ステアリング装置
【課題】ラックアンドピニオン式の操舵機構のラック軸のがたつきの発生を抑制しつつ、操舵時のラック軸の移動抵抗の変化を小さく抑制でき、製造コストを安価にする。
【解決手段】本ステアリング装置1では、ラック軸14が、ラック軸支持装置23により所定の付勢方向Fに付勢され、ラック軸支持装置23に近い側および遠い側のラックハウジング15の第1および第2の端部15a,15bにある第1および第2のラックブッシュ20,21により受けられる。第1のラックブッシュ20の内周面36は、所定の付勢方向Fとは平行な第1の方向X1に径が相対的に大きく、第1の方向X1とは直交する第2の方向X2に径が相対的に小さくされている。内周面36は、第2の方向X2に関してのラック軸14の移動を規制しつつ、第1の方向X1および軸方向Sに関してのラック軸14の移動を許容する。
【解決手段】本ステアリング装置1では、ラック軸14が、ラック軸支持装置23により所定の付勢方向Fに付勢され、ラック軸支持装置23に近い側および遠い側のラックハウジング15の第1および第2の端部15a,15bにある第1および第2のラックブッシュ20,21により受けられる。第1のラックブッシュ20の内周面36は、所定の付勢方向Fとは平行な第1の方向X1に径が相対的に大きく、第1の方向X1とは直交する第2の方向X2に径が相対的に小さくされている。内周面36は、第2の方向X2に関してのラック軸14の移動を規制しつつ、第1の方向X1および軸方向Sに関してのラック軸14の移動を許容する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックアンドピニオン式のステアリング装置は、ピニオン軸とラック軸とを保持するハウジングを有している。ハウジングは、ラック軸の軸方向に平行に延びる筒状をなしている。ラック軸は、ハウジングの内部を貫通している(例えば、特許文献1参照。)。
ラック軸の軸方向に関するハウジングの中間部において、ラック軸は、ラック軸支持装置により支持されている。このラック軸支持装置は、ラック軸をその軸方向に摺動自在に支持するサポートヨークを有している。このサポートヨークは、ハウジング内の保持孔に、ラック軸の軸方向に直交する方向に移動自在に保持されていて、この方向にばねにより付勢されることにより、ラック軸をピニオン軸へ向けて付勢している。
【0003】
また、ラック軸の軸方向に関するハウジングの端部では、ラック軸は環状のラックブッシュにより受けられている。ラックブッシュは、支持孔を有している。この支持孔は、通例、断面円形をなす。
従来の第1のステアリング装置では、ラックブッシュはピニオン軸から遠い側にあるハウジングの端部のみに配置されている。
【0004】
また、特許文献1では、上述の従来の第1のステアリング装置において、ラックブッシュが、弾力的に付勢された複数のボールを介してラック軸を受けている。すなわち、ラック軸の周方向に等間隔に配置された3個のボールが、ラック軸の対応する軸方向溝に転がり接触する状態で、ラック軸を軸方向に移動可能に支持している。ラックブッシュの支持孔は、断面円形の内周面と、各ボールに対応して周方向に均等に配置された3つの膨出部とを有していて、断面丸形をなしている。
【0005】
また、従来の第2のステアリング装置では、一対のラックブッシュがハウジングの両端部に配置されている。
【特許文献1】特開2004−161117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の第1のステアリング装置では、サポートヨークとハウジングの保持孔との間に隙間が介在する。これとともに、ラックブッシュは、ピニオン軸から遠い側にあるハウジングの端部のみに配置される。その結果、ラック軸の軸方向に直交する方向であってラック軸支持装置によるラック軸の付勢方向とは直交する方向に関して、サポートヨークが、噛み合い位置での操舵時のラック軸のがたつきを規制できない。
【0007】
また、従来の第2のステアリング装置では、ラック軸が、一対のラックブッシュと、ラック軸支持装置およびピニオン軸との3箇所で支持されるので、ラック軸のラック歯の寸法誤差に応じてラック軸と支持孔との間の移動抵抗が変化し易い傾向にある。その結果、良好な操舵感が得られなくなる。
また、移動抵抗の変動を小さく抑制するために、ラック軸の加工精度を高めることが考えられる。しかし、加工コストが高くなり、ひいては製造コストが高くなる。また、特許文献1では、ラックブッシュとラック軸との間に、複数のボールが介在しているので、部品点数が多くなる結果、構造が複雑化し高価になる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ラック軸のがたつきの発生を抑制しつつ、移動抵抗の変化を小さく抑制できる安価なステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ラックアンドピニオン式のステアリング装置(1)において、ラック軸(14)が挿通され、軸方向(S)に関して第1および第2の端部(15a,15b)を有する筒状のハウジング(15)と、このハウジングの第1および第2の端部のうち第1の端部に相対的に近い位置に配置され、ラック軸を軸方向に摺動自在に支持しつつラック軸をピニオン軸(13)側である所定の付勢方向(F)に付勢するラック軸支持装置(23)と、ハウジングの第1の端部に保持され、ラック軸の端部(14b)を軸方向に摺動自在に支持する支持孔(35)を有するラックブッシュ(20)とを備え、このラックブッシュの支持孔は、上記所定の付勢方向とは平行な方向(X1)に相対的に径(DA)が大きく、上記平行な方向とは直交する方向(X2)に相対的に径(DB)が短い孔からなることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、付勢方向とは平行な方向に直交する方向に関して、支持孔の径が相対的に小さくなるので、支持孔において上記直交する方向に関してのラック軸のがたつきの発生を抑制することが可能となる。しかも、上記平行な方向に関して、支持孔の径が相対的に大きくなるので、例えば仮に、ラック軸のラック歯の寸法誤差があったとしても、ラック軸の移動抵抗の軸方向移動に伴う変化を抑制することが可能となる。その結果、操舵感を向上することができる。さらに、これらの効果を、ラック軸の加工精度を高めることなく、ラックブッシュの支持孔の形状変更により得ることができるので、製造コストを安価にできる。また、上記平行な方向に関しての支持孔の寸法精度を高くせずに済むので、製造コストを安価にできる。また、ラックブッシュが、ピニオン軸に近い側の第1の端部に配置されているので、ピニオン軸とラック軸との噛み合い位置における上記直交する方向についてのラック軸のがたつきを抑制するのに好ましい。
【0011】
また、本発明において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面(36)は、上記平行な方向とは直交する方向に関してのラック軸の移動を規制し、上記平行な方向へのラック軸の移動を許容するように、ラック軸を案内する一対の案内面(38、38A)を含む場合がある。この場合、上述の直交する方向に関してのラック軸のがたつきを確実に規制しつつ、ラック軸の移動抵抗の変化の発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明において、上記一対の案内面のそれぞれは、上記平行な方向に沿って延びる平坦面(38)を含む場合がある。この場合、上述の平行な方向に関してラック軸をスムーズに平坦面により案内することができるので、ラック軸の移動抵抗の変化をより一層小さくすることができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ステアリング装置がパワーステアリング装置である場合に則して説明するが、これに限らず、例えば、マニュアル操舵のステアリング装置であってもよい。
図1Aは、本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1Aを参照して、ステアリング装置1は、操舵輪2を操舵するためのラックアンドピニオン式のステアリング装置として構成されている。ステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵するためのラックアンドピニオン機構からなる操舵機構5と、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間に設けられてこの間において回転を伝達する軸継手としての中間軸6とを有している。
【0014】
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7の内部を挿通し、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部にステアリングホイール3が連結され、ステアリングシャフト4の他方の端部に中間軸6が連結されている。
中間軸6は、動力伝達軸10と、中間軸6の一方の端部に設けられた自在継手11と、中間軸6の他方の端部に設けられた自在継手12とを有している。
【0015】
操舵機構5は、入力軸としてのピニオン軸13と、自動車の横方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラック軸14と、ピニオン軸13およびラック軸14を支持するラックハウジング15とを有している。ラックハウジング15は、車体9に固定されている。ピニオン軸13のピニオン歯13aと、ラック軸14のラック歯14aとが互いに噛み合っている。
【0016】
ピニオン軸13は、ラックハウジング15に回動自在に支持されている。また、ラック軸14は、その軸方向Sに関して直線往復移動自在にラックハウジング15に支持されている。ラックハウジング15の両端部15a,15bから、ラック軸14の軸方向Sに関してのラック軸14の両端部14bが突出している。これら両端部14bには、継手部材としての一対のボールジョイントユニット14cが設けられている。各ボールジョイントユニット14cに、タイロッドおよびナックルアーム(図示せず)を介して、対応する操向輪2が連動するように連結されている。
【0017】
