説明

ステアリングホイールのスイッチ取付構造

【課題】スイッチのステアリングホイールへの取付を容易に行うことができるステアリングホイールのスイッチ取付構造を提供する。
【解決手段】ステアリングホイール1は、芯金11と、芯金の表面を被覆する被覆部材12と、被覆部材に形成された凹部13と、凹部に配設されたスイッチ2とからなる。スイッチ2は、凹部13に配設された筐体3と、筐体3に収容されたスイッチ本体4とから構成されている。筐体は、収納部31と、収納部から延設された脚部32とを有する。収納部の下側は開口して被覆部材の凹部の底部に対面している。凹部の底部にスイッチ本体を搭載することで、収納部の内部にスイッチ本体が収容されている。筐体の脚部は、被覆部材に形成された挿着穴15を突き抜けて、芯金に形成された係合穴16に係止されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリングホイールのスイッチ取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ステアリングホイールには、オーディオ機器、変速機などの各種機器の操作をするためのスイッチが取り付けられている。スイッチをステアリングホイールに取り付けることで、ステアリングホイールから手を離すことなく、各種機器を操作できる。
【0003】
スイッチをステアリングホイールに取り付けた構造としては、例えば、特許文献1の図3、図4に開示されたように、タクトスイッチ(5)、配線基板(6)、ボタン部材(8)などから構成されるスイッチ本体を外筐(4)の内部に収容し、外筐(4)の底部に取付爪(9)を突設させ、取付爪(9)を、ステアリングホイールの内部に設けられている芯金(11)に係合させた構造がある。取付爪(9)は、ステアリングホイールの裏面を覆うロアカバー(12)に形成された止め部(25)に接して、取付爪(9)の係合解除方向の動きを抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−93273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のように、外筐(4)の内部には、配線基板(6)、ボタン部材(8)などから構成されるスイッチ本体が収容されている。このスイッチ本体は、外筐(4)をステアリングホイールに取り付ける前に、予め外筐(4)に固定する必要がある。
【0006】
スイッチ本体を外筐(4)に固定するに当たっては、例えば、外筐をカバーと底部材とに分けて形成する。底部材上に、スイッチ本体を固定した後、カバーにより被覆し、カバーを底部材にネジなどで固定する。このように、配線基板等で構成されるスイッチ本体を外筐に固定するには、多数の工程を行わなければならない。従って、スイッチ本体を外筐とともにステアリングホイールに容易に取り付ける構造が望まれている。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、スイッチのステアリングホイールへの取付を容易に行うことができるステアリングホイールのスイッチ取付構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステアリングホイールのスイッチ取付構造は、芯金と、該芯金の表面を被覆する被覆部材と、該被覆部材に形成された凹部と、該凹部に配設されたスイッチとからなるステアリングホイールのスイッチ構造において、前記スイッチは、前記被覆部材の前記凹部に配設された筐体と、該筐体に収容されたスイッチ本体とから構成されており、前記筐体は、収納部と、該収納部から延設された脚部とを有し、前記収納部の一端側は開口して前記被覆部材の前記凹部の底部に対面しており、前記凹部の底部に前記スイッチ本体を搭載することで、前記収納部の内部に前記スイッチ本体が収容されており、前記筐体の前記脚部は、前記被覆部材に形成された挿着穴を突き抜けて、前記芯金に形成された係合穴に係止されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、筐体の収納部の一端側が開口している。収納部の一端側の開口は、被覆部材の凹部の底部に対面している。スイッチ本体は、被覆部材の凹部の底部上に搭載された後に、筐体の脚部を被覆部材の挿着穴に貫挿させ更に芯金の係合穴に係合することで、筐体の収納部にスイッチ本体を収納することができる。ゆえに、従来のように予め筐体の内部にスイッチ本体を固定する工程を必要としない。したがって、組付け工数を削減することができ、スイッチの取り付けが容易となる。
