説明

スペクトル撮像のための高速切り換えのシステム及び方法

【課題】CTイメージング・システムにおける高速二重kVp切り換えの方法及び装置を提供する。
【解決手段】システムが、少なくとも一つの電圧レベルを出力するように構成されている発生器と、対象に向けて照射されるX線を発生するように構成されているX線源とを含んでいる。このシステムは、発生器の出力及びX線源の入力に結合されており、第一の電圧レベルと第二の電圧レベルとの間でX線源への出力を切り換える又は切り換えることを支援するように構成されているモジュールを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的には、診断撮像に関し、さらに具体的には、既存のCTイメージング・システムにおける高速二重kVp切り換えの方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムでは、X線源がコーン形状のビームを患者又は手荷物のような被検体又は物体に向けて放出する。以下では、「被検体」及び「物体」「対象」等の用語は、撮像されることが可能な任意の物体を包含するものとする。ビームは、被検体によって減弱された後に放射線検出器のアレイに入射する。検出器アレイにおいて受光される減弱後のビーム放射線の強度は典型的には、被検体によるX線ビームの減弱に依存する。検出器アレイの各々の検出器素子が、各々の検出器素子によって受光される減弱後のビームを示す別個の電気信号を発生する。これらの電気信号は量子化されてデータ処理システムへ送信されて解析を施され、これにより最終的に画像を形成する。
【0003】
一般的には、X線源及び検出器アレイは、撮像平面内で被検体を中心としてガントリの周りで回転する。X線源は典型的には、焦点からX線ビームを放出するX線管を含んでいる。X線検出器は典型的には、検出器において受光されるX線ビームをコリメートするコリメータと、コリメータに隣接して設けられておりX線を光エネルギへ変換するシンチレータと、隣接するシンチレータから光エネルギを受け取ってここから電気信号を発生するフォトダイオードとを含んでいる。
【0004】
典型的には、シンチレータ・アレイの各々のシンチレータがX線を光エネルギへ変換する。各々のシンチレータは、隣接するフォトダイオードに光エネルギを放出する。各々のフォトダイオードは、光エネルギを検出して対応する電気信号を発生する。次いで、フォトダイオードの出力は量子化された後にデータ処理システムへ伝送されて、画像再構成を施される。
【0005】
CTイメージング・システムは、エネルギ識別(ED)型、多重エネルギ(ME)型、及び/又は二重エネルギ(DE)型のCTイメージング・システムを含む場合があり、これらのシステムは、EDCTイメージング・システム、MECTイメージング・システム、及び/又はDE−CTイメージング・システムとも呼ばれる。EDCT、MECT及び/又はDE−CTイメージング・システムは、異なるX線スペクトルに応答するように構成される。例えば、従来の第三世代CTシステムは、放出されるX線ビームを構成する入射フォトンのエネルギのピーク及びスペクトルを変化させたX線管の異なるピーク・キロボルト(kVp)・レベルにおいて逐次的にX線投影データを取得することができる。検出器に到達する各々のX線フォトンが当該フォトンのフォトン・エネルギを示しているようなエネルギ感知型検出器を用いることができる。
【0006】
これらの測定を得る手法として、二つの別個のエネルギ・スペクトルによって走査を行なって、検出器でのエネルギ堆積に応じてフォトン・エネルギを検出するものがある。EDCT/MECT/DE−CTは、エネルギ識別及び物質特徴決定を提供する。例えば、物体散乱が存在しない状態で、システムは、スペクトルの二つのフォトン・エネルギ領域からの信号、すなわち入射X線スペクトルの低エネルギ部分及び高エネルギ部分からの信号に基づいて、異なるエネルギにおける挙動を導く。二つのエネルギ領域から検出される信号は、撮像されている物質のエネルギ依存性を分解するのに十分な情報を提供する。さらに、二つのエネルギ領域から検出される信号は、2種の仮想的物質で構成される物体の相対的組成を決定するのに十分な情報を提供する。
【0007】
