説明

スキッドステアローダ

【課題】 プルアップ式の前面ドアのロック機構として機械的なロック構造を用い、前面ドアをキャブの天井における下面側に収納したロック状態も、前面ドアでキャブの昇降口を閉鎖したロック状態も、一ヶ所に設けたドアレバーの操作によってキャブの内側及び外側から解除できるスキッドステアローダを提供する。
【解決手段】 前面ドア10の上部ドア枠方向に沿って摺動自在に配設されたラッチ爪21は、第1バネ22の付勢力によってロック位置に移動し、ケーブル17aからの引っ張り力によって、第1バネ22の付勢力に抗して非ロック位置に移動する。キャブ4に設けた第2被ロック部材と係合するラッチヘッド31は、第2バネの付勢力によってロック位置に移動し、ドアレバー27a、27bの操作によって、非ロック位置に移動する。ラッチヘッド31を非ロック位置に移動させるドアレバー27a、27bの操作によって、回動部材33とケーブル17aとを介してラッチ爪21を非ロック位置に移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車体前方から乗員の乗り降りを行うキャブの昇降口に、前記昇降口を開閉する前面ドアを備えたスキッドステアローダに関するものであり、特に、前面ドアのロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
スキッドステアローダでは、車体前方の昇降口から乗員の乗り降りを行い易くするため、キャブの昇降口における構成として、一般的に前面ドアが設けられていない開放型の構成が採用されている。しかし、寒冷地や粉塵等が舞い上がる環境下において使用されるステッドステアローダにおいては、キャブ内を外気や粉塵等から遮断するため、キャブ前方の昇降口に前面ドアを開閉自在に設けた構成が採用されている。
【0003】
キャブ前方の昇降口に前面ドアを開閉自在に設けた構成としては、作業車両(特許文献1参照)や作業用車両のキャブ構造(特許文献2参照)などが提案されている。特許文献1に記載された作業車両を本願発明の従来例1として、図9には、この作業車両における前方斜視図を示している。
【0004】
図9に示すように、特許文献1の作業車両としては、スキッドステアローダが示されている。そして、キャビン50の前方における昇降口には、ヒンジ52を介して片開き式に開閉できる前面ドア51が設けられている。
【0005】
また、特許文献2に記載されたキャブ構造を本願発明の従来例2として、図10には、フロントドアの移動軌跡を説明するキャブの側面図を示している。特許文献2では、スキッドステアローダのキャブに設けられたフロントドアが、プルアップ式のフロントドアとして構成されている。
【0006】
図10に示すように、フロントドア63は、キャブ60の左右内側面に設けた上案内レール64と下案内レール65によって案内されて、キャブ60の昇降口61を閉じたA位置から、キャブ60の天板部62側に収納されたD位置との間を上下動させることができる。フロントドア63の上下動は、フロントドア63に設けた図示せぬ上部握手や下部握手を持って移動させることができる。
【0007】
フロントドア63の両側部の上部に設けた左右一対の上回転体68が、上案内レール64に係合する構成となっており、フロントドア63の両側部の中央部に設けた左右一対の下回転体69が、下案内レール65に係合する構成となっている。
【0008】
キャブ60の昇降口61を閉じているA位置にあるフロントドア63を持ち上げると、上回転体68は上案内レール64に沿って移動し、下回転体69は下案内レール65に沿って移動を行う。そして、フロントドア63は、A位置の状態からB位置、C位置を通ってD位置に移動することができる。
【0009】
フロントドア63がC位置を通るときには、上回転体68は凸状に屈曲した上案内レール64の最高点66を通過する構成となっている。そして、上回転体68が上案内レール64の最高点66を通過した後では、上回転体68は上案内レール64に沿って下降を行い、上案内レール64の終端部に形成した水平方向に延びた水平部67に案内されることになる。上回転体68が水平部67に入った状態では、フロントドア63はD位置となり、天板部62側に水平状態となって収納されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−228297号公報
