説明

ストレージ装置、データ回復方法及び計算機システム

【課題】容易且つ迅速にオリジナルデータを管理する論理ボリュームのデータを回復することのできる技術を提供する。
【解決手段】P−Vol10pのLU#と、S−Vol10sのLU#とを対応付けて記憶するLU管理テーブル61を備え、CPU53が、磁気テープ74へのデータの退避元のS−Vol10sのLU#を特定し、特定したLU#に対応付けられたP−Vol10pのLU#をLU管理テーブル61から取得し、磁気テープドライブ71により、データを格納した磁気テープ74から、退避されたデータを読み出させ、取得したLU#のP−Vol10pに、磁気テープ74から読み出したデータを格納させる。これにより、容易且つ適切にP−Vol10pにデータをリストアすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の記憶装置と、磁気テープへのアクセスが可能な磁気テープドライブとを備えるストレージ装置等に関し、特に、磁気テープに退避されたデータによりデータ回復(リストア)を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ストレージシステムにおいては、データの記憶の信頼性を向上させるために、データを複数の論理ボリュームに多重化(例えば、二重化)させて記憶しておき、いずれかの論理ボリュームに障害等が発生した場合には、他の論理ボリュームのデータを利用してデータ回復が行われている。
【0003】
データの二重化を利用した技術としては、二重化した一方の系に障害が発生した場合に、更新データの履歴に基づいて高速に回復させる技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、データの二重化を行う際に、上位装置における処理負荷を軽減する技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。また、データの二重化を行う際にターゲットとなっていたストレージから、ソースとなっていたストレージに対して高速にリストアする技術も知られている(例えば、特許文献3)。
【0004】
さらに、二重化させたデータを磁気テープに退避させることにより、より確実且つ低コストでデータの記憶の信頼性を向上させるバックアップサーバシステムが知られている。
【0005】
図1は、従来例に係るバックアップサーバシステムを説明する図である。
【0006】
バックアップサーバシステム100では、業務サーバ101が業務で使用するデータをディスクアレイ装置102のP−Vol(Primary Volume)105に格納し、ディスクアレイ装置102では、P−Vol105に書き込まれたデータが、所定のタイミングでS−Vol(Secondary Volume)106に二重化される。その後、バックアップサーバ103がS−Vol106のデータをテープライブラリ装置104のテープ107にバックアップさせる。そして、データ回復を行う際には、バックアップサーバ103がテープライブラリ装置104によりテープ107からデータを読み出させ、当該データをS−Vol106に格納させる。これにより、S−Vol106のデータを回復させることができる。この後、S−Vol106からP−Vol105へのリバースコピーを開始することにより、低負荷業務であれば、業務サーバ101が、P−Vol105を利用した業務を再開できる。一方、高負荷業務の場合には、S−Vol106からP−Vol105へのリバースコピーにより、ホストアクセス性能が低下する為、リバースコピーが完了するまで、業務は再開できない。
【0007】
【特許文献1】特開2007−86972号公報
【特許文献2】特開2005−196490号公報
【特許文献3】特開2005−339554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したバックアップサーバシステムの技術によると、バックアップを取ったS−Vol106を回復させ、その後、P−Vol105へのリバースコピーを開始することにより、業務再開を行うことができる。
【0009】
しかしながら、上記したS−Vol106を回復させた直後の業務再開では、P−Vol105に完全にデータが回復されていないので、P−Vol105の未コピー領域へのリードアクセスがあった場合には、S−Vol106からのコピー後にしかホスト装置に応答することができない。また、P−Vol105へのライトアクセスでも、RAID構成のパリティ生成するために必要なデータをS−Vol106からコピーする必要がある。このため、ホストアクセスの性能が更に低くなってしまう。
【0010】
このようなホストアクセスの性能低下を防止するために、テープから直接P−Vol105へリストアすることが考えられる。
【0011】
この場合には、ユーザが業務サーバ101からP−Vol105をアンマウントし、バックアップサーバ103にP−Vol105をマウントし、ユーザがバックアップサーバ103によりマウントしたP−Vol105に対応するS−Vol106のバックアップデータを格納したテープ107を指定するとともに、リストア先とするP−Volを指示して、P−Vol105へのリストアを実行させる。その後、ユーザがバックアップサーバ103からP−Vol105をアンマウントし、業務サーバ101にP−Vol105をマウントする。これにより、低負荷業務であれば、業務を再開することができる。なお、この場合にあっては、業務サーバ101からのリード及びライトアクセスにおいて、S−Vol106へのリードアクセスを行う必要がないので、S−Vol106へのアクセスによるホストアクセスの性能低下がおこらない。
【0012】
この後、P−Vol105からS−Vol106へのコピーを行うことにより、コピー完了後には、高負荷業務であっても支障なく業務を行うことができるようになる。また、P−Vol105へのリストア完了後、高負荷業務を直ちに再開し、その後、夜間又は休日等の低負荷時間帯にP−Vol105からS−Vol106へのコピーを行う運用も可能である。
【0013】
しかしながら、P−Vol105へのリストアを行う場合には、上述のようにユーザが操作を行わなければならず、手間がかかるという問題がある。また、テープからのデータのリストア先として、データの退避元のS−Vol106ではなく、P−Vol105を指定する必要があり、指定に間違いが発生するおそれがある。しかも、ユーザが通常意識しているのは、OSのファイルシステムによる論理的なボリューム名称であるのに対し、本操作では、ディスクアレイ装置のLUを意識しなければならない。また、ディスクアレイ装置102等についての詳しい知識を持っていないユーザであれば、S−Volに対応するP−Vol105を把握することが困難であるという問題もある。
