説明

スチームパイプ式カンバス洗浄装置

【課題】カンバスの表面及びカンバス内部に付着した、タール、ピッチ等従来の洗浄方法では除去が困難な粘着性異物を低コストで効果的に洗浄除去すること。
【解決手段】幅方向に蒸気噴射用のスロットを持つスチームパイプのスロット面を走行するカンバスに密着させ、カンバスの内部で蒸気を爆発的に膨張させつつ貫通させる事により、粘着性のある異物をカンバス内部および表面より効果的に排出洗浄する。本発明装置は従来の装置に比べ構造も簡単で低コストで製作できる。又、製紙機械で使用する蒸気が利用出来る為、運転コストも大きく低減可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙機械における多筒式シリンダードライヤーで使用されるカンバスの蒸気の膨張力と高温による洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製紙機械のカンバスは、紙をシリンダードライヤーの表面に押付け紙の乾燥を促進させる為の物であるが、製紙パルプに含まれる異物により目詰まりを起こと効果的な乾燥が阻害される。この為、連続又は定期的にカンバスを洗浄し異物を除去する事が不可欠である。
製紙パルプの品質は、古紙の使用拡大に伴い益々多くの異物含む様になり、カンバスの効果的な洗浄要求は一層強まっている。
【0003】
現在一般的に使われているカンバス洗浄装置は、100~400Barの高圧水をカンバスに吹付ける事により異物除去の方法を取っている。これらの装置は高圧ポンプに加えて、飛散する異物と水滴を捕獲除去する為の回収装置等の大型設備を必要である。又、高圧ポンプは常にメンテナンスを必要としている。
【0004】
更にこれらの洗浄装置では、異物の完全な洗浄除去が出来ない為、洗浄薬品の併用が必要である。
【0005】
これらの問題の解決策として、複数のノズルより高圧蒸気をカンバスに噴射し異物の除去を目指す装置が有るが、この方法では蒸気がカンバスに到達する前に大気解放されカンバス外部で膨張する為、膨張力がカンバス内部の洗浄に有効に機能しない問題がある。
【特許文献1】特開平7−48794公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
背景技術で述べた、高圧水式洗浄装置に関わる設備コスト、メンテナンスコスト、薬品コストを大幅に低減しつつ、効果的にカンバスを洗浄する点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスチームパイプ式洗浄装置は、パイプ内に封印された蒸気をカンバス内部で爆発的に膨張させつつカンバスを貫通させる事により、効果的にカンバスに付着した異物を除去洗浄する。
【発明の効果】
【0008】
高温蒸気により、ピッチ、タール等カンバス内部に付着した粘着性異物を軟化させつつ蒸気がカンバス内部で爆発的に膨張貫通する為、高圧水式洗浄装置では困難であったカンバス内部に付着した粘着性異物の洗浄が容易となる。
【0009】
又本発明で使う蒸気は製紙機械のドライヤーで発生する蒸気を使う為、高額でメンテナンスを必要とする高圧ポンプも不要である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の構成機器とカンバスの位置関係及び作動の原理を示す説明図である。
【符号の説明】
【0011】
1 ドレーン及び異物回収フード
2 スチームパイプ本体
3 カンバス押えブレード
4 カンバス押え及び異物掻きとり用ブレード
5、6 蒸気噴出口構成ブレード
7 残留異物掻取り用回転ブラシ
8 ドレーン、異物受け用トローフ
9 ドレーン、異物排出口へ
10 スチーム噴出口

【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
カンバスを図1に示す様に、スチームパイプ(図中番号2)の狭いスロット(図中番号10)の上面を塞ぐ様通過させる事により、パイプ内に封印された蒸気がカンバス内部で爆発的に膨張しつつカンバスを貫通する。カンバスの内部に付着したピッチ、タール等粘着性異物も、蒸気の高温により軟化し、蒸気の爆発的膨張力で表面に噴き出される。噴き出された異物のうち、カンバス上面に残留する異物は回転ブラシ(図中番号7)または掻落し用ブレード(図中番号4)で取り除き装置外に排出する。カンバス押え用ブレード(図中番号3)、掻落し用ブレード(図中番号4)及び蒸気噴出口を構成するブレード(図中番号5,6)は、製紙機械で一般的に使用されるセラミックブレードを利用する事が出来る。又、従来のカンバス洗浄装置では、洗浄水及び除去された異物の飛散防止の為に強力な吸引装置を必要としたが、本装置では膨張した蒸気の力により、異物はドレーン水と共に排出口(図中番号8)より自然排出する事も可能と成る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面の幅方向に少とも一条の狭いスロットがあるスチームパイプを持ち、スロットから噴出する蒸気の膨張力と高温により、カンバス表面及び内部に付着した異物を吹き飛ばし洗浄するカンバス洗浄装置。
【請求項2】
上記請求項1において、スロットの替りにスチームパイプの上面の幅方向に多数の微細
な蒸気噴出孔を持つカンバス洗浄装置。
【請求項3】
上記請求項1において、カンバス表面に残留する異物を効果的に掻き取る回転ブラシを持つカンバス洗浄装置。
【請求項4】
上記請求項1において、蒸気噴出口を構成する取換え可能なブレードを持つカンバス洗浄装置。
【請求項5】
上記請求項1において、カンバス表面を蒸気噴出口に押付けると共に、カンバスの反対表面に残留した異物を掻取る為の取り換え可能なブレードを持つカンバス洗浄装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−100973(P2010−100973A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−274800(P2008−274800)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【特許番号】特許第4296329号(P4296329)
【特許公報発行日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(305008802)株式会社ダイリーインターナショナル (3)
【Fターム(参考)】