説明

スイッチ

【課題】主に自動車の各種制御用に用いられるスイッチに関し、簡易な構成で、接点の確実な接離が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】小電流用の接触片7や固定接片4に、グリコール系の炭化水素化合物10Aを含んだ潤滑剤10を塗布することによって、気化した炭化水素化合物10Aが、大電流用の可動接点5や固定接点3を覆い、外部からのガス等が接点に付着することを防止できるため、簡易な構成で、接点の確実な接離が可能なスイッチを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車のブレーキペダルの操作やドアの開閉等の検出に用いられるスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ブレーキペダルを踏み込んだ際にはストップランプを点灯させ、離した際には消灯させたり、或いは、ドアを開いた際には室内灯を点灯させ、閉じた際には消灯させたりといった、車両の各種制御用として、これらの動作を検出する様々なスイッチが使用されている。
【0003】
そして、このような従来のスイッチとしては、対向したリベット状のスイッチ接点を作動体の移動によって接離させ、数A程度の比較的電流の大きなランプ等の消点灯を行うものや、クリップ状のスイッチ接点を摺動させ、数mA程度の比較的電流の小さな電子回路の切換えを行うもの等がある。
【0004】
また、例えば、ブレーキペダルの操作によってストップランプの消点灯を行う大電流用のスイッチ接点と、アクセルペダルを踏まないでも車両の走行速度を一定に保つ、所謂クルーズコントロール機能等を切換える小電流用のスイッチ接点が一体に内蔵された、複合型のスイッチ等も多く用いられている。
【0005】
なお、接点数mA程度の小さな電流が通電される小電流用のスイッチ接点には、接点の酸化防止と動作の円滑化のために潤滑剤が塗布されているが、電流が大きく接点の開閉時にアークの発生する大電流用のスイッチ接点には、アークによって潤滑剤が炭化したり、珪素化合物が生成されたりして、接触不良が生じることを防ぐため、通常、潤滑剤の塗布は行われていない。
【0006】
しかし、こうしたスイッチは、車両のブレーキペダルやドア等の、潤滑剤が塗布されたアームやヒンジ等の機構部品の近傍に装着されると共に、一般に、比較的ガスや湿気、塵埃等が多い場所で使用される。
【0007】
このため、特に接点にアークの発生する大電流用のスイッチの場合、これらの潤滑剤が気化したガスや大気中のガス、湿気等が、スイッチ内に侵入して接点に付着し、アークによって炭化物や珪素化合物が形成されることを防ぐため、スイッチを密閉構造にしたり、接点に影響を及ぼさないガス等でスイッチ内を封止したりする等の対策が必要となるものであった。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2001−297654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来のスイッチにおいては、特に大電流用のスイッチの場合、ガス等がスイッチ内に侵入して接点に付着し、アークによって炭化物や珪素化合物が形成されることを防ぐには、スイッチを密閉構造にしたり、ガスで封止したりする等の対策が必要なため、スイッチの構成が複雑なものになると共に、組立てにも時間を要するという課題があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、簡易な構成で、接点の確実な接離が可能なスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、スイッチ接点またはその近傍に、グリコール系の炭化水素化合物を含んだ潤滑剤を塗布してスイッチを構成したものであり、潤滑剤から気化したグリコール系の炭化水素化合物が接点を覆い、外部からのガスが接点に付着することを防止できるため、簡易な構成で、確実な接点の接離が可能なスイッチを得ることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、簡易な構成で、確実な接点の接離が可能なスイッチを実現することができるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図3を用いて説明する。
【0014】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図であり、同図において、1は上面開口で略箱型の絶縁樹脂製のケース、2は略円柱状で絶縁樹脂製の作動体で、ケース1内側壁には銅合金等の複数の固定接点3や固定接片4が植設されると共に、作動体2がケース1内に上下動可能に収納されている。
【0015】
そして、5は銅合金等の導電金属製の可動接点で、この可動接点5がケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されたコイル状の接圧ばね6によって、複数の固定接点3に下方から弾接し、複数の固定接点3が可動接点5を介して電気的に接続されている。
【0016】
また、7は銅合金等の導電金属製の接触片で、この接触片7の一端が作動体2側面に装着固定されると共に、やや撓んだ状態で、他端が固定接片4上方のケース1右内側壁に弾接している。
【0017】
さらに、8はコイル状の戻りばね、9はケース1上面の開口部を覆う絶縁樹脂製のカバーで、戻りばね8が作動体2下面とケース1の底面との間にやや撓んだ状態で装着されて、作動体2を上方に付勢している。
【0018】
また、カバー9には上方へ突出する中空筒部9Aが設けられ、この中空筒部9A内に作動体2の操作軸2Aが上下動可能に挿通すると共に、操作軸2A上端が中空筒部9Aから上方へ突出している。
【0019】
そして、固定接片4と接触片7の間には、ヘキシレングリコールや1,6ヘキサンジオール、ジヘキサメチレングリコール、2エチル1,3ヘキサンジオール等のグリコール系の炭化水素化合物10Aを10%前後含んだオレフィン系や炭化水素系、鉱油系の潤滑剤10が塗布されて、スイッチ11が構成されている。
【0020】
