説明

ステンシル製造方法

双極電気信号を用いてステンシルを電鋳するステップを含む、スクリーン印刷のステンシルを形成する方法に関する。双極信号は、カソードパルス(22)およびアノードパルス(24)を含んでいる。電鋳プロセス中にカソードパルス(22)を印加すると、金属が成膜される。アノードパルス(24)を印加すると、金属が除去される。カソードパルス(22)は、アノードパルス(24)よりも長い持続時間を有している。アノードパルス(24)の振幅の、カソードパルス(22)の振幅に対する比は1よりも大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン印刷に用いるステンシルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリーン印刷のステンシルは、該ステンシル上の開口領域によりパターンを画定している。材料は、ステンシルの開口領域を通して印刷されるため、印刷された付着物は、それらの開口領域にほぼ一致する。スクリーン印刷のステンシルは、電子基板の製造や、電子組立産業において多くの利用がある。これらには、プリント回路基板の印刷、電子パッケージのための導電性接着剤やはんだペーストの付着、ならびに、導電回路および抵抗回路の印刷が含まれるが、これらに限定はされない。
【0003】
電子デバイスを小さく、高速にかつ軽くしようとすると同時に、ピンの数を多くしようとする欲求が、高度パッケージ技術を用いる傾向につながっており、これは配線にリード線を用いることを無くするものである。高度パッケージ技術を用いることで、接続数の増加およびパッケージサイズの縮小が可能とされ、それにより、パッケージ性能の向上および製造コストの低下が可能とされる。電子部品をパッケージングするための最も高速でかつ最もコスト的に魅力ある選択肢のうちの1つは、ステンシルの開口部を通して配線材料をスクリーン印刷してから、それにより部品をパッケージングすることである。しかし、現在、実際上の制限が存在する。これは、ステンシルを製造する既知のプロセスでは、ファインピッチの完全な開口部を有するステンシルの製造が可能とされていないからである。小さい形状(例えば100ミクロン未満)に関しては、ステンシルの開口部が、同じ量のペーストがそれぞれの開口部から効果的に吐出されて印刷されるような高い精度を持って完全に形成されることが重要である。
【0004】
従来の金属ステンシルは、さまざまな方法で製造することができる。第1の既知の方法では、化学エッチングが用いられる。これには、レジストを金属箔に塗布し、マスクを用いてこのレジストを光学的にパターニングすることでレジストマスクを形成することがまず必要とされる。それから、このレジストを現像し、箔の上にマスクのパターンを残す。それから、そのレジストマスクを有する箔を化学エッチング液内に浸す。レジストマスクに覆われた領域は保護され、金属箔のエッチングを阻止する。一方、レジストマスクによって覆われていない露出領域はエッチングされ、これにより、金属箔を通して開口部が形成され、ステンシルの形が定められる。化学的にエッチングされたステンシルの欠点は、それらが、エッチングによって引き起こされるアンダーカット作用に起因して、小さな開口およびファインピッチを伴って確実には製造することができないということである。これは、ステンシルを用いるときに問題を引き起こすことがありうる。なぜなら、ペーストがアンダーカットされた側壁にトラップされうるからである。したがって、そのようなステンシルは、大きなピッチ形状に対してのみ使用される。
【0005】
別の方法においては、レーザー切断が用いられる。これには、金属箔をフレームに取り付けることが必要とされる。コンピュータ内に、所望のステンシルを形成するために必要とされる開口部のイメージを表すデータファイルが記憶される。コンピュータの制御下で、レーザーが、それぞれの開口部を順次蒸発させて除去しながらこのイメージをたどる。しかし、スクリーン印刷のステンシルの形成のためのレーザー切断プロセスにもまた、ファインピッチの開口部を形成するのにいくつかの欠点がある。とりわけ、レーザーにより粗い開口壁が切って作られ、これにより、印刷中に開口部内にペーストまたは接着剤がトラップされうる。別の問題は、このプロセスが、ファインピッチで非常にやっかいになりうるもので、溶けた金属を開口部の周りに吐き出し、一部の開口部の縁の周囲に好ましくない唇状部をしばしば生じさせうるということである。さらに、ふさがれた開口を残しての、金属の不完全な除去も起こりうる。別の問題は、開口部の直径が、ファインピッチで±10ミクロンも変わりうるということである。
【0006】
さらに別のステンシル製造方法には、DCの電鋳が利用される。このプロセスは、特性が調整された鋳型、通常ステンレス鋼シートから開始し、これはドライフィルムフォトレジストで覆われている。このレジストを、マスクを用いて平行UV光源にさらしてから現像し、開口部のパターンを残す。これを行ったら、パターニングされた鋳型を適当な電気めっき液に浸し、高DC電流の作用を受けさせ、これによりめっきプロセスが開始される。金属イオンが、所望のステンシルの厚さにまでフォトレジストの周りに堆積される。次のステップは、重合フォトレジストを取り除き、その後機械的に箔を除去することである。DC電鋳プロセスの一例は、米国特許第5359928号に記載されている。
