の他の一端にアノード側が接続され、前記主スイッチ素子がオンの期間中に導通する第一のダイオードと、
前記第一のダイオードと並列接続されたコンデンサと、
前記第一のダイオードのカソード側にアノード側が接続され、カソード側が前記主発振素子の駆動端子に接続された第二のダイオードと、
エミッタ端子が前記第二のダイオードのアノード端子に接続され、ベース端子が前記第二のダイオードのカソード端子に接続され、コレクタ端子が前記グランド電位に接続されたPNP型の第一のトランジスタと、
エミッタ端子が前記第一のトランジスタのベース端子に接続され、コレクタ端子が前記グランド電位に接続されたPNP型の第二のトランジスタと、
前記第二のトランジスタのベース端子と前記第一のダイオードのアノード側との間に接続された抵抗とを備えることを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
同位相でオン・オフする複数の主発振素子を備え、
前記駆動回路は、前記駆動トランスの2次側巻線と、その2次側巻線に接続された前記主発振素子駆動部とが、前記複数の主発振素子と同数設けられていることを特徴とする請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記駆動トランスに設けられた補助巻線を含み、前記主スイッチ素子がオフの期間中に前記補助巻線に発生する負方向の電圧を所定の電圧以下に制限する電圧制限回路を備えることを特徴とする請求項1または2記載のスイッチング電源装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−261117(P2009−261117A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106453(P2008−106453)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)
【Fターム(参考)】