スパッタリング装置およびその制御方法
【課題】本発明は、同時スパッタ数の多い多元スパッタリング装置およびその制御方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態では、基板とターゲット電極との間に、第1及び第2のシャッター板を設け、該シャッター板によって対象となるターゲットと基板との間を遮断してプリスパッタ工程を行う。また、本スパッタ工程に移行する際に、第1及び第2のシャッター板を適宜回転させて、該シャッター板に設けた貫通孔を重ねることで対象となるターゲットと基板との間を開放して本スパッタ工程を行う。
【解決手段】本発明の一実施形態では、基板とターゲット電極との間に、第1及び第2のシャッター板を設け、該シャッター板によって対象となるターゲットと基板との間を遮断してプリスパッタ工程を行う。また、本スパッタ工程に移行する際に、第1及び第2のシャッター板を適宜回転させて、該シャッター板に設けた貫通孔を重ねることで対象となるターゲットと基板との間を開放して本スパッタ工程を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスや電子デバイスの製造工程において、真空中でシリコンなどの半導体や金属、ガラス、セラミック、プラスチック等の基板上に薄膜を成膜するスパッタリング装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスや電子デバイスは、デバイス性能の向上に伴い、中枢となる材料に複雑な合金や化合物、混合物が用いられるようになってきている。そのような材料からなる薄膜は、スパッタリング法や蒸着法などの物理蒸着(PVD)法においては、従来、所望の薄膜材料と同等の組成のターゲットや蒸着材料を用いていた。しかしながら、PVD法では形成される薄膜の組成がターゲットや蒸着材料の組成からずれることが多い。近年のデバイスでは、デバイス特性がそれら薄膜材料の組成に対して非常に敏感であるため、組成にずれが生じた場合には所望の組成が得られるようなターゲット及び蒸着材料を見つける必要があった。
【0003】
また、新規の薄膜材料を探索するためには、薄膜の組成を変えながらデバイス特性を評価するが、係る作業においては、毎回真空装置を大気曝露し、組成の異なるターゲットや蒸着材料を装置に取り付けて成膜していたため、開発コストや時間がかかっていた。このような開発コストを削減するため、日本応用磁気学会誌、1997年、第21巻、第4号、p.505−508には、PtMn合金薄膜の成膜に際し、MnターゲットにPtペレットを貼り付けてターゲットとし、Ptペレットの数を変えることによって組成を調整するという方法が開示されている。本方法によれば、組成の異なるPtMnターゲットを複数用意する必要がなくなり、開発コストを低減することができる。しかしながら、Ptペレットを貼り付ける作業を行うためには、毎回真空装置を大気曝露する必要があるため、開発時間の短縮にはつながらない。
【0004】
これに対し、装置の真空曝露を必要とせずにターゲットや蒸着材料の組成調整を行うことができるスパッタリング方法として、複数のスパッタリングカソードを同時に放電させる多元同時スパッタリング法がある。特開2005−256112号公報には2元同時スパッタを行うため、それぞれ2つの穴があいた2枚のシャッターを重ねて配置した二重回転シャッターを用いた多元スパッタリング方法が開示されている。当該方法では、一方のシャッターで所望の2つのカソードを選択し、もう一方のシャッターで開閉操作することにより、プリスパッタ工程から本スパッタ工程へ移行して2元同時スパッタを行う。PtMn薄膜を成膜する場合であれば、PtターゲットとMnターゲットを用意し、それぞれのターゲットに投入するパワー比を変えることによって、薄膜の組成を調整することが可能になる。よって、組成の異なる薄膜の開発コスト、時間を大幅に短縮することができる。
【非特許文献1】日本応用磁気学会誌、1997年、第21巻、第4号、p.505−508
【特許文献2】特開2005−256112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2005−256112号公報に開示された方法では、一方のシャッター板をカソード選択シャッターとして固定し、他方を開閉動作用のシャッターとして使用するため、組み合わせが限定され、同時スパッタ可能な数が制約されていた。具体的には、5つのターゲットが配置されたスパッタリング装置においては、同時スパッタできるターゲットは2つであった。
【0006】
本発明の目的は、同時スパッタ数の多い多元スパッタリング装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、前記遮断装置が、前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段と、該第1及び第2の駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を少なくとも1つ有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有し、前記駆動制御手段は、前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、前記駆動制御手段は、スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする。
また、第2の態様は、真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、前記遮断装置が、前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段とを含み、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を複数有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有するスパッタリング装置の制御方法であって、前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させることで、ターゲットの組み合わせ自由度が増加し、同時スパッタ数を向上させることができる。よって、本発明のスパッタリング装置を用いることにより、半導体デバイスや電子デバイスの製造工程において、薄膜の組成調整や新規な薄膜材料の開発をより低コストで且つ短時間で行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のスパッタリング装置は真空チャンバー内に複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断しうる遮断装置を備えている。そして、係る遮断装置は、第1及び第2のシャッター板と、該2枚のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段と、該第1及び第2の駆動手段を制御する駆動制御手段と、を備えている。
【0010】
以下、本発明のスパッタリング装置について、実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明のスパッタリング装置の好ましい一実施形態のターゲット電極の配置状態を示す平面模式図であり、図2に、図1中のAOB断面に対応する断面模式図を示す。図中、E1乃至E5はターゲット電極、1は被処理基板、2は基板ステージ、4は真空チャンバー、5はターゲットホルダー、6はターゲット、7は第1のシャッター板、8は第2のシャッター板である。
【0012】
本発明のスパッタリング装置は、図1,2に示すように、被処理基板1が載置される基板ステージ2と、基板ステージ2の上方に配された複数のターゲット電極E1乃至E5とを備えている。
【0013】
真空チャンバー4には、真空排気用のドライポンプ及びクライオポンプと、Arガスなどの放電用ガスを導入するためのガスインレットとが接続されている(いずれも不図示)。基板ステージ2は、駆動装置(不図示)によりスパッタ工程中、基板1の被処理面の中心を通る法線Yを中心に基板1を載置した状態で回転する。尚、基板ステージ2の駆動装置としては、例えば、回転軸と固定子との間に磁性流体シールを介装したモータ等を用いる。
【0014】
ターゲット電極E1乃至E5はターゲット取り付け可能なターゲットホルダー5を備えた陰極である。ターゲット電極E1乃至E5は、それぞれがプラズマ発生のための直流電源に接続されており、独立に調整された電力がそれぞれ投入されることで、真空チャンバー4内に導入した放電用ガスからプラズマを発生させる。これにより、電力を投入したターゲット電極E1乃至E5に取り付けられたターゲット6がスパッタされる。尚、全てのターゲット電極E1乃至E5にターゲット6を取り付ける必要はなく、一部のターゲット電極にのみターゲット6を取り付け、スパッタすることができる。以下、ターゲット6を取り付けたターゲット電極の組み合わせを「ターゲット配置」という。
【0015】
また、複数のターゲット電極は、基板ステージ2の回転軸Yを中心とした同一円周上に等間隔に配置されている。本例ではターゲット電極はE1乃至E5の5個であるため、互いに72°の間隔を介して等間隔に配置されている。また、本例では、各ターゲット電極が基板1の中央を向くように傾斜されており、具体的にはターゲット電極のターゲット取り付け面の法線が、基板の被処理面の法線Yに対して30°傾いて配置されている。傾き角は2〜60°の範囲で設定され、好ましくは5〜50°であるが、図10に示すように、ターゲット電極が基板1に平行(=傾き角が0°)になるように配置することも可能である。
【0016】
本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置は、それぞれ独立して回転可能な2枚のシャッター板7,8を備えており、プリスパッタ工程から本スパッタ工程に移行する際に、上記2枚のシャッター板7、8を独立して制御することにより該2枚のシャッター板7,8の位置を変えることを特徴とする。ここで、プリスパッタ工程とは、シャッター板で基板1とターゲット6の間を遮断したまま放電する状態をいい、本スパッタ工程とは、基板1とターゲット6の間を開放してスパッタリングする工程をいう。
【0017】
本発明に係る第1及び第2のシャッター板7,8は、複数のターゲット電極に対応する開口部を有し、少なくとも1個のターゲット電極と基板1との間を遮断する形状を有している。すなわち、第1及び第2のシャッター板は、少なくとも1つのターゲット電極を基板に開放させるための開口部を少なくとも1つ有している。本発明において、ターゲット電極の数は2n+1個(nは自然数)が好ましく、これに対して第1及び第2のシャッター板はそれぞれn+1個以上のターゲット電極に対応する開口部を有しており、当該装置で同時スパッタしうる最大ターゲット数はn+1である。
【0018】
本例のターゲット電極数は5であり、よって、第1及び第2のシャッター板7,8の開口部はそれぞれ3個もしくは4個のターゲット電極に対応する開口部を備えており、同時スパッタしうる最大ターゲット数は3個である。
【0019】
図3に遮断装置の概略構成を示す。本発明の一実施形態に係る遮断装置はスパッタリング用コントローラ13からの指示に従って、プリスパッタ工程で基板1とターゲット6の間を遮断し、本スパッタ工程で基板1とターゲット6との間を開放するものである。具体的には、第1及び第2のシャッター板7,8ならびに、第1及び第2のシャッター板7,8を独立に回転させる第1及び第2の駆動手段11及び12を備えている。さらに、第1及び第2のシャッター板7,8を所定角度になるように回転させ、各開口部を所定位置に位置するように、駆動手段11及び12を制御する駆動制御手段(コントローラ)10を備えている。
【0020】
第1及び第2のシャッター板7,8は、その板面をターゲット電極E1乃至E5に向けて互いに重ねて配置される。また、シャッター板7,8双方の回転軸は、基板ステージ2の回転中心である回転軸Yと同軸上に配される。
【0021】
図4A〜Cに、第1及び第2のシャッター板7,8の一例の平面図を示す。図中のhは貫通孔(開口部)である。本例のシャッター板は5個のターゲット電極を備えた装置に対応するものであり、同一円周上に一定の間隔を置いて3つの貫通孔hが形成されている。個々の貫通孔h7-1乃至h7-3、h8-1乃至h8-3は1個のターゲット電極よりも面積が広い。よって、第1及び第2のシャッター板7,8はそれぞれ、基板1とターゲット電極の間に配置されて、3個のターゲット電極と基板との間を開放し、2個のターゲット電極と基板との間を遮断する。第1及び第2のシャッター板7,8は互いに重ねて配置されるため、それぞれの貫通孔h7-1乃至h7-3、h8-1乃至h8-3の位置によって、基板1とターゲット電極間の開放、遮断が決定する。
