説明

スペーサを挿入して接着によりグレージングを支持部に取り付ける方法、スペーサ付きグレージング、スペーサ、成形ストリップおよび1組のスペーサ

【課題】接着により、成形ストリップ(3)の一部が装着されたグレージング要素(2)を備える車両のグレージング(1)を支持部に取り付ける方法、特に、成形ストリップの一部が装着された車両用サンルーフを車体に取り付ける方法である。
【解決手段】前記支持部で形成された受け溝(50)に接着するために少なくとも1つの接着ビード(4)がグレージング(1)の周囲部に付着され、その後、前記グレージング(1)が前記受け溝(50)に装着され、接着を仕上げるために前記グレージング(1)が押圧される方法であって、グレージング(1)を前記受け溝(50)に装着する前に、少なくとも1つのスペーサ(6)が成形ストリップ(3)に機械的に取り付けられ、好ましくは、複数のスペーサ(6)が成形ストリップ(3)に機械的に取り付けられることを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のグレージングを接着によって支持部に取り付ける方法、該方法を実施する手段、接着できるように準備されたグレージング、およびこの取り付け方法を実施することによって接着されたグレージングに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明のグレージングは、固定式の車両グレージングで、特に、自動車用、とりわけ、サンルーフ、ワイドスクリーン、またはリアウインドウ用のグレージングで、特に、凹面グレージングである。
【0003】
グレージングは、通常、成形ストリップの一部が装着されたグレージング要素を備える。
【0004】
少なくとも1つの接着ビードが、受け溝(支持部)に接着されるグレージングの周囲部に付着され、その後、前記グレージングが前記受け溝に装着され、接着を仕上げるために前記グレージングが押圧される。
【0005】
グレージングは、例えば、自動車本体によって形成された受け溝に周囲が接着されたサンルーフグレージングであり、自動車の堅牢性に関与する。2つの部品(グレージングと受け溝)の接着は構造接着をなすが、この接着は非常に重要である。それは、グレージングは適切に固定されなければならず、グレージングと本体との封止は完全で恒久的でなければならないためである。
【0006】
また、成形ストリップは、気密性、特に、車両が走行する時の風密性に関与するが、主な気密性、特に、水密性は接着ビードによって得られる。
【0007】
したがって、この接着ビードはグレージングを車体受け溝に装着する時にしっかりと押しつぶされなければならず、必要な接着および必要な気密性の両方をもたらすのに必要な幅と厚みを有することが不可欠である。
【0008】
この厚みを調節するために、グレージング要素の内面に(グレージングが車両に固定されている場合、車両内部に向かって)、少なくとも1つのスペーサ(「ストッパ」とも呼ばれる)を配置することが周知である。
【0009】
したがって、接着時に、グレージングは、特に、スペーサ(1つまたは複数)を介して受け溝上に配置されている。
【0010】
このスペーサ(1つまたは複数)は、通常、グレージング接着ビードが開口部に付着される前にグレージング要素の内面に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/104715号
【特許文献2】国際公開第98/02452号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記のような接着には、衛生安全予防措置が必要である。それは、それぞれのスペーサとグレージング要素の内面との間に有毒な下塗りが塗布されなければならないためである。
【0013】
これは、車両組立工場(車両製造ライン)でグレージングを接着する場合および修理工場で壊れたグレージングを交換する場合に重要な問題となる。
【0014】
さらに、このスペーサ(1つまたは複数)は、車両の外側から見た場合に隠れていなければならないので、幅広の周囲マスキングストリップ(通常は、黒いエナメル製)をグレージングの周囲に配設する必要があり、そのために、グレージングを通した視界の明瞭さを損なうことになる。
【0015】
国際公開第2008/104715号は、グレージング接着ビードと車体開口部の受け溝との間に補償スペーサを配置することを提案しているが、この補償スペーサ自身も接着されるので、衛生安全上の問題が生じる。さらに、この解決策は、補償スペーサを完全に隠すために周囲マスキングストリップの幅を広くする必要がある。