ステアリングホイール3が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト4および中間軸6を介して操舵機構5に伝達される。ステアリングホイール3の回動に連動して中間軸6およびピニオン軸13が回動し、これに伴ってラック軸14がその軸方向Sに沿って移動する。これにより、操向輪2を操舵することができる。
ステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、ステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、伝動装置としての減速機19とを有している。本実施形態では、電動モータ18および減速機19は、ステアリングコラム7に関連して設けられている。
【0018】
トルクセンサ16は、ステアリングホイール3からステアリングシャフト4に作用する操舵トルクを検出する。トルク検出結果は、ECU17に与えられる。ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、電動モータ18を制御する。
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ16により検出され、トルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ18が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機19を介してピニオン軸13に伝達される。これとともに、ステアリングホイール3の動きも、操舵機構5に伝わる。その結果、操向輪2が操舵されるとともに、操舵が補助される。
【0019】
本実施形態の操舵機構5は、上述のピニオン軸13と、上述のラック軸14と、ラック軸14の軸方向中央部を収容し車体9に支持されたハウジングとしての上述のラックハウジング15とを有している。
ラック軸14は、長尺の棒状部材である。軸方向Sに関してのラック軸14の両端部14bには、ラック歯14aが形成されておらず、両端部14bは、例えば、断面円形等の断面丸形に形成されている。軸方向Sに関してのラック軸14の中間部の外周面は、断面円弧形状をなす湾曲部と、軸方向Sに平行な平坦部とを有している。この平坦部にラック歯14aが形成されている。
【0020】
ラックハウジング15は、筒状をなし、ラック軸14の軸方向Sに沿って延びている。ラックハウジング15には、ラック軸14が挿通されている。ラックハウジング15は、その長手方向(軸方向Sに相当する。)に関する第1および第2の端部15a,15bと、これら両端部15a,15bの間に配置された中間部15cとを有している。
ラックハウジング15の中間部15cは、軸受(図示せず)を介してピニオン軸13を回動自在に支持している。ピニオン軸13は、第1の端部15aに相対的に近くなるように配置され、第2の端部15bに相対的に遠くなるように配置されている。
【0021】
また、操舵機構5は、ラック軸14をその軸方向Sに摺動自在に支持する筒状の第1および第2のラックブッシュ20,21と、一対のラックストッパ22と、ラック軸支持装置23とを有している。
ラック軸支持装置23は、ラック軸14をピニオン軸13側となる所定の付勢方向Fに付勢しながらラック軸14を軸方向Sに移動自在に支持している。ラック軸支持装置23は、ラックハウジング15の長手方向に関して、ラックハウジング15の中間部15cであってピニオン軸13と同じ位置に配置されている。ラック軸14の軸方向Sに直交する方向であって所定の付勢方向Fに関して、ラック軸支持装置23とピニオン軸13とは、ラック軸14を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0022】
ラック軸支持装置23は、ラックハウジング15に設けられて保持孔24aを区画する筒部材24と、保持孔24a内に移動自在に保持されてラック軸14を受ける支持部材としてのサポートヨーク25と、サポートヨーク25をピニオン軸13に向けて付勢する付勢部材としてのばね部材26と、ばね部材26を受ける受け部材27とを有している。
筒部材24はラックハウジング15の中間部15cに一体に形成されている。保持孔24aは、上述の付勢方向F、すなわち、ラック軸14の軸方向Sに直交する方向であり且つピニオン軸13の軸方向に直交する方向に平行に延びている。保持孔24aの一端がラックハウジング15の中間部15cの内部に開口している。保持孔24aの他端に受け部材27が固定されている。保持孔24aの内部にばね部材26とサポートヨーク25とが収容されている。
【0023】
サポートヨーク25は、円柱形状をなしている。サポートヨーク25の軸線が保持孔24aの延びる方向に平行に配置されている。この方向に平行に、サポートヨーク25は自在に移動できるようになっている。サポートヨーク25の軸線が延びる方向に関して、サポートヨーク25の一端がラック軸14に摺動自在に接していて、他端がばね部材26に接している。ばね部材26は、サポートヨーク25の他端と受け部材27との間に弾性圧縮変形を受けた状態で介在している。ばね部材26は、サポートヨーク25を押圧付勢し、ひいては、サポートヨーク25を介してラック軸14をピニオン軸13に向けて付勢している。
【0024】
第1のラックブッシュ20と、一方のラックストッパ22とは、ピニオン軸13に相対的に近い第1の端部15aに保持されている。第2のラックブッシュ21と、他方のラックストッパ22とは、ラックハウジング15の第2の端部15bに保持されている。
本実施形態のステアリング装置1では、ラック軸14の両端部14bの周囲に配置された部材は、第1および第2のラックブッシュ20,21を除いて、互いに同様に構成されている。以下では、一方の端部14bを中心に説明する。他方の端部14bにおいて一方の端部14bと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0025】
図2は、図1に示すステアリング装置1の操舵機構5の要部D2を付勢方向Fに沿って見たときの一部断面図であり、断面部分は、図3に示すS2−S2断面を示す。図3は、図2のS3−S3断面の断面図である。
ラックハウジング15の第1の端部15aは、保持孔28を有している。保持孔28は、第1のラックブッシュ20を保持している。保持孔28は、円筒面からなる内周面28aと、この内周面28aの一端から径方向内方へ延びる側壁28bとを有している。
【0026】
保持孔28の開口端に、ラックストッパ22が固定されている。ラックストッパ22は、環状をなし、ボールジョイントユニット14c(図1参照)の一部と当接することにより、ラック軸14の軸方向Sに関してのラックハウジング15に対するラック軸14の移動範囲を規制する。
第1のラックブッシュ20は、ラック軸14の軸方向Sに関して、ラックストッパ22と側壁28bとの間に配置されている。
【0027】
また、第1のラックブッシュ20の外周面29と保持孔28の内周面28aとの間には所定量の隙間が開けられている。また、外周面29と内周面28aとの間に、環状の弾性部材としてのOリング30が、圧縮弾性変形した状態で介在している。これにより、第1のラックブッシュ20は、弾性支持されている。Oリング30の弾性反発力に抗して第1のラックブッシュ20を移動させることにより、第1のラックブッシュ20をラック軸14の任意の径方向に保持孔28内で移動させることができるようになっている。
【0028】
また、第1のラックブッシュ20の筒形状の中心軸線20cが、ラック軸14に同心に配置されている。第1のラックブッシュ20の回動角度位置、すなわち、ラックハウジング15に対する第1のラックブッシュ20の中心軸線20cの周りの回動角度位置が、後述する係合部31,32により位置決めされている。第1のラックブッシュ20の軸方向位置、すなわち、ラックハウジング15に対するラック軸14の軸方向Sに関しての位置が、後述する係合部33,34により位置決めされている。
【0029】
第1のラックブッシュ20は、摺動性に優れ弾性を有する合成樹脂部材、例えば熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)により形成されている。第1のラックブッシュ20は、支持孔35を有している。この支持孔35をラック軸14が貫通している。支持孔35は、内周面36を有している。この内周面36が、ラック軸14の端部14bを軸方向Sに摺動自在に支持している。
【0030】
支持孔35の内周面36の断面形状は、第1のラックブッシュ20の中心軸線20cに垂直な断面において、長孔をなしている。すなわち、第1の方向X1に関しての支持孔35の直径DAは、相対的に大きい。第2の方向X2に関しての支持孔35の直径DBは、相対的に小さい(DA>DB)。ここで、第1の方向X1は、中心軸線20cに直交する方向である。また、第2の方向X2は、第1の方向X1に直交する方向であり、且つ中心軸線20cに直交する方向である。
【0031】
第1の方向X1が、ラック軸支持装置23による付勢方向F(図2では、紙面垂直方向に相当する。)に平行になるように、中心軸線20cの周りの第1のラックブッシュ20の回動角度位置が位置決めされている。これにより、支持孔35の径DAが、所定の付勢方向Fとは平行な方向としての第1の方向X1(以下、平行な方向X1ともいう。)に相対的に大きく、支持孔35の径DBが、上記平行な方向X1とは直交する方向としての第2の方向X2(以下、直交する方向X2ともいう。)に相対的に小さく形成されている。なお、必要に応じて各図に、第1の方向X1と第2の方向X2とが図示されている。
【0032】
図4は、第1のラックブッシュ20の斜視図である。図5は、第1のラックブッシュ20の正面図である。図6は、第1のラックブッシュ20の後面図である。図7は、図5のS7−S7断面の断面図である。図8は、図5のS8−S8断面の断面図である。図9は、図8のS9−S9断面の断面図である。図10は図5の要部D10の拡大図である。
図4,図5および図6を参照して、支持孔35の内周面36は、第1の方向X1に互いに対向する逃げ部としての一対の第1の部分37と、第2の方向X2に互いに対向する案内面としての一対の第2の部分38とを有している。周方向Tに関して、第1の部分37は相対的に広い領域に形成され、残りの領域に第2の部分38が形成されている。
【0033】