【0007】
DC電鋳技術に関する問題は、それが150ミクロンピッチ未満でステンシルを確実には製造できないということである。それ故、これらのレベルでは、開口部の形状およびサイズが開口部ごとに異なる。また、従来のDC電鋳によっては、電流集中効果に起因し、基板全体にわたって一様にめっきがされない。この不均一な電流密度が不均一なめっき速度の原因となり、それ故、ステンシル全体にわたって、めっきされる金属の全体的なむらを生じさせる。また、開口部周囲にガスケットすなわち唇状部を生じる傾向があり、これが印刷プロセス中に流出を引き起こしうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、改良されたステンシル製造方法および改良された解像度のステンシルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、複数の双極波形を含む双極電気信号を用いてステンシルを電鋳するステップを含むステンシル形成方法が提供される。
【0010】
双極の電鋳を利用することには、従来のDC電鋳に対していくつかの固有の利点がある。とりわけ、材料の分布を制御可能とし、それにより、ステンシル全体にわたって一様な金属成膜が行われ、これは、この方法を用いて形成した形状のエッジの輪郭が非常に良好であることを意味している。さらに、材料特性を制御することができ、例えば、硬さ、真性応力、脆性、延性、および結晶構造等である。さらに、電流効率が向上され、これにより水素生成が減少され、こうしてピッチングが減じられかつ残留応力が減少される。くわえて、実際には、この方法を用いることで、有機添加剤に対する必要性が減少または無くなる。
【0011】
双極波形は、波形が正のパルスおよび負のパルスからなることを意味している。電鋳プロセス中に双極波形の正のパルスが印加されると、金属が堆積される。この正のパルスをカソードパルスと呼ぶ。負のパルスが印加されると、金属が除去される。この負のパルスをアノードパルスと呼ぶ。
【0012】
好ましくは、カソードパルスはアノードパルスよりも長い持続時間を有する。好ましくは、カソードパルスはアノードパルスの持続時間の少なくとも2倍である。カソードパルスの持続時間の、アノードパルスの持続時間に対する比は、2:1〜100:1の範囲内とすることができる。
【0013】
好ましくは、カソードパルスが、アノードパルスよりも低いピーク値を有する。カソードパルスの高さの、アノードパルスの高さに対する比は、1:1.5〜1:20の範囲内とすることができる。アノードパルスの高さは、カソードパルスの高さの略1.5倍とすることができる。アノードパルスの高さは、カソードパルスの高さの略20倍とすることができる。
【0014】
本方法は、双極波形を変化させるステップを含みうる。例えば、最初、滑らかなステンシルの側壁を与えるのに適した双極波形を用い、その後、プロセスの終了に向けて、粗い上面を与えるために波形を変えてもよい。これは、周波数、および/または。カソードパルスおよびアノードパルスの持続時間、および/または、カソードパルスとアノードパルスの振幅、および/または、カソードパルスとアノードパルスの相対的な幅、および/または、カソードパルスおよび/またはアノードパルスの相対的な振幅を変化させることで行うことができる。
【0015】
波形は、方形、またはスパイク形、または正弦形とすることができる。
【0016】
一般に、双極波形は電流波形であることが好ましい。この場合、電圧を制御し、電流を変化させる。もちろん、双極波形は同等に電圧波形とすることもできる。この場合、電流を基準にして電圧波形を変化させる。
【0017】
双極波形が電流波形である場合、1ms〜999msのミリ秒範囲内のパルス幅を有することができる。この場合、電圧の範囲は基板のサイズに依存する。
【0018】
アノードパルスの平均電流密度は、カソード波形の平均電流密度よりも小さい。
【0019】
電流は、1Am/dm〜50A/dmの範囲内にピーク密度を有することができ、A/dm=アンペア毎平方デシメートルで、1デシメートルは100cmである。
【0020】
平均電流密度は、3〜15A/dmの範囲内とすることができ、平均電流密度は1つの波形にわたっての電流の平均である。
【0021】
ステンシル電鋳ステップは、導電面上に、該導電面の露出領域を画定する鋳型を設けるステップと、イオン溶液中に鋳型と導電面とを浸漬するステップと、双極電流信号または双極電圧信号を用いて鋳型によって露出された領域を電気めっきするステップとを含みうる。
【0022】
鋳型は、導電面により保持される中間層上に設けることができる。中間層は、基板からステンシルを容易に剥離可能とする犠牲剥離層とすることができる。
【0023】
本発明の別の態様によれば、導電面の露出領域を画定する該導電面上のマスクと、それぞれがカソードパルスおよびアノードパルスを有する複数の波形を含む双極電流信号または双極電圧信号を用いて、マスクによって露出された領域を電気めっきする手段とを備えるステンシル形成システムが提供される。
