説明

スピードスプレーヤの制御装置

【課題】 薬液タンクに収容した薬液のレベルが大きく変動して不安定な状態であっても、薬液が無くなったことを正確かつ安定して検出し、薬液の有無に対する誤検出、更にはこれに伴う誤動作を回避する。
【解決手段】 薬液タンク2に収容した薬液Lの残量が低下したことを検出する薬液残量検出手段Fdと、残量が所定レベル以下に低下したなら、残量が低下したことに伴う所定の対応処理を行う制御手段Fcを備えるスピードスプレーヤMの制御装置1を構成するに際して、薬液タンク2とこの薬液タンク2の薬液Lを送出する噴霧ポンプ3間を接続する送液管4に流れる薬液Lの有無を検出する薬液センサ5を用いた薬液残量検出手段Fdと、この薬液センサ5の無検出の時間が予め設定した所定時間Ts以上のときに所定の対応処理を行う制御手段Fcを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液タンクに収容した薬液の残量が低下したことを検出して所定の対応処理を行う際に用いて好適なスピードスプレーヤの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、果樹園等の圃場に薬液を噴霧する自走式のスピードスプレーヤは知られている。この種のスピードスプレーヤは、薬液タンクを搭載し、この薬液タンクに収容した薬液を噴霧ポンプにより送出するとともに、送出した薬液を複数の噴射ノズルから噴射し、噴射した薬液を送風ファンにより放射方向の所定範囲に噴霧する動作を行う。このような動作を行うため、薬液が無い状態での噴霧ポンプの空運転は、噴霧ポンプにとって避けなければならない故障原因の一つとなり、薬液タンクに収容した薬液残量の監視は、スピードスプレーヤにとって重要な監視項目の一つとなる。
【0003】
従来、薬液タンクに収容した薬液の残量が低下したことを検出して所定の処理を行う制御装置を搭載したスピードスプレーヤとしては、特開平5−137490号公報で開示される自動走行型薬剤散布機が知られている。この自動走行型薬剤散布機は、薬液タンクの薬液残量検出用センサを設け、薬液残量が散布不能な最下限の警報モード残量と注意モード残量とを設定し、薬液残量検出用センサによる注意モード残量の検出で動噴クラッチをオフし、走行停止系作動部を停止する一方、無線遠隔操作部からの指令で注意モード残量と警報モード残量との範囲内で動噴クラッチをオンとした走行制御を可能とし、かつ所定の目安位置で動噴クラッチをオフ制御可能としたものである。
【特許文献1】特開平5−137490号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の制御装置(自動走行型薬剤散布機)は、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、薬液タンクに収容された薬液のレベルを直接検出するため、検出が不安定となり正確な検出を行いにくい。即ち、スピードスプレーヤは、凹凸地面や傾斜地面を走行することが多いため、薬液タンク内における薬液のレベルが正規のレベルに対して大きく変動し、薬液のレベルを直接検出する従来の手段では、誤検出(誤動作)を招きやすい。
【0006】
第二に、薬液が無くなった場合の対応処理として、運転席に配したブザー等により警告が行われる場合もあるが、運転に集中していたり騒音の大きい環境下では、作業者(運転者)が警告に気付かずに過ぎてしまうこともあり、薬液が無くなった場合の対応処理としては不十分となる。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したスピードスプレーヤの制御装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、少なくとも、薬液タンク2に収容した薬液Lの残量が低下したことを検出する薬液残量検出手段Fdと、残量が所定レベル以下に低下したなら、残量が低下したことに伴う所定の対応処理を行う制御手段Fcを備えるスピードスプレーヤMの制御装置1を構成するに際して、薬液タンク2とこの薬液タンク2の薬液Lを送出する噴霧ポンプ3間を接続する送液管4に流れる薬液Lの有無を検出する薬液センサ5を用いた薬液残量検出手段Fdと、この薬液センサ5による薬液無の検出時間が予め設定した所定時間Ts以上のときに所定の対応処理を行う制御手段Fcを備えることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、薬液センサ5は、送液管4の外周面4sに付設する静電容量形センサ5cを用いることができる。