図2および図3を参照して、第1の部分37は、凹湾曲面としての円筒面をなしている。この円筒面は、樋状に軸方向Sに平行に延びている。一対の第1の部分37の円筒面の中心軸線は、互いに一致するとともに、第1のラックブッシュ20の中心軸線20cとも一致している。第1の方向X1に関して、円筒面の直径DAは、ラック軸14の外径よりも所定量長くされている。これにより、一対の第1の部分37は、第1の方向X1、すなわち、付勢方向Fに平行な方向に関してのラック軸14の移動を、相対的に大きな第1の所定量まで許容している。第1の所定量は、例えば、以下のように設定されている。すなわち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた所定の状態、例えば車両の停止状態において、軸方向Sに関してラック軸14がその移動範囲の全域を移動するときに、ラック軸14の端部14aと第1のラックブッシュ20の支持孔35の内周面36の一対の第1の部分37とが、互いに接触しないようになっている。
【0034】
図2,図3および図10を参照して、第2の部分38は、平坦面からなる。この平坦面は、第1の部分37の円筒面から径方向内方に膨出されている。平坦面は、第1の方向X1に平行に、すなわち、所定の付勢方向Fと平行であり且つ軸方向S(図3では、紙面垂直方向に相当する。)に平行に形成されていて、ラック軸14の外周面に線接触している。一対の第2の部分38は、常にラック軸14の端部14aにそれぞれ摺動自在に当接しており、ラック軸14の軸方向Sに関するラック軸14の移動を案内している。一対の第2の部分38は、直交する方向X2に関してのラック軸14の移動を規制し、上記平行な方向X1へのラック軸14の移動を許容するように、ラック軸14を案内する一対の案内面として機能する。なお、このように案内面として機能する部分の一部のみが、付勢方向Fに平行な平坦面とされていてもよい。本実施形態では、案内面の全体が平坦面の場合に則して説明する。
【0035】
一対の第2の部分38は、相対的に短い距離を隔てて対向している。この距離は、直交する方向X2に関して、支持孔35の直径DBに相当し、ラック軸14の外径に等しく設定されている。また、本実施形態では、第1のラックブッシュ20の一対の第2の部分38は、ラック軸14に締付状態で接触していて、ラック軸14に対するしめしろを付与されている。すなわち、第1のラックブッシュ20が、部品単品の状態では、第2の方向X2に関する支持孔35の直径、すなわち、一対の第2の部分38の間隔は、ラック軸14の対応する部分の外径に等しい値か、またはこの値よりも微小量大きな値とされている。これとともに、第1のラックブッシュ20がOリング30を介してラックハウジング15に組み込まれた状態であってラック軸14が挿通していない状態では、一対の第2の部分38の間の距離は、直交する方向X2に関してのラック軸14の外径の寸法よりも所定量短くされている。これにより、一対の第2の部分38は、直交する方向X2に関してのラック軸14の移動を、第1の所定量よりも相対的に小さな第2の所定量、例えば零に規制している。
【0036】
なお、一対の第2の部分38とラック軸14との間にしめしろが付与されない場合や、所定の微小な隙間が開けられる場合も考えられる。本実施形態では、しめしろが付与される場合に則して説明する。
また、第2の部分38は、具体的には、上述のOリング30の弾性反発力と、第1のラックブッシュ20に設けられた後述する弾性支持部39の弾性反発力とを利用して、ラック軸14の径方向であって直交する方向X2に変位可能に弾性支持されている。
【0037】
図4,図7および図8を参照して、弾性支持部39は、第1のラックブッシュ20に一体に形成されていて、複数のスリット40,41の間をクランク状に屈曲して延びていて、M字形形状をなしている。第1のラックブッシュ20には、2つの弾性支持部39が設けられている。弾性支持部39の一端は、固定端とされ、他端が自由端とされていて、この自由端に第2の部分38が一体に形成されている。弾性支持部39は、片持ち状に支持され、弾性的に曲げ変形することにより、自由端が径方向に変位することができる。
【0038】
図2および図8を参照して、第1のラックブッシュ20は、軸方向Sに関して第1の端部20aと、第2の端部20bとを有している。第1の端部20aの一部が、当該第1のラックブッシュ20を保持孔28に固定するための固定部として機能する。第1の端部20aが、第2の端部20bよりもラックハウジング15の軸方向外方に位置している。
図4,図6および図9を参照して、第1のラックブッシュ20は、軸方向Sの第1の端部20aから軸方向Sに平行に所定距離で延びる複数の例えば4つの第1のスリット40と、軸方向Sの第2の端部20bから軸方向Sに平行に所定距離で延びる複数の例えば2つの第2のスリット41とを有している。また、第1のラックブッシュ20は、第1および第2のスリット40,41間に区画された第1の部分42、第2の部分43、第3の部分44、および第4の部分45を有している。これらの第1〜第4の部分42,43,44,45は、単一の部材により一体に形成され、互いに順につながることにより上述の弾性支持部39を構成している。
【0039】
図4,図6および図7を参照して、第1のスリット40は、第1のラックブッシュ20の第2の端部20bに切り込み端を有している。第1のスリット40は、第1のラックブッシュ20の径方向内方および径方向外方、一方の軸方向Sに向けて開放されている。2つの第1のスリット40が、互いに対をなしている。4つの第1のスリット40は、2対をなしている。対をなす第1のスリット40は、周方向Tに隣接して配置されている。各対は、周方向Tに均等に配置されていて、一方の対の第1のスリット40と、他方の対の第1のスリット40とは、互いに反対側に配置されている。対をなす第1のスリット40の間に、内周面36の案内面としての第2の部分38が形成されている。また、異なる対の2つの第1のスリット40の間に、内周面36の逃げ部としての第1の部分37が形成されている。
【0040】
図4,図5および図8を参照して、第2のスリット41は、第1のラックブッシュ20の第1の端部20aに切り込み端を有している。第2のスリット41は、第1のラックブッシュ20の径方向内方および径方向外方、他方の軸方向Sに向けて開放されている。2つの第1のスリット40は、周方向Tに均等に配置されていて、径方向に関して互いに反対側に配置されている。また、第2のスリット41は、周方向Tに関して、異なる対の2つの第1のスリット40の間に配置されている。これらの2つのスリット40,41において、第2のスリット41は、各第1のスリット40から周方向Tに均等に離隔して配置されている。
【0041】
図4,図6および図8を参照して、第1の部分42は、根本部であり且つ固定部として第1のラックブッシュ20に2つが設けられ、各第1の部分42は、第1の端部20aにおいて2つの第1のスリット40の間に周方向Tに円弧状に延びて形成されている。
図4,図8および図9を参照して、第2の部分43は、第1のラックブッシュ20に4つの弾性舌片として設けられ、第1の部分42から軸方向Sに延びて第2の端部20bに至り、周方向Tに関して第1および第2のスリット40,41の間に形成されている。
【0042】
図4,図5および図7を参照して、第3の部分44は、第1のラックブッシュ20に2つが設けられ、周方向Tに関して、2つの第2の部分43の延設端同士を互いに接続し、第2の端部20bにおいて第2のスリット41の間に円弧状に延びている。
図4,図8および図9を参照して、第4の部分45は、第1のラックブッシュ20に2つの弾性舌片として設けられ、各第3の部分44の周方向Tの中央部から軸方向Sに延びて第1の端部20aに至り、2つの第1のスリット40の間に形成されている。
【0043】
図2および図4を参照して、第1のラックブッシュ20の外周面29は、Oリング30用に周方向Tに延びる環状溝46を有している。この環状溝46は、軸方向Sの中間部であって、相対的に第2の端部20bに近い側の位置に形成されていて、4つの第1のスリット40と、2つの第2のスリット41と、4つの第2の部分43と、2つの第4の部分45とを横切って形成されている。環状溝46の底面と内周面36との間に、薄肉部が形成されている。Oリング30は、環状溝46に嵌められて且つラックハウジング15の保持孔28に嵌め入れられた状態で、素線径が一方の径方向に縮径するように弾性圧縮変形を受けて、第1のラックブッシュ20の第2の部分43および第4の部分45に締め付け力を作用させる。
【0044】
これにより、第1の部分42に対して、第2の部分43が、弾性曲げ変形して、径方向内方に撓むことができ、これにともない、第3の部分44が径方向内方に変位できるようになっている。また、第3の部分44に対して、第4の部分45が弾性曲げ変形して、径方向内方へ撓むことができるようになっている。その結果、第3の部分44および第4の部分45の内周面36の第2の部分38が、ラック軸14の外周面に軸方向Sの全長にわたって接することができるようになっている。
【0045】
図2および図3を参照して、第1のラックブッシュ20は、その中心軸線20cの周りの回動角度位置を所定位置に規制する係合部31を有している。この係合部31は、凸部からなり、第1のラックブッシュ20の第1の端部20aの第1の部分42から軸方向Sに突出するとともに、径方向外方に向けて所定量突出している。また、保持孔28は、係合部31に係合する相手方の係合部32としての凹部を有している。係合部31,32同士が、互いに嵌まりあって凹凸係合することにより、第1のラックブッシュ20が保持孔28に回り止めされるとともに、その回動角度位置が所定位置に規制されている。
【0046】
なお、本実施形態では、第1のラックブッシュ20は、その第1の方向X1が付勢方向Fと平行になるように、回転角度位置を位置決めされていたが、第1の方向X1と付勢方向Fとが、所定の微小な角度、例えば0度〜5度以下の範囲内の角度をなしていてもよく、平行な場合と同様に上述の効果を得ることができる。
第1のラックブッシュ20は、その軸方向位置を位置決めするとともに保持孔28からの抜け止めとして機能する係合部33を有している。この係合部33は、凸部からなり、第1のラックブッシュ20の第1の端部20aの第4の部分45から径方向外方に向けて所定量突出している。また、保持孔28は、係合部33に係合する相手方の係合部34を有している。係合部34は、凹部としての周溝の周縁部からなる。係合部33,34同士が、互いに嵌まりあって凹凸係合することにより、第1のラックブッシュ20が軸方向Sに抜け止めされるとともに位置決めされている。
