説明

ストレーナ

【課題】上下方向の寸法を短くして配設用の空間を上下に大きくせずに済むようにし、さらに、補強による重量の増加を抑制する。
【解決手段】ストレーナ1は、フィルタ10と、フィルタ10を収容する筒状の本体部21とを備えている。本体部21には、吸い込み孔及び吐出孔23が形成されている。本体部21は、軸線が上下方向と交差する方向に延びるように形成され、軸線に直交する断面の上下方向の寸法が水平方向の寸法よりも短く設定された幅広形状とされている。吐出孔23の周縁部には、本体部21の周壁部に沿って幅方向に突出するフランジ26が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を濾過するストレーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、車両用エンジンが有するオイルパンの内部には、オイルを濾過するためのストレーナが配設されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のストレーナは、板状のフィルタと、該フィルタを収容するフィルタ収容部とを備えている。フィルタ収容部は、フィルタの形状に対応した厚肉な中空板状をなしており、上下に延びるように形成されている。フィルタ収容部の下部には、該フィルタ収容部から突出して延びる吸い込み管が一体成形され、上部には、該フィルタ収容部から突出して延びる吐出管が一体成形されている。そして、吐出管の端部にはフランジ状の取付部が形成され、この取付部がエンジンに締結固定されるようになっている。
【特許文献1】特開2005−111432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記ストレーナのフィルタ収容部は上下方向に延びる板状をなしているので、オイルパンの内部においてストレーナの配設用の空間を上下方向に大きく確保しなければならなず、近年のエンジンのコンパクト化の要求に対応できない場合がある。
【0004】
また、ストレーナの使用中には、エンジンに対し固定されている取付部に加振力が作用することになるが、フィルタ収容部はフィルタを収容していて比較的重いことから、加振力によって取付部とフィルタ収容部との間に大きな力が作用することになる。このとき、特許文献1のものでは取付部を有する吐出管がフィルタ収容部から突出していて、取付部とフィルタ収容部とが離れているので、取付部の補強が大がかりなものとなり、ストレーナの重量が増加してしまう。
【0005】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、フィルタ収容部の上下方向の寸法を短くして配設用の空間を上下に大きくせずに済むようにし、さらに、補強による重量の増加を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、第1の発明では、フィルタと、該フィルタを収容する筒状のフィルタ収容部とを備え、該フィルタ収容部の軸線方向両側に吸い込み孔及び吐出孔をそれぞれ有したストレーナであって、上記フィルタ収容部は、軸線が上下方向と交差する方向に延びるように形成され、軸線に直交する断面の上下方向の寸法が水平方向の寸法よりも短く設定された幅広形状とされ、上記吐出孔の周縁部には、上記フィルタ収容部の周壁部に沿って幅方向に突出する取付部が形成されている構成とする。
【0007】
第2の発明では、第1の発明において、取付部には、吐出孔の周縁部から該吐出孔の軸線方向に突出し、該周縁部に沿って延びる環状突出部が形成され、上記環状突出部の外周部には、環状のシール部材が嵌められている構成とする。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明によれば、フィルタ収容部を、その軸線が上下方向と交差する方向に延びるように形成するとともに、断面の上下方向の寸法が水平方向の寸法よりも短い幅広形状となるようにしたので、フィルタ収容部の上下方向の寸法を短くすることができる。これにより、配設用の空間を上下に大きくすることなくストレーナを配設することができる。また、取付部は、フィルタ収容部の周壁部に沿って幅方向に突出しているので、取付部とフィルタ収容部とが離れるようになることはなく、大がかりな補強は不要になる。しかも、そのように取付部がフィルタ収容部の周壁部に沿っているので、該周壁部を利用して取付部を補強することができる。これにより、重量の増加を抑制できる。
