説明

スペクトル拡散型レーダ装置、虚像判定方法及び虚像抑圧方法

【課題】物体からの反射信号とは異なる虚像が生じる場合においても、誤検出が発生する確率を低減できるスペクトル拡散型レーダ装置を提供する。
【解決手段】スペクトル拡散型レーダ装置は、送信用符号生成器110と、送信用符号より時間遅延した符号を発生する受信用符号生成器121と、局部発振器111を送信用符号と拡散変調する拡散変調器112と、拡散変調した信号を放射する送信用アンテナ113と、信号を受信する受信部120と、受信信号を受信用符号により復調し相関信号を出力する拡散復調器122と、相関信号と局部発振器の信号を混合し、周波数を変換してレーダ信号を生成する周波数変換器123と、虚像を判定する虚像判定部130と、虚像判定信号に基づきレーダ信号を演算処理するレーダ信号演算装置160とを備え、虚像発生時に虚像ピークを抑圧する演算やオフセット信号を加える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトル拡散方式を利用したスペクトル拡散型レーダ装置に関し、特に、物体の誤検出を発生する原因となる、受信信号以外に生じるエイリアス信号を抑制するスペクトル拡散型レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スペクトル拡散方式を利用したスペクトル拡散型レーダ装置に関する技術が色々と提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
スペクトル拡散型レーダ装置は、送信用擬似雑音符号を使用して狭帯域信号を広帯域信号に拡散変調する。拡散変調して得られた広帯域信号をレーダ波として送信する。送信したレーダ波が物体に反射されて得られた反射波を受信信号として受信する。受信用擬似雑音符号を使用して受信信号を相関信号に拡散復調する。拡散復調して得られた相関信号に基づいて、物体の有無、物体までの距離、物体との相対速度等を算出する。
【0004】
ここで、送信用擬似雑音符号は、例えば、M系列符号やGold系列符号等のような擬似雑音符号である。ここでは、一例として、自己相関特性が優れているM系列符号とする。また、受信用擬似雑音符号は、送信用擬似雑音符号を時間遅延させた擬似雑音符号である。すなわち、受信用擬似雑音符号は、送信用擬似雑音符号に対して、遅延時間に相当するチップ数分、位相をシフトした擬似雑音符号である。遅延時間は、レーダ波の送信時間と反射波の受信時間との差に相当する。
【0005】
次に、スペクトル拡散型レーダ装置の探知原理について図面を参照して説明する。
図14は、従来のスペクトル拡散型レーダ装置の探知原理の概要を示す図である。ここでは、一例として、スキャン範囲を1〜100m、分解能を1mとする。
【0006】
この場合において、スペクトル拡散型レーダ装置は、スキャン範囲をカバーするために、送信用擬似雑音符号11に対して符号を1から100チップまで昇順でずらしながら受信用擬似雑音符号を生成する。ここで、符号の1チップの幅が分解能を決定するため、100チップ分の位相シフトが必要となり、擬似雑音符号の周期は、100ビット以上必要である。
【0007】
そして、受信用擬似雑音符号16のように、符号を100チップまでずらすと、最初に戻り、再度、1から100チップまで昇順でずらしながら受信用擬似雑音符号を繰り返し生成する。ここで、スキャン範囲に相当する1から100チップまで昇順でずらしながら、再び最初の状態に戻るまでの期間をレーダのスキャン1周期とする。
【0008】
具体的には、スペクトル拡散型レーダ装置は、送信用擬似雑音符号11に対して符号を1チップずつあるいは1チップ以下の単位でずらしながら受信用擬似雑音符号を生成する。そして、生成した受信用擬似雑音符号と受信信号13との間で相関をとる。このとき、生成した受信用擬似雑音符号と受信信号13との位相が一致すると、相関信号にピークが現れる。一方、位相が一致しないと、相関信号にピークが現れない。以下、位相が一致する場合を同期状態と呼称し、位相が一致しない場合を非同期状態と呼称して説明を行う。
【0009】
例えば、受信用擬似雑音符号14と受信信号13との間で相関をとると、非同期状態であるので、相関信号にピークが現れない。一方、受信用擬似雑音符号15と受信信号13とは同期状態であるので、相関信号にピークが現れる。ここで、受信用擬似雑音符号14は、送信用擬似雑音符号11に対して1チップ位相をシフトした受信用擬似雑音符号である。受信用擬似雑音符号15は、送信用擬似雑音符号11に対して所定のチップ数位相をシフトした受信用擬似雑音符号である。
【0010】
図15は、従来のスペクトル拡散型レーダ装置において拡散復調して得られたレーダ信号の概要を示す図である。
【0011】
図15(a)に示されるように、位相が一致すれば(すなわち同期状態となる場合)、レーダ信号にピークが現れ、位相が一致しなければ(すなわち非同期状態となる場合)、レーダ信号にピークは現れない。また、物体が1つだけ存在する場合は、符号1周期に対して1つだけピークが現れ、物体が複数存在する場合は、複数のピークが現れる。これによって、スペクトル拡散型レーダ装置においては受信した反射波からピークを検出することで物体を検出することができる。ここで、レーダ信号に現れるピーク強度は、ターゲットとなる物体のレーダ信号を反射する度合いと距離によって決定される。
【0012】
このようにして、スペクトル拡散型レーダ装置は、送信用擬似雑音符号11と受信用擬似雑音符号15とを使用して送信信号12と受信信号13との間における位相ずれチップ数を特定することで、特定した位相ずれチップ数に相当する遅延時間を特定することができる。さらに、特定した遅延時間に対応する距離を算出することで、物体までの距離を算出することができる。ここで、送信信号12は、スペクトル拡散型レーダ装置から送信されるレーダ波である。受信信号13は、レーダ波が物体に反射されて得られた反射波である。
【0013】
しかしながら、使用する擬似雑音符号等によっては、ターゲットの物体に反射されて得られる反射波以外に誤検出を発生させるようなピークが検出される場合がある。