【特許文献2】特開2004−130828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載された作業車両では、キャビン50の昇降口には、ヒンジ52を介して片開き式に開閉できる前面ドア51が設けられている。しかし、前面ドア51を開いた状態である昇降口を開放させた状態では、前面ドア51は作業機械であるバケット53の作動領域内に突出した状態となってしまう。そのため、キャビン50内が暑くて、昇降口を開放させた状態において作業を行いたいと考えても、開放した前面ドア51とバケット53とが干渉してしまうため、昇降口を開放させた状態のままでスキッドステアローダの作業を行うことができない。
【0012】
特許文献2に記載されたフロントドア63は、キャブ60の昇降口61を閉じたA位置と天板部62側に水平状態となって収納されたD位置との間を移動することができる構成となっている。しかし、特許文献2には、フロントドア63をA位置とD位置とにおいて、それぞれ機械的にロックしておく構成は開示も示唆もされていない。
【0013】
A位置では、フロントドア63の上端部側が下端部側に対して後傾する姿勢となっており、フロントドア63の自重によってA位置での姿勢が維持されるように構成されている。また、D位置では、一対の上回転体68が水平部67に案内されることで、フロントドア63は水平状態となり、水平状態となったフロントドア63は、フロントドア63の自重によってD位置での姿勢が維持されるように構成されている。
【0014】
しかも、フロントドア63がD位置に到達する前には、上回転体68が凸状に屈曲した上案内レール64の最高点66を通過しなければならない構成となっている。そして、上回転体68が上案内レール64の最高点66を通過した後には、上回転体68は上案内レール64に沿って下降を行い、最終的には、上案内レール64の終端部に形成した水平方向に延びる水平部67内に案内される構成となっている。
【0015】
また、D位置に位置するフロントドア63がA位置に戻るためには、上回転体68が上案内レール64の最高点66を再度通過しなければならない。この構成によって、フロントドア63はフロントドア63の自重によってD位置での姿勢が維持されるように構成されている。
【0016】
しかしながら、昇降口61を開放させた状態のまま、特許文献2の作業車両が坂道を下りながら走行しているときに何らかの衝撃がフロントドア63に加わった場合や、作業車両に設けた作業機からの衝撃が大きい場合などにおいては、上回転体68が上案内レール64の最高点66を乗り越えてしまい、D位置にあったフロントドア63が、車両の前方側に移動して、上回転体68が上案内レール64の最高点66を通過してしまう危険性が生じる。このような状態になると、キャブ60の昇降口61は、フロントドア63によって不意に閉じられてしまう。
【0017】
また、フロントドア63をD位置からA位置に戻すためには、フロントドア63の上端部側の上回転体68を上案内レール64の最高点66を通過させなければならない。そのため、フロントドア63を移動させる操作としては、少なくともC位置を越えてB位置側となるまでの間は、キャブ60内で行わなければならない。フロントドア63がC位置を越えた後では、作業者はキャブ60の外側に出て昇降口61をフロントドア63で閉じる操作を行うことができる。
【0018】
しかし、キャブ60の外側からの操作でフロントドア63を更に下降させるためには、C位置を越えたフロントドア63を支えた状態のまま、作業者はキャブ60の外側に出なければならない。もしも、作業者がキャブ60の外側に出る途中でフロントドア63が下降してしまうと、作業者は下降したフロントドア63とキャブ60との間に挟まれてしまうことになる。
【0019】
本願発明では、これらの問題点を解決し、キャブの昇降口を開閉する前面ドアをプルアップ式の構成にするとともに、前面ドアのロック機構として機械的なロック構造を用いるとともに、前面ドアをキャブの天井における下面側に収納した位置でのロック状態も、前面ドアでキャブの昇降口を閉鎖した位置でのロック状態も、一ヶ所に設けたドアレバーの操作によってキャブの内側及び外側から解除することができるスキッドステアローダを提供することを本願発明の課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願発明の課題は、次に記載する各発明により達成することができる。
即ち、本願発明のスキッドステアローダでは、車体前方から乗員の乗り降りを行うキャブの昇降口に、前記昇降口を開閉する前面ドアを備えたスキッドステアローダにおいて、
前記前面ドアが、プルアップ式にドアを上下方向に移動させて開閉する前面ドアであり、前記前面ドアの開放時に前記前面ドアを上方に持ち上げ、前記キャブの天井下面側に収納した位置において、前記キャブに設けた第1被ロック部材と係合して前記前面ドアを自動ロックする第1ロック部材が、前記前面ドアの上端部に設けられ、前記昇降口を閉鎖するとき、前記キャブに設けた第2被ロック部材と係合して前記前面ドアを自動ロックする第2ロック部材が、前記前面ドアの下端部に設けられ、
前記第2ロック部材を非ロック状態に切替える一対のドアレバーが、前記前面ドアの下端部におけるドアの内側及び外側にそれぞれ設けられ、前記第1ロック部材を非ロック状態に切替える遠隔操作部材が、前記第1ロック部材と前記ドアレバーによって操作される操作部との間を連結して前記前面ドアに設けられ、前記第2ロック部材を非ロック状態に切替える前記ドアレバーの操作により、前記第1ロック部材が非ロック状態に切替えられることを最も主要な特徴としている。
【0021】
また、本願発明では、前記第1ロック部材が、前記前面ドアの上端部における左右幅方向における中央部位に設けられ、前記第2ロック部材が、前記前面ドアの下端部における左右幅方向における中央部位に設けられ、前記遠隔操作部材が、操作用のケーブルを備えた構成であることを主要な特徴としている。
【0022】
更に、本願発明では、前記第1ロック部材が、前記第1被ロック部材と係合及び非係合するラッチ爪と、前記ラッチ爪を前記第1被ロック部材との係合方向に付勢する第1バネと、を有し、前記第1バネの付勢力に抗して前記ラッチ爪を前記第1被ロック部材との非係合方向に牽引する前記ケーブルの一端部が、前記ラッチ爪に取り付けられてなることを主要な特徴としている。
【0023】
更にまた、本願発明では、前記第2ロック部材が、前記第2被ロック部材と係合及び非係合するラッチヘッドと、前記ラッチヘッドを前記第2被ロック部材との係合方向に付勢する第2バネと、前記ドアレバーの回動操作により、前記第2バネの付勢力に抗して前記ラッチヘッドを前記第2被ロック部材との非係合位置に移動させる前記操作部と、を有し、前記操作部に前記一対のドアレバーの回動操作に連動して回動する回動部材を設け、前記ケーブルの他端部が、前記回動部材に取り付けられてなることを主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0024】
本願発明では、前面ドアをプルアップ式のドアとして構成することによって、前面ドアを開けたキャブの昇降口を開放させた状態においても、前面ドアは天井下面側に収納されてキャブ内に収めておくことができる。これによって、キャブの昇降口を開放させた状態においても、前面ドアは作業機と干渉することがなく、キャブの昇降口を開放させた状態のまま作業機による作業を行うことができる。
【0025】
しかも、第1ロック部材及び第2ロック部材は自動ロック構成となっているので、前面ドアをキャブの昇降口に移動させたり、天井下面側に収納させたりするだけで、前面ドアをそれぞれの状態でロックしておくことができる。そして、第1ロック部材と第2被ロック部材とは、それぞれ第1被ロック部材と第2被ロック部材とに対してそれぞれ機械的に確実に自動ロックすることができるので、特許文献2の発明のようにロックされていないものに比べて安全性が向上している。
【0026】
また、ドアレバーを操作するだけで、第1ロック部材及び第2ロック部材をそれぞれロック状態から非ロック状態に切替えることができる。しかも、作業者がキャブ内に居るときには、作業者がドアの内側に設けたドアレバーを操作することで、第1ロック部材と第2被ロック部材とをそれぞれ非ロック状態に切替えることができる。
【0027】
更に、作業者がキャブの外側に居るときには、作業者がドアの外側に設けたドアレバーを操作することで、第2ロック部材を第2被ロック部材に対して非ロック状態に切替えることができる。そして、キャブの外側からの操作だけで前面ドアを昇降させることができるので、前面ドアを閉めるときに上から降りてくるドアに作業者が挟まれてしまう危険もなくなる。
【0028】
本願発明では、前面ドアの上端部に設けた第1ロック部材と、前面ドアの下端部に設けた第2ロック部材と、をそれぞれ前面ドアの左右幅方向における中央部位に設けておくことができる。
このように構成しておくことにより、前面ドアの左右は場方向における中央部で前面ドアをロックすることができ、前面ドアにおける左右のバランスが良好な状態で前面ドアをロックしておくことができる。
【0029】