【0014】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、容易且つ確実にオリジナルデータを管理する論理ボリューム(P−Vol)のデータを回復することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点に従うストレージ装置は、複数の記憶装置と、磁気テープに対してアクセス可能な磁気テープドライブとを備え、複数の記憶装置の少なくとも一部の記憶領域が割り当てられた複数の論理ボリュームを管理し、前記論理ボリュームには、ホスト装置に利用されるオリジナルデータを記憶するための第1の論理ボリュームと、前記第1の論理ボリュームのオリジナルデータの複製のデータを記憶するための第2の論理ボリュームとが含まれ、前記第2の論理ボリュームの前記データを前記磁気テープに退避させ、当該退避させたデータを前記論理ボリュームに回復させるストレージ装置であって、前記第1の論理ボリュームを示す第1識別情報と、前記第2の論理ボリュームを示す第2識別情報とを対応付けて記憶する論理ボリューム管理テーブルと、回復対象のデータを特定するためのデータ特定情報を受け付けるデータ特定情報受付部と、前記データ特定情報により特定されるデータの退避元である前記第2の論理ボリュームの前記第2識別情報を特定する特定部と、特定した前記第2識別情報に対応付けられた前記第1識別情報を前記論理ボリューム管理テーブルから取得する第1識別情報取得部と、前記磁気テープドライブにより、前記回復対象のデータを格納した前記磁気テープから、前記退避されたデータを読み出させる読出制御部と、前記取得した第1識別情報が示す前記第1の論理ボリュームに、前記磁気テープから読み出した前記データを格納させる第1回復制御部とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図2は、本発明の第1実施形態に係る計算機システムの概略構成を示す図である。
【0018】
計算機システム1は、ホスト装置の一例としての業務サーバ2と、ストレージ装置の一例としてのTMS(Tape attached Modular Storage)装置4とを有している。業務サーバ2とTMS装置4とは、データネットワーク3、例えば、SAN(Storage Area Network)を介して接続されている。SANでは、例えば、ファイバチャネル、iSCSIといった通信プロトコルが用いられる。なお、業務サーバ2は、複数台あってもよい。
【0019】
業務サーバ2は、CPU(Central Processing Unit)21(第1プロセッサ)と、メモリ22と、HDD(Hard Disk Drive)24と、FC HBA(Fibre Channel Host Bus Adapter)25(第1インタフェース)とを有している。メモリ22には、TMS装置4のディスクドライブ8に対するデータの書込み要求、及び読出し要求を伴う業務プログラム23aと、TMS装置4による二重化処理、バックアップ処理、リストア処理等を管理するためのTMS管理プログラム23bが格納されている。
【0020】
TMS管理プログラム23bは、CPU21に実行されることにより、業務サーバ2の入力装置(図示せず)を使って利用者から入力されたコマンドや、予め設定されている規則に従って決定されるコマンドをTMS装置4にFC HBA25を介して送信し、当該コマンドによる結果をFC HBA25を介して受信し、表示装置(図示せず)に表示させる。
【0021】
二重化処理に関するコマンドとしては、業務サーバ2がオリジナルデータの格納に利用するためのTMS装置4の論理ボリューム10と、他の論理ボリューム10とをデータが同期しているペア状態(PAIR状態)にさせるためのpaircreateコマンド、ペア状態にある論理ボリュームを一時的にペア状態から分離したサスペンド状態(PSUS状態)にさせるためのpairsplitコマンド、サスペンド状態にある2つの論理ボリューム10を再びペア状態にさせるためのpairresyncコマンド等がある。ここで、業務サーバ2がオリジナルデータの格納に利用するための論理ボリューム10pをP−Vol(正ボリューム:第1の論理ボリューム)といい、P−Volとデータを同期させるための論理ボリューム10sをS−Vol(副ボリューム:第2の論理ボリューム)という。
【0022】
また、バックアップ処理及びリストア処理に関するコマンドとしては、論理ボリューム10のデータを所定の磁気テープ74に退避格納(バックアップ)させるためのVDLbackupコマンド、バックアップやリストアを中断するためのVDLcopycancelコマンド、エラーとなった状態を解除するためのVDLnormalizeコマンド、バックアップした磁気テープ74のグループ(テープグループ(TG):格納単位)を破棄するためのVDLdiscardコマンド、リストアを実施するためのVDLrestoreコマンド、TGの各種状態を検索して表示出力するためのVDLdisplayコマンド、キーワードからTGを検索するためのVDLsearchコマンド等がある。例えば、VDLdisplayコマンドにおいては、利用者が退避元の論理ボリューム10のLU#(第2識別情報)を指定すると、TMS装置4で当該論理ボリュームを退避させたTG#等が検索されて返信され、その結果が図示しない表示装置に表示出力されることとなる。
【0023】
図3は、本発明の一実施形態に係るリストアコマンドを説明する図である。
【0024】
図3Aは、リストアコマンドのスクリプトの構成を示し、図3B〜図3Dは、リストアコマンドのスクリプトの例を示す。
【0025】
リストアコマンドであるVDLrestoreコマンドのスクリプト26は、VDLrestoreコマンドであることを示すコマンド部26aと、コマンドのオプションを指定するオプション部26bと、リストア元TG指定部26cと、リストアセット指定部26dとを有する。なお、オプション部26bと、リストアセット指定部26dとは、省略することができる。
【0026】
オプション部26bにおいては、P−Volを対象としてリストアするか、P−Vol及びS−Volを同時に対象としてリストアするかを指定する。本実施形態では、リストア対象をP−Volにする場合には、”-p”を記述し、リストア対象をP−Vol及びS−Volにする場合には、”-ps”を記述する。なお、オプション部26bを省略すると、リストアの対象はS−Volとなる。
【0027】
リストア元TG指定部26cには、リストアを行うために用いるTGを特定する情報(データ特定情報の一例)、例えば、磁気テープ74に対応づけられているキーワード、磁気テープ74の属するTG#(テープグループ番号:格納単位識別情報)等を指定する。例えば、キーワードを記述する場合には、”-k<XXXXX >”(”XXXXX”は、キーワードを示す)として記述する。また、TG#を記述する場合には、”-tg<XXX>”(”XXX”は、TG#を示す)として記述する。
【0028】
リストアセット指定部26dには、リストア対象のTG内のLU#(論理ユニットナンバー:第2識別情報)を指定し、また、リストア先を変更する場合には、当該リストア先のLU#を指定する。リストア対象のLU#を指定する場合には、”-luA<XXX・・・>”(”XXX”は、LU#)と記述する。LU#は、複数指定することができる。また、リストア先のLI#を指定する場合には、”-luB<XXX・・・>”(”XXX”は、LU#)と記述する。LU#は、複数指定することができる。なお、リストアセット指定部26dを省略する場合には、TG内の全てのLUのデータをリストアすることを意味している。
【0029】
図3Bに示すスクリプトは、TG#が”0”のテープグループに格納されている全てのデータを、P−Vol及びS−Volにリストアすることを意味している。
【0030】
また、図3Cに示すスクリプトは、TG#が”0”のLU#が”2”のデータを、P−Vol及びS−Volにリストアすることを意味している。
【0031】
また、図3Dに示すスクリプトは、キーワードが”DB1_20070720”のテープグループの全てのデータを、P−Volにリストアすることを意味している。
【0032】
本実施形態では、TMS管理プログラム23bは、指定されたコマンドスクリプトをコマンド制御テーブル27のレコード形式に変換し、TMS装置4に送信する。
【0033】
図4は、本発明の一実施形態に係るコマンド制御テーブルの構成を示す図である。
【0034】
