説明

スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物、押出シート及び成形品

【課題】耐熱性、機械的強度及び外観に優れ、且つ成形性に優れたスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物、並びに該組成物を用いて形成された非発泡及び発泡の押出シート及び成形品の提供。
【解決手段】スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位の含有量が69〜92質量%、メタクリル酸単量体単位の含有量が6〜16質量%、及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量が2〜15質量%である共重合樹脂(a)87〜98質量%と、スチレン含有量が25〜50質量%であるスチレンとブタジエンのブロック共重合体(b)13〜2質量%とからなる、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物、並びにこれを用いて形成された押出シート及び成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、機械的強度、外観、及び成形性に優れたスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物、並びに該スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された非発泡及び発泡の押出しシート及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレン−メタクリル酸系樹脂は、耐熱性に優れ、且つ比較的安価なことから、弁当、惣菜等の食品容器、包装材料、住宅の断熱材用の発泡ボード、拡散剤を入れた液晶テレビの拡散板等に広く用いられている。近年、コンビニエンスストアー等の業務用に使用する電子レンジの普及、及び電子レンジの使用時間の短縮のため、より高出力(短時間で、より高温になり易い)の機器が使用されている。このために、より耐熱性が高く、成形性に優れた樹脂が望まれている。また、弁当、惣菜等の食品容器では意匠性に伴う形状の複雑化や、内容物増による容器の大型化などの理由から、従来製品に比し、脆性等の機械的強度を改良した樹脂が望まれている。
【0003】
ところで、スチレン−メタクリル酸系樹脂において、より耐熱性の高い樹脂を得るためにはメタクリル酸の含量を増やすことが必要である。この場合、メタクリル酸に起因するゲル化物が発生し易くなり、シート表面に外観不良が見られる場合がある。この現象は、非発泡シート押出時に、水分及び低分子の残留揮発分の除去の目的で押出機ベントから真空で脱揮する場合に特に見られる。また、メタクリル酸の増量は、同時に機械的強度の低下にもつながる。スチレン−メタクリル酸樹脂の製造方法に関しては、以下の特許文献1には、重合原料液に2エチル−ヘキシルアルコールを添加する方法が、そして以下の特許文献2には、重合原料液にオクチルアルコールを添加する方法が開示されている。
【0004】
また、スチレン−メタクリル酸系樹脂において、脆性等の機械的強度を改良する目的で、スチレンとブタジエンの共重合体を添加する方法が一般的に実施されているが、機械的強度の改良が不十分である。以下の特許文献3には、ブタジエンゴム比率が50重量%以上のスチレン−ブタジエン共重合体をポリスチレン系耐熱性共重合樹脂に添加してなる樹脂組成物が、開示されている。また、以下の特許文献4には、ブタジエンゴム比率が50重量%以上のスチレン−ブタジエン共重合樹脂をスチレン−メタクリル酸共重合樹脂に添加してなるスチレン系樹脂耐熱発泡シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−87332号公報
【特許文献2】特開2006−282962号公報
【特許文献3】特開平8−41233号公報
【特許文献4】特開2000−136257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した従来技術のスチレン−メタクリル酸系樹脂の製造方法では、ゲル化抑制効果が十分に発揮されず、また得られた樹脂の機械的強度も充分ではない。したがって、よりゲル化しにくく、耐熱性、機械的強度、外観、及び成形性に優れた樹脂組成物からなる非発泡又は発泡の成形品が求められている。
【0007】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、耐熱性、機械的強度、外観、及び成形性に優れたスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物、並びに該スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された非発泡及び発泡の押出しシート及び成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、鋭意研究し、実験を重ねた結果、従来のスチレン−メタクリル酸にメタクリル酸メチルを加えた特定組成の共重合樹脂と、特定のスチレンとブタジエンのブロック共重合体とを、特定の比率で混合した樹脂を用い、従来技術の樹脂では達成することができなかった耐熱性、機械的強度、外観、及び成形性とを有するスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物が得られることを、予想外に見出し、更に、該スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物から優れた非発泡及び発泡の成形品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の通りのものである。