そして、前面ドアが左右どちらかの方向に傾いてしまうのを防止しておくことができ、第1ロック部材と第1被ロック部材との係合動作、及び第2ロック部材と第2被ロック部材との係合動作が、それぞれスムーズに行われる。
また、遠隔操作部材として操作用のケーブルを備えた構成としておくことにより、ケーブルを前面ドアの枠内等における配置位置を自由に設計することができるようになる。
【0030】
本願発明では、第1ロック部材の構成として、第1バネによって係合方向にバネ付勢されたラッチ爪を用いた構成とすることができ、第2ロック部材の構成として、第2バネによって係合方向にバネ付勢されたラッチヘッドを用いた構成とすることができる。
【0031】
このように第1ロック部材及び第2ロック部材を構成しておくことによって、自動ロックの構成をより簡単に構成しておくことができる。また、ドアレバーの回動操作を回動部材によって取り出す構成としておくことによって、ドアレバーの回動操作によって第1ロック部材を非ロック状態に切替えることが、遠隔操作によって行える。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】スキッドステアローダを前方から見た斜視図である。(実施例)
【図2】前面ドアの移動軌跡を説明するスキッドステアローダの側面図である。(実施例)
【図3】前面ドアの内面側を見た斜視図である。(実施例)
【図4】前面ドアの外面側から見た正面図である。(実施例)
【図5】第1ロック部材の構成を示す要部正面図である。(実施例)
【図6】第2ロック部材の構成を示す要部正面図である。(実施例)
【図7】第2ロック部材によるロック状態を示す要部断面図である。(実施例)
【図8】前面ドアの案内路を示す斜視図である。(実施例)
【図9】作業車両における前方斜視図である。(従来例1)
【図10】フロントドアの移動軌跡を説明するキャブの側面図である。(従来例2)
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わるスキッドステアローダにおける前面ドアの構成としては、以下で説明する構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、配置構成であれば、それらの形状、配置構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0034】
スキッドステアローダ1は、図1に示すように、例えば、ローダ本体2と、走行体3と、キャブ4と、リフトアーム6と、リフトアーム6を回動自在に支持するアーム支持部5と、アームシリンダ7と、バケット9、バケット9を回動させる作業機用シリンダ29等を備えた構成となっている。
【0035】
ローダ本体2は、スキッドステアローダ1の車体を構成しており、車体の左右には一対の走行体3が設けられている。図1では、走行体3として、車体の前側に左右一対の前輪3Aを設け、その後側に左右一対の後輪3Bを設けた構成を示している。しかし、走行体としては、図示は省略しているが車体の左右に一対の履帯を設けた構成としておくこともできる。
【0036】
左右一対の前輪3Aは、それぞれ独立して回転駆動可能に設けられており、左右一対の後輪3Bも、それぞれ独立して回転駆動可能に設けられている。走行体として左右一対の履帯を設けた場合には、左右の履帯はそれぞれ独立して回転駆動可能に設けておくことができる。そして、キャブ4に配した図示せぬ操作レバー装置によって、左右の前輪3A及び後輪3Bの回転数及び回転方向をそれぞれ変えることができ、あるいは、左右の履帯の回転数及び回転方向をそれぞれ変えることができる。
【0037】
このように左右の走行体3におけるそれぞれの回転速度及び回転方向を変更することで、ローダ本体2の姿勢を制御することができる。即ち、スキッドステアローダ1の前後進方向における直進走行や方向変更、スピン旋回等を行わせることができる。
【0038】
キャブ4は、ローダ本体2の前寄りに位置しており、ローダ本体2の上部に搭載されている。キャブ4は、前面の昇降口39に前面ドア10が設けられ、天井4Aを有し、前面の昇降口39を除く他の3面(左右の両面及び後面)が、図示せぬネットガードを有する透明な硬質ガラス等によって覆われている。
【0039】
一対のリフトアーム6の先端側には、両リフトアーム6同士を連結固定する梁部26が設けられている。梁部26上には、キャブ4内への乗降を行うときの足場となるステップが取付けられている。そして、作業者38は、梁部26上のステップを頼りにキャブ4の昇降口39からキャブ4内への乗降を行うことができる。