リストアコマンド(VDLrestoreコマンド)時のコマンド制御テーブル27は、コマンドコードフィールド27aと、リストア元TG#27bと、リストアオプションフィールド27cと、リストア対象LU数フィールド27dと、リストア元TG内LU#フィールド27eと、リストア先LU#フィールド27fとを含むレコードを格納する。
【0035】
コマンドコードフィールド27aには、コマンド(本例では、リストアコマンド)が格納される。リストア元TG#27bには、リストアに使用するTG#(データ特定情報の一例)が格納される。コマンドスクリプトにTG#が直接指定されていれば、指定されているTG#が格納され、キーワード(データ特定情報の一例)が設定されている場合には、当該キーワードに対応するTG#が検索されて格納される。リストアオプションフィールド27cには、コマンドスクリプトのオプション部26bの指定が格納される。すなわち、リストア先をP−Volにするか、P−Vol及びS−Volにするかの指定が格納される。リストア対象LU数フィールド27dには、リストアの対象とするLUの数が格納される。本実施形態では、リストア対象LU数フィールド27dには、コマンドスクリプトのリストアセット指定部26dに指定されたLUの数が格納される。なお、TGの全てのLUをリストアする場合、すなわち、コマンドスクリプトのリストアセット指定部26dが省略されている場合には、フィールド27d、27e、27fには、何も設定されない。リストア元TG内LU#フィールド27eには、リストア対象のLU#が格納される。リストア先LU#フィールド26fには、リストア先のLU#が格納される。リストア元TG内LU#フィールド27e及びリストア先LU#フィールド26fは、リストア対象LU数分設定される。なお、リストア先のLU#が指定されていない場合には、リストア先LU#フィールド26fには何も設定されない。
【0036】
図2の説明に戻り、TMS装置4は、複数のディスクドライブ8(記憶装置の一例)と、コントローラ部5と、テープライブラリ装置7と、コントローラ部5とテープライブラリ装置7とを通信可能に接続するFC(Fibre Channel)スイッチ6とを有する。
【0037】
テープライブラリ装置7は、複数のテープドライブ71と、搬送機構部72と、テープライブラリ部73とを有する。
【0038】
テープライブラリ部73は、複数の磁気テープ74を内部に収容可能となっている。テープドライブ71は、磁気テープ74に対するデータ読出し及びデータ書込みが実行できるようになっている。本実施形態では、テープドライブ71は、SCSIコマンドによって制御可能となっている。搬送機構部72は、テープライブラリ部73から磁気テープ74を取り出して、テープドライブ71に搬送する。本実施形態では、搬送機構部72は、SCSIコマンドによって制御可能となっている。
【0039】
TMS装置4においては、複数のディスクドライブ8によりRAID(Redundant
Arrays of Inexpensive Disks)構成を組むことができるようになっている。本実施形態では、複数のディスクドライブ8によって、1又は複数の記憶領域、すなわち論理ボリューム(論理ユニット:LU)10を提供し、或いは、1つのディスクドライブ8によって、1又は複数の論理ボリューム10を提供することができる。なお、各論理ボリューム10は、設定に応じてP−Vol10pとすることも、S−Vol10sとすることもできる。
【0040】
コントローラ部5は、複数のディスクドライブ8及びテープライブラリ装置7を制御する制御モジュールであり、複数のホストI/F(第2インタフェース)51、複数のライブラリI/F52、CPU(第2プロセッサ)53、データ転送コントローラ54、キャッシュメモリ55、メモリ56、及び複数のディスクI/F59を備えている。
【0041】
ホストI/F51は、コントローラ部5と業務サーバ2との間のデータのやりとりを仲介する。ライブラリI/F52は、コントローラ部5とテープライブラリ装置7との間のデータのやりとりを仲介する。CPU53は、メモリ56に格納されたプログラム等に従って処理を実行する。具体的な処理については、プログラムの説明において後述する。データ転送コントローラ54は、業務サーバ2、ディスクドライブ8、テープライブラリ装置7、キャッシュメモリ55、及びCPU53の間のデータの転送を制御する。キャッシュメモリ55は、業務サーバ2と、ディスクドライブ8との間でやりとりするデータや、テープライブラリ装置7とディスクドライブ8との間でやりとりするデータ等を一時的に記憶する。ディスクI/F59は、コントローラ部5とディスクドライブ8との間のデータのやりとりを仲介する。
【0042】
メモリ56には、制御プログラム57と、各種テーブル58とが格納される。
【0043】
図5は、本発明の一実施形態に係るメモリ内のプログラム及びテーブル構成の一例を示す図である。
【0044】
制御プログラム57は、コマンド処理プログラム57aと、データ転送処理プログラム57bと、キャッシュ制御プログラム57cと、ディスク制御プログラム57dと、ライブラリ制御プログラム57eと、テープドライブ制御プログラム57fとを有する。
【0045】
コマンド処理プログラム57aは、業務サーバ2から受け取ったコマンドを解釈して、対応する処理の制御をCPU53に実行させるためのプログラムである。
【0046】
データ転送処理プログラム57bは、データの転送の制御をCPU53に実行させるためのプログラムである。本実施形態では、データ転送処理プログラム57bを実行するCPU53は、状況に応じて、キャッシュ制御プログラム57c、ディスク制御プログラム57d、ライブラリ制御プログラム57e、又はテープドライブ制御プログラム57fを呼び出して実行する。
【0047】
キャッシュ制御プログラム57cは、読出し、書込み対象のデータをキャッシュメモリ55に一時的にキャッシュさせ、当該データを読出し、書込みに利用させる制御をCPU53に実行させるためのプログラムである。
【0048】
ディスク制御プログラム57dは、ディスクドライブ8へのデータの書込み及びディスクドライブ8からのデータの読出しの制御をCPU53に実行させるためのプログラムである。
【0049】
ライブラリ制御プログラム57eは、搬送機構部72を制御して、テープライブラリ部73内の磁気テープ74をテープドライブ71に搬送し、また、テープドライブ71から磁気テープ74を取り出してテープライブラリ部73内に格納する制御をCPU53に実行させるためのプログラムである。
【0050】
テープドライブ制御プログラム57fは、テープドライブ71を制御して、磁気テープ74へのデータの書き込み、及び磁気テープ74からのデータの読み込みの制御をCPU53に実行させるためのプログラムである。
【0051】
ここで、データ特定情報受付部、特定部、第1識別情報取得部、読出制御部、第1回復制御部、第2回復制御部、種類指定受付部、検索条件受付部、検索部、及び検索結果送信部は、CPU53により制御プログラム57が実行されることにより構成される。
【0052】
図6は、本発明の一実施形態に係る二重化処理のコマンドに応じた状態遷移を示す図である。
【0053】