【0014】
この問題を解決するため、図16に示すように、スペクトル拡散型レーダ装置にターゲット検出部9なるレーダ信号の誤検出を低減する演算処理部が備えられ、レーダ信号の平均値や標準偏差値からターゲット検出のための閾値を設定することにより誤検出を低減することができるスペクトル拡散型レーダ装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−93776号公報
【特許文献2】特開2005−207932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、スペクトル拡散型レーダ装置を構成するデバイスの非線形特性、配線間の信号の伝搬による反射、マッチングのずれによる反射や信号の歪み等によって、原理上では現れない位置に、ピークが現れる場合がある。その一例を図15(b)に示す。この図15(b)は、ターゲットからの受信信号以外に、複数の虚像に相当するエイリアス信号が相関信号に生じる場合を示している。
【0016】
従って、従来のスペクトル拡散型レーダ装置においては、このエイリアス信号によって、物体が存在しなくとも、あたかも物体が存在するように検出される現象が生じるという問題がある。
【0017】
さらに、この現象は、擬似雑音符号の系列を変更すれば、異なる位置に生じる。その結果、ターゲットとなる物体の存在を誤検出する確率が高くなるという問題がある。
【0018】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、物体の存在を誤検出する確率を低減することができるスペクトル拡散型レーダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の目的を達成するため、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置は、スペクトル拡散された探知用電波を用いて物体を探知するスペクトル拡散型レーダ装置であって、狭帯域信号を発生する局部発振器と、第一の擬似雑音符号を生成する送信用符号生成器と、前記第一の擬似雑音符号に対して時間遅延させた第二の擬似雑音符号を生成する受信用符号生成器と、前記局部発振器から発生した信号を前記送信用符号生成器により拡散変調する拡散変調器と、前記拡散変調器により拡散変調した信号を送信する送信手段と、前記送信手段により送信した信号の反射波を受信する受信手段と、前記受信手段により受信した信号を前記受信用符号生成器により拡散復調する拡散復調器と、前記拡散復調器において拡散復調した信号と前記局部発振器の信号とを利用して周波数を変換する周波数変換器と、前記周波数変換器における周波数変換後のレーダ信号から虚像を判定する虚像判定手段とを備えることを特徴とする。
【0020】
この構成により、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の虚像判定手段において虚像が発生していることが検知可能となり、物体の誤検出を低減することができる。
【0021】
また、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記虚像判定手段は、前記送信用符号生成器及び前記受信用符号生成器から生成される符号の種類を繰り返し変更する符号変更制御部と、前記擬似雑音符号の変更前後のレーダ信号を比較することにより虚像判定を行う虚像判定演算部とを備えることを特徴とする。
【0022】
さらに、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記符号変更制御部は、前記虚像判定演算部においてスキャン範囲内に虚像がないと判定されるまで繰り返し符号を変更することを特徴とする。
【0023】
これらの構成により、符号変更制御部において、所定間隔で符号の種類を変更して、虚像判定演算部においてレーダ動作時にリアルタイムに虚像が発生しているか否かを判定することが可能となる。つまり、レーダのスキャン範囲に虚像が認識されなくなるまで擬似雑音符号の種類を変更することで、虚像の影響を回避することが可能となる。
【0024】
さらに、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記虚像判定手段は、さらに、前記送信手段と前記受信手段との間に配置される信号減衰器と、前記拡散変調器と前記送信手段、又は前記拡散変調器と前記信号減衰器の接続に切り替える第一スイッチと、前記拡散復調器と前記受信手段、又は前記拡散復調器と前記信号減衰器の接続に切り替える第二スイッチと、前記第一スイッチ及び前記第二スイッチの切替え制御を行うスイッチ切替え制御手段と、虚像判定の演算を行う虚像判定演算部とを備え、前記スイッチ切替え制御手段は、前記送信手段が信号を送信する前に、前記第一スイッチを前記拡散変調器と前記信号減衰器の接続に切り替え、前記第二スイッチを前記拡散復調器と前記信号減衰器の接続に切り替え、前記虚像判定手段は、前記送信手段から信号を送信する前に検出される時間遅延したレーダ信号以外のレーダ信号を虚像と判定することを特徴とする。
【0025】
これにより、スイッチ切替え制御手段において送信手段から信号を送信する前にスイッチ切替え動作を行って、虚像判定手段において時間遅延したレーダ信号以外のレーダ信号が検出される場合に虚像と判定することができるために、虚像が発生しているか否かを判定することが可能となる。
【0026】
また、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記虚像判定手段は、所定の閾値を超えるレーダ信号が検出された場合に、当該レーダ信号を虚像と判定することを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記スイッチ切替え制御手段は、さらに、前記虚像判定手段において前記虚像の判定を行った後に、前記第一スイッチを前記拡散変調器と前記送信手段の接続に切り替え、前記第二スイッチを前記拡散復調器と前記受信手段の接続に切り替え、前記虚像判定手段は、さらに、前記虚像判定演算部においてスキャン範囲内に虚像がないと判定されるまで、前記送信用符号生成器及び前記受信用符号生成器から生成される符号を繰り返し変更する符号変更制御部を備えることを特徴とする。
