説明

ステアリングシステム

【課題】主に、ステアリングホイールの操舵範囲を規定し得るようにする。
【解決手段】操舵装置3と転舵装置4とが機械的に分離された状態で設置され、操舵装置3と転舵装置4とを制御可能な制御装置5が設けられると共に、操舵装置3が、少なくとも、ステアリングホイール6を有するコラムシャフト7と、反力発生装置8,9と、両者間に設けられた歯車式の減速機構11とを備えたステアリングシステム1であって、ステアリングホイール6の操舵範囲を規定可能な操舵範囲規定機構51を設けると共に、この操舵範囲規定機構51がコラムシャフト7の部分に備えられるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステアリングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には、通常、ステアリングシステムが備えられている。このようなステアリングシステムには、ステアバイワイヤシステムなどと呼ばれるものが存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このステアバイワイヤシステムは、操舵装置と転舵装置とを機械的に分離された状態で設けると共に、この操舵装置と転舵装置とを制御装置によって制御するようにしたものである。
【0004】
上記した操舵装置は、少なくとも、ステアリングホイールを有するコラムシャフトと、ステアリングホイールに(操舵)反力を発生可能な反力発生装置とを備えている。
【0005】
そして、操舵装置には、コラムシャフトと反力発生装置とを、直結させた直接駆動式のものと、歯車式の減速機構を介して間接的に接続した間接駆動式のものとが存在している。
【0006】
このうち、直接駆動式のものには、必要トルクを達成するために反力発生装置を構成するモータが大型化してしまうという欠点があることが知られている。これに対して、間接駆動式のものは、減速機構によって、反力発生装置のモータを小さくしつつ大きなトルクを達成することができるという利点があることが知られている。
【0007】
このような構成によれば、操舵装置を操作すると、制御装置がこれを検知して転舵装置へ制御信号を送り、転舵装置を転舵させる。同時に、転舵装置が転舵されると、制御装置がこれを検知して操舵装置の反力発生装置へ制御信号を送り、操舵装置のコラムシャフトおよびステアリングホイールに操舵反力を発生させる。
【0008】
この際、コラムシャフトと反力発生装置とを歯車式の減速機構を介して間接的に接続させることにより、上記したように、反力発生装置のモータを小さくしつつ大きなトルクを達成することができる。
【特許文献1】特開2001−130426号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記ステアリングシステムには、操舵装置と転舵装置とが、機械的に分離されていることから、ステアリングホイールの操舵範囲を転舵装置によって規定することができないという問題があった。
【0010】
なお、上記した以外にも、本発明に至る過程で新たな問題やその他の問題などが発生することも考えられるが、そのようなものについては、本発明の実施例の中で説明することによって、この欄での記載に代えることができるものとする。但し、必要な場合には、この欄に流用することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載された発明は、操舵装置と転舵装置とが機械的に分離された状態で設置され、操舵装置と転舵装置とを制御可能な制御装置が設けられると共に、操舵装置が、少なくとも、ステアリングホイールを有するコラムシャフトと、反力発生装置と、両者間に設けられた歯車式の減速機構とを備えたステアリングシステムにおいて、ステアリングホイールの操舵範囲を規定可能な操舵範囲規定機構を設けると共に、該操舵範囲規定機構が、コラムシャフトの部分に備えられたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載された発明は、上記において、前記操舵範囲規定機構が、コラムシャフトのステアリングホイールとは反対側の端部に備えられた筒嵌合構造部を有すると共に、該筒嵌合構造部が、外筒部と、該外筒部の内部に、外筒部に対して相対的に回転自在および軸方向移動自在に挿入された筒挿入部とを有し、前記筒嵌合構造部が、外筒部と筒挿入部との相対的な回転範囲を規定可能な回転範囲規定部を備え、前記筒嵌合構造部が、外筒部と筒挿入部との相対的な軸方向移動を許容可能な軸線方向移動許容部を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載された発明は、上記において、前記外筒部が、コラムシャフトのステアリングホイールとは反対側の端部に形成された円筒状部分とされると共に、前記筒挿入部が、前記円筒状部分の内部に、その一部を挿入配置されたスライド軸部とされ、該回転範囲規定部が、円筒状部分とスライド軸部との挿入部分の、一方に設けられた螺旋状溝部と、他方に設けられた溝倣部とを備え、前記溝倣部が螺旋状溝部に倣うと共に、螺旋状溝部の溝端部にて停止されることによりステアリングホイールの操舵範囲を規定可能に構成され、前記軸線方向移動許容部が、前記スライド軸部の円筒状部分外の部分を、軸線方向移動可能に支持する軸線方向移動可能支持部とされたことを特徴としている。
【0014】
なお、上記は、それぞれ、所要の作用効果を発揮するための必要最小限の構成であり、上記構成の詳細や、上記されていない構成については、それぞれ自由度を有しているのは勿論である。そして、上記構成の記載から読取ることが可能な事項については、特に具体的に記載されていない場合であっても、その範囲内に含まれるのは勿論である。また、上記以外の構成を追加した場合には、追加した構成による作用効果が加わることになるのは勿論である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、操舵範囲規定機構を備えることにより、操舵装置と転舵装置とが機械的に分離されている場合であっても、即ち、操舵装置と転舵装置との間で、機械的にステアリングホイールの操舵範囲を規定することができない場合であっても、操舵範囲規定機構の機能によって、ステアリングホイールの操舵範囲を規定することが可能となる。そして、このような操舵範囲規定機構を、コラムシャフトの部分に対して備えることによって、操舵範囲規定機構を、構造に無理がなくしかも小型化の容易なものとすることが可能となる。
【0016】
請求項2の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、ステアリングホイールを操作すると、コラムシャフトが回転される。このコラムシャフトの回転によって、コラムシャフトのステアリングホイールとは反対側の端部に備えられた筒嵌合構造部の外筒部と筒挿入部とが、相対的に回転される。この際、筒嵌合構造部に設けられた回転範囲規定部が機能することによって、外筒部と筒挿入部との相対的な回転範囲が規定される。これにより、ステアリングホイールの操舵範囲を規定することができる。また、筒嵌合構造部に設けられた軸線方向移動許容部によって、外筒部と筒挿入部との相対的な軸方向移動が許容される。これにより、外筒部と筒挿入部との相対的な回転が、1回転以上となる場合に生じる、外筒部と筒挿入部との相対的な軸方向への移動を許容させることが可能となる。このように、操舵範囲規定機構を、外筒部と筒挿入部とを有する筒嵌合構造部で主に構成したことによって、操舵範囲規定機構の構造簡略化、小型化、低価格化などを図ることが可能となる。また、筒嵌合構造部に対して、回転範囲規定部や軸線方向移動許容部を簡単に設けることが可能となる。
【0017】