TMS装置4において、複数の論理ボリューム10がSPML(Simplex:単一)状態80である場合において、これら論理ボリューム10の一つの論理ボリュームをP−Vol(第1の論理ボリューム)とし、別の1つの論理ボリュームをS−Vol(第2の論理ボリューム)とする指定を含むpaircreateコマンドが業務サーバ2から送信されると、制御プログラム57を実行するCPU53が、paircreateコマンドで指定されたP−Vol10pからS−Vol10sに対して、初期コピーの実行を開始する。これにより、これら論理ボリュームはCOPY(PD)状態81となる。初期コピーが完了した場合には、指定された2つの論理ボリューム10p、10sがPAIR状態82となる。業務を行う前において、業務サーバ2からpairsplitコマンドが送信される。制御プログラム57を実行するCPU53は、pairsplitコマンドを受信すると、P−Vol10pと、S−Vol10sとを分割する。これにより、P−Vol10pとS−Vol10sとがPSUS状態83となる。この状態83において、業務サーバ2が通常業務を行うこととなる。これにより、通常業務のアクセス性能を高くすることができる。この状態83においては、業務サーバ2によってP−Vol10pに対して更新が発生した場合には、CPU53は、P−Vol10pを更新するとともに、P−Vol10pの更新箇所を示す情報を管理する。
【0054】
2つの論理ボリューム10p、10sがPSUS状態83である場合において、磁気テープ74に対してバックアップを開始する際には、業務サーバ2からpairresyncコマンドが送信され、制御プログラム57を実行するCPU53は、PSUS状態83時におけるP−Volへの更新をS−Vol10sに反映させる処理を開始する。これによって、P−Vol10p及びS−Vol10sは、COPY(RS)状態84となる。そして、P−Vol10pへの更新がS−Vol10sへ完全に反映されると、P−Vol10p及びS−Vol10sは、PAIR状態82となる。
【0055】
次いで、業務サーバ2からpairsplitコマンドが送信される。制御プログラム57を実行するCPU53は、pairsplitコマンドを受信すると、P−Vol10pと、S−Vol10sとを分割する。これにより、P−Vol10pとS−Vol10sとがPSUS状態83となる。このPSUS状態83において、S−Vol10sから磁気テープ74へのバックアップが行われることとなる。S−Vol10sから磁気テープ74へのバックアップについては、後述する。
【0056】
図7は、本発明の一実施形態に係るバックアップ及びリストア処理のコマンドに応じた状態遷移を示す図である。
【0057】
利用者による図示しない管理端末によって、1以上の磁気テープ74からなるグループ(TG:格納単位)の設定が行われると、当該TGは、NORMAL状態90となる。
【0058】
この状態において、業務サーバ2によりVDLbackupコマンドが送信されると、制御プログラム57を実行するCPU53が、VDLbackupコマンドに指定されたTGの状態をCOPY_WAIT状態91とし、準備が整った後に、VDLbackupコマンドにおいて退避元として指定された論理ボリューム10のデータを、退避先と指定されたTGの磁気テープ74にバックアップを開始する。本実施形態においては、PSUS状態83のS−Vol10sが退避元の論理ボリュームとして指定されることとなる。これによって、退避先のTGは、COPY状態92となる。
【0059】
制御プログラム57を実行するCPU53により、退避元として指定された論理ボリューム10のデータを、退避先と指定されたTGの磁気テープ74に完全にバックアップできた場合には、TGの状態がCOPY_END状態93となる。なお、COPY状態92において、バックアップに失敗した場合、或いは、業務サーバ2からVDLcopycancelコマンドを受信した場合には、CPU53は、TGの状態をCOPY_FAIL状態94とし、その後、業務サーバ2からVDLnormalize又はVDLdiscardコマンドを受信した場合には、TGの状態をNORMAL状態90とする。
【0060】
TGの状態がCOPY_END状態の場合において、業務サーバ2からVDLrestoreコマンドを受信した場合には、CPU53は、TGの状態をRCPY_WAIT状態とし、その後、VDLrestoreコマンドの指定に従って、TGの磁気テープ74から指定された論理ボリューム10へのデータのリストアを開始し、TGの状態をRCPY状態96とする。
【0061】
制御プログラム57を実行するCPU53により、論理ボリューム10へのデータのリストアが成功した場合には、TGの状態をCOPY_END状態93とする。なお、RCPY状態96において、リストアに失敗した場合、或いは、業務サーバ2からVDLcopycancelコマンドを受信した場合には、CPU53は、TGの状態をRCPY_FAIL状態97とする。その後、業務サーバ2からVDLnormalizeコマンドを受信した場合には、TGの状態をCOPY_END状態93とする一方、業務サーバ2からVDLdiscardコマンドを受信した場合には、TGは、NORMAL状態90とされる。なお、業務サーバ2からVDLdisplayコマンドを受信した場合には、CPU53は、当該コマンドにおいて指定されたLU#のデータが退避された全てのTGのTG#をTG管理テーブル63(図5、図10参照)から検索し、検索した結果を業務サーバ2へ送信する。
【0062】
図5の説明に戻り、各種テーブル58には、論理ボリューム管理テーブルの一例としてのLU管理テーブル61、テープ管理テーブル62、格納単位管理テーブルの一例としてのTG管理テーブル63、コマンド制御テーブル27、及びデータ転送制御テーブル65がある。
【0063】
図8は、本発明の一実施形態に係るLU管理テーブルの一例を示す図である。
【0064】
LU管理テーブル61は、LU番号フィールド61aと、LU閉塞状態フィールド61bと、二重化状態フィールド61cと、P/S状態フィールド61dと、対応LU#(番号)フィールド61eとを有するレコードを格納する。
【0065】
LU番号フィールド61aには、論理ボリューム10を一意に表すLU番号(LU#)が格納される。LU閉塞状態フィールド61bには、対応する論理ボリューム10が閉塞しているか、正常か、又は未定義かを示す情報が格納される。二重化状態フィールド61cには、二重化の状態を示す情報が格納される。本実施形態では、二重化の状態としては、未定義、ペア(PAIR)、コピー中(P→S)、サスペンド(PSUS)等がある。P/S状態フィールド61dには、当該レコードに対応する論理ボリューム10が他の論理ボリューム10とペアが組まれている場合に、当該レコードに対応する論理ボリューム10がP−Volであるのか、S−Volであるのかを示す情報が格納される。対応する論理ボリューム10がP−Volである場合には、”P”が格納され、S−Volである場合には、”S”が格納される。
【0066】
対応LU#フィールド61eには、対応する、すなわちペアが組まれている他方の論理ボリューム10のLU#が格納される。すなわち、当該レコードの論理ボリューム10がP−Volである場合には、S−VolのLU#(第2識別情報)が格納され、当該レコードの論理ボリューム10がS−Volである場合には、P−VolのLU#(第1識別情報)が格納される。
【0067】
例えば、2番目のレコードによると、LU#が”1”であり、正常であり、ペア状態となっており、P−Volであり、LU#が”2”の論理ボリューム10とペアが組まれていることがわかる。
【0068】
図9は、本発明の一実施形態に係るテープ管理テーブルの一例を示す図である。
【0069】
テープ管理テーブル62は、テープ番号フィールド62aと、テープ閉塞状態フィールド62bと、ライブラリ番号フィールド62cと、スロット位置フィールド62dと、バーコードフィールド62eとを有するレコードを格納する。
【0070】
