説明

スペクトル情報を得るための装置および方法

【課題】 スペクトル情報を得るための装置および方法を提供することである。
【解決手段】 スペクトル情報を得る方法は、表面の増強された試料に第1の励起周波数で第1の励起と第2の周波数の第2の励起とを少なくとも起こすことを具備する。更なる方法は、前記第1および第2の励起周波数の1つを変えることと、出力信号強度を有する出力信号を検出することと、出力信号ピークを特定することとを具備する。加えて、方法は、スペクトル情報を得るために特定された出力信号を第1および第2の励起周波数に関連させることを含み、表面の増強された試料基板は第1および第2の励起の少なくとも1つに、または、この試料に起こされた出力フィールドに対応するフィールドを増強するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル情報を得るための装置および方法に関する。
【0002】
分光分析のためのラマン効果の使用は、周知である。その効果において最も単純な形は、レーザー光線が試料(sample)に入射されるときに観測される。大部分の入射光は、弾性的に散乱し、しかしながら、光子の小さい集団は、振動状態へ、あるいは、振動状態からの励起の結果として、非弾性的に散乱され、そして、その後、それぞれ、低いか(ストークス)、より高い(反ストークス)エネルギで放射される光子を生じて減衰する。試料分子の振動モードのエネルギの測定によるエネルギの違いは、ラマンスペクトルの設備に試料の構造および組成を特定する強力な技術の提供を可能にする。
【背景技術】
【0003】
共鳴Ramanスペクトル法は、電子的共鳴の近傍の可視ビームを調整することによって、および、散乱された信号を増加させることによって、『通常の』ラマン分光法の感度問題を改良する。散乱を刺激(stimulate)するために付加的な可視ビームを加えることは、誘導ラマン散乱(stimulated Raman scattering)を与える。より容易に、誘導ビームからラマン散乱ビームを区別するために、CARS(コヒーレント反Stokes Raman散乱:coherent anti−Stokes Raman scattering)は、どの強度のビームパルスが入力ビームに異なる周波数でCARS信号を提供するかについて開発された。CARSは、非共鳴(non−resonant)、共鳴(resonant)、または「プレ共鳴(pre−resonant)」で実行されることができる。しかしながら、共鳴CARSは、特に共鳴のときに、感度を制限するスライドガラスのような非試料材料(non―sample material)からの非共鳴バックグラウンド問題に苦しむ。
【0004】
更なる開発において、非常に増強されたレスポンスが、参照によってここに組み込まれる化学学会レビュー(Chemicals Society Reviews)、1998、ボリューム27、ページ241〜250に記載されているキャンピオンその他(Campion et al,)による「表面増強Raman散乱(Surface−Enhanced Raman scattering)」に記載される表面増強ラマン分光法(SERS:Surface Enhanced Raman Spectroscopy)に際して、使用されることが判る。この技術によれば、ラマン効果の強化は、表面が入射のレーザフィールドを増強し、それゆえに、ラマン散乱されるフィールドを増加させるので、ラフな金属ナノパーティクルまたは表面の境界となる分子に対して検出されることが判る。たとえばナノパーティクルの場合、レーザフィールドはプラズモン振動をナノパーティクル内にてドライブし、および、もしパーティクルがラフなエッジを有するならば、これらのエッジの近くのプラズモンからのフィールドは入射のレーザフィールドよりさらに高い。パーティクルがレーザフィールド周波数の近くでプラズモン共鳴を有するときに、表面フィールドはさらにより大きい。したがって、分子はパーティクルの表面でより高いフィールドを経験し、ラマン散乱は増加する。たとえば、このような技術に関する更なる議論は、Chewその他の「コロイド球体によるコヒーレント反Stokes Raman散乱の表面強化(a Surface Enhancement of Coherent Anti−stokes Raman Scattering by Colloidal Spheres)」J.Opt.Soc.Am B/Vol.1、No.1/1984年3月、ページ56−66、および、ヴァンダーハムその他の「表面−プラズモン励起による和周波数収率の巨大強化(Giant Enhancement of Sum−Frequency Yield by Surface−Plasmon Excitation)」、J.Opt.Soc.Am B/Vol.16(No.7/1999年7月ページ1146〜1152)で発見される。
【0005】