【0028】
この構成により、レーダ動作の前において虚像判定を行えると共に、虚像がレーダのスキャン範囲内に発生している場合、他の異なる種類の符号に変更することにより、虚像を回避することが可能となる。
【0029】
さらに、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置は、さらに、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記周波数変換器から出力されるレーダ信号を演算するレーダ信号演算手段を備えることを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記レーダ信号演算手段は、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記周波数変換器から出力されるレーダ信号を演算することを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記レーダ信号演算手段は、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記レーダ信号に虚像を抑圧する補正係数を乗算し、前記レーダ信号の平均値あるいは積分値を算出することにより補正演算を行うことを特徴とする。
【0032】
また、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記レーダ信号演算手段は、虚像を抑圧する補正係数を、虚像ピークに従い決定することにより補正演算を行うことを特徴とする。
【0033】
これらの構成により、レーダ信号に虚像が発生した場合、レーダ信号演算手段においてレーダ信号の補正演算を行って、虚像の影響を効果的に低減することが可能となる。
【0034】
さらに、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の前記レーダ信号演算手段は、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記周波数変換器から出力されるレーダ信号の正負を逆転した信号を生成し、前記周波数変換器から出力されるレーダ信号と正負を逆転したレーダ信号を足し合わせることにより補正演算を行うことを特徴とする。
【0035】
この構成により、レーダ信号演算手段において、レーダ信号に虚像が発生している場合、反転信号を加算することで虚像信号を相殺することができ、虚像の影響を回避することが可能となる。
【0036】
なお、本発明は、このようなスペクトル拡散型レーダ装置として実現することができるだけでなく、このようなスペクトル拡散型レーダ装置が備える特徴的な手段をステップとする虚像判定方法や虚像抑圧方法として実現したり、それらのステップをコンピュータに実行させるプログラムとして実現することができる。そして、そのようなプログラムは、CD−ROM等の記録媒体やインターネット等の伝送媒体を介して配信することができるのは言うまでもない。
【発明の効果】
【0037】
本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置によれば、観測される虚像信号を判定し、その虚像信号に対して補正演算を施すことができ、その影響を低減もしくは、回避することが可能となり、レーダ装置の誤動作を回避することが可能となる。
【0038】
これによって、物体の存在を誤検出する確率を低減することができ、より安全性に優れたスペクトル拡散型レーダ装置を提供することができるという作用効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
(実施の形態1)
スペクトル拡散型レーダシステム(以下レーダシステムと呼称)においては、送信用擬似雑音符号を使用して局部発振器の狭帯域信号を広帯域信号に拡散変調し、この広帯域信号をレーダ波として送信する。送信したレーダ波が物体に反射して得られた広帯域信号を受信信号として受信し、送信用の擬似雑音符号を時間遅延した受信用擬似雑音符号を用いて狭帯域信号に拡散復調する。復調して得られた相関信号と局部発振器の信号を混合することにより周波数変換してレーダ信号を生成する。このレーダ信号に基づいて、物体の有無、距離、相対速度等を算出することができる。
【0041】
しかしながら、従来のレーダシステムにおいては、その際、デバイスの非線形特性による信号の歪み、配線間の信号の伝搬による反射、マッチングのずれによる反射等によって、原理上では現れない位置に、ピークが現れる場合がある。
【0042】
従って、本実施の形態1に係るスペクトル拡散型レーダ装置は、虚像判定部によりレーダ信号に虚像が存在するかどうかの判断を行い、補正演算を行うことにより、虚像による物体の誤検出の確率を低減することを特徴とするものである。
【0043】
なお、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置は、例えば、図17に示すように、車両1701のフロントとテールとに備え、先行車両1702、障害物1703等の物体に対して、探知用電波を放射し、物体に反射された探知用電波を受信し、受信した探知用電波に基づいて、障害物の有無、距離、相対速度を算出する装置である。
【0044】
図1は、本実施の形態1に係るスペクトル拡散型レーダシステム100の機能ブロック図を示す。
【0045】
レーダシステム100は、送信用擬似雑音符号を生成する送信用符号生成器110、搬送波として使用される局部発振器111、局部発振器111の信号と送信用符号により拡散変調を行う拡散変調器112、信号を放射する送信用アンテナ113及び信号を受信する受信用アンテナ120、受信用擬似雑音符号を生成する受信用符号生成器121、受信信号と受信用符号を用いて信号を復調する拡散復調器122、復調された信号と局部発振器111の信号を混合し、レーダ信号を生成する周波数変換器123、及びレーダ信号に虚像が発生していないかを判断する虚像判定部130を備える。