一方、所定の対応処理には、少なくとも、噴霧ポンプ3及びこの噴霧ポンプ3により送出した薬液Lを飛散させる送風ファン6を自動で停止させる制御処理を含ませることができる。また、所定の対応処理には、噴霧ポンプ3をON/OFFする手動によるポンプスイッチ11及びこの噴霧ポンプ3により送出した薬液Lを飛散させる送風ファン6をON/OFFする手動によるファンスイッチ12の双方がONであることを条件として薬液センサ5による検出を有効にする制御処理、或いはポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がOFFであることを条件としてイグニッションキー13のONを有効にする制御処理、を含ませることができる。なお、制御手段Fcには、薬液タンク2に収容した薬液Lのレベルを直接検出するレベル検出手段Fdsの検出結果と組合わせた制御を行う制御機能を設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係るスピードスプレーヤMの制御装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 薬液タンク2と噴霧ポンプ3間を接続する送液管4に流れる薬液Lの有無を検出する薬液センサ5を用いた薬液残量検出手段Fdと、この薬液センサ5による薬液無の検出時間が予め設定した所定時間Ts以上のときに所定の対応処理を行う制御手段Fcを備えるため、スピードスプレーヤMに搭載する薬液タンク2に収容した薬液Lのレベルが正規のレベルに対して大きく変動して不安定な状態であっても、薬液Lが無くなったことを正確かつ安定して検出することができ、薬液Lの有無に係わる誤検出、更にはこれに伴う誤動作を回避できる。
【0012】
(2) 好適な態様により、薬液センサ5に、送液管4の外周面4sに付設する静電容量形センサ5cを用いれば、薬液Lに影響されない非接触状態に取付けることができるとともに、容易に組付けることができ、既存のスピードスプレーヤにも容易に後付けすることができる。
【0013】
(3) 好適な態様により、所定の対応処理として、少なくとも、噴霧ポンプ3及び送風ファン6を自動で停止させる制御処理を行うようにすれば、ブザー等による警告手段の難点、即ち、運転に集中していたり騒音の大きい環境下で作業者(運転者)が警告に気付かずに過ぎてしまう難点を排除し、薬液Lが無くなった状態での噴霧ポンプ3の空運転を確実に回避できる。
【0014】
(4) 好適な態様により、所定の対応処理として、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がONであることを条件として薬液センサ5による検出を有効にする制御処理を行うようにすれば、例えば、ポンプスイッチ11のみをONにして薬液タンク2や送液管4等の洗浄や水抜きを行う際に、薬液センサ5による薬液無の検出によって噴霧ポンプ3が自動で停止してしまう不具合を回避できる。
【0015】
(5) 好適な態様により、所定の対応処理として、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がOFFであることを条件としてイグニッションキー13のONを有効にする制御処理を行うようにすれば、ポンプスイッチ11,ファンスイッチ12の一方又は双方がONの状態、即ち、トランスミッションやクラッチ等が接続された状態でエンジンが始動する不具合を回避し、トランスミッションやクラッチ等の保護を図ることができる。
【0016】
(6) 好適な態様により、制御手段Fcに、薬液タンク2に収容した薬液Lのレベルを直接検出するレベル検出手段Fdsの検出結果と組合わせた制御を行う制御機能を設ければ、例えば、レベル検出手段Fdsの検出結果により予備警報を出したり、レベル検出手段Fdsの検出結果と薬液センサ5の検出結果を併せて判定できるなど、制御手段Fcの多機能性及び信頼性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
まず、本発明の理解を容易にするため、本実施形態に係る制御装置1を備えるスピードスプレーヤMの概略構成について、図1〜図3を参照して説明する。
【0019】
