スライドドアの干渉防止構造
【課題】フューエルリッドにプッシュリフタが用いられる場合にも、スライドドアとフューエルリッドの干渉を防止できるスライドドアの干渉防止構造を提供する。
【解決手段】押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返すプッシュリフタ15を設ける。プッシュリフタ15に係合凸部35を設け、プッシュリフタ15を車体側に取り付ける。フューエルリッド10に係合凸部35と係合する係合凹部36を設ける。プッシュリフタ15が引き込み維持状態にされたときに係合凸部35と係合凹部36を係合させ、プッシュリフタ15が突出維持状態とされたときに係合凸部35と係合凹部36の係合を解除する。プッシュリフタ15が突出維持状態となったときにスライドドアのスライド開放をロックするドア開放規制装置25を設ける。
【解決手段】押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返すプッシュリフタ15を設ける。プッシュリフタ15に係合凸部35を設け、プッシュリフタ15を車体側に取り付ける。フューエルリッド10に係合凸部35と係合する係合凹部36を設ける。プッシュリフタ15が引き込み維持状態にされたときに係合凸部35と係合凹部36を係合させ、プッシュリフタ15が突出維持状態とされたときに係合凸部35と係合凹部36の係合を解除する。プッシュリフタ15が突出維持状態となったときにスライドドアのスライド開放をロックするドア開放規制装置25を設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の燃料供給部に開閉自在に取り付けられるフューエルリッドとスライドドアとの干渉を防止するスライドドアの干渉防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料給油部は、通常、車体後部側の側面に設けられ、給油口を覆うフューエルリッドが開閉可能に設けられている。また、ミニバンタイプの車両等では後部座席側のドアにスライドドアを採用したものがあり、このタイプの車両においては、スライドドアの後方側のスライド軌道上にフューエルリッドの開き位置が重なるものがある。
【0003】
このため、この種の車両の技術として、スライドドアとフューエルリッドの同時開放を防止するスライドドアの干渉防止構造が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
このスライドドアの干渉防止構造は、車体側の燃料給油部の縁部に、突出方向にばね付勢されてフューエルリッドを微小開き状態にする付勢ロッドを設けるとともに、スライドドアにドア開放規制機構を設け、付勢ロッドが突出したときに、ドア開放規制機構が作動するように付勢ロッドとドア開放規制機構を連動させたものである。したがって、この干渉防止機構を採用した場合、フューエルリッドが閉じられて付勢ロッドが後退している間はスライドドアの自由な開放が許容され、フューエルリッドが開いて付勢ロッドが突出したときには、ドア開放規制機構が作動することでスライドドアの開放作動が禁止される。
【特許文献1】特開2004−106577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フューエルリッドの開閉部の技術として、押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返すプッシュリフタを用いたものが知られている。このプッシュリフタは、フューエルリッドを介して押圧を繰り返すことにより、フューエルリッドを閉位置と微小開き位置の二位置に切り換えることができる。
【0005】
現在、フューエルリッドの開閉部にこのプッシュリフタを用いる車両において、上記のスライドドアの干渉防止機構を適用することを検討している。
【0006】
しかし、フューエルリッドのプッシュリフタと、スライドドアのドア開放規制機構を単純に連動させた場合、プッシュリフタが突出した状態においてスライドドアの開放を規制できるようになるものの、プッシュリフタが後退した状態であっても、フューエルリッドを指先で強引に押し上げたときには、スライドドアとフューエルリッドが干渉する可能性が考えられる。
【0007】
そこで、この発明は、フューエルリッドにプッシュリフタが用いられる場合にも、スライドドアとフューエルリッドの干渉を確実に防止することのできるスライドドアの干渉防止構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、スライドドア(例えば、後述の実施形態におけるスライドドア11)とフューエルリッド(例えば、後述の実施形態におけるフューエルリッド10)の同時開放を防止するスライドドアの干渉防止構造において、前記フューエルリッドを介して押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返し、前記フューエルリッドが閉状態では前記引き込み維持状態となり、前記突出維持状態となることで前記フューエルリッドを微小開き状態とするプッシュリフタ(例えば、後述の実施形態におけるプッシュリフタ15)と、前記フューエルリッドが閉じられて前記プッシュリフタが引き込み維持状態にされたときに前記フューエルリッドをプッシュリフタに係止し、前記プッシュリフタが突出維持状態とされて前記フューエルリッドが微小開き状態となったときに同フューエルリッドと前記プッシュリフタの係止を解除するリッド係止手段(例えば、後述の実施形態における係合凸部35および係合凹部36)と、前記プッシュリフタが前記突出維持状態となったときに前記スライドドアのスライド開放をロックするドア開放規制手段(例えば、後述の実施形態におけるドア開放規制装置25)と、を備えていることを特徴とする。