【0016】
本発明の目的は、少なくとも1つのスペーサを使用して、グレージングを車体開口部に接着する前に、スペーサとグレージングとの間に下塗りを使用することを必要とせずに、また前記スペーサをグレージングに接着することを必要とせずに、車体開口部にグレージングを接着するための方法および装置を提案することにより先行技術の欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、より広範な意味で、接着により、成形ストリップの一部が装着されたグレージング要素を備える車両のグレージングを支持部に取り付ける方法、特に、成形ストリップの一部が装着された車両用サンルーフを車体に取り付ける方法にして、前記支持部で形成された受け溝に接着するために少なくとも1つの接着ビードがグレージングの周囲部に付着され、その後、前記グレージングが前記受け溝に装着されて、接着を仕上げるために前記グレージングが押圧される方法であって、グレージングを前記受け溝に装着する前に、少なくとも1つのスペーサが成形ストリップに機械的に取り付けられ、好ましくは、複数のスペーサが成形ストリップに機械的に取り付けられることを特徴とする方法に関する。
【0018】
この機械的取り付けは、スペーサ(1つまたは複数)と成形ストリップとの間を化学的接着を行わずに、さらにスペーサ(1つまたは複数)と受け溝との間を化学的接着を行わずに仕上げられる。その後、このスペーサ(1つまたは複数)は定位置で維持される、すなわち、スペーサ(1つまたは複数)は、グレージングが支持部(受け溝)に接着される前または接着された後に取り外されることはない。
【0019】
したがって、本発明によれば、スペーサ(1つまたは複数)は成形ストリップに留められる、また逆のことも言える。
【0020】
特に、スペーサ(1つまたは複数)を成形ストリップに機械的に取り付けるのは、接着ビードがグレージングの周囲部に付着される前に行われるのが好ましく、さらには、接着ビードがグレージングのグレージング要素の内面に付着される前に行われるのが好ましい。
【0021】
好ましくは、少なくとも1つのスペーサが前記成形ストリップの各辺に、すなわち、グレージングの各辺(ルーフのグレージングの場合、通常の配向で、前辺、後辺、左側辺、右側辺)に機械的に取り付けられる。
【0022】
変形形態では、特に、成形ストリップの同じ辺(上辺または前辺、底辺または後辺、左側辺、右側辺)に車両の中央長手方向対称面が交差する場合、同じ厚さを有する少なくとも2つのスペーサが成形ストリップのこの辺に機械的に取り付けられる。
【0023】
別の変形形態では、特に、成形ストリップの同じ辺(上辺または前辺、底辺または後辺、左側辺、右側辺)が車両の中央長手方向対称面の一辺に位置する場合には、異なる厚さを有する少なくとも2つのスペーサが成形ストリップのこの辺に機械的に取り付けられる。
【0024】
本発明の成形ストリップは、スペーサ(1つまたは複数)を成形ストリップに締結する前に、したがってグレージングを開口部に接着する前に作製されてもよい。成形ストリップは、その場でグレージング要素に押出成形することにより作製されるか、またはグレージング要素とは関係なくモールド押出成形した後でグレージング要素に接着することにより作製されてもよい。
【0025】
スペーサ(1つまたは複数)も、グレージングを接着する前に作製されている。
【0026】
さらに、本発明は、車両用グレージング、特に、車両用サンルーフに関し、とりわけ、本発明の方法に従って接着によって支持部に取り付けられるグレージングであって、内側部、任意で側方部、任意で外側部を有する成形ストリップを備えるグレージングに関する。本発明のグレージングは、少なくとも1つのスペーサが成形ストリップの内側部に機械的に取り付けられ、または固定され、好ましくは、複数のスペーサが成形ストリップの内側部に機械的に取り付けられ、または固定され、前記(または各々の)スペーサは、スペーサを機械的に締結するための締結手段と前記成形ストリップの前記内側部に配置される相補的締結手段とを備える近位端(スペーサの断面において、グレージング要素の方に向けられた)と、スペーサが配置される受け溝と接触するためのドッキング面を備える遠位部(スペーサの断面において、グレージング要素の反対方向に向けられた)とを備えることを特徴とする。
【0027】
本発明は、特に、少なくとも1つの接着ビードによって開口部に接着された、すなわち、本発明の方法を実施した後のグレージングに関し、さらに少なくとも1つのスペーサが装着され、本発明の方法を実施する前のグレージングに関する。