テープ番号フィールド62aには、磁気テープ74をTMS装置2内で一意に表すテープ番号(テープ#)が格納される。テープ閉塞状態フィールド62bには、対応する磁気テープ74が閉塞しているか、正常か、又は未定義かを示す情報が格納される。ライブラリ番号フィールド62cには、対応する磁気テープ74が格納されているテープライブラリ部73におけるライブラリの番号が格納される。スロット位置フィールド62dには、テープライブラリ部73のライブラリにおけるスロットの位置を示す番号が格納される。バーコードフィールド62eには、対応する磁気テープ74のバーコードの情報を格納する。本実施形態では、磁気テープ74のバーコードには、磁気テープ74を固有に識別可能な情報が含まれている。
【0071】
例えば、1番目のレコードによると、テープ番号が”0”であり、正常であり、ライブラリ番号が”0”のスロット位置が”0”に磁気テープ74が格納されており、バーコードには、”000000L3”の情報が含まれていることがわかる。
【0072】
図10は、本発明の一実施形態に係るテープグループ管理テーブルの一例を示す図である。
【0073】
テープグループ管理テーブル63は、TG(テープグループ)番号フィールド63aと、TG閉塞状態フィールド63bと、TGコピー状態フィールド63cと、ミラー状態フィールド63dと、使用テープ番号(正)フィールド63eと、使用テープ番号(副)フィールド63fと、格納LUリストフィールド63gと、書き込み日時フィールド63hと、キーワードフィールド63iとを有するレコードを格納する。
【0074】
TG番号フィールド63aには、データを格納する格納単位となる少なくとも1以上の磁気テープを含むテープグループを一意に表すTG番号(TG#:格納単位識別情報)が格納される。TG閉塞状態フィールド63bには、対応するTGが閉塞しているか、正常か、又は未定義かを示す情報が格納される。TGコピー状態フィールド63cには、TGのコピーに関する状態の情報が格納される。コピーに関する状態情報としては、図7に示す状態、すなわち、NORMAL状態90、COPY_WAIT状態91、COPY状態92、COPY_END状態93、COPY_FAIL状態94、RCPY_WAIT状態95、RCPY状態96、RCPY_FAIL状態97等がある。ミラー状態フィールド63dには、対応するTGがミラー状態、すなわち、データを二重化して記憶しているか否かを示す情報が格納される。使用テープ番号(正)フィールド63eには、TGに属する磁気テープ74のテープ番号が格納される。なお、対応するTGがミラー状態である場合には、正側の磁気テープ74のテープ番号が格納される。使用テープ番号(副)フィールド63fには、TGがミラー状態である場合に、副側の磁気テープ74のテープ番号が格納される。格納LUリストフィールド63gには、対応するTGにバックアップされている論理ボリューム10のLU#のリストが格納される。書き込み日時フィールド63hには、TGにデータを書き込んだ日時が格納される。キーワードフィールド63iには、対応するTGに対応付けておくキーワードが格納される。キーワードは、利用者が任意に設定することができ、例えば、データベースの種類及び書込み日とを組み合わせたものであってもよい。また、キーワードは、TG毎に異ならせるようにしてもよく、また、同一の業務に利用するTGで共通としてもよい。
【0075】
例えば、1番目のレコードによると、TG番号が”0”であり、TGは、正常であり、コピー状態は、”COPY_END”状態であり、ミラー状態が”ON”であり、正側の使用テープ番号が”0,1”であり、副側の使用テープ番号が”2,3”であり、格納されているデータのLU#が”2,4”であり、書き込み日時が”2007/07/20 01:23:45”であり、キーワードが”DB1_20070720”であることがわかる。
【0076】
図11は、本発明の一実施形態に係るデータ転送制御テーブルの一例を示す図である。
【0077】
データ転送制御テーブル65は、データ転送方向フィールド65aと、TG#フィールド65bと、正ライブラリ#フィールド65cと、正テープドライブ#フィールド65dと、正テープ#フィールド65eと、副ライブラリ#フィールド65fと、副テープドライブ#フィールド65gと、副テープ#フィールド65hと、転送LUリストフィールド65iと、転送中LUカウンタフィールド65jと、正転送先LUリストフィールド65kと、副転送先LUリストフィールド65lとを有するレコードを格納する。
【0078】
データ転送方向フィールド65aには、データを転送する方向を示す情報が格納される。例えば、ディスクドライブ8から磁気テープ74に転送する場合には、”D2T”が格納され、磁気テープ74からディスクドライブ8に転送する場合には、”T2D”が格納される。TG#フィールド65bには、データ転送元又はデータ転送先とTG番号が格納される。正ライブラリ#フィールド65cには、データ転送元となる磁気テープ74が格納されているライブラリの番号又はデータ転送先の正側となる磁気テープ74が格納されているライブラリの番号が格納される。正テープドライブ#フィールド65dには、データ転送元となる磁気テープ74が格納されているテープドライブの番号又はデータ転送先の正側となる磁気テープ74が格納されているテープドライブの番号が格納される。正テープ#フィールド65eには、データ転送元の磁気テープ74のテープ番号又はデータ転送先の正側となる磁気テープ74のテープ番号が格納される。
【0079】
副ライブラリ#フィールド65fには、データ転送先の副側となる磁気テープ74が格納されているライブラリの番号が格納される。副テープドライブ#フィールド65gには、データ転送先となる副側の磁気テープ74が格納されているテープドライブの番号が格納される。副テープ#フィールド65hには、データ転送先となる副側の磁気テープ74のテープ番号が格納される。フィールド65f、65g、65hは、磁気テープ74へのミラーバックアップの際に利用される。
【0080】
転送LUリストフィールド65iには、TG内の転送元となるLU#のリストが格納される。転送中LUカウンタフィールド65jには、転送中のLUを示すカウンタが格納される。正転送先LUリストフィールド65kには、実際に書込みを行う論理ボリューム10のLU#のリストが格納される。副転送先LUリストフィールド65lには、同時に書込みを行う諭路ボリューム10のLU#のリストが格納される。
【0081】
次に、本発明の一実施形態に係る計算機システム1による処理動作を説明する。
【0082】
図12は、本発明の一実施形態に係るTMS装置4によるコマンド処理のフローチャートである。コマンド処理は、CPU53がコマンド処理プログラム57aを実行することにより実現される。なお、本処理が実行される前には、TMS装置4において、S−Vol10sから利用者の設定に従った特定のTGの磁気テープ74へデータが退避格納されている。また、業務サーバ2において、当該TGの磁気テープ74のデータを用いてデータの回復(リストア)を行うためのリストアコマンドが利用者により指定され、業務サーバ2から当該リストアコマンドに対応するコマンド制御テーブル27のレコードが送信され、当該レコードがTMS装置4のメモリ56のコマンド制御テーブル27に格納されているものとする。
【0083】
CPU53は、メモリ56のコマンド制御テーブル27のリストア元TG#フィールド26bのTG#を、データ転送制御テーブル65の新たなレコードのTG#フィールド65bに設定する(ステップS1)。この際、CPU53は、データ転送方向フィールド65aには、磁気テープ74からディスクドライブ8へのデータ転送を示す”T2D”を格納する。次いで、CPU53は、コマンド制御テーブル27のリストア対象LU数フィールド27dに数が設定されているか否かによって、TG内の全LUのデータをリストアする指示か否かを判定し(ステップS2)、数が設定されていない場合には、全LUのデータをリストアする指示であることを意味しているので(ステップS2:Yes)、TG管理テーブル63の当該TG#に対応するレコードの格納LUリストフィールド63gのLUリストを、データ転送テーブル65の転送LUリストフィールド65iに設定する(ステップS3)。これにより、TGに格納されている全てのLUのリストが設定される。