【0009】
[1]スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位の含有量が69〜92質量%、メタクリル酸単量体単位の含有量が6〜16質量%、及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量が2〜15質量%であるスチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルの共重合樹脂(a)87〜98質量%と、スチレン含有量が25〜50質量%、及びブタジエン含有量が50〜75質量%であるスチレンとブタジエンのブロック共重合体(b)13〜2質量%とからなる、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【0010】
[2]前記ブロック共重合体(b)のスチレン含有量が30〜45質量%である、前記[1]に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【0011】
[3] 前記樹脂組成物を100質量%としたとき、スチレンの二量体及び三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であり、且つスチレン単量体の残存量が700ppm以下である、前記[1]又は[2]に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【0012】
[4]前記共重合樹脂(a)の重量平均分子量が10万〜35万である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【0013】
[5]前記樹脂組成物を100質量%としたとき、凝固点が−10℃以下であり、且つ炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを0.02〜1.0質量%で含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【0014】
[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された非発泡押出シート。
【0015】
[7]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
【0016】
[8]前記[6]に記載の非発泡押出シート又は前記[7]に記載の発泡押出しシートを用いて形成された成形品。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性、機械的強度、外観、及び成形性に優れたスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物、並びに該スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された非発泡及び非発泡の押出しシート及び成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施例におけるトレー容器の腰強度の測定方法を説明する概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
[スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物]
本発明のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物は、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位の含有量が69〜92質量%、メタクリル酸単量体単位の含有量が6〜16質量%、及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量が2〜15質量%であるスチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルの共重合樹脂(a)87〜98質量%と、スチレン含有量が25〜50質量%、及びブタジエン含有量が50〜75質量%であるスチレンとブタジエンのブロック共重合体(b)13〜2質量%とからなる、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物(以下、単に「本発明の樹脂組成物」ということもある)である。
【0020】
本発明の樹脂組成物においては、前記共重合樹脂(a)を100質量%としたときに、スチレン単量体単位の含有量は69〜92質量%であり、好ましくは74〜90質量%、より好ましくは77〜86質量%である。この含有量が69質量%未満では、樹脂の流動性が低下し、一方、92質量%を超えると、後述のメタクリル酸単量体単位及びメタクリル酸メチル単量体単位を所望量存在させることができない。
【0021】
本発明の樹脂組成物においては、メタクリル酸は耐熱性を向上させる役割を果たす。共重合樹脂(a)のスチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、メタクリル酸単量体単位の含有量は6〜16質量%であり、好ましくは7〜14質量%、より好ましくは9〜13質量%の範囲である。この含有量が6質量%未満では耐熱性向上の効果が不十分であり、一方、16質量%を超える場合は、樹脂中のゲル化物が増加し、外観不良となり、また樹脂の流動性の低下と機械的物性の低下とを招来するため好ましくない。