【0046】
次に、本実施の形態1のレーダシステム100の動作手順を説明する。
送信用符号生成器110は、送信用の擬似雑音符号を生成し、生成した送信用擬似雑音符号を拡散変調器112へ供給する。ここで、送信用擬似雑音符号は、上述のように例えば、M系列符号やGold系列符号等のような擬似雑音符号である。本実施の形態1の説明においては、一例として、擬似雑音符号は、自己相関特性が優れているM系列符号とする。
【0047】
局部発振器111は、狭帯域信号を生成し、生成した狭帯域信号を拡散変調器112に供給する。なお、局部発振器111は、送受信共通として説明を行っているが、送受信それぞれに局部発振器を用意するとしても良い。但し、その場合は、周波数を安定化させるため、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)などが必要となり構成が複雑となる。
【0048】
拡散変調器112は、送信用符号生成器110から供給された送信用擬似雑音符号を使用して、局部発振器111から供給された狭帯域信号を広帯域信号に拡散変調する。拡散変調して得られた広帯域信号を、送信用アンテナ113を介して送信する。なお、拡散変調器112は、狭帯域信号を広帯域信号に拡散変調するにあたって、必要に応じて周波数変換や増幅等の信号処理を施すとしてもよい。
【0049】
受信用符号生成器121は、受信用擬似雑音符号を生成し、生成した受信用擬似雑音符号を拡散復調器122に供給する。ここで、受信用擬似雑音符号は、送信用擬似雑音符号を時間遅延させた符号である。すなわち、受信用擬似雑音符号は、送信用擬似雑音符号と同種の擬似雑音符号であり、送信用擬似雑音符号に対して、所定のチップ数分遅延した擬似雑音符号である。
【0050】
拡散復調器122は、受信用符号生成器121から供給された受信用擬似雑音符号を使用して、受信用アンテナ120を介して受信された広帯域信号を狭帯域の相関信号に拡散復調する。ここで、相関信号は、受信信号と受信用擬似雑音符号との位相が一致すれば(同期状態)狭帯域信号に復調され、大きな相関値が得られるが、一致しなければ(非同期状態)広帯域信号のままで復調されず、微弱な相関値が得られる。なお、拡散復調器122は、受信用アンテナ120を介して受信された受信信号に対して、必要に応じて低雑音増幅や周波数変換等の処理を施すとしてもよい。
【0051】
周波数変換器123は、拡散復調器122から出力される相関信号と局部発振器111の信号とを混合し、レーダ信号を生成する。このレーダ信号に基づいて、物体の有無、距離、相対速度等を算出する。
【0052】
虚像判定部130は、周波数変換器123から出力されるレーダ信号から虚像が発生しているか否かを判定する。
【0053】
以下、虚像を判定する方法について具体的な形態を挙げ説明する。
図2は、本実施の形態1におけるスペクトル拡散型レーダシステム100に備えられる虚像判定部130の詳細な機能ブロック図を示している。なお、擬似雑音符号は、自己相関特性に優れたM系列符号を用いて説明を行う。
【0054】
まず、擬似雑音符号を変更することにより、虚像の発生を判定する方法について説明を行う。
【0055】
図2に示す虚像判定部130は、M系列符号を異なる符号に変更する符号変更制御装置131と、虚像が発生しているか否かを判定する虚像判定演算回路132とを備える。
【0056】
符号変更制御装置131は、虚像の判定を行う際にM系列符号を変更する。M系列符号を変更する際、虚像判定演算回路132に制御信号を送信し、M系列符号の変更を行う。例えば、現在使用しているM系列符号の種類をA符号とし、変更後の種類をB符号とすると、A符号からB符号に変更する際に制御信号が虚像判定演算回路132に送信される。さらに、変更したB符号から元のA符号へ変更を行い、先ほどと同様に制御信号を虚像判定演算回路132に送信する。
【0057】
虚像判定演算回路132は、符号変更制御装置131からの制御信号を受け、A符号のレーダ信号と符号変更後のB符号のレーダ信号との比較を行い、さらに、M系列符号がB符号からA符号に変更されるのに伴い、B符号のレーダ信号とA符号のレーダ信号との比較を行う。なお、符号変更制御装置131は、符号の種類の変更を、例えばレーダスキャン1周期あるいは複数周期毎に変更する。
【0058】
この虚像判定部130の符号変更制御装置131を用いて符号変更を行う際、レーダ信号を探知したい物体が静止している場合と移動している場合、それぞれについて図3と図4に示して説明を行う。
【0059】
図3は、符号変更制御装置131を用いて符号変更を行う際、レーダ信号を探知したい物体が静止している場合の説明図である。
【0060】
図3(a)〜図3(c)に示すように、物体が静止している場合は、符号の変更を行ったとしても物体からの反射信号は、同じ位置に観測されるのに対して、虚像は符号変更毎に観測される位置が異なることとなる。そのため、A符号のときに観測された虚像は、B符号へ変更するとなくなり新たな虚像が発生することとなる。
【0061】
また、虚像は、符号によって決まった位置に観測されるため、図3(a)のA符号の場合に観測されていた虚像は、図3(b)に示すようにB符号へ変更すると消え、図3(c)に示すようにA符号に戻すことにより再度出現する。つまり、A符号からB符号へ変更し、さらにA符号へ戻すことにより、虚像判定部130において虚像の位置を同定することができ、虚像の判定が可能となる。ここで、距離“0”の位置に観測されるピークは、送信用アンテナ113から送信したレーダ波が、受信用アンテナ120にダイレクトに届くレーダ波のレーダ信号を表している。
【0062】
そこで、図2の符号変更制御装置131において、あらかじめ送受信の符号生成器に数種類の符号を記憶させるあるいは、別符号に変更できる機能を持たせておくことにより、虚像が発生した場合には符号を変更し、スキャン範囲から虚像がなくなるまで符号の変更を行う。あるいは、影響の少ない符号まで変更を行う。こうすることで、虚像判定部130において虚像の判定を行い、虚像と判定される像を演算により予め補正することにより虚像の影響を回避することが可能となる。
