説明

ストレッチフィルム

【課題】透明性と引裂強度に優れるポリエチレン系樹脂からなるストレッチフィルムを提供する。
【解決手段】触媒の存在下、気相重合法により得られる下記要件(A)〜(E)を全て充足するエチレン−α−オレフィン共重合体を、Tダイ押出成形して得られるストレッチフィルム。
(A)メルトフローレート(MFR):2〜5g/10分
(B)メルトフローレート比(MFRR):20〜25
(C)密度(d):0.915〜0.930g/cm3
(D)分子量分布(Mw/Mn):2.5〜4.5
(E)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%):7%以下

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ストレッチフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、青果物や鮮魚、鮮肉、惣菜等の食品を直接に、またはプラスチックトレー等に載せて、これらをフィルムでストレッチ包装するストレッチフィルムは、主に塩化ビニル樹脂製のフィルムが用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭59−71352号公報
【0004】
近年、安全衛生上の問題から従来の塩化ビニル樹脂に代わって低密度ポリエチレンやエチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリエチレン系樹脂によるものの開発が活発に行なわれている。しかしながらポリエチレン系樹脂からなるストレッチフィルムには、透明性と引裂強度において、さらなる改善が求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、透明性と引裂強度に優れるポリエチレン系樹脂からなるストレッチフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、触媒の存在下、気相重合法により得られる下記要件(A)〜(E)を全て充足するエチレン−α−オレフィン共重合体を、Tダイ押出成形して得られるストレッチフィルムである。
(A)メルトフローレート(MFR):2〜5g/10分
(B)メルトフローレート比(MFRR):20〜25
(C)密度(d):0.915〜0.930g/cm3
(D)分子量分布(Mw/Mn):2.5〜4.5
(E)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%):7%以下
【発明の効果】
【0007】
本発明により、透明性かつ引裂強度において優れるポリエチレン系樹脂からなるストレッチフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、触媒の存在下、気相重合法により得られる下記要件(A)〜(E)を全て充足するエチレン−α−オレフィン共重合体を、Tダイ押出成形して得られるストレッチフィルムである。
(A)メルトフローレート(MFR):2〜5g/10分
(B)メルトフローレート比(MFRR):20〜25
(C)密度(d):0.915〜0.930g/cm3
(D)分子量分布(Mw/Mn):2.5〜4.5
(E)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%):7%以下
本発明における触媒の存在下に行う気相重合法とは、実質的に溶媒が存在せず、固相及び気相下において重合が進行して重合体を製造する方法であれば特に何ら制限はない。縦型反応器や横型反応器等の公知の反応器を用いることができ、それらは撹拌機を有していても、有していなくてもよく、またそれらを複数個用いてもよい。そして、その製造方法は連続式でも回分式でもよい。重合圧力は常圧〜40kg/m2、重合温度は55〜95℃の範囲で任意の値を選ぶことができる。
【0009】
本発明で使用される触媒は、エチレンとα−オレフィンを共重合させることができるオレフィン重合用固体触媒である。該触媒としては、例えば、特願平10−59846号公報、特願平10−59848号公報、特願平11−065433号公報等に記載の触媒系が挙げられる。
【0010】
本発明に使用される具体的なオレフィン重合用固体触媒は、マグネシウム、ハロゲン、チタン及び電子供与体を含む固体触媒成分(I)である。
【0011】
固体触媒成分(I)に含まれるマグネシウムとは周期律表第2族元素のマグネシウム原子であり、チタンとは周期律表第4族元素のチタン原子である。
【0012】
固体触媒成分(I)に含まれるハロゲンとは、周期律表第17族元素のハロゲンであり、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等であり、好ましくは塩素原子である。
【0013】
固体触媒成分(I)に含まれる電子供与体とは、酸素原子、イオウ原子、窒素原子及び/又はリン原子の少なくとも1種を含む有機化合物であり、例えば、アミン類、スルホキシド類、エーテル類又はエステル類等が挙げられ、好ましくは、エーテル類またはエステル類である。
【0014】
エーテル類としては、ジアルキルエーテル類が挙げられ、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。好ましくは、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランである。