【0022】
一般に、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂を含むスチレン−メタクリル酸系樹脂は、工業的規模ではほとんどの場合、ラジカル重合で生産されているが、前述の特許文献1及び2に記載されているように、脱揮工程のゲル化反応を抑制するために、種々のアルコールを重合系中に添加して重合を行なう場合がある。
【0023】
本発明の樹脂組成物の製造においては、メタクリル酸メチルは、メタクリル酸との分子間相互作用でメタクリル酸の脱水反応を抑制するために、及び樹脂の機械的強度を向上させるために用いられる。更には、メタクリル酸メチルの添加は、耐候性、表面硬度等の樹脂特性の向上にも寄与する。
また、スチレン−メタクリル酸系樹脂は、補強材として添加するスチレンとブタジエンのブロック共重合体と相溶性が良いため、ブロック共重合体の分散粒子径が小さくなる。メタクリル酸メチルの添加は、スチレン−メタクリル酸系樹脂と該スチレンブタジエンブロック共重合体との相溶性を妨げる結果、ブロック共重合体の分散粒子径が適度に大きくなり、得られる樹脂の機械的強度が大きく向上する。
【0024】
スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、メタクリル酸メチル単量体単位の含有量は2〜15質量%であり、好ましくは3〜12質量%、より好ましくは5〜10質量%の範囲である。この含有量が2質量%未満ではゲル化抑制効果、及び機械的強度の向上には不十分であり、一方、15質量%を超える場合には樹脂の流動性が低下し、且つ吸水性が増加する傾向があり好ましくない。
【0025】
なお、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとが隣り合わせで結合した場合、高温、高真空の脱揮装置を用いると、条件によっては脱メタノール反応が起こり、六員環酸無水物が形成される場合がある。本発明に係る共重合樹脂(a)は、この六員環酸無水物を含んでいてもよいが、流動性を低下させることから、より少ない方が好ましい。
【0026】
本発明に係る共重合樹脂(a)中の、スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量は、それぞれ、プロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から求めることができる。
【0027】
本発明に係る共重合樹脂(a)の重合方法については、ラジカル重合法として、塊状重合法又は溶液重合法を好ましく採用できる。重合方法は、主に、重合原料(単量体成分)を重合させる重合工程と、重合生成物から未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する脱揮工程とからなる。以下、本発明に係る共重合樹脂(a)の重合方法について説明する。
【0028】
本発明に係る共重合樹脂(a)を得るために重合原料を重合させる際には、重合原料組成物中に、典型的には重合開始剤及び連鎖移動剤を含有させる。重合開始剤としては、有機過酸化物、例えば、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4ービス(t−ブチルペルオキシ)バレレート等のペルオキシケタール類、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド等のジアルキルペルオキシド類、アセチルペルオキシド、イソブチリルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類、ジイソプロピルペルオキシジカーボネート等のペルオキシジカーボネート類、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類、アセチルアセトンペルオキシド等のケトンペルオキシド類、t−ブチルヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド類等を挙げることができる。分解速度と重合速度との観点から、なかでも、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンが好ましい。
【0029】
連鎖移動剤としては、例えば、α−メチルスチレンリニアダイマー、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等を挙げることができる。
【0030】
重合方法において溶液重合を採用する場合には用いられる重合溶媒としては、芳香族炭化水素類、例えば、エチルベンゼン、ジアルキルケトン類、例えば、メチルエチルケトン等が挙げられ、それぞれ、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。重合生成物の溶解性を低下させない範囲で、他の重合溶媒、例えば脂肪族炭化水素類等を、芳香族炭化水素類に更に混合することができる。これらの重合溶媒は、全単量体100質量部に対して、25質量部以下にすることが得られる樹脂の衝撃強度の点で好ましい。また、重合前に、全単量体100質量部に対して5〜20質量部の割合で添加しておくことが、品質が均一化し易く、重合温度制御の点で、より好ましい。
【0031】
