説明

スクリュ加熱回路を備えた射出装置

【課題】射出装置における射出スクリュの加熱を、スクリュ軸内の内外二重の加熱回路と加熱筒後端の供給ブロックとにより可能となす。
【解決手段】加熱筒の後端に熱媒体の供給口を有する環状の供給ブロックを同心に取付ける。供給ブロックを通して射出スクリュを加熱筒内に回転かつ進退自在に設ける。射出スクリュ内にスクリュ軸の後端から軸方向に穿設した長孔と該長孔に挿入した管体とによる内外二重の加熱回路を設ける。回路入口を射出スクリュの最後退位置で供給口に臨むスクリュ軸後部に穿設する。回路出口を管体後端の密閉部材からスクリュ軸後端部に穿設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出スクリュのスクリュ軸内に熱媒体による加熱回路を備えた射出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のインラインスクリュ式射出装置では、射出スクリュ内に軸心方向に延びる通孔を形成し、その通孔の加熱筒から突出した基端部側部と先端側部に開口を形成して、通孔の先端を加熱筒内と連通する一方、基端部側部の開口部位に連通孔を有するカップリングを嵌合し、そのカップリングを射出スクリュと共に移動するように射出シリンダの可動部にブラケットにより取付けて、カップリングからスクリュ軸内に熱風を圧送できるようにし、熱風発生装置で発生した熱風を通孔を通じて先端開口から加熱筒内に吹き出させて射出スクリュを加熱している。
【0003】
また円柱形状で外周囲にスクリュを有する胴体部の内部に後端から管体を挿入し、その管体により管体先端で折り返す内外二重の加熱回路を胴体部内に成形して、内外回路の後端を熱媒体温度調節装置のスイベルジョイントの回転部に固設し、熱媒体温度調節装置から外回路に供給した熱媒体を内回路を経て熱媒体温度調節装置に循環する可塑化装置もある。
【特許文献1】特開平4−40898号公報
【特許文献2】特開2005−262812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のインラインスクリュ式射出装置が採用のスクリュ加熱手段では、加熱筒と射出シリンダの可動部との間のスクリュ後部の中間部位に、熱風発生装置と接続したカップリングを嵌合していることから、射出スクリュの最前進位置は加熱筒の後端にカップリングが接するところとなって、射出スクリュの前進ストロークが通常のものより短くなるという課題を有する。
【0005】
この前進ストロークは、カップリングの嵌合位置を可動部側に片寄せることで長することはできるが、カップリングが可動部に接近すると軸部からの伝熱による可動部の加熱が強くなり、射出シリンダの作動油や装置の潤滑油が加熱による劣化を来すようになる。このため射出スクリュは加熱筒から突出する軸部を長く形成した特別仕様のものとなる。
【0006】
また射出スクリュ内の通路は一方通行で、スクリュ加熱後の熱風が加熱筒内の溶融材料中に吹き出ることから、熱風の一部が溶融材料中に気泡となって取り込まれ、圧縮により高温となって成形上好ましくない材料焼けの原因となる。このため射出スクリュの加熱手段として採用し難いという課題をも有する。
【0007】
上記従来の可塑化装置のように、管体の挿入によりスクリュ胴体部内に内外二重の加熱回路を形成した場合には、スクリュ後端を連結した熱媒体温度調節装置から外回路に圧送された熱媒体が、スクリュ胴体部を加熱した後に管体先端で内回路に折り返して熱媒体温度調節装置に戻るので、上記一方通行の場合のような課題は生じない。しかし、スクリュ胴体部は内部の管体と共に熱媒体温度調節装置のスイベルジョイントに固設され、熱媒体温度調節装置に後端を支持された状態にあって、シリンダ内にて回転はしても進退移動はできないので、それを加熱筒内の進退移動する射出スクリュの加熱手段として採用することは難しい。
【0008】
この発明の目的は、射出装置における加熱筒内の射出スクリュを、内外二重の加熱回路を採用して加熱することができ、またスクリュ外周囲に熱媒体の供給ブロックを備えるものであっても、射出スクリュの前進ストロークの短縮は許容範囲で済み、スクリュ後端を連結した駆動装置への伝熱による加熱の影響も少ない新たなスクリュ加熱回路を備えた射出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的によるこの発明は、加熱筒の後端に同心に取付けた熱媒体の供給口を有する環状の供給ブロックと、その供給ブロックを通して加熱筒内に回転かつ進退自在に設けた射出スクリュと、スクリュ軸の後端から軸方向に穿設した長孔と該長孔に挿入した管体とにより内外二重に形成され、その管体の先端で折り返すスクリュ軸内の加熱回路と、上記射出スクリュの最後退位置で上記供給口に臨む部位の軸部に穿設して加熱回路の外路と連通したスクリュ軸後部の回路入口と、管体後端の密閉部材からスクリュ軸に穿設して加熱回路の内回路と連通したスクリュ軸後端部の回路出口とからなる、というものである。
【0010】