これらの配置の全てにおいて、増加された感度が提供される反面、制限されたスペクトル情報は表面増強スペクトロスコピー、例えば表面増強ラマン分光法を使用して利用できる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、請求項において示される。第1および第2の可変波長励起ビームが表面増強構成上に入射するので、出力スペクトル情報によってスペクトルに関する多次元情報が導き出されることを可能にする。
【0007】
例えば、本発明は、更に記載されている図面を参照される。
【0008】
概要において、多次元スペクトロスコピーは、提供される。方法は、多重の励起を、表面増強スペクトロスコピーために準備される試料に、例えば適切な表面に吸着された試料分子、もしくは、銀のような表面基板、または、ナノパーティクルの表面に適用することによって付加的なスペクトル情報を得る。得られたスペクトル情報は、たとえば、それぞれの軸上の互いに対する各々の励起に対して、周波数ドメインのスペクトラムをプロットするように二次元のスペクトロスコピー技術を使用して分析されることができる。したがって、得られる表面から、試料の構造に関する詳細情報は、導き出されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明によるスペクトロスコピーの方法を実行する装置である。
【図2】図2は、4波混合相互作用(four−waves mixing interaction)の遷移を示している図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
たとえば、第1および第2の励起ビームは、好ましくはお互い異なり、たとえば赤外線であり得るそれぞれ第1および第2の波長ω、および、ωで試料上への入射を提供される。その結果、振動のコヒーレンスは、図2のエネルギー帯cとして示される組合せ励起帯を生成している試料に誘導される。可視であり得る第3の励起ビームωが、仮想からのラマン状の遷移の結果として、潜在的にプレ共鳴な状態d(206)から振動準位b(204)へと、各々のωからωへと異なる周波数で、散乱された出力ビームωを提供するビーム上へ入射する。
【0011】
下で更に詳細に議論されるように、ω、および、ωの少なくとも1つの変動は組合せバンドレベルを変える。すなわち、ωが共鳴に遭うときに、より大きい信号はリターンし、これはω、および、ωに関する情報を提供する。特に、共鳴はω、および、ωに対してプロットされることができ、このようなプロットに示されるさまざまな共鳴は試料の分子の「フィンガープリント(fingerprint)」を提供することができる。効果が表面によって非常に増強される点に、たとえば、その場合と、一般的にω、および、ωの少なくとも1つ(および、多くの場合、それらが、同じ強化バンドによって受け入れられ得る両方)を増強するように変えられた場合との間で調整される増強構成に注意される。加えて、または代わりに、強化は、また、再び表面増強スペクトロスコピーの重要な付加情報を提供しているωまたはωに関して達成されることができる。その結果、強い信号は、低い試料濃度さえ得られることができる。
【0012】
図1を参照し、多次元表面増強スペクトロスコピーを得る装置は、試料10を含むように、一般に遷移モード(transmission mode)に示される。そして、励起ソースが一般的に赤外バンド、および、検出器14における放射を放出するレーザー12、18を具備する。たとえば、調整できるレーザー12、および、18はそれぞれの波長/波数3164cm−1(ω)および2253cm−1(ω)の励起ビームを放射し、それは試料10の分子構造の1つ以上の振動モードを励起し、多次元データが周波数を調整するかまたは可変時間遅延を提供することによって得られることを可能にする。第3の励起または読出しビーム(read−out beam)は効果的に散乱する入力ビームの形で出力または読出しを提供するために第3のレーザー16によって生成される。そして、周波数が試料10の構造をとの相互作用によってシフトされる(および、厳密に、第4のビームとして生成される)。下で更に詳細に議論されているように、第3のビームの周波数(ω)は好ましくは可視域において可変的か、または、たとえば795nmで固定される状態であることができる。検出信号は一般的に可視であるか例えば740nmで電磁スペクトルの近赤外線の部分にある。そして、赤外線から紫外部までのエネルギの光子を具備する。
【0013】
試料10の1つ以上の振動モードを励起するために調整できるレーザー12、および、18を使用するように本発明がここで示されるが、それはこの技術用語も試料10内で振動のコヒーレンスを誘導して包含することを当業者によって理解される。
【0014】
多次元データを得るために、試料は、時間領域(time domain)において間隔を置かれる連続したビームによって励起される。しかしながら、たとえば時間領域よりむしろ周波数ドメインの入力を変化することによって、何らかの適切な多次元分光技術は、採用されることができる。同様に、多くのディメンションは、時間領域の付加パルスまたは周波数ドメインの付加的な周波数によって得られることができる。当然、配置(arrangement)は、また、何らかの遷移または反射の形で、および、たとえば、同一直線上のビームを使用して提供されることができる。