【0015】
エステル類としては、飽和脂肪族カルボン酸エステル、不飽和脂肪族カルボン酸エステル、脂環式カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等が挙げられる。例えば、酢酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、安息香酸ブチル、コハク酸ジブチル、マロン酸ジブチル、マレイン酸ジブチル、イタコン酸ジブチル、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチル等が挙げられ、好ましくは、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチルである。
【0016】
固体触媒成分(I)として、好ましくは、マグネシウム、チタンおよびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体に、第14族元素のハロゲン化合物と電子供与体とを接触させて接触生成物を得、さらに該接触生成物にTi−ハロゲン結合を有する化合物を接触させて得られるものである。
【0017】
マグネシウム、チタンおよびハイドロカルビルオキシ基を含有する固体触媒成分前駆体として、好ましくは、Si−O結合を有する有機ケイ素化合物の存在下に、一般式Ti(OR1a4-a(式中、R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0<a≦4を満足する数を表す)で表されるチタン化合物を有機マグネシウムで還元して得られる3価のチタン原子を含有する固体生成物である。
【0018】
Si−O結合を有する有機ケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン及びテトラブトキシシラン等が挙げられ、好ましくはテトラブトキシシランである。
【0019】
一般式Ti(OR1a4-a(式中、R1は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を、aは0<a≦4を満足する数を表す)で表されるチタン化合物の炭化水素基(R1)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、好ましくはブチル基である。
【0020】
一般式Ti(OR1a4-aで表されるチタン化合物のハロゲン原子(X)としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは、塩素原子である。また、aとしては、1、2、3または4であり、好ましくは4である。
【0021】
一般式Ti(OR1a4-aで表されるチタン化合物としては、例えば、ブトキシトリクロロチタン、ジブトキシジクロロチタン及びトリブトキシクロロチタン、テトラブトキシチタン等が挙げられ、好ましくはテトラブトキシチタンである。
【0022】
有機マグネシウムとしては、Mg−炭素結合を有するグリニャール化合物等が挙げられる。例えば、メチルクロロマグネシウム、エチルクロロマグネシウム、プロピルクロロマグネシウム、ブチルクロロマグネシウム等が挙げられ、好ましくはブチルクロロマグネシウムである。
【0023】
固体触媒成分前駆体と接触させる第14族元素のハロゲン化合物としては、炭素原子またはケイ素原子のハロゲン化合物が挙げられ、好ましくは一般式SiR24-bb(式中、R2は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表す。bは0<b≦4を満足する数を表す)で表されるケイ素原子のハロゲン化合物である。
【0024】
一般式SiR24-bb(式中、R2は炭素原子数が1〜20の炭化水素基を、Xはハロゲン原子を表す。bは0<b≦4を満足する数を表す)で表されるケイ素化合物の炭化水素基(R2)としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等が挙げられ、好ましくはブチル基である。
【0025】
一般式SiR24-bbで表されるケイ素化合物のハロゲン原子(X)としては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。また、bとしては、1、2、3及び4が挙げられ、好ましくは3または4である。
【0026】
一般式SiR24-bbで表されるケイ素化合物としては、例えば、ブチルトリクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、トリクロロブチルシラン及びテトラクロロシラン等が挙げられ、好ましくはテトラクロロシランである。
【0027】
固体触媒成分前駆体と接触させる電子供与体としては、前述のものが挙げられる。
【0028】
固体触媒成分前駆体に第14族元素のハロゲン化合物と電子供与体とを接触させて得られる接触生成物に、さらに接触させるTi−ハロゲン結合を有する化合物のハロゲンとしては、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは塩素原子である。
【0029】
Ti−ハロゲン結合を有する化合物としては、例えば、テトラクロロチタン、トリクロロブトキシチタン、ジクロロジブトキシチタン及びクロロトリブトキシチタン等が挙げられ、好ましくはテトラクロロチタンである。
【0030】