これにより、フューエルリッドが閉じられてプッシュリフタが引き込み維持状態となると、フューエルリッドとプッシュリフタはリッド係止手段によって係止され、フューエルリッドを指先で強引に押し上げようとしても、フューエルリッドの開作動が規制される。また、この状態からプッシュリフタが押圧されて突出維持状態とされると、リッド係止手段によるフューエルリッドとプッシュリフタの係合は解除されるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスライドドアの干渉防止構造において、前記プッシュリフタは、前記フューエルリッドを開閉可能に支持する車体側部材(例えば、後述の実施形態におけるフューエルアダプタ14)に設置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のスライドドアの干渉防止構造において、前記プッシュリフタが突出維持状態となったときにおける前記フューエルリッドの微小開き状態では、前記フューエルリッドが前記スライドドアのスライド軌道に入り込まない角度に回動規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、フューエルリッドが閉じられてプッシュリフタが引き込み維持状態となると、フューエルリッドとプッシュリフタがリッド係止手段によって係止され、指先をかけてのフューエルリッドの強引な開きが防止されるようになるため、プッシュリフタが後退した状態でのスライドドアとフューエルリッドの干渉を確実に防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、プッシュリフタが、フューエルリッドを開閉可能に支持する車体側部材に設置されるため、ドア開放規制手段とプッシュリフタの連係が容易となり、構造の簡素化と製造の容易化を図ることが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、プッシュリフタが突出維持状態となったときに、フューエルリッドがスライドドアのスライド軌道に入り込まない角度に回動規制されるため、スライドドアとフューエルリッドの干渉をより確実に規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかるスライドドア11の干渉防止構造を採用した車両1の側面を示すものである。
この車両1は、後部座席横の車体側部にスライドドア11を備えたミニバンタイプの車両であり、車体側面のスライドドア11の後方側のスライド軌道上に燃料給油部12が設けられ、この燃料給油部12がフューエルリッド10によって開閉されるようになっている。
【0015】
図2は、車体の燃料給油部12の断面を示すものであり、同図に示すように車体の燃料給油部12には、給油口13を囲む凹状のフューエルアダプタ14(車体側部材)が固定され、このフューエルアダプタ14の開口14a側の縁部にフューエルリッド10が開閉可能に取付けられている。なお、図2中10aは、フューエルリッド10のヒンジ軸を示す。また、フューエルリッド10の閉時に同リッド10の自由端が位置される側のフューエルアダプタ14の縁部には、フューエルリッド10を閉位置と微小開き位置の二位置に切換え操作するためのプッシュリフタ15 が設置されている。
【0016】
図3〜図5は、プッシュリフタ15の詳細構造を示すものである。
プッシュリフタ15は、図3に示すように、フューエルリッド10を操作するための操作ロッド16がハウジング17に進退自在に保持され、操作ロッド16の先端部がフューエルリッド10の裏面に対して当接可能となっている。操作ロッド16は、図4に示すように、ハウジング17内に収容される付根部側に制御カム部18とワイヤ連結部19が設けられている。制御カム部18とワイヤ連結部19は並列配置の状態で一体に結合され、ワイヤ連結部19には後述する連動ワイヤ20が連結されている。また、ハウジング17の基端側はキャップ部材24によって閉塞されており、このキャップ部材24とワイヤ連結部19の間には、操作ロッド16を常時突出方向に付勢する付勢スプリング21が収容されている。さらに、キャップ部材24には棒状ばねから成るガイドロッド22が固定されている。ガイドロッド22は先端側が制御カム部18方向に延出し、その延出端に屈曲部22aが形成されている。
【0017】
制御カム部18は、図5に示すように、平面形状が略矩形状に形成され、内側のカム形状によってガイドロッド22の屈曲部22aを案内するようになっている。このガイドロッド22のばね力は、屈曲部22aの先端部を制御カム部18の後述する溝23の底面に常に押し付けるように作用している。
制御カム部18は、平坦面49に環状の溝23が形成されたものであって、この溝23は、略ハート形状を呈している。そして、溝23は、それぞれ深さの異なる第1溝部23a、第2溝部23b、第3溝部23c、および第4溝部23dとから構成されている。第1溝部23aは平坦面24よりも深く、第2溝部23bは第1溝部23aよりも深く、第3溝部23cは第2溝部23bよりも深く、第4溝部23dは第3溝部23cよりも深くなっている。なお、第4溝部23dと第1溝部23aの間にはスロープ23eが形成されている。
【0018】
このような制御カム部18においては、ガイドロッド22の屈曲部22aは、第1溝部23aに設定される第1基準位置P1と第3溝部23cに設定される第2基準位置P2とを経由する矢印Rで示される周回経路を移動することとなる。なお、ガイドロッド22の屈曲部22aの周回経路Rでの移動は、操作ロッド16の後退作動と突出作動が繰り返されることによって行われる。
そして、ガイドロッド22の屈曲部22aが第1基準位置P1に配置されているときには、操作ロッド16は最大に突出して突出維持状態となり、第2基準位置P2に配置されているときには、操作ロッド16は最大に後退して引き込み維持状態となる。したがって、このプッシュリフタ15においては、操作ロッド16に対する押圧操作(押し込み操作)が繰り返されることにより、突出維持状態と引き込み維持状態が交互に切り換わる。
【0019】
また、この車両1においては、図1に示すように、スライドドア11の閉状態からのスライド開放をロックするドア開放規制装置25(ドア開放規制手段)が設けられている。このドア開放規制装置25は、スライドドア11のローラ26の支持部を係止することによって、スライドドア11の開放を規制するものであり、ローラ26の転動するガイドレール27の下方に設置されている。
【0020】
図6は、ドア開放規制装置25の概略構成を示すものである。
同図に示すように、ドア開放規制装置25は、ガイドレール27(図1参照)の下方に固定設置された支持ブラケット28と、この支持ブラケット28に回動自在に軸支された係止爪29と、この係止爪29を前方に倒す方向Dに付勢する図示しない付勢スプリングと、係止爪29に突設された支持突起29aに係合する長孔30aを有する係合部材30と、を備え、係合部材30には、プッシュリフタ15から延びる連動ワイヤ20の他端側が接続されている。係止爪29は、連動ワイヤ20から張力が入力されない間は付勢スプリング21の力よって前方に倒れており、連動ワイヤ20が引き込まれたときには、係合部材30を介して上方に引き起こされることで、スライドドア11の開放作動を規制する。連動ワイヤ20は、プッシュリフタ15の操作ロッド16と係止爪29とを連動させ、操作ロッド16が突出作動したときに、係止爪29でスライドドア11の開放作動を規制するようになっている。