二重エネルギ走査の主な目的は、異なるエネルギ・スペクトルでの2回の走査を用いることにより画像内でのコントラスト分離を強化する診断CT画像を得ることにある。産業用検査システムの場合には、この情報は被走査物体の物質特定的な特性の特徴決定を可能にする。シンチレータのようなエネルギ識別型でない検出器を用いて二重エネルギ走査を達成する多くの手法が提案されている。かかる手法としては、管を例えば80kVp及び140kVpの電位において動作させて、2回の走査を連続して(back-to-back)時間的に逐次的に取得する手法であって、これらの走査が被検体の周りでの2回転を必要とする手法、又は回転角度の関数としてインタリーブして取得する手法であって、被検体の周りでの1回転を必要とする手法の何れかがある。高周波発生器が、交番するビュー毎にX線源の電位を切り換えることを可能にした。結果として、二重エネルギ投影データ(高エネルギ及び低エネルギ投影データ)を、従来のCT技術では必要とされていたような数秒間隔で行なわれる2回の別個の走査ではなく、時間的にインタリーブされた態様で得ることができる。しかしながら、互いから数秒間隔にある別個の走査を取得すると、患者の運動(患者の外的運動及び内部器官の運動の両方)、並びに列型(in-line)物体検査に用いられるようなヘリカル・スキャン(螺旋走査)の場合には異なるコーン角度に起因して、データ集合同士の間に位置揃え不正が生ずる。また、一般に、従来の2回式の二重kVp手法は、手荷物スキャナのように、運動している身体の特徴又は物体の特徴について微小な細部を分解する必要がある場合に信頼して適用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−054199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
高周波発生器を介してX線源電位を切り換えれば従来の2回式二重エネルギ走査に関連する問題の多くが解決されるが、かかる構成は幾つかの撮像応用に必要とされる切り換え速度を必ずしも提供しない。例えば、心臓撮像、並びに警備用及び産業用検査のような幾つかの低電流撮像応用は、単に高周波発生器によってX線源電位を切り換えていたのでは実効的に実行され得ない。しばしば、これら装置を接続するケーブル及びX線管のキャパシタンス、並びに低いX線管電流レベルを部分的な理由として、高周波発生器とX線源との間で動作電位の切り換えの応答時間に遅延が存在する。
【0010】
上述の二重kVp切り換え手法を用いると、高電圧発生器は高電圧ケーブルを介してX線管のようなX線源に直接結合される。高電圧発生器は2種の別個の電圧レベルの間を切り換わって二重kVp撮像を行なうことが可能な2段型発生器であってよいが、この切り換えは典型的には、容量効果及び他の効果による影響を受ける。すなわち、発生器を第一の(低)電圧レベル又は第一のkVpレベルから第二の(高)kVpレベルに切り換えるときの立ち上がり時間が、高電圧発生器の電力によって限定されて、多くの医療応用及び警備応用での実効的な二重kVp撮像には低速過ぎる場合がある。同様に、高kVpレベルから低kVpレベルへの切り換えの間の立ち下がり時間は一般に極く低速であり、印加される複数のスペクトルのエネルギ分離を実効的に低下させ、物質特定感度が低下し従って二重kVp撮像の実効性が低下する。このようなものとして、これらの不十分な切り換え速度はしばしば、投影データ対には位置揃え不正を、また再構成画像には縞アーティファクトを招く。
【0011】
従って、適当な二重kVp切り換えを提供する装置及び方法を設計することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の欠点を克服した高速kVp切り換えの方法及び装置に関するものである。
【0013】
本発明の一つの観点によれば、システムが、少なくとも一つの電圧レベルを出力するように構成されている発生器と、対象に向けて照射されるX線を発生するように構成されているX線源とを含んでいる。このシステムは、発生器の出力及びX線源の入力に結合されており、第一の電圧レベルと第二の電圧レベルとの間でX線源の出力を切り換える又は切り換えることを支援するように構成されているモジュールを含んでいる。
【0014】
本発明のもう一つの観点によれば、1よりも多いエネルギ・スペクトルにおいて撮像データを取得する方法が、X線源に接続可能なモジュールに少なくとも一つの電圧を入力するステップと、モジュールをX線源に結合して、第一の電圧をX線源に出力するステップとを含んでいる。この方法はさらに、第一の電圧を用いて発生されるX線エネルギ・スペクトルの第一のビームをX線源から対象に向けて投射して、第一の測定投影データ集合を取得するステップと、回路モジュールを用いて第一の電圧から第二の電圧に切り換えるステップと、第二の電圧を用いて発生されるX線エネルギの第二のビームをX線源から対象に向けて投射して、第二の測定投影データ集合を取得するステップと、第一及び第二の測定投影データ集合から少なくとも一つの代表画像を再構成するステップとを含んでいる。
