説明

スクロール型流体機械

【課題】簡単な構成で、スクロールユニットの耐久性向上及び機械損失低減を効果的に実現することができるスクロール型流体機械を提供する。
【解決手段】固定スクロール及び可動スクロール10が協働して潤滑油を含む作動流体の圧縮室または膨張室を区画するスクロール型流体機械であって、作動流体が通過するポートと、ポートが開口され、圧縮室または膨張室の区画によって可動スクロールの端板の背面側にスラスト荷重が作用する台座部とを有するハウジング4を備え、台座部はポートの開口部を含む領域に凹設された溝部72を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の空調に使用される冷凍回路に好適したスクロール型流体機械に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のスクロール型流体機械は、固定スクロール及び可動スクロールが協働して潤滑油を含む作動流体の圧縮室または膨張室を区画するスクロール型流体機械であって、作動流体が通過するポートと、ポートが開口され、圧縮室または膨張室の区画によって可動スクロールの端板の背面側にスラスト荷重が作用する台座部とを有するハウジングを備えている。
そして上記スクロール型流体機械の一例として、ハウジングに、吸入口(吸入ポート)を両スクロールの外周の吸入室に連通させる主吸入孔を形成するとともに、その主吸入孔とは別に吸入口を吸入室に連通する補助吸入孔を形成したスクロール型圧縮機が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3227075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている従来の流体機械の場合、主吸入孔の開口部が可動スクロールの端板等で閉塞されても、補助吸入孔によって作動流体の流路を確保することができるため、作動流体としての冷媒ガスに含まれる潤滑油が潤滑を必要とする可動スクロールの背面側等の各部に行き渡ってスクロールユニットの潤滑性を向上することができる。
しかしながら、上記従来技術では、可動スクロールの背面の一部に局所的に異常摩耗が生じるおそれがある点につき格別な配慮がなされておらず、スクロールユニットの更なる潤滑性向上、ひいては効果的な耐久性向上及び機械損失低減を実現することについて依然として課題が残されている。
【0005】
本発明は上述の事情に基づいてなされ、その目的とするところは、簡単な構成で、スクロールユニットの耐久性向上及び機械損失低減を効果的に実現することができるスクロール型流体機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のスクロール型流体機械は、固定スクロール及び可動スクロールが協働して潤滑油を含む作動流体の圧縮室または膨張室を区画するスクロール型流体機械であって、作動流体が通過するポートと、ポートが開口され、圧縮室または膨張室の区画によって可動スクロールの端板の背面側にスラスト荷重が作用する台座部とを有するハウジングを備え、台座部はポートの開口部を含む領域に凹設された溝部を有する(請求項1)。
【0007】
好ましくは、溝部はハウジングの内周面に沿って形成され(請求項2)、具体的には、溝部はハウジングの内周面に沿う円環形状をなす(請求項3)。
好ましくは、溝部は開口部から離間するにつれて可動スクロール径方向における断面積が小となる(請求項4)。
好ましくは、溝部は可動スクロールと連結される軸の軸心を基準に可動スクロールの径方向において開口部の反対側に終端部を有する(請求項5)。
【0008】
更に具体的には、台座部と端板との間にはスラストプレートが設けられ、スラストプレートは背面が摺接される摺接面によって可動スクロールのスラスト荷重を受ける(請求項6)。
好ましくは、スラストプレートは開口部から離間するにつれて摺接面の面積が大となる
(請求項7)。
【0009】
好ましくは、スラストプレートは開口部から離間するにつれて溝部を塞ぐ形状をなす(請求項8)。
好ましくは、可動スクロールの渦巻座標原点は可動スクロールと連結される軸の軸心を基準に可動スクロールの径方向において開口部の反対側に位置づけられる(請求項9)。
【0010】
