説明

スターリング発電機

【課題】より一層の熱効率の向上を図るとともに、軽量、小型化の下、可搬性を図ったスターリング発電機を提供する。
【解決手段】本発明に係るスターリング発電機は、電動発電機2の駆動力で回転する出力軸8と軸受9a,9b,…を介して取り付けられ、かつ前記出力軸8の軸中心線に対し、斜めに交差させる軸中心線を持つように配置した斜板軸20と、この斜板軸20に斜板12を介して接続された伝達軸14とこの伝達軸14に軸受16を介して接続されたピストンロッド13a,13b,…とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スターリング発電機に係り、スターリング発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スターリング機関は、省エネルギ対策の一環として見直しおよび強化がなされ、これに伴ってコジェネレーションの熱機関への適用や超電導のパルス管冷凍機への適用、あるいは可搬式スターリング発電機への改良等、熱心な研究が行われ、その成果、発展が期待されている。
【0003】
このように、期待度合の高いスターリング機関には、種々のタイプのもの、例えば原理的なもの、多気筒タイプのもの、斜板タイプのもの等がある。
【0004】
原理的なタイプのスターリング機関は、例えば、特許文献1に見られるように、パワーピストンを内蔵した2つのパワーシリンダ間に再生熱交換器を閉流路に構成し、再生熱交換器の一側端と一方のパワーシリンダとの間の流路に高温熱交換器を設けて作動ガスを加熱する一方、再生熱交換器の他側端と他方のパワーシリンダとの間の流路に低温熱交換器を設けて作動ガスを冷却する構成になっている。
【0005】
このときの各パワーピストンを駆動するピストンロッドは、回転角(位相角)を約90度ずらして出力軸となるクランク軸に接続するとともに、各パワーピストン内の作動ガスが移動−膨張−移動−圧縮を連続的に繰り返し、各パワーピストンの挙動により出力軸にエネルギ(駆動力)が取り出されている。
【0006】
また、多気筒タイプのスターリング機関は、例えば、特許文献2に見られるように、水平方向に互いに対向配置し、往復動する一対の膨張ピストンと、鉛直方向に往復動する一つの複動型の圧縮ピストンを備え、一対の膨張ピストンを互いが同位相で往復するようクランクシャフトに接続するとともに、圧縮ピストンを一対の膨張ピストンに対し、一定の位相差で往復動させ、しかも一対の膨張ピストンの軸心が圧縮ピストンの軸心と同一平面になるようにクランクシャフトに接続させる構成にし、クラッチシャフトを軸支するベアリングへの偏荷重を抑制したものである。
【0007】
また、斜板タイプのスターリング機関は、例えば、特許文献3に見られるように、回転軸の軸心に対し、交差させて斜板を設けるとともに、この斜板上にシューを設け、シュー上にガイドピストンを摺動させ、回転軸および斜面の回転力をガイドピストンに往復動の駆動力として与える構成にしたものである。
【0008】
このように、スターリング機関は、従来から数多くのタイプが実現しており、用途に応じて使い分けられていた。
【特許文献1】特開平1−249948号公報(特許第2818169号)
【特許文献2】特開平1−280668号公報(特許第2710784号)
【特許文献3】特開平5−312242号公報(特許第3043900号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1〜3等に見られるスターリング機関は、運転中、騒音が極めて低く、しかも、熱効率も内燃機関に較べて比較的高い優れた外燃機関ではあるが、それでも幾つかの問題を抱えている。
【0010】
すなわち、この種の機関は、パワーピストン内の作動ガスを高温、高圧で運転し、しかもパワーピストンの回転角(位相角)を約90°ずらす構造であり、さらに、出力軸の回転運転をパワーピストンの往復運動に変換する構造であるため、機関全体として大型化し、かつ重量化する不具合、不都合があった。
【0011】
また、この種の機関は、構成要素を接続する機構体に大きな作用力が働くため、機械損失が多くなり、熱効率の低下を招く要因になっている。
【0012】
また、斜板タイプのように、斜板上に、例えば4つのピストン軸を摺動させる、いわゆるダブルアクティングタイプでも、回転運動から往復運動に変換させる際、変換機構が複雑な方向の動きをし、この動きに伴って大きな作用力が働くため、機関全体を何らかの工夫でコンパクトにできても、耐久性に乏しく、機械損失も多くなり、熱効率の低下を招く要因になっていた。
【0013】