上記供給口又は回路入口の何れか一方は、供給ブロックの内周面又はスクリュ軸の外周面に設けた環状溝内に開口し、供給ブロックの内周面とスクリュ軸の外周面は、供給ブロックの内面外側に埋設したシールリングにより気密にシールされている、というものである。
【0011】
上記回路出口は、スクリュ軸後端部の外周面に形成した連結用の環状溝内に開口し、その環状溝と該環状溝に内縁を嵌合して互いに結合した一対の割りリングによるジョイントとの間隙を排出部としてなる、というものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、熱媒体の供給口を有する環状の供給ブロックを加熱筒側に片寄せて取付けたので、加熱筒から突出した供給ブロックによる射出ストロークの短縮は許容範囲で済み、通常仕様の長さの射出スクリュに加熱回路を設けることができる。また供給ブロックが加熱筒の後端となるので射出スクリュの挿入も通常仕様の場合と同様に行い得る。
【0013】
またスクリュ軸内の加熱回路を、スクリュ軸の後端から軸方向に穿設した長孔と該長孔に挿入した管体とにより内外二重に形成したものであっても、回路入口と回路出口をスクリュ軸の後部に前後して設けたので、加熱筒内で回転かつ進退移動する射出装置にも支障なく採用することができる。また外回路と接続する回路入口が加熱筒後端の供給ブロック内に位置し、管体内の内回路との関連において外回路に供給された熱媒体がスクリュ軸内を前方へと流動するので、回路入口より後部のスクリュ軸に対する加熱は少なく、また外部に露出する軸部も長いので放熱によるスクリュ後端への伝熱も小さくなることから、駆動装置に対する加熱の影響は生じない。したがって、高温の熱媒体による射出スクリュの加熱が可能となる。
【0014】
また供給ブロックの供給口とスクリュ軸の回路入口は、射出スクリュの最後退位置で接続し、その接続はスクリュ前進により遮断されるので、熱媒体の加熱回路への供給は最後退位置での停止時間に制限され、スクリュ移動中は供給停止となることから、熱媒体による射出スクリュの加熱は射出スクリュの移動と停止の繰返しによる自動的な断続加熱となる。これにより熱媒体の常時供給による連続加熱では過熱し易い高温の熱媒体による加熱を、バルブ装置による断続操作によらず行うことができるので、加熱装置の簡略化ともなる。
【0015】
また回路出口を、スクリュ軸後端部の連結用の環状溝内に開口し、その環状溝とジョイントとの間隙から内回路の加熱後の熱媒体を排出できるようにしたので、回路出口から余熱のある熱媒体が強く噴出するのが防止され、また排出の際の熱交換により媒体温度が降温するので、熱媒体の機外排出を安全に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図中1は加熱筒で、先端にノズル部材(図では省略)を有し、後部上に材料供給口2を有する通常構造のもので、内部に射出スクリュ3を回転かつ進退自在に備える。4は加熱筒1の保持盤で、盤体中央に加熱筒1の後端部が盤体外面から盤体内面まで嵌合して止着してある。5は射出スクリュ3の油圧又は電動の駆動装置の可動部で、その詳細は省略するが通常構造からなり、その可動部5に射出スクリュ3がスクリュ軸31の後端を当接して、一対の割りリングによるジョイント6により連結してある。
【0017】
7は熱媒体の供給ブロックで、内径が加熱筒1の内径と同一の環状ブロックに供給口71を穿設したものからなり、その供給口71が開口した内周面の外側にはシールリング72が埋設してある。この供給ブロック7は供給口71を上側にして開口縁にOリングを嵌めた加熱筒1の後端に同心に取付けてあり、その供給ブロック7を通して上記射出スクリュ3が加熱筒内に挿入してある。
【0018】
8はスクリュ軸31の内部中央に設けた加熱回路で、スクリュ後端から軸方向(フィードゾーン)に穿設した長孔9と、該長孔9に挿入した細径の管体10とにより形成された管体先端で折り返す内外二重の回路8a,8bからなる。また管体10の後端は長孔9の密閉部材11に嵌着してスクリュ軸31に固定してあり、その密閉部材11の前部内には内回路8bの延長路8b′がT状に穿設してある。
【0019】
12はスクリュ軸31の後部に穿設して外回路8aと接続した回路入口で、図2に示すように、射出スクリュ1の最後退位置で、上記供給口71に臨む部位のスクリュ軸後部に穿設してある。この回路入口12は複数でスクリュ軸31の外周面に設けた環状溝12′内に開口し、その環状溝12′を経て供給口71からの熱媒体が複数の回路入口12に流入するようにしてある。場合によっては供給口71が開口した供給ブロック7の内面に鎖線で示すように環状溝71′を設けて、環状溝12′を省略することができる。
【0020】
13はスクリュ軸31の後端部に穿設した複数の回路出口で、外周面に形成した連結用の環状溝14内に開口し、その環状溝14に上記割りリングの結合によるジョイント6の内縁が嵌合してある。また回路出口13は上記密閉部材11の延長路8b′を介して内回路8bと接続し、環状溝14とジョイント6との間隙を排出部として熱媒体を外部に排出できるようにしてある。
【0021】