【0040】
昇降口39にはプルアップ式の前面ドア10が設けられており、前面ドア10を昇降させることによって昇降口39の開閉を行うことができる。また、上方に持ち上げた前面ドア10は、後述するように天井4A内に収納させておくことができる。前面ドア10にも透明な硬質ガラス等が嵌め込まれており、キャブ4内からの前方視界を良好に保つことができる。
【0041】
ローダ本体2の後部には図示せぬエンジン等が、エンジンカバー(不図示)内に格納されている。また、ローダ本体2の左右両側には、一対のサイドフレーム8が設けられている。そして、ローダ本体2の左右後部における各サイドフレーム8には、一対のリフトアーム6の基端部6aを支承する一対のブーム支持部5が設けられている。各ブーム支持部5の上端側では、リフトアーム6の基端部6aがピン等を介して回動可能に支承されている。
【0042】
一対のリフトアーム6は、それぞれのアームシリンダ7の伸縮動作によって一体的に上下方向に回動する。アームシリンダ7の基端側は、各ブーム支持部5の下側におけるサイドフレーム8にピン等を介して回動可能に支持されており、アームシリンダ7の先端側は、シリンダ支持部7aに、ピン等を介して回動可能に支承されている。
【0043】
アームシリンダ7が伸張することにより、リフトアーム6は、上方に向けて回動しながら上昇する。アームシリンダ7が縮退することにより、リフトアーム6は、下方に向けて降下し、図1で示す位置に戻ることができる。
【0044】
リフトアーム6の先端側は、ローダ本体2の前方において下向きに屈曲しており、下向きに屈曲したリフトアーム6の先端部には、作業機械を着脱可能に取り付けることができる。即ち、リフトアーム6の先端部には、図示せぬアタッチメントカプラ等が設けられている。アタッチメントカプラ等を介して、例えば、バケット9やフォーク、スイーパ等の各種作業機械を、着脱可能に取り付けることができる。図示例では、作業機械として、バケット9を取り付けた構成を示しているが、バケット9は、作業機械の一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
図3、図4に示すように昇降口39を開閉する前面ドア10は、矩形形状のドア枠内にガラス10cが嵌め込まれている構成となっており、ドア枠の上辺部における中央部には、第1ロック部材20が設けられている。また、ドア枠の下辺部における中央部には、第2ロック部材30が設けられており、一方のドア枠の側辺部における中央部には、ワイパー駆動部12が設けられている。
【0046】
尚、例えば、第1ロック部材20として、ドア枠の上辺部における左右の対象位置に複数設けておく構成としておくこともできる。即ち、ドア枠の左右方向の中心線を線対称として、複数の第1ロック部材20をドア枠の上辺部に設けておくこともできる。このように構成しておくことにより、前面ドア10を、複数の第1ロック部材20でロックしておくときに、前面ドア10が左右方向に傾いてしまうのを防止して、水平状態を維持するように構成しておくことができる。
【0047】
そして、ドア枠の下辺部には、シール部材28が設けられており、前面ドア10で昇降口39を塞いだときに、前面ドア10の下端部とキャブ4との間での液密性を高めるのに用いられている。また、昇降口39における前面ドア10の両側端部と上端部とキャブ4との当接部に関しては、キャブ4側にシール部材28と同様のシール部材を設けておくことができる。
【0048】
ドア枠の両側辺部には、キャブ4内に設けた案内路35(図2、図8参照)に沿って前面ドア10をガイドする左右一対のガイドローラ11a、及び左右一対のガイドローラ11bが設けられている。ドア枠の両側辺部における上端部側に設けた左右一対のガイドローラ11aは、案内路35のガイド溝36a内に挿入させることができる。また、ドア枠の両側辺部における中央部に設けた左右一対のガイドローラ11bは、案内路35のガイド溝36b内に挿入することができる。
【0049】
案内路35は、前面ドア10の昇降時に、前面ドア10を案内するものとしてキャブ4の両側面部にそれぞれ設けられている。図2には、一方の案内路35を示している。案内路35の構成としては、図7に示すような二つのガイド溝36a、36bを備えた構成となっており、ガイド溝36aは、キャブ4の天井4Aに沿った直線状の形状として構成されており、ガイド溝36bは、途中で屈折した形状に構成されている。
【0050】