【0015】
たとえば、上で記載されている型の二次元のスペクトロスコピー方法は、参照によってこれと共に一般に特定され、ここに組み込まれたものとする国際出願番号PCT/GB2004/004693において提示される。核磁気スペクトロスコピー(NMR)のフィールドの二次元のスペクトロスコピーに関する更なる議論は、それらの教示が、Friebolinにて記載される「基本的な1次および2次元のNMRスペクトロスコピー(Basic one− and two−dimensional NMR spectroscopy)」、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ第2版(1993年4月)と同様に適用され、ここに組み込まれる。
【0016】
試料および/または試料基板自体は、表面増強多次元スペクトロスコピー(SEM:surface enhanced multi−dimensional spectroscopy)を得させるために、何らかの適切な方法も準備されることができる。1つの実施形態において、微視的な(nanoscopic)基板は、レーザ励起法周波数でプラズモン振動を有して設計される。硬貨金属(Coinage metals)がコロイド懸濁、粗い電気化学的チップまたは表面浸食がされたどの形状でも使われることができ、それは分析物(analyte)、および、基板の両方の表面化学が確実にされ、ナノパーティクルの寄せ集めおよび/または分析物の寄せ集めを回避するのに十分強くなければならない分析物とナノパーティクルとの間の相互作用として、その分析物が基板と安定して結合するような方法で設計される。たとえば、基板は、それが特定の分析物を結合することが可能にするために、別の材料でコーティングされることができる。
【0017】
詳細な説明がここで必要でないように、当業者に明瞭であるように、コロイド状試料の前処理はいかなる慣用的方法でも実行されることができる。たとえば、硝酸銀法のクエン酸塩還元(citrate reduction of silver nitrate method)は、P.C. Lee、および、D.Meisel、日本物理学化学会(J Phys. Chem.)86、p3391(1982)にて説明したように、適用されることができる。同様に、表面は、たとえばL. Gunnarssonその他にて説明したように、何らかの適切な方法も、応用物理学会レター(Appl. Phys. Lett)78、p802、2001にて準備されることができる。それらのリファレンスに記載されている技術は、本願明細書に引用したものとする。
【0018】
最適な試料を設計をするために、試料が位相整合に対して厚さを適切にすることを確保することは必要であり、それでプラズモン共鳴周波数は、マルチ光波混合周波数ω、ω、ω、ωの1つと一致する。
【0019】
マルチディメンションのスペクトロスコピー、および、表面増強スペクトロスコピーの組合せによって提供される強化のレベルは、根底にある物理機構に関する議論から、更に理解されることができる。
【0020】
効果は、実際に四波混合手順に依存する。十分な強度の3回変化するフィールドは周波数ωで振動する非線形分極化を誘導するときに、四波混合は分極可能な(polarisable)メディアに起こる。
【数1】

【0021】
ラマン分光法の場合、相互作用は、非弾性散乱を生じるエネルギーレベルの摂動を作成する黒体光子によって作成される2つの付加的なフィールドと相互に作用している単一ビーム間で起こる。誘導ラマン散乱において、付加的なフィールドの1つは、その代わりに共鳴ビームによって提供される。上記のように、基板の試料表面上のラマン分光法を実行することによって、これらのフィールドは、表面で局所電場によって増強される。
【0022】
本発明に係る記載された励起法の場合に、ω、および、ωは上で記載されているアーキテクチャの外部のレーザー光線によって生成され、赤外線領域が好ましく、各々のレーザー12、18によって、試料10の振動共鳴を分離するように調和されている。第3のレーザー16は、好ましくは可視域にある周波数ωのビームを作成する。もしωが可視域にあるならば、作成されるωもまた、可視域にあることができる。そして、それを光子計数の単純な方法によって検出可能にさせる。
【0023】
それ故、上で記載されている分極化は、また、ωで振動するフィールドを発射する。実際のところ、ωを作成するために使用するフィールドは、サブナノ秒のレーザパルスである。方程式1)で異なる記号は、さまざまなω周波数を生じ、必要とされるωが運動量保存ルールまたは出力信号のスペクトル分散によって選ばれるように、レーザパルス(位相整合)の間の角度を導入することによって選ばれることができる。
【0024】
上記のように、1つ以上のレーザフィールドが探索される試料10の電子的または振動共鳴の特徴を介して周波数レーザーωlaserにおいて調整されるときに、四波混合はスペクトロスコピーになる。分極化は、共鳴の周辺で非常に大きくなり、四波混合信号が次式のように増加される。
【数2】

【0025】
Aは定数であり、ωresは、共鳴の周波数であって、Γは誘導された分極化の寿命である。