【0009】
第2の発明によれば、取付部に環状突出部を形成し、この環状突出部の外周部にシール部材を嵌めるようにしたので、シール部材をフィルタ収容部に組み付けた状態で予め保持しておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るストレーナ1を示すものである。このストレーナ1は、図示しないが、自動車用エンジンの下部に設けられているオイルパン内に配設されるようになっている。ストレーナ1は、オイルを濾過するフィルタ10(図2に示す)と、フィルタ10を収容するケース20(図1に示す)とを備えている。ケース20は、エンジンに固定される筒状の本体部(フィルタ収容部)21と、吸い込み管22とを有しており、本体部21及び吸い込み管22は溶着されて一体化している。本体部21には吐出孔23が形成されており、この本体部21にフィルタ10が収容されている。
【0012】
本体部21は、軸線が略水平に延びるように形成されるとともに、軸線に直交する方向の断面の上下方向の寸法が水平方向の寸法よりも短い幅広形状とされている。図3に示すように、本体部21の周壁部の上部及び下部には、上側平坦部21a及び下側平坦部21bがそれぞれ形成されている。上側及び下側平坦部21a、21bは、軸線に沿って水平に延びている。本体部21の周壁部の幅方向両側は、上側平坦部21aと下側平坦部21bとの間で本体部21の外方へ向けて湾曲するように形成されている。
【0013】
本体部21の上流側である吸い込み管22側には、図3及び図4に示すように、軸線方向中間部よりも大径筒状の拡径部25が形成されている。図5及び図6に示すように、拡径部25の内周面には、フィルタ10の固定板部(後述する)が嵌る段差部25aが周方向に連続して形成されている。拡径部25の内周面における段差部25aよりも上流側には、段差状をなす溶着部25bが周方向に連続して形成されている。
【0014】
上記吐出孔23は、本体部21の吸い込み管22と反対側である下流側の端部に形成されている。吐出孔23は、図5及び図6に示すように、上下方向に延びており、上方へ向かって開口している。本体部21の下流側には、吐出孔23の周縁部から径方向に延びるフランジ(取付部)26が形成されている。フランジ26の上面は、上側平坦部21aと略平行に延びている。図4に示すように、フランジ26は、本体部21の周壁部に沿って本体部21の幅方向両側に突出しており、この幅方向両側の突出部分には、図2に示すように、上下方向に貫通する貫通孔26a、26aがそれぞれ形成されている。各貫通孔26a、26aにはブッシュ27、27が嵌入されており、各ブッシュ27には、フランジ26をエンジンのシリンダブロックに締結するためのボルト(図示せず)が挿通するようになっている。
【0015】
フランジ26の幅方向両側の基部は、本体部21の周壁部と一体化しており、基部の強度が高められている。フランジ26の突出方向先端側には、本体部21の周壁部の側部に突設されたリブ28、28が連なっている。また、フランジ26の上面には、上方へ突出し、吐出孔23の周縁部から上方へ突出し、該周壁部に沿って延びる環状突出部26bが形成されている。環状突出部26bの外周部には、環状のシール部材30が嵌められている。このシール部材30は、吐出孔23の周縁部と、吐出孔23が接続されるエンジン側オイル通路の開口部の周縁部との間をシールするためのものであり、例えば、Oリング等で構成することができる。また、フランジ26の上面には、成形時のヒケを防止するための複数の肉抜き部26c、26c、…が開口している。
【0016】
本体部21の周壁部におけるフランジ26の下方には、図7に示すように、本体部21内へ向けて窪む窪み部21c、21cが形成されている。窪み部21cは、後述するストレーナ1の取付時においてボルトをブッシュ27に挿通させやすくするためのものである。また、窪み部21cの深さは、本体部21内のオイル流路の断面積が吐出孔23の断面積よりも狭くならないように設定されている。また、窪み部21cの形状は、本体部21内のオイル流路の断面積が徐々に変化するように湾曲している。これらのことにより、本体部21内のオイルが吐出孔23の出口へ向けてスムーズに流れるようになっている。
【0017】