請求項3の発明によれば、上記構成によって、以下のような作用効果を得ることができる。即ち、上記したように、ステアリングホイールの操作によってコラムシャフトが回転されると、スライド軸部に対して円筒状部分が回転される。すると、回転範囲規定部では、円筒状部分(の内周部)とスライド軸部(の外周部)との挿入部分の、一方に設けられた螺旋状溝部に、他方に設けられた溝倣部が倣うことになる。そして、溝倣部が螺旋状溝部の溝端部に達して停止されると、それ以上コラムシャフトを回転することができなくなる。これによって、ステアリングホイールの操舵範囲が規定される。この際、スライド軸部は、円筒状部分外の部分が、軸線方向移動可能支持部によって、支持状態のまま軸線方向に移動される。これによって、螺旋状溝部と溝倣部とによって、スライド軸部に対し円筒状部分が1回転以上回転されるような場合でも、スライド軸部の軸方向への移動を許容させることができる。そして、コラムシャフトのステアリングホイールとは反対側の端部に形成した円筒状部分を外筒部とし、この円筒状部分の内部に、筒挿入部としてスライド軸部を挿入することにより、筒嵌合構造部を、コラムシャフトの径寸法内の大きさにて構成することができるので、一層の小型化を図ることが可能となる。また、円筒状部分とスライド軸部との挿入部分の間に、螺旋状溝部と溝倣部とを設けたことにより、回転範囲規定部の構成を簡単で小型のものとすることができる。特に、スライド軸部の外周部に螺旋状溝部を設け、円筒状部分の内周部に溝倣部を設けることにより、回転範囲規定部を最も簡単な構成とすることができる。更に、スライド軸部の円筒状部分外の部分を、軸線方向移動可能支持部で軸線方向移動可能に支持することにより、軸線方向移動可能支持部を最も簡単で小型のものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、主に、ステアリングホイールの操舵範囲を規定し得るようにすることを目的としている。
【0019】
以下、本発明を具体化した実施例について、図示例と共に説明する。
【0020】
なお、以下の実施例は、上記した背景技術や発明が解決しようとする課題などと密接な関係があるので、必要が生じた場合には、互いに、記載を流用したり、必要な修正を伴って流用したりすることができるものとする。
【実施例】
【0021】
図1〜図3は、この発明の実施例を示すものである。
【0022】
<構成>まず、構成について説明する。
【0023】
図1に示すように、自動車などの車両には、通常、ステアリングシステム1が備えられる。そして、このステアリングシステム1を、ステアバイワイヤシステム2とする。
【0024】
このステアバイワイヤシステム2では、操舵装置3と転舵装置4とが機械的に分離された状態で設けられる。そして、この操舵装置3と転舵装置4とが制御装置5によって制御し得るように構成される。
【0025】
上記した操舵装置3には、少なくとも、ステアリングホイール6を有するコラムシャフト7と、反力発生装置8,9とが備えられている。
【0026】
そして、この操舵装置3は、コラムシャフト7と反力発生装置8,9とが歯車式の減速機構11を介して間接的に接続された間接駆動式のものとされる。
【0027】
この場合には、反力発生装置8,9は、少なくとも二基設けられている。また、減速機構11が、少なくとも、コラムシャフト7に取付けられたプライマリーギヤ12を有している。そして、少なくとも二基の反力発生装置8,9が、プライマリーギヤ12に対し少なくとも二箇所の位置で直接又は間接的に噛合うように構成されている。
【0028】
この場合には、少なくとも二基の反力発生装置8,9が、反力発生用モータ13,14などの駆動装置を有するものとされている。そして、この反力発生用モータ13,14の出力軸には、モータピニオンギヤ15,16がそれぞれ取付けられている。そして、このモータピニオンギヤ15,16が、減速機構11を構成するセカンダリーギヤ17,18を介してそれぞれプライマリーギヤ12に間接的に噛合わされている。なお、セカンダリーギヤ17,18は、モータピニオンギヤ15,16に対するギヤ部と、プライマリーギヤ12に対するギヤ部とを同軸上に二段に有する二段ギヤなどとされている。
【0029】
一方、転舵装置4は、特に詳細には説明しないが、転舵モータ21によって、軸線方向22(ほぼ車幅方向)へ移動可能とされたステアリングラック23と、このステアリングラック23の両端にボールジョイント24を介して連結された左右のタイロッド25と、このタイロッド25の両端に図示しないボールジョイント24を介して連結された左右の転舵輪26などが備えられている。
【0030】