【0024】
好ましくは、カソードパルスが、アノードパルスよりも長い持続時間を有する。好ましくは、カソードパルスが、アノードパルスの持続時間の少なくとも2倍である。カソードパルスの持続時間の、アノードパルス持続時間に対する比は、2:1〜100:1の範囲内とすることができる。
【0025】
好ましくは、カソードパルスが、アノードパルスよりも低いピーク値を有する。カソードパルスの高さの、アノードパルスの高さに対する比は、約1:1.5〜1:20の範囲内とすることができる。アノードパルスの高さは、カソードパルスの高さの略1.5倍とすることができる。アノードパルスの高さは、カソードパルスの高さの略20倍とすることができる。
【0026】
双極波形は、好ましくは、アノードパルスのカソードパルスに対する比がより大きく、また、カソードパルスの時間よりもアノードパルスの時間が短い。
【0027】
波形は、方形、またはスパイク形、または正弦形とすることができる。
【0028】
双極波形は電流波形とすることができる。かわりに、双極波形は電圧波形としてもよい。
【0029】
双極波形が電流波形の場合、アノードパルスの平均電流密度は、好ましくはカソード波形の平均電流密度よりも小さい。
【0030】
双極波形が電流波形の場合、平均電流密度は3〜10A/dmの範囲内とすることができる。波形は、平均電流密度7A/dm、周波数20Hz(50ms)、カソードパルス持続時間10A/dmで45ms、かつ、アノードパルス持続時間20A/dmで5msとすることができる。
【0031】
双極波形が電流波形である場合、1ms〜999msのミリ秒範囲内のパルス幅を有しうる。この場合、電圧の範囲はウェーハのサイズに依存する。
【0032】
双極波形が電流波形の場合、電流は、1Am/dm〜50A/dmの間のいずれかの範囲内にピーク密度を有することができ、A/dm=アンペア毎平方デシメートルで、1デシメートルは100cmである。
【0033】
双極信号のパラメータを制御するために制御装置を設けることができる。制御装置は、電鋳プロセス中の異なる段階において、双極信号のパラメータを変化させるように動作可能とすることができる。パラメータは、周波数、および/またはカソードパルスおよびアノードパルスの持続時間、および/またはカソードパルスおよびアノードパルスの振幅、および/またはカソードパルスおよびアノードパルスの相対的な幅、および/または、カソードパルスおよび/またはアノードパルスの相対的な振幅とすることができる。
【0034】
電鋳プロセス中の異なる段階において信号のパラメータを変化させることで、ステンシルの物理的特性を、異なる領域において異なるようにすることができる。これは、プロセスの初期段階においては、パルスを非常に滑らかな側壁の輪郭を与えるように制御することができ、一方、後の段階では、めっきがおおむね終了したら、ステンシルが粗い上面を有するようにパラメータを変えてもよいということを意味している。粗い上面を与えることは、印刷プロセスにおいて助けとなるが、これは、ステンシル上へのペーストのロール塗が改善されるからである。滑らかな側壁を有することは、印刷において助けとなるが、これは、開口からのより良好な材料離れが促進されるからである。
【0035】
本発明のさらに別の態様によれば、導電面上に、該導電面の露出領域を画定する鋳型を設けることでステンシルを形成するステップと、双極電流信号または双極電圧信号を用いて導電面の露出領域を電気めっきすることでステンシルを形成するステップと、ステンシルを用いてボードすなわち基板または他の適当な媒体上に形状を印刷するステップとを含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に、本発明のさまざまな態様を、添付の図面を参照して単に一例として説明する。
【0037】
ステンシル形成プロセスにおける開始材料は、図1に示すように、例えばガラスの基板10である。もちろん、任意の他の適当な基板を用いることもでき、例えば、シリコンやセラミック等の誘電性材料等である。基板10は、例えば、メタノール、アセトンおよびピラニア溶液、そして脱イオン水に逐次浸漬する等の、任意の適当な方法を用いて洗浄する。それから導電性の金属シード層12をガラスウェーハ10の上面に成膜する。これは、電子ビーム蒸着装置、または、スパッタリングや熱蒸着といった任意の他の適当な技術を用いて行うことができる。金属12は、伝導するのに十分な厚さを有していなければならない。厚さは、0.1〜0.3ミクロンの範囲内とすることができる。
【0038】
さまざまな金属を、単独で、または2種の金属からなるもしくは3種の金属からなる積層構造の一部として、シード層12に用いることができる。しかし、例として、チタン/銅/チタンの積層構造またはクロム/銅/金の積層構造と同様に、チタンを用いることもできる。ガラス基板を用いる場合、ベースメタル層はチタンまたはクロムであることが好ましい。これは、これらの金属は基板への付着を促進するからである。代わりとして、金属で被覆されたガラス基板を用いるのではなく、金属基板を用いることもできる。
【0039】