【0028】
スペーサと成形ストリップとの前記機械的取り付けは、好ましくは、ほぞ・ほぞ穴式であり、さらに好ましくは、突起部を備える前記締結手段と、前記突起部と相補的な(同じ断面形状である)溝を備える前記相補的締結手段とを使用して行われる。前記突起部と前記溝とは、例えば、T字形またはY字形断面を有する。
【0029】
変形形態では、前記成形ストリップは、特に、その場で押出成形して作製されたか、あるいは予め押出成形してその後にグレージング要素に接着することで作製されたために全長にわたって一定の断面を有する、すなわち、変化しない断面を有する。したがって、スペーサ(1つまたは複数)の取り付け手段(特に、溝)は、成形ストリップの内側面の全長にわたって設けられる。
【0030】
好ましくは、前記スペーサ(1つまたは複数)は、成形ストリップに機械的に取り付けられる場合、グレージングの辺の長さの1/50〜1/4の長さを有する。
【0031】
隣接するグレージング要素の表面に対して非ゼロ角度で配向されるドッキング面を有する少なくとも1つのスペーサを作製することも可能である。
【0032】
また、グレージングの少なくとも2つのスペーサが異なる全厚を有し、および/またはグレージングの少なくとも2つのスペーサが隣接するグレージング要素の表面に対して異なる所定の角度で配向されるドッキング面を有することも可能である。
【0033】
しかしながら、1組のグレージングの場合、スペーサはそれぞれのグレージングの同じ位置に位置決めされ、それぞれのグレージングのこれらの位置で一致する。
【0034】
特定の変形形態では、成形ストリップとスペーサとを介してグレージング要素と受け溝との間の力をより十分に伝達するために、前記スペーサの全幅は前記成形ストリップの内側部の幅の80〜120%である。
【0035】
さらに、本発明は、特に本発明の方法を実施するためのスペーサ、特に、本発明のグレージング用のスペーサであって、前記スペーサを機械的に締結するための締結手段と前記成形ストリップの前記内側部に配置される相補的締結手段とを備える近位端と、ドッキング面を備える遠位部とを備えることを特徴とするスペーサに関する。
【0036】
さらに、本発明は、特に本発明の方法を実施するための1組のスペーサ、特に、本発明のグレージング用の1組のスペーサであって、前記組全てのスペーサが同じ近位端を有すること、さらにスペーサの異なる全厚を有し、および/または異なる所定の角度で配向されるドッキング面を有する異なる遠位部を特徴とする1組のスペーサに関する。
【0037】
さらに、本発明は、特に、本発明の方法を実施するための成形ストリップ、特に、本発明のグレージング用の成形ストリップで、内側部、任意で側方部、任意で外側部を備え、全長にわたって一定の断面を有する成形ストリップであって、前記成形ストリップを機械的に締結するために前記成形ストリップの内側部に配置される相補的締結手段と、少なくとも1つのスペーサの締結手段とを備えることを特徴とする成形ストリップに関する。
【0038】
本発明はさらに、本発明の方法を実施するための少なくとも1つのスペーサまたは1組のスペーサで、本発明のグレージング用の少なくとも1つのスペーサまたは1組のスペーサの使用に関する。
【0039】
グレージングは、太陽光が車両室内に入り込むのを制限するために、太陽光遮蔽特性、特に、太陽光調整特性をグレージングに付与するための薄層積重体がさらに塗布されてもよい。
【0040】
本発明は、特に、凹面積層パノラミックルーフグレージング向けであるので、グレージングを凹面にする前に実施される薄層コーティング技術を使用するのが好ましい。このタイプのコーティングをするには、磁界強化型真空陰極スパッタリングが特に有利な技術である。
【0041】
本発明により、スペーサを成形ストリップに締結するステップを簡略化できるだけでなく、コストのかかる化学物質(下塗剤)を使用する必要がないので、より低コストでこの締結を行うことができ、さらに、この提案される機械的締結の機械的強度は、先行技術の化学的締結に比べて、少なくとも同程度、またはそれ以上である。
【0042】
有利には、本発明により、1つ(または複数)のスペーサがあっても、スペーサ(1つまたは複数)は車両の内部に向かう成形ストリップの延長部に位置し、成形ストリップと並んで位置しなくなるので、幅広の周囲マスキングストリップを設ける必要がなくなる。
【0043】
さらに、一方では、周囲マスキングストリップが狭くなるために、他方では、受け溝がより狭くなるために、ガラスの明瞭さを向上させることができる。