そして、制御装置5は、主にコンピュータユニットなどのコントロール装置31によって構成されている。このコントロール装置31は、コラムシャフト7などに取付けられたトルクセンサ32からのトルク検出信号33および角度センサ34からの角度検出信号35、車体情報36(車速や図示しないヨーレートセンサなどからの信号)、ステアリングラック23などに取付けられた転舵角センサ37からの転舵角検出信号38などを入力して、操舵装置3の反力発生装置8,9(反力発生用モータ13,14)へ制御信号41,42を送って操舵反力を発生させるなどすると共に、転舵装置4の転舵モータ21へ制御信号45を送って転舵させるなどの制御を行うように構成されている。
【0031】
そして、以上のような構成に対し、この実施例のものでは、以下のような構成を備えている。
【0032】
(1)ステアリングホイール6の操舵範囲を規定可能な操舵範囲規定機構51を設けるようにする。そして、操舵範囲規定機構51を、コラムシャフト7の部分に備えるようにする。
【0033】
(2)上記において、操舵範囲規定機構51が、コラムシャフト7のステアリングホイール6とは反対側の端部に備えられた筒嵌合構造部53を有するものとする。そして、筒嵌合構造部53が、外筒部54と、この外筒部54の内部に、外筒部54に対して相対的に回転自在および軸方向移動自在に挿入された筒挿入部55とを有するものとする。筒嵌合構造部53が、外筒部54と筒挿入部55との相対的な回転範囲を規定可能な回転範囲規定部56を備えるようにする。また、必要に応じて、筒嵌合構造部53が、外筒部54と筒挿入部55との相対的な軸方向移動を許容可能な軸線方向移動許容部57を備えるようにする。
【0034】
(3)上記において、より具体的に、外筒部54を、コラムシャフト7のステアリングホイール6とは反対側の端部に形成された円筒状部分61とする。また、筒挿入部55を、円筒状部分61の内部に、その一部を挿入配置されたスライド軸部62とする。更に、回転範囲規定部56が、円筒状部分61とスライド軸部62との挿入部分の、一方に設けられた螺旋状溝部63と、他方に設けられた溝倣部64とを備えるようにする。そして、溝倣部64が螺旋状溝部63に倣うと共に、螺旋状溝部63の溝端部にて停止されることによりステアリングホイール6の操舵範囲を規定可能に構成されるようにする。また、軸線方向移動許容部57が、スライド軸部62の円筒状部分61外の部分を、軸線方向移動可能に支持する軸線方向移動可能支持部65とされる。
【0035】
(4)上記のより詳細な構成は、以下の通りである。
【0036】
操舵範囲規定機構51は、操舵装置3と転舵装置4との間で、機械的にステアリングホイール6の操舵範囲を規定するようにしたもの以外ものとされる。
【0037】
特に図示しないが、筒嵌合構造部53は、構造が許せば、コラムシャフト7を筒挿入部55とし、その外側に外筒部54を嵌合した構造とすることも考えられる。
【0038】
円筒状部分61およびスライド軸部62は、コラムシャフト7に対して同心状に設けられる。円筒状部分61は、コラムシャフト7のステアリングホイール6とは反対側の端部を所要の長さ分だけ延長すると共に、この延長部分に対して軸線方向に穿設形成される。これによって、円筒状部分61は、その内部に、ステアリングホイール6とは反対側の端部が開口された円筒状空間を有するものとされる。スライド軸部62は、円筒状部分61の内径と同じかそれよりも若干小径の外径を有する円柱状部材または円筒状部材などとされる。
【0039】
螺旋状溝部63は、ステアリングホイール6の操舵範囲に及ぶものとされる。ステアリングホイール6の操舵範囲は、概ね、コラムシャフト7を2〜3回転させ得る程度の長さなどとされる。螺旋状溝部63は、1条または2条設けられる(図2には、180度位相をズラせて螺旋状溝部63を2条分設けた例が開示されている。また、図3には、螺旋状溝部63を1条とした例が開示されている)。なお、上記した条数とすれば十分ではあるが、必要な場合には、螺旋状溝部63は、3条またはそれ以上設けることもできる。螺旋状溝部63を複数条設ける場合には、周方向に対してほぼ均等に配置するのが好ましい。溝倣部64は、各螺旋状溝部63に対応させて、少なくとも1個また2個程度設けられる(図2には、2条分の螺旋状溝部63に対して溝倣部64を1個ずつ設けた例が開示されている)。なお、溝倣部64が複数個設けられている場合には、溝倣部64は、対応する螺旋状溝部63の少なくとも一方の溝端部にて停止されるようにすることができる。
