説明

スチレン系樹脂、押出発泡シート及び容器

【課題】発泡トレー等の発泡容器において製品強度を維持したまま軽量化が可能なスチレン系樹脂、該スチレン系樹脂を押出発泡成形して得られる押出発泡シート、及び該押出発泡シートを真空成型して得られる軽量化容器の提供。
【解決手段】200℃及び49Nで測定したメルトマスフローレイト(MFR)が0.6〜1.2グラム/10分であり、190℃で測定した溶融張力(MT)が55グラム以上であり、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量5万以下の成分の含有率が10質量%以下である、スチレン系樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡トレー等の発泡容器において製品強度を維持したまま軽量化が可能なスチレン系樹脂、該スチレン系樹脂を用いて押出発泡成形により得られる押出発泡シート、及び該押出発泡シートを真空成型して得られる軽量化容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリスチレン系樹脂押出発泡シートから熱成形により成形される食品用の簡易容器は、例えば、肉、魚、惣菜等のトレー、カップめん容器、納豆容器等種々の食品用の簡易容器として汎用的に使われている。このような発泡シートの熱成形による簡易容器においてはコストダウンのために容器の軽量化が計られているが、容器を軽量化すると製品強度が低下してトレーのラッピングの際に容器が割れる等の問題がある。
【0003】
この問題に対して、押出発泡成形時における発泡セル形態をコントロールしたり、真空成型容器の厚み(特に割れやすい部分の厚み)を厚くしたりして、軽量化しても容器強度を保つ工夫がされている(非特許文献1参照)。
【0004】
また、容器用の材料として、特定の分岐数を有するスチレン系樹脂を用いる方法(特許文献1参照)が開示されているが、さらなる軽量化に適した材料が求められている。
【0005】
上記のような軽量化の問題を解決するために、本発明者らは、コーン&プレート型溶融粘弾性測定装置によって測定した貯蔵弾性率の角速度依存性が特定の値であるスチレン系樹脂組成物を提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−49033号公報
【特許文献2】特開2008−274168号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】日経エコロジー/2005年10月号、第38−39頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、発泡トレー等の発泡容器において発泡セル形態や容器形状で容器の軽量化を図るには限界があり、容器強度を維持しながらさらなる軽量化を実現するために適した材料の登場が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らはかかる現状に鑑み、鋭意検討を重ねた結果、特定のメルトマスフローレイトと特定の溶融張力とを有し、かつ分子量5万以下の成分の含有率が特定の範囲にあるスチレン系樹脂を用いることにより、少ない材料使用量によって軽量化を実現しながら製品強度を維持した発泡容器が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明は以下の通りである。
【0011】
(1)200℃及び49Nで測定したメルトマスフローレイト(MFR)が0.6〜1.2グラム/10分であり、190℃で測定した溶融張力(MT)が55グラム以上であり、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量5万以下の成分の含有率が10質量%以下である、スチレン系樹脂。
【0012】
(2)上記メルトマスフローレイト(MFR)が0.8〜1.0グラム/10分である、上記(1)に記載のスチレン系樹脂。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)に記載のスチレン系樹脂を押出発泡成形して得られる、押出発泡シート。
【0014】
上記(3)に記載の押出発泡シートを真空成型して得られる、容器。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスチレン系樹脂及びこれを用いて成形された押出発泡シートを用いることにより、少量の材料で製品強度に優れた発泡容器を得ることができ、本発明は製品のコストダウンに寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】押出発泡トレーの腰強度を測定する方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0018】
<スチレン系樹脂>
本発明は、200℃及び49Nで測定したメルトマスフローレイト(MFR)が0.6〜1.2グラム/10分であり、190℃で測定した溶融張力(MT)が55グラム以上であり、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量5万以下の成分の含有率が10質量%以下である、スチレン系樹脂を提供する。
【0019】