【0015】
本発明のさらにもう一つの観点によれば、イメージング・システムが、走査したい被検体を収容する開口を有するガントリと、多数のエネルギを有するX線を被検体に向けて投射するように構成されているX線源と、X線源に結合されており、少なくとも一つの電圧を発生するように構成されている発生器と、発生器とX線源との間に結合されており、第一の電圧を印加するときには第一のエネルギ・スペクトルを有するX線が発生され、第二の電圧を印加するときには第二のエネルギ・スペクトルを有するX線が発生されるように、第一の電圧と第二の電圧との間で切り換える又は切り換えることを支援することを提供するように構成されている回路モジュールと、コンピュータとを含んでいる。コンピュータは、第一のエネルギ・スペクトルにあるX線及び第二のエネルギ・スペクトルにあるX線から撮像データを取得するように構成されている。
【0016】
これらの利点及び特徴、並びに他の利点及び特徴は、添付の図面に関連して掲げられている本発明の好適実施形態の以下の詳細な説明からさらに容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】CTイメージング・システムの見取り図である。
【図2】図1に示すシステムのブロック模式図である。
【図3】本発明の実施形態による高速kVp電圧波形の概略ブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による高速kVp切り換え構成のグラフ図である。
【図5】本発明の実施形態による切り換え介設回路の模式図である。
【図6】本発明の実施形態による高速kVp切り換え構成の概略ブロック図である。
【図7】本発明の実施形態による高速kVp切り換え構成の概略ブロック図である。
【図8】本発明の実施形態による非侵襲型小包検査システムと共に用いられるCTシステムの見取り図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の各実施形態の動作環境を64スライス型計算機式断層写真法(CT)システムに関連して説明する。しかしながら、当業者には、本発明の各実施形態が他のマルチ・スライス型構成での利用にも同等に適用可能であることが認められよう。また、本発明の各実施形態をX線の検出及び変換に関連して説明する。しかしながら、当業者はさらに、本発明の各実施形態が他の高周波電磁エネルギの検出及び変換にも同等に適用可能であることを認められよう。本発明の各実施形態を「第三世代」CTスキャナに関連して説明するが、本発明の各実施形態は他世代のCTシステムにも同等に適用可能である。加えて、X線管及び検出器は撮像対象の周りを回転すると記載されているが、検出器及びX線源が静止した状態に保たれて物体が回転するような代替的構成も思量される。また、CTシステムの環境で議論するが、これらの手法は、医療用及び産業用の放射線応用に用いられる投影X線撮像にも同等に適用可能である。
【0019】
図1には、計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム10が、「第三世代」CTスキャナに典型的なガントリ12を含むものとして示されている。ガントリ12はX線源14を有し、X線源14は、ガントリ12の反対側に位置する検出器アセンブリ又はコリメータ18に向けてX線ビームを投射する。ここで図2を参照して述べると、検出器アセンブリ18は、複数の検出器20及びデータ取得システム(DAS)32によって形成されている。複数の検出器20は、患者22を透過する投射X線16を感知し、DAS32は後続の処理のためにデータをディジタル信号へ変換する。各々の検出器20が、入射X線ビームの強度を表わし従って患者22を透過した減弱後のビームの強度を表わすアナログ電気信号を発生する。X線投影データを取得するための1回の走査の間に、ガントリ12及びガントリ12に装着されている構成部品は回転中心24の周りを回転する。
【0020】
ガントリ12の回転及びX線源14の動作は、CTシステム10の制御機構26によって制御される。制御機構26は、X線源14に電力及びタイミング信号を供給するX線制御器28及び発生器29と、ガントリ12の回転速度及び位置を制御するガントリ・モータ制御器30とを含んでいる。画像再構成器34が、サンプリングされてディジタル化されたX線データをDAS32から受け取って高速再構成を実行する。再構成された画像はコンピュータ36への入力として印加され、コンピュータ36は大容量記憶装置38に画像を記憶させる。