【0040】
この場合には、螺旋状溝部63は、スライド軸部62の外周面部分に直接刻設されている。その他にも、螺旋状溝部63は、スライド軸部62の外周面部分に、螺旋状溝部63を形成した外貼部材を貼付けることなどによって形成することもできる。これに対し、溝倣部64は、円筒状部分61に外方から貫通配置された倣ピンなどとされている。この倣ピンは、好ましくは、円筒状部分61の内部にスライド軸部62を挿入配置した後に、円筒状部分61に後付けされるようにする。この構成は、最も構造が簡単で低コストとすることができるという特徴を有している。
【0041】
また、特に、図示しないが、螺旋状溝部63は、円筒状部分61の内周面部分に直接刻設することもできる。その他にも、螺旋状溝部63は、円筒状部分61の内周面部分に、螺旋状溝部63を形成した内貼部材を貼付けることなどによって形成することもできる。これに対し、溝倣部64は、スライド軸部62の外周面部分に予め突設された倣ピンなどとされる。この倣ピンは、固定のものとすることもできるし、スライド軸部62に対して突出収納自在に設けられると共に、突出方向へ付勢されたものとすることもできる。
【0042】
なお、螺旋状溝部63は、ステアリングホイール6の操舵範囲として丁度良い長さに形成しておくのが最も好ましいが、組付けの都合などにより、螺旋状溝部63が、ステアリングホイール6の操舵範囲よりも長くなってしまうような場合には、円筒状部分61の内部にスライド軸部62を挿入配置した後などに、円筒状部分61に対して外方からストッパピンなどを貫通配置させて、ストッパピンが溝端部と成るようにして、螺旋状溝部63のストッパピンで区切られた部分を、ステアリングホイール6の操舵範囲に規定させるようにすることも可能である。
【0043】
軸線方向移動許容部57は、スライド軸部62の円筒状部分61から外側に出た部分の外周面部分に設けられる。この軸線方向移動許容部57は、スライド軸部62の軸線方向へ延びるスライド溝部67と、このスライド溝部67に倣う溝倣部68とを備えている。この溝倣部68は、操舵装置3のハウジング69などの固定部分に設けられた倣ピンなどとされる。なお、溝倣部68は、ハウジング69に設けるのが、操舵装置3と一体に構成できるため最適である。但し、場合によっては、操舵装置3のハウジング69以外の固定部分に設けることも可能である。
【0044】
スライド溝部67は、1条または2条設けられる。なお、上記した条数とすれば十分ではあるが、必要な場合には、スライド溝部67は、3条またはそれ以上設けることもできる。スライド溝部67を複数条設ける場合には、周方向に対してほぼ均等に配置するのが好ましい。溝倣部68は、各スライド溝部67に対応させて、少なくとも1個また2個程度設けられる。なお、図2、図3は、スライド溝部67を2条分設けた例を開示している。また、図2は、2条のスライド溝部67に対して、それぞれ1個の溝倣部68を設けた例を開示している。
【0045】
この場合には、スライド溝部67は、スライド軸部62の外周面部分に直接刻設されている。その他にも、スライド溝部67は、スライド軸部62の外周面部分に、スライド溝部67を形成した外貼部材を貼付けることなどによって形成することもできる。
【0046】
なお、図2中、符号71は、ハウジング69の内部に設けられた各種の軸受部である。この場合、軸受部71は、コラムシャフト7のステアリングホイール6近傍とプライマリーギヤ12の両側や、モータピニオンギヤ15,16の軸部の両側や、セカンダリーギヤ17,18の軸部の両側などに設けられている。
【0047】
<作用>次に、この実施例の作用について説明する。
【0048】
図1に示すステアリングシステム1(ステアバイワイヤシステム2)では、操舵装置3を操作すると、制御装置5がこれを検知して転舵装置4へ制御信号45を送り、転舵装置4を転舵させる。