【0063】
なお、ここで、別符号に変更できる符号変更制御装置131における機能は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラミングすることができるLSIを用いて、M系列符号を生成する演算を多数用意しておき、符号の変更命令に従い、随時符号を変更できるようにすることである。
【0064】
次に、図4を用いて物体が移動している場合について説明を行う。
図4は、符号変更制御装置131を用いて符号変更を行う際、レーダ信号を探知したい物体が移動している場合の説明図である。
【0065】
次に、図4(a)〜図4(c)に示すように、物体が移動している場合は、図4(a)のA符号から図4(b)のB符号へ変更し、そして図4(c)のA符号へ戻すと、物体は、移動しているため同じ位置には観測されない。
【0066】
しかしながら、虚像は、符号によって決まった位置に観測されるため、図4(a)のA符号から図4(b)に示すB符号へ変更し、さらに図4(c)に示すA符号へ戻すことにより、同じ符号では同じ位置に観測されるために虚像の位置は同定することができる。
【0067】
このように、M系列符号を変更することで、虚像が発生しているか否かを判定することができる。なお、本実施の形態1においては、説明のため2種類のM系列符号を変更し説明を行ったが、変更する符号の種類を増加させたとしても同様の結果が得られる。
【0068】
次に、虚像が発生した場合に虚像信号の影響を低減するスペクトル拡散型レーダ装置について図5、及び図6を用いて説明を行う。
【0069】
図5に示すレーダシステム500は、符号を変更することにより虚像を判定する図1のレーダシステム100の構成に加えて虚像判定部130から出力される虚像判定信号に基づき、レーダ信号を演算処理するレーダ信号演算装置160を新たに備えることを特徴とする。
【0070】
虚像の位置判定は、すでに記述した符号を変換する方法により同定することが可能である。従って本図に示すレーダ信号演算装置160は、虚像判定部130から出力される虚像判定信号に基づき、周波数変換器123から出力されるレーダ信号に対して虚像の影響を軽減する補正演算を行う。
【0071】
また、図6は、図5のレーダシステム500の虚像判定部130の詳細を示したレーダシステム500の機能ブロック図であり、符号を変更することにより虚像を判定する図2に示すレーダシステム100に、上述したレーダ信号演算装置160を備えるものである。
【0072】
虚像判定部130は、虚像の位置やピーク強度を判定し、レーダ信号演算装置160は、虚像判定信号に基づき虚像の抑圧を行う。
【0073】
さらに、レーダ信号演算装置160は、スキャン1周期あるいは複数周期後に符号を変更して、符号を変更するたびにレーダ信号を加算して平均化することにより、虚像の影響を抑圧することができる。なお、符号の変更回数は、符号変更毎に加算して平均化するため、多いほど虚像の影響を軽減することができ、より信頼性の高いレーダ装置を提供することが可能となる。
【0074】
具体的には、図6に示す虚像判定演算回路132において、観測したレーダ信号の虚像の発生している位置に虚像を抑圧する補正係数を算出し、その補正係数をレーダ信号演算装置160に入力してレーダ信号と補正係数を乗算し、計算結果の平均値や積分値を算出し補正することで、虚像の影響を低減する。
【0075】
例えば、図7は、本実施の形態1に係るレーダシステム500を用いて虚像判定した後、虚像の部分に補正係数0.2を乗算する前後のグラフを示す図である。なお、図7(a)は補正前の状態であり、図7(b)は補正後の状態である。あるいは、虚像判定演算回路132にてレーダ信号の虚像のピーク強度を算出し、そのピーク強度に応じた補正係数を算出し、その補正係数をレーダ信号演算装置160に入力してレーダ信号と補正係数を乗算し、計算結果の平均値や積分値を算出することで、虚像の影響を低減する。
【0076】
一例として、図7(a)のピーク強度が強い虚像に対して、補正係数0.1を乗算し、弱いピーク強度の虚像には補正係数0.2を乗算した結果を図7(c)に示す。補正係数の決定は、例えば、ピーク強度の一番小さい虚像の補正係数を0.2と決め、これを基準として、補正係数=(0.2)×(基準の虚像のピーク強度)/(虚像のピーク強度)として算出する。あるいは、あらかじめノイズフロア等の基準となるレベルを定めておき、そこから5dB毎に補正係数を0.2,0.1,0.05等というように決定するとしてもよい。
【0077】
以上の説明のように、本実施の形態1に係るスペクトル拡散型レーダ装置においては、虚像判定部130に備えられている符号変更制御装置131を用いて符号を変更することでレーダ動作中にリアルタイムに発生する虚像を判定できる。
【0078】
また、レーダシステム500のレーダ信号演算装置160において虚像信号に対して補正演算を施すことができ、虚像の影響を低減もしくは、回避することが可能となり、虚像が発生することによるレーダ装置の誤動作を回避することが可能となる。このため、物体の存在を誤検出する確率を低減することができ、より安全性に優れたスペクトル拡散型レーダ装置を提供できる。
【0079】
また、レーダのスキャン範囲に虚像が認識されなくなるまで擬似雑音符号を変更することで、虚像の影響を回避することが可能となる。
【0080】
(実施の形態2)
以下、本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置の第二の実施の形態について図面を参照して説明を行う。
【0081】
図8は、本実施の形態2に係るレーダシステム800の機能ブロック図を示す。なお、本実施の形態2に係るスペクトル拡散型レーダ装置は、スイッチ切替え制御装置を用いて、レーダ波を送信する前に虚像を判定することを特徴としている。
【0082】
図8に示すように、本実施の形態2に係るレーダシステム800において、虚像判定部130は、信号を減衰させる信号減衰器140と、信号減衰器140と送信用アンテナ113との接続を切り替える送信側スイッチ151と、信号減衰器140と受信用アンテナ120との接続を切り替える受信側スイッチ152と、送信側スイッチ151と受信側スイッチ152の接続先を決定するスイッチ切替え制御装置133と、虚像の有無を判定する虚像判定演算回路132とを備える。