上記構成では、供給ブロック7の供給口71に熱媒体(例えばホットエア)の管路15を連結して、ホットエアをブロアーから圧送すると、ホットエアは回路入口12から外回路8aに流入し、スクリュ軸部31を加熱しながら長孔9の先端へと流動する。長孔先端に達すると管体先端から内回路8bに流入し、密閉部材11内の延長路8b′を通って回路出口13から排出される。
【0022】
このホットエアの加熱回路8への圧送は、射出スクリュ1が最後退位置にあって、図2に示すように、回路入口12が供給口71に位置し、その供給口71を介して管路15が回路入口12と接続しているときに行われる。射出スクリュ3が最後退位置から前進移動すると、回路入口12の位置が図3に示すように供給口71からずれて、供給口71がスクリュ軸31により塞がれ、加熱回路8と管路15が遮断されて自動的にホットエアの圧送停止となる。
【0023】
したがって、ホットエアによる射出スクリュ3の加熱は、スクリュ後退による材料計量時及びスクリュ前進による材料射出時には行われず、計量後退終了から次の射出前進に移行する間でスクリュ軸31の後部が外部に露出している停止時間(例えば1秒)に制限される。これにより熱媒体による加熱は射出スクリュ3の移動と停止の繰返しにより自動的に生ずる断続加熱となる。
【0024】
また回路入口12より後のスクリュ軸内では熱媒体の流動は生じないので加熱は少なく、外部に露出する軸部も長いので放熱によるスクリュ後端への伝熱も小さくなることから、駆動装置に加熱の影響が及ぶようなこともないので、高温の熱媒体による射出スクリュ3の加熱が可能となる。例えば溶融温度が低温(50〜60℃のワックスでは、スクリュ温度が低いとスクリュ表面に付着して固化するので、高温(400℃)で加熱したホットエアを熱媒体として供給し、これにより射出スクリュ3を加熱して、溶融状態のワックスの付着を防止することができる。
【0025】
上記内回路8bを流動する加熱後の熱媒体は、スクリュ軸後端部の連結用の環状溝14に開口した回路出口13から、環状溝14とジョイント6との間隙を通って外部に排出される。この排出は熱媒体の供給中にのみ生ずるので間欠排出となる。上記間隙からの排出では回路出口13から余熱のある熱媒体が強く噴出するのが防止され、また排出の際のジョイント6との熱交換により媒体温度が降温するので、加熱後の熱媒体を安全に機外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の加熱回路を有する射出装置のスクリュ最後退位置における要部縦断側面図である。
【図2】同上の後部拡大断面図である。
【図3】スクリュ前進時の後部拡大断面図である。
【図4】図2B−B線断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 加熱筒
3 射出スクリュ
31 スクリュ軸後部
5 駆動装置の可動部
6 ジョイント
7 熱媒体の供給ブロック
71 熱媒体の供給口
72 シールリング
8 加熱回路
8a 外回路
8b 内回路
8b′ 内回路の延長路
9 スクリュ軸内の長孔
10 管体
11 長孔の閉塞部材
12 回路入口
13 回路出口
14 連結用の環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒の後端に同心に取付けた熱媒体の供給口を有する環状の供給ブロックと、
その供給ブロックを通して加熱筒内に回転かつ進退自在に設けた射出スクリュと、
スクリュ軸の後端から軸方向に穿設した長孔と該長孔に挿入した管体とにより内外二重に形成され、その管体の先端で折り返すスクリュ軸内の加熱回路と、
上記射出スクリュの最後退位置で上記供給口に臨む部位の軸部に穿設して加熱回路の外回路と連通したスクリュ軸後部の回路入口と、
管体後端の密閉部材からスクリュ軸に穿設して加熱回路の内回路と連通したスクリュ軸後端部の回路出口とからなることを特徴とするスクリュ加熱回路を備えた射出装置。
【請求項2】
上記供給口又は回路入口の何れか一方は、供給ブロックの内周面又はスクリュ軸の外周面に設けた環状溝内に開口し、供給ブロックの内周面とスクリュ軸の外周面は、供給ブロックの内面外側に埋設したシールリングにより気密にシールされていることを特徴とする請求項1記載のスクリュ加熱回路を備えた射出装置。
【請求項3】
上記回路出口は、スクリュ軸後端部の外周面に形成した連結用の環状溝内に開口し、その環状溝と該環状溝に内縁を嵌合して互いに結合した一対の割りリングによるジョイントとの間隙を排出部としてなることを特徴とする請求項1記載のスクリュ加熱回路を備えた射出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−230051(P2008−230051A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−72880(P2007−72880)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000227054)日精樹脂工業株式会社 (293)
【Fターム(参考)】