【0010】
また、筐体の脚部は、被覆部材に形成された凹部の底部に形成された挿着穴を突き抜けて、芯金に形成された係合穴に係合されている。このため、筐体を被覆部材のみに固定する場合に比べて、スイッチをステアリングホイールに安定に保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スイッチのステアリングホイールへの取付を容易に行うことができるステアリングホイールのスイッチ取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係るステアリングホイールのスイッチ取付構造の断面図である。
【図2】ステアリングホイールの分解斜視図である。
【図3】スイッチ本体の要部拡大断面図である。
【図4】ボタン部材の裏面側から見た斜視図である。
【図5】図1のA−A矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照にして説明する。図1に示すように、本実施形態のステアリングホイールのスイッチ取付構造は、車両のステアリングホイール1と、スイッチ2とから構成されている。
【0014】
ステアリングホイール1は、リング部1aと、リング部1aから径方向内側に延びるスポーク部1bと、スポーク部1bの先端に連結され中心部に位置するパッド部1cとを有する。
【0015】
リング部1a、スポーク部1b及びパッド部1cは、いずれも芯金11と、芯金11を被覆する被覆部材12とから構成されている。芯金11は、金属製である。被覆部材12は、樹脂製である。被覆部材12を形成する樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂等が用いられる。パッド部1cの上面側での被覆部材12は、アッパーカバー18により被覆されている。パッド部1cの裏面側はロアカバー14が装着されている。
【0016】
パッド部1cの被覆部材12には凹部13が形成されており、この凹部13の中にスイッチ2が取り付けられている。
【0017】
図1、図2に示すように、被覆部材12に形成された凹部13は、四角形状を呈している。凹部13の底部13bを挟んで相対する位置には挿着穴15が貫通形成されている。芯金11には係合穴16が貫通形成されている。係合穴16は、芯金11における被覆部材12の挿着穴15と同じ位置に配置されている。係合穴16は、挿着穴15の断面形状と同じ断面形状を呈している。凹部13の底部13bの略中央部には、凹状に窪む搭載部14が形成されている。
【0018】
スイッチ2は、筐体3と、スイッチ本体4とから構成されている。
【0019】
筐体3は、樹脂製であり、収納部31と、脚部32とを有する。収納部31は、箱形状をなし、内部にスイッチ本体4よりも大きい空間をもつ。収納部31の下端側には下部開口31aが形成され、上端側には上壁31bが設けられている。下部開口31aは、配線基板5及び対向基板6を配置することが可能な大きさに開口する部分である。収納部31の上壁31bには、ボタン部材7を進退可能に表出させる窓部30が形成されている。上壁31bの周縁は、収納部31の側壁よりも外側に鍔状に広がっている。この鍔部31dがステアリングホイール1のパッド部1cの上面に当接することで、筐体3をパッド部1cに一体に保持している。
【0020】
筐体3の脚部32は、収納部31の側壁の下端部から延設されている。即ち、収納部31の下部開口31aを四方から囲む4つの側壁のうち、互いに対向する2つの側壁から,脚部32が下方に向けて延設されている。脚部32の先端には、鉤状の係止部32aが形成されている。
【0021】
スイッチ本体4は、電気回路の開閉を行うものである。スイッチ本体4は、配線基板5と、対向基板6と、ボタン部材7とを有する。図2に示すように、配線基板5は、凹部13の底部13bに形成された凹状に窪む搭載部14上に固定されている。搭載部14と凹部13の底部13bとの段差は、配線基板5の厚みと同じである。搭載部14の底部は、配線基板5に対応した形状をなし、搭載部14に配線基板5を配置することで、配線基板5の固定位置が定まる。
【0022】
配線基板5は、基板51と、導電部52とを有する。基板51は、樹脂材料などから形成された絶縁性基板である。導電部52は、導電性金属をめっきすることにより形成されている。導電部52は、左側及び右側にそれぞれ一対の第1接点52a、52b(固定接点)を有する。第1接点52a、52bは、配線基板5の内部に形成された図略の導体層を通じて、配線基板5の裏面側に形成された端子部に接続されている。端子部にはリード線が接続されており、リード線は、被覆部材12の凹部13の底部13b周縁に形成された穴部13eを通じて、ステアリングホイール1の外部に備えられたオーディオ装置に接続されている。