【0044】
本発明は、非限定的な実施例についての以下の詳細な説明と添付図面から、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】成形ストリップが装着された本発明の車両ルーフグレージングの断面図である。
【図2】グレージングが車体開口部に接着される時の本発明のスペーサとリフタ上に配置された接着ビードとを有する、図1のグレージングの断面図である。
【図3】グレージング要素がない状態で、図1および図2の成形ストリップおよびスペーサがひっくり返され下側が部分的に透けて示された斜視図である。
【図4】グレージング要素を通して見える成形ストリップが装着された本発明のグレージングの後部右側角部の平面図である。
【図5】本発明のスペーサを有する図4のグレージング角部の平面図である。
【図6】グレージング要素がない状態の図4のA−Aに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図面では、種々の要素間の比率はそれぞれの図面で考慮されているが、理解しやすくするために背景の要素は全体的に示されていない。図1で断面が斜線平行線で示されている要素は、図2では見やすくするために斜線平行線で示されていない。
【0047】
本発明は、接着により車両のグレージングの支持部への取り付けに関し、特に、車両サンルーフのような車両グレージングの車体への接着に関する。
【0048】
図1に示されている本発明のグレージング1は、自動車のルーフグレージングである。グレージング1は、成形ストリップ3の一部が装着されたグレージング要素2を備える。
【0049】
少なくとも1つのグレージング要素2と成形ストリップ3と、さらに、任意で、付属品、特に、グレージングを締結するための付属品とから成るグレージング1は、車両の内部空間と車両の外側空間とを仕切る開口部を閉鎖するためのものである。したがって、グレージング要素2は、内部空間に面する内側面21と、外側空間に面する外側面22と、周縁部23とを有する。
【0050】
したがって、本明細書では、空間的位置決め(上/下、前/後、左/右、下側/上側)に関するデータは、本発明のグレージングによって閉じられるルーフ開口部のある自動車に関して示されており、本明細書の全体を通して使用される配向は、この自動車の向きに関して、それ自体周知であるように、車両の走行方向に関して示されている。
【0051】
グレージング要素は、モノリシック要素、すなわち、1枚の材料シートから成る要素としてもよいし、複合要素、すなわち、積層グレージングの場合、少なくとも1つの接着性材料層が挿入された複数の材料シートから成る要素としてもよい。1枚または複数の材料シートは、無機材料、特にガラスまたは有機材料、特にプラスチックとしてもよい。
【0052】
車両のグレージングの場合、グレージングは、通常、周囲の少なくとも一部に、装飾ストリップを有するが、ここでは示さない。この装飾ストリップは、通常、エナメル被覆により作られ、グレージングの内側面または複合グレージングの場合はグレージングの中間面に作られるが、使用される材料シート、特に有機材料シートの一部および/または周囲を着色することで装飾ストリップにすることもできる。
【0053】
グレージング要素が有機材料で作られる場合、グレージング要素は、本発明を実施する前に、成形装置でグレージング要素の構成材料を成形することによって製造される。成形装置は、少なくとも1つの固定モールド部と固定モールド部に対して可動する1つの可動モールド部とを備えるモールドを備え、前記モールド部は、成形段階で、モールドを閉じた状態で協働して、グレージング要素の断面形状に似た断面形状を有する型穴を形成する。多くの場合、有機材料製のグレージング要素は平面でなく凹面である。
【0054】
グレージング要素が無機材料で作られる場合、グレージング要素は、本発明を実施する前に、平面シートに無機材料を溶融して、その後、このシートを切断し、任意で、このシートを凹面にすることによって製造される。
【0055】
参考までに、有機材料製のグレージング要素を大量に製造するのは、無機材料製のグレージング要素の製造の場合に比べてコストがかかり、有機材料で製造する形態は、通常、グレージング要素の形状が非常に複雑であるために、無機材料製のグレージング要素を凹面にすることで製造する方法が不可能である場合に選択される。
【0056】
グレージング要素が複合グレージング要素である場合、複数のグレージングまたは積層グレージングの周知の製造技術で製造され、任意で凹面にされる。
【0057】