【0021】
コンピュータ36はまた、キーボード、マウス、音声作動式コントローラ、又は他の任意の適当な入力装置のような何らかの形態の操作者インタフェイスを有するコンソール40を介して、操作者から命令及び走査用パラメータを受け取る。付設されている表示器42によって、操作者は、再構成された画像及びコンピュータ36からのその他のデータを観測することができる。操作者が供給した命令及びパラメータはコンピュータ36によって用いられて、DAS32、X線制御器28及びガントリ・モータ制御器30に制御信号及び情報を供給する。加えて、コンピュータ36は、電動テーブル46を制御するテーブル・モータ制御器44を動作させて、患者22及びガントリ12を配置する。具体的には、テーブル46は患者22を図1のガントリ開口48を通して全体として又は部分的に移動させる。
【0022】
図3には、本発明による高速kVp切り換え構成の実施形態の一例が示されている。システム200は、高電圧ケーブル220に結合された高電圧発生器210を含んでいる。高電圧発生器210は、少なくとも一つの電圧レベルを発生するように構成されている。システム200は、高電圧ケーブル220とX線管240との間に結合されている介設回路(interposer circuit)230を含んでいる。本発明の各実施形態では、X線管240は、例として単カソード型X線管であっても二重カソード型X線管であってもよい。介設回路230は、第一の電圧レベルと第二の電圧レベルとの間を高速で切り換える又は切り換えることを支援するように構成されている。この第一の電圧レベルと第二の電圧レベルとの間での高速切り換えは、投影対の位置揃え不正及び再構成画像に結果として生じ得るアーティファクトを大幅に減少させ、これにより走査対象の物質分解及び実効原子番号決定を改善する。
【0023】
続けて図3について述べると、上述のように、介設回路230は、高電圧ケーブル220とX線管240との間に結合されている。かかる構成では、高電圧ケーブル220の負荷キャパシタンスは、介設回路230によって達成可能な切り換え速度に最小限で影響する。但し、介設回路230の配置はシステム200に示す構成に限定されない。本発明の各実施形態では、介設回路230は、様々な構成の下でX線システムの発生器を含め既存のX線システムに組み入れられ得るモジュール式ユニットとして構築され得る。かかる構成の実例については本書であらためて議論する。モジュール式ユニットとして、介設回路230は既存のシステムの内部に装着され又は組み入れられて、このようにして本例では高速二重kVp撮像を可能にするためのX線システムの完全な分解修理(オーバホール)又は交換を、不必要にすることができる。従って、モジュール式介設回路230を既存のX線システムに単に組み入れることにより、高速二重kVp撮像のために既存のX線システムを改造する又は交換することに典型的に伴う経費が大幅に縮小される。
【0024】
図4は、実施形態の一例による二重kVp切り換えのプロット300を示す。一対の電圧レベルkV_L及びkV_Hが電圧軸302に沿って示されており、第一の電圧305、及び第一の電圧305よりも高い第二の電圧310の各レベルを示している。上述のような介設回路230のような介設回路が、第一の電圧305と第二の電圧310との間を高速に切り換える又は切り換えることを支援するように構成されている。例えば、介設回路は、100kVp及び180kVpのような電圧の間を高速に切り換える又は切り換えることを支援することができる。プロット300は、第一の電圧305と第二の電圧310との間を切り換えているときの介設回路の出力313を示している。第二の電圧レベル310にある出力313は、一つのビュー期間の間に相対的に低い電圧レベル311に「降下(droop)」し又は低下するが、この降下は10kVを上回るべきでない。介設回路の出力313を受けるように接続された図3のX線管240のようなX線管が、第一及び第二の電圧305、310に応じて交番するX線スペクトルを放出する。この異なる発生器電圧レベルにおいて発生される交番するX線スペクトルを介して投影データを取得することにより、走査対象の物質組成及び実効原子番号のような物質特定的な情報を、公知の基底物質分解法を介して得ることができる。
【0025】