金属層12を形成したら、図2に示すように、フォトレジスト14をその上に成膜する。任意の適当なフォトレジスト14を用いうるが、好ましい例はSU−8である。周知のように、これはネガレジストである。フォトレジスト14は、例えばスピンコーティング等の、任意の適当な方法で成膜することができる。約50ミクロンのフォトレジストの厚さを与えるために、回転速度はおよそ毎分3000回転とすることができる。もちろん、これは要求されるステンシルの厚さに応じて変えてもよい。かわりに、レジストは、フィルムとして、または、ナイフコーターとしても知られているドクターブレード装置を用いて、施すこともできる。それから、レジストで覆われたガラスウェーハ/基板を、1分から2時間の間、ホットプレートまたはオーブンで50〜130℃の範囲の温度、例えば90℃でベーキングする。理解されるように、このとき、絶対的な温度および時間はフォトレジストの厚さに依存する。フォトレジスト14が厚いほど、ベーキングには時間がかかる。
【0040】
フォトレジスト14をベーキングした後、図3に示すように、フォトリソグラフィーを用いてフォトマスク16を通してそれにパターンを形成する。フォトマスクはクロム付ガラスマスクであるが、高解像度フォトプロッターで製造したマスクもまた用いることができる。レジスト14は、適当な波長を持つ高平行光源を用いてマスク16を通して露光する。SU−8に関しては、波長は、通常、約350nm〜400nmの範囲で、好ましくは365nmである。使用する光のエネルギーは、100〜5000mJ/cmの範囲内にある。しかし、使用する波長およびエネルギーは、レジストの感度に依存するということは理解されるであろう。それから、パターンが形成されたレジスト14を、例えばホットプレートまたはオーブンを用いてベーキングする。ベーキング温度は、50〜130℃の範囲内で、好ましくは90℃である。ベーキングの持続時間はフォトレジストの厚さに依存するが、1分から2時間の間のいずれともすることができる。言うまでもなく、このパターニング後のベーキングは、他の種類のレジストに対しては不要でありうることは理解されるであろう。
【0041】
ベーキングの後、フォトレジスト14を、Microposit EC Solventまたはアセトン、または任意の他の適当な溶剤内で現像する。現像は、多少の攪拌をしながら溶液内に完全に浸漬することで、または溶液を表面上に吹き付けることで行うことができる。Microposit EC Solventを用いると、レジストを現像するのにかかる時間は2〜3分程度であるが、この時間は使用する現像用の薬品によって異なるということが理解されるであろう。レジストを現像すると、露光された領域のレジストのメサ形部18が残り、全ての他のレジストは除去される。これらのパターンが形成されたレジストのメサ形部18が、図4に示すように、ステンシルの開口形状を画定する。
【0042】
メサ形部18を形成したら、電鋳プロセスを実行する。図5は、これに適したシステムを示している。これは、双極電流信号を出力するように動作可能な可変電流源と、アノードと、電気めっき液の浴とを備えている。電気めっきは、任意の適当な溶液を用いて行うことができるが、好ましい選択肢は、ニッケルスルファミン酸(330g/l)、ホウ酸(30g/l)、および塩化ニッケル(15g/l)で作った溶液である。この場合、99.99%の純度のニッケルのアノードを用いる。溶液は50℃であるのが望ましい。ウェーハをめっき浴内の溶液内に浸す。これを行ったら、AC双極電流を導電性のシード層12とアノードとの間に印加する。これにより、図6に示すように、ステンシルの形成がなされる。
【0043】
図7は、使用する双極AC電流波形の一例を示している。好ましくは、この双極信号はこれらの波形の連続的な流れを含むが、もし望ましい場合には、電流がその間印加されないオフタイムを用いることもできる。図7の波形は方形であり、カソードパルス22とアノードパルス24とからなる。カソードパルスは、金属を成膜させる双極波形の部分を意味している。アノードパルスは、金属を除去させる双極波形の部分を意味している。図7に示す波形の場合、カソードパルスは正のパルス22で表され、アノードパルスは負のパルス24で表されている。
【0044】
カソードパルス22は、アノードパルス24よりも、長い、好ましくは少なくとも2倍の持続時間を有しており、かつ、低いピーク順電流を有している。アノードパルス24ははるかに短いが、比較的高いピーク電流を有している。カソードパルス22の平均電流密度は、アノードパルス24のものよりも大きい。
【0045】
使用する双極AC電流波形は、通常、1ms〜999msのミリ秒の範囲内であり、カソードパルスに対するアノードパルスの比が大きく、カソードパルスの時間よりもアノードパルスの時間が短い。電圧範囲はウェーハのサイズに依存する。例えば、8インチウェーハに関しては、使用する電圧は12Vであったが、1〜100ボルトの間が可能である。留意すべきは、一般に、電圧を制御して電流を変化させることが好ましいが、もちろん、電流を基準にして電圧波形を変化させることも可能である。電流は、1Am/dm〜50A/dm位に及び、A/dm=アンペア毎平方デシメートルである。平均電流密度は通常、3〜10A/dmである。純ニッケルめっきのための通常の波形は、平均電流密度7A/dm、周波数20Hz(50ms)、カソードパルス持続時間10A/dmで45ms、かつ、アノードパルス持続時間20A/dmで5msである。