本発明で使用するエチレン−α−オレフィン共重合体は、固体触媒成分(I)、有機アルミニウムとエチレン及びα−オレフィンを接触させることによって、固体触媒成分(I)上に生成する。
【0031】
実質的に溶媒が存在しない気相重合法においては、溶媒の回収、精製工程が省略でき、得られたエチレン−α−オレフィン共重合体を用いてフィルムを成形加工する時に、発煙、ガス発生の原因となる揮発成分の含有率を低くすることができる。
【0032】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体とは、エチレンと1種類以上の炭素原子数3〜12個のα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンとしては、例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられ、好ましくはプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1であり、さらに好ましくはブテン−1、ヘキセン−1である。
【0033】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体等が挙げられ、好ましくはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体、エチレン−オクテン−1共重合体、さらに好ましくはエチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−ヘキセン−1共重合体である。
【0034】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィン由来の構成単位の含有量は、好ましくは0.5〜30モル%であり、特に好ましくは1.0〜20モル%である。
【0035】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート(MFR)は2〜5g/10分であり、押出し負荷と得られるフィルムの機械的強度のバランスの観点から、好ましくは2.5〜4.5g/10分であり、より好ましくは、さらに好ましくは2.7〜4.3g/10分である。
【0036】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体のメルトフローレート比(MFRR)は20以上25以下であり、押出し負荷と、得られるフィルムの機械的強度や製膜安定性のバランスの観点から、好ましくは21以上24以下である。
【0037】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は0.915〜0.930g/cmであり、得られるフィルムの取り扱いやすさと、光沢性、透明性のバランスとの観点から、好ましくは0.918〜0.930g/cmであり、より好ましくは0.918〜0.927g/cmである。
【0038】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布は、2.5〜4.5であり、好ましくは3〜4である。分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、以下の条件により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定することで求められる。
<測定条件>
装置:Water製Waters150C
分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
測定温度:145℃
キャリア:オルトジクロロベンゼン
流量:1.0mL/分
注入量:500μL
検出器:示差屈折
【0039】
本発明で用いるエチレン−α−オレフィン共重合体の冷キシレン可溶部(CXS)(重量%)は7%以下であり、成形時の発煙性の観点から好ましくは6.5%以下である。
【0040】
本発明では、前記したエチレン−α−オレフィン共重合体とともに、必要に応じて、その他の樹脂や添加剤を使用してもよい。これらのその他の樹脂や添加剤は、少なくとも2種を併用してもよい。
【0041】
添加剤としては、安定剤(酸化防止剤)、滑剤、帯電防止剤、加工性改良剤、抗ブロッキング剤、顔料等が挙げられる。安定剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャリティーケミカルズ、商品名:IRGANOX1010)、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(チバ・スペシャリティーケミカルズ、商品名:IRGANOX1076)等に代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等に代表されるホファイト系安定剤や両者の性能をもつ二官能型安定剤(住友化学株式会社、商品名:スミライザーGP)等が挙げられる。
【0042】
また、滑剤としては、例えば、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステル等が挙げられ、帯電防止剤としては、例えば、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、炭素原子数8〜22の脂肪酸のアルキルジアルカノールアミド、ポリエチレングリコールエステル等が挙げられ、加工性改良剤としては、例えば、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩等が挙げられる。粘着性が不足する場合には、必要に応じて、ポリブテンなどの粘着剤を添加してもよい。