本発明の樹脂組成物は、共重合樹脂(a)87〜98質量%とブロック共重合体(b)13〜2質量%、好ましくは共重合樹脂(a)89〜97質量%とブロック共重合体(b)11〜3質量%、より好ましくは共重合樹脂(a)91〜96質量%とブロック共重合体(b)9〜4質量%からなる。ブロック共重合体(b)が13質量%を超える場合、得られる樹脂組成物の耐熱性が大きく低下し、好ましくなく、一方ブロック共重合体(b)が2質量%未満の場合、機械的強度の向上が小さく、やはり好ましくない。共重合樹脂(a)とブロック共重合体(b)の混合方法は特に限定しないが、押出機等で混合、ペレタイズ後、得られたペレットを用いて、シート押出又は発泡押出でシートや発泡体を製造したり、あるいは直接シート押出機や発泡押出機に共重合樹脂(a)とブロック共重合体(b)を所定の比率で送り込み、シートや発泡体を直接製造する方法などが挙げられる。
【0032】
本発明の樹脂組成物に使用するスチレンとブタジエンのブロック共重合体(b)は、スチレン含有量が25〜50質量%、好ましくはスチレン含有量が25〜45質量%、より好ましくはスチレン含有量が30〜45質量%であり、ブタジエン含有量は100質量%の残余である。スチレン含有量が25〜50%であれば、ブロック共重合体の共重合樹脂(a)への分散性が適度に良くなり、機械的強度及び外観に優れたものが得られる。
【0033】
本発明において、樹脂組成物を100質量%としたときに、スチレンの二量体及び三量体の残存量の合計は0.6質量%以下が好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.4質量%以下である。スチレンの二量体及び三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であれば、例えば、射出成形においては、金型へのスチレンの二量体及び三量体の付着が大幅に低減され、これら二量体及び三量体の成形品への転写が大幅に低減され、外観不良が大幅に改善され、また、シート等の押出成形においては、ダイスに析出するスチレンの二量体及び三量体の量が大幅に低減され、シートへの転写が大幅に低減され、外観不良が大幅に改善され、さらに金型及びダイス出口の清掃の必要性を低減できるため生産性も向上する。スチレンの二量体及び三量体の残存量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0034】
本発明において、樹脂組成物を100質量%としたときに、スチレン単量体の残存量は700ppm以下が好ましく、より好ましくは600ppm以下、更に好ましくは500ppm以下である。スチレン単量体の残存量が700ppm以下であれば、シート押出時のダイス出口周りの臭気が改善され、樹脂の色調も改良される。スチレン単量体の残存量はガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0035】
本発明において、共重合樹脂(a)の重量平均分子量は10万〜35万であることが好ましく、より好ましくは13万〜30万、更に好ましくは16万〜25万である。重量平均分子量が10万〜35万である場合、衝撃強度と流動性とのバランスに優れる樹脂が得られ、またゲル物の混入も少ない。
【0036】
本発明の樹脂組成物は、炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールを含有していることが好ましい。アルコールの添加は、前述の特許文献1又は2に記載されるようにメタクリル酸の脱水反応によるゲル化反応をさらに抑制するために有効であり、特に共重合樹脂(a)製造時に添加することが望ましい。樹脂組成物中の、炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールの含有量は、共重合樹脂(a)製造時の脱揮工程やシートの押出時におけるゲル化反応の抑制効果の点で0.02質量%以上であることが好ましく、一方、樹脂の耐熱性、及び外観の点から、1.0質量%以下であることが好ましい。当含有量は、より好ましくは0.04〜0.8質量%、更に好ましくは0.06〜0.6質量%である。炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールとしては、水分、残留モノマー等の低揮発成分除去観点から、凝固点が−10℃以下のイソ型の脂肪族第1級アルコールが好ましい。炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールの含有量は、ガスクロマトグラフィーにより測定できる。
【0037】
炭素数14以上の脂肪族第1級アルコールとしては、n−ミリスチン酸アルコール、n−パルミチン酸アルコール、n−ステアリルアルコール等が挙げられる。更に、凝固点−10℃以下のイソ脂肪族第1級アルコールとしては、炭素数14のイソテトラデカノール、炭素数16のイソヘキサデカノール、炭素数18のイソオクタデカノール、炭素数20のイソエイコサノールが挙げられ、例えば、具体的には、7−メチル−2−(3−メチルブチル)−1−オクタノール、5−メチル−2−(1−メチルブチル)−1−オクタノール、5−メチル−2−(3−メチルブチル)−1−オクタノール、2−ヘキシル−1−デカノール、5,7,7−トリメチル−2−(1,3,3−トリメチルブチル)−1−オクタノール、8−メチル−2−(4−メチルヘキシル)−1−デカノール、2−ヘプチル−1−ウンデカノール、2−ヘプチル−4メチル−1−デカノール、2−(1,5−ジメチルヘキシル)−(5,9−ジメチル)−1−デカノールが挙げられる。この中でも、特に炭素数18のイソオクタデカノールが好ましい。
【0038】