そして、このように構成されたスイッチ11は、図2の側面図に示すように、一般に自動車のブレーキペダル12の手前に、アーム12Aによって作動体2の操作軸2Aが押圧された状態で装着されると共に、ケース1底面から突出した固定接点3の端子部がストップランプに、固定接片4の端子部が車両の電子回路に、コネクタ13によって各々接続される。
【0021】
つまり、ブレーキペダルが踏み込まれていない状態では、図3の断面図に示すように、作動体2の操作軸2Aが下方へ押圧操作され、接圧ばね6や戻りばね8が撓んで、可動接点5が下方へ移動して固定接点3から離れ、電気的に切断された状態となっているため、ストップランプは消灯した状態となる。
【0022】
また、この状態では、作動体2側面に装着固定された接触片7が下方へ移動し、固定接片4へ弾接摺動して、固定接片4が電気的に接続された状態となっているため、車両の電子回路が制御する機能、例えばアクセルペダルを踏まないまでも車両の走行速度を一定に保つ、所謂クルーズコントロール等が動作した状態となっている。
【0023】
そして、ブレーキペダルが踏み込まれると、アーム等が操作軸2Aから離れ押圧力が除かれるため、戻りばね8の弾性復帰力によって作動体2が上方へ移動すると共に、可動接点5も接圧ばね6に押圧されて固定接点3に弾接し、図1に示したように、複数の固定接点3が電気的に接続された状態となり、ストップランプが点灯する。
【0024】
また、この状態では、接触片7が上方へ弾接摺動して、固定接片4が電気的に切断されるため、電子回路のクルーズコントロール等は停止した状態となるように構成されている。
【0025】
つまり、可動接点5と固定接点3によって、ストップランプの消点灯を行う、数Aの大きな電流が通電される大電流用のスイッチ接点が形成され、接触片7と固定接片4によって、クルーズコントロール機能等の、数mA程度の小さな電流を切換える小電流用のスイッチ接点が形成されている。
【0026】
そして、以上のように作動体2の上下動に伴って接触片7が固定接片4に弾接摺動する際に、これらの間に塗布された潤滑剤10によって、接触片7の固定接片4への弾接摺動が滑らかに行われると共に、接触片7や固定接片4の磨耗が少なくなるように形成されている。
【0027】
さらに、この潤滑剤10にはグリコール系の炭化水素化合物10Aが含まれているため、図3に示すように、これが気化してケース1内の可動接点5や固定接点3を覆い、外部からの潤滑剤が気化したガスや大気中のガス、湿気等が、スイッチ内に侵入して可動接点5や固定接点3に付着し、アークによって炭化物や珪素化合物が形成されることを防ぐようになっている。
【0028】
つまり、可動接点5が固定接点3から離れた図3の状態では、気化した炭化水素化合物10Aが薄膜となって可動接点5や固定接点3の表面を覆うと共に、この後、スイッチ11が操作され、図1に示すように可動接点5が固定接点3に弾接し、アークが発生する状態では、ガス等が可動接点5や固定接点3に付着していない状態で、接点の弾接が行われるため、アークによる炭化物や珪素化合物が接点表面に形成されないようになっている。
【0029】
そして、このアークの発生によって、接点表面に形成された炭化水素化合物10Aの薄膜は、燃焼されて水と炭酸ガスに分解し、ごく一部が低分子カーボンに分解されるが、再びスイッチ11が操作され、図3に示すように可動接点5が固定接点3から離れた状態になると、気化した炭化水素化合物10Aが、再び可動接点5や固定接点3の表面を薄膜となって覆い、外部からのガス等の接点表面への付着を防ぐようになっている。
【0030】
すなわち、可動接点5と固定接点3の接触は、常に接点表面が炭化水素化合物10Aの薄膜で覆われ、外部からのガス等の付着のない状態で行われるため、炭化物や珪素化合物による接触不良等がなく、接点の確実な接離が行える構成となっている。
【0031】
このように本実施の形態によれば、小電流用の接触片7や固定接片4に、グリコール系の炭化水素化合物10Aを含んだ潤滑剤10を塗布することによって、気化した炭化水素化合物10Aが、大電流用の可動接点5や固定接点3を覆い、外部からのガス等が接点に付着することを防止できるため、簡易な構成で、接点の確実な接離が可能なスイッチを得ることができるものである。
【0032】
なお、以上の説明では、大電流用と小電流用のスイッチ接点が一体に内蔵された、複合型のスイッチ11について説明したが、接触片7や固定接片4がなく、可動接点5や固定接点3だけの大電流用のスイッチ接点のみの場合には、例えば固定接点3近傍のケース1内側壁や内底壁に潤滑剤10を塗布したり、可動接点5や固定接点3の側面に潤滑剤10を塗布したりしても、本発明の実施は可能である。
【0033】
また、以上の説明では、主にブレーキペダルによって操作される押圧操作型のスイッチについて説明したが、ドアの開閉等、他の機能に用いられるスイッチや、或いは、作動体を揺動したり平行にスライドさせる等、他の操作方式のスイッチにおいても実施は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明によるスイッチは、簡易な構成で、接点の確実な接離が可能なものを得ることができるため、主に自動車の各種制御用として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態によるスイッチの断面図
【図2】同側面図
【図3】同操作時の断面図
【符号の説明】
【0036】
1 ケース
2 作動体
2A 操作軸
3 固定接点
4 固定接片
5 可動接点
6 接圧ばね
7 接触片
8 戻りばね
9 カバー
9A 中空筒部
10 潤滑剤
10A 炭化水素化合物
11 スイッチ
12 ブレーキペダル
12A アーム
13 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略箱型のケースと、このケース内に移動可能に収納された作動体と、この作動体の移動によって電気的接離を行うスイッチ接点からなり、上記スイッチ接点またはその近傍に、グリコール系の炭化水素化合物を含んだ潤滑剤を塗布したスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−242503(P2007−242503A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−65374(P2006−65374)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】