また、具体的には、本発明のスクロール型流体機械は可動スクロールの旋回軸線が水平となる横置き型である(請求項10)。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のスクロール型流体機械によれば、スクロール型流体機械の一例としてのスクロール圧縮機では、ハウジングに設けられた吸入ポートを通過した作動流体が可動スクロールと固定スクロールとによって区画形成された圧縮室内で圧縮される。一方、スクロール型流体機械の一例としてのスクロール膨張機では、可動スクロールと固定スクロールとによって区画形成された膨張室内で膨張された作動流体がハウジングに設けられた吐出ポートを通過し外部に流出する。ここで、台座部がポートの開口部を含む領域に凹設された溝部を有することにより、ポートの開口部を通過する作動流体は、溝部を流れて可動スクロールの端板の背面側の広範囲に亘って行き渡る。この過程において、作動流体に含まれる潤滑油が溝部の壁面に接触することにより結露し溝部から流出して台座部や背面に付着し、或いは、溝部から流出した作動流体自体が台座部や背面に接触することによって台座部及び背面に直接に結露して付着するため、背面側の広範囲に亘って油膜を形成することができる。
【0012】
特にスクロール圧縮機の場合には、溝部を流れる冷媒は、区画された圧縮室に徐々に取り込まれることから、開口部から離間するにつれて流れが停滞し、開口部からの離間箇所においては油膜も形成され難くなって異常摩耗が生じ易くなるものの、この問題を解決することができる。従って、台座部の開口部を含む領域に溝部を形成するだけの簡単な構成で、スクロールユニットの耐久性向上及び機械損失低減を効果的に実現することができる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、溝部はハウジングの内周面に沿って形成されることにより、ハウジングがガイドとなって作動流体ひいては潤滑油を背面側の広範囲に亘ってより円滑に行き渡らせることができるため、更に効果的に背面側の広範囲に亘って油膜形成が可能である。
請求項3記載の発明によれば、溝部はハウジングの内周面に沿う円環形状をなすことにより、作動流体を背面側の全範囲に亘って行き渡らせることが可能であり、更に効果的に背面側の広範囲に亘って油膜形成が可能である。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、溝部は開口部から離間するにつれて可動スクロール径方向における断面積が小となることにより、溝部の開口部からの離間箇所においては溝部に溜まった潤滑油を積極的に溢れさせることができるため、更に効果的に背面側の広範囲に亘って油膜形成が可能である。
【0015】
請求項5記載の発明によれば、溝部は可動スクロールと連結される軸の軸心を基準に可動スクロールの径方向において開口部の反対側に終端部を有することにより、作動流体を背面側の広範囲に亘って行き渡らせることが可能であり、しかも、終端部の位置を調整することによって溝部に溜まった潤滑油を溢れさせる位置をも調整可能となることから、更に効果的に背面側の広範囲に亘って油膜形成が可能である。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、台座部と端板との間にはスラストプレートが設けられ、スラストプレートは背面が摺接される摺接面によって可動スクロールのスラスト荷重を受ける。この場合には、作動流体が溝部を流れる過程において、作動流体に含まれる潤滑油が溝部から流出して摺接面や背面に付着したり、或いは、溝部から流出した作動流体自体が摺接面や背面に接触することによって摺接面や背面に直接に結露して付着したりされるため、摺接面の広範囲に亘って油膜形成が可能である。
【0017】
請求項7記載の発明によれば、スラストプレートは開口部から離間するにつれて摺接面の面積が大となることにより、溝部の開口部からの離間箇所においては摺接面に作用する作動流体の圧力、すなわち面圧を積極的に低減することができ、このような面圧低下により摺接面に潤滑油を効果的に付着させることができるため、更に効果的に摺接面に油膜形成が可能である。
【0018】
請求項8記載の発明によれば、スラストプレートは開口部から離間するにつれて溝部を塞ぐ形状をなすことにより、潤滑油を溝部へ流入させないで摺接面に積極的に導くことができるため、更に効果的に摺接面に油膜形成が可能である。
