説明

ステアリングジョイントカバー

【課題】装着に係る作業性を向上させるとともに、ステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結に係る作業を円滑に行うことが可能なステアリングジョイントカバーを提供する。
【解決手段】車室前方のパネル開口部21に装着され、パネル開口部21に挿通されてステアリングコラム側のステアリングシャフト6とステアリングギアボックス3側のステアリングシャフト4との連結部41を覆う筒状のステアリングジョイントカバー1が、ダッシュパネル2の車室外側で連結部41を覆う下カバー部12と、下カバー部12に連設されて、ダッシュパネル2の車室内側で連結部41を覆うリップ部11と、下カバー部12とリップ部11との間に形成され、パネル開口部21の周縁に嵌め込まれて嵌着する溝部15と、リップ部11の周壁を円周方向に分割するスリット111,112とを備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等においてステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結部を覆うステアリングジョイントカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等において、車室内に装備されるステアリングコラム側のステアリングシャフトと、車室外に装備されるステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとは、ダッシュパネル(以下、単にパネルという)に設けられた開口部に挿通されて連結されている。一般的に、このステアリングコラム側とステアリングギアボックス側のステアリングシャフトの連結部には、連結部を覆うステアリングジョイントカバー(以下、単にジョイントカバーとも略す)が設けられている。ジョイントカバーは、例えばステアリングギアボックス、連結部及び車室内に対する、防水、防塵及び防音の作用を有する。
【0003】
従来、このようなジョイントカバーには、上方の開放口周縁に鍔部が設けられており、この鍔部をパネルの開口部端縁の下面(車室外側)に圧着すると共に、ボルトによって上記鍔部とパネルとを締結することで、ステアリングギアボックスからパネルに至る部分の連結部を覆うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−261036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、特許文献1に記載された車室外側に設けられるジョイントカバーに対し、例えば図7及び図8に示すような、パネル開口部021に嵌め込むことによってパネル02に嵌着される嵌め込み式のジョイントカバー01が考えられる。
【0006】
詳しくは、図7に示すように、ジョイントカバー01が、リップ部011、下カバー部012、蛇腹部013、シール部014を有する構成となっているものである。リップ部011は、ほぼ円筒状であり、上部は外径がパネル開口部021の径とほぼ等しく、下部は上部と比べてやや大径となっている。リップ部011には、下カバー部012の開放口上端縁が連設される。下カバー部012は下部が下方へ向かうに従って小径となり、蛇腹部013が接続される。蛇腹部013の下方には肉厚に形成された円筒状のシール部014が設けられている。シール部014はステアリングギアボックス03に嵌着される。
【0007】
図8に示すように、リップ部011の上端縁には、円心方向に延びる、ほぼ同幅に形成された延長部0115が設けられる。さらに、リップ部011と下カバー部012との間には、周方向に亘って溝部015が設けられている。溝部015の径はパネル開口部021の径とほぼ等しいものとし、この溝部015の上下で対向するリップ部011下面及び下カバー部012上面は、外径がパネル開口部021の径と比べて大きく形成されている。
【0008】
このようなジョイントカバー01は、リップ部011を弾性的に変形させてパネル開口部021に車室外側から挿通する。リップ部011上端に延長部0115を設けたことによって、車室内側から延長部0115を引張ることができるため、作業性が向上している。そしてパネル開口部021の端縁に溝部015を嵌め合わせて嵌着させる構成となっている。よって、ボルト等で締結する必要がなくパネル02に容易に装着することができる。
【0009】
しかしながら、図9に示すように、連結に用いられるギア側のステアリングシャフト04のヨーク041に設けられた連結用ボルト05の位置がパネル開口部021近傍に配された場合、ジョイントカバー01をパネル開口部021に装着した後、艤装工具(図示省略)によって連結用ボルト05を締結する際、作業空間がリップ部011によって遮蔽されてしまう。これにより、例えば一人がリップ部011を弾性変形させて作業空間を確保し、他の一人がステアリングコラム側のステアリングシャフト06を支えながらボルト05の締結作業を行う必要が生じる等、人手が必要となり、組み付け作業が煩雑になるなどのおそれがある。
【0010】