【0046】
その材料の所望の厚さに達したら、電気めっきプロセスを止め、その電鋳されたステンシル20を有するウェーハを溶液から取り出す。そして、ステンシル20を基板10から取る。これは、単にステンシル20をウェーハ/基板から剥がすことにより行うことができる。この段階では、図8に示すように、レジストのメサ形部18が開口部をふさいでいる。適当な溶剤を用いてレジストを除去し、これにより、図9に示すようにステンシル20が残される。SU−8に関しては、好ましい溶剤はMS111であり、Miller Stephens Corporation(米国)から入手可能である。それからステンシル20を洗浄し、いかなる残りのMS111およびSU−8をも取り除く。これは、ステンシルを窒素で吹いて乾燥させることで行うことができる。そして、従来の取付技術を用いて、ステンシルをフレーム(不図示)に取り付け、これにより、その後、電子基板製造や電子組立ライン産業における印刷に用いることができる。
【0047】
金属ステンシルを電鋳するのに双極AC電流を用いることで、良好な金属成膜均一性がもたらされ、非常に微細な形状画定が可能とされる。パルスパラメータを変えることにより、硬さや表面粗さ等のステンシルの材料特性を制御することができる。これは、波形パラメータを制御することにより、原子レベルでステンシルの成膜を変化させることができるからである。変えることができるパルスパラメータには、周波数、および/またはカソードパルスおよびアノードパルスの相対的な幅、および/またはカソードパルスおよびアノードパルスの相対的な高さが含まれる。実際、高い周波数では表面平滑性が改善されるが、一方、低い周波数では表面粗さが大きくされるということが分かった。例として、上述の特定のステンシル形成プロセスに関しては、100Hzの周波数を用いることにより滑らかな表面が与えられるが、一方、4HzまたはDCを用いるとより粗い表面を生じることが分かった。したがって、周波数を変えることで、表面特性を変えることができる。
【0048】
本発明が実施された双極電鋳ステンシル製造技術により、さまざまな利点がもたらされる。例えば、従来のDC技術と違い、双極パルスを用いると、電気めっきプロセスは、電気めっき浴内で有機添加剤を用いることを必要としない。これらの添加剤は高価でかつ維持が難しく、それらをプロセスから除くことで、添加剤混合物を監視するための監視装置に対する必要性が減らされる。また本方法により、ステンシル全体にわたって金属の極めて一様な分布ももたらされる。さらに本方法は、硬さ、真性応力および結晶構造等の材料特性を制御するための方法を提供する。これにより、印刷を助けるようにステンシルに粗い上面を与えると同時に、ペーストの完全な離れのために、非常に滑らかな側壁を与えることが実現可能とされる。さらに、電流効率が向上させられ、これにより水素生成が減少され、こうしてピッチングが減じられかつ残留応力が減少される。
【0049】
当業者には、本発明から逸脱せずに、開示した構成の変形が可能であることは理解されるであろう。例えば、ステンシルは、ネガフォトレジストを用いて形成するものとして説明しているが、ポジレジストも等しく用いうる。さらに、ステンシルは、基板からはがすものとして上では説明しているが、他の選択肢も可能である。例えば、導電面により保持される中間層上に鋳型を設けてもよい。中間層は、溶かし去ることができてそれにより基板からステンシルを容易に剥離可能とする犠牲剥離層としてもよい。犠牲剥離層(不図示)は、金属シード層とステンシル層との間に成膜しうる。かわりに、溶かし去ることができる犠牲基板を用いることもできる。さらに、上記の波形は全て方形であるが、スパイク波形および正弦波形もまた好適である。したがって、特定の実施形態の上記説明は単に一例として行われており、限定の目的ではない。説明した作用に対して大きな変更なしに、小さな改良を行いうることは、当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】ステンシル形成に用いる基板の斜視図である。
【図2】レジストがその上に成膜された、図1の基板の斜視図である。
【図3】マスクが施された、図2の基板の斜視図である。
【図4】レジストのパターニングおよび現像後の、図3の基板の斜視図である。
【図5】ステンシルを電鋳するシステムの概略図である。
【図6】基板上の電鋳されたステンシルの斜視図である。
【図7】電気めっきプロセス中に印加される双極パルスの一例を示している。
【図8】基板から取った後の、図7のステンシルの斜視図である。
【図9】最終的なステンシルの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれがカソードパルスおよびアノードパルスを有する複数の双極波形を含む双極電気信号を用いてステンシルを電鋳するステップを含むステンシル形成方法。