請求項9記載の発明によれば、可動スクロールの渦巻座標原点は可動スクロールと連結される軸の軸心を基準に可動スクロールの径方向において開口部の反対側に位置づけられる。一般に可動スクロールのスラスト荷重は可動スクロールの渦巻座標原点近傍で変動することから、変動するスラスト荷重を面圧低下されて油膜が好適に形成されたた摺接面で受けることができるため、スクロールユニットの更なる耐久性向上及び機械損失低減を図ることができる。
【0019】
請求項10記載の発明によれば、上記発明を可動スクロールの旋回軸線が水平となる横置き型のスクロール型流体機械に適用するのが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機を示した断面図である。
【図2】図1の圧縮機のフロントハウジング内をII−II方向から示した図である。
【図3】図2の可動スクロールの旋回が位相で180°進んだ状態を示した図である。
【図4】図1の圧縮機のフロントハウジング内をIV−IV方向から示した図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機を示した断面図である。
【図6】図5の圧縮機のフロントハウジング内をVI−VI方向から示した図である。
【図7】図6の可動スクロールの旋回が位相で180°進んだ状態を示した図である。
【図8】図5の圧縮機のフロントハウジング内をVIII−VIII方向から示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の第1実施形態に係るスクロール圧縮機(スクロール型流体機械)1を示し、この圧縮機1は車両を空調するための冷凍回路に組み込まれ、冷凍回路を循環する冷媒(作動流体)の圧縮に使用される。
圧縮機1はリアハウジング2及びフロントハウジング(ハウジング)4を備え、リアハウジング2とフロントハウジング4との間にはスクロールユニット6が挟持されている。スクロールユニット6は各ハウジング2,4に固定された固定スクロール8と、この固定スクロール8に対して噛み合うように組付けられた可動スクロール10とからなる。
【0022】
圧縮機1は可動スクロール10の旋回軸線が水平となる横置き型スクロール圧縮機であって、可動スクロール10の旋回運動によりスクロールユニット6は冷媒の吸入から圧縮を経て吐出までの一連のプロセスを連続して実行する。
より詳しくは、リアハウジング2内にはその端板とスクロールユニット6の固定スクロール8との間に吐出室12が形成され、この吐出室12は固定スクロール8の端板8aに形成された吐出孔(図示しない)にリードバルブタイプの吐出弁14を介して接続可能である一方、リアハウジング2に形成した吐出ポート(図示しない)を介して冷凍回路の冷媒循環経路に接続されている。
【0023】
フロントハウジング4の外周壁4aには冷媒の吸入ポート(ポート)16が凹設され、冷媒循環経路から吸入ポート16経て導入された冷媒はスクロールユニット6内に吸入される。
一方、フロントハウジング4内には駆動軸(軸)18が配置され、この駆動軸18は大径端部20及び小径軸部22を有する。大径端部20はニードル軸受24を介してフロントハウジング4に回転自在に支持され、小径軸部22はボール軸受26を介してフロントハウジング4に回転自在に支持されている。更に、小径軸部22とフロントハウジング4との間にはリップシール28が配置され、このリップシール28はフロントハウジング4内を気密に区画している。
【0024】
駆動軸18の小径軸部22はフロントハウジング4から突出し、この突出端が電磁クラッチを内蔵した駆動プーリ30に連結され、この駆動プーリ30は軸受32を介してフロントハウジング4に回転自在に支持されている。駆動プーリ30はベルトを介して車両のエンジン側の出力プーリに接続され、エンジンからの動力を受けて回転される。従って、エンジンの駆動中、駆動プーリ30内の電磁クラッチがオン作動されていれば、駆動軸18は駆動プーリ30とともに回転される。
【0025】
一方、駆動軸18の大径端部20からは可動スクロール10に向けてクランクピン34が突出され、このクランクピン34は偏心ブッシュ36及びニードル軸受38を介して可動スクロール10のボス40を支持している。従って、駆動軸18が回転されると、クランクピン34及び偏心ブッシュ36を介して可動スクロール10が旋回運動する。
更に、フロントハウジング4と可動スクロール10の端板10aとの間には自転阻止機構42(図2参照)が配置されている。
【0026】