【0021】
図7〜図10は、フューエルリッド10の係止部の構造を示すものである。
フューエルアダプタ14の開口14aの縁部のうちの、フューエルリッド10の閉時に同リッド10の自由端側が位置される部位には上述のプッシュリフタ15が設置され、フューエルアダプタ14に形成された設置孔14b(図2参照)を通してプッシュリフタ15の操作ロッド16が車外側に突出するようになっている。なお、プッシュリフタ15は、操作ロッド16の先端側が、フューエルリッド10のヒンジ軸10aと略直交する平面内において、ヒンジ軸10a方向に向かって設定角度傾斜するように設置されている。
【0022】
ここで、操作ロッド16は、断面略楕円状のロッド本体31の先端側に幅の狭い首部32を介して略楕円状の頭部33が設けられている。なお、首部32の連設されるロッド本体31の前端面は後述する肩部34とされている。この実施形態の場合、首部32と頭部33が肩部34とともに係合凸部35を構成している。
【0023】
一方、フューエルリッド10の自由端側の裏面には、操作ロッド16の先端側の係合凸部35と係合可能な係合凹部36が設けられている。この実施形態の場合、係合凸部35と係合凹部36はこの発明におけるリッド係止手段を構成している。
係合凹部36は、フューエルリッド10の自由端側からヒンジ軸10a方向に向かって隆起する第1の傾斜壁37と、第1の傾斜壁37の頂部からヒンジ軸10a方向に向かって逆に傾斜する第2の傾斜壁38と、第1の傾斜壁37と第2の傾斜壁38の鉛直上方側の面を閉塞する端部閉塞壁39と、を備え、第1の傾斜壁37と第2の傾斜壁38とに跨って係脱制御孔40が形成されている。なお、この実施形態の場合、フューエルリッド10はヒンジ軸10aを中心として略水平方向に回動する。
係脱制御孔40は、幅の狭い係止孔部41と、この係止孔部41よりも幅の広い解除孔部42とを備え、両孔部41,42がヒンジ軸10aと直交する方向に沿って連続して形成されている。係止孔部41は第1の傾斜壁37に形成され、解除孔部42は第1の傾斜壁37の頂部付近から第2の傾斜壁38にかけて形成されている。また、解除孔部42と係止孔部41の間は幅が徐々に縮小するようにテーパ部43によって接続されている。
【0024】
解除孔部42は、係合凸部35の頭部33と首部32が挿入、或いは、引き抜かれる部分であり、図8,図9に示すようにその幅L1は頭部33の長径D1よりも広く形成されている。また、係止孔部41は、係合凸部35の首部32のみが挿入される部分であり、その幅L2は首部32の幅D2よりも広く、かつ頭部33の長径D1よりも狭く形成されている。なお、この実施形態の場合、首部32は断面略楕円状に形成され、短径側が係止孔部41の幅方向と合致し、長径側が係止孔部41の延出方向に沿うように設定されている。
【0025】
ところで、この係止部の場合、図10に示すように、フューエルリッド10が閉じられた状態から開き方向に作動するときに、プッシュリフタ15の操作ロッド16の突出方向とフューエルリッド10の開き方向が交差するため、操作ロッド16の突出作動に応じて、同ロッド16の頭部33がフューエルリッド10に対して回動軸(ヒンジ軸10a)側に変位する。この実施形態の場合、フューエルリッド10が閉じられて操作ロッド16が後退したときには頭部33が係止孔部41の位置に変位し、操作ロッド16が突出してフューエルリッド10が微小開き状態となったときには頭部33が解除孔部42の位置へと変位する。
【0026】
また、操作ロッド16は係脱制御孔40の孔縁に対して肩部34で当接するが、係脱制御孔40の孔縁を形成する第1の傾斜壁37には、図10に示すように、湾曲面37aが形成されている。この湾曲面37aは、フューエルリッド10が閉位置付近で回動する際に、フューエルリッド10の回動位置に拘わらず肩部34が常時前面で当接するように設けたものであり、第1の傾斜壁37の中央がプッシュリフタ15方向に膨出する湾曲形状とされている。
【0027】
また、係合凹部36の端部閉塞壁39は、図8に示すように、係脱制御孔40の解除孔部42に向かって肉厚が増加し、その肉厚部が荷重支持壁39aとされている。この荷重支持壁39aは、フューエルリッド10が微小開き状態となったときに係合凸部35の頭部33に当接して、フューエルリッド10の荷重を頭部33に支持させるものであり、荷重支持壁39aの下面(頭部33と当接する面)と解除孔部42の内面とは段差のない連続した平面となっている。
【0028】
なお、図7中、45は、フューエルリッド10の裏面に形成されたロック係合部であり、フューエルアダプタ14側に設置された図示しないロック装置の爪がこのロック係合部45に対して係合可能とされている。
【0029】
以上の構成において、開状態のフューエルリッド10を閉じる場合には、作業者がフェーエルリッド10に手をあてがい、同リッド10を押圧することで閉方向に回動させる。こうしてフューエルリッド10を閉方向に回動させると、最初に、プッシュリフタ15側の係合凸部35の頭部33と首部32がリッド10側の係合凹部36の解除孔部42に挿入され、その後に係合凹部36の係脱制御孔40の孔縁に係合凸部35の肩部34が当接することにより、押圧荷重がプッシュリフタ15に入力されるようになる。この状態からさらにフューエルリッド10に荷重が加えられると、肩部34が係脱制御孔40の孔縁に沿って第1の傾斜壁37上を摺動しつつ首部32が係脱制御孔40内を変位する。そして、最終的には、プッシュリフタ15が最大後退位置まで後退し、係合凸部35の頭部33と首部32が係止孔部41で停止する。
【0030】
これにより、プッシュリフタ15は引き込み維持状態とされ、フューエルリッド10は係合凸部35と係合凹部36(頭部33と係止孔部41)の係合によって閉状態のまま係止されることになる。したがって、この状態からフューエルリッド10を手で強引押し上げようとしても、フューエルリッド10は開かれることはない。