【0047】
また、係合部33は、径方向に移動可能に弾性支持されている。係合部33,34同士を互いに係合させるときには、係合部33を径方向内方に変位させ、保持孔28の係合部34としての周溝の縁部を乗り越えさせる。乗り越えた状態で、係合部33が弾力的に径方向外方に変位して、係合部33,34同士が自律的に互いに嵌まりあう。
図1に戻って、ラックハウジング15の第2の端部15bの保持孔28に、第2のラックブッシュ21が嵌合状態で保持されている。第2のラックブッシュ21は、ラック軸14の全ての径方向Rに関するラック軸14の端部14bの移動を所定量(零を含む)に規制しつつ、摺動自在に支持している。
【0048】
図11A,図11Bおよび図11Cは、図3のステアリング装置の動作を示す模式図であり、ラック軸が軸方向に移動する過程を順に図示している。図12A,図12Bおよび図12Cは、図11A,図11Bおよび図11Cにそれぞれ対応する第1のラックブッシュおよびラック軸の模式的な断面図である。これら各図は、ラック歯14aの寸法誤差により、噛み合い位置でのピニオン軸13とラック軸14との中心軸線間の距離Lが、図11A、図11Bおよび図11Cの順に、ラック軸14の軸方向移動に伴って徐々に大きくなる場合を示している。
【0049】
このように、仮に、ラック軸14のラック歯14aに寸法誤差がある場合には、上述の平行な方向X1に関して、ピニオン軸13とラック軸14との中心軸線間の距離Lが変化し、ラック軸14は第2のラックブッシュ21を支点として傾く。本実施形態では、通常時には、第1のラックブッシュ20の内周面36の第1の部分37と、ラック軸14の外周面とは接触しないので、ラック軸14の移動抵抗は変化量が小さく抑制される。
【0050】
また、直交する方向X2に関して、ラック軸14の移動は、常に、第1および第2のラックブッシュ20,21により規制されているので、噛み合い位置においても、ラック軸14のがたつきが確実に防止される。
なお、図示しないが、操向輪2からラック軸14に過大な外力が作用するときには、第1のラックブッシュ20の第1の部分37が、ラック軸14に接触し、外力を受け止める。その結果、外力がピニオン軸13やラック軸支持装置23に負荷されることが防止される。また、第2の部分38も同様に外力を受け止める。
【0051】
図1,図2および図3を参照して、本実施形態では、ラックアンドピニオン式のステアリング装置1において、ラック軸14が挿通され、軸方向Sに関して第1および第2の端部15a,15bを有する筒状のハウジングとしてのラックハウジング15と、このラックハウジング15の第1および第2の端部15a,15bのうち第1の端部15aに相対的に近い位置に配置され、ラック軸14を軸方向Sに摺動自在に支持しつつラック軸14をピニオン軸13側である所定の付勢方向Fに付勢するラック軸支持装置23と、ラックハウジング15の第1の端部15aに保持され、ラック軸14の端部14bを軸方向Sに摺動自在に支持する支持孔35を有する第1のラックブッシュ20とを備え、この第1のラックブッシュ20の支持孔35は、上記所定の付勢方向Fとは平行な方向としての第1の方向X1に相対的に直径DAが大きく、上記平行な方向X1とは直交する方向としての第2の方向X2に相対的に直径DBが短い孔からなっている。
【0052】
このように、付勢方向Fとは平行な方向X1に直交する方向X2に関して、支持孔35の直径DBが相対的に小さくなるので、支持孔35において直交する方向X2に関してのラック軸14のがたつきの発生を抑制することが可能となる。しかも、平行な方向X1に関して、支持孔35の径DAが相対的に大きくなるので、例えば仮に、ラック軸14のラック歯14aの寸法誤差があったとしても、ラック軸14の移動抵抗の軸方向移動に伴う変化を抑制することが可能となる。その結果、操舵感を向上することができる。
【0053】
さらに、これらの効果を、ラック軸14の加工精度を高めることなく、第1のラックブッシュ20の支持孔35の形状変更により得ることができるので、製造コストを安価にできる。また、上記平行な方向X1に関しての支持孔35の寸法精度を高くせずに済むので、製造コストを安価にできる。また、第1のラックブッシュ20が、ピニオン軸13に近い側の第1の端部15aに配置されているので、ピニオン軸13とラック軸14との噛み合い位置における上記直交する方向X2についてのラック軸14のがたつきを効果的に抑制することができる。
【0054】
また、第1および第2のラックブッシュ20,21は、ラック軸14に摺動自在に接するので、ボールを介在させる従来のラックブッシュに比べて、構造を簡素化できる。
また、本実施形態において、第1のラックブッシュ20の支持孔35の内周面36は、上記平行な方向X1とは直交する方向X2に関してのラック軸14の移動を規制し、上記平行な方向X1へのラック軸14の移動を許容するように、ラック軸14を案内する一対の案内面としての第2の部分38を含むようにしている。この場合、上述の直交する方向X2に関してのラック軸14のがたつきを確実に規制しつつ、ラック軸14の移動抵抗の変化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態において、上記一対の案内面としての第2の部分38のそれぞれは、上記平行な方向X1に沿って延びる平坦面を含むようにしている。この場合、平行な方向X1に関してラック軸14をスムーズに平坦面により案内することができるので、ラック軸14の移動抵抗の変化をより一層小さくすることができる。
なお、これらの効果は、ラックハウジング15の第2の端部15bにおけるラックブッシュの有無や構造にかかわらずに得ることができるが、第2の端部15bにもラックブッシュを配置するのが、ラック軸14のがたつきの防止には好ましい。
【0056】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図13は、本発明の第2の実施形態のステアリング装置の要部の断面図であり、第1の実施形態において図10に示された部分に相当する部分を示す。図13を参照して、第1のラックブッシュ20の支持孔35の内周面36は、第2の方向X2に互いに対向する一対の第2の部分38A(一方のみ図示。)を有している。第2の部分38Aは、凹湾曲面としての円筒面からなる。この円筒面は、第1の部分37の円筒面よりも小径に形成され、第1の部分37の円筒面から径方向内方に突出した凸部の先端に形成されている。第2の部分38Aの円筒面の直径は、上述の第1の実施形態における一対の第2の部分38の間隔(直径DBに相当)に等しく設定されている。第2の部分38Aは、断面円弧形状の樋形状をなし、この樋形状は第1のラックブッシュ20の中心軸線に平行に延びている。また、第2の部分38Aは、ラック軸14の外周面を面当たり状態で受けている。この場合、第2の部分38Aの少なくとも一部を変形させたり移動させたりすることにより、ラック軸14を第1の方向X1に移動させることができる。また、第2の部分38Aは、第1の方向X1に関してラック軸14に作用する外力を受けることができる。
【0057】
また、上述の各実施形態において、ラックハウジング15の第2の端部15bの第2のラックブッシュ21に代えて、第1のラックブッシュ20を設けてもよい。この場合、ラック軸14の両端が第1のラックブッシュ20により受けられることとなる。また、第1および第2のラックブッシュ20,21の少なくとも一方が、保持孔28に剛性支持状態で固定されることも考えられる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図であり、図1Bは、要部としての第1のラックブッシュの1B−1B断面を示す。
【図2】図1Aに示すステアリング装置の操舵機構の要部D2の一部断面図であり、断面部分は、図3に示すS2−S2断面を示す。
【図3】図2のS3−S3断面の断面図である。
【図4】第1のラックブッシュの斜視図である。
【図5】第1のラックブッシュの正面図である。
【図6】第1のラックブッシュの後面図である。
【図7】図5のS7−S7断面の断面図である。
【図8】図5のS8−S8断面の断面図である。
【図9】図8のS9−S9断面の断面図である。
【図10】図5の要部D10の拡大図である。
【図11】図11A,図11Bおよび図11Cは、図3のステアリング装置の動作を示す模式図であり、ラック軸が軸方向に移動する過程を順に図示している。
【図12】図12A,図12Bおよび図12Cは、図11A,図11Bおよび図11Cにそれぞれ対応する第1のラックブッシュおよびラック軸の模式的な断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態のステアリング装置の要部の断面図であり、第1の実施形態において図10に示された部分に相当する部分を示す。
【符号の説明】
【0059】
1…ステアリング装置、13…ピニオン軸、14…ラック軸14、14b…(ラック軸の)端部、15…ラックハウジング(ハウジング)、15a…第1の端部、15b…第2の端部、23…ラック軸支持装置、35…支持孔、36…(支持孔の)内周面、38…第2の部分(案内面、平坦面)、38A…第2の部分(案内面)、DA…直径(第1の方向に関する径)、DB…径(第2の方向に関する径)、F…所定の付勢方向、S…軸方向、X1…第1の方向(平行な方向)、X2…第2の方向(直交する方向)
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ラックアンドピニオン式のステアリング装置は、ピニオン軸とラック軸とを保持するハウジングを有している。ハウジングは、ラック軸の軸方向に平行に延びる筒状をなしている。ラック軸は、ハウジングの内部を貫通している(例えば、特許文献1参照。)。
ラック軸の軸方向に関するハウジングの中間部において、ラック軸は、ラック軸支持装置により支持されている。このラック軸支持装置は、ラック軸をその軸方向に摺動自在に支持するサポートヨークを有している。このサポートヨークは、ハウジング内の保持孔に、ラック軸の軸方向に直交する方向に移動自在に保持されていて、この方向にばねにより付勢されることにより、ラック軸をピニオン軸へ向けて付勢している。