【0023】
図2、図3に示すように、配線基板5の上には対向基板6が配置されている。対向基板6は、1対の可動部61と、シート状の支持部62と、可動部61と支持部62とを連結する弾性変形部63とを有する。可動部61は、配線基板5から離れる方向に支持部62から突出している。可動部61は、配線基板5の第1接点52a、52bの上に位置している。可動部61の下面には、第2接点65(可動接点)が形成されている。第2接点65は、導電性金属を接着することにより形成されている。第2接点65は、配線基板5の第1接点52aと第1接点52bとに跨った位置に形成されている。弾性変形部63は、可動部61の周縁に設けられ、支持部62に向けてテーパ状に広がる形状を有している。弾性変形部63は、厚みの薄い部分であり、負荷を加えることで弾性変形する。
【0024】
一対の可動部61の真上には、それぞれボタン部材7が配置されている。ボタン部材7は、樹脂製であり、四角形断面形状をもつ逆有底筒状体である。ボタン部材7の側壁の上端側は上壁7bで閉止されている。図3、図4に示すように、ボタン部材7の側壁の下端側は開口している。ボタン部材7の内部には、一対の断面L字状の押圧部71が配設されている。押圧部71は、ボタン部材7の上壁7bから下方に延びている。図5に示すように、一対の押圧部71のうち一方の押圧部71の下端は、対向基板6の可動部61の上面に対面している。他方の押圧部71の下端は、対向基板6に常時非接触である。
【0025】
図4、図5に示すように、一対の押圧部71の中央部には、支持穴72が形成されている。ボタン部材7の側壁のうち支持穴72と対向する位置には、切欠部73が形成されている。筐体3の収納部31の側壁の内面から、支持穴72及び切欠部73に向かって、リブ状の突出部33が延びている。支持穴72及び切欠部73は、上下方向に延びており、突出部33が上下方向に移動可能に遊嵌されている。
【0026】
ステアリングホイール1にスイッチ2を取り付けるにあたっては、まず、図2に示すように、被覆部材12の凹部13の底部13bに、配線基板5を配置する。次に、図3に示すように、配線基板5の上に対向基板6を配置する。第1接点52a、52b上に第2接点65が位置するように対向基板6の位置合わせを行う。
【0027】
次に、図1、図2に示すように、筐体3の収納部31を、被覆部材12の凹部13上に配置された配線基板5及び対向基板6に被せる。収納部31の上壁31bから、ロッド35a、35bが突出している。ロッド35aは、収納部31の上壁31bの中央部から突出しており、ロッド35bは、収納部31の上壁31bの周縁から所定間隔を隔てて複数が突出している。ロッド35aは、対向基板6の周縁部を凹部13周縁に押しつける。ロッド35bは、配線基板5及び対向基板6を、凹部13の底部13bに押しつける。これにより、配線基板5及び対向基板6は、被覆部材12に固定される。
【0028】
次に、筐体3の脚部32を、被覆部材12の挿着穴15及び芯金11の係合穴16に挿入する。脚部32の先端に形成された係止部32aが、芯金11の係合穴16周縁に係止される。次に、筐体3の収納部31の窓部30からボタン部材7を挿入する。ボタン部材7の切欠部73及び支持穴72に、筐体3の収納部31の側壁から突出する突出部33を嵌め込む。これにより、筐体3の収納部31の内部に、配線基板5、対向基板6及びボタン部材7からなるスイッチ本体4が収容される。そして、筐体3及びスイッチ本体4から構成されるスイッチ2がステアリングホイール1に取り付けられる。
【0029】
スイッチ2の作動について説明する。図1、図3に示すように、ボタン部材7を下側に押し込むと、ボタン部材7の押圧部71の下端は、対向基板6の可動部61に当接して可動部61を下側に押す。可動部61周縁に接続されている弾性変形部63が屈曲して、可動部61は下降する。可動部61の下面に形成されている第2接点65は、配線基板5の上面に形成されている第1接点52a、52bに接触する。これにより、第2接点65を通じて第1接点52aと第1接点52bとが導通する。この場合、第1接点52a、52b及び第2接点65を流れる電流が、オーディオ装置の作動状態を変更する電気信号としてオーディオ装置に伝達されて、オーディオ装置が作動する。
【0030】