図2に示すスピードスプレーヤMの外観構成において、20はシャーシであり、このシャーシ20の前側に、左右一対の前輪21…を備えるとともに、後側に、左右一対の後輪22…を備え、搭載するエンジン23(図3参照)により自走する。また、シャーシ20上のボディ24には、前部に運転席25を備えるとともに、運転席25の前方におけるフロントパネル26には、ヘッドライト等のライト類やバックミラー等の必要な車両装置を備える。さらに、運転席25の後方には、薬液タンク2を搭載するとともに、この薬液タンク2の後方に薬液噴霧機構27を配設する。薬液噴霧機構27は、ボディ24の後端に、風洞カバー28に覆われた送風ファン6(図3参照)を有する送風部29を備え、この送風部29と薬液タンク2の間には噴射空間Sを有する。そして、この噴射空間Sに、整流筒30及びこの整流筒30に沿った多数の噴射ノズルN…を配する。これにより、薬液タンク2に収容された薬液Lは、後述する噴霧ポンプ3により送出され、各噴射ノズルN…から噴射されるとともに、噴射される薬液Lは、送風ファン6(送風部29)からの送風によって噴射空間Sから放射方向の所定範囲に噴霧飛散される。その他、図2中、31は給水ホース、32はドライバシート、33はステアリングハンドルを示す。
【0020】
図1は、薬液タンク2及び薬液噴霧機構27の一部を含む薬液回路Cを示す。薬液タンク2の底面には薬液出口2oを有し、この薬液出口2oは、第一送液管4a及びポンプ元バルブ36を介してポンプ元ストレーナ37に接続するとともに、このポンプ元ストレーナ37は、第二送液管4bを介して、薬液タンク2の薬液Lを送出する噴霧ポンプ3の吸入口に接続する。第一送液管4aと第二送液管4bは送液管4を構成する。そして、噴霧ポンプ3には、電磁クラッチ38及び回転伝達機構39を介してエンジン23の回転出力が伝達される。また、噴霧ポンプ3の吐出口(第一吐出口)は、送液管回路40を介して噴射ノズルN…に接続する。送液管回路40において、41は調圧弁、42は三方コック、43は圧力計、44…は散布切換コックをそれぞれ示す。さらに、噴霧ポンプ3の第二吐出口は、開閉バルブ45を介して手動噴霧ホース46に接続する。47は手動噴霧ホース46の巻取器を示す。48は給水系であり、31は前述した給水ホース、49は給水ストレーナ、50は給水ポンプをそれぞれ示す。
【0021】
一方、図3には、スピードスプレーヤMの主要部の模式的レイアウト構造を示す。エンジン23にはトランスミッション55を接続する。このトランスミッション55の回転出力は、後輪側の回転伝達系56を介して後輪22…に伝達される。他方、エンジン23の回転出力は、ファンクラッチ57及び伝達シャフト58を介して送風ファン6に伝達されるとともに、前述した電磁クラッチ38を介して噴霧ポンプ3側に伝達される。また、エンジン23の近傍には、エンジン23をアイドル運転させるためのソレノイド59を配設する。さらに、運転席25には、噴霧ポンプ3(電磁クラッチ38)をON/OFFする手動によるポンプスイッチ11,送風ファン6(ファンクラッチ57)をON/OFFする手動によるファンスイッチ12及びイグニッションキー13を備える。33は前輪21…を操舵する前述したステアリングハンドルを示す。なお、図3において、図2と同一部分には同一符号を付してその構成を明確化した。
【0022】
次に、本実施形態に係る制御装置1の構成について、図1〜図5を参照して具体的に説明する。
【0023】
制御装置1は、図1及び図4に示す制御部60を備える。制御部60は、マイクロコンピュータ及びメモリ等のハードウェアによるコンピューティング機能を備え、格納した処理プログラムにより各種のシーケンス制御をはじめ、本実施形態に係る制御装置1の制御処理を行うことができるなど、制御全体の中枢を司る。
【0024】
制御部60における出力ポートは、前述した電磁クラッチ38及びソレノイド59に接続するとともに、アクチュエータ61を介してファンクラッチ57に接続する。また、制御部60の出力ポートは、リレー62を介してセルモータ63に接続する。他方、制御部60の入力ポートには、前述したポンプスイッチ11及びファンスイッチ12を接続する。ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12は、それぞれスイッチランプ11L及び12Lを一体に備えており、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12をそれぞれONにしたときに点灯し、OFFにしたときに消灯する。さらに、このスイッチランプ11L及び12Lは、警告灯(アラームランプ)を兼用し、後述するように薬液センサ5により薬液タンク2に薬液Lが無いことを検出したなら間歇点灯(点滅)する。キースイッチ(イグニッションキー)13は、制御部60及びリレー62に接続する。