【請求項2】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも長い持続時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスの持続時間の少なくとも2倍の持続時間を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間の比が、2:1〜100:1の範囲内にあり、例えば3:1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも低いピーク値を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記カソードパルスのピーク値の、前記アノードパルスのピーク値に対する比が、1:1.5〜1:20の範囲内にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記双極信号が、方形、またはスパイク形、または正弦形である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記双極波形が、1ms〜999msの範囲内のパルス幅を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記双極波形が電流波形である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アノードパルスの平均電流密度が、前記カソードパルスの平均電流密度よりも小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ピーク電流密度が、1Am/dm〜50A/dmの範囲内にある、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
平均電流密度が、3〜10A/dmの範囲内にある、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記双極波形が電圧波形である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記双極信号を変化させるステップを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
信号周波数、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの振幅、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な持続時間、ならびに、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な振幅のうちのいずれか1つを変化させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステンシル電鋳ステップが、導電面上に、該導電面の露出領域を画定する鋳型を設けるステップと、イオン溶液中に前記鋳型と前記導電面とを浸漬するステップと、前記双極電流信号または前記双極電圧信号を用いて前記鋳型によって露出された領域を電気めっきするステップとを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
導電面上で、該導電面の露出領域を画定する鋳型を用いるステンシル形成システムであって、それぞれがカソードパルスおよびアノードパルスを含む複数の双極波形を含む双極電流信号または双極電圧信号を用いて、前記鋳型によって露出された領域を電気めっきする手段を備えるシステム。
【請求項18】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも長い持続時間を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスの持続時間の少なくとも2倍の持続時間を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間の比が、2:1〜100:1の範囲内にある、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも低いピーク値を有する、請求項15〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記カソードパルスのピーク値の、前記アノードパルスのピーク値に対する比が、1:1.5〜1:20の範囲内にある、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記双極波形が、1ms〜999msの範囲内のパルス幅を有する、請求項15〜22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記双極波形が電流波形である、請求項15〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記アノードパルスの平均電流密度が、前記カソードパルスの平均電流密度よりも小さい、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