立ち上がり時間315及び立ち下がり時間320が時間軸304に沿って示されている。本発明の実施形態によれば、プロット300の立ち上がり時間315は約10マイクロ秒間以下である。同様に、立ち下がり時間320も約10マイクロ秒間以下である。但し、本発明の各実施形態では、立ち上がり時間315及び立ち下がり時間320はこのように限定されている訳ではなく、10マイクロ秒間よりも長くても短くてもよい。加えて、立ち上がり時間315及び立ち下がり時間320は、投影対の間に最小限の位置揃え不正を有する取得撮像データを生ずるような動作パラメータに基づいて選択される。さらに、図4に示す電圧降下は、介設回路の設計形式に応じて10kVよりも遥かに小さくても大きくてもよい。
【0026】
当業者は、介設回路による低電圧及び高電圧切り換えを走査時にガントリの異なる角度位置において繰り返して、1又は複数のビューを低kVp305において得て、1又は複数のビューを高kVp310において得るインターリーブ・パターンのデータが取得されるようにし得ることを容易に認められよう。
【0027】
図5には、本発明の実施形態による介設回路のさらに詳細な図が示されている。介設回路400は、電圧入力402、分圧器404、直列に結合された複数の切り換え段410、及び電圧出力406を含んでいる。各々の段が、一対のスイッチSn及びSn′と、反対に流れる電流を阻止するように動作可能なダイオードDnと、キャパシタCnとを有している。尚、「n」は段番号に対応している。動作時には、介設回路400は、入力402を介して図3の高電圧発生器210のような高電圧発生器から電圧を受け取り、段の列410が、出力406において一対の電圧レベルの間での入力電圧の高速切り換えを可能にしている。すなわち、各々の段410のスイッチSn及びSn′は二つの論理信号によって制御され、Snを開いてスイッチSn′を閉じると第一の電圧を出力するように作用し、他方のスイッチSnを閉じるとキャパシタCnを直列に接続して第二の高い電圧を出力するように作用する。段410の総数は電圧増大の大きさに依存し、このようにして介設回路400は様々な電圧レベル要件を満たすように設計され得る。上で図3に関して議論した介設回路230と同様に、介設回路400はモジュール式回路であってよく、僅かな経費又はシステム停止時間で除去、修理又は交換を行なうことができる。加えて、個々の段410もまたモジュール式であり、介設回路400の内部で修理又は交換を容易に行なうことができる。図5に示す実施形態では、一例として、介設回路はX線管に印加される電圧を制御する。
【0028】
図6は、本発明のもう一つの実施形態による高速kVp切り換え構成を示す。システム500は、図3に示すシステム200と同様に動作するように構成されているが、内部での介設回路の配置が異なる。すなわち、高電圧発生器510が介設回路530に結合され又は一体化されており、次いで介設回路530は高電圧ケーブル520に結合されている。これにより、高電圧ケーブル520はX線管540に直接結合される。上で図3に関連して述べたように、モジュール式介設回路530は、X線管540に印加される電圧レベルを高速に切り換えるように依然動作しつつX線システム500の全体にわたり多様な構成として配置され得る。例えば、高電圧発生器510及びモジュール式介設回路530は、図6の破線で示すように単一ユニット515として一体化され得る。
【0029】
もう一つの例として、図7は、本発明のもう一つの実施形態による高速kVp切り換え構成を示す。システム600は、高電圧ケーブル620に結合された高電圧発生器610を含んでいる。上で図3に示すシステム200と同様に、介設回路630が高電圧ケーブル620の後方に配置されている。しかしながら、介設回路630はX線管640に電気的に結合されているばかりでなく、介設回路630及びX線管640が単一ユニットとして動作可能となるようにX線管640に直接装着されている。介設回路630は、X線管640自体の真空領域(図示されていない)に一体化されることもできる。
【0030】
図8は、非侵襲型小包又は手荷物検査システムと共に用いられるX線イメージング・システム700の見取り図である。X線システム700は内部に開口704を有するガントリ702を含んでおり、この開口704を通して小包又は手荷物を通過させることができる。ガントリ702は、X線管706のような高周波電磁エネルギ源706と、検出器アセンブリ708とを収容している。また、コンベヤ・システム710が設けられており、コンベヤ・システム710は、構造714によって支持されており走査のために小包又は手荷物716を自動的に且つ連続的に開口704に通すコンベヤ・ベルト712を含んでいる。物体716をコンベヤ・ベルト712によって開口704に送り込み、次いで撮像データを取得し、コンベヤ・ベルト712によって開口704から小包716を除去することを、制御された連続的な態様で行なう。結果として、郵便物検査官、手荷物積み降ろし員及び他の警備人員が、爆発物、刃物、銃及び密輸品等について小包716の内容を非侵襲的に検査することができる。当業者は、ガントリ702が静止型であっても回転式であってもよいことを認められよう。回転式ガントリ702の場合には、システム700は手荷物走査向け、又は他の産業応用若しくは医療応用向けのCTシステムとして動作するように構成され得る。