そして、図2に示すように昇降口39を閉鎖した(I)位置にある前面ドア10を上方に持ち上げると、左右一対のガイドローラ11aはガイド溝36aに沿って摺動し、左右一対のガイドローラ11bはガイド溝36bに沿って摺動する。そして、図2の(II)位置に前面ドア10)を移動させることができる。(II)位置にある前面ドア10を更に上方に持ち上げていくと、左右一対のガイドローラ11a及び左右一対のガイドローラ11bはそれぞれガイド溝36a及びガイド溝36bに沿って更に摺動し、図2の(III)位置に前面ドア10を移動させることができる。(III)位置では、前面ドア10を天井4Aの下面側に収納させた状態にすることができる。
【0051】
そして、キャブ4の昇降口39を開放させた状態においても、前面ドア10は作業機と干渉することがなく、キャブ4の昇降口39を開放させた状態のまま作業機による作業を行うことができる。
【0052】
図3〜図7を用いて、第1ロック部材20及び第2ロック部材30の構成と作動について説明する。尚、図3では、前面ドア10の内面側10aを示しており、図4では、前面ドア10の外面側10bを示している。図3〜図5に示すように、第1ロック部材20は、図5に示した第1被ロック部材24を収納する係合凹部18と、係合凹部18の外側を摺動自在に塞ぐラッチ爪21と、ラッチ爪21を係合凹部18の外側を塞ぐ方向に付勢する第1バネ22と、を有する構成となっている。図4では、図3においてドア枠における第1ロック部材20の部位を塞いでいるカバープレート16及び第2ロック部材30の部位を塞いでいるカバー15及びドア枠の側部のカバー部材をそれぞれ透過した状態を示している。
【0053】
ラッチ爪21は、前面ドア10の上部ドア枠方向に沿って摺動自在に構成されており、ラッチ爪21の外側面側には、キャブ4に設けた第1被ロック部材24と当接したときに、ラッチ爪21を第1バネ22の付勢力に抗して移動させるための傾斜部が形成されている。図2の(III)位置となるように、前面ドア10を天井4Aの下面側に収納させるために前面ドア10を移動させているときに、ラッチ爪21が第1被ロック部材24に当接すると、第1被ロック部材24によってラッチ爪21の傾斜部が押されることになる。そして、ラッチ爪21は、第1バネ22のバネ力に抗して係合凹部18の入り口を開放させる方向に移動する。
【0054】
第1被ロック部材24が係合凹部18内に入ると、ラッチ爪21は第1バネ22によって係合凹部18の入り口を塞ぐ方向に引き戻されることになる。このように、図2の(III)位置となるように、前面ドア10を天井4Aの下面側に収納させるために移動させることで、前面ドア10を第1ロック部材20によって自動的にロックすることができる。
【0055】
第1ロック部材20によるロック状態の解除は、ラッチ爪21を第1バネ22の付勢力に抗して、係合凹部18の入り口を開放させる方向に移動させることにより行うことができる。ラッチ爪21を第1バネ22の付勢力に抗して移動させるため、ラッチ爪21から延出させたフランジ部23には、遠隔操作用のケーブル17aが固定されている。ケーブル17aを引っ張ることによって、ラッチ爪21を第1バネ22の付勢力に抗して移動させることができる。
【0056】
ケーブル17aは、チューブ17内に挿入されており、チューブ17の一端部から飛出したケーブル17aの一端部が、フランジ部23に取り付けられている。ケーブル17aの他端部は、後述する第2ロック部材30側に連結されている。また、従来から公知の構成のように、チューブ17の端部から飛出したケーブル17aの長さを調整するための長さ調整部材19a、19bが、チューブ17の両端部に設けられている。
【0057】
長さ調整部材19a、19bとしては、チューブ17の端部に固定した雄ネジ部と、ケーブル17aに固定した雌ネジ部とから構成されており、雌ネジ部を雄ネジ部に螺合させる螺合量を調整することにより、チューブ17の端部から飛出したケーブル17aの長さを調整することができる。
【0058】
第2ロック部材30は、図7に示した第2被ロック部材34と係合するラッチヘッド31と、ラッチヘッド31を前面ドア10の下方向側のロック位置に付勢する図示せぬ第2バネと、ラッチヘッド31を第2バネの付勢力に抗して非ロック位置側に移動させる一対のドアレバー27a、27bと、を有した構成となっている。第2ロック部材30の構成としては、従来から公知の建具のドアに用いられているようなドアロック機構を用いることができる。
【0059】