ピーク電流密度が、1Am/dm〜50A/dmの範囲内にある、請求項24または25に記載のシステム。
【請求項27】
前記双極波形を変化させる手段をさらに備え、電鋳プロセス中の異なる段階において異なる波形が印加される、請求項15〜26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記双極波形変化手段が、信号周波数、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの振幅、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な持続時間、ならびに、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な振幅のうちの1つ以上を変化させるように動作可能である、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法または請求項17〜28のいずれか1項に記載のシステムの生産物であるステンシル。
【請求項30】
請求項29に記載のステンシルの、スクリーン印刷プロセスにおける使用。
【請求項31】
請求項30のプロセスの生産物。
【請求項32】
双極電流信号または双極電圧信号を用いてステンシルを電鋳するステップと、前記ステンシルを用いて所望の材料を印刷するステップとを含むスクリーン印刷方法。
【請求項33】
請求項32に記載の方法を用いて製造された、プリント回路基板等の回路基板、パッケージ、またはマイクロ電子デバイス。
【請求項34】
双極電流信号または双極電圧信号を用いて電鋳によって製造されたステンシルを用いて作られた印刷物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子基板製造や電子組立産業において用いられるスクリーン印刷用のステンシルを形成する方法であって、それぞれがカソードパルスおよびアノードパルスを有する複数の双極波形を含む双極電気信号を用いてステンシルを電鋳するステップを含む、ステンシルを形成する方法。
【請求項2】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも長い持続時間を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスの持続時間の少なくとも2倍の持続時間を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間の比が、2:1〜100:1の範囲内にあり、例えば3:1である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも低いピーク値を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記カソードパルスのピーク値の、前記アノードパルスのピーク値に対する比が、1:1.5〜1:20の範囲内にある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記双極信号が、方形、またはスパイク形、または正弦形である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記双極波形が、1ms〜999msの範囲内のパルス幅を有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記双極波形が電流波形である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アノードパルスの平均電流密度が、前記カソードパルスの平均電流密度よりも小さい、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ピーク電流密度が、1Am/dm〜50A/dmの範囲内にある、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
平均電流密度が、3〜10A/dmの範囲内にある、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記双極波形が電圧波形である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記双極信号を変化させるステップを含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
信号周波数、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの振幅、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な持続時間、ならびに、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な振幅のうちのいずれか1つを変化させるステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ステンシル電鋳ステップが、導電面上に、該導電面の露出領域を画定する鋳型を設けるステップと、イオン溶液中に前記鋳型と前記導電面とを浸漬するステップと、前記双極電流信号または前記双極電圧信号を用いて前記鋳型によって露出された領域を電気めっきするステップとを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