本発明は、このような背景技術に照らしてなされたもので、より一層の熱効率の向上を図るとともに、軽量、小型化の下、可搬性を図ったスターリング発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るスターリング発電機は、上述の目的を達成するために、電動発電機の駆動力で回転する出力軸と軸受を介して取り付けられ、かつ前記出力軸の軸中心線に対し、斜めに交差させる軸中心線を持つように配置した斜板軸と、この斜板軸に斜板を介して接続された伝達軸と、この伝達軸と軸受を介して接続されたピストンロッドとを備えたものである。
【0015】
また、本発明に係るスターリング発電機は、上述の目的を達成するために、電動発電機の駆動力で回転する出力軸と軸受を介して取り付けられ、かつ前記出力軸の軸中心線に対し、斜めに交差させる軸中心線を持つように配置した斜板軸と、この斜板軸に接続された斜板および2股軸と、この2股軸に接続されたアーム回転体と、このアーム回転体に軸受を介して取り付けられた駆動軸と、この駆動軸に軸受を介して取り付けられたピストンロッドとを備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るスターリング発電機は、組立て構成要素をより一層少なくさせる構成にしたので、機械損失を少なくさせて熱効率をより一層向上させることができ、軽量、小型の下、可搬性を容易に実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るスターリング発電機の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るスターリング発電機の第1実施形態の概略全体平面図である。
【0019】
本実施形態に係るスターリング発電機は、ハウジング1内に収容され、起動時、電動機として機能し、その後、発電機として機能する電動発電機2と、この電動発電機2に軸を介して接続し、回転運動を揺動運動に変える斜板装置3と、この斜板装置3の揺動運動に応動してピストン4a,4bに往復運動させるピストン装置5とを備える構成になっている。
【0020】
電動発電機2は、ステータ6と回転子コイル7を備えた出力軸8とを組み合せて構成するとともに、出力軸8は軸受9a,9b,9cを介して取り付けられ、出力軸8の軸端に設けた潤滑油循環ポンプ10から潤滑油通路11aを介して軸受9a,9b,9cに潤滑油を供給するようになっている。
【0021】
また、潤滑油循環ポンプ10は、潤滑油通路11aおよび斜板装置3の潤滑油通路11b,11c等を介して軸受9d,9e等に潤滑油を供給している。なお、潤滑油循環ポンプ10には、ハウジング1内に設けた戻り通路、油溜り等を介して潤滑油を戻す循環系(図示せず)が設けられている。
【0022】
また、斜板装置3は、電動発電機2の出力軸8に軸受9d、9eを介して取り付けられ、しかも出力軸8の軸中心線CLに対し、斜めに交差させる軸中心線CLを持つ、斜板軸20と、この斜板軸20と軸受9d,9eを介して接続される板状の斜板12と、この斜板12の縁端に接続され、ピストン装置5のピストンロッド13a,13bの開口内部空間Eに収容される伝達軸14と、内径側にスベリ軸受16を設け、伝達軸14と接続される球面軸受15と、ピストンロッド13の往復移動を案内し、片方に開口を設けた筒状のガイド22と、斜板軸12に接続させて支持する回転軸23とを備え、出力軸8、斜板軸12、回転軸23の回転運動に対し、斜板12を点Pを基点に揺動させる構成になっている。
【0023】
なお、回転軸23は、回転可能なように軸受9f,9gによって支持されている。
【0024】
一方、ピストン装置5は、シリンダ17a,17bのそれぞれに収容され、シール部17を備えるピストンロッド13a,13bの駆動力により往復動するピストン4a,4bと、シリンダ17a,17bの周辺に設けられ、シリンダ17a,17bから高温熱交換器(図示せず)を介して供給される作動ガスを再生する再生器18a,18bと、再生器18a,18bからの作業ガスを冷却させてシリンダ17a,17bに再び戻す低温熱交換器19a,19bとを備え、作動ガス、例えばヘリウムガスの膨張、圧縮の繰返しをピストン4a,4bの往復動によって行わせている。
【0025】
図2は、図1のA−A矢視方向から見て切断したときの斜板装置3の正面図である。
【0026】
斜板装置3は、ハウジング1の横断面中央に斜板軸20を接続した斜板12を配置している。この斜板12は、90°ピッチの等配位置に振り分けて4つの伝達軸14を備えている。
【0027】
球面軸受15は、ピストンロッド13a,13b,13c,13dの開口内部空間壁との間に隙間24を形成している。
【0028】
