説明

スプライン軸の支持装置

【課題】回転かつ往復動可能なスプライン軸を、簡易な構成の滑り軸受によりスプラインの加工された部分で直接支持し、しかも、軸受面の損傷を回避する。
【解決手段】スプラインの形成された軸を支持する滑り軸受として、スプライン部分を取り囲むブッシュを設け、そのブッシュをスプライン軸とともに回転するようにしてスプライン軸とブッシュとの相対回転をなくし、スプラインのエッジ部によるブッシュの損傷を防止する。例えば、変速機の操作機構において、スプライン25が形成され、回転かつ往復動可能な操作軸2は、フランジ部81を備えたブッシュ8により軸受される。ブッシュ8は、爪部82により操作軸2を回転させる傘歯車組立体6と連結され連動して回転するので、ブッシュ8と操作軸との相対回転が阻止され、スプライン25のエッジ部によりブッシュ8の内周面が削られることはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動的な変速装置を備えた車両の変速操作機構で使用されるスプライン軸のように、回転するとともに往復動するスプライン軸を、静止したハウジングに軸受けして支持する支持装置に関する。
【0002】
車両の動力伝達装置には、運転の容易化さらには運転者の疲労軽減のため、クラッチの操作を不要とし変速機の操作を自動化した各種の変速装置がある。トルクコンバータと遊星歯車を組み込んだ自動変速機(AT)がその代表的なものであるが、自動的な変速装置の中には、手動式変速機(MT)と同様な平行軸歯車機構式変速機を使用して、コンピュータ等の電子制御装置により車両の走行状態に応じて自動的に変速段を切り換える動力伝達装置が存在する。このような動力伝達装置の変速機は、電子制御装置の指令に応じて変速段を切り換えるアクチュエータを備えている。
【0003】
自動的に変速ギヤ段を切り換える平行軸歯車機構式変速機には、後に本発明の実施の態様と関連して詳しく説明するように、トランスミッションロッド(又はシフト&セレクトレバー)をセレクト方向に作動するセレクトアクチュエータと、該ロッドをシフト方向に作動するシフトアクチュエータとが設置される。アクチュエータとしては、重量が大きく流体圧力源を要する流体圧アクチュエータに代わり、近年、電動モータを駆動源とする電動式アクチュエータが開発されており、こうした電動式アクチュエータを用いた変速操作機構は、一例として特開2002−349697号公報に示されている。この公報の変速操作機構では、スプライン軸に嵌め込まれたシフト&セレクトレバーをセレクト方向(軸方向)に摺動させ、さらに、スプライン軸を回転させて該レバーをシフト方向に操作するもので、スプライン軸は軸方向には固定される。しかし、電動式アクチュエータを利用する変速操作機構では、操作機構の簡素化等を目的として、回転し、かつ、軸方向に往復動するスプライン軸を用いてトランスミッションロッド等を操作することも多い。
【0004】
スプライン軸は、その外周に軸方向の溝が形成してあり、軸に嵌め込まれた部品を回転方向に固定するため用いられるものである。スプライン軸を回転かつ往復動可能とした機構は、電動式アクチュエータを装備する車両用の変速操作機構ばかりでなく、種々の機械装置において使用される。例えば、特開2004−293631号公報には、一般産業用ロボットに適用した「スライドスプライン装置」が開示されており、この公報に記載されたロボットでは、ワークを把持するチャック装置を上下方向及び回転方向に移動して位置決めするため、回転かつ往復動可能なスプライン軸が使用されている。
【特許文献1】特開2002−349697号公報
【特許文献2】特開2004−293631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなスプライン軸を用いて変速機等の機械装置を操作するには、ハウジング等の静止部分にスプライン軸を回転かつ往復動可能に支持する必要がある。一般的に、回転軸はベアリングを介して静止部分に支持され、ベアリングとしては、構造の簡易性やコストの観点から、ハウジング等にブッシュを圧入した滑り軸受が使用される場合が多い。滑り軸受は、軸の外周面と接触して荷重を支持する軸受面に、合成樹脂、メタル合金等の比較的柔らかい材料からなる平滑な円筒表面を備えている。こうした滑り軸受によりスプライン軸を回転可能に支持するときは、次の問題が生じる。
【0006】