本発明のスチレン系樹脂は、典型的にはスチレン系単量体を重合させて得ることができる。スチレン系樹脂は、スチレン系単量体のみを重合させて得られるものでもよいが、本発明の目的を損なわない範囲で、スチレン系単量体と共重合可能なコモノマーが共重合されたものでもよい。スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−,m−,及びp−メチルスチレン、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン等を用いることができる。中でも、経済的に入手しやすい観点からスチレンが好ましい。スチレン系単量体は1種類又は2種類以上の併用で使用できる。
【0020】
スチレン系単量体と共重合可能なコモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類等の不飽和脂肪酸エステル類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和脂肪酸類、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和ジ脂肪酸無水物類,N−フェニルマレイミド等の不飽和ジ脂肪酸イミド類等が挙げられる。これらのコモノマーは1種類又は2種類以上の併用で使用できる。
【0021】
本発明において、スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を熱重合又は有機過酸化物を重合開始剤として重合することができる。有機過酸化物の具体例としては、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等のジアルキルパーオキサイド類、ベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジミリスチルパーオキシジカーボネート等のパーオキシエステル類、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、p−メンタハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーアミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)ブタン、2,2−ビス(4,4−ジクミルパーオキシシクロヘキシル)プロパン等の多官能開始剤類を挙げることができる。特に、溶融張力を高くしやすい観点から2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンが好ましい。
【0022】
スチレン系樹脂の重合方法には特に制約はなく、通常の塊状重合、溶液重合、懸濁重合等が用いられる。上記の有機過酸化物はスチレン単量体の重合のいずれかの工程にて重合系(重合原料又は重合途中の中間物)に添加される。重合系は、例えば上記溶液重合の場合においては重合原料溶液または重合途中の中間物溶液である。これらの有機過酸化物は重合原料に加えられても、重合途中の中間物に必要に応じて複数回に分割して添加してもよい。上記有機過酸化物の添加量は重合原料100質量部に対して好ましくは0.0005〜0.2質量部であり、より好ましくは0.01〜0.1質量部であり、さらに好ましくは0.03〜0.08質量部である。上記有機過酸化物の添加量が0.0005質量部未満の場合は開始剤添加の効果が低い傾向がある。又、0.2質量部を越える場合は重合時に大量の反応熱が発生するため重合の制御が困難である傾向がある。
【0023】
また、本発明においては分子量調整のために、重合系中に溶媒や連鎖移動剤を含有させることも可能である。溶媒としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等を使用できる。溶媒の使用量は特に限定されるものではないが、重合系中の含有量で0質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。連鎖移動剤としてはn−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマー等を使用でき、α−メチルスチレンダイマーが好ましい。連鎖移動剤の使用量としては、重合原料を100質量部としたときに0.01質量部〜1質量部の範囲であることが好ましい。
【0024】
反応温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは90〜180℃の範囲である。反応温度が80℃以上である場合は生産性が高く工業的に適当であり、200℃以下である場合は低分子量重合体が多量に生成することを防止できる。スチレン系樹脂の目標分子量が重合温度のみで調整できない場合は、開始剤量、溶媒量、連鎖移動剤量等で制御すればよい。反応時間は一般に0.5〜20時間、より好ましくは2〜10時間である。反応時間が0.5時間以上である場合は反応が良好に進行し、20時間以下である場合は生産性が高く工業的に適当である。
【0025】
スチレン系単量体の重合転化率については、特に限定されるものではないが、工業的な見地から、40%以上であることが望ましい。溶液重合の場合には、上記のようにして重合を進行させることで得られる重合溶液から未反応単量体及び溶媒を除去することにより、目的とするスチレン系樹脂を分離することができる。懸濁重合の場合は、該分離を行なわずそのまま次の工程に供することができる。
【0026】
本発明のスチレン系樹脂は、スチレン系樹脂の分野で慣用されている添加剤、例えば酸化防止剤、滑剤、難燃剤、着色剤等と本発明の目的を損なわない範囲で組合されることによりスチレン系樹脂組成物として使用されてもかまわない。添加剤としては、具体的には流動パラフィン、白色鉱油等の可塑剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の滑剤、ヘキサブロモシクロドデカン等の難燃剤、酸化チタン、カーボンブラック等の着色剤等が挙げられる。またスチレン系樹脂をペレットとし、該ペレットの外部潤滑剤として、エチレンビスステアリルアミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等をペレットにまぶしてもよい。