【0084】
一方、コマンド制御テーブル27のリストア対象LU数フィールド27dに数が設定されている場合には、TG内の所定のLUのデータをリストアする指示であることを意味しているので(ステップS2:No)、コマンド制御テーブル27のリストア元TG内LU#フィールド27eからLU#を取得し、当該LU#をデータ転送制御テーブル65の転送LUリスト65iに設定する(ステップS4)。この際、リストア対象LU数フィールド27dに2以上の数が設定されている場合には、当該数分のリストア元TG内LU#フィールド27eにLU#が設定されているので、これらLU#を繋げたリストとしてデータ転送制御テーブル65の転送LUリスト65iに設定する。
【0085】
ステップS3又はステップS4の後に、CPU53は、コマンド制御テーブル27のリストアオプション26cにP−Vol及びS−Volの同時リストアの指示が含まれているか否かを判定し(ステップS5)、P−Vol及びS−Volの同時リストアの指示が含まれている場合(ステップS5:Yes)には、データ転送制御テーブル65の転送LUリストフィールド65iに格納されたLUリストのそれぞれのLU#を、LU管理テーブル61の対応LU#フィールド61eを参照して、対応するP−VolのLU#に変換し、当該P−VolのLU#のリストをデータ転送制御テーブル65の正転送先LUリストフィールド65kに設定する(ステップS6)。これによって、利用者がTGにバックアップしたLU(すなわち、S−Vol)に対応するP−VolのLU#を直接指定しなくとも適切に転送先としてP−Volを設定することができる。ステップS6の後に、CPU53は、データ転送制御テーブル65の転送LUリストフィールド65iに格納されたLUリストを、データ転送制御テーブル65の副転送先LUリストフィールド65lに設定する(ステップS7)。
【0086】
一方、コマンド制御テーブル27のリストアオプション26cにP−Vol及びS−Volの同時リストアの指示が含まれていないと判定した場合(ステップS5:No)には、CPU53は、コマンド制御テーブル27のリストアオプション26cにP−Volのリストアの指示が含まれているか否かを判定する(ステップS8)。
【0087】
この結果、P−Volのリストアの指示が含まれている場合(ステップS8:Yes)には、CPU53がデータ転送制御テーブル65の転送LUリストフィールド65iに格納されたLUリストのそれぞれのLU#を、LU管理テーブル61の対応LU#フィールド61eを参照して、対応するP−VolのLU#に変換し、当該P−VolのLU#のリストをデータ転送制御テーブル65の正転送先LUリストフィールド65kに設定する(ステップS9)。これによって、利用者がTGにバックアップしたLU(すなわち、S−Vol)に対応するP−VolのLU#を直接指定しなくとも適切に転送先としてP−Volを設定することができる。
【0088】
一方、コマンド制御テーブル27のリストアオプション26cにP−Volのリストアの指示が含まれていないと判定した場合(ステップS8:No)には、CPU53は、リストア先を変更する指示が含まれているか否か、すなわち、コマンド制御テーブル27のリストア先LU#フィールド27fにLU#が設定されているか否かを判定する(ステップS10)。
【0089】
この結果、リストア先を変更する指示が含まれている場合(ステップS10:Yes)には、CPU53は、コマンド制御テーブル27のリストア先LU#フィールド27fからLU#を取得し、当該LU#をデータ転送制御テーブル65の正転送先LUリスト65kに設定する(ステップS11)。この際、リストア対象LU数フィールド27dに2以上の数が設定されている場合には、当該数分のリストア先LU#フィールド27fにLU#が設定されているので、これらLU#を繋げたリストをデータ転送制御テーブル65の正転送先LUリスト65kに設定する。
【0090】
一方、リストア先を変更する指示が含まれていない場合(ステップS10:No)には、CPU53は、データ転送制御テーブル65の転送LUリストフィールド65iに格納されたLUリストを、データ転送制御テーブル65の正転送先LUリストフィールド65kに設定する(ステップS12)。
【0091】
ステップS7、S9、S11、S12の終了後に、CPU53は、データ転送処理(ステップS13)を実行する。
【0092】
図13は、本発明の一実施形態に係るデータ転送処理のフローチャートである。
【0093】
データ転送処理(ステップS13)は、CPU53がデータ転送処理プログラム57b、キャッシュ制御プログラム57c、ディスク制御プログラム57d、ライブラリ制御プログラム57e、及びテープドライブ制御プログラム57fを実行することによって実現される。
【0094】
まず、CPU53が、データ転送制御テーブル65のTG#フィールド65bに格納されているTG#に対応する磁気テープ番号をTG管理テーブル63により特定し、当該磁気テープ番号に対応する磁気テープ74を搬送機後部72によりテープライブラリ部73からテープドライブ71に搬送する(ステップS21)。
【0095】
次いで、CPU53は、テープドライブ71により磁気テープ74からリストア対象のLUのデータを1ブロック分リードし、キャッシュメモリ55に格納させ(ステップS22)、キャッシュメモリ55に格納させた1ブロック分のデータを、データ転送制御テーブル65の正転送先LUリストフィールド65kのLU#に対応するLUにライトする(ステップS23)。
【0096】
次いで、CPU53は、データ転送制御テーブル65の副転送先LUリストフィールド65lにLU#が設定されているか否かを判定し(ステップS24)、設定されている場合(ステップS24:Yes)には、設定されているLU#に対応するLUに、キャッシュメモリ55に格納させた1ブロック分のデータをライトする(ステップS25)。したがって、副転送先LUリストフィールド651に設定されているLUに対しても同一のデータを迅速にライトすることができる。これによって、P−Vol及びS−Volの両方にデータをライトすることができる。一方、データ転送制御テーブル65の副転送先LUリストフィールド65lにLU#が設定されていない場合(ステップS24:No)には、次のステップにすすむ。
【0097】
次いで、CPU53は、リストア対象の当該LUのコピーが完了したか否かを判定し(ステップS26)、コピーが完了した場合には、データ転送制御テーブル65の転送中LUカウンタフィールド65jの設定を次に転送すべきLU#に更新する。なお、全て終了している場合(ステップS26:Yes)には、終了したことを示す情報に更新する(ステップS27)。一方、当該LUのコピーが完了していない場合(ステップS26:No)には、次のステップにすすむ。
【0098】
次いで、CPU53は、磁気テープ74の終端となったか否かを判定し(ステップS28)、磁気テープ74の終端になっている場合(ステップS28:Yes)には、磁気テープ74を同一TGの次の順番の磁気テープ74に交換させる(ステップS29)一方、終端でない場合(ステップS28:No)には、次のステップにすすむ。
【0099】
次いで、CPU53は、リストア対象の全てのLUのコピーが完了したか否かを判定し(ステップS29)、完了していない場合(ステップS29:No)には、ステップS22からの処理を引き続き行う一方、全てのLUのコピーが完了した場合(ステップS29:Yes)には、処理を終了する。