スプライン軸は、図5に示されるとおり、外周に軸方向の溝が多数設けられ、その断面の外周部には連続した略矩形の凹凸が形成されている。軸に嵌め込まれた部品の内周面にはこれに対応する凹凸が形成され、部品は軸方向には摺動可能であるが相対的回転は不能なように取り付けられる(スプライン嵌合)。凸部の端Eはエッジ部となっており、スプライン軸が滑り軸受の軸受面と接触しながら回転すると、凸部のエッジ部によって軸受面の材料が削り取られる現象やいわゆるスカッフィングの発生等により、軸受面の損傷を招く。したがって、スプライン軸を滑りベアリングで支持するときは、図5に示されるように、ベアリングの軸受面と接触する部分についてはスプラインを加工せず平滑な円筒面としてここで荷重を支持し、円筒面の両側にスプラインを形成している。あるいは、図6のように、滑り軸受となるブッシュとスプライン軸との間にカラーを挿入し、ブッシュの表面にスプラインのエッジ部が接触するのを防止することもある。
【0007】
しかし、円筒面の両側にスプラインを加工する場合には、別々の加工が必要となる。さらに、操作機構や位置制御機構に使用されるスプラインでは、両側のスプラインに嵌め込まれる部材の回転方向の位相が厳密に管理されるものが多く、両側のスプラインに形成される溝の位置は、円周方向に正確に一致するよう加工しなければならず、加工工程が複雑なものとなる。また、滑り軸受とスプライン軸との間にカラーを挿入する場合には、部品点数が増加するとともに組立工程も複雑化する。
本発明は、回転かつ往復動可能なスプライン軸を静止部分に支持するにあたり、簡易な構成の軸受によりスプラインの加工された部分で直接支持し、しかも、軸受面の損傷を回避することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題に鑑み、本発明は、回転かつ往復動可能なスプライン軸を支持する滑り軸受として、スプライン軸を取り囲むブッシュを設け、そのブッシュをスプライン軸とともに回転するようにしてスプライン軸とブッシュとの相対回転をなくし、スプラインのエッジ部によるブッシュの損傷を防止するものである。すなわち、本発明は、
「回転かつ往復動可能なスプライン軸を、静止部に形成した支持孔に支持する軸受装置であって、
前記スプライン軸と前記支持孔との間に、円筒部分を有するブッシュを設置し、前記ブッシュの外周面を前記支持孔に接触させるとともに前記ブッシュの内周面を前記スプライン軸のスプライン形成部と接触させ、さらに、
前記ブッシュと前記スプライン軸との間に連結手段を設け、前記ブッシュが前記スプライン軸と連動して回転し、かつ、前記スプライン軸が前記ブッシュ内で往復動する」
ことを特徴とする軸受装置となっている。
【0009】
請求項2に記載のように、前記連結手段は、前記ブッシュの内周面に形成され前記スプライン形成部の溝と係合する突起部とすることができる。
【0010】
また、請求項3に記載のように、前記連結手段は、前記スプライン軸に相対回転不能にスプライン嵌合する部材と前記ブッシュとの間に設けることができる。この場合には、請求項4に記載のように、前記ブッシュに、前記支持孔を形成した静止部の壁面に当接するフランジ部分を形成し、このフランジ部分に突起部を設けて前記スプライン嵌合する部材と係合させることが好ましい。
【0011】
請求項5に記載のように、前記スプライン軸は、車両用の変速装置を操作するために適用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、回転かつ往復動可能なスプライン軸をハウジング等の静止部に支持する滑り軸受として、スプライン軸を取り囲むブッシュを設けて静止部の支持孔に嵌め込む。このブッシュは、円筒形の外周面が支持孔に接触し、内周面はスプライン軸のスプライン形成部と接触しており、かつ、支持孔及びスプライン軸とは、いわゆる隙間嵌めの状態となっている。さらに、ブッシュとスプライン軸との間には連結手段を設け、ブッシュをスプライン軸と連動して回転させる。
スプライン軸を取り囲むブッシュは、スプライン軸と連動して回転し、スプライン軸とブッシュとの相対回転がなくなる。その結果、ブッシュの内周面がスプライン形成部と接触していても、スプラインのエッジ部が相対的に回転移動はしないので、エッジ部によりブッシュの内周面が削り取られるなどの損傷を防止できる。また、本発明においては、ブッシュの外周面がハウジング等の支持孔に対し回転摺動して、スプライン軸の回転に対する軸受面となり、内周面がスプライン軸の往復動に対する軸受面となる。このように2方向の動きをブッシュの別々の面で受けることとなるので、摺動に伴うブッシュの磨耗を減少させその耐久性を向上させることができる。
【0013】
請求項2の発明のように、ブッシュの内周面に突起部を形成しこれをスプライン形成部の溝と係合すると、簡易な構造によって連結手段を構成し、スプライン軸に連動してブッシュを回転することが可能となる。