【0027】
本発明のスチレン系樹脂の200℃及び49N荷重におけるメルトマスフローレイト(MFR)は0.6〜1.2グラム/10分である。MFRが0.6グラム/10分より小さいと押出時の吐出量が低下する上、スチレン系樹脂を用いて得られる製品の外観が荒れたものになる。またMFRが1.2グラム/10分より大きいと製品、特に発泡成型品の強度が低下して、製品の軽量化と強度維持との両立という効果が達成できない。好ましいMFRの範囲は0.8〜1.0グラム/10分であり、より好ましいMFRの範囲は0.85〜0.95グラム/10分である。なお上記MFRは、JIS K 7210に従って200℃及び49Nで測定される値である。
【0028】
上記MFRを0.6グラム/10分以上にする手段としては、重合温度を低めにして分子量を高めることが挙げられる。また、上記MFRを1.2グラム/10分以下にする手段としては、重合温度を高めにしたり、連鎖移動剤を添加することで分子量を下げることが挙げられる。
【0029】
また本発明のスチレン系樹脂の190℃で測定した溶融張力(MT)は55グラム以上である。溶融張力が55グラム未満であると、スチレン系樹脂を用いて得られる製品、特に発泡成型品の強度が低下して、製品の軽量化と強度維持との両立という効果が達成できない。上記溶融張力は、好ましくは57グラム以上、より好ましくは60グラム以上である。一方、上記溶融張力が高すぎる場合には、真空成型が困難となる傾向があるため、上記溶融張力は、80グラム以下であることが好ましく、70グラム以下であることがより好ましい。なお、上記溶融張力とは以下の方法に従って測定した値をいう。メルトテンションテスター(例えば東洋精機(株)製メルトテンションテスター)を用いて、温度190℃,押出速度20mm/分,オリフィスL/D=8mm/2.095mm,引き取り速度3140mm/分の条件下で測定する。
【0030】
上記溶融張力を55グラム以上にする手段としては、分子量を高くすることや、高分子量成分量を多くすることが挙げられる。また、上記溶融張力を80グラム以下にする手段としては、分子量を高くしすぎないことが挙げられる。
【0031】
本発明のスチレン系樹脂をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したときの分子量5万以下の成分の含有率は10質量%以下である。分子量5万以下の成分が10質量%を超えると、スチレン系樹脂を用いて得られる製品、特に発泡成型品の強度が低下し、軽量化と強度維持の両立という効果が達成できない。分子量5万以下の成分の含有率は、好ましくは8質量%以下、より好ましくは7質量%以下である。なお上記含有率は、GPC測定を常法(例えば以下の条件)にて行い、得られたピークから、積分により、分子量5万以下の成分の含有率を算出することにより得られる値である。使用装置:東ソー製HLC8020、分別カラム:東ソー製TSK−gel−GMH−XL、測定溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:スチレン系樹脂5mgを10mlの溶媒に溶解。測定温度:40℃、流速:0.35ml/分。
【0032】
分子量5万以下の成分の含有率を10質量%以下にする手段としては、重合温度を高くしすぎないことが挙げられる。
【0033】
本発明のスチレン系樹脂の、上記GPCにより測定される重量平均分子量は、30万〜42万であることが好ましい。上記重量平均分子量が30万以上である場合、製品強度が高く良好であり、42万以下である場合、押出発泡成形時の生産量が低下しない点で好都合である。上記重量平均分子量は、32万〜40万であることがより好ましく、34万〜38万であることがさらに好ましい。
【0034】
本発明は、上述した本発明のスチレン系樹脂を押出発泡成形して得られる、押出発泡シートも提供する。本発明のスチレン系樹脂を用いて押出発泡シートを製造する方法としては、通常知られている押出発泡成形方法を用いることができる。成形方法としては、タンデム型の押出機と丸ダイを備えたPSP成形機を用いる方法が好ましく選択される。押出発泡成形時の発泡剤及び発泡核剤としては通常用いられる物質を使用できる。発泡剤としてはブタン、ペンタン、フロン、水等を使用することができ、高発泡倍率が得られやすい観点からブタンが好適である。また発泡核剤としてはタルク等を使用できる。ポリスチレン系樹脂を用いて得られる本発明の押出発泡シートにおいては、軽量性と強度とのバランスの観点から、厚みが0.5mm〜5.0mmであることが好ましく、見かけ密度が50g/L〜300g/Lであることが好ましく、そして坪量が80g/m2〜300g/m2であることが好ましい。
【0035】
また、本発明の押出発泡シートには、耐油性の改良や意匠性の向上の目的で例えばフィルムをラミネートしてもよい。使用するフィルムの種類としては、一般のポリスチレンに使用されるものとして、例えばCPPフィルム、HIPSフィルム(必要に応じて印刷されたもの)等が挙げられる。
【0036】