【0026】
好ましい実施態様において、本発明は、Wei Zhao、および、John C Wrightによって「Phys.Rev.Lett、2000、84(7)、1411〜1414」に記載されているように、2倍に振動的に増強された四波混合(DOVA−FWM:Doubly Vibrationally Enhanced four wave mixing)を使用する。ω、および、ωが試料、v、v、および、vの中で連成振動(coupled vibrations)によって共鳴するときに、DOVA−FWMは起こる。この場合、次式として信号が増加させる。
【数3】

【0027】
ここの信号は、共鳴項の「プロダクト」であり、および、それ故、方程式2の共鳴項の合計より大きい。ω、および、ωの全ての組合せ信号のマッピングは、探索される材料の連成振動の2Dマップを与える。
【0028】
作成される出力ビームが、いずれか入力ビームと異なる周波数、ωであるという理由のために、強い信号は、DOVE―FWMによって作成され、それゆえに、それは、容易に検出される。
【0029】
表わすエネルギー準位図は、エネルギを増加させる順に基底状態200、振動準位202、組合せバンド204、および、仮想、潜在的にプレ共鳴状態206を含んで図2に示される。その結果、4つの可能な遷移は、利用でき、基底状態、振動準位、組合せバンド、および、仮想状態は、a、b、c、dそれぞれラベルをつけられμab、μac、μcd、μdbであり、μが遷移双極子モーメントである。四波混合信号の強度は、表されることができる。
【数4】

【数5】

【数6】

【0030】
ここでNは分析物の濃度であり、Lは試料(sample)の厚さ、および、F/F’は一般的に1−2である局所フィールド補正係数(local field correction factors)であり、Δijは周波数依存離調ファクタ(frequency dependent detuning factors)=ωga−ωlaser−iΓgaである、Γgaはコヒーレンス寿命であり、Δkは試料の位相ミスマッチである。これは入力ビームの運動量、および、出力の運動量の違いである。そして、屈折率の変動に対して修正される。
【0031】
μab、および、μacは基本的な線形吸収の赤外線の遷移双極子モーメントを具備し、組合せバンドμcd、および、μdbはラマン状の遷移の電気遷移双極子モーメントである。「In(内に)」は、入力周波数と異なる周波数も同じである。励起が計時されて、および、DOVE―RamanまたはDOVE―IR構成を作成するよう命じられるかどうか、同じ効果がDOVE―FWN内において観測されることができることはいうまでもない。
【0032】
ここでソースがコヒーレント励起読み出しビームを作成し、例えば、上で記載されている構成のように、何らかの強化が、FWMの所望の形を作成するように所望の相互作用「経路(pathway)」を正確に選ぶ能力と同様に驚くほど高増大因子を提供して二乗される点に注意される。
【0033】
上で記載されているアプローチは、ホモダインまたはヘテロダインスペクトロスコピーに関して適用されることができる。定義として、本発明を含んでいる全ての分光方法は、その強度が以下の式の通りに規定されることができる信号を放射する:
【数7】

【0034】
ここで、EHOは試料からのホモダイン信号であり、および、ELOは「局部発振器(local oscillator)」のフィールドである。2つのフィールドは、同一周波数であるが、固定された位相差φを有する。標準のホモダイン検波方式において、局部発振器フィールドがなく、および、強度は単にホモダイン項EHOである。そして、それは二次曲線的に試料の濃度によって変化する。ヘテロダイン検波において、分離の局部発振器は当業者の読者に明瞭である何らかの周知の方法によって作成され、操られる。それでクロス項(cross term)は、方程式を支配するようにされ得る。出力フィールドは、それで試料濃度において線形である。これが、試料濃度が低い実施形態において使われることができ、より強い出力信号を作成することは、望ましいある。
【0035】
たとえば、従来の光学的ヘテロダインは、更なるアプローチにおいて採用されることができ、従前通りの光学的ヘテロダイニングは、局部発振器フィールドが試料の外部で作成され、試料フィールドで検出器上への入射に向けられて採用されることができる。このような局部発振器生成は、例えば、一部の可視ビームによって適切な液体または固体内で連続性の生成によってなされる。その場合、外部信号の特定のパラメータは、制御され、それで、上で更に詳細に議論されるように、線形の寄与(コントリビューション)が浸される(swamped)従来の光学的ヘテロダイニングシステムとは対照的に、その関連した項は、上の方程式(1)において支配的である。(ELO項の除去は、それで単にそれ(「チョッパー」)のスロットを有する機械的なホイールが励起ビームに導入されることによってロックイン検出器を使用して達成される。スロットがビーム(基準周波数)をブロックする繰返し速度は、基本的に周波数フィルタであり、ロックイン検出器に通過される。それは検出器から到着している全正味の信号を測定し、基準周波数で生じる信号の成分を引き出す。もし基準周波数が局部発振器信号が生じるビームの繰返し数と異なっているならば、局部発振器だけのための正味の信号の成分は、減算される。それで、ELO項は消え、EHO項はごくわずかであり、クロス項は濃度において線形である。