上記吸い込み管22は、図5に示すように、吸い込み孔29を構成するものであり、軸線方向の中央部で屈曲している。吸い込み管22の屈曲部分よりも本体部21側である下流側は、本体部21の軸線に沿うように延びる一方、反対側である上流側は、下降傾斜して延びる傾斜管部22aで構成されている。傾斜管部22aの上流端部には、吸い込み孔29が開口している。吸い込み管22の下流端部には、該吸い込み管22の外周面を覆うように形成された筒状部32が設けられている。筒状部32は、本体部21の拡径部25に挿入されるようになっている。
【0018】
筒状部32の外周面には、上記本体部21の溶着部25bに対向する部位に、段差状をなす溶着部32aが周方向に連続して延びるように形成されている。また、筒状部32には、本体部21の上流側端部に当接する当接部32bが形成されている。
【0019】
また、吸い込み管22の下流端部には、フィルタ10の固定板12の内周部を押さえる内周押さえ部34と、固定板12の外周部を押さえる外周押さえ部35とが突設されている。内周押さえ部34及び外周押さえ部35は、それぞれ、周方向に連続している。外周押さえ部35は、段差部25aに対応している。
【0020】
図2に示すように、フィルタ10は、樹脂材の一体成形品であり、全体として有底の四角筒状に形成された濾過部11と、濾過部11の開放口11a側に設けられた固定板12とを備えている。濾過部11には、全体に亘って網目部11bが形成されるとともに、リブ11cが設けられている。濾過部11の固定板12と反対側には、本体部21の内周面に接触する接触片11dが4つの角部に対応して設けられている。固定板12は、濾過部11の軸線に対し直交する方向に延び、図5や図7に示すように、本体部21の段差部25aに嵌るように形成されている。
【0021】
上記のように構成されたストレーナ1は次のようにして製造される。まず、フィルタ10を本体部21の拡径部25側から本体部21に挿入して収容する。このときフィルタ10の濾過部11が本体部21の吐出孔23側に位置するように向けておく。フィルタ10を本体部21に完全に収容すると、フィルタ10の固定板12が本体部21の段差部25aに嵌り、フィルタ10が位置決めされる。
【0022】
その後、吸い込み管22を本体部21に超音波溶着する。すなわち、本体部21を超音波溶着機(図示せず)の治具に固定するとともに、吸い込み管22の筒状部32を本体部21の拡径部25に差し込み、吸い込み管22を該溶着機のホーンに固定する。すると、吸い込み管22の溶着部32aと、本体部21の溶着部25bとが接する。この状態でホーンを超音波振動させると、両溶着部32a、25bが溶けていき、吸い込み管22の筒状部32が拡径部25に深く入っていく。やがて、内周及び外周押さえ部34、35が固定板12に当たり、固定板12が段差部25aと外周押さえ部35とで挟持される。このとき、フィルタ10の接触片11dが本体部21の内周面に接触する。また、筒状部32の当接部32bが本体部21の上流端部に当接する。両溶着部32a、25bが固化すると、本体部21及び吸い込み管22とは全周に亘って溶着されて一体化される。尚、吸い込み管22と本体部21とは、超音波溶着以外の方法で一体化するようにしてもよい。
【0023】
上記ストレーナ1をエンジンに取り付ける際には次のようにする。すなわち、まず、本体部21の環状突出部26bをエンジン側オイル通路に差し込む。そして、ボルトをフランジ26の下方からブッシュ27に挿通させた後、エンジンのねじ孔(図示せず)に螺合させてフランジ26をエンジンに締結固定する。このストレーナ1の本体部21は、水平方向に延びる筒状をなしていて、しかも、幅広に形成された扁平形状であるので、ストレーナ1の上下方向の寸法が短くなる。これにより、ストレーナ1を配設するための配設用の空間を上下に大きくせずに済む。
【0024】
そして、エンジンの運転によりポンプが作動すると、オイルパン内のオイルは、吸い込み孔29から本体部21に吸い込まれてフィルタ10の開放口11aからフィルタ10内に流入した後、網目部11bを通過して濾過され、吐出孔23から吐出される。ポンプの作動時には、フランジ26に加振力が作用する。このとき、フランジ26が本体部21の周壁部に沿って幅方向に突出しているので、フランジ26と本体部21とは近接しており、しかも、本体部21の周壁部とフランジ26の基部とが一体化していてフランジ26が該周壁部により補強された状態となっているので、大がかりな補強を行わなくても十分な耐久性を得ることが可能である。