【0083】
スイッチ切替え制御装置133は、送信側スイッチ151と受信側スイッチ152の接続先を制御し、虚像の有無の判定を行う場合、虚像判定演算回路132に制御信号が出力され、送受信双方のスイッチを信号減衰器140側に接続する。レーダ動作させる場合には、双方のスイッチをアンテナ側に接続する。
【0084】
そして、虚像を判定する場合、スイッチ切替え制御装置133から制御信号が虚像判定演算回路132と送受信のスイッチに出力され、送信側スイッチ151と受信側スイッチ152が信号減衰器140に接続される。この状態でレーダ動作を行った場合のレーダ信号の一例を図9に示す。
【0085】
図9は、本実施の形態2に係るレーダシステム800を用いてレーダ波を送信する前に虚像判定を行う場合の説明図である。
【0086】
図9(a)に示すように、送信用アンテナ113からレーダ波を放射しないため、ターゲットとなる物体は存在せず、信号減衰器を伝播した時間だけ遅れた位置に探知信号Aが出力されるだけである。そのため、図9(b)に示すように探知信号A以外の信号が発生している場合には、これらの信号はすべて虚像であると判断できる。
【0087】
なお、虚像の判定は、あらかじめ閾値を設定しておき、閾値以上になる信号については、虚像であると判断してもよい。例えば、閾値をノイズフロアから10dBと定めておき、10dB以上の信号は虚像であると判断する。
【0088】
次に、虚像が発生した場合に虚像信号の影響を低減するスペクトル拡散型レーダ装置について図10を用いて説明を行う。
【0089】
図10は、レーダ波を送信する前に虚像を判定するレーダシステム800に上述した実施の形態1と同様のレーダ信号演算装置160を備えるレーダシステム1000の機能ブロック図を示す。
【0090】
上記図2と同様に、虚像の位置やピーク強度を虚像判定部130により判定し、虚像判定信号に基づきレーダ信号演算装置160で虚像の抑圧を行う補正演算を行う。さらに、オフセット信号を用いることで虚像の抑圧効果を高めることができる。
【0091】
ここで、レーダシステム1000は、レーダ波を送信する前に虚像判定を行うため、ターゲットとなる物体からの反射が存在しない。そのため、このデータをオフセットレーダ信号として直接利用することで、虚像の影響を除去することができる。
【0092】
本実施の形態2のレーダシステムの具体的な補正例について図11に示す。図11は、本実施の形態2に係るレーダシステム1000での補正演算の一例を示す図である。
【0093】
図11(a)は、虚像判定時に虚像が発生している場合のレーダ信号を示している。ターゲットとなる物体からの反射信号は含まれていないため、図11(a)に現れているレーダ信号は不要な信号である。
【0094】
そこで、図11(a)のレーダ信号の正負を反転し、これをレーダ信号のオフセット信号として使用すると図11(b)となる。
【0095】
次に、送信側スイッチ151と受信側スイッチ152をアンテナ側に接続し、通常のレーダ動作を行う。この場合のレーダ信号は、図11(c)に示すように虚像とターゲットとなる物体からの反射信号が含まれ、レーダ信号演算装置160に入力される。レーダ信号演算装置160は、図11(c)の通常のレーダ信号とオフセット信号として用いる図11(b)のレーダ信号を加算し、演算したレーダ信号を出力することで図11(d)となる。こうすることで、虚像は、完全になくなり、物体からのレーダ信号のみが出力されるようになる。なお、図11(a)のレーダ信号の情報から、補正係数を算出し、抑圧するとしてもよい。
【0096】
以上の説明のように、本実施の形態2に係るスペクトル拡散型レーダ装置においては、虚像判定部130に備えられているスイッチ切替え制御装置133を用いることで、物体検知動作を行う前であるレーダ波を送信する前に虚像の発生を判定できる。
【0097】
また、レーダ信号演算装置160において発生している虚像信号に対して補正演算を施すことができ、虚像の影響を低減もしくは、回避することが可能となり、効率的に物体の存在を誤検出する確率を低減することができ、このため、より安全性に優れたスペクトル拡散型レーダ装置を提供することができる。
【0098】
以下、図12及び図13を用いて本発明に係るレーダシステムの機能の組み合わせ例を示す。
【0099】
図12は、図8の構成に符号変更制御装置131を追加したレーダシステム1200の機能ブロック図を示している。
【0100】
上述の実施の形態2に示すレーダシステム800のように虚像の判定が可能になれば、図8の構成に符号変更制御装置131を追加することにより、虚像の影響を回避することが可能となるため、レーダシステム1200は、スイッチ切替え制御装置133においてレーダ波を送信する前に虚像の有無を判定すると共に、符号変更制御装置131において、虚像判定演算回路132から虚像発生の信号を受信すると符号を変更し、変更したM系列符号がレーダのスキャン範囲に虚像を発生しなくなるまで符号を変更することができる。
【0101】
こうすることで、レーダ波を送信する前に虚像の影響を回避することができると共に、レーダ波を送信する物体の検出動作の後においても適切に虚像を判定して、スペクトル拡散型レーダ装置における安全性を向上できる。
【0102】
さらに、図12に示すレーダシステム1200に加えて、レーダ信号演算装置160を備えるレーダシステム1300としてもよい。
【0103】
図13は、レーダシステム1200の構成にレーダ信号演算装置160を追加したレーダシステム1300の機能ブロック図を示し、レーダ信号演算装置160においてオフセット信号を用いた虚像の抑圧や補正係数を用いた虚像の抑圧、さらには、符号を変更してレーダ信号を加算して平均化することにより補正演算を行って、虚像の影響を抑圧することができるため、より信頼性の高いレーダ装置を提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、スペクトル拡散方式を利用したスペクトル拡散型レーダ装置等として、特に、受信信号以外に生じるエイリアス信号を抑制するスペクトル拡散型レーダ装置等として、例えば車載レーダ装置として適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】実施の形態1に係るスペクトル拡散型レーダシステムの機能ブロック図