【0036】
更なる実施形態において、Mullerその他の「複合CARSスペクトロスコピーによる脂質膜の熱力学状態のイメージング(Imaging the Thermodynamic State of Lipid Membranes with Multiplex CARS Spectroscopy)」物理化学会(J. Phys. Chem.)B.106、3715−3723記載されているタイプの「多重化(multiplexing)」は、参照によってここに組み込まれ、赤外線の広帯域パルスの使用によって達成される。そして、それらを取り囲んでいる試料、および、スペクトル部分内の赤外遷移を同時に励起するために超高速のパルスによって作成される。ビームの入力角度の適切な選択によって、入力周波数に対応する独特な方向は、達成されることができる。その結果、出力信号は、空間中のスペクトル情報の全てを含んでいる射線錐(cone of rays)である;検出器14は、この場合、2Dアレー検出器、例えば空間ディメンションにコード化されるスペクトル情報を取り込む電荷結合デバイス(CCD)であることができる。もう一度スペクトラムの改良された分解能を得るために、空間ディメンションに加えて、試料によって生成されるスペクトルに関して、さらに他の、完全な詳細な情報を伝えるために上で更に詳細に議論されるように、付加的なディメンションはパルスの時間遅延によって又は周波数変動によって導入される。
【0037】
1つの実施形態において、ω、および、ωは、DOVE―FWMを与えるために選ばれ、もし電子的共鳴がω、および、ωが探査される振動に結合するならば、ωは励起周波数ωの電子的共鳴の近くで調整され、更なる乗法的強化(multiplicative enhancement)は、方程式3)の両方の項にされることができる。技術は、電子的/振動のカップリングの3Dマップに与える。たとえば、DOVE―IR場合は、以下になる:
【数8】

【0038】
もしω、および、ωによって探索される振動が電子状態に結合しないならば、電子的強化が方程式2)によって記載され、したがって、方程式5)のそれより非常に弱い。
【0039】
レーザパルスの間の遅延は、非共鳴または単独共鳴信号を抑制し、関連するさまざまな可能なFWM信号を選ぶ。この方法は、「J.Chem.Phys、2001、266、177−195」のJohn Wrightによって、更に議論される。強い出力信号、および、最小の非共鳴バックグラウンドノイズを提供する反面、既存の技術は、2つ以上のディメンションの振動スペクトロスコピーのために、可視レーザ光線の強い電子的吸収を利用しない。
【0040】
さらに、ヘテロダイニングを使用しない他の実施形態、紫外線または可視励起は、順番に、電子エネルギーレベルの間の遷移によって生じられる蛍光を生じる電子的共鳴を励起する。これは、上で議論されるタイプの直接の赤外線の励起と組み合わされる。その場合、レーザー16から付加的な「読出し(read out)」信号は、必要でない。入力赤外線、および、紫外線ビーム、および、変化している時延の同調は、再び、上で更に詳細に記載されている方法で、しかし集団スペクトロスコピー(population spectroscopy)に基づいて、多次元データを生ずる。
【0041】
反射するモードスペクトロスコピーが使用され、それは反射が試料の表面に制限されず、それゆえに、この技術用語も消え去っていくモードスペクトロスコピーを包含することは当業者によって理解される。作成される反射信号の性質は、入力ビーム浸入度(input beam penetration depth)によって変化する。浸入度を決定するファクタは、第3の周波数入力ビームの入射角度、および、フィールドの分極化を含む。
【0042】
本発明は、アプリケーションの範囲内で、特に、直接または間接的に、測定している多次元光学スペクトロスコピー内のいかなるエリア内で実現されることができ、振動/振動カップリングは、分子識別および/または構造を調査する光または時間遅延の2つ以上の可変周波数を用いて適切になされる。
【0043】
当業者は、何らかの適切な特定の成分および技術が本発明を実現するために採用されることができると認める。一般的に赤外線の少なくとも1つの調整できるレーザ光源および紫外線、可視または赤外線の少なく1つの他の調整できるレーザ光源は、採用することができる。何らかの適切なレーザーは、使用され、または、実際に他の何らかの適切な励起源が使用される。更なる固定されたか調整できる周波数ビームは、また、上記のように2本の赤外線の励起ビームの場合に組み込まれることができる。別の形態として、FWM実験のために市販のサブナノ秒のレーザーシステムは3つの独立した調整できるビームを含んでいる単一のレーザーシードソースから分離の周波数を生成するのに使用される。