【0014】
スプライン軸には、一般的に、その軸と相対回転不能にスプライン嵌合する部材、例えば軸を回転させるためのギヤ等、が嵌め込まれている。したがって、請求項3の発明のように、スプライン嵌合する部材とブッシュとの間に連結手段を設け、スプライン軸に連動してブッシュを回転することができる。このときは、連結手段を比較的自由に構成することが可能であり、請求項2の発明のようなスプラインと係合する突起部が存在しないから、スプライン軸の往復動に対する抵抗も少なくなる。
【0015】
スプライン嵌合する部材とブッシュとの間に連結手段を設ける場合には、請求項4の発明のように、ブッシュに支持孔の周りの壁面に当接するフランジ部分と突起部とを形成し、この突起部をスプライン嵌合する部材と係合させて連結手段とすることができる。このときは、フランジ部分によりブッシュの軸方向の位置が位置決めされるとともに、フランジ部分によってスプライン嵌合する部材等に作用するスラスト荷重を受けることことが可能となる。
【0016】
この軸受装置は、構造が簡易でコンパクトな滑り軸受でありコストも廉価であるから、請求項5の発明のように、搭載スペースの限られた車両用の変速機の操作機構に好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面によって本発明の軸受装置の実施例について説明する。この実施例は、本発明を車両用変速機の変速操作機構に適用したものであって、まず、変速操作機構の構造と作動について図1に基づいて詳説する。
よく知られているように、平行軸歯車機構式変速機では、並列に配置された複数本のシフトロッド(フォークシャフトと呼ばれる場合もある)を軸方向に移動させることにより、シフトロッドと一体のフォークを介し動力伝達用の変速スリーブをギヤ(ドグ歯)に噛み合わせて変速を行う。変速機には、シフトロッドを移動させるためのトランスミッションロッド又はシフト&セレクトレバーが備えられ、これは、複数本のシフトロッドの1本に係合して軸方向に移動させる。移動させるシフトロッドを選択しさらに軸方向に動かすよう、トランスミッションロッド等はシフトロッドの直角方向及び軸方向に可動であって、該ロッド等の直角方向の動きをセレクトと、軸方向の動きをシフトと呼ぶ。
【0018】
図1の上図に、電動式アクチュエータを用いた変速操作機構の要部の平面図を、また、下図に正面図を示す。変速操作機構には、ハウジング1に軸受けされ横方向に延びる操作軸2が設置されており、操作軸2は、矢印Aのように回転可能であるとともに、矢印Bのように往復動可能にハウジング1に支持される。下図に示されるとおり、操作軸2の下方にはトランスミッションロッド3が配置され、これは、アームブロック31に固定され矢印Cのように回動(セレクト)することができると同時に、紙面の垂直方向にスライド(シフト)することができるよう構成される。図示は省略するが、トランスミッションロッド3は紙面の垂直方向に延長し、その先端に設けられたアームがセレクトの動きによって複数本のシフトロッドの一つに選択的に係合する。そして、シフトの動きによって係合したシフトロッドをスライドさせ、そのシフトロッドと一体のフォークにより、変速スリーブを動かして変速機ギヤの噛み合わせ又は分離を行う。
【0019】
トランスミッションロッド3のアームブロック31の上面にはラック歯32が形成され、アームブロック31の上方両端は、二股のホルダ4に挟み込まれている。ホルダ4は操作軸2に回転自在に嵌め込まれ、スナップリングによって軸方向に固定されており、アームブロック31は、操作軸2の軸方向の往復動に応じて矢印Cのように回動し、トランスミッションロッド3の先端のアームがセレクト方向に移動する。また、二股のホルダ4の中央部分には、操作軸2にスプライン嵌合するシフトピニオン5が配置され、アームブロック31のラック歯32と噛み合っている。これにより、操作軸2が回転するとシフトピニオン5も回転し、トランスミッションロッド3はシフト方向に移動する。
【0020】
変速機のハウジング1には、電動モータからなるシフトアクチュエータ21とセレクトアクチュエータ22が装着される。シフトアクチュエータ21は、操作軸2とシフトピニオン5とを回転駆動してトランスミッションロッド3をシフト方向に動かすよう、傘歯車伝動装置23を介し、操作軸2の左方部分にスプライン嵌合する傘歯車組立体6と接続される。一方、操作軸2の右方の小径部にはラック歯が形成されたラックスリーブ7が嵌め込まれており、セレクトアクチュエータ22は、操作軸2を軸方向に往復駆動してトランスミッションロッド3の先端をセレクト方向に動かすよう、ウォームギヤとピニオンギヤとを有する伝動装置24により、ラックスリーブ7と接続されている。つまり、スプライン25の形成された操作軸2は、シフトアクチュエータ21によって回転するとともに、セレクトアクチュエータ22によって往復動するよう構成されている。なお、ハウジング1には、変速機の変速段を判別するため、操作軸2の回転位置を検出する検出スイッチSA及び軸方向位置を検出する検出スイッチSBが取り付けてある。
