説明

ストップコック閉鎖プラグ

この発明は、流体用ストップコックで、入口(3)および出口(4)を備えるハウジング(2)並びにこのハウジングの中の閉鎖プラグ(1)を含み、スピンドルナット(9)およびそれに付着する閉鎖膜(6)を備え、この入口(3)と出口(4)の間の流路を制御するストップコックであって、上記閉鎖膜(6)が熱可塑性エラストマ(TPE)製であるストップコックに関する。この発明は、ストップコックの入口と出口の間の流路を制御するための閉鎖プラグで、熱可塑性エラストマ(TPE)製の閉鎖膜を伴う閉鎖プラグにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ストップコック閉鎖プラグに関し、更に詳しくは合成材料の閉鎖膜を備えるストップコック閉鎖プラグに関する。
【背景技術】
【0002】
食品および飲物、特に飲料水を取扱う分野では、それらと接触するようになる材料に非常に厳格な規準が適用されている。
その様な種類の製品を取扱うためのパイプや導管用に適当な材料は、今や普通に手に入るが、言及した厳格な規準に合う適当なストップコックを見付けることは、依然としてひどく困難である。
最近EP 1462695で、完全に合成/プラスチック材料製の、出入口を備えるハウジングおよびハウジングカバーを含む、新しいストップコック技術が提案された。
しかし、この新しいストップコック技術には、まだ閉鎖膜用の材料に関する問題が伴う。この閉鎖プラグのスピンドルナットへのこの閉鎖膜の適正な付着(グリップ)性と食品および飲料水用途に望ましいような非常に低レベルの引抜き可能要素を同時に満足する適当な材料を見付けることができなかった。適正なグリップを保証するためにスピンドルナット上の現場硫化/硬化を必要とする低毒性合成ゴムについて妥協に決着を付けねばならなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明の目的は、液体(飲料水)と接触する全ての材料が非常に厳格な保健および安全性規準、および特に食品との直接接触に使うための全ての承認、医学的承認、並びにEC規則、米国食品薬品局承認、医学的米国薬局方クラスVI準拠および水WRC規準に従う水のための承認を満足する材料から成り得るストップコックを提供することによって現状技術水準のストップコックの欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
従って、この発明は、ストップコック、特に入口および出口を備えるハウジングおよびこのハウジングの中の閉鎖プラグを含み、スピンドルナット(この閉鎖プラグ用駆動スピンドルである)およびそれに付着する閉鎖膜を備え、この入口と出口の間の流路を制御するストップコックを提供し、ここでこのストップコック閉鎖プラグ膜は熱可塑性エラストマ(TPE)製である。
【0005】
本明細書で使う表現“熱可塑性エラストマ”またはTPEは、特定のクラスの化合物を指すのではなく、特定の特性分布を示すクラスの材料、即ち、典型的熱可塑性材料として処理可能であるが(射出成形、押出しまたはブロー成形加工性の点、および再利用可能性の点で)、ゴムに匹敵する機械的特性(柔軟性−即ち、低剛性−および弾性−即ち、圧縮永久歪みおよび引張り永久歪み−の点で)を有する材料を指す。
【0006】
この発明の好適特徴によれば、このストップコック閉鎖プラグ膜のために使うTPEは、ポリエステル−ポリエーテル型TPEまたはポリエステル−ポリエステル型TPEであるのが適当である。
【0007】
特に適当なTPE型は、例えば、DSM社が“ARNITE E”、“ARNITE P”および“ARNITE U”を参照して商品化した製品である。
【0008】