【0003】
また、ラック軸の軸方向に関するハウジングの端部では、ラック軸は環状のラックブッシュにより受けられている。ラックブッシュは、支持孔を有している。この支持孔は、通例、断面円形をなす。
従来の第1のステアリング装置では、ラックブッシュはピニオン軸から遠い側にあるハウジングの端部のみに配置されている。
【0004】
また、特許文献1では、上述の従来の第1のステアリング装置において、ラックブッシュが、弾力的に付勢された複数のボールを介してラック軸を受けている。すなわち、ラック軸の周方向に等間隔に配置された3個のボールが、ラック軸の対応する軸方向溝に転がり接触する状態で、ラック軸を軸方向に移動可能に支持している。ラックブッシュの支持孔は、断面円形の内周面と、各ボールに対応して周方向に均等に配置された3つの膨出部とを有していて、断面丸形をなしている。
【0005】
また、従来の第2のステアリング装置では、一対のラックブッシュがハウジングの両端部に配置されている。
【特許文献1】特開2004−161117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の第1のステアリング装置では、サポートヨークとハウジングの保持孔との間に隙間が介在する。これとともに、ラックブッシュは、ピニオン軸から遠い側にあるハウジングの端部のみに配置される。その結果、ラック軸の軸方向に直交する方向であってラック軸支持装置によるラック軸の付勢方向とは直交する方向に関して、サポートヨークが、噛み合い位置での操舵時のラック軸のがたつきを規制できない。
【0007】
また、従来の第2のステアリング装置では、ラック軸が、一対のラックブッシュと、ラック軸支持装置およびピニオン軸との3箇所で支持されるので、ラック軸のラック歯の寸法誤差に応じてラック軸と支持孔との間の移動抵抗が変化し易い傾向にある。その結果、良好な操舵感が得られなくなる。
また、移動抵抗の変動を小さく抑制するために、ラック軸の加工精度を高めることが考えられる。しかし、加工コストが高くなり、ひいては製造コストが高くなる。また、特許文献1では、ラックブッシュとラック軸との間に、複数のボールが介在しているので、部品点数が多くなる結果、構造が複雑化し高価になる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、ラック軸のがたつきの発生を抑制しつつ、移動抵抗の変化を小さく抑制できる安価なステアリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ラックアンドピニオン式のステアリング装置(1)において、ラック軸(14)が挿通され、軸方向(S)に関して第1および第2の端部(15a,15b)を有する筒状のハウジング(15)と、このハウジングの第1および第2の端部のうち第1の端部に相対的に近い位置に配置され、ラック軸を軸方向に摺動自在に支持しつつラック軸をピニオン軸(13)側である所定の付勢方向(F)に付勢するラック軸支持装置(23)と、ハウジングの第1の端部に保持され、ラック軸の端部(14b)を軸方向に摺動自在に支持する支持孔(35)を有するラックブッシュ(20)とを備え、このラックブッシュの支持孔は、上記所定の付勢方向とは平行な方向(X1)に相対的に径(DA)が大きく、上記平行な方向とは直交する方向(X2)に相対的に径(DB)が短い孔からなることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、付勢方向とは平行な方向に直交する方向に関して、支持孔の径が相対的に小さくなるので、支持孔において上記直交する方向に関してのラック軸のがたつきの発生を抑制することが可能となる。しかも、上記平行な方向に関して、支持孔の径が相対的に大きくなるので、例えば仮に、ラック軸のラック歯の寸法誤差があったとしても、ラック軸の移動抵抗の軸方向移動に伴う変化を抑制することが可能となる。その結果、操舵感を向上することができる。さらに、これらの効果を、ラック軸の加工精度を高めることなく、ラックブッシュの支持孔の形状変更により得ることができるので、製造コストを安価にできる。また、上記平行な方向に関しての支持孔の寸法精度を高くせずに済むので、製造コストを安価にできる。また、ラックブッシュが、ピニオン軸に近い側の第1の端部に配置されているので、ピニオン軸とラック軸との噛み合い位置における上記直交する方向についてのラック軸のがたつきを抑制するのに好ましい。
【0011】
また、本発明において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面(36)は、上記平行な方向とは直交する方向に関してのラック軸の移動を規制し、上記平行な方向へのラック軸の移動を許容するように、ラック軸を案内する一対の案内面(38、38A)を含む場合がある。この場合、上述の直交する方向に関してのラック軸のがたつきを確実に規制しつつ、ラック軸の移動抵抗の変化の発生を抑制することができる。
【0012】
また、本発明において、上記一対の案内面のそれぞれは、上記平行な方向に沿って延びる平坦面(38)を含む場合がある。この場合、上述の平行な方向に関してラック軸をスムーズに平坦面により案内することができるので、ラック軸の移動抵抗の変化をより一層小さくすることができる。
なお、上記において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を示すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。本実施形態では、ステアリング装置がパワーステアリング装置である場合に則して説明するが、これに限らず、例えば、マニュアル操舵のステアリング装置であってもよい。
図1Aは、本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図である。図1Aを参照して、ステアリング装置1は、操舵輪2を操舵するためのラックアンドピニオン式のステアリング装置として構成されている。ステアリング装置1は、操舵部材としてのステアリングホイール3に加えられる操舵トルクを伝達するステアリングシャフト4と、ステアリングシャフト4からの操舵トルクにより操向輪2を操舵するためのラックアンドピニオン機構からなる操舵機構5と、ステアリングシャフト4および操舵機構5の間に設けられてこの間において回転を伝達する軸継手としての中間軸6とを有している。
【0014】
ステアリングシャフト4は、ステアリングコラム7の内部を挿通し、ステアリングコラム7により回転自在に支持されている。ステアリングコラム7はブラケット8を介して車体9に支持されている。ステアリングシャフト4の一方の端部にステアリングホイール3が連結され、ステアリングシャフト4の他方の端部に中間軸6が連結されている。
中間軸6は、動力伝達軸10と、中間軸6の一方の端部に設けられた自在継手11と、中間軸6の他方の端部に設けられた自在継手12とを有している。
【0015】
操舵機構5は、入力軸としてのピニオン軸13と、自動車の横方向(直進方向と直交する方向である。)に延びる転舵軸としてのラック軸14と、ピニオン軸13およびラック軸14を支持するラックハウジング15とを有している。ラックハウジング15は、車体9に固定されている。ピニオン軸13のピニオン歯13aと、ラック軸14のラック歯14aとが互いに噛み合っている。
【0016】
ピニオン軸13は、ラックハウジング15に回動自在に支持されている。また、ラック軸14は、その軸方向Sに関して直線往復移動自在にラックハウジング15に支持されている。ラックハウジング15の両端部15a,15bから、ラック軸14の軸方向Sに関してのラック軸14の両端部14bが突出している。これら両端部14bには、継手部材としての一対のボールジョイントユニット14cが設けられている。各ボールジョイントユニット14cに、タイロッドおよびナックルアーム(図示せず)を介して、対応する操向輪2が連動するように連結されている。
【0017】
ステアリングホイール3が操舵されると、その操舵トルクがステアリングシャフト4および中間軸6を介して操舵機構5に伝達される。ステアリングホイール3の回動に連動して中間軸6およびピニオン軸13が回動し、これに伴ってラック軸14がその軸方向Sに沿って移動する。これにより、操向輪2を操舵することができる。
ステアリング装置1は、操舵トルクに応じて操舵補助力を得られるようになっている。すなわち、ステアリング装置1は、操舵トルクを検出するトルクセンサ16と、制御部としてのECU(Electronic Control Unit :電子制御ユニット)17と、操舵補助用の電動モータ18と、伝動装置としての減速機19とを有している。本実施形態では、電動モータ18および減速機19は、ステアリングコラム7に関連して設けられている。
【0018】
トルクセンサ16は、ステアリングホイール3からステアリングシャフト4に作用する操舵トルクを検出する。トルク検出結果は、ECU17に与えられる。ECU17は、上述のトルク検出結果や図示しない車速センサから与えられる車速検出結果等に基づいて、電動モータ18を制御する。
ステアリングホイール3が操作されると、操舵トルクがトルクセンサ16により検出され、トルク検出結果および車速検出結果等に応じて電動モータ18が操舵補助力を発生させる。操舵補助力は、減速機19を介してピニオン軸13に伝達される。これとともに、ステアリングホイール3の動きも、操舵機構5に伝わる。その結果、操向輪2が操舵されるとともに、操舵が補助される。
【0019】
本実施形態の操舵機構5は、上述のピニオン軸13と、上述のラック軸14と、ラック軸14の軸方向中央部を収容し車体9に支持されたハウジングとしての上述のラックハウジング15とを有している。
ラック軸14は、長尺の棒状部材である。軸方向Sに関してのラック軸14の両端部14bには、ラック歯14aが形成されておらず、両端部14bは、例えば、断面円形等の断面丸形に形成されている。軸方向Sに関してのラック軸14の中間部の外周面は、断面円弧形状をなす湾曲部と、軸方向Sに平行な平坦部とを有している。この平坦部にラック歯14aが形成されている。
【0020】