【0049】
この際、制御装置5は、コラムシャフト7などに取付けられたトルクセンサ32からのトルク検出信号33および角度センサ34からの角度検出信号35などを入力することによって操舵装置3の操作を検知する。
【0050】
そして、制御装置5は、転舵モータ21へ制御信号45を送って、ステアリングラック23を軸線方向22へ移動させることにより、ボールジョイント24、タイロッド25を介して転舵輪26を転舵させる。
【0051】
同時に、転舵装置4が転舵されると、制御装置5がこれを検知して操舵装置3の反力発生装置8,9へ制御信号41,42を送り、操舵装置3のコラムシャフト7およびステアリングホイール6に操舵反力を発生させる。
【0052】
この際、制御装置5は、ステアリングラック23などに取付けられた転舵角センサ37からの転舵角検出信号38などを入力することによって転舵装置4の転舵を検知する。併せて、制御装置5は、車体情報36(車速や図示しないヨーレートセンサなどからの信号)を入力することによって、この時の車体の状況などを判断する。
【0053】
そして、制御装置5は、操舵装置3の反力発生装置8,9(反力発生用モータ13,14)へ制御信号41,42を送り、モータピニオンギヤ15,16、セカンダリーギヤ17,18、プライマリーギヤ12を介して、操舵装置3のコラムシャフト7およびステアリングホイール6に操舵反力を発生させる。
【0054】
この際、コラムシャフト7と反力発生装置8,9とを、歯車式の減速機構11を介して間接的に接続させることにより、反力発生装置8,9の反力発生用モータ13,14を小さくしつつ大きなトルクを達成することができる。
【0055】
なお、歯車式の減速機構11を介して間接的に接続した間接駆動式のものにおいては、少なくとも二基の反力発生装置8,9を、コラムシャフト7に取付けられたプライマリーギヤ12に対し少なくとも二箇所の位置で直接又は間接的に噛合わせることにより、コラムシャフト7の回転方向によって少なくとも二基の反力発生装置8,9を使い分けるようにしたり、何らかの原因で一方の反力発生装置8,9が失陥した場合に他方の反力発生装置8,9で補完させるようにすることなどができる。
【0056】
そして、この実施例によれば、以下のような作用効果を得ることができる。
【0057】
(1)操舵装置3と転舵装置4とが機械的に分離された状態で設置され、操舵装置3と転舵装置4とを制御可能な制御装置5が設けられると共に、操舵装置3が、少なくとも、ステアリングホイール6を有するコラムシャフト7と、反力発生装置8,9と、両者間に設けられた歯車式の減速機構11とを備えたステアリングシステム1において、ステアリングホイール6の操舵範囲を規定可能な操舵範囲規定機構51を設けると共に、操舵範囲規定機構51が、コラムシャフト7の部分に備えられたことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0058】
即ち、操舵範囲規定機構51を備えることにより、操舵装置3と転舵装置4とが機械的に分離されている場合であっても、即ち、操舵装置3と転舵装置4との間で、機械的にステアリングホイール6の操舵範囲を規定することができない場合であっても、操舵範囲規定機構51の機能によって、ステアリングホイール6の操舵範囲を規定することが可能となる。そして、このような操舵範囲規定機構51を、コラムシャフト7の部分に対して備えることによって、操舵範囲規定機構51を、構造に無理がなくしかも小型化の容易なものとすることが可能となる。
【0059】
(2)上記において、操舵範囲規定機構51が、コラムシャフト7のステアリングホイール6とは反対側の端部に備えられた筒嵌合構造部53を有すると共に、筒嵌合構造部53が、外筒部54と、外筒部54の内部に、外筒部54に対して相対的に回転自在および軸方向移動自在に挿入された筒挿入部55とを有し、筒嵌合構造部53が、外筒部54と筒挿入部55との相対的な回転範囲を規定可能な回転範囲規定部56を備え、筒嵌合構造部53が、外筒部54と筒挿入部55との相対的な軸方向移動を許容可能な軸線方向移動許容部57を備えたことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0060】