図1では、グレージング要素2は積層グレージングである。
【0058】
図1に示されているように、成形ストリップ3は、グレージング要素の内側面の下に位置決めされる内側部31と、グレージング要素の縁部23側に位置決めされる側方部32と、グレージング要素の縁部23の反対方向に突出するリップ部を備える外側部33とを備える。
【0059】
側方部32は、グレージング要素の縁部23と外側面22との間に位置するグレージング要素の辺と面一になるように形成される。
【0060】
側方部32は、任意で設けられてもよい、または少なくとも図面に示されているほど厚くなくてもよいし、グレージング要素の縁部23と外側面22との間に位置するグレージング要素の辺を超えて外側に向かって伸びてもよい。
【0061】
外側部33が設けられている場合、外側部33は、グレージングを開口部に位置決めする時に、変形して車体の溝に押し付けられる構造である。
【0062】
本発明によれば、図2に示されるように、少なくとも1つのスペーサ6が成形ストリップ3の内側部31に機械的に取り付けられて、このスペーサを介して車体開口部の受け溝でグレージングを支持する。
【0063】
図2に示されるように、スペーサは近位端61を備える。近位端は、スペーサの断面において、グレージング要素に向かって(したがって、この場合、上方に向かって)配向され、成形ストリップ3の内側部31内に配置された相補的締結手段30と機械的に締結するための締結手段60とを備える。
【0064】
スペーサと成形ストリップとの間のほぞ・ほぞ穴式の機械的取り付け、この場合、突起部を備えるスペーサの締結手段60および前記突起部と相補的な溝を備える成形ストリップの相補的締結手段30を使用した機械的取り付け、つまり、この相補性は、断面において、突起部の外寸が溝の内寸に等しくなるように、または実質的に等しくなるようになっている。
【0065】
この場合、突起部と溝は共に、T字形断面を有し、各々の脚部63(突起部の脚部のみが符号を有する)と脚部にほぼ垂直な2つの枝部64(突起部の枝部のみが符号を有する)とを有するが、枝部が垂直でない形態も可能で、突起部(および相補的な溝)の形状が、例えば、Y字形断面の形態も可能であり、Y字のフランジ部が脚部の軸に対して対称に配置される必要はない、またはY字もしくはT字のフランジが同じ長さを有する必要はない。
【0066】
スペーサを成形ストリップに締結するために(図1の形態から図2の形態に移行するために)、突起部が溝に「力で」挿入されている。まず、T字の1つの枝部が溝に挿入され、次に、突起部の第2の枝部がグレージング要素に向かって強く押し付けられ、第2の枝部を通すために必要な内側部31を変形させて溝に挿入されている。この操作は手作業で行われる。
【0067】
また、溝はスペーサに配置され、突起部が成形ストリップの内側部に配置されるのが最適である。
【0068】
スペーサは、例えば、ポリプロピレン(PP)製である。
【0069】
スペーサはさらに、遠位部62を備える。遠位部62は、スペーサの断面において、グレージング要素の反対側に向かって(したがって、この場合、下方に向かって)配向され、車体開口部5の隣接受け溝50に押し付けられるドッキング面65を備える。
【0070】
実際に、成形ストリップ3と車体5の受け溝50との間に位置するストッパを形成するのは、遠位部62である。
【0071】
ドッキング面65は、隣接するグレージング要素2(この場合、内側面21)の表面に対して非ゼロ角度αで配向されるのが好ましい。この角度は、約5°〜25°、特に、約8°とすることができる。
【0072】
受け溝と接触しやすくするために、ドッキング面65をTPE製にすることができる。
【0073】
本発明の成形ストリップ3は、好ましくは全長にわたって一定の断面を有する(すなわち、特に、成形ストリップがその場で押出成形して作製されたか、あるいは予め押出成形してその後にグレージング要素に接着することで作製されたために、変化しない断面を有する)。
【0074】
したがって、この場合、1つまたは複数のスペーサ(すなわち、溝)を取り付ける手段は、成形ストリップの内側面の全長にわたって設けられる。
【0075】
例えば、
枝部64の厚さb=1.5mm、
脚部63の厚さc=1.5mm、
各々の枝部64の幅d=2.5mm、
脚部63の幅e=2mm、
脚部63と2つの枝部64の全幅f=7mm、
内側部31の厚さ(b+c+取り付け手段と内側面21との間のストリップの厚さ)=5mm、
内側部31の全幅g=9.5mm、
スペーサの全幅L=8mm、および
スペーサの全厚T=9.5mm
にすることができる。