固定スクロール8はその端板8aと一体成形された固定渦巻体50を有し、可動スクロール10もその端板10aと一体成形された可動渦巻体52を有している。固定及び可動渦巻体50,52の内外面はその中央端部を除き、インボリュート曲面から形成されている。
なお、上述した吐出孔は、固定渦巻体50の中央端部54の近傍に位置付けられ、この中央端部54の内面との間には一定のクリアランスが確保されている。
【0027】
固定渦巻体50の先端部には固定チップシール56が設けられ、可動渦巻体52の先端部には可動チップシール58が設けられている。固定渦巻体50及び端板10aは固定チップシール56を介して互いに摺接され、可動渦巻体52及び端板8aは可動チップシール58を介して互いに摺接される。固定及び可動スクロール8,10間でのこれらの摺接により吸入ポート16から導入された冷媒がスクロールユニット6内に吸入され、固定及び可動スクロール8,10が協働することにより固定及び可動渦巻体50,52間にはミスト状の潤滑油を含む冷媒ガスの圧縮室(圧縮室または膨張室)60が区画して形成され、上述した一連のプロセスが連続して実行される。
【0028】
より詳しくは、フロントハウジング4には、外周壁4aの内側に台座部62が円環状に形成されている。台座部62には、可動スクロール10の端板10aの背面64側にて駆動軸18の軸線方向、換言すると可動スクロール10の旋回軸線方向に、圧縮室60の区画形成に伴い発生する圧縮反力によって生じるスラスト荷重が作用する。また、背面64と対向する側の台座部62の台座面66には、吸入ポート16に連通する吸入孔68が開口され、この吸入孔68の開口部70を含む領域に溝部72が凹設されている。
【0029】
以下、図2〜4を参照して、本実施形態の溝部72及びスラストプレート74の形状、及び、冷媒ガス及び冷媒ガスに含まれる潤滑油の流れについて詳しく説明する。なお、これらの図中において冷媒ガス及び潤滑油の流れは、見える流れについては実線で示し、スラストプレートで隠れる流れは破線で示す。
【0030】
図2〜4から明らかなように、溝部72はフロントハウジング4の内周面4bに沿って可動スクロール10の径方向における断面積が略同一の円環形状をなして形成されている。また、台座部62と端板10aとの間には環形状のスラストプレート74が配置され、スラストプレート74には可動スクロール10の旋回に伴い背面64が摺接され、背面64が摺接されるスラストプレート74の摺接面76は可動スクロール10のスラスト荷重が直接に作用するスラスト受け面として機能している。
【0031】
図4に示されるように、スラストプレート74は、自転阻止機構42を背面64側に露出させるべく溝部72の一部を塞ぐようにして可動スクロール10の径方向でみて凸状となる凸部78と、可動スクロール10の径方向でみて溝部72よりも自転阻止機構42側に凹状となる凹部80とが交互に連続した平面視凹凸の環形状をなしている。
【0032】
吸入ポート16から導入された冷媒ガスは、吸入孔68を経て開口部70から吐出され、流れを遮断されないで溝部72を流れてフロントハウジング4内の下部まで行き渡る。この過程において、冷媒ガスはスクロールユニット6に適宜吸入されて圧縮室60が区画される一方、冷媒ガスに含まれるミスト状の潤滑油が溝部72の壁面に接触することにより結露し、冷媒ガスとともに液状の潤滑油が溝部72を流下する。
【0033】
液状の潤滑油の一部は、溝部72を流下する際にスラストプレート74を超えて溝部72から流出して摺接面76に付着し、フロントハウジング4内の下部においても摺接面76に油膜が好適に形成される。
また、冷媒ガスが溝部72を流下する過程において、冷媒ガスの一部はスラストプレート74を超えて溝部72から流出する。この流出した冷媒ガス自体が摺接面76及び背面64に接触することによってミスト状の潤滑油が摺接面76及び背面64に直接に結露して付着されるため、摺接面76に油膜が好適に形成される。
【0034】
上述したように、第1実施形態の圧縮機1では、溝部72を有することにより、吸入ポート16から導入された冷媒ガスは開口部70から吐出され、溝部72を流れて摺接面76の広範囲に亘って行き渡る。この過程において冷媒ガスに含まれる潤滑油が溝部72の壁面に接触することにより結露し溝部72から流出して摺接面76や背面64に付着したり、或いは、溝部72から流出した冷媒ガス自体が摺接面76や背面64に接触することによって摺接面76や背面64に直接に結露して付着するため、摺接面76の広範囲に亘って油膜を形成することができる。