この発明によるストップコック閉鎖プラグ膜は、EP 1462695に記載してあるように、完全に合成/プラスチック材料製の、ハウジングカバーおよび出入口を備えるハウジングを含むストップコックのような“本質的に合成/プラスチック材料製の”ストップコックに使うために特に適し、その特許の開示をここにこの明細書に援用する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この関係で特に適するストップコックは、例えば、随意に繊維(ガラス繊維またはその他のエンジニアリング繊維)で強化した、ポリプロピレン、ポリフェニレン エーテルおよびポリアミドから選択した、随意に繊維強化した、材料製のハウジングおよびハウジングカバー、および/または縦補強リブを備える縦ダクト、および上記縦ダクトに垂直な軸を備えるプラグ空洞を含む成形したプラスチック片から成り、上記プラグ空洞の補強リブがその軸に平行に伸び且つこのハウジングカバーをこのハウジングに固定するための少なくとも三つの周辺補強領域を備える、入口および出口を備えるハウジング、並びにカバー表面であって、上記カバー表面の面に垂直な、放射状補強リブおよび/または一つ以上の周辺リブを備えるカバー表面を含む成形したプラスチック片から成るハウジングカバーで、このハウジングカバーをこのハウジングに固定するための少なくとも三つの周辺補強領域、および、放射状補強リブを備え、この閉鎖プラグ用の上記駆動スピンドルを保持するための、上記プラグ空洞の軸に沿う中空隆起部を備えるカバー表面を含む。
【0010】
この発明は、また特に流体用ストップコックの入口と出口の間の流路を制御するための閉鎖プラグで、スピンドルナットおよびそれに付着する閉鎖膜を含む閉鎖プラグで、上記閉鎖膜が熱可塑性エラストマ(TPE)、特にポリエステル−ポリエーテル型TPEまたはポリエステル−ポリエステル型TPE製である閉鎖プラグに関する。
この発明の好適特徴によれば、その様な閉鎖プラグのスピンドルナットがこのTPE閉鎖膜の閉鎖プラグスピンドルナットへの適正な付着/グリップを保証するための手段、例えば、中にこの閉鎖膜のTPE材料が入り込む孔および/または溝、またはこの閉鎖膜の内部の適合した/対応するリブおよび/または溝と協同する溝および/または隆起部を含み、このスピンドルナットの閉鎖膜への強制“一方向”挿入/据付けを可能にする。
【0011】
従来のゴムでは、ゴムコンパウンドをスピンドルナット上で現場硬化(硫化/架橋/重合)するので、このスピンドルナットへの膜の付着またはグリップに関して現実の問題に遭遇することはないが、この発明によるストップコックおよび閉鎖プラグに対しては、熱可塑性エラストマで限られた付着が生じる。
この発明の更なる好適特徴によれば、この閉鎖プラグのスピンドルナットは、従ってこのTPE閉鎖膜のこの閉鎖プラグスピンドルナットへの適正な付着/グリップを保証するための手段を最もふさわしく含むことができる。
【0012】
この発明の第1好適実施例では、その様な手段をこのスピンドルナットが中にこの閉鎖膜のTPE材料が入り込む孔および/または溝を含むという事実に結び付けてもよい。
このスピンドルナットの孔および/または溝の中へのTPE材料の入り込みは、例えば、このプラグ膜を成形するための型の中でこのスピンドルナット上に溶融したTPEを射出することから起るかも知れない。
【0013】
この発明の別の好適実施例で、このTPE閉鎖膜のこの閉鎖プラグスピンドルナットへの適正な付着/グリップを保証するための手段は、このスピンドルナットがこの閉鎖膜の内部の適合した/対応するリブおよび/または溝と協同する溝および/または隆起部を含み、このスピンドルナットの閉鎖膜への強制“一方向”挿入/据付けを可能にすると言う事実にあるかも知れない。
【0014】
この発明の更なる特徴および詳細は、添付の図面を参照して、単なる例示として挙げる、この発明の二つの特定の実施例の以下の説明から明白になるだろう。
【実施例】
【0015】
図1に示すストップコックは、
出口(3)および入口(4)を備えるハウジング(2)並びにハウジングカバー(5)
(共に成形(および/または機械加工した)プラスチック片から成る)、
並びに図2および以下に詳述するようなストップコック閉鎖プラグ(1)を含む。
このストップコック閉鎖プラグ(1)は、スピンドルナット(9)に適切に取付けた“弾性”閉鎖膜(6) − プラグ部(7)はこのストップコックの流体流路を制御するようになっていて、フランジ部(8)は(中間ブッシュと共に)ハウジング(2)とハウジングカバー(3)の間にクランプされるようになっている − を含む。