本発明は、上述した本発明の押出発泡シートを真空成型して得られる容器も提供する。上述の本発明の押出発泡シートを従来公知の方法で真空成型することにより、トレー、丼容器、納豆容器等の容器を形成できる。真空成型条件としては、通常、120〜150℃の条件が好ましく選択される。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例及び比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
以下に分析法と発泡体特性の測定法を記す。
【0038】
(1)メルトマスフローレイト
JIS K 7210に従って200℃及び49Nで、スチレン系樹脂のメルトマスフローレイトを測定した。
(2)溶融張力
使用装置:東洋精機(株)製メルトテンションテスター、温度:190℃、押出速度:20mm/分、オリフィスL/D=8mm/2.095mm、引き取り速度:3140mm/分で、スチレン系樹脂の溶融張力を測定した。
(3)容器の腰強度試験
図1は、押出発泡トレーの腰強度を測定する方法について説明する図である。押出発泡シートを図1に示すようなトレーに真空成型し、得られた押出発泡トレーの腰強度を測定した。トレー容器の大きさは縦12cm、横20cm、深さ2cmである。トレーの横側面より圧縮して極大荷重を腰強度とした。
(4)分子量測定
使用装置:東ソー製HLC8020、分別カラム:東ソー製TSK−gel−GMH−XL、測定溶媒:テトラヒドロフラン、試料濃度:スチレン樹脂5mgを10mlの溶媒に溶解。測定温度:40℃、流速:0.35ml/分で、スチレン系樹脂の分子量を測定した。
【0039】
[実施例1]
[スチレン系樹脂の製造]
スチレン84質量%とエチルベンゼン16質量%との混合液100質量部に対して、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンを0.037質量部添加して得た重合原料液を、4.6リットルの完全混合型反応器に0.51リットル/Hrで連続的に仕込み、100℃に調整した。反応器出口の反応率は43%であった。
【0040】
完全混合型反応器と並列に接続された、攪拌器を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−1に、スチレン70質量%とエチルベンゼン30質量%との混合液100質量部に対して、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン0.037質量部及びα−メチルスチレンダイマー0.05質量部を添加して得た重合原料液を0.14リットル/Hrで連続的に仕込み、層流型反応器−1の温度を85℃/110℃/116℃に順次調節した。反応器出口の反応率は44%であった。
【0041】
完全混合型反応器と層流型反応器−1との重合体溶液を混合し、混合された重合体溶液を引き続き、静的攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−2及びそれと直列に配された、静的攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−3に連続的に仕込んだ。層流型反応器−2の温度を103℃/117℃/130℃に、また層流型反応器−3の温度を135℃/142℃/144℃に調整した。反応器出口の反応率は70%であった。
【0042】
重合反応器より連続して排出される重合体溶液を、直列に配置した2基の、予熱器として0.6リットルの静的混合器を内蔵した4リットルの脱揮タンクに導いた。予熱器温度を240℃とし、脱揮タンク内で240℃に保ちながら、10torrの減圧下、脱揮後に得られるスチレン系樹脂をペレタイズした。重合条件を表1に示す。また、得られたスチレン系樹脂のゲルパーミエーション・クロマトマトグラフィーによる分子量測定、メルトマスフローレイト測定、及び溶融張力側定を行った。この結果を表3に示す。
【0043】
メルトマスフローレイトは1.0グラム/10分であった。190℃で測定した溶融張力は57グラムであった。分子量5万以下の成分量は7.7質量%であった。
【0044】
[スチレン系樹脂組成物の発泡押出し]
直径150mmのサーキュラーダイを備えた押出発泡機を用い、上記のスチレン系樹脂100質量部に対して、発泡核剤としてタルク(平均粒径1.3μm)を0.15質量部、及び発泡剤として液化ブタンを4質量部添加してなるスチレン系樹脂組成物を押出し発泡成形して、押出発泡シートを製造した。樹脂溶融ゾーンの温度を200〜230℃、ロータリークーラー温度を130〜170℃、ダイス温度を150℃にそれぞれ調整した。押出発泡直後の発泡体を冷却マンドレルで冷却し、円周上の1点でカッターにより切断した後、幅:1000mm、シート厚み:1.9mm、見かけ密度:100g/L(発泡倍率:10.5倍)、坪量:180g/m2の押出発泡シートを得た。
【0045】
[押出発泡シートの熱成形]
上記押出発泡シートを真空成型して図1に示す形状の発泡トレー容器を得た。この容器について腰強度の測定を行った結果を表3に示す。
【0046】
[実施例2]
液化ブタン量を5質量部にして発泡倍率を高くした以外は実施例1と同様に実施した。結果を表3に示す。
【0047】
[実施例3,4]
重合条件を表1の通り変更した以外は実施例2と同様に実施して、表3に示す性状のスチレン系樹脂を製造した。結果を表3に示す。
【0048】
[比較例1]
[スチレン系樹脂の製造]