【0031】
この書面の記載は、最適な態様を含めて本書において本発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めてあらゆる当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。特許付与可能な発明の範囲は特許請求の範囲によって画定されており、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0032】
10 計算機式断層写真法(CT)イメージング・システム
12 ガントリ
14 X線源
16 投射X線
18 検出器アセンブリ
20 複数の検出器
22 患者
24 回転中心
26 制御機構
28 X線制御器
29 発生器
30 ガントリ・モータ制御器
32 データ取得システム(DAS)
34 画像再構成器
36 コンピュータ
38 大容量記憶装置
40 コンソール
42 表示器
44 テーブル・モータ制御器
46 電動テーブル
48 ガントリ開口
200、500、600 システム
210、510、610 高電圧発生器
220、520、620 高電圧ケーブル
230、530、630 介設回路
240、540、640 X線管
300 二重kVp切り換えのプロット
302 電圧軸
304 時間軸
305 第一の電圧
310 第二の電圧
311 相対的に低い電圧レベル
313 介設回路の出力
315 立ち上がり時間
320 立ち下がり時間
400 介設回路
402 電圧入力
404 分圧器
406 電圧出力
410 切り換え段
515 単一ユニット
700 小包/手荷物検査システム
702 ガントリ
704 開口
706 X線管
708 検出器アセンブリ
710 コンベヤ・システム
712 コンベヤ・ベルト
714 構造
716 小包又は手荷物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電圧レベルを出力するように構成されている発生器と、
対象に向けて照射されるX線を発生するように構成されているX線源と、
前記発生器の前記出力及び前記X線源の入力に結合されており、第一の電圧レベルと第二の電圧レベルとの間で前記X線源への出力を切り換える又は切り換えることを支援するように構成されているモジュールと
を備えたシステム。
【請求項2】
前記第一の電圧レベルにおいて発生されるX線及び前記第二の電圧レベルにおいて発生されるX線から撮像データを取得して、
該撮像データから少なくとも一つの画像を再構成する
ように構成されているコンピュータを含んでいる請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記X線源と前記発生器との間に結合された高電圧ケーブルを含んでいる請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記モジュールは、前記発生器と前記高電圧ケーブルとの間に結合されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記モジュールは、前記高電圧ケーブルと前記X線源との間に結合されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記モジュールは、前記X線源に直接装着されるように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項7】
前記モジュールは、前記X線源に一体化されるように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項8】
前記モジュールは、前記発生器に一体化されるように構成されている、請求項3に記載のシステム。
【請求項9】
前記第一の電圧レベルと前記第二の電圧レベルとの間の切り換え時間が約10マイクロ秒間以下である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第二の電圧レベルは前記第一の電圧レベルよりも大きさが大きい、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記モジュールは、前記発生器と前記X線源との間で着脱自在に一体化されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