【0076】
この場合、近位端61の厚さ=3mm(b+c)および遠位部62の厚さ=6.5mmである。
【0077】
したがって、前記スペーサ6の全幅Lは前記成形ストリップ3の内側部31の幅の80〜120%であることがわかる。
【0078】
図2を参照すると、グレージング要素2は、グレージングの周囲全体にグレージング要素2の内側面21に付着される接着ビード4で車体5の受け溝50に接着されることがわかる。図2では確認できないが、接着が成形ストリップ3の内側部31および/またはスペーサ6の遠位部62と接触しているのが最適である。
【0079】
この接着ビード4は、グレージングの内側面に予め接着されているリフタ8に付着される。それは、スペーサの全厚Eが厚すぎるためであり、接着ビードの最大の厚さが通常5mmであるためである。
【0080】
この図2では、グレージングが位置決めの過程にあるので、スペーサ6はまだ受け溝50上にない、当然、グレージングが車体開口部に正確に位置決めされると、スペーサ6は受け溝50上に配置される。
【0081】
図3には、この場合、約20mmの長さのスペーサ6が示されている。
【0082】
一般に、スペーサがグレージングの左側または右側の下に位置決めされる場合、グレージングの右側または左側の下にそれぞれ、車体の長手方向対称軸に対して対称な位置に同じスペーサが位置決めされる。
【0083】
少なくとも2つの異なるスペーサ6が使用される場合、これらのスペーサは異なる全厚T(より詳細には、近位端は等しいのが好ましいので遠位部の厚さ)を有し、および/または隣接するグレージング要素2の表面に対して異なる角度αで配向されるドッキング面65を有する。
【0084】
図4から図6は、成形ストリップ3の断面が全長にわたって一定でない本発明の変形形態を示す図である。
【0085】
図4は、車体ルーフグレージング1(「サンルーフ」とも呼ばれる)の後部右側の角部の平面図である。
【0086】
図4に示されている成形ストリップの一部は、後方部36と直線部38の2つのシール部から成り、これらは予め作製されて、後でグレージング要素の内側面に接着される。
【0087】
後方部36と直線部38はそれぞれ、接着ビードまたは両面接着テープによってグレージング要素を接着するための接着トラック37を備える。
【0088】
これらの2つの部分は、第3の部分、つまり角部39によって接続される。角部39は、例えば、国際公開第98/02452号でそれ自体周知のように、グレージング要素2にオーバーモールドすることで作製される。この角部39は、接着トラックを備えず、材料を選択することによって、任意で下塗りを使用するが接着ビードまたは接着テープを使用せずに、角部39は後方部36および直線部38とグレージング要素とに接着する。
【0089】
しかしながら、成形ストリップの構造がより単純な場合(例えば、外側部33がない、つまり、リップ部がない場合)、角部39が後方部36および直線部38と同じ断面を有するのが最適である。
【0090】
図5に示されるように、後方部36および直線部38はそれぞれ、スペーサの締結手段と機械的に締結するために、図1から図3に示された変形形態と同じタイプのような前記成形ストリップの内側部31に配置される相補的締結手段30を備える。
【0091】
図6に示されるように、スペーサは、スペーサの断面において、グレージング要素に向かって配向され、スペーサを機械的に締結するための締結手段60と成形ストリップの内側部31、より詳細には、成形ストリップ3の直線部38に配置される相補的締結手段30とを備える近位端61を備える。
【0092】
ストッパを形成する遠位部62は、図2および図3の変形形態のスペーサの遠位部より薄い。
【0093】
図示されていないが、成形ストリップの後部左側部も同様に、車体の中央長手方向軸に対して図5のスペーサと対称に位置決めされたスペーサを備える。このスペーサは、図5に示されたスペーサと全ての点で等しく、図示されているスペーサと同じ方法で成形ストリップに機械的に締結される。
【0094】
したがって、本発明の基本パラメータは、図2から図6に示されている間隔Eであり、接着時に、一方は、グレージング要素の内側面と接触する成形ストリップの面と、他方は、シート50と接触するドッキング面65との間で、成形ストリップ3+スペーサ6の組立体によって形成される間隔Eである。
【0095】
この間隔Eにより、隣接する接着ビードの厚さを調節することができる。
【0096】
この間隔Eは、特に、通常は直線の受け溝に対するグレージングの反りを考慮して算出される。
【0097】