【図2】実施の形態1におけるスペクトル拡散型レーダシステムに備えられる虚像判定部の詳細な機能ブロック図
【図3】符号変更制御装置を用いて符号変更を行う際、レーダ信号を探知したい物体が静止している場合の説明図
【図4】符号変更制御装置を用いて符号変更を行う際、レーダ信号を探知したい物体が移動している場合の説明図
【図5】実施の形態1に係るレーダシステムの機能ブロック図
【図6】図5のレーダシステムの虚像判定部の詳細を示したレーダシステムの機能ブロック図
【図7】実施の形態1に係るレーダシステムを用いて虚像判定した後、虚像の部分に補正係数を乗算する前後のグラフを示す図
【図8】実施の形態2に係るレーダシステムの機能ブロック図
【図9】実施の形態2に係るレーダシステムを用いてレーダ波を送信する前に虚像判定を行う場合の説明図
【図10】実施の形態2に係るレーダ信号演算装置を備えるレーダシステムの機能ブロック図
【図11】実施の形態2に係るレーダシステムでの補正演算の一例を示す図
【図12】図8の構成に符号変更制御装置を追加したレーダシステムの機能ブロック図
【図13】レーダシステムの構成にレーダ信号演算装置を追加したレーダシステムの機能ブロック図
【図14】スペクトル拡散型レーダ装置の探知原理の概要を示す図
【図15】拡散復調して得られたレーダ信号の概要を示す図
【図16】従来の誤検出を低減するスペクトル拡散型レーダ装置の機能ブロック図
【図17】本発明に係るスペクトル拡散型レーダ装置を車載レーダ装置とした場合の参考図
【符号の説明】
【0106】
100,500,800,1000,1200,1300 レーダシステム
110 送信用符号生成器
111 局部発振器
112 拡散変調器
113 送信用アンテナ
120 受信用アンテナ
121 受信用符号生成器
122 拡散復調器
123 周波数変換器
130 虚像判定部
131 符号変更制御装置
132 虚像判定演算回路
133 スイッチ切替え制御装置
140 信号減衰器
151 送信側スイッチ
152 受信側スイッチ
160 レーダ信号演算装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スペクトル拡散された探知用電波を用いて物体を探知するスペクトル拡散型レーダ装置であって、
狭帯域信号を発生する局部発振器と、
第一の擬似雑音符号を生成する送信用符号生成器と、
前記第一の擬似雑音符号に対して時間遅延させた第二の擬似雑音符号を生成する受信用符号生成器と、
前記局部発振器から発生した信号を前記第一の擬似雑音符号により拡散変調する拡散変調器と、
前記拡散変調器により拡散変調した信号を送信する送信手段と、
前記送信手段により送信した信号の反射波を受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した信号を前記第二の擬似雑音符号により拡散復調する拡散復調器と、
前記拡散復調器において拡散復調した信号と前記局部発振器の信号とを利用して周波数を変換することによりレーダ信号を生成する周波数変換器と、
前記周波数変換器における周波数変換後のレーダ信号から虚像を判定する虚像判定手段とを備える
ことを特徴とするスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項2】
前記虚像判定手段は、
前記送信用符号生成器及び前記受信用符号生成器から生成される符号の種類を繰り返し変更する符号変更制御部と、
前記擬似雑音符号の変更前後のレーダ信号を比較することにより虚像判定を行う虚像判定演算部とを備える
ことを特徴とする請求項1記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項3】
前記符号変更制御部は、前記虚像判定演算部においてスキャン範囲内に虚像がないと判定されるまで繰り返し符号を変更する
ことを特徴とする請求項2記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項4】
前記虚像判定演算部は、前記符号変更制御部において符号の種類を繰り返し変更した場合、同じ種類の符号において同じ位置に観測され、異なる種類の符号においては当該位置と異なる位置に観測されるレーダ信号を虚像と判定する
ことを特徴とする請求項2記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項5】
前記符号変更制御部は、さらに、前記異なる種類の符号として、所定間隔で第一符号及び第二符号に交互に、前記虚像判定演算部においてスキャン範囲内に虚像がないと判定されるまで繰り返し変更し、
前記虚像判定演算部は、前記符号変更制御部において前記第一符号から前記第二符号に変更し、さらに前記第二符号から前記第一符号に繰り返し変更した場合に、前記第一符号において同じ位置に観測され、前記第二符号においては当該位置と異なる位置に観測されるレーダ信号を虚像と判定する
ことを特徴とする請求項2記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項6】
前記虚像判定手段は、さらに、
前記送信手段と前記受信手段との間に配置される信号減衰器と、
前記拡散変調器と前記送信手段、又は前記拡散変調器と前記信号減衰器の接続に切り替える第一スイッチと、
前記拡散復調器と前記受信手段、又は前記拡散復調器と前記信号減衰器の接続に切り替える第二スイッチと、
前記第一スイッチ及び前記第二スイッチの切替え制御を行うスイッチ切替え制御手段と、
虚像判定の演算を行う虚像判定演算部とを備え、
前記スイッチ切替え制御手段は、前記送信手段が信号を送信する前に、前記第一スイッチを前記拡散変調器と前記信号減衰器の接続に切り替え、前記第二スイッチを前記拡散復調器と前記信号減衰器の接続に切り替え、