【0025】
また、制御部60の入力ポートには、薬液センサ5を接続する。薬液センサ5は、薬液タンク2に収容した薬液Lの残量が低下したことを検出する薬液残量検出手段Fdを構成するものであり、本実施形態では、静電容量形センサ5cを使用し、図5に示すように、薬液タンク2と噴霧ポンプ3間に接続する送液管4の外周面4sに付設する。静電容量形センサ5cを外周面4sに付設する際は、図5に示すように、一対の取付ブラケット81,82を静電容量形センサ5cに取付け、各取付ブラケット81,82に設けたバンド81b,82bを送液管4の外周面4sに巻付けて取付ける。静電容量形センサ5cは、送液管4内を流れる薬液Lの有無により変化する誘電率に基づいて薬液Lの有無を検出することができ、取付場所に応じて検出感度を調整できる。薬液センサ5に、このような静電容量形センサ5cを用いることにより、薬液Lに影響されない非接触状態に取付けることができるとともに、容易に組付けることができ、既存のスピードスプレーヤにも容易に後付けすることができる利点がある。なお、図1及び図2には薬液センサ5の具体的な取付位置を明示する。
【0026】
さらに、制御部60には、この薬液センサ5による薬液無の検出時間が予め設定した所定時間Ts以上のときに所定の対応処理を行う制御手段Fcを設ける。この場合、所定時間Tsは、外乱等により一時的に生じる正規でない薬液無の検出状態をキャンセルする時間であり、所定時間Tsの長さは、薬液センサ5の取付位置や送液管4の構成等に応じて適宜選定することができる。また、制御手段Fcによる所定の対応処理には、噴霧ポンプ3及び送風ファン6を自動で停止させる制御処理、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がONであることを条件として薬液センサ5による検出を有効にする制御処理、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がOFFであることを条件としてイグニッションキー13のONを有効にする制御処理をはじめ、ソレノイド59を駆動してエンジン23をアイドル運転に切換える切換処理、スイッチランプ11L及び12Lを点滅させる警告表示処理が含まれる。
【0027】
次に、本実施形態に係る制御装置1の動作(処理)について、図1〜図5を参照しつつ図6に示すフローチャートに従って具体的に説明する。
【0028】
今、運転者(作業者)がイグニッションキー(キースイッチ)13をONにした場合を想定する(ステップS1)。この際、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がOFFであることを条件としてイグニッションキー13のONを有効にする制御処理が行われる(ステップS2,S3)。これにより、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がOFFのときのみセルモータ63が起動するも、ポンプスイッチ11,ファンスイッチ12の一方又は双方がONになっているときは、イグニッションキー13のONは有効にならない。この結果、セルモータ63は起動しない。したがって、ポンプスイッチ11,ファンスイッチ12の一方又は双方がONになっているときは、運転者はポンプスイッチ11,ファンスイッチ12の一方又は双方を手動操作によりOFFにすればよい(ステップS4)。このような制御処理により、ポンプスイッチ11,ファンスイッチ12の一方又は双方がONの状態、即ち、トランスミッション55やクラッチ38,57等が接続された状態でエンジン23が始動する不具合を回避することができ、トランスミッション55やクラッチ38,57等の保護を図ることができる。そして、セルモータ63の起動によりエンジン23が始動する(ステップS3)。これにより、スピードスプレーヤMは、通常の走行を行うことができる。
【0029】