また、グレージング要素の周囲の少なくとも一部(または全体)に固定されるノズルを使用して、その場で直接グレージング要素の表面に押出成形することで、本発明の成形ストリップを作製することができる。角部は、任意で、国際公開第98/02452号で周知のように、押出形成後に再加工されてもよく、この場合、前記成形ストリップの内側部に設けられた締結手段は、再加工時に角部で壊れやすいが、この角部に本発明のスペーサを設ける必要がない場合は妨げにならない。
【0098】
一方、本発明の締結手段を備える成形ストリップの一部が、「封入」と呼ばれる周知の製造方法で作製されるのは工業的に適切ではない。この方法では、成形ストリップは成形装置で成形され、成形装置は、少なくとも1つの固定モールド部と固定モールド部に対して可動の少なくとも1つの可動モールド部とを備えるモールドを備え、前記モールド部が、成形段階で、モールドを閉じた状態で、グレージング要素と協働して、成形ストリップのプロファイルの断面形状を有する型穴を形成する。実際に、成形ストリップの締結手段を封入により作製するのは困難である。つまり、封入プロセスは、高生産率および低コストで大量生産するのは複雑すぎる傾向がある。
【0099】
図2を参照すると、本発明の1つまたは複数のスペーサ6を備えるグレージングを分解するのは簡単である。したがって、グレージングを分解するためのケーブルを接着ビード4に通す、先行技術のグレージングの場合、受け溝50と1つまたは複数のスペーサ6との間に通すことができる。したがって、スペーサ(1つまたは複数)が有ることによりグレージングの分解を妨げることはなく、従来のように、スペーサ(1つまたは複数)を備えるグレージングの一体性を損なわずに分解できるので、必要に応じて、このグレージングまたは他のスペーサを有する別のグレージングを取り付け直すことができる。
【0100】
上述した本発明は、単なる一例にすぎない。当業者が、請求項で定義された本特許の範囲を必ずしも逸脱せずに、本発明の種々の変形形態を製造可能であることは理解されたい。
【符号の説明】
【0101】
1 グレージング
2 グレージング要素
3 成形ストリップ
4 接着ビード
5 車体(開口部)
6 スペーサ
8 リフタ
21 内側面
22 外側面
23 (周)縁部
30 相補的締結手段
31 内側部
32 側方部
33 外側部
36 後方部
37 接着トラック
38 直線部
39 角部
50 受け溝、シート
60 締結手段
61 近位端
62 遠位部
63 脚部
64 枝部
65 ドッキング面
E 間隔
T スペーサの全厚
L スペーサの全幅
b 枝部の厚さ
c 脚部の厚さ
d 枝部の幅
f 脚部と枝部の全幅
g 内側部の全幅
α 非ゼロ角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着により、成形ストリップ(3)の一部が装着されたグレージング要素(2)を備える車両のグレージング(1)を支持部に取り付ける方法、特に、成形ストリップの一部が装着された車両用サンルーフを車体に取り付ける方法にして、前記支持部で形成された受け溝(50)に接着するために少なくとも1つの接着ビード(4)がグレージング(1)の周囲部に付着され、その後、前記グレージング(1)が前記受け溝(50)に装着され、接着を仕上げるために前記グレージング(1)が押圧される方法であって、グレージング(1)を前記受け溝(50)に装着する前に、少なくとも1つのスペーサ(6)が成形ストリップ(3)に機械的に取り付けられ、好ましくは、複数のスペーサ(6)が成形ストリップ(3)に機械的に取り付けられることを特徴とする、方法。
【請求項2】
1つまたは複数のスペーサ(6)を成形ストリップ(3)に機械的に取り付けるのが、接着ビード(4)がグレージング(1)の周囲部に付着される前に行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つのスペーサ(6)が、前記成形ストリップ(3)の各辺に機械的に取り付けられることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
異なる厚さを有する少なくとも2つのスペーサ(6)が、前記成形ストリップ(3)の同じ辺に機械的に取り付けられることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記成形ストリップ(3)が、その場でグレージング要素に押出成形することにより、またはグレージング要素とは関係なくモールド押出成形した後でグレージング要素に接着することにより予め作製されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