【0021】
変速時においては、まず、シフトアクチュエータ21が傘歯車伝動装置23を介し傘歯車組立体6を回転させ、操作軸2とシフトピニオン5とを回転駆動してトランスミッションロッド3をシフト方向に動かすことにより、変速段のギヤ(ドグ歯)と変速スリーブとの噛み合わせを外しニュートラル状態とする。次いで、セレクトアクチュエータ22が操作軸2を軸方向に往復駆動してトランスミッションロッド3の先端をセレクト方向に動かすことにより、先端を所望のシフトロッドと係合させる。この状態で再度シフトアクチュエータ21を駆動し、トランスミッションロッド3をシフト方向に移動して、変速スリーブを新たな変速段のギヤに噛み合わせる。
【0022】
このように、操作軸2は回転かつ往復動可能であって、操作軸2の左方端部からシフトピニオン5までの部分には連続したスプライン25が形成されている。シフトピニオン5は操作軸2に相対回転不能にスプライン嵌合されるとともに、操作軸2の左方端部の左方には、傘歯車組立体6がやはり相対回転不能にスプライン嵌合される。傘歯車組立体6はハウジング1の壁部によって軸方向に固定され、その中心部を操作軸2が往復動するようになっている。
【0023】
操作軸2は、ハウジング1の壁部に2箇所で軸受支持されており、その中の、図1における左方の軸受は、スプライン25が形成された軸部分を軸受けするものであって、本発明の軸受装置が使用されている。図2の軸受部分の拡大図に示すように、ハウジング1の壁部には操作軸2が貫通する支持孔11が設けられ、この支持孔11に本発明の滑り軸受であるブッシュ8が嵌め込まれる。
【0024】
ブッシュ8は、図3に示すとおり、軸方向の端部にフランジ部81が形成された円筒形の部材であって、潤滑性の優れた合成樹脂からなり、円筒形の内周面を操作軸2のスプライン25の部分が往復動しながら摺接する。図2においてブッシュ8の左方の操作軸2には、傘歯車組立体6のハブ部61がスプライン嵌合しており、ハブ部61は、その両端がハウジング1の壁面とブッシュ8のフランジ部81とに当接して軸方向に固定される。ブッシュ8の右方には、二股のホルダ4の間に配置されたシフトピニオン5が操作軸2にスプライン嵌合している。操作軸2のスプライン25は、左方の傘歯車組立体6から右方のシフトピニオン5まで連続的に形成されているので、傘歯車組立体6とシフトピニオン5との位相を正確に設定することが容易である。
【0025】
ブッシュ8のフランジ部81には略矩形断面の爪部82が設けられる。また、傘歯車組立体6のハブ部61の端面には、爪部82と対応する矩形断面の凹部が形成されており、爪部82はその凹部に嵌まり込んで連結手段を構成する。このため、傘歯車組立体6は、スプライン嵌合する操作軸2を回転させるとともにブッシュ8をハブ部61と連動して回転させる。回転するブッシュ8は、円筒部の外周面がハウジング1の支持孔11の内面を摺動して操作軸2等のラジアル方向の荷重を支持し、かつ、フランジ部81がハウジング1の壁部側面を摺動して傘歯車組立体6に働くスラスト方向の荷重を支持する。
【0026】
操作軸2のスプライン25は、操作軸2の往復動によってブッシュ8の円筒部の内面を摺動する。このとき、ブッシュ8は操作軸2と共に回転し、両者の間には相対的な回転が存在しない。したがって、スプライン25のエッジ部がブッシュ8の内面を回転方向に移動することはなく、ブッシュ8が柔軟材である合成樹脂製であっても、エッジ部によりブッシュ8の内面が損傷を受けることは回避される。ブッシュ8の円筒部は、その内面が操作軸2の軸方向の移動を支持する滑り面となり、外摺面が回転方向の移動を支持する滑り面となって、それぞれの動きを分担して支持することとなる。
【0027】
操作軸2と共に回転する軸受用ブッシュの別実施例を図4(右図は断面図)に示す。このブッシュ8Aは、上記のブッシュ8と同様に、円筒部8Bとフランジ部8Cとを有し、フランジ部8Cが傘歯車組立体6に当接するように、円筒部8Bがハウジング1の支持孔11と操作軸2との間に設置される。フランジ部8Cには爪部が設けられておらず、その代わりの連結手段として、円筒部8Bの端部内面にはスプライン25に嵌まり込む多数の突起部8Dが形成されている。この突起部8Dによってブッシュ8Aと操作軸2との相対回転が阻止され、ブッシュ8Aは上記実施例のブッシュ8と同等の作用効果を奏することができる。なお、突起部8Dは必ずしもスプライン25の全ての溝に対応して設けることはなく、確実に相対回転を防止するに必要な数だけ形成してもよい。