すなわち、第1シャッター板7および第2シャッター板8はそれぞれ独立に回転させることができるので、プリスパッタや本スパッタといったスパッタ処理を行う際に、本発明のスパッタリング装置は、それぞれのシャッター板に形成された貫通孔h7-1乃至h7-3およびh8-1乃至h8-3の位置の組み合わせを、該組み合わせにより許容される範囲内で自由に選択することができる。従って、本スパッタ工程にて用いるターゲットの組み合わせの自由度を向上することができる。
【0022】
図4A乃至Cはそれぞれ、左から第2のシャッター板8,第1のシャッター板7,第2のシャッター板8を基板1側にして両者を重ねて基板1側から見た状態を示す。
【0023】
図4Aにおいて、第1のシャッター板7と第2のシャッター板8の貫通孔h7-1乃至7-3、h8-1乃至h8-3の位置は同じである。そのため、重ねた状態では貫通孔h7-1とh8-1、h7-2とh8-2、h7-3とh8-3がそれぞれ重なって、3個のターゲット電極と基板1との間が開放され、残りの2個のターゲット電極と基板1との間が遮断される。
【0024】
図4Bにおいては、第1のシャッター板7の貫通孔hの位置に対して、第2のシャッター板8を72°回転させて貫通孔1個分周方向にずらせている。そのため、2枚のシャッター板7,8を重ねた状態では、それぞれ2個の貫通孔h7-2とh8-1、h7-3とh8-2が互いに重なって、2個のターゲット電極と基板1との間が開放される。残りの3個のターゲット電極のうち、1個は第1及び第2のシャッター板7,8の両者によって遮断されるが、2個については、第1及び第2のシャッター板7,8のいずれかの貫通孔h7-1、h8-3が、他方によって塞がれることによって遮断される。
【0025】
さらに、図4Cにおいては、第1のシャッター板7の貫通孔hの位置に対して、第2のシャッター板8を144°回転させて貫通孔1個分周方向にずらせている。そのため、2枚のシャッター板7,8を重ねた状態では、それぞれの1個の貫通孔h7-3とh8-1のみが互いに重なって、1個のターゲット電極と基板1との間が開放される。残りの4個のターゲット電極と基板1との間は、第1のシャッター板7、第2のシャッター板8、第1及び第2のシャッター板7,8のいずれかによって遮断される。
【0026】
本発明においては、図4A〜Cのように第1のシャッター板7と第2のシャッター板8の回転位置によって開放されるターゲット電極と基板1の個数と位置を調整することができ、ターゲット配置に応じた位置を取ることにより、3元同時スパッタを行うことができる。
【0027】
第1及び第2の駆動手段11,12は、第1及び第2のシャッター板7,8をそれぞれ独立に駆動するモータ11b,12bと、シャッター板7,8の現在位置を検出するエンコーダ11c,12cを備えている。さらに駆動手段11,12は、エンコーダ11c,12cからの位置情報に基づいて、コントローラ10からそれぞれ入力される指示値にシャッター板7,8を駆動制御するドライバ11a,12aを備えている。尚、モータ11b,12bは、回転軸と固定子との間に磁性流体シールをそれぞれ介装している。
【0028】
コントローラ10は、スパッタリング用コントローラ13からのプリスパッタ工程又は本スパッタ工程への移行タイミングの指示に従い、ターゲット配置に応じた第1及び第2のシャッター板7,8の遮断又は開放位置を演算し、駆動手段11,12に出力する。コントローラ10は、例えば、CPU、RAM、ROM、クロックパルス発生回路、分周器等を含むマイクロコンピュータで構成し、プログラムの実行により上記機能を実現する。
【0029】
本例では、コントローラ10は、ターゲット配置ごとの遮断位置データ(遮断位置情報)と開放位置データ(開放位置情報)を規定するテーブル10bを備えている。さらにコントローラ10はテーブル10bからターゲット配置に応じたシャッター板7,8の遮断又は開放位置データを取得する位置情報取得部10aを備え、上述の演算を実行する。
本明細書において、「遮断位置データ(遮断位置情報)」は、スパッタ対象となるターゲットを基板に対して遮断する必要がある場合に(例えば、プリスパッタ工程時)、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8の少なくとも一方により上記スパッタ対象となるターゲットと基板との間を遮断するように、シャッター板に形成された貫通孔を位置させるためのデータ(情報)である。
なお、本発明では、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8の2つのシャッター板の配置の結果として、スパッタ対象となるターゲットと基板とを遮断することになる。よって、第1のシャッター板7(第2のシャッター板8)に送信される第1の遮断位置データ(第2の遮断位置データ)に従って第1のシャッター板7(第2のシャッター板8)を制御するだけでは、スパッタ対象となるターゲット全ての遮断がなされてない場合もある。しかしながら、このような場合でも本発明では、2つのシャッター板のそれぞれに専用の遮断位置データを送信して、2つのシャッター板の相互関係によりスパッタ対象となるターゲットの全てを基板から遮断するように2つのシャッター板を独立に制御しているので、2つのシャッター板の配置の結果として、上記遮断を実現することができる。
また、「開放位置データ(開放位置情報)」は、スパッタ対象となるターゲットを基板に対して開放する(露出させる)必要がある場合に(例えば、本スパッタ工程時)、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8に形成された貫通孔の双方を介して上記スパッタ対象となるターゲットを基板に対して開放するように、上記貫通孔を位置させるためのデータ(情報)である。
本発明では、2つのシャッター板の貫通孔の重なりの組み合わせを変化させることで、同時スパッタを行うターゲットの数を調節することができる。さらに、シャッター板の回転により貫通孔の位置を変化させることで、対象となるターゲットの位置に関わらず、所望のターゲットを基板に対して開放させることができる。本発明では、これら効果を奏するために、2つのシャッター板のそれぞれに専用の開放位置データを送信して、2つのシャッター板を独立に制御している。すなわち、第1の開放位置データにより回転制御されて位置した第1のシャッター板7と、第2の開放位置データにより回転制御されて位置した第2のシャッター板8との相互関係により、第1シャッター板7および第2シャッター板8のそれぞれの貫通孔の重なりを、適切な位置で適切な数だけ実現することができる。
本発明では、上述のように、テーブル10bでは、スパッタ対象となるターゲットの各配置毎に(例えば、スパッタ対象となるターゲットが、(E1、E2、E3)、(E3、E4、E5)、(E2、E4)・・・等毎に)、対応する遮断位置データ、および開放位置データが関連付けられている。よって、コントローラ10は、スパッタリング用コントローラ13から入力された、上記スパッタ対象となるターゲットの配置に関連するターゲット配置情報に基づいて、上記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に応じた遮断位置データ、および開放位置データを取得することができる。
なお、スパッタリング用コントローラ13は、不図示のキーボード、タッチパネル等の入力操作部を介してユーザが、スパッタ対象となるターゲットに関する情報を入力すると、該入力を受け付けて、スパッタ対象となるターゲットを示す情報(どのターゲットがスパッタ対象であるかを示す情報;ターゲット配置情報)を生成することができる。このターゲット配置情報には、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に関する情報を含めることができる。
【0030】
本発明におけるプリスパッタ工程及び本スパッタ工程の動作を図4乃至図7を用いて説明する。図5Aは基板1側から見たターゲット電極の概略平面図、図5B、Cは第1及び第2のシャッター板7,8を重ねて配置した状態を基板1側から見た平面模式図である。また、図6Aは図5BのAOB断面に対応する断面模式図、図6Bは図5CのAOB断面に対応する断面模式図である。図7は、プリスパッタ工程及び本スパッタ工程におけるターゲット電極E1乃至E5の電圧のオン・オフと第1及び第2のシャッター板7,8の開放位置及び遮断位置のタイミングチャートである。
【0031】
本例においては、ターゲット配置を同一円周上に連続して配置するターゲット電極E1,E2,E3とする。図5Aに示すように、ターゲット電極E1乃至E5は回転軸Yを中心とする同一円周上に72°ずつ、等間隔で配置している。
【0032】
プリスパッタ工程において、ターゲット電極E1,E2,E3には電力制御手段(不図示)によって調整された所定の電圧が印加される。従って、該ターゲット電極に取り付けられたスパッタ対象となるターゲット(以下、「対象ターゲット」という)6からの粒子が基板1に到達しないように、ターゲット電極E1,E2,E3に取り付けたターゲット6と基板1との間を遮断する必要がある。係るターゲット6と基板1との間を遮断する第1及び第2のシャッター板7,8の組み合わせは、図4B又はCのパターンであり、本例においては図4Bとする。
コントローラ10の位置情報取得部10aは、スパッタリング用コントローラ13からプリスパッタ工程移行のタイミング信号及びターゲット配置情報が入力されると、テーブル10bから当該ターゲット配置に対応する遮断位置データ〔図4B〕を取得する。すなわち、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h7-1乃至h7-3がターゲットE1〜E3に対して図4Bの真ん中の図のように配置されるように第1のシャッター板7を回転させるためのデータ(第1の遮断位置データ)を取得する。また、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h8-1乃至h8-3がターゲットE1〜E3に対して図4Bの左側の図のように配置されるように第2のシャッター板8を回転させるためのデータ(第2の遮断位置データ)を取得する。そして、コントローラ10は、第1および第2の遮断位置データを第1及び第2の駆動手段11,12にそれぞれ出力する。第1及び第2の駆動手段11,12は上記遮断位置データに対応する位置に第1及び第2のシャッター板7,8を回転させ、対象ターゲット6と基板1との間が第1及び第2のシャッター板7,8の少なくとも一方で遮断される。
このように、コントローラ10は、入力されたプリスパッタ信号に基づいてプリスパッタ工程を行うと判断し、入力されたターゲット配置情報に基づいて、テーブル10bを参照して、適切な第1の遮断位置データおよび第2の遮断位置データを取得する。ついで、コントローラ10は、取得された第1および第2の遮断位置データをそれぞれ第1および第2の駆動手段に送信して、第1および第2の駆動手段に遮断位置データに応じた回転制御を行わせる。
【0033】
尚、プリスパッタ工程において、第1及び第2のシャッター板7,8のそれぞれの貫通孔hが重なって、ターゲット電極E4,E5と基板1との間が開放される。そのため、係るターゲット電極E4,E5は電力制御手段によって電力供給をオフに制御される。
【0034】
上記したように、プリスパッタ工程においては対象ターゲット6と基板1との間を第1及び第2のシャッター板7,8で遮断した状態でターゲット電極E1,E2,E3に電圧を印加する。これにより、ターゲット電極E1,E2,E3に取り付けられた対象ターゲット6がスパッタされ、基板1にスパッタされた対象ターゲット6の粒子が付着することなく、ターゲット6表面の酸化膜等の除去を行うことができる。
【0035】
プリスパッタ工程が終了すると、本スパッタ工程に移行する。本スパッタ工程ではターゲット電極E1,E2,E3に取り付けられた対象ターゲット6と基板1との間を開放する必要がある。そのため、図4Aに示すパターンが開放位置データとしてテーブル10bから第1及び第2の駆動手段11,12に入力される。すなわち、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h7-1乃至h7-3がターゲットE1〜E3に対して図4Aの真ん中の図のように配置されるように第1のシャッター板7を回転させるためのデータ(第1の開放位置データ)を取得する。また、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h8-1乃至h8-3がターゲットE1〜E3に対して図4Aの左側の図のように配置されるように第2のシャッター板8を回転させるためのデータ(第2の開放位置データ)を取得する。そして、コントローラ10は、取得された第1および第2の開放位置データをそれぞれ第1および第2の駆動手段に出力する。第1及び第2の駆動手段11,12は上記開放位置データに対応する位置に第1及び第2のシャッター板7,8を回転させる。その結果、対象ターゲット6と基板1との間は、第1及び第2のシャッター板7,8の両方の貫通孔hが重なって開放され、ターゲット電極E1,E2,E3の対象ターゲット6においてスパッタされた粒子が基板1に到達し、3元同時スパッタが実行される。