ラックハウジング15は、筒状をなし、ラック軸14の軸方向Sに沿って延びている。ラックハウジング15には、ラック軸14が挿通されている。ラックハウジング15は、その長手方向(軸方向Sに相当する。)に関する第1および第2の端部15a,15bと、これら両端部15a,15bの間に配置された中間部15cとを有している。
ラックハウジング15の中間部15cは、軸受(図示せず)を介してピニオン軸13を回動自在に支持している。ピニオン軸13は、第1の端部15aに相対的に近くなるように配置され、第2の端部15bに相対的に遠くなるように配置されている。
【0021】
また、操舵機構5は、ラック軸14をその軸方向Sに摺動自在に支持する筒状の第1および第2のラックブッシュ20,21と、一対のラックストッパ22と、ラック軸支持装置23とを有している。
ラック軸支持装置23は、ラック軸14をピニオン軸13側となる所定の付勢方向Fに付勢しながらラック軸14を軸方向Sに移動自在に支持している。ラック軸支持装置23は、ラックハウジング15の長手方向に関して、ラックハウジング15の中間部15cであってピニオン軸13と同じ位置に配置されている。ラック軸14の軸方向Sに直交する方向であって所定の付勢方向Fに関して、ラック軸支持装置23とピニオン軸13とは、ラック軸14を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0022】
ラック軸支持装置23は、ラックハウジング15に設けられて保持孔24aを区画する筒部材24と、保持孔24a内に移動自在に保持されてラック軸14を受ける支持部材としてのサポートヨーク25と、サポートヨーク25をピニオン軸13に向けて付勢する付勢部材としてのばね部材26と、ばね部材26を受ける受け部材27とを有している。
筒部材24はラックハウジング15の中間部15cに一体に形成されている。保持孔24aは、上述の付勢方向F、すなわち、ラック軸14の軸方向Sに直交する方向であり且つピニオン軸13の軸方向に直交する方向に平行に延びている。保持孔24aの一端がラックハウジング15の中間部15cの内部に開口している。保持孔24aの他端に受け部材27が固定されている。保持孔24aの内部にばね部材26とサポートヨーク25とが収容されている。
【0023】
サポートヨーク25は、円柱形状をなしている。サポートヨーク25の軸線が保持孔24aの延びる方向に平行に配置されている。この方向に平行に、サポートヨーク25は自在に移動できるようになっている。サポートヨーク25の軸線が延びる方向に関して、サポートヨーク25の一端がラック軸14に摺動自在に接していて、他端がばね部材26に接している。ばね部材26は、サポートヨーク25の他端と受け部材27との間に弾性圧縮変形を受けた状態で介在している。ばね部材26は、サポートヨーク25を押圧付勢し、ひいては、サポートヨーク25を介してラック軸14をピニオン軸13に向けて付勢している。
【0024】
第1のラックブッシュ20と、一方のラックストッパ22とは、ピニオン軸13に相対的に近い第1の端部15aに保持されている。第2のラックブッシュ21と、他方のラックストッパ22とは、ラックハウジング15の第2の端部15bに保持されている。
本実施形態のステアリング装置1では、ラック軸14の両端部14bの周囲に配置された部材は、第1および第2のラックブッシュ20,21を除いて、互いに同様に構成されている。以下では、一方の端部14bを中心に説明する。他方の端部14bにおいて一方の端部14bと同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0025】
図2は、図1に示すステアリング装置1の操舵機構5の要部D2を付勢方向Fに沿って見たときの一部断面図であり、断面部分は、図3に示すS2−S2断面を示す。図3は、図2のS3−S3断面の断面図である。
ラックハウジング15の第1の端部15aは、保持孔28を有している。保持孔28は、第1のラックブッシュ20を保持している。保持孔28は、円筒面からなる内周面28aと、この内周面28aの一端から径方向内方へ延びる側壁28bとを有している。
【0026】
保持孔28の開口端に、ラックストッパ22が固定されている。ラックストッパ22は、環状をなし、ボールジョイントユニット14c(図1参照)の一部と当接することにより、ラック軸14の軸方向Sに関してのラックハウジング15に対するラック軸14の移動範囲を規制する。
第1のラックブッシュ20は、ラック軸14の軸方向Sに関して、ラックストッパ22と側壁28bとの間に配置されている。
【0027】
また、第1のラックブッシュ20の外周面29と保持孔28の内周面28aとの間には所定量の隙間が開けられている。また、外周面29と内周面28aとの間に、環状の弾性部材としてのOリング30が、圧縮弾性変形した状態で介在している。これにより、第1のラックブッシュ20は、弾性支持されている。Oリング30の弾性反発力に抗して第1のラックブッシュ20を移動させることにより、第1のラックブッシュ20をラック軸14の任意の径方向に保持孔28内で移動させることができるようになっている。
【0028】
また、第1のラックブッシュ20の筒形状の中心軸線20cが、ラック軸14に同心に配置されている。第1のラックブッシュ20の回動角度位置、すなわち、ラックハウジング15に対する第1のラックブッシュ20の中心軸線20cの周りの回動角度位置が、後述する係合部31,32により位置決めされている。第1のラックブッシュ20の軸方向位置、すなわち、ラックハウジング15に対するラック軸14の軸方向Sに関しての位置が、後述する係合部33,34により位置決めされている。
【0029】
第1のラックブッシュ20は、摺動性に優れ弾性を有する合成樹脂部材、例えば熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)により形成されている。第1のラックブッシュ20は、支持孔35を有している。この支持孔35をラック軸14が貫通している。支持孔35は、内周面36を有している。この内周面36が、ラック軸14の端部14bを軸方向Sに摺動自在に支持している。
【0030】
支持孔35の内周面36の断面形状は、第1のラックブッシュ20の中心軸線20cに垂直な断面において、長孔をなしている。すなわち、第1の方向X1に関しての支持孔35の直径DAは、相対的に大きい。第2の方向X2に関しての支持孔35の直径DBは、相対的に小さい(DA>DB)。ここで、第1の方向X1は、中心軸線20cに直交する方向である。また、第2の方向X2は、第1の方向X1に直交する方向であり、且つ中心軸線20cに直交する方向である。
【0031】
第1の方向X1が、ラック軸支持装置23による付勢方向F(図2では、紙面垂直方向に相当する。)に平行になるように、中心軸線20cの周りの第1のラックブッシュ20の回動角度位置が位置決めされている。これにより、支持孔35の径DAが、所定の付勢方向Fとは平行な方向としての第1の方向X1(以下、平行な方向X1ともいう。)に相対的に大きく、支持孔35の径DBが、上記平行な方向X1とは直交する方向としての第2の方向X2(以下、直交する方向X2ともいう。)に相対的に小さく形成されている。なお、必要に応じて各図に、第1の方向X1と第2の方向X2とが図示されている。
【0032】
図4は、第1のラックブッシュ20の斜視図である。図5は、第1のラックブッシュ20の正面図である。図6は、第1のラックブッシュ20の後面図である。図7は、図5のS7−S7断面の断面図である。図8は、図5のS8−S8断面の断面図である。図9は、図8のS9−S9断面の断面図である。図10は図5の要部D10の拡大図である。
図4,図5および図6を参照して、支持孔35の内周面36は、第1の方向X1に互いに対向する逃げ部としての一対の第1の部分37と、第2の方向X2に互いに対向する案内面としての一対の第2の部分38とを有している。周方向Tに関して、第1の部分37は相対的に広い領域に形成され、残りの領域に第2の部分38が形成されている。
【0033】
図2および図3を参照して、第1の部分37は、凹湾曲面としての円筒面をなしている。この円筒面は、樋状に軸方向Sに平行に延びている。一対の第1の部分37の円筒面の中心軸線は、互いに一致するとともに、第1のラックブッシュ20の中心軸線20cとも一致している。第1の方向X1に関して、円筒面の直径DAは、ラック軸14の外径よりも所定量長くされている。これにより、一対の第1の部分37は、第1の方向X1、すなわち、付勢方向Fに平行な方向に関してのラック軸14の移動を、相対的に大きな第1の所定量まで許容している。第1の所定量は、例えば、以下のように設定されている。すなわち、ステアリング装置1が車両に取り付けられた所定の状態、例えば車両の停止状態において、軸方向Sに関してラック軸14がその移動範囲の全域を移動するときに、ラック軸14の端部14aと第1のラックブッシュ20の支持孔35の内周面36の一対の第1の部分37とが、互いに接触しないようになっている。
【0034】
図2,図3および図10を参照して、第2の部分38は、平坦面からなる。この平坦面は、第1の部分37の円筒面から径方向内方に膨出されている。平坦面は、第1の方向X1に平行に、すなわち、所定の付勢方向Fと平行であり且つ軸方向S(図3では、紙面垂直方向に相当する。)に平行に形成されていて、ラック軸14の外周面に線接触している。一対の第2の部分38は、常にラック軸14の端部14aにそれぞれ摺動自在に当接しており、ラック軸14の軸方向Sに関するラック軸14の移動を案内している。一対の第2の部分38は、直交する方向X2に関してのラック軸14の移動を規制し、上記平行な方向X1へのラック軸14の移動を許容するように、ラック軸14を案内する一対の案内面として機能する。なお、このように案内面として機能する部分の一部のみが、付勢方向Fに平行な平坦面とされていてもよい。本実施形態では、案内面の全体が平坦面の場合に則して説明する。
【0035】