車両用グレージング(1)、特に、車両用サンルーフ、特に、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法に従って接着によって支持部に取り付けられるグレージングにして、内側部(31)、任意で側方部(32)、任意で外側部(33)を備える成形ストリップ(3)を備えるグレージングであって、少なくとも1つのスペーサ(6)が成形ストリップ(3)の内側部(31)に機械的に取り付けられ、好ましくは、複数のスペーサ(6)が成形ストリップ(3)の内側部(31)に機械的に取り付けられ、前記または各々のスペーサ(6)は、スペーサ(6)を機械的に締結するための締結手段(60)と前記成形ストリップ(3)の前記内側部(31)に配置される相補的締結手段(30)とを備える近位端と、ドッキング面(65)を備える遠位部とを備えることを特徴とする、グレージング(1)。
【請求項7】
前記機械的取り付けが、ほぞ・ほぞ穴式であり、好ましくは、突起部を備える前記締結手段(60)と、前記突起部と相補的な溝を備える前記相補的締結手段(30)とを使用して行われ、前記突起部と前記溝とは、例えば、T字形またはY字形断面を有することを特徴とする、請求項6に記載のグレージング(1)。
【請求項8】
前記成形ストリップ(3)が、全長にわたって一定の断面を有することを特徴とする、請求項6または請求項7に記載のグレージング(1)。
【請求項9】
前記スペーサ(6)または各スペーサ(6)が、成形ストリップ(3)に機械的に取り付けられる場合、グレージングの辺の長さの1/50〜1/4の長さを有することを特徴とする、請求項6から8のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項10】
少なくとも1つスペーサ(6)が、隣接するグレージング要素(2)の表面に対して非ゼロ角度αで配向されるドッキング面(65)を有することを特徴とする、請求項6から9のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項11】
少なくとも2つのスペーサ(6)が、異なる全厚Tを有すること、および/または、少なくとも2つのスペーサ(6)は、隣接するグレージング要素(2)の表面に対して異なる所定の角度αで配向されるドッキング面(65)を有することを特徴とする、請求項6から10のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項12】
前記スペーサ(6)の全幅Lが、前記成形ストリップ(3)の内側部(31)の幅の80〜120%であることを特徴とする、請求項6から11のいずれか一項に記載のグレージング(1)。
【請求項13】
請求項6から12のいずれか一項に記載のグレージング(1)用のスペーサ(6)であって、スペーサ(6)を機械的に締結するための締結手段(60)と前記成形ストリップ(3)の前記内側部(31)に配置される相補的締結手段(30)とを備える近位端(61)と、ドッキング面(65)備える遠位部(62)とを備えることを特徴とする、スペーサ(6)。
【請求項14】
請求項6から12のいずれか一項に記載の1組のグレージング用の1組のスペーサ(6)であって、前記スペーサは全てが同じ近位端を有すること、および前記スペーサは異なるスペーサの全厚Tを有し、および/または異なる所定の角度αで配向されるドッキング面(65)を有する異なる遠位部を有することを特徴とする、1組のスペーサ(6)。
【請求項15】
請求項6から12のいずれか一項に記載のグレージング用の成形ストリップ(3)にして、内側部(31)、任意で側方部(32)、任意で外側部(33)を備え、全長にわたって一定の断面を有する成形ストリップ(3)であって、前記成形ストリップ(3)を機械的に締結するために前記成形ストリップ(3)の内側部(31)に配置される相補的締結手段(30)と、少なくとも1つのスペーサ(6)の締結手段(60)とを備えることを特徴とする、成形ストリップ(3)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79066(P2013−79066A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−211944(P2012−211944)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】