このようなことから本発明は、装着に係る作業性を向上させるとともに、ステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結に係る作業を円滑に行うことが可能なステアリングジョイントカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するための本発明の請求項1に係るステアリングジョイントカバーは、車室前方のパネル開口部に装着され、前記パネル開口部に挿通されてステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結部を覆う筒状のステアリングジョイントカバーにおいて、前記パネルの車室外側で前記連結部を覆う下カバー部と、前記下カバー部に連設されて、前記パネルの車室内側で前記連結部を覆うリップ部と、前記下カバー部と前記リップ部との間に形成され、前記パネル開口部の周縁に嵌め込まれて嵌着する溝部と、前記リップ部の周壁を円周方向に分割するよう前記リップ部に形成されたスリットとを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項2に係るステアリングジョイントカバーは、請求項1記載のステアリングジョイントカバーにおいて、前記リップ部は前記スリットによって第一周壁と該第一周壁よりも周長の短い第二周壁とに分割されることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項3に係るステアリングジョイントカバーは、請求項2記載のステアリングジョイントカバーにおいて、前記第二周壁は前記第一周壁より上端の高さが低く形成されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項4に係るステアリングジョイントカバーは、請求項2乃至請求項3のいずれかに記載のステアリングジョイントカバーにおいて、前記第二周壁は、ステアリングを所定の舵角に保持した状態で、前記連結部に設けられる連結用ボルトと対向する位置に配置されることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項5に係るステアリングジョイントカバーは、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のステアリングジョイントカバーにおいて、前記リップ部は上端部周縁に円心へ向かって延びる延長部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
上述した本発明に係るステアリングジョイントカバーによれば、リップ部にスリットを設けたことにより、ステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結部に設けられる連結用ボルトを締結する際には、スリット部分からリップ部内方へ艤装工具を進入させ、締結作業を行うことができるため、締結作業を一人でも容易に行うことができる。さらに、リップ部をパネル開口部に挿通する際、スリットを設けたことによりリップ部が弾性変形しやすいため、装着作業をより円滑に行うことができる。
【0017】
また、スリットによってリップ部の周壁を第一周壁と、第一周壁に比べて周長の短い第二周壁とに分割したので、第二周壁が円心方向へ傾倒させやすくなっている。ゆえにステアリングコラム側とステアリングギアボックス側のステアリングシャフトの連結部の連結用ボルトを締結する際に、艤装工具によって第二周壁を円心方向へ傾倒させることで容易に作業空間を確保することができるため、ボルト締結に係る作業をより円滑に行うことが可能になる。さらに、ステアリングジョイントカバーをパネル開口部に装着する際、周長の短い第二周壁の部分を車室内側から引くことでリップ部が変形しやすく、装着がより容易となる。
【0018】
また、第二周壁の高さを第一周壁の高さより低く設定することにより、艤装工具によって第二周壁を円心方向へ傾倒させる際に、延長部などがステアリングシャフトのヨークに接触するおそれがないため、より好適である。
【0019】
また、第二周壁をステアリングを所定の舵角に保持した状態で、連結用ボルトと対向する位置に配置することで、より円滑に連結用ボルトの締結に係る作業を行うことが可能となる。
【0020】
さらに加えて、リップ部の上端縁に延長部を設ければ、連結部への異物等の侵入をより防ぐとともに、ジョイントカバーをパネルに装着する際、延長部に手をかけて車室内側からリップ部を引き出すことができるため、装着作業をより円滑に行うことができる。
【0021】
以上に示したように、本発明に係るステアリングジョイントカバーによれば、装着性を向上させ、ステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結に係る作業を円滑に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態の一例を示す。本実施形態に係るステアリングジョイントカバーは、パネル開口部に挿通されるステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結部を覆うものである。なお、連結に用いられるステアリングシャフトのヨーク(連結部)は、パネル開口部より若干上方で連結用ボルトによりボルト締めされるものとする。