【0100】
上記した実施形態によると、P−Volへのリストア、P−Vol及びS−Volの同時リストアをリストアコマンドにおいて指定するだけで、利用者がP−VolのLU#を直接指定等することなく、容易且つ適切にP−Volへのデータのリストアを行うことができる。
【0101】
このため、利用者によるP−VolのLU#の誤指定による悪影響を適切に防止することができる。また、利用者がP−VolとS−Volとの対応関係について把握していない場合や、把握できない場合であっても支障なくP−Volへのリストアを行うことができる。更に、バックアップ取得時に指定したキーワードを利用することで、バックアップデータを記録してあるTG#を直接指定等することなく、容易且つ適切にバックアップデータの指定を行うことができる。
【0102】
また、上記実施形態では、磁気テープ74から読出したデータをキャッシュメモリ55に格納しておき、P−Vol及びS−Volへリストアするようにしているので、迅速にP−Vol及びS−Volのリストアを行うことができる。このため、例えば、P−Vol又はS−Volの一方の論理ボリューム10にリストアした後に、リストアをした当該論理ボリューム10のデータを用いて他方の論理ボリューム10にコピーする場合に比して、二重化が完了するまでの時間を、例えば、3/4の時間に短縮することができる。
【0103】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限られず、他の様々な態様に適用可能である。
【0104】
例えば、上記実施形態では、コマンドにP−Volを含む論理ボリュームへのリストアを行う指定を行った場合に、P−Volへのリストアを行うようにしていたが、例えば、コマンドにおいて指定を行わない場合に、P−Volへのリストアを行うようにしてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、格納単位として、1以上の磁気テープとしていたが、本発明はこれに限られず、例えば、格納単位を1つの磁気テープとしてもよく、この場合には、格納単位識別情報として、磁気テープ識別情報(磁気テープ番号)を用いるようにしてもよい。
【0106】
なお、上記実施形態では、データ特定情報の一例として、TG#又はキーワードを例に示していたが、本発明はこれに限られず、例えば、LU#に基づいてリストア対象のデータの格納先の磁気テープが特定できる場合には、当該LU#をデータ特定情報としてもよく、また、LU#に対応するデータを格納するTGが複数存在する場合であっても、その中のいずれかの特定のTG、(例えば、最新のデータを格納したTG)を復元対象とするように設定しておくようにして、LU#をデータ特定情報として用いるようにしてもよい。また、上記実施形態では、コマンド入力によりリストアを実施する例を示したが、GUIを用いたアプリケーションプログラムで、リストア対象テープの指定をしてもよい。その場合に、S−Volリストア、P−Volリストア、及びP−Vol及びS−Volの同時リストアの指定を、ラジオボタンやドロップダウンリストや起動ボタン等により選択させるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】従来例に係るバックアップサーバシステムを説明する図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る計算機システムの概略構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るリストアコマンドのスクリプトを説明する図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るコマンド制御テーブルの一例を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るメモリ内のプログラム及びテーブル構成の一例を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るTGコピー状態の遷移を説明する図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る二重化状態の遷移を説明する図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るLU管理テーブルの一例を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態に係るテープ管理テーブルの一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態に係るテープグループ管理テーブルの一例を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態に係るデータ転送制御テーブルの一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るコマンド処理のフローチャートである。
【図13】本発明の一実施形態に係るデータ転送処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0108】
1 計算機システム、2 業務サーバ、3 データネットワーク、4 TMS装置、5 コントローラ部、6 FCスイッチ、7 テープライブラリ装置、8 ディスクドライブ、10 論理ボリューム、10p P−Vol、10s S−Vol、21 CPU、22 メモリ、24 HDD、25 FC HBA、51 ホストI/F、52 ライブラリI/F、53 CPU、54 データ転送コントローラ、55 キャッシュメモリ、56 メモリ、59 ディスクI/F、71 テープドライブ、72 搬送機構部、73 テープライブラリ部、74 磁気テープ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記憶装置と、磁気テープに対してアクセス可能な磁気テープドライブとを備え、複数の記憶装置の少なくとも一部の記憶領域が割り当てられた複数の論理ボリュームを管理し、前記論理ボリュームには、ホスト装置に利用されるオリジナルデータを記憶するための第1の論理ボリュームと、前記第1の論理ボリュームのオリジナルデータの複製のデータを記憶するための第2の論理ボリュームとが含まれ、前記第2の論理ボリュームの前記データを前記磁気テープに退避させ、当該退避させたデータを前記論理ボリュームに回復させるストレージ装置であって、
前記第1の論理ボリュームを示す第1識別情報と、前記第2の論理ボリュームを示す第2識別情報とを対応付けて記憶する論理ボリューム管理テーブルと、
回復対象のデータを特定するためのデータ特定情報を受け付けるデータ特定情報受付部と、
前記データ特定情報により特定されるデータの退避元である前記第2の論理ボリュームの前記第2識別情報を特定する特定部と、
特定した前記第2識別情報に対応付けられた前記第1識別情報を前記論理ボリューム管理テーブルから取得する第1識別情報取得部と、
前記磁気テープドライブにより、前記回復対象のデータを格納した前記磁気テープから、前記退避されたデータを読み出させる読出制御部と、
前記取得した第1識別情報が示す前記第1の論理ボリュームに、前記磁気テープから読み出した前記データを格納させる第1回復制御部と
を備えるストレージ装置。
【請求項2】
前記磁気テープから読み出したデータを、前記第2識別情報の前記第2の論理ボリュームにも格納させる第2回復制御部を更に備える
請求項1に記載のストレージ装置。
【請求項3】