即ち、ステアリングホイール6を操作すると、コラムシャフト7が回転される。このコラムシャフト7の回転によって、コラムシャフト7のステアリングホイール6とは反対側の端部に備えられた筒嵌合構造部53の外筒部54と筒挿入部55とが、相対的に回転される。この際、筒嵌合構造部53に設けられた回転範囲規定部56が機能することによって、外筒部54と筒挿入部55との相対的な回転範囲が規定される。これにより、ステアリングホイール6の操舵範囲を規定することができる。また、筒嵌合構造部53に設けられた軸線方向移動許容部57によって、外筒部54と筒挿入部55との相対的な軸方向移動が許容される。これにより、外筒部54と筒挿入部55との相対的な回転が、1回転以上となる場合に生じる、外筒部54と筒挿入部55との相対的な軸方向への移動を許容させることが可能となる。このように、操舵範囲規定機構51を、外筒部54と筒挿入部55とを有する筒嵌合構造部53で主に構成したことによって、操舵範囲規定機構51の構造簡略化、小型化、低価格化などを図ることが可能となる。また、筒嵌合構造部53に対して、回転範囲規定部56や軸線方向移動許容部57を簡単に設けることが可能となる。
【0061】
(3)上記において、(より具体的に、)外筒部54が、コラムシャフト7のステアリングホイール6とは反対側の端部に形成された円筒状部分61とされると共に、筒挿入部55が、円筒状部分61の内部に、その一部を挿入配置されたスライド軸部62とされ、回転範囲規定部56が、円筒状部分61とスライド軸部62との挿入部分の、一方に設けられた螺旋状溝部63と、他方に設けられた溝倣部64とを備え、溝倣部64が螺旋状溝部63に倣うと共に、螺旋状溝部63の溝端部にて停止されることによりステアリングホイール6の操舵範囲を規定可能に構成され、軸線方向移動許容部57が、スライド軸部62の円筒状部分61外の部分を、軸線方向移動可能に支持する軸線方向移動可能支持部65とされたことによって、以下のような作用効果を得ることができる。
【0062】
即ち、上記したように、ステアリングホイール6の操作によってコラムシャフト7が回転されると、スライド軸部62に対して円筒状部分61が回転される。すると、回転範囲規定部56では、円筒状部分61(の内周部)とスライド軸部62(の外周部)との挿入部分の、一方に設けられた螺旋状溝部63に、他方に設けられた溝倣部64が倣うことになる。そして、溝倣部64が螺旋状溝部63の溝端部に達して停止されると、それ以上コラムシャフト7を回転することができなくなる。これによって、ステアリングホイール6の操舵範囲が規定される。この際、スライド軸部62は、円筒状部分61外の部分が、軸線方向移動可能支持部65によって、支持状態のまま軸線方向に移動される。これによって、螺旋状溝部63と溝倣部64とによって、スライド軸部62に対し円筒状部分61が1回転以上回転されるような場合でも、スライド軸部62の軸方向への移動を許容させることができる。
【0063】
そして、コラムシャフのステアリングホイール6とは反対側の端部に形成した円筒状部分61を外筒部54とし、この円筒状部分61の内部に、筒挿入部55としてスライド軸部62を挿入することにより、筒嵌合構造部53を、コラムシャフト7の径寸法内の大きさにて構成することができるので、一層の小型化を図ることが可能となる。また、円筒状部分61とスライド軸部62との挿入部分の間に、螺旋状溝部63と溝倣部64とを設けたことにより、回転範囲規定部56の構成を簡単で小型のものとすることができる。特に、スライド軸部62の外周部に螺旋状溝部63を設け、円筒状部分61の内周部に溝倣部64を設けることにより、回転範囲規定部56を最も簡単な構成とすることができる。更に、スライド軸部62の円筒状部分61外の部分を、軸線方向移動可能支持部65で軸線方向移動可能に支持することにより、軸線方向移動可能支持部65を最も簡単で小型のものとすることができる。