【0023】
ジョイントカバーは、リップ部及び下カバー部等を有し、リップ部は下カバー部の上方に連設され、周壁を円周方向に二分割する二つのスリットが形成されるものとする。これらスリットによって、リップ部の周壁は第一周壁及び第二周壁に分割される。第二周壁は、第一周壁と比べて、周長、上下幅ともに短いものとする。さらに、下カバー部とリップ部の間には、パネル開口部の周縁に嵌め込まれて嵌着される溝部を設ける。
【0024】
上記リップ部の第二周壁は、ステアリングが所定の舵角に保持された状態(例えば、中立状態や最大舵角の状態)で、連結部の連結用ボルトと対向する位置に配置される。
【0025】
上記スリットによって分割された第一周壁と第二周壁には、それぞれ上端部に、円心へ向かって延びる延長部を形成する。なお、スリットは先端が溝部との間に間隔を有するものとし、スリットの先端の高さは、連結用ボルトの締結作業を妨げない程度、例えば艤装工具の作業範囲の下端と同等の高さ程度とすることが好ましい。
【0026】
上述した本実施形態によれば、リップ部をパネル開口部に挿通する際、スリットを設けたことによってリップ部を容易に弾性変形させることができるため、装着作業を円滑に行うことが可能となる。
【0027】
さらに、ジョイントカバーをパネル開口部に装着した後、ステアリングシャフトのヨークのボルト締めを行う際、第二周壁をボルトに対向する位置に配置し、艤装工具によって第二周壁を傾倒させることで容易に作業空間を確保し、ボルト締結作業を行うことができる。さらに、第二周壁の上下幅を小さくしたことにより、第二周壁を艤装工具によって傾倒させても、上端部がヨークと干渉するおそれがない。
【0028】
従って、本実施形態によれば、ジョイントカバーのパネルへの装着性を向上させるとともに、ステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結に係る作業を円滑に行うことが可能となる。
【実施例1】
【0029】
図1および図2に基づいて、本発明の第一の実施例の詳細な構成を説明する。図1は本実施例に係るステアリングジョイントカバー1の側面図、図2(a)は本実施例に係るステアリングジョイントカバー1の断面図、図2(b)は図2(a)のA部拡大図、図2(c)は図2(a)のB部拡大図である。
【0030】
図1に示すように、本実施例に係るステアリングジョイントカバー1(以下、ジョイントカバー1という)は、車室内側で連結部を覆うリップ部11、車室外側で連結部を覆う下カバー部12、蛇腹部13及びステアリングギアボックス3に装着されるシール部14が一体に成形された構成となっている。このようなジョイントカバー1は、ダッシュパネル2に設けられた開口部(以下、パネル開口部)21を介して連結されるステアリングコラム側のステアリングシャフト6(図3参照、以下コラム側シャフト6という)とステアリングギアボックス3側のステアリングシャフト4(図3参照、以下ギアボックス側シャフト4という)の連結部を覆うものである。
【0031】
リップ部11は、ほぼ円筒状であり、下方と比べて上方がやや小径となっている。このリップ部11には、二つのスリット111,112が設けられている。スリット111,112は、リップ部11の上端から下方に向かって、軸方向に平行に形成されている。これらのスリット111,112の長さは相互に等しく、スリット111,112の先端はリップ部11の下端と間隔を有している。なお、スリット111,112の先端の高さは、連結用ボルト5の締結作業を妨げない程度、例えば後述する艤装工具の作業範囲の下端と同等の高さ程度とすることが望ましい。
【0032】
そして、これらのスリット111,112によって、リップ部11の上部は第一周壁113と第二周壁114に分割されている。第二周壁114は、第一周壁113と比べて周長が短く、且つ高さが低く形成されるものとし、第二周壁114の中心角は、例えば鋭角とする。リップ部11には、下カバー部12の上方開放口が連設されている。
【0033】
下カバー部12は、上部がほぼ円筒状であり、パネル開口部21の径とほぼ同等の内径を有する。そして、下カバー部12の下方は徐々に小径となって蛇腹部13に接続されている。蛇腹部13の下方にはシール部14が設けられている。シール部14は、ジョイントカバー1の剛性及びシール性を確保するために肉厚になっており、シール部14にステアリングギアボックス3が挿入されて嵌着されている。
【0034】
図2(a)に示すように、第一周壁113及び第二周壁114の上端縁には、円心へ向かって形成された延長部115,116がそれぞれ設けられている。また、リップ部11と下カバー部12との間には、円周に沿って円心方向に凹んだ環状の溝部15が形成されている。溝部15は、パネル開口部21の周縁に嵌め込まれて嵌着される形状となっている。溝部15の径は、パネル開口部21の径とほぼ同等であり、この溝部15がパネル開口部21に嵌着されることで車室外側と車室内側とをシールしている。さらに、下カバー部12の下端部(蛇腹部13との境界の部分)内側には、内縁に沿って上方(車室内側)に突出された環状のリブ121が設けられており、ステアリングギア3側に車室内側から水滴やゴミ等が浸入するのを防止している。