この発明によれば、この“弾性”閉鎖膜は、この明細書で特別に定義するような、熱可塑性エラストマ(TPE)製である。
【0016】
図3および図4に示すこの発明の実施例によれば、スピンドルナット(9)へのこのTPE材料の取付けは、スピンドルナットヘッド部(10)が円周溝(11)および幾つかの横孔またはチャンネル(12)を備えることを伴う。
この溶融熱可塑性エラストマをスピンドルナットヘッド部(10)上に射出するとき − 適当な型の中で − この溶融エラストマは、溝(11)および孔(12)に入り込み、それでこのプラグ膜のスピンドルナットヘッドへの適当な付着/グリップをもたらす。
【0017】
図5および図6に示すこの発明の実施例によれば、このTPE材料のスピンドルナット(9’)への適切な取付け(付着/グリップ)を保証するための手段は、円周溝(11’)および縦溝(12’)を備えるスピンドルナットヘッド部(10’)、および対応するリブ/隆起部(13)を伴う。
この溶融熱可塑性エラストマをスピンドルナットヘッド部(10’)上に射出するとき − 適当な型の中で − この溶融エラストマは、溝(11’)および(12’)に入り込み、それでこのプラグ膜のスピンドルナットヘッドへの適当な付着/グリップをもたらす。
その代りに、適合した/対応する溝およびリブ/隆起部を備える、図5および図6によるスピンドルナットを、予め成形した熱可塑性エラストマ膜に、強制的な方法で、挿入し/据付けてもよく、そうすれば一旦このスピンドルナットを適所に押込むと、このTPE膜がピンドルナットヘッドに適切に取付く(付着する/グリップする)。
【0018】
この様に、特定の実施例を参照してこの発明を詳細に説明した。
しかし、これらの実施例の詳細は、上の本文に開示し且つ以下の請求項に表すようなこの発明の範囲の如何なる限定も伴わないこと、およびこれらの請求項の範囲内での多くの変形が当業者に容易に明白であろうことに気付くべきである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明によるストップコック閉鎖プラグの、透視図での、図を表す。
【図2】EP 1462695によるプラスチックストップコックの分解図の中の、図1のストップコック閉鎖プラグを表す。
【図3】この発明によるTPE閉鎖膜を備えるストップコック閉鎖プラグ用のスピンドルナットの第1実施例の、透視図での、図を表す。
【図4】図3のスピンドルナットの断面図を表す。
【図5】この発明によるTPE閉鎖膜を備えるストップコック閉鎖プラグ用のスピンドルナットの別の実施例の、透視図での、図を表す。
【図6】図5のスピンドルナットの断面図を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体用ストップコックで、入口(3)および出口(4)を備えるハウジング(2)並びにこのハウジングの中の閉鎖プラグ(1)を含み、スピンドルナット(9)およびそれに付着する閉鎖膜(6)を備え、この入口(3)と出口(4)の間の流路を制御するストップコックであって、上記閉鎖膜(6)が熱可塑性エラストマ(TPE)製であることを特徴とするストップコック。
【請求項2】
請求項1によるストップコックであって、上記TPEがポリエステル−ポリエーテル型TPEまたはポリエステル−ポリエステル型TPEであることを特徴とするストップコック。
【請求項3】
請求項1および請求項2の何れか一つによるストップコックであって、上記ストップコックが合成/プラスチック材料製のハウジングカバー(5)並びに入口(3)および出口(4)を備える上記ハウジング(2)を含むことを特徴とするストップコック。
【請求項4】
請求項3によるストップコックであって、上記ハウジング(2)およびハウジングカバー(5)が、随意に繊維強化した、ポリプロピレン、ポリフェニレン エーテルおよびポリアミドから選択した材料製であることを特徴とするストップコック。
【請求項5】
先行する請求項の何れか一つによるストップコックであって、上記閉鎖プラグ(1)の上記スピンドルナット(9)が上記TPE閉鎖膜の上記閉鎖プラグスピンドルナットへの適正な付着/グリップを保証するための手段を含むことを特徴とするストップコック。