このように、コントローラ10は、入力された本スパッタ信号に基づいて本スパッタ工程を行うと判断し、上記ターゲット配置情報に基づいて、テーブル10bを参照して、適切な第1の開放位置データおよび第2の開放位置データを取得する。ついで、コントローラ10は、取得された第1および第2の開放位置データをそれぞれ第1および第2の駆動手段に送信して、第1および第2の駆動手段に開放位置データに応じた回転制御を行わせる。すなわち、コントローラ10は、第1および第2の駆動手段に特有の開放位置データを送信して第1のシャッター板7および第2のシャッター板8をそれぞれ独立に回転させて、第1のシャッター板7の貫通孔および第2のシャッター板8の貫通孔の位置の組み合わせを制御する。このとき、本発明では、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8は互いに制限無く回転させることができるので、コントローラ10は、上記位置の組み合わせを制御して、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を基板1に開放させることが可能となる。
このように、本発明では、コントローラ10は、スパッタ処理の際に、対象ターゲットの数および配置位置に応じて、該対象ターゲットの全てが基板に対して開放されるように第1のシャッター板7および第2のシャッター板8を回転制御する。すなわち、コントローラ10は、所望の対象ターゲットの配置に応じて、第1のシャッター板7に形成された貫通孔と第2のシャッター板8に形成された貫通孔とが重なる領域を介して対象ターゲットが基板に対して開放するように(上記重なる領域が対象ターゲットと対向するように)第1のシャッター板7と第2のシャッター板8との回転を独立に制御している。よって、対象ターゲットの数や配置位置にかかる制限を緩和し、対象ターゲットの組み合わせの自由度を向上することができる。
さらに、上述した特開2005−256112号公報では、プリスパッタ工程および本スパッタ工程において、2つのシャッター板のうち、カソード選択シャッターとして機能する一方のシャッター板を同じ位置に固定し、他方のシャッター板をプリスパッタ工程と本スパッタ工程との間で位置を変えている。すなわち、特開2005−256112号公報に開示された技術は、プリスパッタ工程および本スパッタ工程において、一方のシャッター板を所定の位置に固定し、他方のシャッター板のみで基板への開放を制御するものである。従って、上記一方のシャッター板を固定している分、2つのシャッター板の組み合わせが限定され、同時スパッタできるターゲットの数に制限があった。すなわち、特開2005−256112号公報に開示された技術では、プリスパッタ工程時の一方のシャッター板の位置が本スパッタ工程にも影響しており、該影響により2つのシャッター板の組み合わせが制限される。
しかしながら、本発明では、コントローラ10は、所望の対象ターゲットの数および配置に応じて、プリスパッタ工程における2つのシャッター板の回転と、本スパッタ工程における2つのシャッター板の回転とを互いに独立に制御している。よって、本スパッタ工程における2つのシャッター板の位置を、プリスパッタ工程時の2つのシャッター板の位置に関係なく決めることができるので、2つのシャッター板の組み合わせにかかる制限が軽減される。従って、同時スパッタできる対象ターゲットの数の自由度を向上することができる。
【0036】
尚、本スパッタ工程において、ターゲット電極E4,E5と基板1との間は第1及び第2のシャッター板7,8によって遮断されている。従って、ターゲット電極E4,E5にターゲット6が取り付けられ、ターゲット電極E4,E5に電圧が印加されていてもターゲット電極E4,E5に取り付けられたターゲット6からのスパッタ粒子は基板1には到達しない。しかしながら、スパッタ対象でないターゲット(非対象ターゲット)6からのスパッタ粒子の混在を防止する上で、不要なターゲット電極E4,E5は電力供給をオフとすることが望ましい。
【0037】
本スパッタ工程を終了する際には、第1及び第2のシャッター板7,8を対象ターゲット6と基板1との間を遮断する位置に戻すことで物理的にターゲット6からの粒子を遮断し、同時に、ターゲット電極E1,E2,E3の電源をオフとする。
【0038】
上記プリスパッタ工程と本スパッタ工程を繰り返すことにより、複数層の成膜を行うことができる。尚、タイミングチャートは図7に示すものに限定されず、例えば、図14に示すように、プリスパッタ工程から本スパッタ工程に移行する期間(t2乃至t3)で、ターゲット電極E1乃至E3を電源オフとしてもよい。これにより、より精密に膜厚のコントロールができる。
【0039】
以上、5元スパッタリング装置において、3元同時スパッタを行う場合について説明したが、本例のスパッタリング装置においては、3元同時スパッタを行う前或いは後に2元同時スパッタ或いは単元スパッタを行うこともできる。具体的には、プリスパッタ工程において、第1及び第2のシャッター板7,8の貫通孔hが重ならない位置とターゲット配置とを対応させる。また、本スパッタ工程においては、第1及び第2のシャッター板7,8の貫通孔hが重なった位置を対象ターゲットの位置に対応させればよい。図8A〜Cは、ターゲット電極E2のみをターゲット配置として単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板7,8の位置関係を基板1側から見た平面模式図である。図8Aは基板1側から見たターゲット電極の概略平面図、図8B、Cは第1及び第2のシャッター板7,8を重ねて配置した状態を基板1側から見た概略平面図であり、図8Bはプリスパッタ工程、図8Cは本スパッタ工程である。本例では、本スパッタ工程においてターゲット電極E2に取り付けた対象ターゲット6と基板1との間のみ開放するため、第1及び第2のシャッター板7,8の組み合わせとして図4Cのパターンを用いる。
【0040】
尚、上記実施形態においては、シャッター板7,8の形状として、ターゲット電極よりも大きい円形の貫通孔をターゲット電極に対応して複数個設けて開口部とした例を示したが、本発明においてはこれに限定されるものではない。例えば、図9A〜Cは、上記実施形態のシャッター板7,8の貫通孔h7、h8をそれぞれ連続させて3個のターゲット電極が同時に露出する形状とした例である。図9A乃至Cはそれぞれ、左から第2のシャッター板8,第1のシャッター板7,第2のシャッター板8を基板1側にして両者を重ねて基板1側から見た状態を示す。図9Aは3個のターゲット電極に対して基板1との間が開放となり、2個のターゲット電極に対して基板1との間が遮断となる。図9Bは2個のターゲット電極に対して基板1との間が開放となり、3個のターゲット電極に対して基板1との間が遮断となる。図9Aは1個のターゲット電極に対して基板1との間が開放となり、2個のターゲット電極に対して基板1との間が遮断となる。よって、図9A乃至Cのパターンを適宜選択することにより、単元スパッタ乃至3元同時スパッタを同じ装置で行うことができる。
【0041】
また、上記実施形態では、図1に示すようにターゲット電極E1乃至E5が基板ステージ2に対して平行でなく、傾けて配置されているスパッタリング装置を用いているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、ターゲット電極E1乃至E5と基板ステージ2が平行に配置されたスパッタリング装置を用いてもよい。
【0042】
さらに、図11A〜Cは本発明に用いられるシャッター板7,8の他の形状例を示す概略平面図である。図11Aはターゲット電極2個分の遮断領域を扇形とした例である。図11Bはターゲット電極より広い円形の遮断領域を支持軸で連結して柄杓形とした例である。図11Cは図4に例示したシャッター板7,8の貫通孔とシャッター板外周との間を切り欠いた形状である。また、図12は、遮断領域を花弁形とした例である。
【0043】
尚、本発明においては、シャッター板7,8の形状を同じにする必要はなく、また、開口部に対応するターゲット電極の個数を互いに変えても構わない。例えば、5元スパッタリング装置において3元同時スパッタを行う場合、一方のシャッター板の遮断領域が2個のターゲット電極に対応し、他方のシャッター板の遮断領域が1個のターゲット電極に対応する形状であればよい。図13A、Bは、第1のシャッター板7の貫通孔をh7-1乃至h7-4の4個とした例であり、左から第2のシャッター板8,第1のシャッター板7,第2のシャッター板8を基板1側にして両者を重ねて基板1側から見た状態を示す。
【0044】
図13Aにおいて、第1のシャッター板7と第2のシャッター板8のそれぞれ3個の貫通孔h7-1乃至h7-3、h8-1乃至h8-3の位置が重なり、3個のターゲット電極と基板1との間を開放することができる。
【0045】
図13Bにおいては、図13Aの状態から第1のシャッター板7の貫通孔hの位置を反時計回りに72°回転させて貫通孔1個分周方向にずらせている。そのため、2枚のシャッター板7,8を重ねた状態では、それぞれ2個の貫通孔h7-3とh8-1、h7-4とh8-2が互いに重なって、2個のターゲット電極と基板1との間が開放され、3個のターゲット電極と基板1との間を遮断することができる。よって、3元同時スパッタを行う際には、図13Bのパターンでプリスパッタ工程を行い、図13Aのパターンで本スパッタ工程を行えばよい。
(実施例)
【0046】
図1に示したスパッタリング装置を用い、Fe、Co、Niの各プレートからなる磁性ターゲット6を用いた3元同時スパッタを行い、種々のFeCoNi合金薄膜を作製した。
【0047】
本例では、先ず、基板ステージ2の上に直径300mmの熱酸化膜付Si基板1を配置した。ターゲット電極E1乃至E5は直径180mmのものを配置し、直径180mmの円板状のターゲット6を取り付けた。本例では、E1,E2,E3にそれぞれFe,Co,Niのターゲット6を取り付けた。
【0048】
先ず、ドライポンプ(不図示)を用いて真空チャンバー4内を粗引きし、その後、クライオポンプ(不図示)に切り替えて7×10-7Paの超高真空域まで排気した。その後、Arガスを圧力が0.03Paになるまで導入し、第1及び第2のシャッター板7,8を遮断位置に配置した。具体的には、図4Bの組み合わせで図5Bに示すように配置した。即ち、第1のシャッター板7の貫通孔h7-1乃至h7-3がターゲット電極E1,E4,E5の対向位置にくるように、第2のシャッター板8の貫通孔h8-1乃至h8-3がターゲット電極E3,E4,E5の対向位置にくるように、それぞれを回転させる。このシャッター配置では、ターゲット6を取り付けたターゲット電極E1,E2,E3が露出されない。この状態で、ターゲット6を取り付けたターゲット電極E1,E2,E3にのみDC電力を投入することによって放電を開始し、プリスパッタ工程を開始した。このプリスパッタ工程を1分間維持し、ターゲット6表面に付着した不純物を除去した。
【0049】
次いで、第1及び第2のシャッター板7,8を回転させて、図4Aに示す組み合わせで図5Cに示すように配置して、ターゲット6と基板1との間を開放した。具体的には、遮断位置から、第1のシャッター板7を紙面において反時計回りに144°、第2のシャッター板8を時計回りに144°、それぞれ回転させる。これにより、放電が発生しているターゲット電極E1,E2,E3に取り付けたターゲット6を露出させ、本スパッタ工程を開始する。
【0050】
上記のようにして、真空チャンバー4下部の基板ステージ2上で回転しているSi基板1にFeCoNi合金薄膜を形成することができた。本例では、Fe,Co,Ni原子の1W、1sec当たりの付着レートはそれぞれ0.000156nm/(W・sec)、0.000191nm/(W・sec)、0.000239nm/(W・sec)であった。このため、各ターゲット電極E1,E2,E3に投入する電力の比を変えることによって、得られるFeCoNi合金薄膜の組成を調整することができ、露出時間(=成膜時間)を変えることによって、得られるFeCoNi合金薄膜の膜厚を調整することができる。表1に、投入した電力と得られたFeCoNi合金薄膜の組成及び膜厚を示す。
【表1】
【0051】
(その他の実施形態)
本発明は、上記コントローラ10をスパッタリング装置に内蔵しても良いし、上記コントローラ10の処理を該スパッタリング装置とは別の装置で行っても良い。コントローラ10での処理をスパッタリング装置とは別個の装置で行う場合は、コントローラ10を、例えばコンピュータ、インターフェース機器といった情報処理装置に適用すれば良い。この場合は、情報処理装置とスパッタリング装置とを有線または無線により接続し、本発明に特徴的な情報(例えば、開放位置データ、遮断位置データなど)を、上記接続を介して情報処理装置からスパッタリング装置に入力すれば良い。