【0035】
さらに、図2(b)に示すように、ジョイントカバー1をダッシュパネル2に装着した際にダッシュパネル2と接する下カバー部12の上端面には、同心円状に複数の環状突起117が設けられ、図2(c)に示すように、シール部14の内壁はステアリングギアボックス3と嵌合する形状を有するとともに、円周に沿って環状突起141が設けられている。これらの環状突起117,141によって車室内側又はステアリングギアボックス3への水の浸入等が多重に抑制されるため、より一層防水、防塵等の効果が得られる。なお、図2(b)及び図2(c)は、ジョイントカバー1の形状を明確にするため、ダッシュパネル2及びステアリングギアボックス3を省略して示している。
【0036】
以下、図3及び図4に基づいて本実施例の作用効果を説明する。図3(a)は本実施例に係るステアリングジョイントカバーをダッシュパネルに装着した車室内側の例を示す斜視図、図3(b)は艤装工具によりボルトを締結する例を示す斜視図、図4は、本実施例に係るステアリングジョイントカバーをダッシュパネルに装着した車室外側の例を示す斜視図である。
【0037】
図3及び図4に示すように、コラム側シャフト6とギアボックス側シャフト4との連結部を構成するヨーク41が、パネル開口部21に挿通されている。ヨーク41には、パネル開口部の若干上方(車室内側)に連結用ボルト5が設けられている。
【0038】
ジョイントカバー1は、溝部15をパネル開口部21に嵌着し、シール部14をステアリングギアボックス3に嵌着して、コラム側シャフト6とギアボックス側シャフト4との連結部を覆っている。そして、図3(a)に示すように、ステアリングが所定の舵角(例えば、中立状態や最大舵角の状態)に保持された状態のとき、第二周壁114と連結用ボルト5とが対向する位置となるように第二周壁が配置されている。
【0039】
なお、ジョイントカバー1は、延長部115,116を車室内側から引張ることでリップ部11を車室外側からパネル開口部21に挿通し、溝部15をパネル開口部21の周縁に嵌着させることによってダッシュパネル2に装着される。この際、リップ部11の下部は、パネル開口部21より径が大きいため、弾性変形させてパネル開口部21を挿通させる。
【0040】
本実施例によるジョイントカバー1は、リップ部11にスリット111,112を設けたことにより、リップ部11の上部を容易に変形させることが可能であるから、リップ部11をパネル開口部21に挿通させやすい。従って、ジョイントカバー1をダッシュパネル2へより円滑に装着することが可能となった。
【0041】
さらに、ギアボックス側シャフト4のヨーク41の締結用ボルト5を締める際には、図3(b)に示すように、艤装工具7により第二周壁114を円心側へ弾性的に傾倒させることで容易に作業空間を確保することができる。従って、連結用ボルト5締結に係る作業が容易に行え、時間及びコスト等を低減することができる。さらに加えて、第二周壁114の高さを第一周壁113より低く設定したことにより、連結用ボルト5締結の際に第二周壁114を傾倒させた場合であっても、第二周壁114又は延長部116がヨーク4や連結用ボルト5と干渉するおそれがなく、より作業性が向上する。また、ボルト締結作業が終了し、艤装工具7を取り外せば、第二周壁114は弾性的に元の形状に戻る。
【0042】
以上に示したように、本実施例によれば、シール性を維持すると共に、装着に係る作業性を向上させ、コラム側シャフト6とギアボックス側シャフト4とを連結する際の作業を円滑に行うことが可能となった。
【実施例2】
【0043】
図5に基づいて、本発明の第二の実施例の詳細を説明する。図5は、本実施例に係るジョイントカバー1の断面図である。以下、上述した実施例1と類似する構成については同一符号を用いて説明は省略し、異なる構成を中心に説明する。
【0044】
図5に示すように、本実施例に係るジョイントカバー1は、リップ部11、下カバー部12、蛇腹部13及びシール部84が一体に成形された構成となっている。リップ部11は、ほぼ円筒状であり、下方と比べて上方がやや小径となっている。このリップ部11には、二つのスリット(図示省略)が設けられ、第一周壁113及び第二周壁114が形成されている。
【0045】
下カバー部12はほぼ円筒形であり、パネル開口部21の径とほぼ同等の内径を有している。そして、下方は徐々に小径となって蛇腹部13に繋がっている。蛇腹部13の下方にはステアリングギアボックス3に装着される円筒状のシール部84が設けられている。
【0046】
シール部84は、内径がステアリングギアボックス3の外径とほぼ同等となっているとともに、ジョイントカバー1の剛性及びシール性を確保するために肉厚になっている。さらに、シール部84には、下端面842に軸心側が断面視鋭角となるような傾斜が設けられている。シール部84の内壁は、ステアリングギアボックス3の外周形状に嵌合するものとし、シール部84の内壁には、円周に沿って複数の環状突起141が設けられている。この環状突起141によって、より一層防水、防塵等の効果が得られる。なお、リップ部11と下カバー部12は、溝部15を介して連設されている。溝部15は、パネル開口部21の周縁に嵌着する形状となっている。