ボタン部材7の押し込み力を解除すると、対向基板6の弾性変形部63への負荷が解除される。すると、弾性変形部63の復元力によって、対向基板6の可動部61が支持部62から離れ、無負荷時の元の位置に戻る。第2接点65は、第1接点52a、52bから離れて、第1接点52aと第2接点52bとの導通が遮断される。
【0031】
本実施形態によれば、筐体3の収納部31の下側が開口している。収納部31の下側の開口31aは、被覆部材12の凹部13の底部13bに対面している。凹部13の中の搭載部14に、配線基板5、対向基板6を順に積層し、筐体3の脚部32を芯金11の係合穴16に係合した後に、ボタン部材7を筐体3の窓部30に挿着することで、筐体3の収納部31にスイッチ本体4を収納することができる。ゆえに、従来のように予め筐体の内部にスイッチ本体4を固定する工程を必要としない。したがって、組付け工数を削減することができる。
【0032】
また、筐体3の脚部32を、芯金11の係合穴16に係合することで、筐体3をステアリングホイール1に固定している。このため、筐体3をネジ締結などによりステアリングホイール1に固定する場合に比べて、筐体3の組付け作業が容易である。
【0033】
また、スイッチ2は、ステアリングホイール1にアッパーカバー18側から組付けることができる。ゆえに、組付け作業性に優れている。
【0034】
また、筐体3の収納部31から下方に向けて脚部32が延びており、この脚部32の先端の係止部32aを芯金11の係合穴16周縁に係合することで、筐体3をステアリングホイール1に固定している。この状態では、筐体3のロッド35aの先端が対向基板6に当接して対向基板6を凹部13の底部13bに押圧している。また、ロッド35bの先端は、対向基板6の中央部に当接して、対向基板6及びその下に配置されている配線基板5を、搭載部14に押圧している。このため、配線基板5及び対向基板6を凹部13及び搭載部14に確実に固定することができる。
【0035】
また、筐体3の脚部32は、被覆部材12に形成された挿着穴15を突き抜けて、芯金11に形成された係合穴16に係合されている。このため、筐体3を被覆部材12のみで固定する場合に比べて、スイッチ2をステアリングホイール1に安定に保持することができる。
【0036】
本実施形態においては、筐体3に収容するスイッチ本体4が、配線基板5、対向基板6及びボタン部材7から構成されている。しかし、スイッチ本体4の構成要素は、電気の開閉ができるような構成であればこれに限らない。
【0037】
ボタン部材7は、筐体3をステアリングホイール1に組付けた後に、筐体3に組付けているが、筐体3に予めボタン部材7を組付けた後に、筐体3をステアリングホイール1に組みつけても良い。ボタン部材7は、対向基板6上に積層してもよいし、インサート成形等により対向基板6作製時に一体に形成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1:ステアリングホイール、2:スイッチ、3:筐体、4:スイッチ本体、5:配線基板、6:対向基板、7:ボタン部材、11:芯金、12:被覆部材、13:凹部、14:搭載部、15:挿着穴、16:係合穴、30:窓部、31:収納部、32:脚部、35a、35b:ロッド、51:基板、52:導電部、52a、52b:第1接点、61:可動部、62:支持部、63:弾性変形部、65:第2接点、71:押圧部、72:支持穴、73:切欠部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、該芯金の表面を被覆する被覆部材と、該被覆部材に形成された凹部と、該凹部に配設されたスイッチとからなるステアリングホイールのスイッチ構造において、
前記スイッチは、前記被覆部材の前記凹部に配設された筐体と、該筐体に収容されたスイッチ本体とから構成されており、
前記筐体は、収納部と、該収納部から延設された脚部とを有し、
前記収納部の一端側は開口して前記被覆部材の前記凹部の底部に対面しており、前記凹部の底部に前記スイッチ本体を搭載することで、前記収納部の内部に前記スイッチ本体が収容されており、
前記筐体の前記脚部は、前記被覆部材に形成された挿着穴を突き抜けて、前記芯金に形成された係合穴に係止されていることを特徴とするステアリングホイールのスイッチ取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−232137(P2010−232137A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81207(P2009−81207)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】