【0035】
これより、溝部72を流れる冷媒ガスは、区画された圧縮室60に徐々に取り込まれることから、開口部70から離間するにつれて流れが停滞し、特にフロントハウジング内の下部においては摺接面76の油膜も形成され難くなって異常摩耗が生じ易くなるものの、この問題を解決することができる。従って、台座部62の開口部70を含む領域に溝部72を形成するだけの簡単な構成で、スクロールユニット6の耐久性向上及び機械損失低減を効果的に実現することができる。
【0036】
また、溝部72はフロントハウジング4の内周面4bに沿って形成されることにより、フロントハウジング4がガイドとなって冷媒ひいては潤滑油を摺接面76の広範囲に亘ってより円滑に行き渡らせることができ、更に溝部72はフロントハウジング4の内周面4bに沿う円環形状をなすことにより、冷媒を摺接面76の全範囲に亘って行き渡らせることが可能となるため、フロントハウジング4内の下部における摺接面76に効果的に油膜を形成することができる。
【0037】
図5は本発明の第2実施形態に係るスクロール圧縮機(スクロール型流体機械)88を示している。なお、第1実施形態に係る圧縮機1と同様の構成については。同じ符号を付して説明を省略するか或いは符号を省略する。
以下、図6〜8を参照して、本実施形態の溝部90及びスラストプレート92の形状、及び、冷媒ガス及び冷媒ガスに含まれる潤滑油の流れについて説明する。なお、これらの図中において冷媒ガス及び潤滑油の流れは、見える流れについては実線で示し、スラストプレートで隠れる流れは破線で示す。
【0038】
図6〜8から明らかなように、溝部90はフロントハウジング4の内周面4bに沿って可動スクロール10の径方向における断面積が開口部70から離間するにつれて小さくなる環形状に形成されている。また、スラストプレート92は開口部70から離間するにつれてその摺接面94の面積が大となる拡大摺接部96を有して形成され、拡大摺接部96はフロントハウジング4内の下部において溝部90を塞いでいる。
【0039】
また、図8に示されるように、可動スクロール10の渦巻座標原点Oは可動スクロール10と連結される駆動軸18の軸心Cを基準に可動スクロール10の径方向において開口部70の反対側、すなわち拡大摺接部90側に位置づけられる。
上述したように、第2実施形態の圧縮機88では、溝部90の断面積を開口部70から離間するにつれて小さくすることにより、図8に示されるように、溝部90の開口部70からの離間箇所、すなわちフロントハウジング4内の下部においては溝部90に溜まった潤滑油を積極的に溢れさせ、摺接面94に導くことができるため、フロントハウジング4内の下部における摺接面94に更に効果的に油膜を形成することができる。
【0040】
また、拡大摺接部96を形成することにより、フロントハウジング4内の下部においては摺接面94に作用する冷媒の圧力、すなわち摺接面94の面圧を積極的に低減することができ、このような面圧低下により拡大摺接部96の摺接面94に潤滑油を効果的に付着させることができるため、フロントハウジング4内の下部における摺接面94に更に効果的に油膜を形成することができる。
【0041】
更に、拡大摺接部96が溝部90を塞ぐ形状をなすことにより、潤滑油を溝部90へ流入させないで拡大摺接部96の摺接面94に積極的に導くことができるため、フロントハウジング4内の下部における摺接面に更に効果的に油膜を形成することができる。
【0042】
また、拡大摺接部96側に可動スクロール10の渦巻座標原点Oを位置づけることにより、一般に可動スクロール10のスラスト荷重は可動スクロール10の渦巻座標原点O近傍で変動することから、変動するスラスト荷重を面圧低下されて油膜が好適に形成されたた拡大摺接部96の摺接面94で受けることができるため、スクロールユニット6の更なる耐久性向上及び機械損失低減を図ることができる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に制約されるものではなく種々の変形が可能である。
例えば、本発明の溝部72,90は必ずしも環形状に形成される必要はなく、駆動軸18の軸心Cを基準に可動スクロール10の径方向において開口部70の反対側に終端部(図示しない)を形成し、溝部72,90をΩ状に形成しても良い。この場合にも冷媒を摺接面76,94の広範囲に亘って行き渡らせることが可能であり、しかも、この終端部の位置を調整することによって溝部72,90に溜まった潤滑油を溢れさせる位置をも調整可能となることから、更に効果的にフロントハウジング4内の下部における摺接面76,94に油膜形成が可能である。