前述した実施形態の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD―ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のスパッタリング装置の好ましい一実施形態のターゲット電極の配置状態を示す平面模式図である。
【図2】図1のAOB断面に対応する断面模式図である。
【図3】本発明のスパッタリング装置の遮断装置の概略構成図である。
【図4A】本発明に係る第1及び第2のシャッター板とこれらを重ねた状態の平面模式図である。
【図4B】本発明に係る第1及び第2のシャッター板とこれらを重ねた状態の平面模式図である。
【図4C】本発明に係る第1及び第2のシャッター板とこれらを重ねた状態の平面模式図である。
【図5A】本発明に係るターゲット電極及びターゲット電極に第1及び第2のシャッター板を配置した状態の平面模式図である。
【図5B】本発明に係るターゲット電極及びターゲット電極に第1及び第2のシャッター板を配置した状態の平面模式図である。
【図5C】本発明に係るターゲット電極及びターゲット電極に第1及び第2のシャッター板を配置した状態の平面模式図である。
【図6A】図5BのAOB断面に対応する断面模式図である。
【図6B】図5CのAOB断面に対応する断面模式図である。
【図7】プリスパッタ工程及び本スパッタ工程におけるターゲット電極の電圧のオン・オフと第1及び第2のシャッター板の開放位置及び遮断位置のタイミングチャートである。
【図8A】本発明において単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板の位置関係の平面模式図である。
【図8B】本発明において単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板の位置関係の平面模式図である。
【図8C】本発明において単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板の位置関係の平面模式図である。
【図9A】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図9B】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図9C】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図10】本発明のスパッタリング装置の他の実施形態の断面模式図である。
【図11A】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図11B】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図11C】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図12】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図13A】本発明に係るシャッター板の貫通孔の個数を変えた例を示す平面模式図である。
【図13B】本発明に係るシャッター板の貫通孔の個数を変えた例を示す平面模式図である。
【図14】本発明に係る他のタイミングチャートの例である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスや電子デバイスの製造工程において、真空中でシリコンなどの半導体や金属、ガラス、セラミック、プラスチック等の基板上に薄膜を成膜するスパッタリング装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスや電子デバイスは、デバイス性能の向上に伴い、中枢となる材料に複雑な合金や化合物、混合物が用いられるようになってきている。そのような材料からなる薄膜は、スパッタリング法や蒸着法などの物理蒸着(PVD)法においては、従来、所望の薄膜材料と同等の組成のターゲットや蒸着材料を用いていた。しかしながら、PVD法では形成される薄膜の組成がターゲットや蒸着材料の組成からずれることが多い。近年のデバイスでは、デバイス特性がそれら薄膜材料の組成に対して非常に敏感であるため、組成にずれが生じた場合には所望の組成が得られるようなターゲット及び蒸着材料を見つける必要があった。
【0003】
また、新規の薄膜材料を探索するためには、薄膜の組成を変えながらデバイス特性を評価するが、係る作業においては、毎回真空装置を大気曝露し、組成の異なるターゲットや蒸着材料を装置に取り付けて成膜していたため、開発コストや時間がかかっていた。このような開発コストを削減するため、日本応用磁気学会誌、1997年、第21巻、第4号、p.505−508には、PtMn合金薄膜の成膜に際し、MnターゲットにPtペレットを貼り付けてターゲットとし、Ptペレットの数を変えることによって組成を調整するという方法が開示されている。本方法によれば、組成の異なるPtMnターゲットを複数用意する必要がなくなり、開発コストを低減することができる。しかしながら、Ptペレットを貼り付ける作業を行うためには、毎回真空装置を大気曝露する必要があるため、開発時間の短縮にはつながらない。
【0004】
これに対し、装置の真空曝露を必要とせずにターゲットや蒸着材料の組成調整を行うことができるスパッタリング方法として、複数のスパッタリングカソードを同時に放電させる多元同時スパッタリング法がある。特開2005−256112号公報には2元同時スパッタを行うため、それぞれ2つの穴があいた2枚のシャッターを重ねて配置した二重回転シャッターを用いた多元スパッタリング方法が開示されている。当該方法では、一方のシャッターで所望の2つのカソードを選択し、もう一方のシャッターで開閉操作することにより、プリスパッタ工程から本スパッタ工程へ移行して2元同時スパッタを行う。PtMn薄膜を成膜する場合であれば、PtターゲットとMnターゲットを用意し、それぞれのターゲットに投入するパワー比を変えることによって、薄膜の組成を調整することが可能になる。よって、組成の異なる薄膜の開発コスト、時間を大幅に短縮することができる。
【非特許文献1】日本応用磁気学会誌、1997年、第21巻、第4号、p.505−508
【特許文献2】特開2005−256112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特開2005−256112号公報に開示された方法では、一方のシャッター板をカソード選択シャッターとして固定し、他方を開閉動作用のシャッターとして使用するため、組み合わせが限定され、同時スパッタ可能な数が制約されていた。具体的には、5つのターゲットが配置されたスパッタリング装置においては、同時スパッタできるターゲットは2つであった。
【0006】
本発明の目的は、同時スパッタ数の多い多元スパッタリング装置およびその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、前記遮断装置が、前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段と、該第1及び第2の駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を少なくとも1つ有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有し、前記駆動制御手段は、前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、前記駆動制御手段は、スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする。
また、第2の態様は、真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、前記遮断装置が、前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段とを含み、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を複数有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有するスパッタリング装置の制御方法であって、前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させることで、ターゲットの組み合わせ自由度が増加し、同時スパッタ数を向上させることができる。よって、本発明のスパッタリング装置を用いることにより、半導体デバイスや電子デバイスの製造工程において、薄膜の組成調整や新規な薄膜材料の開発をより低コストで且つ短時間で行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のスパッタリング装置は真空チャンバー内に複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断しうる遮断装置を備えている。そして、係る遮断装置は、第1及び第2のシャッター板と、該2枚のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段と、該第1及び第2の駆動手段を制御する駆動制御手段と、を備えている。
【0010】
以下、本発明のスパッタリング装置について、実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明のスパッタリング装置の好ましい一実施形態のターゲット電極の配置状態を示す平面模式図であり、図2に、図1中のAOB断面に対応する断面模式図を示す。図中、E1乃至E5はターゲット電極、1は被処理基板、2は基板ステージ、4は真空チャンバー、5はターゲットホルダー、6はターゲット、7は第1のシャッター板、8は第2のシャッター板である。
【0012】
本発明のスパッタリング装置は、図1,2に示すように、被処理基板1が載置される基板ステージ2と、基板ステージ2の上方に配された複数のターゲット電極E1乃至E5とを備えている。
【0013】
真空チャンバー4には、真空排気用のドライポンプ及びクライオポンプと、Arガスなどの放電用ガスを導入するためのガスインレットとが接続されている(いずれも不図示)。基板ステージ2は、駆動装置(不図示)によりスパッタ工程中、基板1の被処理面の中心を通る法線Yを中心に基板1を載置した状態で回転する。尚、基板ステージ2の駆動装置としては、例えば、回転軸と固定子との間に磁性流体シールを介装したモータ等を用いる。
【0014】
ターゲット電極E1乃至E5はターゲット取り付け可能なターゲットホルダー5を備えた陰極である。ターゲット電極E1乃至E5は、それぞれがプラズマ発生のための直流電源に接続されており、独立に調整された電力がそれぞれ投入されることで、真空チャンバー4内に導入した放電用ガスからプラズマを発生させる。これにより、電力を投入したターゲット電極E1乃至E5に取り付けられたターゲット6がスパッタされる。尚、全てのターゲット電極E1乃至E5にターゲット6を取り付ける必要はなく、一部のターゲット電極にのみターゲット6を取り付け、スパッタすることができる。以下、ターゲット6を取り付けたターゲット電極の組み合わせを「ターゲット配置」という。
【0015】
また、複数のターゲット電極は、基板ステージ2の回転軸Yを中心とした同一円周上に等間隔に配置されている。本例ではターゲット電極はE1乃至E5の5個であるため、互いに72°の間隔を介して等間隔に配置されている。また、本例では、各ターゲット電極が基板1の中央を向くように傾斜されており、具体的にはターゲット電極のターゲット取り付け面の法線が、基板の被処理面の法線Yに対して30°傾いて配置されている。傾き角は2〜60°の範囲で設定され、好ましくは5〜50°であるが、図10に示すように、ターゲット電極が基板1に平行(=傾き角が0°)になるように配置することも可能である。
【0016】
本発明の一実施形態に係るスパッタリング装置は、それぞれ独立して回転可能な2枚のシャッター板7,8を備えており、プリスパッタ工程から本スパッタ工程に移行する際に、上記2枚のシャッター板7、8を独立して制御することにより該2枚のシャッター板7,8の位置を変えることを特徴とする。ここで、プリスパッタ工程とは、シャッター板で基板1とターゲット6の間を遮断したまま放電する状態をいい、本スパッタ工程とは、基板1とターゲット6の間を開放してスパッタリングする工程をいう。
【0017】