本発明の樹脂組成物には安定剤を含有させてもよい。一般的な安定剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール等のヒンダートフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工熱安定剤等を挙げることができる。これらの安定剤は単独で又は2種以上を組み合わせて適宜用いることができる。添加時期については、特に制限はなく、例えば、樹脂の重合工程又は脱揮工程で添加したり、またシート押出機や発泡押出機で樹脂の押出し時に添加したりすることができる。
【0039】
本発明に係る共重合樹脂(a)を得るための重合工程で用いる装置は、特に制限はなく、スチレン系樹脂の重合方法に従って適宜選択すればよい。例えば、塊状重合による場合には、完全混合型反応器を1基、又は複数基連結した重合装置を用いることができる。また脱揮工程についても特に制限はなく、塊状重合で行う場合、最終的に未反応モノマーが、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下になるまで重合を進め、かかる未反応モノマー等の揮発分を除去するために、公知の方法にて脱揮処理する。例えば、フラッシュドラム、二軸脱揮器、薄膜蒸発器、押出機等の通常の脱揮装置を用いることができるが、滞留部の少ない脱揮装置が好ましい。なお、脱揮処理の温度は、通常、190〜280℃程度であり、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとの隣接による六員環酸無水物の形成を抑制する観点から、190〜260℃がより好ましい。また脱揮処理の圧力は、通常0.13〜4kPa程度であり、好ましくは0.13〜3kPaであり、より好ましくは0.13〜2.0kPaである。脱揮方法としては、例えば加熱下で減圧して揮発分を除去する方法、及び揮発分除去の目的に設計された押出機等を通して除去する方法が望ましい。
【0040】
本発明の樹脂組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を添加することができ、このような添加剤が添加された樹脂組成物を各種成形に用いることができる。上記添加剤は、共重合樹脂(a)の製造時に予め添加されていてもよい。
【0041】
尚、本発明の樹脂組成物は、前記した共重合樹脂(a)87〜98質量%と、前記したブロック共重合体(b)13〜2質量%とからなるが、本発明の樹脂組成物に、前記した共重合樹脂(a)及びブロック共重合体(b)以外の他の樹脂、例えば、一般のポリスチレン、スチレン−ブタジエンのランダム共重合エラストマー、部分的に又は完全に水素添加されたスチレン−ブタジエン共重合エラストマー、ポリフェニレンエーテル等が含有されることが除外されることは意図されていない。例えば、本発明の樹脂組成物には、所望に応じて、通常用いられている添加剤、例えば、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、可塑剤、染料、顔料、各種充填剤等を添加することができる。
【0042】
[押出シート]
本発明は、上述した本発明の樹脂組成物を用いて形成されてなる押出シートも提供する。押出シートは非発泡及び発泡のいずれでもよい。押出シートの製造方法としては、通常知られている方法を用いることができる。非発泡押出シートの製造方法としては、Tダイを取り付けた短軸又は二軸押出成形機で、一軸延伸機又は二軸延伸機でシートを引き取る装置を用いる方法等を用いることができ、発泡押出シートの製造方法としては、Tダイ又はサーキュラーダイを備え付けた押出発泡成形機を用いる方法等を用いることができる。
【0043】
発泡押出シートを形成する場合、押出発泡時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としてはブタン、ペンタン、フロン、二酸化炭素、水等を使用することができ、ブタンが好適である。また発泡核剤としてはタルク等を使用できる。
【0044】
発泡押出シートは、厚み0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度50g/L〜300g/Lであることが好ましく、また坪量80g/m2〜300g/m2であることが好ましい。また、発泡押出シートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂、例えば、スチレンブタジエンブロック共重合体やポリブタジエンなどのゴム成分からなるハイインパクトポリスチレン等と多層化して用いてもよく、更に該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PP樹脂、PP/PS系樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0045】
一方、非発泡押出シートにおいては、例えば、厚みが0.1〜1.5mm程度であることが剛性及び熱成形サイクルの観点から好ましい。また、非発泡押出シートは通常の低倍率のロール延伸のみで形成してもよいが、特にロールで1.3倍から7倍程度延伸した後、テンターで1.3から7倍程度延伸したシートが強度の面で好ましい。また、非発泡押出シートは、ポリスチレン樹脂等のスチレン系樹脂、例えば、スチレンブタジエンブロック共重合体やポリブタジエンなどのゴム成分からなるハイインパクトポリスチレン等と多層化して用いてもよく、更に該スチレン系樹脂以外の樹脂と多層化して用いてもよい。スチレン系樹脂以外の樹脂としては、PP樹脂、PP/PS系樹脂、PET樹脂、ナイロン樹脂等が挙げられる。
【0046】