一方、薬液散布作業を行う際には、運転者はポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方をONにする。ポンプスイッチ11のONにより電磁クラッチ38がONし、エンジン23の回転出力が噴霧ポンプ3に伝達されることにより噴霧ポンプ3がONの状態になる。また、ファンスイッチ12のONによりファンクラッチ57がONし、エンジン23の回転出力が送風ファン6に伝達されることにより送風ファン6がONの状態になる。これにより、薬液タンク2の薬液Lは、噴霧ポンプ3により送出され、噴射ノズルN…から噴射されるとともに、送風ファン6の送風によって噴射空間Sから放射方向の所定範囲に噴霧される通常の薬液散布作業が行われる。
【0030】
この際、制御部60では、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がONであることを条件として薬液センサ5による検出を有効にする制御処理が行われる。薬液散布作業の際には、ポンプスイッチ11及びファンスイッチ12の双方がONになるため、薬液センサ5による検出が有効に行われる(ステップS5,S6)。このような制御処理により、例えば、ポンプスイッチ11、即ち、噴霧ポンプ3のみをONにして薬液タンク2や送液管4等の洗浄や水抜きを行う際に、薬液センサ5による薬液無の検出により噴霧ポンプ3が自動で停止してしまう不具合を回避できる。
【0031】
そして、薬液タンク2に薬液Lが収容された状態にあれば、薬液Lは送液管4を流れるため、薬液センサ5により薬液有の検出が行われる。しかし、薬液タンク2に薬液Lが無くなれば、薬液Lは送液管4を流れなくなり、薬液センサ5により薬液無の検出が行われる(ステップS7)。薬液無の検出が行われた場合、制御部60は、薬液無の検出が行われる時間を計時する(ステップS8)。この際、薬液無の検出時間が予め設定した所定時間Ts以上になったときは、薬液Lが無くなったものと判断し、所定の対応処理を行う(ステップS9,S10)。
【0032】
所定の対応処理としては、まず、噴霧ポンプ3及び送風ファン6を自動で停止させる制御処理を行う。即ち、電磁クラッチ38及びファンクラッチ57の双方をOFFにする制御を行う。これにより、ブザー等による警告手段の難点、即ち、運転に集中していたり騒音の大きい環境下で作業者(運転者)が警告に気付かずに過ぎてしまう難点を排除し、薬液Lが無くなった状態での噴霧ポンプ3の空運転を確実に回避できる。また、ソレノイド59を駆動してエンジン23をアイドル運転に切換える切換処理を行うとともに、スイッチランプ11L及び12Lに対して、スイッチランプ11L及び12Lを点滅させる警告表示処理を行う。これにより、運転者は薬液Lが無くなったことを確実かつ速やかに認識することができる。
【0033】
なお、薬液無の検出時間が所定時間Ts以上になることなく、薬液無の検出状態が終了した際には、外乱等により一時的に生じる正規でない薬液無の検出状態と判断できるため、計時処理をリセットする(ステップS11)。このような所定の対応処理により、運転者は、薬液タンク2に薬液Lを追加することができる。この際、イグニッションキー13をOFFにしてエンジン23を停止させれば、スイッチランプ11L及び12Lの点滅などの制御処理はリセットされる(ステップS12,S13)。
【0034】
よって、このような本実施形態に係る制御装置1によれば、薬液タンク2と噴霧ポンプ3間を接続する送液管4に流れる薬液Lの有無を薬液センサ5により検出し、この薬液センサ5による薬液無の検出時間が予め設定した所定時間Ts以上のときに所定の対応処理を行うようにしたため、スピードスプレーヤMに搭載する薬液タンク2に収容した薬液Lのレベルが正規のレベルに対して大きく変動して不安定な状態であっても、薬液Lが無くなったことを正確かつ安定して検出することができ、薬液Lの有無に係わる誤検出、更にはこれに伴う誤動作を回避できる。
【0035】
なお、本実施形態では、薬液センサ5を送液管4に取付けるため、薬液タンク2に収容した薬液Lのレベルを直接検出するレベル検出手段Fdsと組合わせて使用することも有効である。図1に、薬液Lのレベルを直接検出するフロートスイッチ81を仮想線で示す。このように、制御手段Fcに、薬液センサ5の検出結果とレベル検出手段Fdsの検出結果を組合わて制御する制御機能を設ければ、例えば、レベル検出手段Fdsの検出結果により予備警報を出したり、レベル検出手段Fdsの検出結果と薬液センサ5の検出結果を併せて判定できるなど、制御手段Fcの多機能性及び信頼性をより高めることができる利点がある。
【0036】