本発明に係る第1及び第2のシャッター板7,8は、複数のターゲット電極に対応する開口部を有し、少なくとも1個のターゲット電極と基板1との間を遮断する形状を有している。すなわち、第1及び第2のシャッター板は、少なくとも1つのターゲット電極を基板に開放させるための開口部を少なくとも1つ有している。本発明において、ターゲット電極の数は2n+1個(nは自然数)が好ましく、これに対して第1及び第2のシャッター板はそれぞれn+1個以上のターゲット電極に対応する開口部を有しており、当該装置で同時スパッタしうる最大ターゲット数はn+1である。
【0018】
本例のターゲット電極数は5であり、よって、第1及び第2のシャッター板7,8の開口部はそれぞれ3個もしくは4個のターゲット電極に対応する開口部を備えており、同時スパッタしうる最大ターゲット数は3個である。
【0019】
図3に遮断装置の概略構成を示す。本発明の一実施形態に係る遮断装置はスパッタリング用コントローラ13からの指示に従って、プリスパッタ工程で基板1とターゲット6の間を遮断し、本スパッタ工程で基板1とターゲット6との間を開放するものである。具体的には、第1及び第2のシャッター板7,8ならびに、第1及び第2のシャッター板7,8を独立に回転させる第1及び第2の駆動手段11及び12を備えている。さらに、第1及び第2のシャッター板7,8を所定角度になるように回転させ、各開口部を所定位置に位置するように、駆動手段11及び12を制御する駆動制御手段(コントローラ)10を備えている。
【0020】
第1及び第2のシャッター板7,8は、その板面をターゲット電極E1乃至E5に向けて互いに重ねて配置される。また、シャッター板7,8双方の回転軸は、基板ステージ2の回転中心である回転軸Yと同軸上に配される。
【0021】
図4A〜Cに、第1及び第2のシャッター板7,8の一例の平面図を示す。図中のhは貫通孔(開口部)である。本例のシャッター板は5個のターゲット電極を備えた装置に対応するものであり、同一円周上に一定の間隔を置いて3つの貫通孔hが形成されている。個々の貫通孔h7-1乃至h7-3、h8-1乃至h8-3は1個のターゲット電極よりも面積が広い。よって、第1及び第2のシャッター板7,8はそれぞれ、基板1とターゲット電極の間に配置されて、3個のターゲット電極と基板との間を開放し、2個のターゲット電極と基板との間を遮断する。第1及び第2のシャッター板7,8は互いに重ねて配置されるため、それぞれの貫通孔h7-1乃至h7-3、h8-1乃至h8-3の位置によって、基板1とターゲット電極間の開放、遮断が決定する。
すなわち、第1シャッター板7および第2シャッター板8はそれぞれ独立に回転させることができるので、プリスパッタや本スパッタといったスパッタ処理を行う際に、本発明のスパッタリング装置は、それぞれのシャッター板に形成された貫通孔h7-1乃至h7-3およびh8-1乃至h8-3の位置の組み合わせを、該組み合わせにより許容される範囲内で自由に選択することができる。従って、本スパッタ工程にて用いるターゲットの組み合わせの自由度を向上することができる。
【0022】
図4A乃至Cはそれぞれ、左から第2のシャッター板8,第1のシャッター板7,第2のシャッター板8を基板1側にして両者を重ねて基板1側から見た状態を示す。
【0023】
図4Aにおいて、第1のシャッター板7と第2のシャッター板8の貫通孔h7-1乃至7-3、h8-1乃至h8-3の位置は同じである。そのため、重ねた状態では貫通孔h7-1とh8-1、h7-2とh8-2、h7-3とh8-3がそれぞれ重なって、3個のターゲット電極と基板1との間が開放され、残りの2個のターゲット電極と基板1との間が遮断される。
【0024】
図4Bにおいては、第1のシャッター板7の貫通孔hの位置に対して、第2のシャッター板8を72°回転させて貫通孔1個分周方向にずらせている。そのため、2枚のシャッター板7,8を重ねた状態では、それぞれ2個の貫通孔h7-2とh8-1、h7-3とh8-2が互いに重なって、2個のターゲット電極と基板1との間が開放される。残りの3個のターゲット電極のうち、1個は第1及び第2のシャッター板7,8の両者によって遮断されるが、2個については、第1及び第2のシャッター板7,8のいずれかの貫通孔h7-1、h8-3が、他方によって塞がれることによって遮断される。
【0025】
さらに、図4Cにおいては、第1のシャッター板7の貫通孔hの位置に対して、第2のシャッター板8を144°回転させて貫通孔1個分周方向にずらせている。そのため、2枚のシャッター板7,8を重ねた状態では、それぞれの1個の貫通孔h7-3とh8-1のみが互いに重なって、1個のターゲット電極と基板1との間が開放される。残りの4個のターゲット電極と基板1との間は、第1のシャッター板7、第2のシャッター板8、第1及び第2のシャッター板7,8のいずれかによって遮断される。
【0026】
本発明においては、図4A〜Cのように第1のシャッター板7と第2のシャッター板8の回転位置によって開放されるターゲット電極と基板1の個数と位置を調整することができ、ターゲット配置に応じた位置を取ることにより、3元同時スパッタを行うことができる。
【0027】
第1及び第2の駆動手段11,12は、第1及び第2のシャッター板7,8をそれぞれ独立に駆動するモータ11b,12bと、シャッター板7,8の現在位置を検出するエンコーダ11c,12cを備えている。さらに駆動手段11,12は、エンコーダ11c,12cからの位置情報に基づいて、コントローラ10からそれぞれ入力される指示値にシャッター板7,8を駆動制御するドライバ11a,12aを備えている。尚、モータ11b,12bは、回転軸と固定子との間に磁性流体シールをそれぞれ介装している。
【0028】
コントローラ10は、スパッタリング用コントローラ13からのプリスパッタ工程又は本スパッタ工程への移行タイミングの指示に従い、ターゲット配置に応じた第1及び第2のシャッター板7,8の遮断又は開放位置を演算し、駆動手段11,12に出力する。コントローラ10は、例えば、CPU、RAM、ROM、クロックパルス発生回路、分周器等を含むマイクロコンピュータで構成し、プログラムの実行により上記機能を実現する。
【0029】
本例では、コントローラ10は、ターゲット配置ごとの遮断位置データ(遮断位置情報)と開放位置データ(開放位置情報)を規定するテーブル10bを備えている。さらにコントローラ10はテーブル10bからターゲット配置に応じたシャッター板7,8の遮断又は開放位置データを取得する位置情報取得部10aを備え、上述の演算を実行する。
本明細書において、「遮断位置データ(遮断位置情報)」は、スパッタ対象となるターゲットを基板に対して遮断する必要がある場合に(例えば、プリスパッタ工程時)、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8の少なくとも一方により上記スパッタ対象となるターゲットと基板との間を遮断するように、シャッター板に形成された貫通孔を位置させるためのデータ(情報)である。
なお、本発明では、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8の2つのシャッター板の配置の結果として、スパッタ対象となるターゲットと基板とを遮断することになる。よって、第1のシャッター板7(第2のシャッター板8)に送信される第1の遮断位置データ(第2の遮断位置データ)に従って第1のシャッター板7(第2のシャッター板8)を制御するだけでは、スパッタ対象となるターゲット全ての遮断がなされてない場合もある。しかしながら、このような場合でも本発明では、2つのシャッター板のそれぞれに専用の遮断位置データを送信して、2つのシャッター板の相互関係によりスパッタ対象となるターゲットの全てを基板から遮断するように2つのシャッター板を独立に制御しているので、2つのシャッター板の配置の結果として、上記遮断を実現することができる。
また、「開放位置データ(開放位置情報)」は、スパッタ対象となるターゲットを基板に対して開放する(露出させる)必要がある場合に(例えば、本スパッタ工程時)、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8に形成された貫通孔の双方を介して上記スパッタ対象となるターゲットを基板に対して開放するように、上記貫通孔を位置させるためのデータ(情報)である。
本発明では、2つのシャッター板の貫通孔の重なりの組み合わせを変化させることで、同時スパッタを行うターゲットの数を調節することができる。さらに、シャッター板の回転により貫通孔の位置を変化させることで、対象となるターゲットの位置に関わらず、所望のターゲットを基板に対して開放させることができる。本発明では、これら効果を奏するために、2つのシャッター板のそれぞれに専用の開放位置データを送信して、2つのシャッター板を独立に制御している。すなわち、第1の開放位置データにより回転制御されて位置した第1のシャッター板7と、第2の開放位置データにより回転制御されて位置した第2のシャッター板8との相互関係により、第1シャッター板7および第2シャッター板8のそれぞれの貫通孔の重なりを、適切な位置で適切な数だけ実現することができる。
本発明では、上述のように、テーブル10bでは、スパッタ対象となるターゲットの各配置毎に(例えば、スパッタ対象となるターゲットが、(E1、E2、E3)、(E3、E4、E5)、(E2、E4)・・・等毎に)、対応する遮断位置データ、および開放位置データが関連付けられている。よって、コントローラ10は、スパッタリング用コントローラ13から入力された、上記スパッタ対象となるターゲットの配置に関連するターゲット配置情報に基づいて、上記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に応じた遮断位置データ、および開放位置データを取得することができる。
なお、スパッタリング用コントローラ13は、不図示のキーボード、タッチパネル等の入力操作部を介してユーザが、スパッタ対象となるターゲットに関する情報を入力すると、該入力を受け付けて、スパッタ対象となるターゲットを示す情報(どのターゲットがスパッタ対象であるかを示す情報;ターゲット配置情報)を生成することができる。このターゲット配置情報には、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に関する情報を含めることができる。
【0030】
本発明におけるプリスパッタ工程及び本スパッタ工程の動作を図4乃至図7を用いて説明する。図5Aは基板1側から見たターゲット電極の概略平面図、図5B、Cは第1及び第2のシャッター板7,8を重ねて配置した状態を基板1側から見た平面模式図である。また、図6Aは図5BのAOB断面に対応する断面模式図、図6Bは図5CのAOB断面に対応する断面模式図である。図7は、プリスパッタ工程及び本スパッタ工程におけるターゲット電極E1乃至E5の電圧のオン・オフと第1及び第2のシャッター板7,8の開放位置及び遮断位置のタイミングチャートである。
【0031】
本例においては、ターゲット配置を同一円周上に連続して配置するターゲット電極E1,E2,E3とする。図5Aに示すように、ターゲット電極E1乃至E5は回転軸Yを中心とする同一円周上に72°ずつ、等間隔で配置している。
【0032】
プリスパッタ工程において、ターゲット電極E1,E2,E3には電力制御手段(不図示)によって調整された所定の電圧が印加される。従って、該ターゲット電極に取り付けられたスパッタ対象となるターゲット(以下、「対象ターゲット」という)6からの粒子が基板1に到達しないように、ターゲット電極E1,E2,E3に取り付けたターゲット6と基板1との間を遮断する必要がある。係るターゲット6と基板1との間を遮断する第1及び第2のシャッター板7,8の組み合わせは、図4B又はCのパターンであり、本例においては図4Bとする。
コントローラ10の位置情報取得部10aは、スパッタリング用コントローラ13からプリスパッタ工程移行のタイミング信号及びターゲット配置情報が入力されると、テーブル10bから当該ターゲット配置に対応する遮断位置データ〔図4B〕を取得する。すなわち、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h7-1乃至h7-3がターゲットE1〜E3に対して図4Bの真ん中の図のように配置されるように第1のシャッター板7を回転させるためのデータ(第1の遮断位置データ)を取得する。また、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h8-1乃至h8-3がターゲットE1〜E3に対して図4Bの左側の図のように配置されるように第2のシャッター板8を回転させるためのデータ(第2の遮断位置データ)を取得する。そして、コントローラ10は、第1および第2の遮断位置データを第1及び第2の駆動手段11,12にそれぞれ出力する。第1及び第2の駆動手段11,12は上記遮断位置データに対応する位置に第1及び第2のシャッター板7,8を回転させ、対象ターゲット6と基板1との間が第1及び第2のシャッター板7,8の少なくとも一方で遮断される。