本発明は、上述した本発明の非発泡押出シート又は発泡押出シートを用いて形成されてなる成形品も提供する。発泡押出シート又はこれを含む多層体を、例えば、真空成形により成形して、トレー等の容器を作製できる。また非発泡押出シートは、例えば、真空成形により成形して弁当の蓋材や惣菜等を入れる容器を作製できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるべきではない。なお、実施例及び比較例における樹脂及び押出シート等は、以下の分析又は測定方法で評価した。
【0048】
[共重合樹脂(a)及び樹脂組成物の性状]
(1)共重合樹脂(a)のスチレン、メタクリル酸及びメタクリル酸メチルの各々の単量体単位の含有量(質量%)
プロトン核磁気共鳴(H−NMR)測定機で測定したスペクトルの積分比から、樹脂組成を定量した。
試料調製:樹脂ペレット30mgをd6−DMSO 0.75mlに60℃で6時間加熱溶解した。
測定機器:日本電子 JNM ECA−500
測定条件:測定温度 25℃、観測核 1H、積算回数 64回、繰り返し時間 11秒
(スペクトルの帰属)
ジメチルスルホキシド重溶媒中で測定されたスペクトルの帰属は、0.5〜1.5ppmのピークはメタクリル酸、メタクリル酸メチル及び六員環酸無水物のα−メチル基の水素、1.6〜2.1ppmのピークはポリマー主鎖のメチレン基の水素、3.5ppmのピークはメタクリル酸メチルのカルボン酸エステル(−COOCH3)の水素、12.4ppmのピークはメタクリル酸のカルボン酸の水素である。また、6.5〜7.5ppmのピークはスチレンの芳香族環の水素である。なお、本発明の樹脂は六員環酸無水物の含有量が少ないため、本測定の方法では通常定量化は難しい。
【0049】
(2)ビカット軟化温度(℃)の測定
ISO306に準拠して測定した。荷重は49Nとした。
【0050】
(3)樹脂組成物を100質量%としたときのスチレン二量体及び三量体の残存量(質量%)の測定
試料調製:樹脂組成物2.0gをメチルエチルケトン20mlに溶解後、更に標準物質入りのメタノール5mlを加え溶解した。
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−17Apf
カラム :DB−1(100%ジメチルポリシロキサン) 30m、
膜厚0.1μm、0.25mmφ
カラム温度 :100℃−2分→5℃/分→260℃−5分
注入口温度 :200℃
検出器温度 :200℃
キャリアガス :窒素
【0051】
(4)樹脂組成物を100質量%としたときのスチレン単量体の含有量(ppm)の測定
試料調製 :樹脂組成物1.0gを標準物質入りジメチルフォルアミド25mlに溶解
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC−14Bpf
カラム :SUS 3mmφ×3m(パックドカラム)
充填剤 :液相→PEG−20M 25%
担体→Chromosorb W(AW) 60〜80メッシュ
カラム温度 :110℃
注入口温度 :220℃
検出器温度 :220℃
キャリアガス :窒素
【0052】
(5)重量平均分子量(万)の測定
試料調製 :テトラヒドロフランに樹脂約0.05質量%を溶解
(測定条件)
機器 :TOSHOH HLC−8220GPC
(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)
カラム :super HZM−H
温度 :40℃
キャリア :THF 0.35ml/min
検出器 :RI 、UV:254nm
検量線 :TOSOH製の標準PS使用
【0053】
(6)樹脂組成物中の脂肪族第1級アルコール含有量(質量%)の測定
試料調製 :樹脂組成物0.5gをメチルエチルケトン20mlに溶解
(測定条件)
機器 :島津製製作所製ガスクロマトグラフィー GC2010
カラム :DB−WAX 30m、0.25mmφ、df=0.5μm
温度 :100℃→5℃/分→130℃→10℃/分→180℃−12分→20℃/分→220℃−20分
【0054】
[射出成形特性及び射出成形物特性]
(7)シャルピー衝撃強さ(kJ/m)の測定
ISO179に準拠して、ノッチ無しで測定した。
【0055】
(8)引張破壊呼びひずみ(%)の測定
ISO527−1に準拠して、測定した。
【0056】
(9)曲げ強さ(MPa)
ISO178に準拠して、測定した。
【0057】
(10)曲げたわみ(mm)
(9)の曲げ強さの測定時に、最大のたわみ量を測定した。
【0058】
(11)金型汚れの判定
150×150×2.5mmの短冊型の金型を使用して、充填5.0秒で射出成形時にショートショットさせた。70ショット終了後、15分間射出成形を停止し、金型を冷却して、成形体先端部に相当する金型面を目視で観察し、金型の汚れを確認しつつ、700ショットまで成形を繰り返した。以下の評価基準で金型汚れを判定した:
◎:700ショットで金型汚れなし
○:420〜630ショットで金型汚れ発生
なお成形は、金型温度20℃、樹脂260℃で行った。また、金型汚れの付着物の成分を測定したところ、スチレンの二量体及び三量体が大部分で、樹脂に練り込んだアルコールが僅かに含まれていた。
【0059】
[非発泡押出特性及び非発泡押出物特性]
(12)落錘衝撃強度(g・cm)の測定
創研社製の30mmφ短軸シート押出機で厚さ1.5mmのシートを引き、東洋精機社製のデュポン衝撃試験機(No451)を用いて、落錘衝撃強度を測定した。落下重錘の質量25g、撃心突端の半径3.1mm、撃心受台の半径9.4mmで、落錘衝撃強度は50%破壊の値を、(落下重錘の質量25g)×(高さcm)で求めた。
【0060】