一対の第2の部分38は、相対的に短い距離を隔てて対向している。この距離は、直交する方向X2に関して、支持孔35の直径DBに相当し、ラック軸14の外径に等しく設定されている。また、本実施形態では、第1のラックブッシュ20の一対の第2の部分38は、ラック軸14に締付状態で接触していて、ラック軸14に対するしめしろを付与されている。すなわち、第1のラックブッシュ20が、部品単品の状態では、第2の方向X2に関する支持孔35の直径、すなわち、一対の第2の部分38の間隔は、ラック軸14の対応する部分の外径に等しい値か、またはこの値よりも微小量大きな値とされている。これとともに、第1のラックブッシュ20がOリング30を介してラックハウジング15に組み込まれた状態であってラック軸14が挿通していない状態では、一対の第2の部分38の間の距離は、直交する方向X2に関してのラック軸14の外径の寸法よりも所定量短くされている。これにより、一対の第2の部分38は、直交する方向X2に関してのラック軸14の移動を、第1の所定量よりも相対的に小さな第2の所定量、例えば零に規制している。
【0036】
なお、一対の第2の部分38とラック軸14との間にしめしろが付与されない場合や、所定の微小な隙間が開けられる場合も考えられる。本実施形態では、しめしろが付与される場合に則して説明する。
また、第2の部分38は、具体的には、上述のOリング30の弾性反発力と、第1のラックブッシュ20に設けられた後述する弾性支持部39の弾性反発力とを利用して、ラック軸14の径方向であって直交する方向X2に変位可能に弾性支持されている。
【0037】
図4,図7および図8を参照して、弾性支持部39は、第1のラックブッシュ20に一体に形成されていて、複数のスリット40,41の間をクランク状に屈曲して延びていて、M字形形状をなしている。第1のラックブッシュ20には、2つの弾性支持部39が設けられている。弾性支持部39の一端は、固定端とされ、他端が自由端とされていて、この自由端に第2の部分38が一体に形成されている。弾性支持部39は、片持ち状に支持され、弾性的に曲げ変形することにより、自由端が径方向に変位することができる。
【0038】
図2および図8を参照して、第1のラックブッシュ20は、軸方向Sに関して第1の端部20aと、第2の端部20bとを有している。第1の端部20aの一部が、当該第1のラックブッシュ20を保持孔28に固定するための固定部として機能する。第1の端部20aが、第2の端部20bよりもラックハウジング15の軸方向外方に位置している。
図4,図6および図9を参照して、第1のラックブッシュ20は、軸方向Sの第1の端部20aから軸方向Sに平行に所定距離で延びる複数の例えば4つの第1のスリット40と、軸方向Sの第2の端部20bから軸方向Sに平行に所定距離で延びる複数の例えば2つの第2のスリット41とを有している。また、第1のラックブッシュ20は、第1および第2のスリット40,41間に区画された第1の部分42、第2の部分43、第3の部分44、および第4の部分45を有している。これらの第1〜第4の部分42,43,44,45は、単一の部材により一体に形成され、互いに順につながることにより上述の弾性支持部39を構成している。
【0039】
図4,図6および図7を参照して、第1のスリット40は、第1のラックブッシュ20の第2の端部20bに切り込み端を有している。第1のスリット40は、第1のラックブッシュ20の径方向内方および径方向外方、一方の軸方向Sに向けて開放されている。2つの第1のスリット40が、互いに対をなしている。4つの第1のスリット40は、2対をなしている。対をなす第1のスリット40は、周方向Tに隣接して配置されている。各対は、周方向Tに均等に配置されていて、一方の対の第1のスリット40と、他方の対の第1のスリット40とは、互いに反対側に配置されている。対をなす第1のスリット40の間に、内周面36の案内面としての第2の部分38が形成されている。また、異なる対の2つの第1のスリット40の間に、内周面36の逃げ部としての第1の部分37が形成されている。
【0040】
図4,図5および図8を参照して、第2のスリット41は、第1のラックブッシュ20の第1の端部20aに切り込み端を有している。第2のスリット41は、第1のラックブッシュ20の径方向内方および径方向外方、他方の軸方向Sに向けて開放されている。2つの第1のスリット40は、周方向Tに均等に配置されていて、径方向に関して互いに反対側に配置されている。また、第2のスリット41は、周方向Tに関して、異なる対の2つの第1のスリット40の間に配置されている。これらの2つのスリット40,41において、第2のスリット41は、各第1のスリット40から周方向Tに均等に離隔して配置されている。
【0041】
図4,図6および図8を参照して、第1の部分42は、根本部であり且つ固定部として第1のラックブッシュ20に2つが設けられ、各第1の部分42は、第1の端部20aにおいて2つの第1のスリット40の間に周方向Tに円弧状に延びて形成されている。
図4,図8および図9を参照して、第2の部分43は、第1のラックブッシュ20に4つの弾性舌片として設けられ、第1の部分42から軸方向Sに延びて第2の端部20bに至り、周方向Tに関して第1および第2のスリット40,41の間に形成されている。
【0042】
図4,図5および図7を参照して、第3の部分44は、第1のラックブッシュ20に2つが設けられ、周方向Tに関して、2つの第2の部分43の延設端同士を互いに接続し、第2の端部20bにおいて第2のスリット41の間に円弧状に延びている。
図4,図8および図9を参照して、第4の部分45は、第1のラックブッシュ20に2つの弾性舌片として設けられ、各第3の部分44の周方向Tの中央部から軸方向Sに延びて第1の端部20aに至り、2つの第1のスリット40の間に形成されている。
【0043】
図2および図4を参照して、第1のラックブッシュ20の外周面29は、Oリング30用に周方向Tに延びる環状溝46を有している。この環状溝46は、軸方向Sの中間部であって、相対的に第2の端部20bに近い側の位置に形成されていて、4つの第1のスリット40と、2つの第2のスリット41と、4つの第2の部分43と、2つの第4の部分45とを横切って形成されている。環状溝46の底面と内周面36との間に、薄肉部が形成されている。Oリング30は、環状溝46に嵌められて且つラックハウジング15の保持孔28に嵌め入れられた状態で、素線径が一方の径方向に縮径するように弾性圧縮変形を受けて、第1のラックブッシュ20の第2の部分43および第4の部分45に締め付け力を作用させる。
【0044】
これにより、第1の部分42に対して、第2の部分43が、弾性曲げ変形して、径方向内方に撓むことができ、これにともない、第3の部分44が径方向内方に変位できるようになっている。また、第3の部分44に対して、第4の部分45が弾性曲げ変形して、径方向内方へ撓むことができるようになっている。その結果、第3の部分44および第4の部分45の内周面36の第2の部分38が、ラック軸14の外周面に軸方向Sの全長にわたって接することができるようになっている。
【0045】
図2および図3を参照して、第1のラックブッシュ20は、その中心軸線20cの周りの回動角度位置を所定位置に規制する係合部31を有している。この係合部31は、凸部からなり、第1のラックブッシュ20の第1の端部20aの第1の部分42から軸方向Sに突出するとともに、径方向外方に向けて所定量突出している。また、保持孔28は、係合部31に係合する相手方の係合部32としての凹部を有している。係合部31,32同士が、互いに嵌まりあって凹凸係合することにより、第1のラックブッシュ20が保持孔28に回り止めされるとともに、その回動角度位置が所定位置に規制されている。
【0046】
なお、本実施形態では、第1のラックブッシュ20は、その第1の方向X1が付勢方向Fと平行になるように、回転角度位置を位置決めされていたが、第1の方向X1と付勢方向Fとが、所定の微小な角度、例えば0度〜5度以下の範囲内の角度をなしていてもよく、平行な場合と同様に上述の効果を得ることができる。
第1のラックブッシュ20は、その軸方向位置を位置決めするとともに保持孔28からの抜け止めとして機能する係合部33を有している。この係合部33は、凸部からなり、第1のラックブッシュ20の第1の端部20aの第4の部分45から径方向外方に向けて所定量突出している。また、保持孔28は、係合部33に係合する相手方の係合部34を有している。係合部34は、凹部としての周溝の周縁部からなる。係合部33,34同士が、互いに嵌まりあって凹凸係合することにより、第1のラックブッシュ20が軸方向Sに抜け止めされるとともに位置決めされている。
【0047】
また、係合部33は、径方向に移動可能に弾性支持されている。係合部33,34同士を互いに係合させるときには、係合部33を径方向内方に変位させ、保持孔28の係合部34としての周溝の縁部を乗り越えさせる。乗り越えた状態で、係合部33が弾力的に径方向外方に変位して、係合部33,34同士が自律的に互いに嵌まりあう。
図1に戻って、ラックハウジング15の第2の端部15bの保持孔28に、第2のラックブッシュ21が嵌合状態で保持されている。第2のラックブッシュ21は、ラック軸14の全ての径方向Rに関するラック軸14の端部14bの移動を所定量(零を含む)に規制しつつ、摺動自在に支持している。
【0048】
図11A,図11Bおよび図11Cは、図3のステアリング装置の動作を示す模式図であり、ラック軸が軸方向に移動する過程を順に図示している。図12A,図12Bおよび図12Cは、図11A,図11Bおよび図11Cにそれぞれ対応する第1のラックブッシュおよびラック軸の模式的な断面図である。これら各図は、ラック歯14aの寸法誤差により、噛み合い位置でのピニオン軸13とラック軸14との中心軸線間の距離Lが、図11A、図11Bおよび図11Cの順に、ラック軸14の軸方向移動に伴って徐々に大きくなる場合を示している。
【0049】
このように、仮に、ラック軸14のラック歯14aに寸法誤差がある場合には、上述の平行な方向X1に関して、ピニオン軸13とラック軸14との中心軸線間の距離Lが変化し、ラック軸14は第2のラックブッシュ21を支点として傾く。本実施形態では、通常時には、第1のラックブッシュ20の内周面36の第1の部分37と、ラック軸14の外周面とは接触しないので、ラック軸14の移動抵抗は変化量が小さく抑制される。
【0050】
また、直交する方向X2に関して、ラック軸14の移動は、常に、第1および第2のラックブッシュ20,21により規制されているので、噛み合い位置においても、ラック軸14のがたつきが確実に防止される。
なお、図示しないが、操向輪2からラック軸14に過大な外力が作用するときには、第1のラックブッシュ20の第1の部分37が、ラック軸14に接触し、外力を受け止める。その結果、外力がピニオン軸13やラック軸支持装置23に負荷されることが防止される。また、第2の部分38も同様に外力を受け止める。