このように、コントローラ10は、入力されたプリスパッタ信号に基づいてプリスパッタ工程を行うと判断し、入力されたターゲット配置情報に基づいて、テーブル10bを参照して、適切な第1の遮断位置データおよび第2の遮断位置データを取得する。ついで、コントローラ10は、取得された第1および第2の遮断位置データをそれぞれ第1および第2の駆動手段に送信して、第1および第2の駆動手段に遮断位置データに応じた回転制御を行わせる。
【0033】
尚、プリスパッタ工程において、第1及び第2のシャッター板7,8のそれぞれの貫通孔hが重なって、ターゲット電極E4,E5と基板1との間が開放される。そのため、係るターゲット電極E4,E5は電力制御手段によって電力供給をオフに制御される。
【0034】
上記したように、プリスパッタ工程においては対象ターゲット6と基板1との間を第1及び第2のシャッター板7,8で遮断した状態でターゲット電極E1,E2,E3に電圧を印加する。これにより、ターゲット電極E1,E2,E3に取り付けられた対象ターゲット6がスパッタされ、基板1にスパッタされた対象ターゲット6の粒子が付着することなく、ターゲット6表面の酸化膜等の除去を行うことができる。
【0035】
プリスパッタ工程が終了すると、本スパッタ工程に移行する。本スパッタ工程ではターゲット電極E1,E2,E3に取り付けられた対象ターゲット6と基板1との間を開放する必要がある。そのため、図4Aに示すパターンが開放位置データとしてテーブル10bから第1及び第2の駆動手段11,12に入力される。すなわち、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h7-1乃至h7-3がターゲットE1〜E3に対して図4Aの真ん中の図のように配置されるように第1のシャッター板7を回転させるためのデータ(第1の開放位置データ)を取得する。また、位置情報取得部10aは、ターゲット配置情報に基づいてテーブル10bを参照して、貫通孔h8-1乃至h8-3がターゲットE1〜E3に対して図4Aの左側の図のように配置されるように第2のシャッター板8を回転させるためのデータ(第2の開放位置データ)を取得する。そして、コントローラ10は、取得された第1および第2の開放位置データをそれぞれ第1および第2の駆動手段に出力する。第1及び第2の駆動手段11,12は上記開放位置データに対応する位置に第1及び第2のシャッター板7,8を回転させる。その結果、対象ターゲット6と基板1との間は、第1及び第2のシャッター板7,8の両方の貫通孔hが重なって開放され、ターゲット電極E1,E2,E3の対象ターゲット6においてスパッタされた粒子が基板1に到達し、3元同時スパッタが実行される。
このように、コントローラ10は、入力された本スパッタ信号に基づいて本スパッタ工程を行うと判断し、上記ターゲット配置情報に基づいて、テーブル10bを参照して、適切な第1の開放位置データおよび第2の開放位置データを取得する。ついで、コントローラ10は、取得された第1および第2の開放位置データをそれぞれ第1および第2の駆動手段に送信して、第1および第2の駆動手段に開放位置データに応じた回転制御を行わせる。すなわち、コントローラ10は、第1および第2の駆動手段に特有の開放位置データを送信して第1のシャッター板7および第2のシャッター板8をそれぞれ独立に回転させて、第1のシャッター板7の貫通孔および第2のシャッター板8の貫通孔の位置の組み合わせを制御する。このとき、本発明では、第1のシャッター板7および第2のシャッター板8は互いに制限無く回転させることができるので、コントローラ10は、上記位置の組み合わせを制御して、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を基板1に開放させることが可能となる。
このように、本発明では、コントローラ10は、スパッタ処理の際に、対象ターゲットの数および配置位置に応じて、該対象ターゲットの全てが基板に対して開放されるように第1のシャッター板7および第2のシャッター板8を回転制御する。すなわち、コントローラ10は、所望の対象ターゲットの配置に応じて、第1のシャッター板7に形成された貫通孔と第2のシャッター板8に形成された貫通孔とが重なる領域を介して対象ターゲットが基板に対して開放するように(上記重なる領域が対象ターゲットと対向するように)第1のシャッター板7と第2のシャッター板8との回転を独立に制御している。よって、対象ターゲットの数や配置位置にかかる制限を緩和し、対象ターゲットの組み合わせの自由度を向上することができる。
さらに、上述した特開2005−256112号公報では、プリスパッタ工程および本スパッタ工程において、2つのシャッター板のうち、カソード選択シャッターとして機能する一方のシャッター板を同じ位置に固定し、他方のシャッター板をプリスパッタ工程と本スパッタ工程との間で位置を変えている。すなわち、特開2005−256112号公報に開示された技術は、プリスパッタ工程および本スパッタ工程において、一方のシャッター板を所定の位置に固定し、他方のシャッター板のみで基板への開放を制御するものである。従って、上記一方のシャッター板を固定している分、2つのシャッター板の組み合わせが限定され、同時スパッタできるターゲットの数に制限があった。すなわち、特開2005−256112号公報に開示された技術では、プリスパッタ工程時の一方のシャッター板の位置が本スパッタ工程にも影響しており、該影響により2つのシャッター板の組み合わせが制限される。
しかしながら、本発明では、コントローラ10は、所望の対象ターゲットの数および配置に応じて、プリスパッタ工程における2つのシャッター板の回転と、本スパッタ工程における2つのシャッター板の回転とを互いに独立に制御している。よって、本スパッタ工程における2つのシャッター板の位置を、プリスパッタ工程時の2つのシャッター板の位置に関係なく決めることができるので、2つのシャッター板の組み合わせにかかる制限が軽減される。従って、同時スパッタできる対象ターゲットの数の自由度を向上することができる。
【0036】
尚、本スパッタ工程において、ターゲット電極E4,E5と基板1との間は第1及び第2のシャッター板7,8によって遮断されている。従って、ターゲット電極E4,E5にターゲット6が取り付けられ、ターゲット電極E4,E5に電圧が印加されていてもターゲット電極E4,E5に取り付けられたターゲット6からのスパッタ粒子は基板1には到達しない。しかしながら、スパッタ対象でないターゲット(非対象ターゲット)6からのスパッタ粒子の混在を防止する上で、不要なターゲット電極E4,E5は電力供給をオフとすることが望ましい。
【0037】
本スパッタ工程を終了する際には、第1及び第2のシャッター板7,8を対象ターゲット6と基板1との間を遮断する位置に戻すことで物理的にターゲット6からの粒子を遮断し、同時に、ターゲット電極E1,E2,E3の電源をオフとする。
【0038】
上記プリスパッタ工程と本スパッタ工程を繰り返すことにより、複数層の成膜を行うことができる。尚、タイミングチャートは図7に示すものに限定されず、例えば、図14に示すように、プリスパッタ工程から本スパッタ工程に移行する期間(t2乃至t3)で、ターゲット電極E1乃至E3を電源オフとしてもよい。これにより、より精密に膜厚のコントロールができる。
【0039】
以上、5元スパッタリング装置において、3元同時スパッタを行う場合について説明したが、本例のスパッタリング装置においては、3元同時スパッタを行う前或いは後に2元同時スパッタ或いは単元スパッタを行うこともできる。具体的には、プリスパッタ工程において、第1及び第2のシャッター板7,8の貫通孔hが重ならない位置とターゲット配置とを対応させる。また、本スパッタ工程においては、第1及び第2のシャッター板7,8の貫通孔hが重なった位置を対象ターゲットの位置に対応させればよい。図8A〜Cは、ターゲット電極E2のみをターゲット配置として単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板7,8の位置関係を基板1側から見た平面模式図である。図8Aは基板1側から見たターゲット電極の概略平面図、図8B、Cは第1及び第2のシャッター板7,8を重ねて配置した状態を基板1側から見た概略平面図であり、図8Bはプリスパッタ工程、図8Cは本スパッタ工程である。本例では、本スパッタ工程においてターゲット電極E2に取り付けた対象ターゲット6と基板1との間のみ開放するため、第1及び第2のシャッター板7,8の組み合わせとして図4Cのパターンを用いる。
【0040】
尚、上記実施形態においては、シャッター板7,8の形状として、ターゲット電極よりも大きい円形の貫通孔をターゲット電極に対応して複数個設けて開口部とした例を示したが、本発明においてはこれに限定されるものではない。例えば、図9A〜Cは、上記実施形態のシャッター板7,8の貫通孔h7、h8をそれぞれ連続させて3個のターゲット電極が同時に露出する形状とした例である。図9A乃至Cはそれぞれ、左から第2のシャッター板8,第1のシャッター板7,第2のシャッター板8を基板1側にして両者を重ねて基板1側から見た状態を示す。図9Aは3個のターゲット電極に対して基板1との間が開放となり、2個のターゲット電極に対して基板1との間が遮断となる。図9Bは2個のターゲット電極に対して基板1との間が開放となり、3個のターゲット電極に対して基板1との間が遮断となる。図9Aは1個のターゲット電極に対して基板1との間が開放となり、2個のターゲット電極に対して基板1との間が遮断となる。よって、図9A乃至Cのパターンを適宜選択することにより、単元スパッタ乃至3元同時スパッタを同じ装置で行うことができる。
【0041】
また、上記実施形態では、図1に示すようにターゲット電極E1乃至E5が基板ステージ2に対して平行でなく、傾けて配置されているスパッタリング装置を用いているが、本発明はこれに限定されない。例えば、図10に示すように、ターゲット電極E1乃至E5と基板ステージ2が平行に配置されたスパッタリング装置を用いてもよい。
【0042】
さらに、図11A〜Cは本発明に用いられるシャッター板7,8の他の形状例を示す概略平面図である。図11Aはターゲット電極2個分の遮断領域を扇形とした例である。図11Bはターゲット電極より広い円形の遮断領域を支持軸で連結して柄杓形とした例である。図11Cは図4に例示したシャッター板7,8の貫通孔とシャッター板外周との間を切り欠いた形状である。また、図12は、遮断領域を花弁形とした例である。
【0043】
尚、本発明においては、シャッター板7,8の形状を同じにする必要はなく、また、開口部に対応するターゲット電極の個数を互いに変えても構わない。例えば、5元スパッタリング装置において3元同時スパッタを行う場合、一方のシャッター板の遮断領域が2個のターゲット電極に対応し、他方のシャッター板の遮断領域が1個のターゲット電極に対応する形状であればよい。図13A、Bは、第1のシャッター板7の貫通孔をh7-1乃至h7-4の4個とした例であり、左から第2のシャッター板8,第1のシャッター板7,第2のシャッター板8を基板1側にして両者を重ねて基板1側から見た状態を示す。
【0044】
図13Aにおいて、第1のシャッター板7と第2のシャッター板8のそれぞれ3個の貫通孔h7-1乃至h7-3、h8-1乃至h8-3の位置が重なり、3個のターゲット電極と基板1との間を開放することができる。
【0045】
図13Bにおいては、図13Aの状態から第1のシャッター板7の貫通孔hの位置を反時計回りに72°回転させて貫通孔1個分周方向にずらせている。そのため、2枚のシャッター板7,8を重ねた状態では、それぞれ2個の貫通孔h7-3とh8-1、h7-4とh8-2が互いに重なって、2個のターゲット電極と基板1との間が開放され、3個のターゲット電極と基板1との間を遮断することができる。よって、3元同時スパッタを行う際には、図13Bのパターンでプリスパッタ工程を行い、図13Aのパターンで本スパッタ工程を行えばよい。
(実施例)
【0046】
図1に示したスパッタリング装置を用い、Fe、Co、Niの各プレートからなる磁性ターゲット6を用いた3元同時スパッタを行い、種々のFeCoNi合金薄膜を作製した。
【0047】
本例では、先ず、基板ステージ2の上に直径300mmの熱酸化膜付Si基板1を配置した。ターゲット電極E1乃至E5は直径180mmのものを配置し、直径180mmの円板状のターゲット6を取り付けた。本例では、E1,E2,E3にそれぞれFe,Co,Niのターゲット6を取り付けた。
【0048】