また、この状態で車室内からロックノブ(図示せず)の操作が行われると、ロック装置の爪がフューエルリッド10のロック係合部45に係合してフューエルリッド10がロックされる。なお、この状態においては、図11(A)に示すように、ドア開放規制装置25の係止爪29は前方に倒れ、スライドドア11に対するロックを解除している。
【0031】
また、この状態から車室内からロックノブが解除操作され、その後にフューエルリッド10を開くために作業者によって同リッド10が押圧されると、その押圧力が係合凸部35の肩部34を通してプッシュリフタ15に入力され、プッシュリフタ15の操作ロッド16がこの押圧力の入力を契機として前方に突出するようになる。こうして操作ロッド16が突出すると、係合凸部35の肩部34が係脱制御孔40の孔縁に沿って第1の傾斜壁37上を摺動し、この間に係合凸部35の頭部33と首部34が係脱制御孔40に沿って解除孔部42方向に変位する。そして、プッシュリフタ15が最大突出位置まで前進すると、フューエルリッド15が微小開き状態とされるとともに、頭部33が解除孔部42内に位置されるようになる。
【0032】
これにより、プッシュリフタ15は突出維持状態となり、フューエルリッド10とプッシュリフタ15の係合(係合凹部36と係合凸部35の係合)は解除されることになる。そして、この状態からフューエルリッド10を完全に開く場合には、作業者がフューエルリッド10に手をあてがい、手による操作によってフューエルリッド10を回動させる。
【0033】
また、上述のようにプッシュリフタ15の操作ロッド16が突出維持状態になると、図11(B)に示すように、連動ワイヤ20を介してドア開放規制装置25の係止爪29が引き起こされ、それによってスライドドア11の開放が規制されるようになる。したがって、こうしてフューエルリッド10が開いた状態からスライドドア11を開放しようとしても、スライドドア11の開放はできなくなり、スライドドア11とフューエルリッド10の干渉は確実に防止される。
【0034】
以上のように、この車両1で採用するスライドドア11の干渉防止構造は、プッシュリフタ15が突出維持状態になるとスライドドア11の開放作動を規制し、引き込み維持状態になるとスライドドア11の規制を解除するように、プッシュリフタ15の操作ロッド16とドア開放規制装置25の係止爪29が連係されているため、プッシュリフタ15が突出してフューエルリッド10が開いているときにおけるスライドドア11のスライド開放をロックすることができる。
【0035】
そして、さらにこの干渉防止構造においては、プッシュリフタ15が突出維持状態のときに、プッシュリフタ15側の係合凸部35とフューエルリッド10側の係合凹部36の係合が解除され、プッシュリフタ15が引き込み維持状態のときに、係合凸部35と係合凹部36が係合されるようになっているため、プッシュリフタ15が引き込み維持状態のまま、フューエルリッド10が強引に手で引き起こされることがなく、したがって、フューエルリッド10が開くときには必ずスライドドア11のスライド開放をロックすることが可能になる。
よって、この干渉防止構造においては、フューエルリッド10の開閉部にプッシュリフタ15を採用しつつも、スライドドア11とフューエルリッド10の干渉を確実に防止することができる。
【0036】
また、この実施形態の干渉防止構造は、プッシュリフタ15がフューエルアダプタ14側に設置されているため、フューエルリッド10側の構造を簡素化して給油時の作業性を向上させることができるとともに、プッシュリフタ15とドア開放規制装置25を連動させる連動ワイヤ20を車体側に容易にかつ、安定した状態で配索することができる利点がある。
【0037】
ところで、この実施形態の場合、プッシュリフタ15が突出維持状態になったときにおけるフューエルリッド10の開き角度は、フューエルリッド10がスライドドア11のスライド軌道に入り込まない設定角度に設定されているが、プッシュリフタ15が突出維持状態になったときに、人の手によって開き操作が可能な弱いばね力でフューエルリッド10の開き角度を設定角度に規制する規制手段を設けるようにしても良い。この場合、何らかの原因でスライドドア11のスライド開放をロックできない状況が起こっても、スライドドア11とフューエルリッド10の干渉を確実に防止することができる。
【0038】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施形態を示すものであり、この発明にかかるフェーエルリッドの係止部構造を採用した車両の側面図。
【図2】同実施形態を示す図1のA−A断面に対応する断面図。
【図3】同実施形態のフューエルリッド係止部構造で用いるプッシュリフタの斜視図。
【図4】同実施形態のプッシュリフタの分解斜視図。
【図5】同実施形態のプッシュリフタの図4のB矢視図。
【図6】同実施形態のドア開放規制装置を示す断面図。
【図7】同実施形態の燃料給油部を示す斜視図。
【図8】同実施形態のフェーエルリッドの裏面を示す正面図。
【図9】同実施形態の係合凸部と係合凹部の係合状態を示す側面図。
【図10】同実施形態のフューエルリッドの開閉状態を示す模式的な断面図。
【図11】同実施形態のフューエルリッドとドア開放規制装置の作動を示す断面図。
【符号の説明】
【0040】
10…フューエルリッド
11…スライドドア
14…フューエルアダプタ(車体側部材)
15…プッシュリフタ
25…ドア開放規制装置(ドア開放規制手段)
35…係合凸部(リッド係止手段)
36…係合凹部(リッド係止手段)
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両の燃料供給部に開閉自在に取り付けられるフューエルリッドとスライドドアとの干渉を防止するスライドドアの干渉防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の燃料給油部は、通常、車体後部側の側面に設けられ、給油口を覆うフューエルリッドが開閉可能に設けられている。また、ミニバンタイプの車両等では後部座席側のドアにスライドドアを採用したものがあり、このタイプの車両においては、スライドドアの後方側のスライド軌道上にフューエルリッドの開き位置が重なるものがある。
【0003】
このため、この種の車両の技術として、スライドドアとフューエルリッドの同時開放を防止するスライドドアの干渉防止構造が案出されている(例えば、特許文献1参照)。