【請求項6】
請求項5によるストップコックであって、上記スピンドルナットが、中に上記閉鎖膜の上記TPE材料が入り込む孔(12)および/または溝(11)を含むことを特徴とするストップコック。
【請求項7】
請求項6によるストップコックであって、上記TPE材料が、上記プラグ膜を成形するための型の中で上記スピンドルナット上に溶融したTPEを射出する結果として上記スピンドルナットの上記孔(12)および/または溝(11)の中に入り込んでいることを特徴とするストップコック。
【請求項8】
請求項3ないし請求項8の何れか一つによるストップコックであって、上記スピンドルナットが上記閉鎖膜の内部の適合した/対応するリブおよび/または溝と協同する溝(11)および/または隆起部(13)を含んで、上記スピンドルナットの上記閉鎖膜への強制“一方向”挿入/据付けを可能にすることを特徴とするストップコック。
【請求項9】
請求項3ないし請求項8の何れか一つによるストップコックであって、入口および出口を備える上記ハウジングが、縦補強リブを備える縦ダクト、および上記縦ダクトに垂直な軸を備えるプラグ空洞を含む成形したプラスチック片から成り、上記プラグ空洞の補強リブがその軸に平行に伸び且つ上記ハウジングカバーを上記ハウジングに固定するための少なくとも三つの周辺補強領域を備え、並びに上記ハウジングカバーがカバー表面で、上記カバー表面の面に垂直な、放射状補強リブおよび/または一つ以上の周辺リブを備え、上記ハウジングカバーを上記ハウジングに固定するための少なくとも三つの周辺補強領域、および放射状補強リブを備え、上記閉鎖プラグ用の上記駆動スピンドルを保持するための、上記プラグ空洞の上記軸に沿う中空隆起部を備えるカバー表面を含む成形したプラスチック片から成ることを特徴とするストップコック。
【請求項10】
流体用ストップコックの入口(3)と出口(4)の間の流路を制御するための閉鎖プラグ(1)で、スピンドルナットおよびそれに付着する閉鎖膜(6)を含む閉鎖プラグであって、上記閉鎖膜(6)が熱可塑性エラストマ(TPE)製であることを特徴とする閉鎖プラグ。
【請求項11】
請求項10による閉鎖プラグであって、上記TPEがポリエステル−ポリエーテル型TPEまたはポリエステル−ポリエステル型TPEであることを特徴とする閉鎖プラグ。
【請求項12】
請求項9および請求項10の何れか一つによる閉鎖プラグであって、上記閉鎖プラグの上記スピンドルナットが上記TPE閉鎖膜の上記閉鎖プラグスピンドルナットへの適正な付着/グリップを保証するための手段を含むことを特徴とする閉鎖プラグ。
【請求項13】
請求項12による閉鎖プラグであって、上記スピンドルナットが、中に上記閉鎖膜の上記TPE材料が入り込む孔および/または溝を含むことを特徴とする閉鎖プラグ。
【請求項14】
請求項13による閉鎖プラグであって、上記TPE材料が、上記プラグ膜を成形するための型の中で上記スピンドルナット上に溶融したTPEを射出する結果として上記スピンドルナットの上記孔および/または溝の中に入り込んでいることを特徴とする閉鎖プラグ。
【請求項15】
請求項12による閉鎖プラグであって、上記スピンドルナットが上記閉鎖膜の内部の適合した/対応するリブおよび/または溝と協同する溝および/または隆起部を含んで、上記スピンドルナットの上記閉鎖膜への強制“一方向”挿入/据付けを可能にすることを特徴とする閉鎖プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−527252(P2008−527252A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548776(P2007−548776)
【出願日】平成17年1月3日(2005.1.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/050005
【国際公開番号】WO2006/072468
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507224071)
【Fターム(参考)】