先ず、ドライポンプ(不図示)を用いて真空チャンバー4内を粗引きし、その後、クライオポンプ(不図示)に切り替えて7×10-7Paの超高真空域まで排気した。その後、Arガスを圧力が0.03Paになるまで導入し、第1及び第2のシャッター板7,8を遮断位置に配置した。具体的には、図4Bの組み合わせで図5Bに示すように配置した。即ち、第1のシャッター板7の貫通孔h7-1乃至h7-3がターゲット電極E1,E4,E5の対向位置にくるように、第2のシャッター板8の貫通孔h8-1乃至h8-3がターゲット電極E3,E4,E5の対向位置にくるように、それぞれを回転させる。このシャッター配置では、ターゲット6を取り付けたターゲット電極E1,E2,E3が露出されない。この状態で、ターゲット6を取り付けたターゲット電極E1,E2,E3にのみDC電力を投入することによって放電を開始し、プリスパッタ工程を開始した。このプリスパッタ工程を1分間維持し、ターゲット6表面に付着した不純物を除去した。
【0049】
次いで、第1及び第2のシャッター板7,8を回転させて、図4Aに示す組み合わせで図5Cに示すように配置して、ターゲット6と基板1との間を開放した。具体的には、遮断位置から、第1のシャッター板7を紙面において反時計回りに144°、第2のシャッター板8を時計回りに144°、それぞれ回転させる。これにより、放電が発生しているターゲット電極E1,E2,E3に取り付けたターゲット6を露出させ、本スパッタ工程を開始する。
【0050】
上記のようにして、真空チャンバー4下部の基板ステージ2上で回転しているSi基板1にFeCoNi合金薄膜を形成することができた。本例では、Fe,Co,Ni原子の1W、1sec当たりの付着レートはそれぞれ0.000156nm/(W・sec)、0.000191nm/(W・sec)、0.000239nm/(W・sec)であった。このため、各ターゲット電極E1,E2,E3に投入する電力の比を変えることによって、得られるFeCoNi合金薄膜の組成を調整することができ、露出時間(=成膜時間)を変えることによって、得られるFeCoNi合金薄膜の膜厚を調整することができる。表1に、投入した電力と得られたFeCoNi合金薄膜の組成及び膜厚を示す。
【表1】
【0051】
(その他の実施形態)
本発明は、上記コントローラ10をスパッタリング装置に内蔵しても良いし、上記コントローラ10の処理を該スパッタリング装置とは別の装置で行っても良い。コントローラ10での処理をスパッタリング装置とは別個の装置で行う場合は、コントローラ10を、例えばコンピュータ、インターフェース機器といった情報処理装置に適用すれば良い。この場合は、情報処理装置とスパッタリング装置とを有線または無線により接続し、本発明に特徴的な情報(例えば、開放位置データ、遮断位置データなど)を、上記接続を介して情報処理装置からスパッタリング装置に入力すれば良い。
前述した実施形態の機能を実現するように前述した実施形態の構成を動作させるプログラムを記憶媒体に記憶させ、該記憶媒体に記憶されたプログラムをコードとして読み出し、コンピュータにおいて実行する処理方法も上述の実施形態の範疇に含まれる。即ちコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も実施例の範囲に含まれる。また、前述のコンピュータプログラムが記憶された記憶媒体はもちろんそのコンピュータプログラム自体も上述の実施形態に含まれる。
かかる記憶媒体としてはたとえばフロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD―ROM、磁気テープ、不揮発性メモリカード、ROMを用いることができる。
また前述の記憶媒体に記憶されたプログラム単体で処理を実行しているものに限らず、他のソフトウエア、拡張ボードの機能と共同して、OS上で動作し前述の実施形態の動作を実行するものも前述した実施形態の範疇に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のスパッタリング装置の好ましい一実施形態のターゲット電極の配置状態を示す平面模式図である。
【図2】図1のAOB断面に対応する断面模式図である。
【図3】本発明のスパッタリング装置の遮断装置の概略構成図である。
【図4A】本発明に係る第1及び第2のシャッター板とこれらを重ねた状態の平面模式図である。
【図4B】本発明に係る第1及び第2のシャッター板とこれらを重ねた状態の平面模式図である。
【図4C】本発明に係る第1及び第2のシャッター板とこれらを重ねた状態の平面模式図である。
【図5A】本発明に係るターゲット電極及びターゲット電極に第1及び第2のシャッター板を配置した状態の平面模式図である。
【図5B】本発明に係るターゲット電極及びターゲット電極に第1及び第2のシャッター板を配置した状態の平面模式図である。
【図5C】本発明に係るターゲット電極及びターゲット電極に第1及び第2のシャッター板を配置した状態の平面模式図である。
【図6A】図5BのAOB断面に対応する断面模式図である。
【図6B】図5CのAOB断面に対応する断面模式図である。
【図7】プリスパッタ工程及び本スパッタ工程におけるターゲット電極の電圧のオン・オフと第1及び第2のシャッター板の開放位置及び遮断位置のタイミングチャートである。
【図8A】本発明において単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板の位置関係の平面模式図である。
【図8B】本発明において単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板の位置関係の平面模式図である。
【図8C】本発明において単元スパッタを行う場合のターゲット電極と第1及び第2のシャッター板の位置関係の平面模式図である。
【図9A】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図9B】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図9C】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図10】本発明のスパッタリング装置の他の実施形態の断面模式図である。
【図11A】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図11B】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図11C】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図12】本発明に係るシャッター板の形状例を示す平面模式図である。
【図13A】本発明に係るシャッター板の貫通孔の個数を変えた例を示す平面模式図である。
【図13B】本発明に係るシャッター板の貫通孔の個数を変えた例を示す平面模式図である。
【図14】本発明に係る他のタイミングチャートの例である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、
前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、
前記遮断装置が、
前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、
該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段と、
該第1及び第2の駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、
前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を少なくとも1つ有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有し、
前記駆動制御手段は、前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、
前記駆動制御手段は、スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報を関連付けたテーブルをさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得すると、前記テーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信し、
前記第1および第2の駆動手段が受信した開放位置情報に基づいて前記第1のシャッター板および第2のシャッター板を独立に回転させることにより、前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記スパッタ処理および前記スパッタ処理の前に行われる、シャッター板で前記被処理基板と前記スパッタ対象となるターゲットとの間を遮断したまま放電するプリスパッタ処理に対して互いに独立して、前記第1および第2の遮断手段を制御し、
前記プリスパッタ処理において前記第1及び第2のシャッター板をそれぞれ回転させて前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報、および前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の少なくとも一方により前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように前記開口部を位置させるための遮断位置情報を関連付けたテーブルをさらに備え、
前記駆動制御手段は、
前記スパッタ処理の際には、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得すると、前記テーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信し、
前記プリスパッタ処理の際には、前記ターゲット配置情報を取得すると、前記テーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた遮断位置情報を取得して、該遮断位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信し、
前記第1および第2の駆動手段が受信した開放位置情報に基づいて前記第1のシャッター板および第2のシャッター板を独立に回転させることにより、前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放され、
前記第1および第2の駆動手段が受信した遮断位置情報に基づいて前記第1のシャッター板および第2のシャッター板を独立に回転させることにより、前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間が遮断されることを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記ターゲット電極が2n+1個(nは自然数)であり、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、n+1個以上のターゲット電極に対応する開口部を有していることを特徴とする請求項に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
非対象ターゲットに対応する前記ターゲット電極への電力供給をオフにする電力制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
被処理基板を載置して回転可能な基板ステージをさらに備え、
前記ターゲット電極が前記基板ステージの回転中心を中心とする同一円周上に配置され、前記ターゲット電極の各々のターゲット取り付け面の法線が、前記被処理基板の被処理面の法線に対して傾いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、前記遮断装置が、前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段とを含み、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を複数有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有するスパッタリング装置の制御方法であって、
前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、
スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得する工程と、
前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報を関連付けたテーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信する工程と