このスライドドアの干渉防止構造は、車体側の燃料給油部の縁部に、突出方向にばね付勢されてフューエルリッドを微小開き状態にする付勢ロッドを設けるとともに、スライドドアにドア開放規制機構を設け、付勢ロッドが突出したときに、ドア開放規制機構が作動するように付勢ロッドとドア開放規制機構を連動させたものである。したがって、この干渉防止機構を採用した場合、フューエルリッドが閉じられて付勢ロッドが後退している間はスライドドアの自由な開放が許容され、フューエルリッドが開いて付勢ロッドが突出したときには、ドア開放規制機構が作動することでスライドドアの開放作動が禁止される。
【特許文献1】特開2004−106577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フューエルリッドの開閉部の技術として、押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返すプッシュリフタを用いたものが知られている。このプッシュリフタは、フューエルリッドを介して押圧を繰り返すことにより、フューエルリッドを閉位置と微小開き位置の二位置に切り換えることができる。
【0005】
現在、フューエルリッドの開閉部にこのプッシュリフタを用いる車両において、上記のスライドドアの干渉防止機構を適用することを検討している。
【0006】
しかし、フューエルリッドのプッシュリフタと、スライドドアのドア開放規制機構を単純に連動させた場合、プッシュリフタが突出した状態においてスライドドアの開放を規制できるようになるものの、プッシュリフタが後退した状態であっても、フューエルリッドを指先で強引に押し上げたときには、スライドドアとフューエルリッドが干渉する可能性が考えられる。
【0007】
そこで、この発明は、フューエルリッドにプッシュリフタが用いられる場合にも、スライドドアとフューエルリッドの干渉を確実に防止することのできるスライドドアの干渉防止構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、スライドドア(例えば、後述の実施形態におけるスライドドア11)とフューエルリッド(例えば、後述の実施形態におけるフューエルリッド10)の同時開放を防止するスライドドアの干渉防止構造において、前記フューエルリッドを介して押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返し、前記フューエルリッドが閉状態では前記引き込み維持状態となり、前記突出維持状態となることで前記フューエルリッドを微小開き状態とするプッシュリフタ(例えば、後述の実施形態におけるプッシュリフタ15)と、前記フューエルリッドが閉じられて前記プッシュリフタが引き込み維持状態にされたときに前記フューエルリッドをプッシュリフタに係止し、前記プッシュリフタが突出維持状態とされて前記フューエルリッドが微小開き状態となったときに同フューエルリッドと前記プッシュリフタの係止を解除するリッド係止手段(例えば、後述の実施形態における係合凸部35および係合凹部36)と、前記プッシュリフタが前記突出維持状態となったときに前記スライドドアのスライド開放をロックするドア開放規制手段(例えば、後述の実施形態におけるドア開放規制装置25)と、を備えていることを特徴とする。
これにより、フューエルリッドが閉じられてプッシュリフタが引き込み維持状態となると、フューエルリッドとプッシュリフタはリッド係止手段によって係止され、フューエルリッドを指先で強引に押し上げようとしても、フューエルリッドの開作動が規制される。また、この状態からプッシュリフタが押圧されて突出維持状態とされると、リッド係止手段によるフューエルリッドとプッシュリフタの係合は解除されるようになる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスライドドアの干渉防止構造において、前記プッシュリフタは、前記フューエルリッドを開閉可能に支持する車体側部材(例えば、後述の実施形態におけるフューエルアダプタ14)に設置されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のスライドドアの干渉防止構造において、前記プッシュリフタが突出維持状態となったときにおける前記フューエルリッドの微小開き状態では、前記フューエルリッドが前記スライドドアのスライド軌道に入り込まない角度に回動規制されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、フューエルリッドが閉じられてプッシュリフタが引き込み維持状態となると、フューエルリッドとプッシュリフタがリッド係止手段によって係止され、指先をかけてのフューエルリッドの強引な開きが防止されるようになるため、プッシュリフタが後退した状態でのスライドドアとフューエルリッドの干渉を確実に防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、プッシュリフタが、フューエルリッドを開閉可能に支持する車体側部材に設置されるため、ドア開放規制手段とプッシュリフタの連係が容易となり、構造の簡素化と製造の容易化を図ることが可能になる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、プッシュリフタが突出維持状態となったときに、フューエルリッドがスライドドアのスライド軌道に入り込まない角度に回動規制されるため、スライドドアとフューエルリッドの干渉をより確実に規制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明にかかるスライドドア11の干渉防止構造を採用した車両1の側面を示すものである。
この車両1は、後部座席横の車体側部にスライドドア11を備えたミニバンタイプの車両であり、車体側面のスライドドア11の後方側のスライド軌道上に燃料給油部12が設けられ、この燃料給油部12がフューエルリッド10によって開閉されるようになっている。
【0015】
図2は、車体の燃料給油部12の断面を示すものであり、同図に示すように車体の燃料給油部12には、給油口13を囲む凹状のフューエルアダプタ14(車体側部材)が固定され、このフューエルアダプタ14の開口14a側の縁部にフューエルリッド10が開閉可能に取付けられている。なお、図2中10aは、フューエルリッド10のヒンジ軸を示す。また、フューエルリッド10の閉時に同リッド10の自由端が位置される側のフューエルアダプタ14の縁部には、フューエルリッド10を閉位置と微小開き位置の二位置に切換え操作するためのプッシュリフタ15 が設置されている。