(13)非発泡押出シートの外観判定
創研社製の30mmφ短軸シート押出機で連続1時間シートを押出した後、厚さ0.3mmのシートから10cm×20cmの大きさのシートを5枚切り出し、シート5枚の表面の(長径+短径)/2の平均径が1mm以上の異物であるゲル物の個数を数え、以下の評価基準で外観を判定した:
◎:ゲル物の個数が2点以下
○:ゲル物の個数が3〜5点
×:ゲル物の個数が6点以上
【0061】
(14)ダイス出口の臭気判定
30mmφ短軸シート押出機でのシート押出時に、ダイス出口の臭気を確認し、以下の評価基準でダイス出口の臭気を判定した:
◎:臭いを殆ど感じない
○:臭いをわずかに感じた
【0062】
[発泡押出物特性]
(15)トレー容器の腰強度(N)測定
図1は、実施例におけるトレー容器の腰強度の測定方法を、説明する概要図である。
7.3倍に発泡した、厚さ3mmの発泡押出シートを図1に示すトレー容器に真空成形して腰強度(N)を測定した。トレー容器の大きさは縦10cm、横15cm、深さ2cmである。トレーの横側面より圧縮して極大荷重を腰強度とした。
【0063】
[共重合樹脂(a)の製造方法]
[樹脂A]
スチレン76.9質量部、メタクリル酸5.4質量部、メタクリル酸メチル2.7質量部、エチルベンゼン15.0質量部、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン0.025質量部からなる重合原料組成液を、1.1リットル/時の速度で、容量が4リットルの完全混合型反応器、次いで、2リットルの層流型反応器からなる重合装置に、次いで、未反応モノマー、重合溶媒等の揮発分を除去する単軸押出機を連結した脱揮装置に連続的に、順次供給し、樹脂を調製した。重合工程における重合反応条件は、完全混合反応器は重合温度118〜128℃、層流型反応器は温度121〜143℃とした。脱揮された未反応ガスは−5℃の冷媒を通した凝縮器で凝縮し、未反応液として回収した。最終重合液中のポリマー分は、重合液を215℃、3kPaの減圧下で30分間乾燥後、(乾燥後の試料質量/乾燥前の試料質量×100%)により測定したところ、64.5質量%、重量平均分子量は27.5万であった(以下、表1参照)。
【0064】
[樹脂B〜F]
以下の表1に示す樹脂の性状(樹脂組成、樹脂中のスチレン単量体含有量、スチレンの二量体と三量体との合計含有量、重量平均分子量)になるように条件を調整し、樹脂Aと同様にして、樹脂B〜Fを調製した。
【0065】
【表1】

【0066】
[スチレンとブタジエンのブロック共重合体(b)]
[樹脂G〜I]
表2に示す樹脂Gとして、旭化成ケミカルズ社製のタフプレン125(スチレン/ブタジエン=40/60)を、樹脂Hとして、同じくアサプレンT413(スチレン/ブタジエン=30/70)、そして樹脂Iとして、同じくタフプレン315P(スチレン/ブタジエン=20/80)を用いた。
【0067】
【表2】

【0068】
[実施例1]
以下の表3に示すように、共重合樹脂(a)として樹脂Aを95質量%、ブロック共重合体として樹脂Gを5質量%の割合に混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールを添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製した。以下の表3に示す樹脂組成物中のアルコール含有量(質量%)はガスクロマトグラフィーで定量した値である。なお、以下の表3中のイソ脂肪族第1アルコールとしては日産化学社製の製品(ファインオキソコール180)を用いた(*1参照)。
【0069】
得られた樹脂ペレットを用いて、非発泡押出物(非発泡押出シート)と発泡押出物(発泡押出シート、及び成形品としてトレー容器)とを作製し物性等を評価した。非発泡押出シートについては、30mmの短軸押出機を用いて、樹脂溶融ゾーンの温度を220〜250℃とし、ベントから真空ポンプで3kPaに減圧しながら厚み約0.3mmのシートを製造した。発泡押出シート及びトレー容器については、直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用いて、得られた樹脂組成物100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.12質量部、発泡剤として液化ブタンを3.5質量部添加して発泡押出シートを製造した(発泡倍率:7.5倍)。樹脂溶融ゾーンの温度は210〜240℃、ロータリークーラー温度は145〜185℃、ダイス温度は165℃に調整した。得られた発泡押出シートを用いて真空成形で図1に示す形状の発泡トレー容器を作製した。得られた非発泡押出物及び発泡押出物の性状及び物性の評価結果を、それぞれ、以下の表3に示す。
【0070】
[実施例2〜8]
以下の表3に示す割合で共重合樹脂(a)とブロック共重合体(b)を混ぜ、更にイソ脂肪族第1級アルコールを添加した後、二軸押出機で押出して樹脂ペレットを作製し、実施例1同様に、非発泡押出物及び発泡押出物を作製し、それらの性状及び物性を評価した。評価結果を以下の表3に示す。
【0071】
[比較例1]
比較例1では、実施例4において共重合樹脂(a)として樹脂Cを95質量%、ブロック共重合体(b)として樹脂Gを5質量%の割合に混ぜたのに対し、共重合樹脂(a)として樹脂Cのみ100質量%を使用し、ブロック共重合体は使用しなかった。比較例1においては、残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。比較例1ではブロック共重合体(b)を使用しなかったため、実施例4に比較して、シャルピー衝撃強さ、曲げ強さ、たわみ、トレー容器の腰強度など、機械的強度が劣るものとなった。