【0047】
以下、図6に基づいて本実施例による作用効果を説明する。本実施例によれば、シール部84の下端面842に傾斜を設けたことにより、例えば洗車の際など、ジョイントカバー1が下方から図中矢印で示す高圧放水を受ける場合、下端面842は、水圧によってステアリングギアボックス3の方へ押圧されることとなる。このため、水圧によってシール部84がめくれるなどのおそれがなく、シール部84のシール性をより向上させることが可能となる。
【0048】
上述したように、本実施例に係るジョイントカバーによれば、上述した実施例1における、装着性及び作業性の向上に加えて、シール性、特に防水性能をより向上させることが可能となる。
【0049】
なお、上述した実施例1及び実施例2では、リップ部11が二つのスリット111,112を有する構成について説明したが、これに限らず、例えばスリットが一つの場合は、艤装工具をスリット部分から進入させて、スリットの両側の周壁を弾性的に左右に押し開くことによって作業空間を確保し、ボルト締結作業を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、車両等のステアリングコラム側のステアリングシャフトとステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとを連結する連結部を覆うステアリングジョイントカバーに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1におけるステアリングジョイントカバーの側面図である。
【図2】実施例1におけるステアリングジョイントカバーの断面図である。
【図3】実施例1におけるステアリングジョイントカバーをパネルに装着した車室内側の例を示す斜視図である。
【図4】実施例1におけるステアリングジョイントカバーをパネルに装着した車室外側の例を示す斜視図である。
【図5】実施例2におけるステアリングジョイントカバーの断面図である。
【図6】実施例2におけるステアリングジョイントカバーをパネルに装着した車室外側の例を示す斜視図である。
【図7】嵌め込み式のステアリングジョイントカバーの一例を示す側面図である。
【図8】嵌め込み式のステアリングジョイントカバーの一例を示す断面図である。
【図9】嵌め込み式のステアリングジョイントカバーをパネルに装着した車室内側の例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0052】
1 ステアリングジョイントカバー
2 ダッシュパネル
3 ステアリングギアボックス
4 ギアボックス側シャフト
41 ヨーク(連結部)
5 連結用ボルト
6 コラム側シャフト
11 リップ部
12 下カバー部
15 溝部
21 パネル開口部
111,112 スリット
113 第一周壁
114 第二周壁
115,116 延長部
121 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室前方のパネル開口部に装着され、前記パネル開口部に挿通されて、ステアリングコラム側のステアリングシャフトと、ステアリングギアボックス側のステアリングシャフトとの連結部を覆う筒状のステアリングジョイントカバーにおいて、前記パネルの車室外側で前記連結部を覆う下カバー部と、前記下カバー部に連設されて、前記パネルの車室内側で前記連結部を覆うリップ部と、前記下カバー部と前記リップ部との間に形成され、前記パネル開口部の周縁に嵌め込まれて嵌着する溝部と、前記リップ部の周壁を円周方向に分割するよう前記リップ部に形成されたスリットとを備えたことを特徴とするステアリングジョイントカバー。
【請求項2】
前記リップ部は、前記スリットによって第一周壁と、該第一周壁よりも周長の短い第二周壁とに分割されたことを特徴とする請求項1記載のステアリングジョイントカバー。
【請求項3】
前記第二周壁は、前記第一周壁より上端の高さが低く形成されたことを特徴とする請求項2記載のステアリングジョイントカバー。
【請求項4】
前記第二周壁は、ステアリングを所定の舵角に保持した状態で、前記連結部に設けられる連結用ボルトと対向する位置に配置されることを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載のステアリングジョイントカバー。
【請求項5】
前記リップ部は上端部周縁に円心へ向かって延びる延長部を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のステアリングジョイントカバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−153246(P2007−153246A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354337(P2005−354337)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【出願人】(000176811)三菱自動車エンジニアリング株式会社 (402)
【Fターム(参考)】