【0025】
以上説明したように、フィルタ10を収容する本体部21を、その軸線が上下方向と交差する方向に延びるように形成するとともに、断面の上下方向の寸法が水平方向の寸法よりも短い幅広形状となるようにしたので、本体部21の上下方向の寸法を短くすることができる。これにより、配設用の空間を上下に大きくすることなくストレーナ1を配設することができる。また、フランジ26が、本体部21の周壁部に沿って幅方向に突出しているので、フランジ26と本体部21とが離れるようになることはなく、大がかりな補強は不要になる。しかも、本体部21の周壁部を利用してフランジ26を補強することができる。これにより、ストレーナ1の重量の増加を抑制できる。
【0026】
また、フランジ26に環状突出部26bを形成し、この環状突出部26bの外周部にシール部材30を嵌めるようにしたので、シール部材30を本体部21に組み付けた状態で保持することができ、エンジンへの組み付け作業性を良好にすることができる。
【0027】
尚、上記実施形態では、ケース20が2分割されている場合について説明したが、ケース20は一体成形品であってもよいし、3つ以上に分割されていてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、フィルタ10が筒状である場合について説明したが、これに限らず、フィルタ10は板状であってもよい。
【0029】
また、上記実施形態では、ケース20の本体部21を、軸線が略水平に延びるように形成しているが、これに限らず、本体部21は、軸線が上下方向と交差する方向に延びるように形成すればよく、交差角度としては、例えば、20゜以下とすることでストレーナ1の上下方向の寸法を十分に短くすることができる。
【0030】
また、図8に示す変形例のように、フィルタ10の下流端が吐出孔23の縁部近傍に位置するように、本体部21の軸線方向の寸法を短くしてもよい。これにより、ストレーナ1のコンパクト化を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上説明したように、本発明に係るストレーナは、例えば、エンジンのオイルパン内に配設するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係るストレーナの斜視図である。
【図2】ストレーナの分解斜視図である。
【図3】ストレーナの側面図である。
【図4】ストレーナの平面図である。
【図5】図4におけるV−V線端面図である。
【図6】図4におけるVI−VI線端面図である。
【図7】図3におけるVII−VII線端面図である。
【図8】変形例に係る図7相当図である。
【符号の説明】
【0033】
1 ストレーナ
10 フィルタ
20 ケース
21 本体部(フィルタ収容部)
22 吸い込み管
23 吐出孔
26 フランジ(取付部)
26b 環状突出部
29 吸い込み孔
30 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタと、該フィルタを収容する筒状のフィルタ収容部とを備え、該フィルタ収容部の軸線方向両側に吸い込み孔及び吐出孔をそれぞれ有したストレーナであって、
上記フィルタ収容部は、軸線が上下方向と交差する方向に延びるように形成され、軸線に直交する断面の上下方向の寸法が水平方向の寸法よりも短く設定された幅広形状とされ、
上記吐出孔の周縁部には、上記フィルタ収容部の周壁部に沿って幅方向に突出する取付部が形成されていることを特徴とするストレーナ。
【請求項2】
請求項1に記載のストレーナにおいて、
取付部には、吐出孔の周縁部から該吐出孔の軸線方向に突出し、該周縁部に沿って延びる環状突出部が形成され、
上記環状突出部の外周部には、環状のシール部材が嵌められていることを特徴とするストレーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−7627(P2010−7627A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170440(P2008−170440)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(390026538)ダイキョーニシカワ株式会社 (492)
【Fターム(参考)】