スチレン90質量%とエチルベンゼン10質量%との混合液100質量部に対して、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサンを0.015質量部添加して得た重合原料液を、4.6リットルの完全混合型反応器に0.74リットル/Hrで連続的に仕込み、118℃に調整した。完全混合型反応器と並列に接続された、攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−1、にスチレン70質量%とエチルベンゼン30質量%との混合液100質量部に対して、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン0.015質量部を添加して得た重合原料液を0.25リットル/Hrで連続的に仕込み、層流型反応器−2の温度を100℃/105℃/105℃に順次調節した。
【0049】
完全混合型反応器と層流型反応器−1との重合体溶液を混合し、混合された重合体溶液を引き続き、静的攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−2及びそれと直列に配された、攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−3に連続的に仕込んだ。層流型反応器−2及び層流型反応器−3の温度を100℃/110℃/110℃及び130℃/135℃/140℃に調整した。
【0050】
重合反応器より連続して排出される重合体溶液を、直列に配置した2基の、予熱器として0.6リットルの静的混合器を内蔵した4リットルの脱揮タンクに導いた。予熱器温度を240℃とし、脱揮タンク内で240℃に保ちながら、10torrの減圧下、脱揮後に得られるスチレン系樹脂をペレタイズした。
【0051】
上記以外は実施例1と同様に実施した。重合条件を表1に示す。また結果を表3に示す。
【0052】
[比較例2]
重合条件を表1の通り変更した以外は比較例1と同様に実施して、表3に示す性状のスチレン系樹脂を製造した。結果を表3に示す。
【0053】
[比較例3]
[スチレン系樹脂の製造]
スチレン90質量%とエチルベンゼン10質量%との混合液100質量部に対して、2,2−ビス(4,4−ジターシャリーブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンを0.035質量部添加して得た重合原料液を、4.6リットルの完全混合型反応器に0.78リットル/Hrで連続的に仕込み、101℃に調整した。重合体溶液を引き続き、攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−1に連続的に仕込んだ。層流型反応器−1の温度を105℃/108℃/110℃に調整した。
【0054】
完全混合型反応器及び層流型反応器−1と並列に接続された、攪拌器を備え、3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−2に、スチレン80質量%とエチルベンゼン20質量%との混合液100質量部に対して、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン0.07質量部及びn−ドデシルメルカプタン0.35質量部を添加して得た重合原料液を0.42リットル/Hrで連続的に仕込み、層流型反応器−2の温度を140℃/150℃/160℃に順次調節した。
【0055】
層流型反応器−1と層流型反応器−2との重合体溶液を混合し、混合された重合体溶液を引き続き、静的攪拌器を備え3ゾーンで温度コントロール可能な1.5リットルの層流型反応器−3に連続的に仕込んだ。層流型反応器−3の温度を120℃/130℃/145℃に調整した。
【0056】
重合反応器より連続して排出される重合体溶液を、直列に配置した2基の、予熱器として0.6リットルの静的混合器を内蔵した4リットルの脱揮タンクに導いた。予熱器温度を240℃とし、脱揮タンク内で240℃に保ちながら、10torrの減圧下、脱揮後に得られるスチレン系樹脂をペレタイズした。重合条件を表2に示す。また、得られたスチレン系樹脂のゲルパーミエーション・クロマトマトグラフィーによる分子量測定、メルトマスフローレイト測定、及び溶融張力側定を行った。この結果を表3に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明のスチレン系樹脂は、例えばトレー等の発泡容器の用途に対して好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
200℃及び49Nで測定したメルトマスフローレイト(MFR)が0.6〜1.2グラム/10分であり、190℃で測定した溶融張力(MT)が55グラム以上であり、かつゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したときの分子量5万以下の成分の含有率が10質量%以下である、スチレン系樹脂。
【請求項2】
前記メルトマスフローレイト(MFR)が0.8〜1.0グラム/10分である、請求項1に記載のスチレン系樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスチレン系樹脂を押出発泡成形して得られる、押出発泡シート。
【請求項4】
請求項3に記載の押出発泡シートを真空成型して得られる、容器。

【図1】
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【公開番号】特開2011−32362(P2011−32362A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−179458(P2009−179458)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(500199479)PSジャパン株式会社 (45)
【Fターム(参考)】