前記虚像判定手段は、前記送信手段から信号を送信する前に検出される時間遅延したレーダ信号以外のレーダ信号を虚像と判定する
ことを特徴とする請求項1記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項7】
前記虚像判定手段は、所定の閾値を超えるレーダ信号が検出された場合に、当該レーダ信号を虚像と判定する
ことを特徴とする請求項6記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項8】
前記スイッチ切替え制御手段は、さらに、前記虚像判定手段において前記虚像の判定を行った後に、前記第一スイッチを前記拡散変調器と前記送信手段の接続に切り替え、前記第二スイッチを前記拡散復調器と前記受信手段の接続に切り替え、
前記虚像判定手段は、さらに、
前記虚像判定演算部においてスキャン範囲内に虚像がないと判定されるまで、前記送信用符号生成器及び前記受信用符号生成器から生成される符号を繰り返し変更する符号変更制御部を備える
ことを特徴とする請求項6記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項9】
前記スペクトル拡散型レーダ装置は、さらに、
前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記周波数変換器から出力されるレーダ信号を演算するレーダ信号演算手段を備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項10】
前記レーダ信号演算手段は、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記周波数変換器から出力されるレーダ信号を演算する
ことを特徴とする請求項9記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項11】
前記レーダ信号演算手段は、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記レーダ信号に虚像を抑圧する補正係数を乗算し、前記レーダ信号の平均値あるいは積分値を算出することにより補正演算を行う
ことを特徴とする請求項9記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項12】
前記レーダ信号演算手段は、虚像を抑圧する補正係数を、虚像ピークに従い決定することによる補正演算を行う
ことを特徴とする請求項9記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項13】
前記レーダ信号演算手段は、前記虚像判定手段から出力される虚像判定信号に基づき、前記拡散復調器から出力されるレーダ信号の正負を逆転した信号を生成し、前記拡散復調器から出力されるレーダ信号と正負を逆転したレーダ信号を足し合わせることにより補正演算を行う
ことを特徴とする請求項9記載のスペクトル拡散型レーダ装置。
【請求項14】
スペクトル拡散された探知用電波を用いて物体を探知するスペクトル拡散型レーダ装置に用いる虚像判定方法であって、
狭帯域信号を発生する局部発振ステップと、
第一の擬似雑音符号を生成する送信用符号生成ステップと、
前記第一の擬似雑音符号に対して時間遅延させた第二の擬似雑音符号を生成する受信用符号生成ステップと、
前記局部発振ステップにおいて発生した信号を前記第一の擬似雑音符号により拡散変調する拡散変調ステップと、
前記拡散変調ステップにおいて拡散変調した信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップにおいて送信した信号の反射波を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した信号を前記第二の擬似雑音符号により拡散復調する拡散復調ステップと、
前記拡散復調ステップにおいて拡散復調した信号と前記局部発振ステップにおける信号とを利用して周波数を変換することによりレーダ信号を生成する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップにおける周波数変換後のレーダ信号から虚像を判定する虚像判定ステップとを含む
ことを特徴とする虚像判定方法。
【請求項15】
スペクトル拡散された探知用電波を用いて物体を探知するスペクトル拡散型レーダ装置に用いる虚像抑圧方法であって、
狭帯域信号を発生する局部発振ステップと、
第一の擬似雑音符号を生成する送信用符号生成ステップと、
前記第一の擬似雑音符号に対して時間遅延させた第二の擬似雑音符号を生成する受信用符号生成ステップと、
前記局部発振ステップにおいて発生した信号を前記第一の擬似雑音符号により拡散変調する拡散変調ステップと、
前記拡散変調ステップにおいて拡散変調した信号を送信する送信ステップと、
前記送信ステップにおいて送信した信号の反射波を受信する受信ステップと、
前記受信ステップにおいて受信した信号を前記第二の擬似雑音符号により拡散復調する拡散復調ステップと、
前記拡散復調ステップにおいて拡散復調した信号と前記局部発振ステップにおける信号とを利用して周波数を変換することによりレーダ信号を生成する周波数変換ステップと、
前記周波数変換ステップにおける周波数変換後のレーダ信号から虚像を判定する虚像判定ステップと、
前記虚像判定ステップにおいて出力される虚像判定信号に基づき、前記周波数変換ステップにおいて出力されるレーダ信号を演算するレーダ信号演算ステップとを含む
ことを特徴とする虚像抑圧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−74917(P2009−74917A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−244014(P2007−244014)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】