【0044】
また、本発明のスラストプレート74,92の形状は凸部78や凹部80、或いは拡大摺接部96が適宜形成されるのであれば図示した形状に限定されない。
更に、本発明の圧縮機では必ずしもスラストプレート74,92を要していなくても良く、少なくとも溝部72,90を有する限りは台座部62の台座面66が背面64に摺接する構造としても同様の効果を得ることが可能である。
【0045】
最後に、本発明は、横置き型のスクロール圧縮機のみならず、縦置き型にも適用可能であり、冷媒の膨張室が区画形成されるスクロール膨張機などのスクロール型流体機械全般に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1,88 スクロール圧縮機(スクロール型流体機械)
4 ハウジング
4b 内周面
8 固定スクロール
10 可動スクロール
10a 端板
16 吸入ポート(ポート)
18 駆動軸(軸)
60 圧縮室(圧縮室または膨張室)
62 台座部
64 背面
72,90 溝部
74,92 スラストプレート
76,94 摺接面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定スクロール及び可動スクロールが協働して潤滑油を含む作動流体の圧縮室または膨張室を区画するスクロール型流体機械であって、
前記作動流体が通過するポートと、前記ポートが開口され、前記圧縮室または前記膨張室の区画によって前記可動スクロールの端板の背面側にスラスト荷重が作用する台座部とを有するハウジングを備え、
前記台座部は前記ポートの開口部を含む領域に凹設された溝部を有することを特徴とするスクロール型流体機械。
【請求項2】
前記溝部は前記ハウジングの内周面に沿って形成されることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
【請求項3】
前記溝部は前記ハウジングの内周面に沿う円環形状をなすことを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
【請求項4】
前記溝部は前記開口部から離間するにつれて前記可動スクロールの径方向における断面積が小となることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
【請求項5】
前記溝部は前記可動スクロールと連結される軸の軸心を基準に前記可動スクロールの径方向において前記開口部の反対側に終端部を有することを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
【請求項6】
前記台座部と前記端板との間にはスラストプレートが設けられ、前記スラストプレートは前記背面が摺接される摺接面によって前記可動スクロールのスラスト荷重を受けることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。
【請求項7】
前記スラストプレートは前記開口部から離間するにつれて前記摺接面の面積が大となることを特徴とする請求項6に記載のスクロール型流体機械。
【請求項8】
前記スラストプレートは前記開口部から離間するにつれて前記溝部を塞ぐ形状をなすことを特徴とする請求項6に記載のスクロール型流体機械。
【請求項9】
前記可動スクロールの渦巻座標原点は前記可動スクロールと連結される軸の軸心を基準に前記可動スクロールの径方向において前記開口部の反対側に位置づけられることを特徴とする請求項7に記載のスクロール型流体機械。
【請求項10】
前記可動スクロールの旋回軸線が水平となる横置き型であることを特徴とする請求項1に記載のスクロール型流体機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−241748(P2011−241748A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−114158(P2010−114158)
【出願日】平成22年5月18日(2010.5.18)
【出願人】(000001845)サンデン株式会社 (1,791)
【Fターム(参考)】