【0016】
図3〜図5は、プッシュリフタ15の詳細構造を示すものである。
プッシュリフタ15は、図3に示すように、フューエルリッド10を操作するための操作ロッド16がハウジング17に進退自在に保持され、操作ロッド16の先端部がフューエルリッド10の裏面に対して当接可能となっている。操作ロッド16は、図4に示すように、ハウジング17内に収容される付根部側に制御カム部18とワイヤ連結部19が設けられている。制御カム部18とワイヤ連結部19は並列配置の状態で一体に結合され、ワイヤ連結部19には後述する連動ワイヤ20が連結されている。また、ハウジング17の基端側はキャップ部材24によって閉塞されており、このキャップ部材24とワイヤ連結部19の間には、操作ロッド16を常時突出方向に付勢する付勢スプリング21が収容されている。さらに、キャップ部材24には棒状ばねから成るガイドロッド22が固定されている。ガイドロッド22は先端側が制御カム部18方向に延出し、その延出端に屈曲部22aが形成されている。
【0017】
制御カム部18は、図5に示すように、平面形状が略矩形状に形成され、内側のカム形状によってガイドロッド22の屈曲部22aを案内するようになっている。このガイドロッド22のばね力は、屈曲部22aの先端部を制御カム部18の後述する溝23の底面に常に押し付けるように作用している。
制御カム部18は、平坦面49に環状の溝23が形成されたものであって、この溝23は、略ハート形状を呈している。そして、溝23は、それぞれ深さの異なる第1溝部23a、第2溝部23b、第3溝部23c、および第4溝部23dとから構成されている。第1溝部23aは平坦面24よりも深く、第2溝部23bは第1溝部23aよりも深く、第3溝部23cは第2溝部23bよりも深く、第4溝部23dは第3溝部23cよりも深くなっている。なお、第4溝部23dと第1溝部23aの間にはスロープ23eが形成されている。
【0018】
このような制御カム部18においては、ガイドロッド22の屈曲部22aは、第1溝部23aに設定される第1基準位置P1と第3溝部23cに設定される第2基準位置P2とを経由する矢印Rで示される周回経路を移動することとなる。なお、ガイドロッド22の屈曲部22aの周回経路Rでの移動は、操作ロッド16の後退作動と突出作動が繰り返されることによって行われる。
そして、ガイドロッド22の屈曲部22aが第1基準位置P1に配置されているときには、操作ロッド16は最大に突出して突出維持状態となり、第2基準位置P2に配置されているときには、操作ロッド16は最大に後退して引き込み維持状態となる。したがって、このプッシュリフタ15においては、操作ロッド16に対する押圧操作(押し込み操作)が繰り返されることにより、突出維持状態と引き込み維持状態が交互に切り換わる。
【0019】
また、この車両1においては、図1に示すように、スライドドア11の閉状態からのスライド開放をロックするドア開放規制装置25(ドア開放規制手段)が設けられている。このドア開放規制装置25は、スライドドア11のローラ26の支持部を係止することによって、スライドドア11の開放を規制するものであり、ローラ26の転動するガイドレール27の下方に設置されている。
【0020】
図6は、ドア開放規制装置25の概略構成を示すものである。
同図に示すように、ドア開放規制装置25は、ガイドレール27(図1参照)の下方に固定設置された支持ブラケット28と、この支持ブラケット28に回動自在に軸支された係止爪29と、この係止爪29を前方に倒す方向Dに付勢する図示しない付勢スプリングと、係止爪29に突設された支持突起29aに係合する長孔30aを有する係合部材30と、を備え、係合部材30には、プッシュリフタ15から延びる連動ワイヤ20の他端側が接続されている。係止爪29は、連動ワイヤ20から張力が入力されない間は付勢スプリング21の力よって前方に倒れており、連動ワイヤ20が引き込まれたときには、係合部材30を介して上方に引き起こされることで、スライドドア11の開放作動を規制する。連動ワイヤ20は、プッシュリフタ15の操作ロッド16と係止爪29とを連動させ、操作ロッド16が突出作動したときに、係止爪29でスライドドア11の開放作動を規制するようになっている。
【0021】
図7〜図10は、フューエルリッド10の係止部の構造を示すものである。
フューエルアダプタ14の開口14aの縁部のうちの、フューエルリッド10の閉時に同リッド10の自由端側が位置される部位には上述のプッシュリフタ15が設置され、フューエルアダプタ14に形成された設置孔14b(図2参照)を通してプッシュリフタ15の操作ロッド16が車外側に突出するようになっている。なお、プッシュリフタ15は、操作ロッド16の先端側が、フューエルリッド10のヒンジ軸10aと略直交する平面内において、ヒンジ軸10a方向に向かって設定角度傾斜するように設置されている。
【0022】
ここで、操作ロッド16は、断面略楕円状のロッド本体31の先端側に幅の狭い首部32を介して略楕円状の頭部33が設けられている。なお、首部32の連設されるロッド本体31の前端面は後述する肩部34とされている。この実施形態の場合、首部32と頭部33が肩部34とともに係合凸部35を構成している。
【0023】
一方、フューエルリッド10の自由端側の裏面には、操作ロッド16の先端側の係合凸部35と係合可能な係合凹部36が設けられている。この実施形態の場合、係合凸部35と係合凹部36はこの発明におけるリッド係止手段を構成している。
係合凹部36は、フューエルリッド10の自由端側からヒンジ軸10a方向に向かって隆起する第1の傾斜壁37と、第1の傾斜壁37の頂部からヒンジ軸10a方向に向かって逆に傾斜する第2の傾斜壁38と、第1の傾斜壁37と第2の傾斜壁38の鉛直上方側の面を閉塞する端部閉塞壁39と、を備え、第1の傾斜壁37と第2の傾斜壁38とに跨って係脱制御孔40が形成されている。なお、この実施形態の場合、フューエルリッド10はヒンジ軸10aを中心として略水平方向に回動する。
係脱制御孔40は、幅の狭い係止孔部41と、この係止孔部41よりも幅の広い解除孔部42とを備え、両孔部41,42がヒンジ軸10aと直交する方向に沿って連続して形成されている。係止孔部41は第1の傾斜壁37に形成され、解除孔部42は第1の傾斜壁37の頂部付近から第2の傾斜壁38にかけて形成されている。また、解除孔部42と係止孔部41の間は幅が徐々に縮小するようにテーパ部43によって接続されている。