【0028】
以上詳述したように、本発明は、回転かつ往復動可能なスプライン軸を静止部分に支持するに際し、スプライン軸を取り囲むブッシュを滑り軸受として設け、そのブッシュをスプライン軸と共に回転するようにしてスプラインのエッジ部によるブッシュの損傷を防止するものである。上述の実施例では、変速操作機構のスプライン軸に適用したものについて説明したが、本発明の軸受装置は、他の機械装置のスプライン軸、例えば、特許文献2に記載されたチャック装置を位置決めするためのスプライン軸、を静止したフレーム等に支持する軸受装置としても適用可能であることは言うまでもない。また、ブッシュの外周面に耐磨耗性の表面処理を施したり、ブッシュとして潤滑材料を表面に設けた金属製のものを採用するなど、実施例に対して各種の変形が可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の軸受装置が適用された車両用変速機の操作機構を示す図である。
【図2】図1における本発明の軸受装置部分の拡大図である。
【図3】本発明のブッシュの実施例を示す図である。
【図4】本発明のブッシュの別実施例を示す図である。
【図5】スプライン軸を支持する軸受装置の従来例を示す図である。
【図6】スプライン軸を支持する軸受装置の別の従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0030】
1 ハウジング
11 支持孔
2 操作軸
21 シフトアクチュエータ
22 セレクトアクチュエータ
25 スプライン
3 トランスミッションロッド
5 シフトピニオン
6 傘歯車組立体
61 ハブ部
8、8A ブッシュ
81、8C フランジ部
82 爪部
8D 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転かつ往復動可能なスプライン軸(2)を、静止部に形成した支持孔(11)に支持する軸受装置であって、
前記スプライン軸(2)と前記支持孔(11)との間に、円筒部分を有するブッシュ(8、8A)を設置し、前記ブッシュ(8、8A)の外周面を前記支持孔(11)に接触させるとともに前記ブッシュ(8、8A)の内周面を前記スプライン軸(2)のスプライン形成部と接触させ、さらに、
前記ブッシュ(8、8A)と前記スプライン軸(2)との間に連結手段(82,8D)を設け、前記ブッシュ(8、8A)が前記スプライン軸(2)と連動して回転し、かつ、前記スプライン軸(2)が前記ブッシュ(8、8A)内で往復動することを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記連結手段は、前記ブッシュ(8A)の内周面に形成され前記スプライン形成部の溝と係合する突起部(8D)である請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記スプライン軸(2)には、その軸と相対回転不能にスプライン嵌合する部材(6)が嵌め込まれ、前記連結手段(82)が、前記ブッシュと前記部材との間に設けられる請求項1に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記ブッシュ(8)には、前記支持孔(11)を形成した静止部の壁面に当接するフランジ部分(81)が形成され、前記連結手段は、前記フランジ部分(81)に形成され前記部材と係合する爪部(82)である請求項3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記スプライン軸(2)は、車両用の変速装置を操作する請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の軸受装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−292112(P2007−292112A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117718(P2006−117718)
【出願日】平成18年4月21日(2006.4.21)
【出願人】(000000170)いすゞ自動車株式会社 (1,721)
【Fターム(参考)】