前記磁気テープから読み出したデータを一時的に記憶するキャッシュメモリを更に備え、
前記第1回復制御部及び前記第2回復制御部は、前記キャッシュメモリからデータを読み出して、前記第1の論理ボリューム及び前記第2の論理ボリュームに格納させる
請求項2に記載のストレージ装置。
【請求項4】
前記データの回復対象とする論理ボリュームの種類の指定を受け付ける種類指定受付部を更に備え、
前記第1回復制御部は、前記種類指定受付部が、回復対象を前記第1の論理ボリュームのみとする指定、又は、前記第1の論理ボリューム及び前記第2の論理ボリュームとする指定を受け付けた場合に、前記第1の論理ボリュームへ前記データを格納させる
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のストレージ装置。
【請求項5】
前記データ特定情報受付部は、前記データ特定情報として、前記データを格納する少なくとも1以上の前記磁気テープから成る格納単位を示す格納単位識別情報を受け付け、
複数の磁気テープを識別可能に格納する磁気テープライブラリ部と、
前記格納単位識別情報に対応する磁気テープを前記磁気テープライブラリ部から取り出して前記磁気テープドライブに搬送する搬送機構部とを更に備え、
前記読出制御部は、前記磁気テープドライブに搬送された前記磁気テープからデータを読み出す
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のストレージ装置。
【請求項6】
1以上の磁気テープから成るデータの格納単位を示す格納単位識別情報と、前記格納単位の前記磁気テープに格納されているデータの退避元の第2の論理ボリュームの第2識別情報とを対応付けて格納する格納単位管理テーブルを更に備え、
前記特定部は、前記格納単位管理テーブルから前記格納単位識別情報に対応する前記第2識別情報を取得することにより第2識別情報を特定する
請求項5に記載のストレージ装置。
【請求項7】
1以上の磁気テープから成るデータの格納単位を示す格納単位識別情報と、前記格納単位の磁気テープに格納されているデータの退避元の第2の論理ボリュームの第2識別情報とを対応付けて格納する格納単位管理テーブルを更に備え、
格納単位識別情報を検索する条件として、データの退避元の第2の論理ボリュームの第2識別情報の指定を受け付ける検索条件受付部と、
前記格納単位管理テーブルから前記検索条件受付部により受け付けられた前記第2識別情報に対応付けられている前記格納単位識別情報を検索する検索部と、
検索された前記格納単位識別情報の検索結果を送信する検索結果送信部と
を有する請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のストレージ装置。
【請求項8】
前記格納単位に対応付けられたキーワードと、前記格納単位の磁気テープに格納されているデータの退避元の第2の論理ボリュームの第2識別情報とを対応付けて格納する格納単位管理テーブルを更に備え、
前記データ特定情報受付部は、前記データ特定情報として、前記格納単位に対応付けられたキーワードを受け付け、
前記特定部は、前記格納単位管理テーブルから前記キーワードに対応する前記第2識別情報を取得することにより第2識別情報を特定する
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載のストレージ装置。
【請求項9】
複数の記憶装置の少なくとも一部の記憶領域が割り当てられた複数の論理ボリュームを管理し、前記論理ボリュームには、前記ホスト装置に利用されるオリジナルデータを記憶するための第1の論理ボリュームと、前記第1の論理ボリュームのオリジナルデータの複製のデータを記憶するための第2の論理ボリュームとが含まれ、前記第2の論理ボリュームの前記データを前記磁気テープに退避させ、当該退避させたデータを前記論理ボリュームに回復させるストレージ装置によるデータ回復方法であって、
回復対象のデータを特定するためのデータ特定情報を受け付ける受付ステップと、
前記データ特定情報により特定されるデータの退避元である前記第2の論理ボリュームの前記第2識別情報を特定する特定ステップと、
前記第1の論理ボリュームを示す第1識別情報と、前記第2の論理ボリュームを示す第2識別情報とを対応付けて記憶する論理ボリューム管理テーブルから、特定した前記第2識別情報に対応付けられた前記第1識別情報を取得する第1識別情報取得ステップと、
前記磁気テープドライブにより、前記回復対象のデータを格納した前記磁気テープから、前記退避されたデータを読み出させる読出制御ステップと、
前記取得した第1識別情報が示す前記第1の論理ボリュームに、前記磁気テープから読み出した前記データを格納させる第1回復制御ステップと
を備えるデータ回復方法。
【請求項10】
ホスト装置と、複数の記憶装置の少なくとも一部の記憶領域が割り当てられた複数の論理ボリュームを管理し、前記論理ボリュームには、前記ホスト装置に利用されるオリジナルデータを記憶するための第1の論理ボリュームと、前記第1の論理ボリュームのオリジナルデータの複製のデータを記憶するための第2の論理ボリュームとが含まれ、前記第2の論理ボリュームの前記データを前記磁気テープに退避させ、当該退避させたデータを前記論理ボリュームに回復させるストレージ装置とを備える計算機システムであって、
前記ホスト装置は、
前記ストレージ装置に接続される第1インタフェースと、前記第1インタフェースに接続される第1プロセッサとを備え、
前記第1プロセッサは、前記ストレージ装置に回復対象のデータを含む磁気テープを含む格納単位を特定する格納単位識別情報を送信し、
前記ストレージ装置は、
前記ホスト装置に接続される第2インタフェースと、前記第2インタフェースに接続される第2プロセッサと、複数の記憶装置と、メモリと、複数の磁気テープを格納する磁気テープライブラリ部と、前記磁気テープに対するデータの入出力を行う磁気テープドライブと、前記磁気テープライブラリ部から前記磁気テープドライブに前記磁気テープを搬送する搬送機構部とを備え、
前記メモリは、前記第1の論理ボリュームを示す第1識別情報と、前記第2の論理ボリュームを示す第2識別情報とを対応付けて記憶する論理ボリューム管理テーブルと、1以上の前記磁気テープから成るデータの格納単位を示す格納単位識別情報と、前記格納単位の磁気テープに格納されているデータの退避元の第2の論理ボリュームの第2識別情報とを対応付けて格納する格納単位管理テーブルとを記憶し、
前記第2プロセッサは、前記第2インタフェースを介して、前記ホスト装置から前記格納単位識別情報を受け付け、前記格納単位識別情報により特定される格納単位のデータの退避元である前記第2の論理ボリュームの前記第2識別情報を前記格納単位管理テーブルにより特定し、特定した前記第2識別情報に対応付けられた前記第1識別情報を前記論理ボリューム管理テーブルから取得し、前記搬送機構部により前記磁気テープライブラリ部から前記格納単位の磁気テープを前記磁気テープドライブに搬送させ、前記磁気テープドライブにより、前記磁気テープから前記回復対象のデータを読み出させ、前記取得した第1識別情報が示す前記第1の論理ボリュームに、前記磁気テープから読み出した前記データを格納させる
計算機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−69965(P2009−69965A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235375(P2007−235375)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000233033)日立コンピュータ機器株式会社 (253)
【Fターム(参考)】