【0024】
解除孔部42は、係合凸部35の頭部33と首部32が挿入、或いは、引き抜かれる部分であり、図8,図9に示すようにその幅L1は頭部33の長径D1よりも広く形成されている。また、係止孔部41は、係合凸部35の首部32のみが挿入される部分であり、その幅L2は首部32の幅D2よりも広く、かつ頭部33の長径D1よりも狭く形成されている。なお、この実施形態の場合、首部32は断面略楕円状に形成され、短径側が係止孔部41の幅方向と合致し、長径側が係止孔部41の延出方向に沿うように設定されている。
【0025】
ところで、この係止部の場合、図10に示すように、フューエルリッド10が閉じられた状態から開き方向に作動するときに、プッシュリフタ15の操作ロッド16の突出方向とフューエルリッド10の開き方向が交差するため、操作ロッド16の突出作動に応じて、同ロッド16の頭部33がフューエルリッド10に対して回動軸(ヒンジ軸10a)側に変位する。この実施形態の場合、フューエルリッド10が閉じられて操作ロッド16が後退したときには頭部33が係止孔部41の位置に変位し、操作ロッド16が突出してフューエルリッド10が微小開き状態となったときには頭部33が解除孔部42の位置へと変位する。
【0026】
また、操作ロッド16は係脱制御孔40の孔縁に対して肩部34で当接するが、係脱制御孔40の孔縁を形成する第1の傾斜壁37には、図10に示すように、湾曲面37aが形成されている。この湾曲面37aは、フューエルリッド10が閉位置付近で回動する際に、フューエルリッド10の回動位置に拘わらず肩部34が常時前面で当接するように設けたものであり、第1の傾斜壁37の中央がプッシュリフタ15方向に膨出する湾曲形状とされている。
【0027】
また、係合凹部36の端部閉塞壁39は、図8に示すように、係脱制御孔40の解除孔部42に向かって肉厚が増加し、その肉厚部が荷重支持壁39aとされている。この荷重支持壁39aは、フューエルリッド10が微小開き状態となったときに係合凸部35の頭部33に当接して、フューエルリッド10の荷重を頭部33に支持させるものであり、荷重支持壁39aの下面(頭部33と当接する面)と解除孔部42の内面とは段差のない連続した平面となっている。
【0028】
なお、図7中、45は、フューエルリッド10の裏面に形成されたロック係合部であり、フューエルアダプタ14側に設置された図示しないロック装置の爪がこのロック係合部45に対して係合可能とされている。
【0029】
以上の構成において、開状態のフューエルリッド10を閉じる場合には、作業者がフェーエルリッド10に手をあてがい、同リッド10を押圧することで閉方向に回動させる。こうしてフューエルリッド10を閉方向に回動させると、最初に、プッシュリフタ15側の係合凸部35の頭部33と首部32がリッド10側の係合凹部36の解除孔部42に挿入され、その後に係合凹部36の係脱制御孔40の孔縁に係合凸部35の肩部34が当接することにより、押圧荷重がプッシュリフタ15に入力されるようになる。この状態からさらにフューエルリッド10に荷重が加えられると、肩部34が係脱制御孔40の孔縁に沿って第1の傾斜壁37上を摺動しつつ首部32が係脱制御孔40内を変位する。そして、最終的には、プッシュリフタ15が最大後退位置まで後退し、係合凸部35の頭部33と首部32が係止孔部41で停止する。
【0030】
これにより、プッシュリフタ15は引き込み維持状態とされ、フューエルリッド10は係合凸部35と係合凹部36(頭部33と係止孔部41)の係合によって閉状態のまま係止されることになる。したがって、この状態からフューエルリッド10を手で強引押し上げようとしても、フューエルリッド10は開かれることはない。
また、この状態で車室内からロックノブ(図示せず)の操作が行われると、ロック装置の爪がフューエルリッド10のロック係合部45に係合してフューエルリッド10がロックされる。なお、この状態においては、図11(A)に示すように、ドア開放規制装置25の係止爪29は前方に倒れ、スライドドア11に対するロックを解除している。
【0031】
また、この状態から車室内からロックノブが解除操作され、その後にフューエルリッド10を開くために作業者によって同リッド10が押圧されると、その押圧力が係合凸部35の肩部34を通してプッシュリフタ15に入力され、プッシュリフタ15の操作ロッド16がこの押圧力の入力を契機として前方に突出するようになる。こうして操作ロッド16が突出すると、係合凸部35の肩部34が係脱制御孔40の孔縁に沿って第1の傾斜壁37上を摺動し、この間に係合凸部35の頭部33と首部34が係脱制御孔40に沿って解除孔部42方向に変位する。そして、プッシュリフタ15が最大突出位置まで前進すると、フューエルリッド15が微小開き状態とされるとともに、頭部33が解除孔部42内に位置されるようになる。
【0032】
これにより、プッシュリフタ15は突出維持状態となり、フューエルリッド10とプッシュリフタ15の係合(係合凹部36と係合凸部35の係合)は解除されることになる。そして、この状態からフューエルリッド10を完全に開く場合には、作業者がフューエルリッド10に手をあてがい、手による操作によってフューエルリッド10を回動させる。
【0033】
また、上述のようにプッシュリフタ15の操作ロッド16が突出維持状態になると、図11(B)に示すように、連動ワイヤ20を介してドア開放規制装置25の係止爪29が引き起こされ、それによってスライドドア11の開放が規制されるようになる。したがって、こうしてフューエルリッド10が開いた状態からスライドドア11を開放しようとしても、スライドドア11の開放はできなくなり、スライドドア11とフューエルリッド10の干渉は確実に防止される。
【0034】
以上のように、この車両1で採用するスライドドア11の干渉防止構造は、プッシュリフタ15が突出維持状態になるとスライドドア11の開放作動を規制し、引き込み維持状態になるとスライドドア11の規制を解除するように、プッシュリフタ15の操作ロッド16とドア開放規制装置25の係止爪29が連係されているため、プッシュリフタ15が突出してフューエルリッド10が開いているときにおけるスライドドア11のスライド開放をロックすることができる。
【0035】