【0051】
図1,図2および図3を参照して、本実施形態では、ラックアンドピニオン式のステアリング装置1において、ラック軸14が挿通され、軸方向Sに関して第1および第2の端部15a,15bを有する筒状のハウジングとしてのラックハウジング15と、このラックハウジング15の第1および第2の端部15a,15bのうち第1の端部15aに相対的に近い位置に配置され、ラック軸14を軸方向Sに摺動自在に支持しつつラック軸14をピニオン軸13側である所定の付勢方向Fに付勢するラック軸支持装置23と、ラックハウジング15の第1の端部15aに保持され、ラック軸14の端部14bを軸方向Sに摺動自在に支持する支持孔35を有する第1のラックブッシュ20とを備え、この第1のラックブッシュ20の支持孔35は、上記所定の付勢方向Fとは平行な方向としての第1の方向X1に相対的に直径DAが大きく、上記平行な方向X1とは直交する方向としての第2の方向X2に相対的に直径DBが短い孔からなっている。
【0052】
このように、付勢方向Fとは平行な方向X1に直交する方向X2に関して、支持孔35の直径DBが相対的に小さくなるので、支持孔35において直交する方向X2に関してのラック軸14のがたつきの発生を抑制することが可能となる。しかも、平行な方向X1に関して、支持孔35の径DAが相対的に大きくなるので、例えば仮に、ラック軸14のラック歯14aの寸法誤差があったとしても、ラック軸14の移動抵抗の軸方向移動に伴う変化を抑制することが可能となる。その結果、操舵感を向上することができる。
【0053】
さらに、これらの効果を、ラック軸14の加工精度を高めることなく、第1のラックブッシュ20の支持孔35の形状変更により得ることができるので、製造コストを安価にできる。また、上記平行な方向X1に関しての支持孔35の寸法精度を高くせずに済むので、製造コストを安価にできる。また、第1のラックブッシュ20が、ピニオン軸13に近い側の第1の端部15aに配置されているので、ピニオン軸13とラック軸14との噛み合い位置における上記直交する方向X2についてのラック軸14のがたつきを効果的に抑制することができる。
【0054】
また、第1および第2のラックブッシュ20,21は、ラック軸14に摺動自在に接するので、ボールを介在させる従来のラックブッシュに比べて、構造を簡素化できる。
また、本実施形態において、第1のラックブッシュ20の支持孔35の内周面36は、上記平行な方向X1とは直交する方向X2に関してのラック軸14の移動を規制し、上記平行な方向X1へのラック軸14の移動を許容するように、ラック軸14を案内する一対の案内面としての第2の部分38を含むようにしている。この場合、上述の直交する方向X2に関してのラック軸14のがたつきを確実に規制しつつ、ラック軸14の移動抵抗の変化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態において、上記一対の案内面としての第2の部分38のそれぞれは、上記平行な方向X1に沿って延びる平坦面を含むようにしている。この場合、平行な方向X1に関してラック軸14をスムーズに平坦面により案内することができるので、ラック軸14の移動抵抗の変化をより一層小さくすることができる。
なお、これらの効果は、ラックハウジング15の第2の端部15bにおけるラックブッシュの有無や構造にかかわらずに得ることができるが、第2の端部15bにもラックブッシュを配置するのが、ラック軸14のがたつきの防止には好ましい。
【0056】
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
図13は、本発明の第2の実施形態のステアリング装置の要部の断面図であり、第1の実施形態において図10に示された部分に相当する部分を示す。図13を参照して、第1のラックブッシュ20の支持孔35の内周面36は、第2の方向X2に互いに対向する一対の第2の部分38A(一方のみ図示。)を有している。第2の部分38Aは、凹湾曲面としての円筒面からなる。この円筒面は、第1の部分37の円筒面よりも小径に形成され、第1の部分37の円筒面から径方向内方に突出した凸部の先端に形成されている。第2の部分38Aの円筒面の直径は、上述の第1の実施形態における一対の第2の部分38の間隔(直径DBに相当)に等しく設定されている。第2の部分38Aは、断面円弧形状の樋形状をなし、この樋形状は第1のラックブッシュ20の中心軸線に平行に延びている。また、第2の部分38Aは、ラック軸14の外周面を面当たり状態で受けている。この場合、第2の部分38Aの少なくとも一部を変形させたり移動させたりすることにより、ラック軸14を第1の方向X1に移動させることができる。また、第2の部分38Aは、第1の方向X1に関してラック軸14に作用する外力を受けることができる。
【0057】
また、上述の各実施形態において、ラックハウジング15の第2の端部15bの第2のラックブッシュ21に代えて、第1のラックブッシュ20を設けてもよい。この場合、ラック軸14の両端が第1のラックブッシュ20により受けられることとなる。また、第1および第2のラックブッシュ20,21の少なくとも一方が、保持孔28に剛性支持状態で固定されることも考えられる。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】図1Aは、本発明の第1の実施形態のステアリング装置の概略構成を示す模式図であり、図1Bは、要部としての第1のラックブッシュの1B−1B断面を示す。
【図2】図1Aに示すステアリング装置の操舵機構の要部D2の一部断面図であり、断面部分は、図3に示すS2−S2断面を示す。
【図3】図2のS3−S3断面の断面図である。
【図4】第1のラックブッシュの斜視図である。
【図5】第1のラックブッシュの正面図である。
【図6】第1のラックブッシュの後面図である。
【図7】図5のS7−S7断面の断面図である。
【図8】図5のS8−S8断面の断面図である。
【図9】図8のS9−S9断面の断面図である。
【図10】図5の要部D10の拡大図である。
【図11】図11A,図11Bおよび図11Cは、図3のステアリング装置の動作を示す模式図であり、ラック軸が軸方向に移動する過程を順に図示している。
【図12】図12A,図12Bおよび図12Cは、図11A,図11Bおよび図11Cにそれぞれ対応する第1のラックブッシュおよびラック軸の模式的な断面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態のステアリング装置の要部の断面図であり、第1の実施形態において図10に示された部分に相当する部分を示す。
【符号の説明】
【0059】
1…ステアリング装置、13…ピニオン軸、14…ラック軸14、14b…(ラック軸の)端部、15…ラックハウジング(ハウジング)、15a…第1の端部、15b…第2の端部、23…ラック軸支持装置、35…支持孔、36…(支持孔の)内周面、38…第2の部分(案内面、平坦面)、38A…第2の部分(案内面)、DA…直径(第1の方向に関する径)、DB…径(第2の方向に関する径)、F…所定の付勢方向、S…軸方向、X1…第1の方向(平行な方向)、X2…第2の方向(直交する方向)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックアンドピニオン式のステアリング装置において、
ラック軸が挿通され、軸方向に関して第1および第2の端部を有する筒状のハウジングと、
このハウジングの第1および第2の端部のうち第1の端部に相対的に近い位置に配置され、ラック軸を軸方向に摺動自在に支持しつつラック軸をピニオン軸側である所定の付勢方向に付勢するラック軸支持装置と、
ハウジングの第1の端部に保持され、ラック軸の端部を軸方向に摺動自在に支持する支持孔を有するラックブッシュとを備え、
このラックブッシュの支持孔は、上記所定の付勢方向とは平行な方向に相対的に径が大きく、上記平行な方向とは直交する方向に相対的に径が短い孔からなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記平行な方向とは直交する方向に関してのラック軸の移動を規制し、上記平行な方向へのラック軸の移動を許容するように、ラック軸を案内する一対の案内面を含むことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、上記一対の案内面のそれぞれは、上記平行な方向に沿って延びる平坦面を含むことを特徴とするステアリング装置。
【請求項1】
ラックアンドピニオン式のステアリング装置において、
ラック軸が挿通され、軸方向に関して第1および第2の端部を有する筒状のハウジングと、
このハウジングの第1および第2の端部のうち第1の端部に相対的に近い位置に配置され、ラック軸を軸方向に摺動自在に支持しつつラック軸をピニオン軸側である所定の付勢方向に付勢するラック軸支持装置と、
ハウジングの第1の端部に保持され、ラック軸の端部を軸方向に摺動自在に支持する支持孔を有するラックブッシュとを備え、
このラックブッシュの支持孔は、上記所定の付勢方向とは平行な方向に相対的に径が大きく、上記平行な方向とは直交する方向に相対的に径が短い孔からなることを特徴とするステアリング装置。
【請求項2】
請求項1において、上記ラックブッシュの支持孔の内周面は、上記平行な方向とは直交する方向に関してのラック軸の移動を規制し、上記平行な方向へのラック軸の移動を許容するように、ラック軸を案内する一対の案内面を含むことを特徴とするステアリング装置。
【請求項3】
請求項2において、上記一対の案内面のそれぞれは、上記平行な方向に沿って延びる平坦面を含むことを特徴とするステアリング装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−87535(P2008−87535A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268386(P2006−268386)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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