【0043】
上記の必要に応じて添加されるその他の樹脂や添加剤は、あらかじめ溶融混練しておいてもよく、個々にドライブレンドしてもよく、または一種以上のマスターバッチにしてドライブレンドしてもよい。
【0044】
本発明のストレッチフィルムは、単層であっても多層であってもよい。
【0045】
前記したエチレン−α−オレフィン共重合体からなる層を少なくとも1層有する多層フィルムとしては、例えば、前記したエチレン−α−オレフィン共重合体からなる層の片面にLDPEからなる非粘着層を有する多層フィルムが挙げられる。
【0046】
本発明のストレッチフィルムは、前記したようなエチレン−α−オレフィン共重合体を材料として用いるため、厚みを13〜20μmとすることができる。なお、公知のストレッチフィルムの厚みは、通常、30μm程度である。
【0047】
本発明のストレッチフィルムの製造方法として、Tダイによる単層または多層のフィルム押出成形方法が挙げられる。Tダイ押出成形方法における加工樹脂温度は、通常、230℃〜300℃であり、チルロール温度は、通常、20℃〜50℃である。
【0048】
本発明のストレッチフィルムは、家庭用のラップフィルム、食品包装等の収縮フィルム、集積包装用のストレッチフィルム等、幅広い用途で好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。本発明は以下の実施例には限定されない。
実施例および比較例での物性は、次の方法に従って測定した。
【0050】
[重合体の物性]
(1)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS K7210−1995に規定された方法に従い、荷重21.18N、温度190℃の条件で、A法により測定した。
【0051】
(2)メルトフローレート比(MFRR)
JIS K 6760に規定された方法に従った。荷重21.18N、温度190℃で行ったMFR値を、荷重211.82N、温度190℃の条件で行ったMFR値で除した値を求め、メルトフローレート(MFRR)とした。なお測定はA法にて行った。
【0052】
(3)密度(単位:g/cm3
JIS K7112−1980のうち、A法に規定された方法に従って測定した。なお、試料には、JIS K6760−1995に記載のアニーリングを行った。
【0053】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法を用いて、下記の条件により、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
<測定条件>
装置:Water製Waters150C
分離カラム:TOSOH TSKgelGMH−HT
測定温度:145℃
キャリア:オルトジクロロベンゼン
流量:1.0mL/分
注入量:500μL
検出器:示差屈折
【0054】
(5)冷キシレン可溶部(CXS)
米国のCode of federal regulations,Foodand Drugs Administrationの§175.1520に規定された方法に従った。
【0055】
[フィルムの物性]
(6)HAZE(単位:%)
ASTM1003に従って測定した。ヘイズが小さいほど、フィルムの光学特性が優れる。
【0056】
(7)引裂強度(単位:kN/m)
ASTM D1922に規定された方法に従って測定した。測定はフィルムの加工方向(MD)、またはその直角方向(TD)について実施した。引裂強度が大きいほど、ストレッチフィルムの用途として優れる。
【0057】
(8)せん断接着強度(単位:N/cm
以下の手順に従って評価した。せん断接着強度が大きいほど、ストレッチフィルムに必要な接着性に優れる。
1)3cm×15cmの試験片を2枚用意した。これらを以下、試験片A、試験片Bと記載する。
2)試験片Aを、厚さ2mmのステンレス板に両面テープで貼り付けた。貼り付ける際には、試験片Aを得たフィルムの巻きの状態で外側であった面が、ステンレス板と接するようにした。
3)試験片Bを、試験片Bを得たフィルムの巻きの状態で外側であった面が試験片Aに接するように貼合した。貼合は、試験片Aと試験片Bの重なる部分が3cm×5cmとなるようにして、JIS Z0237(2000)の10.2.4に記載の自動式圧着装置で、試験片の上からローラを約5mm/minの速さで一往復させて圧着させた。
4)3)で準備したサンプル(以下、測定用サンプルと略記する)を、温度23℃、相対湿度65%RHの雰囲気下で、30分間放置した。
5)卓上引張試験装置を用いて次の方法で測定した。前記測定用サンプルの試験片A、Bが貼合されていない両端部をそれぞれチャックではさんだ。試験片Aおよびステンレス板をはさんだチャックを固定し、試験片Bをはさんだチャックを速度500mm/minで引張り、せん断接着強度を以下の方法で求めた。
せん断接着強度(N/cm)=(測定値:N)/(貼合面積:3×5=15cm)なお、試験は3組の試験片について行った。以下の手順で得られた値を各回の測定値とし、さらに3回の測定値を平均化したものを、各実施例のせん断接着強度とした。
(1)記録されたチャートに記録開始後15%の部分と85%の部分に垂直に線を引く。