【0044】
何らかの適切な検出器、たとえばCCDまたは2D IRスペクトロスコピー技術から周知の他の検出器が採用されることができる。
【0045】
レーザー12、および、18によって作成される励起波長の範囲は、通常、赤外線であるとして上記しているが、分析される構造の振動モードを励起することを必要とするいかなる適切な波長であることができる。同様に、第3のレーザー(16)によって作成される波長は、通常、可視であると記載されるが、分析される構造の電子的共鳴モードを励起することを必要とするいかなる適切な波長でもあることができる。上記の考察が主に2次元または3次元解析に関するが、多くのディメンションは入力励起のパラメータ、例えば周波数、時間遅延/パルス数または他のいかなる適切なパラメータをも適切に変えて導入されることができる。
【0046】
四波混合が記載されているが、三波混合のような代わりの他のモードは出力が後方赤外線において実現されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面の増強された試料に第1の励起周波数で第1の励起と第2の周波数で第2の励起とを少なくとも起こすことと;
前記第1および第2の励起周波数の1つを変えることと;
出力信号強度を有する出力信号を検出することと;
出力信号ピークを特定することと;
スペクトル情報を得るために前記出力信号ピークを前記第1および第2の励起周波数に関連させることとを具備し、
前記の増強された試料基板は、少なくとも1つの前記第1および第2の励起に、または、前記試料に起こされた出力フィールドに対応するフィールドを増強するように構成される、スペクトル情報を得る方法。
【請求項2】
第3の励起周波数で第3の励起を起こすことを更に具備する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1および/または第2の励起は、スペクトルの赤外線の部分の励起ビームによって起こされる請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記励起は、それぞれのコヒーレント励起ビームソースによって起こされる先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記第3の励起は、スペクトルの可視部分のビームを具備する請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記表面の増強された試料基板は、スペクトルの可視部分の表面強化のために調整される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記基板のプラズモン共振周波数は、前記励起または出力周波数の少なくとも1つと一致する先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
試料に第1の励起を起こすように配置された第1の励起ソースと;
前記試料からの出力ビームを検出するように配置された第2の励起ソースおよび検出器とを具備し、
前記試料は、前記試料に誘導される励起または出力フィールドの少なくとも1つに対応するフィールドを増強するように構成される、スペクトロスコピー装置。
【請求項9】
前記試料に第3の励起を起こすようにに配置された第3の励起ソースを更に具備する請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記第1および第2の励起ソースの少なくとも1つの周波数の変化を制御するためのコントローラを更に具備する請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、遷移または反射モードの1つの出力ビームを生成するように配置される請求項8〜10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記第1および第2の励起ソースは、コヒーレントソースである請求項8〜11のいずれかに記載の装置。
【請求項13】
マルチディメンションのスペクトロスコピー装置の励起または出力フィールドの少なくとも1つに対応するフィールドを増強するように構成される表面の増強された試料基板。
【請求項14】
図面に関してここで記載されている方法と装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−537841(P2009−537841A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511574(P2009−511574)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【国際出願番号】PCT/GB2007/001903
【国際公開番号】WO2007/138267
【国際公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(505167543)インペリアル・イノベ−ションズ・リミテッド (23)
【Fターム(参考)】