1よりも多いエネルギ・スペクトルにおいて撮像データを取得する方法であって、
X線源に接続可能なモジュールに少なくとも一つの電圧を入力するステップと、
前記モジュールを前記X線源に結合して、第一の電圧を前記X線源に出力するステップと、
前記第一の電圧を用いて発生されるX線エネルギ・スペクトルの第一のビームを前記X線源から対象に向けて投射して、第一の測定投影データ集合を取得するステップと、
前記回路モジュールを用いて前記第一の電圧から第二の電圧に切り換えるステップと、
前記第二の電圧を用いて発生されるX線エネルギ・スペクトルの第二のビームを前記X線源から前記対象に向けて投射して、第二の測定投影データ集合を取得するステップと、
前記第一及び第二の測定投影集合から少なくとも一つの代表画像を再構成するステップと
を備えた方法。
【請求項13】
前記モジュールと前記X線源との間に高電圧ケーブルを結合するステップを含んでいる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第一の電圧から第二の電圧に切り換える前記ステップは、約10マイクロ秒間以下で切り換えることを含んでいる、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記第二の電圧は前記第一の電圧よりも大きさが大きい、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記第一及び第二の測定投影データ集合から前記対象の物質組成を決定するステップを含んでいる請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記第一及び第二の測定投影集合から前記対象の実効原子番号及び密度の一方を決定するステップを含んでいる請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記X線源は回転式ガントリに装着されて、撮像対象の周りで回転させられる、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
走査したい被検体を収容する開口を有するガントリと、
多数のエネルギを有するX線を前記被検体に投射するように構成されているX線源と、
該X線源に結合されており、少なくとも一つの電圧を発生するように構成されている発生器と、
該発生器と前記X線源との間に結合されており、第一の電圧を印加するときには第一のエネルギ・スペクトルを有するX線が発生され、第二の電圧を印加するときには第二のエネルギ・スペクトルを有するX線が発生されるように、前記第一の電圧と前記第二の電圧との間で切り換える又は切り換えることを支援することを提供するように構成されている回路モジュールと、
前記第一のエネルギ・スペクトルにあるX線及び前記第二のエネルギ・スペクトルにあるX線から撮像データを取得するように構成されているコンピュータと
を備えたイメージング・システム。
【請求項20】
前記発生器を前記X線源に結合する高電圧ケーブルを含んでいる請求項19に記載のイメージング・システム。
【請求項21】
前記回路モジュールは、前記発生器、前記X線源、及び前記高電圧ケーブルの一つと一体化されるように構成されている、請求項20に記載のイメージング・システム。
【請求項22】
前記回路モジュールは、前記各電圧の間において約10マイクロ秒間以下で前記X線源の結合を交番させるように構成されている、請求項19に記載のイメージング・システム。
【請求項23】
前記X線源は、単カソード型X線管及び二重カソード型X線管の一方である、請求項19に記載のイメージング・システム。
【請求項24】
非回転式又は回転式の何れかのガントリを組み入れた計算機式断層写真法(CT)イメージング・システムである請求項19に記載のイメージング・システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−515822(P2011−515822A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501854(P2011−501854)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/033889
【国際公開番号】WO2009/120417
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】