【0072】
[比較例2]
比較例2では、実施例4において共重合樹脂(a)として樹脂Cを95質量%、ブロック共重合体(b)として樹脂Gを5質量%の割合に混ぜたのに対し、共重合樹脂(a)として樹脂Cを85質量%、ブロック共重合体として樹脂Gを15質量%の割合に混ぜた。比較例2においては、残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下表3に示す。比較例2ではブロック共重合体の割合が多いため、実施例4に比較して、ビカット軟化温度が劣るものとなった。
【0073】
[比較例3]
比較例3では、実施例4において共重合樹脂(a)として樹脂Cを95質量%、ブロック共重合体(b)として樹脂Gを5質量%の割合に混ぜたのに対し、共重合樹脂(a)として樹脂Cを95質量%、ブロック共重合体として樹脂Iを5質量%の割合に混ぜた。比較例3においては、残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。比較例3と実施例4では、使用したブロック共重合体(b)の種類が異なる(表2参照)。比較例3では、ブタジエン含有量が80質量%と多い、すなわち、スチレン含有量が下限25質量%を下回る樹脂Iを用いたため、得られた成形品又はシートは、分散むらやゴムのゲル化などで異物が多く、外観が劣るものとなった。
【0074】
[比較例4]
比較例4では、実施例4において共重合樹脂(a)としてスチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルの樹脂Cを95質量%、ブロック共重合体(b)として樹脂Gを5質量%の割合に混ぜたのに対し、共重合樹脂(a)としてスチレンとメタクリル酸の樹脂Fを95質量%、ブロック共重合体(b)として樹脂Gを5質量%の割合に混ぜた。比較例4においては、残余の事項については実施例4と同様に実施し、非発泡押出物及び発泡押出物を調製した。得られたものの性状及び物性の評価結果を以下の表3に示す。比較例4では、使用した共重合樹脂(a)の組成にメタクリル酸メチルが存在していない(表1参照)。比較例4では、実施例4に比較して、シャルピー衝撃強さや落錘衝撃強度やトレー容器の腰強度など、機械的強度が劣っていた。
【0075】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いた、非発泡及び発泡の押出板、押出シート、更にはこれらの二次加工による食品容器、包装材等の成形品は、耐熱性、機械的強度、外観、及び成形性に優れている。更に、本発明のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物は、射出成形等による成形品の原材料として、電気製品部品、玩具、雑貨、日用品及び各種工業部品等の用途にも幅広く使用可能であり、産業界に果たす役割は大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン単量体単位、メタクリル酸単量体単位、及びメタクリル酸メチル単量体単位の合計含有量を100質量%としたときに、スチレン単量体単位の含有量が69〜92質量%、メタクリル酸単量体単位の含有量が6〜16質量%、及びメタクリル酸メチル単量体単位の含有量が2〜15質量%であるスチレンとメタクリル酸とメタクリル酸メチルの共重合樹脂(a)87〜98質量%と、スチレン含有量が25〜50質量%、及びブタジエン含有量が50〜75質量%であるスチレンとブタジエンのブロック共重合体(b)13〜2質量%とからなる、スチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体(b)のスチレン含有量が30〜45質量%である、請求項1に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂組成物を100質量%としたとき、スチレンの二量体及び三量体の残存量の合計が0.6質量%以下であり、且つスチレン単量体の残存量が700ppm以下である、請求項1又は2に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【請求項4】
前記共重合樹脂(a)の重量平均分子量が10万〜35万である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物を100質量%としたとき、凝固点が−10℃以下であり、且つ炭素数が14以上である脂肪族第1級アルコールを0.02〜1.0質量%で含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された非発泡押出シート。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のスチレン−メタクリル酸−メタクリル酸メチル樹脂組成物を用いて形成された発泡押出シート。
【請求項8】
請求項6に記載の非発泡押出シート又は請求項7に記載の発泡押出しシートを用いて形成された成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2012−31344(P2012−31344A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173978(P2010−173978)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(500199479)PSジャパン株式会社 (45)
【Fターム(参考)】