以上、最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,制御手法,数量等において、本発明の要旨(精神)を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、薬液センサ5として、静電容量形センサ5cを利用した場合を示したが、送液管4に流れる薬液Lの有無を検出できるものであれば、電気抵抗検出形など他のセンサの使用を排除するものでない。また、レベル検出手段Fdsとして、フロートスイッチ81を利用する場合を示したが、薬液Lのレベルを直接検出できる反射型光センサ等の各種検出手段を適用することができる。さらに、所定の対応処理として、例示以外の他の対応処理を排除するものではない。したがって、例えば、警告表示処理として、スイッチランプ11L及び12Lを点滅させる代わりに、専用の警告ランプを配設したり、ブザー等の音による警告手段との組み合わせも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る制御装置を含む薬液回路の系統図、
【図2】同制御装置を備えるスピードスプレーヤの左側面図、
【図3】同制御側面を備えるスピードスプレーヤの主要部の模式的レイアウト構造を示す平面構成図、
【図4】同制御装置のブロック系統図、
【図5】同制御装置における薬液センサを送液管に取付けた状態を示す側面図、
【図6】同制御装置の動作(処理)を説明するためのフローチャート、
【符号の説明】
【0038】
1:制御装置,2:薬液タンク,3:噴霧ポンプ,4:送液管,4s:送液管の外周面,5:薬液センサ,5c:静電容量形センサ,6:送風ファン,11:ポンプスイッチ,12:ファンスイッチ,13:イグニッションキー,L:薬液,Fd:薬液残量検出手段,Fc:制御手段,Fds:レベル検出手段,M:スピードスプレーヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、薬液タンクに収容した薬液の残量が所定量以下になったことを検出する薬液残量検出手段と、この薬液残量検出手段により残量が所定量以下になったことを検出したなら所定の対応処理を行う制御手段を備えるスピードスプレーヤの制御装置において、前記薬液タンクとこの薬液タンクの薬液を送出する噴霧ポンプ間を接続する送液管に流れる薬液の有無を検出する薬液センサを用いた薬液残量検出手段と、この薬液センサによる薬液無の検出時間が予め設定した所定時間以上のときに前記所定の対応処理を行う制御手段を備えることを特徴とするスピードスプレーヤの制御装置。
【請求項2】
前記薬液センサは、前記送液管の外周面に付設する静電容量形センサを用いることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの制御装置。
【請求項3】
前記所定の対応処理には、少なくとも、前記噴霧ポンプ及びこの噴霧ポンプにより送出した薬液を飛散させる送風ファンを自動で停止させる制御処理を含むことを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの制御装置。
【請求項4】
前記所定の対応処理には、前記噴霧ポンプをON/OFFする手動によるポンプスイッチ及び前記送風ファンをON/OFFする手動によるファンスイッチの双方がONであることを条件として前記薬液センサによる検出を有効にする制御処理を含むことを特徴とする請求項1又は3記載のスピードスプレーヤの制御装置。
【請求項5】
前記所定の対応処理には、前記噴霧ポンプをON/OFFする手動によるポンプスイッチ及び前記送風ファンをON/OFFする手動によるファンスイッチの双方がOFFであることを条件としてイグニッションキーのONを有効にする制御処理を含むことを特徴とする請求項1又は3記載のスピードスプレーヤの制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記薬液タンクに収容した薬液のレベルを直接検出するレベル検出手段Fdsの検出結果と組合わせた制御を行う制御機能を備えることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−148600(P2008−148600A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338054(P2006−338054)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000186784)株式会社ショーシン (13)
【Fターム(参考)】