【0064】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、実施例はこの発明の例示にしか過ぎないものであるため、この発明は実施例の構成にのみ限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれることは勿論である。また、例えば、各実施例に複数の構成が含まれている場合には、特に記載がなくとも、これらの構成の可能な組合せが含まれることは勿論である。また、複数の実施例や変形例が示されている場合には、特に記載がなくとも、これらに跨がった構成の組合せのうちの可能なものが含まれることは勿論である。また、図面に描かれている構成については、特に記載がなくとも、含まれることは勿論である。更に、「等」の用語がある場合には、同等のものを含むという意味で用いられている。また、「ほぼ」「約」「程度」などの用語がある場合には、常識的に認められる範囲や精度のものを含むという意味で用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施例にかかるステアリングシステムの全体構成図である。
【図2】図1の操舵装置の断面図である。
【図3】図2のスライド軸部の斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ステアリングシステム
3 操舵装置
4 転舵装置
5 制御装置
6 ステアリングホイール
7 コラムシャフト
8 反力発生装置
9 反力発生装置
11 減速機構
51 操舵範囲規定機構
53 筒嵌合構造部
54 外筒部
55 筒挿入部
56 回転範囲規定部
57 軸線方向移動許容部
61 円筒状部分
62 スライド軸部
63 螺旋状溝部
64 溝倣部
65 軸線方向移動可能支持部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵装置と転舵装置とが機械的に分離された状態で設置され、操舵装置と転舵装置とを制御可能な制御装置が設けられると共に、
操舵装置が、少なくとも、ステアリングホイールを有するコラムシャフトと、反力発生装置と、両者間に設けられた歯車式の減速機構とを備えたステアリングシステムにおいて、
ステアリングホイールの操舵範囲を規定可能な操舵範囲規定機構を設けると共に、該操舵範囲規定機構が、コラムシャフトの部分に備えられたことを特徴とするステアリングシステム。
【請求項2】
前記操舵範囲規定機構が、コラムシャフトのステアリングホイールとは反対側の端部に備えられた筒嵌合構造部を有すると共に、該筒嵌合構造部が、外筒部と、該外筒部の内部に、外筒部に対して相対的に回転自在および軸方向移動自在に挿入された筒挿入部とを有し、
前記筒嵌合構造部が、外筒部と筒挿入部との相対的な回転範囲を規定可能な回転範囲規定部を備え、
前記筒嵌合構造部が、外筒部と筒挿入部との相対的な軸方向移動を許容可能な軸線方向移動許容部を備えたことを特徴とする請求項1記載のステアリングシステム。
【請求項3】
前記外筒部が、コラムシャフトのステアリングホイールとは反対側の端部に形成された円筒状部分とされると共に、
前記筒挿入部が、前記円筒状部分の内部に、その一部を挿入配置されたスライド軸部とされ、
該回転範囲規定部が、円筒状部分とスライド軸部との挿入部分の、一方に設けられた螺旋状溝部と、他方に設けられた溝倣部とを備え、
前記溝倣部が螺旋状溝部に倣うと共に、螺旋状溝部の溝端部にて停止されることによりステアリングホイールの操舵範囲を規定可能に構成され、
前記軸線方向移動許容部が、前記スライド軸部の円筒状部分外の部分を、軸線方向移動可能に支持する軸線方向移動可能支持部とされたことを特徴とする請求項2記載のステアリングシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−932(P2010−932A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−161888(P2008−161888)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】