即ち、前面ドア10が下降して図2で示す(II)位置から(III)位置に向かって、前面ドア10におけるドア枠の下端部が回動してくると、キャブ4の昇降口39の下端部から上方に突出した第2被ロック部材34にラッチヘッド31が当接することになる。そして、ラッチヘッド31に形成した傾斜面が第2被ロック部材34によって押圧されると、ラッチヘッド31は図示せぬ第2バネを押圧する方向に移動して、前面ドア10のドア枠内側に没入する。
【0060】
前面ドア10が更に回動して、ラッチヘッド31の位置が第2被ロック部材34を超えた位置に移動すると、図示せぬ第2バネの付勢力によってラッチヘッド31が突出して、ラッチヘッド31の背面側と第2被ロック部材34とが係合することになる。ラッチヘッド31が突出することにより、前面ドア10はロックされることになる。即ち、図2の(II)方向への回動が規制されることになる。
【0061】
ラッチヘッド31が第2被ロック部材34に係合したロック位置から、非係合の非ロック位置への移動は、前面ドア10におけるドア枠の下端部に設けた一対のドアレバー27a、27bを操作回動することにより行う。例えば、ラッチヘッド31の基端部側に、内面にカム面が形成されたリング片を設けるとともに、一対のドアレバー27a、27bの回動軸に設けたカム部材を前記リング片のカム内面に摺接させ、ラッチヘッド31が外方に突出するように第2バネによってバネ付勢しておく。
【0062】
ドアレバー27a又はドアレバー27bを回動操作することにより、ドアレバー27a、27bの回動軸に設けたカム部材で前記リング片のカム内面を第2バネの付勢力に抗して移動させる。このように構成しておくことができる。そして、一対のドアレバー27a、27bを操作回動させることによって、ラッチヘッド31を第2被ロック部材34との係合位置から、非係合位置へと移動させることができる。
【0063】
第2ロック部材30の操作部32であるドアレバー27a、27bの回動軸には、回動部材33が設けられており、回動部材33には、遠隔操作部材としてのケーブル17aの他端部が取り付けられている。そして、ドアレバー27a、27bでラッチヘッド31を非ロック位置に移動させる回動を行うと、この回動を回動部材33で取り出して、ケーブル17aを第2ロック部材30側に引っ張ることができる。
【0064】
ケーブル17aが第2ロック部材30側に引っ張られると、ケーブル17aの一端部を取り付けたラッチ爪21のフランジ部23が、第1バネ22の付勢力に抗して移動することになる。そして、ラッチ爪21を非ロック位置に移動させて、第1ロック部材20を非ロック状態にすることができる。
【0065】
前面ドア10の内側における上端部と下端部には、前面ドア10を移動させるための取手13a、13bがそれぞれ設けられている。前面ドア10が図2の(III)位置にあるときには、取手13aとドアレバー27aとを持って、前面ドア10を天井4Aに収納されたロック位置から昇降口39を閉鎖するロック位置まで簡単に移動させることができる。
【0066】
また、前面ドア10が昇降口39を閉鎖した図2の(I)位置であるロック位置から、前面ドア10を天井4Aに収納された図2の(III)位置であるロック位置に移動させるときには、取手13aを操作して第2ロック部材30のロック状態を解除した後に、取手13aと取手13bとを持って前面ドア10を持ち上げていく。これにより、前面ドア10を天井4Aに収納されたロック位置に移動させることができる。
【0067】
更に、昇降口39を閉鎖している前面ドア10を、キャブ4の外側からの操作で開放させるときには、ドアレバー27bを回動操作して前面ドア10を持ち上げた後に、前面ドア10の下端部又は取手13bを持って前面ドア10を持ち上げていくことにより、前面ドア10を天井4Aに収納されたロック位置に移動させることができる。
【0068】
更にまた、前面ドア10が図2の(III)位置にあるときに、キャブ4の外側からの操作で前面ドア10を降下させて昇降口39を閉鎖させるときには、ドアレバー27aまたはドアレバー27bを操作して、第1ロック部材20のロック状態を解除した後に、ドアレバー27bを持って前面ドア10を移動させることで、前面ドア10が天井4Aに収納されたロック位置から昇降口39を閉鎖するロック位置まで簡単に移動させることができる。
【0069】
即ち、ガイド溝36aが、キャブ4の天井4Aに沿った直線状の形状として構成されているので、キャブ4の外側から前面ドア10を簡単に引き出すことができ、昇降口39を閉鎖するロック位置まで前面ドア10を簡単に移動させることができる。
【0070】