(2)15〜85%の区間をさらに4等分し垂線を引く。
(3)記録線と各垂直線との交点5点の値の平均値を、測定値とする。
【0058】
[実施例1]
(1)固体触媒成分(I)の合成
撹拌機を備えた内容積200LのSUS製の反応槽を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラエトキシシラン20.6kg、テトラブトキシチタン2.2kgを投入し、5℃とした。次にブチルマグネシウムクロリド(ジブチルエーテル溶媒2.1mol/L)50Lを温度を5℃に保ちながら4時間かけて攪拌下で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、更に20℃で1時間撹拌した後、濾過、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した後、トルエン63L、フェニルトリクロロシラン14.4kg、ジイソブチルフタレート9.5kgを加え、105℃にて2時間反応を行った。その後、濾過、トルエン90Lで3回洗浄を行った後、トルエン63Lを加え、70℃に昇温し、TiCl4 13.0kgを投入、105℃で2時間反応を行った。その後、固液分離し、95℃にてトルエン90Lでの洗浄6回、室温にてヘキサン90Lでの洗浄を2回行い、乾燥して粉体性状に優れた固体触媒成分(I)15.2kgを得た。得られた固体生成物は、Ti:1.17wt%を含有していた。
【0059】
(2)固体触媒成分の予備重合
内容積210Lの攪拌付きオートクレーブを窒素で置換した後、上記(1)で得られた固体触媒成分1.515kg、ブタン98.4L、トリエチルアルミニウム3.2337モルを投入した。次に温度を40℃に設定し、水素を全圧が0.928MPaになるまで加え、更にエチレンを固体触媒成分1g当り2.44g/g固体触媒成分・hrの割合で28kg加えた。反応終了後ブタンをフラッシュし、予備重合触媒28.55kgを得た。
【0060】
(3)重合
上記予備重合触媒を用い連続式流動床気相重合設備を使用してエチレンとブテン−1のランダム共重合を実施した。重合槽を86℃に昇温後、予め減圧乾燥したポリエチレンパウダー80kgを分散剤として投入し、次いでエチレン/ブテン−1/水素のモル比が60/23/17となるように調整した混合ガスを2MPaの圧力下、重合槽内で0.34m/秒の流速となるように循環させた。またエチレン/ブテン−1/水素のモル比が設定値からずれた場合は、追添することによりモル比を調整した。次いでトリエチルアルミニウム53ミリモル/hr、上記予備重合触媒0.80g/hrの流量で槽内へ投入し、エチレン/ブテン−1の流動床気相共重合を連続で24時間行った。得られた重合体の粒子性状は良好であり、重合壁への付着はほとんど見られなかった。触媒当たりの重合体の生成量(重合活性)は、26200g重合体/g固体触媒成分であった。得られたエチレン−ブテン−1共重合体の物性を表1に示した。
【0061】
(4)フィルムの加工
前記得られたエチレン−ブテン−1共重合体に、ステアリン酸カルシウム1000ppm、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート1000ppm、テトラキス(2,4ジターシャリーブチルフェニル)4,4’ビフェニレンジフォスフォナイト800ppmを加えたのち、SHIモダンマシナリー(株)社製のTダイフィルム成形機にて製造した。直径50mm、L/Dが32(Lは押出機のシリンダーの長さ、Dは押出機のシリンダーの直径)の押出機のブレーカープレート(φ51mm)に、焼結フィルター(日本精線社製MFF NF06、ろ過径:10μm)を、80メッシュの金網で挟む構成でセットした。280℃にて前記ブレンド物を溶融混練した後、前記焼結フィルターを通して280℃に温調したTダイ(600mm幅)へ供給し、該Tダイから押し出した後、30℃のチルロールで引き取ることによって冷却固化し、20μm厚みのストレッチフィルムを得た。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示した。
【0062】
比較例1
気相重合により得られたエチレン−ブテン−1共重合体(サビック社製318B)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、ストレッチフィルムを得た。得られたフィルムの物性評価結果を表1に示した。
【0063】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒の存在下、気相重合法により得られる下記要件(A)〜(E)を全て充足するエチレン−α−オレフィン共重合体を、Tダイ押出成形して得られるストレッチフィルム。
(A)メルトフローレート(MFR):2〜5g/10分
(B)メルトフローレート比(MFRR):20〜25
(C)密度(d):0.915〜0.930g/cm3
(D)分子量分布(Mw/Mn):2.5〜4.5
(E)冷キシレン可溶部(CXS)(重量%):7%以下

【公開番号】特開2010−215695(P2010−215695A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60938(P2009−60938)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】