なお、斜板12、伝達軸14、スベリ軸受16、球面軸受15、ピストンロッド13a,13b,13c,13dは、側面に開口21を備えたガイド22内に収容されている。
【0029】
次に、本実施形態に係るスターリング発電機の作用を説明する。
【0030】
斜板装置3は、電動発電機2から与えられる回転駆動力を揺動運動に変えるようになっている。すなわち、電動発電機2から出力軸8に駆動力が与えられると、出力軸8は回転し、その回転力は出力軸8に軸受9d、9eを介して取り付けられた斜板軸20に与えられる。
【0031】
このとき、斜板軸20の軸中心線CLが出力軸8の軸中心線CLに対し、斜めになっているので、斜板12は点Pを基点に揺動する。
【0032】
点Pを基点に揺動すると、揺動運動中、斜板12の縁端に設けた4つの伝達軸14は、軌跡「8」の字を描く。これに伴って、球面軸受15も軌跡「8」の字を描く。この場合、球面軸受15とピストンロッド13a,13b,13c,13dの開口空間内部壁との間に隙間24を形成しているので、伝達軸14、球面軸受15は軌跡「8」の字の挙動を行うことができる。
【0033】
伝達軸14等が軌跡「8」の字の挙動を行うと、ピストンロッド13a,13b,13c,13dは往復運動し、ピストン4a,4bが作動ガスに対し、膨張、圧縮の仕事を繰返し行わせる。
【0034】
このように、本実施形態に係るスターリング発電機は、電動発電機2から与えられる回転運動を揺動運動に変える斜板装置3を設けるとともに、斜板装置3に設けた伝達軸14に軌跡「8」の字の挙動を行わせ、この挙動に対応して応動し、ピストンロッド13a,13b,13c,13dに往復運動を行わせることにより、組立て構成要素をより一層少なくさせ、かつ簡素化させたので、機械損失を少なくさせて熱効率を向上させることができ、軽量、小型化の下、可搬性を容易に実現することができる。
【0035】
図3は、本発明に係るスターリング発電機の第2実施形態を示す概略平面図である。
【0036】
なお、第1実施形態の構成要素と同一構成要素には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0037】
本実施形態に係る斜板装置3は、電動発電機(図示せず)の出力軸8に接続され、他端を回転軸23に接続され、かつ出力軸8の軸中心線CLに対して軸中心線CLが斜めになるように設けられた斜板軸20と、この斜板軸20に対し、外径側に山形状に突き出し、平板で作製された斜板12a,12bを備えている。
【0038】
なお、斜板12a,12bは、斜板軸20および回転軸23に軸受25aを介して接続している。
【0039】
また、斜板装置3は、斜板12a,12bの山形状の先端位置に軸受25bを介して2股軸26a,26bが取り付けられている。
【0040】
これら2股軸26a,26bは、図4に示すように、アーム回転体27に接続されている。アーム回転体27は、軸受25cを介して駆動軸28に取り付けられている。さらに駆動軸28は軸受25dを介してピストン装置5のピストン4a,4bを往復運動させる中空のピストンロッド13eに接続している。
【0041】
なお、中空のピストンロッド13eは、ガイド29によって保持されている。
【0042】
また、2股軸26a,26bは、図5に示すように、脚部30a,30bを貫通するアーム軸31と、アーム軸31に接続されたアーム回転体27を備えている。このアーム回転体27は、図6に示すように、筒状に形成され、アーム軸31と筒軸が直交するように接続され、筒内には駆動軸28を挿入させている。
【0043】
このような構成を備える斜板装置3の作用を説明する。
【0044】
図3に示すように、電動発電機の出力軸8から回転駆動力が与えられると、斜板軸20が回転する。このとき、斜板12a,12bおよび2股軸26a,26bは、斜板軸20の軸中心線CLと2股軸26a,26bの軸中心線CLの交点Oを基点に揺動する。
【0045】
斜板12a,12bは、2股軸26a,26bが揺動すると、アーム回転体27のアーム軸31は、図3および図4に示すように、その中心点Oを基点に軌跡「8」の字の一部である軌跡線L上を挙動する。
【0046】
この場合、中心点Oが軌跡「8」の字を描けるように、アーム軸31の中心点Oを通る横断中心線と駆動軸28の軸中心線CLとの間を、図4に示すように、隙間Gを確保させている。
【0047】
また、アーム軸31の挙動に対応して応動する駆動軸28は、その駆動力を中空のピストンロッド13eに与えて往復動させ、ピストンロッド13eの往復動駆動力によってピストン4a,4bを往復動させる。
【0048】
このように、本実施形態は、斜板装置3の斜板軸20の軸中心線CLと電動発電機の出力軸8の軸中心線CLとを斜めに交差させるように配置させ、斜板軸20に外径側に山形状に突き出した斜板12a,12bを備えるとともに、斜板12a,12bの山形状の先端に2股軸26a,26bを設けて回転運動を揺動運動に変え、この揺動運動によってピストンロッド13eを往復動させる構成にしたことにより、組立て構成要素をより一層少なくさせ、かつ簡素化させたので、機械損失を少なくさせて熱効率を向上させることができ、軽量、小型化の下、可搬性を容易に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るスターリング発電機の第1実施形態を示す概略全体平面図。
【図2】図1のA−A矢視方向から見て切断したときの斜板装置の正面図。
【図3】本発明に係るスターリング発電機の第2実施形態を示す概略平面図。
【図4】図3の“X”部を抜き出した斜板装置の部分拡大図。
【図5】図4の“Y”部を抜き出した2股軸とアーム回転体との組立を示す図。
【図6】本発明に係るスターリング発電機に適用するアーム回転体を示す斜視図。
【符号の説明】
【0050】
1 ハウジング
2 電動発電機
3 斜板装置
4a,4b ピストン
5 ピストン装置
6 ステータ
7 回転子コイル
8 出力軸
9a,9b,9c,9d,9e,9f 軸受
10 潤滑油循環ポンプ
11a,11b,11c 潤滑油通路
12,12a,12b 斜板
13a,13b,13c,13e ピストンロッド
14 伝達軸
15 球面軸受
16 スベリ軸受
17a,17b シリンダ
18a,18b 再生器
19a,19b 低温熱交換器
20 斜板軸
21 開口
22 ガイド
23 回転軸
24 隙間
25a,25b,25c,… 軸受
26 2股軸
27 アーム回転体
28 駆動軸
29 ガイド
30a,30b 脚部
31 アーム軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動発電機の駆動力で回転する出力軸と軸受を介して取り付けられ、かつ前記出力軸の軸中心線に対し、斜めに交差させる軸中心線を持つように配置した斜板軸と、この斜板軸に斜板を介して接続された伝達軸と、この伝達軸と軸受を介して接続されたピストンロッドとを備えたことを特徴とするスターリング発電機。
【請求項2】
電動発電機の駆動力で回転する出力軸と軸受を介して取り付けられ、かつ前記出力軸の軸中心線に対し、斜めに交差させる軸中心線を持つように配置した斜板軸と、この斜板軸と軸受を介して接続される斜板と、この斜板に接続された伝達軸と、この伝達軸とスベリ軸受を介して支持する球面軸受と、この球面軸受が開口内部に収容されたピストンロッドとを備えたことを特徴とするスターリング発電機。
【請求項3】
スベリ軸受は、球面軸受の内径側に設けたことを特徴とする請求項1記載のスターリング発電機。
【請求項4】
前記斜板軸の他方に接続され、回転支持する回転軸と、前記ピストンロッドの往復移動を案内し、片方に開口を設けた筒状のガイドとを備えたことを特徴とする請求項2記載のスターリング発電機。
【請求項5】
前記出力軸、前記斜板軸、前記回転軸を軸支する軸受、前記スベリ軸受および前記球面軸受に潤滑油を供給する潤滑油通路と、供給された潤滑油を戻す循環路とを備えたことを特徴とする請求項2記載のスターリグ発電機。
【請求項6】
潤滑油通路は、潤滑油を送り出す潤滑油循環ポンプを備えたことを特徴とする請求項5記載のスターリング発電機。
【請求項7】
電動発電機の駆動力で回転する出力軸と軸受を介して取り付けられ、かつ前記出力軸の軸中心線に対し、斜めに交差させる軸中心線を持つように配置した斜板軸と、この斜板軸に接続された斜板および2股軸と、この2股軸に接続されたアーム回転体と、このアーム回転体に軸受を介して取り付けられた駆動軸と、この駆動軸に軸受を介して取り付けられたピストンロッドとを備えたことを特徴とするスターリング発電機。
【請求項8】
斜板は、外径側に向って山形状に突き出す形状にしたことを特徴とする請求項7記載のスターリング発電機。
【請求項9】
アーム回転体は、アーム軸を備えるとともに、このアーム軸を2股軸に挿通させる構成にしたことを特徴とする請求項7記載のスターリング発電機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−113468(P2007−113468A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304951(P2005−304951)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】