導電面上で、該導電面の露出領域を画定する鋳型を用いる、スクリーン印刷用のステンシルを形成するシステムであって、それぞれがカソードパルスおよびアノードパルスを含む複数の双極波形を含む双極電流信号または双極電圧信号を用いて、前記鋳型によって露出された領域を電気めっきする手段を備えるシステム。
【請求項18】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも長い持続時間を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスの持続時間の少なくとも2倍の持続時間を有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間の比が、2:1〜100:1の範囲内にある、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記カソードパルスが、前記アノードパルスよりも低いピーク値を有する、請求項15〜20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記カソードパルスのピーク値の、前記アノードパルスのピーク値に対する比が、1:1.5〜1:20の範囲内にある、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記双極波形が、1ms〜999msの範囲内のパルス幅を有する、請求項15〜22のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記双極波形が電流波形である、請求項15〜23のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項25】
前記アノードパルスの平均電流密度が、前記カソードパルスの平均電流密度よりも小さい、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
ピーク電流密度が、1Am/dm〜50A/dmの範囲内にある、請求項24または25に記載のシステム。
【請求項27】
前記双極波形を変化させる手段をさらに備え、電鋳プロセス中の異なる段階において異なる波形が印加される、請求項15〜26のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項28】
前記双極波形変化手段が、信号周波数、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの持続時間、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの振幅、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な持続時間、ならびに、前記カソードパルスおよび前記アノードパルスの相対的な振幅のうちの1つ以上を変化させるように動作可能である、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法または請求項17〜28のいずれか1項に記載のシステムの生産物であるスクリーン印刷用ステンシル。
【請求項30】
請求項29に記載のスクリーン印刷用ステンシルの、スクリーン印刷プロセスにおける使用。
【請求項31】
請求項30のプロセスの生産物。
【請求項32】
双極電流信号または双極電圧信号を用いてスクリーン印刷用ステンシルを電鋳するステップと、前記スクリーン印刷用ステンシルを用いて所望の材料を印刷するステップとを含むスクリーン印刷方法。
【請求項33】
双極電流信号または双極電圧信号を用いてスクリーン印刷用ステンシルを電鋳し、前記スクリーン印刷用ステンシルを用いて所望の材料を印刷することによって製造された、プリント回路基板等の回路基板、パッケージ、またはマイクロ電子デバイス。
【請求項34】
双極電流信号または双極電圧信号を用いて電鋳によって製造されたステンシルを用いて作られた印刷物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−518808(P2006−518808A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−502201(P2006−502201)
【出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000318
【国際公開番号】WO2004/067806
【国際公開日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【出願人】(505286958)マイクロステンシル リミテッド (1)
【Fターム(参考)】