を有することを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記スパッタ処理の前に、シャッター板で前記被処理基板と前記スパッタ対象となるターゲットとの間を遮断したまま放電するプリスパッタ処理を行うように前記スパッタリング装置を制御する工程をさらに有し、
前記スパッタ処理および前記プリスパッタ処理に対して互いに独立して、前記第1および第2の遮断手段を制御し、
前記プリスパッタ処理において、前記第1及び第2のシャッター板をそれぞれ回転させて前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項11】
前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得する工程と、
前記プリスパッタ処理の際には、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の少なくとも一方により前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように前記開口部を位置させるための遮断位置情報を関連付けたテーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた遮断位置情報を取得して、該遮断位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信する工程と、
前記スパッタ処理の際には、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報を関連付けたテーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信する工程と
を有することを特徴とする請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項8に記載の制御方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータにより読み出し可能なプログラムを格納した記憶媒体であって、請求項12に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。
【請求項1】
真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、
前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、
前記遮断装置が、
前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、
該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段と、
該第1及び第2の駆動手段を制御する駆動制御手段とを備え、
前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を少なくとも1つ有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有し、
前記駆動制御手段は、前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、
前記駆動制御手段は、スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とするスパッタリング装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報を関連付けたテーブルをさらに備え、
前記駆動制御手段は、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得すると、前記テーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信し、
前記第1および第2の駆動手段が受信した開放位置情報に基づいて前記第1のシャッター板および第2のシャッター板を独立に回転させることにより、前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項3】
前記駆動制御手段は、前記スパッタ処理および前記スパッタ処理の前に行われる、シャッター板で前記被処理基板と前記スパッタ対象となるターゲットとの間を遮断したまま放電するプリスパッタ処理に対して互いに独立して、前記第1および第2の遮断手段を制御し、
前記プリスパッタ処理において前記第1及び第2のシャッター板をそれぞれ回転させて前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項4】
前記駆動制御手段は、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報、および前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の少なくとも一方により前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように前記開口部を位置させるための遮断位置情報を関連付けたテーブルをさらに備え、
前記駆動制御手段は、
前記スパッタ処理の際には、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得すると、前記テーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信し、
前記プリスパッタ処理の際には、前記ターゲット配置情報を取得すると、前記テーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた遮断位置情報を取得して、該遮断位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信し、
前記第1および第2の駆動手段が受信した開放位置情報に基づいて前記第1のシャッター板および第2のシャッター板を独立に回転させることにより、前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放され、
前記第1および第2の駆動手段が受信した遮断位置情報に基づいて前記第1のシャッター板および第2のシャッター板を独立に回転させることにより、前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間が遮断されることを特徴とする請求項3に記載のスパッタリング装置。
【請求項5】
前記ターゲット電極が2n+1個(nは自然数)であり、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、n+1個以上のターゲット電極に対応する開口部を有していることを特徴とする請求項に記載のスパッタリング装置。
【請求項6】
非対象ターゲットに対応する前記ターゲット電極への電力供給をオフにする電力制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項7】
被処理基板を載置して回転可能な基板ステージをさらに備え、
前記ターゲット電極が前記基板ステージの回転中心を中心とする同一円周上に配置され、前記ターゲット電極の各々のターゲット取り付け面の法線が、前記被処理基板の被処理面の法線に対して傾いて配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
【請求項8】
真空チャンバー内に、ターゲットを取付け可能な複数のターゲット電極と、該ターゲット電極と被処理基板との間を遮断し得る遮断装置とを備えたスパッタリング装置であって、前記複数のターゲット電極が、前記被処理基板の被処理面の中心を通る法線を中心とする同一円周上に配置され、前記遮断装置が、前記複数のターゲット電極が配置する同一円周の中心を回転中心として回転し互いに重なり合う第1及び第2のシャッター板と、該第1及び第2のシャッター板をそれぞれ独立に回転させる第1及び第2の駆動手段とを含み、前記第1及び第2のシャッター板がそれぞれ、少なくとも1つのターゲット電極を前記被処理基板に開放させるための開口部を複数有し、少なくとも1個のターゲット電極と前記被処理基板との間を遮断する形状を有するスパッタリング装置の制御方法であって、
前記第1および第2の駆動手段を制御して前記第1及び第2のシャッター板を独立に回転させ、前記第1のシャッター板および前記第2のシャッター板の開口部の位置の組み合わせにより、該組み合わせにより許容される数のうちの任意の数のターゲット電極を前記被処理基板に開放させることが可能であり、
スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を開放してスパッタリングを行うスパッタ処理の際に、スパッタ対象となるターゲットの数および配置に応じて、前記第1のシャッター板の開口部と前記第2のシャッター板の開口部とが重なる領域を介して前記スパッタ対象となるターゲットが前記被処理基板に対して開放されるようにして前記スパッタ対象となるターゲットの全てが前記被処理基板に対して開放されるように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする制御方法。
【請求項9】
前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得する工程と、
前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報を関連付けたテーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信する工程と
を有することを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記スパッタ処理の前に、シャッター板で前記被処理基板と前記スパッタ対象となるターゲットとの間を遮断したまま放電するプリスパッタ処理を行うように前記スパッタリング装置を制御する工程をさらに有し、
前記スパッタ処理および前記プリスパッタ処理に対して互いに独立して、前記第1および第2の遮断手段を制御し、
前記プリスパッタ処理において、前記第1及び第2のシャッター板をそれぞれ回転させて前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように、前記第1及び第2の駆動手段を制御して、前記第1及び第2シャッター板を独立に回転させることを特徴とする請求項8に記載の制御方法。
【請求項11】
前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置に関するターゲット配置情報を取得する工程と、
前記プリスパッタ処理の際には、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の少なくとも一方により前記スパッタ対象となるターゲットと前記被処理基板との間を遮断するように前記開口部を位置させるための遮断位置情報を関連付けたテーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた遮断位置情報を取得して、該遮断位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信する工程と、
前記スパッタ処理の際には、前記スパッタ対象となるターゲットの配置位置毎に、前記第1のシャッター板および第2のシャッター板の開口部の双方を介して前記スパッタ対象となるターゲットを前記被処理基板に対して開放するように前記開口部を位置させるための開放位置情報を関連付けたテーブルを参照して、前記ターゲット配置情報に応じた開放位置情報を取得して、該開放位置情報を前記第1および第2の駆動手段に送信する工程と
を有することを特徴とする請求項10に記載の制御方法。
【請求項12】
コンピュータに請求項8に記載の制御方法を実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項13】
コンピュータにより読み出し可能なプログラムを格納した記憶媒体であって、請求項12に記載のコンピュータプログラムを格納したことを特徴とする記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図14】
【公開番号】特開2009−221595(P2009−221595A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320752(P2008−320752)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000227294)キヤノンアネルバ株式会社 (564)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]