そして、さらにこの干渉防止構造においては、プッシュリフタ15が突出維持状態のときに、プッシュリフタ15側の係合凸部35とフューエルリッド10側の係合凹部36の係合が解除され、プッシュリフタ15が引き込み維持状態のときに、係合凸部35と係合凹部36が係合されるようになっているため、プッシュリフタ15が引き込み維持状態のまま、フューエルリッド10が強引に手で引き起こされることがなく、したがって、フューエルリッド10が開くときには必ずスライドドア11のスライド開放をロックすることが可能になる。
よって、この干渉防止構造においては、フューエルリッド10の開閉部にプッシュリフタ15を採用しつつも、スライドドア11とフューエルリッド10の干渉を確実に防止することができる。
【0036】
また、この実施形態の干渉防止構造は、プッシュリフタ15がフューエルアダプタ14側に設置されているため、フューエルリッド10側の構造を簡素化して給油時の作業性を向上させることができるとともに、プッシュリフタ15とドア開放規制装置25を連動させる連動ワイヤ20を車体側に容易にかつ、安定した状態で配索することができる利点がある。
【0037】
ところで、この実施形態の場合、プッシュリフタ15が突出維持状態になったときにおけるフューエルリッド10の開き角度は、フューエルリッド10がスライドドア11のスライド軌道に入り込まない設定角度に設定されているが、プッシュリフタ15が突出維持状態になったときに、人の手によって開き操作が可能な弱いばね力でフューエルリッド10の開き角度を設定角度に規制する規制手段を設けるようにしても良い。この場合、何らかの原因でスライドドア11のスライド開放をロックできない状況が起こっても、スライドドア11とフューエルリッド10の干渉を確実に防止することができる。
【0038】
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の一実施形態を示すものであり、この発明にかかるフェーエルリッドの係止部構造を採用した車両の側面図。
【図2】同実施形態を示す図1のA−A断面に対応する断面図。
【図3】同実施形態のフューエルリッド係止部構造で用いるプッシュリフタの斜視図。
【図4】同実施形態のプッシュリフタの分解斜視図。
【図5】同実施形態のプッシュリフタの図4のB矢視図。
【図6】同実施形態のドア開放規制装置を示す断面図。
【図7】同実施形態の燃料給油部を示す斜視図。
【図8】同実施形態のフェーエルリッドの裏面を示す正面図。
【図9】同実施形態の係合凸部と係合凹部の係合状態を示す側面図。
【図10】同実施形態のフューエルリッドの開閉状態を示す模式的な断面図。
【図11】同実施形態のフューエルリッドとドア開放規制装置の作動を示す断面図。
【符号の説明】
【0040】
10…フューエルリッド
11…スライドドア
14…フューエルアダプタ(車体側部材)
15…プッシュリフタ
25…ドア開放規制装置(ドア開放規制手段)
35…係合凸部(リッド係止手段)
36…係合凹部(リッド係止手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドアとフューエルリッドの同時開放を防止するスライドドアの干渉防止構造において、
前記フューエルリッドを介して押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返し、前記フューエルリッドが閉状態では前記引き込み維持状態となり、前記突出維持状態となることで前記フューエルリッドを微小開き状態とするプッシュリフタと、
前記フューエルリッドが閉じられて前記プッシュリフタが引き込み維持状態にされたときに前記フューエルリッドをプッシュリフタに係止し、前記プッシュリフタが突出維持状態とされて前記フューエルリッドが微小開き状態となったときに同フューエルリッドと前記プッシュリフタの係止を解除するリッド係止手段と、
前記プッシュリフタが前記突出維持状態となったときに前記スライドドアのスライド開放をロックするドア開放規制手段と、
を備えていることを特徴とするスライドドアの干渉防止構造。
【請求項2】
前記プッシュリフタは、前記フューエルリッドを開閉可能に支持する車体側部材に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のスライドドアの干渉防止構造。
【請求項3】
前記プッシュリフタが突出維持状態となったときにおける前記フューエルリッドの微小開き状態では、前記フューエルリッドが前記スライドドアのスライド軌道に入り込まない角度で回動規制されることを特徴とする請求項1または2に記載のスライドドアの干渉防止構造。
【請求項1】
スライドドアとフューエルリッドの同時開放を防止するスライドドアの干渉防止構造において、
前記フューエルリッドを介して押圧動作を受けるごとに突出維持状態と引き込み維持状態とを交互に繰り返し、前記フューエルリッドが閉状態では前記引き込み維持状態となり、前記突出維持状態となることで前記フューエルリッドを微小開き状態とするプッシュリフタと、
前記フューエルリッドが閉じられて前記プッシュリフタが引き込み維持状態にされたときに前記フューエルリッドをプッシュリフタに係止し、前記プッシュリフタが突出維持状態とされて前記フューエルリッドが微小開き状態となったときに同フューエルリッドと前記プッシュリフタの係止を解除するリッド係止手段と、
前記プッシュリフタが前記突出維持状態となったときに前記スライドドアのスライド開放をロックするドア開放規制手段と、
を備えていることを特徴とするスライドドアの干渉防止構造。
【請求項2】
前記プッシュリフタは、前記フューエルリッドを開閉可能に支持する車体側部材に設置されていることを特徴とする請求項1に記載のスライドドアの干渉防止構造。
【請求項3】
前記プッシュリフタが突出維持状態となったときにおける前記フューエルリッドの微小開き状態では、前記フューエルリッドが前記スライドドアのスライド軌道に入り込まない角度で回動規制されることを特徴とする請求項1または2に記載のスライドドアの干渉防止構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−154787(P2009−154787A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337219(P2007−337219)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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