しかも、前面ドア10で昇降口39を閉鎖させるまでの間、前面ドア10の外側に設けドアレバー27bを用いて、前面ドア10を移動させることができるので、前面ドア10の下降時に上から降りてくるドアに作業者38が挟まれてしまう危険性もなくなる。
【0071】
尚、上述したように、複数の第1ロック部材20をドア枠の上辺部に設けた構成としたときであっても、ドアレバー27a、27bの操作によって、これらの複数の第1ロック部材20が非ロック状態となるように構成しておくことが必要である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本願発明は、スキッドステアローダのキャブ昇降口を開閉する前面ドアの構成として好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1…スキッドステアローダ、4…キャブ、4A…天井、10…前面ドア、11a、11b…ガイドローラ、17…チューブ、17a…ケーブル、18…係合凹部、20…第1ロック部材、21…ラッチ爪、22…第1バネ、23…フランジ部、24…第1被ロック部材、27a、27b…ドアレバー、30…第2ロック部材、31…ラッチヘッド、33…回動部材、34…第2被1ロック部材、35…案内路、36a、36b…ガイド溝、39…昇降口、50…キャビン、51…前面ドア、52…ヒンジ、60…キャブ、61…昇降口、63…フロントドア、64…上案内レール、65…下案内レール、66…最高点、67…水平部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前方から乗員の乗り降りを行うキャブの昇降口に、前記昇降口を開閉する前面ドアを備えたスキッドステアローダにおいて、
前記前面ドアが、プルアップ式にドアを上下方向に移動させて開閉する前面ドアであり、
前記前面ドアの開放時に前記前面ドアを上方に持ち上げ、前記キャブの天井下面側に収納した位置において、前記キャブに設けた第1被ロック部材と係合して前記前面ドアを自動ロックする第1ロック部材が、前記前面ドアの上端部に設けられ、
前記昇降口を閉鎖するとき、前記キャブに設けた第2被ロック部材と係合して前記前面ドアを自動ロックする第2ロック部材が、前記前面ドアの下端部に設けられ、
前記第2ロック部材を非ロック状態に切替える一対のドアレバーが、前記前面ドアの下端部におけるドアの内側及び外側にそれぞれ設けられ、
前記第1ロック部材を非ロック状態に切替える遠隔操作部材が、前記第1ロック部材と前記ドアレバーによって操作される操作部との間を連結して前記前面ドアに設けられ、
前記第2ロック部材を非ロック状態に切替える前記ドアレバーの操作により、前記第1ロック部材が非ロック状態に切替えられることを特徴とするスキッドステアローダ。
【請求項2】
前記第1ロック部材が、前記前面ドアの上端部における左右幅方向における中央部位に設けられ、
前記第2ロック部材が、前記前面ドアの下端部における左右幅方向における中央部位に設けられ、
前記遠隔操作部材が、操作用のケーブルを備えた構成であることを特徴とする請求項1記載のスキッドステアローダ。
【請求項3】
前記第1ロック部材が、前記第1被ロック部材と係合及び非係合するラッチ爪と、前記ラッチ爪を前記第1被ロック部材との係合方向に付勢する第1バネと、を有し、
前記第1バネの付勢力に抗して前記ラッチ爪を前記第1被ロック部材との非係合方向に牽引する前記ケーブルの一端部が、前記ラッチ爪に取り付けられてなることを特徴とする請求項2記載のスキッドステアローダ。
【請求項4】
前記第2ロック部材が、前記第2被ロック部材と係合及び非係合するラッチヘッドと、前記ラッチヘッドを前記第2被ロック部材との係合方向に付勢する第2バネと、前記ドアレバーの回動操作により、前記第2バネの付勢力に抗して前記ラッチヘッドを前記第2被ロック部材との非係合位置に移動させる前記操作部と、を有し、
前記操作部に前記一対のドアレバーの回動操作に連動して回動する回動部材を設け、
前記ケーブルの他端部が、前記回動部材に取り付けられてなることを特徴とする請求項3記載のスキッドステアローダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−183931(P2011−183931A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51249(P2010−51249)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】