スライド弁
【課題】簡単な構成で高い信頼性の仕切り動作が高速度に可能なスライド弁を提供する。
【解決手段】スライド弁1は、弁箱10の中空部11内に配置され第1開口部12aを閉塞可能な可動弁部40を閉塞解除動作させる単動式エアシリンダからなる閉塞解除駆動手段とを有し、可動弁部40の閉塞解除動作と中立弁体30の回転動作とを順次動作可能とするとともに、オープン時には、閉塞解除エアシリンダの駆動圧が所定の閾値を超えた際に回転エアシリンダを動作開始させるとともに、クローズ時には、回転動作終了時に閉塞動作を開始させるエアオペレイト式2チャンネル2方弁を有するシーケンス回路を具備している。
【解決手段】スライド弁1は、弁箱10の中空部11内に配置され第1開口部12aを閉塞可能な可動弁部40を閉塞解除動作させる単動式エアシリンダからなる閉塞解除駆動手段とを有し、可動弁部40の閉塞解除動作と中立弁体30の回転動作とを順次動作可能とするとともに、オープン時には、閉塞解除エアシリンダの駆動圧が所定の閾値を超えた際に回転エアシリンダを動作開始させるとともに、クローズ時には、回転動作終了時に閉塞動作を開始させるエアオペレイト式2チャンネル2方弁を有するシーケンス回路を具備している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体(弁板)による流路を開閉する動作に加えて、弁体をスライド動作させる振り子型に適したスライド弁に関する。特に、本発明は、真空装置等において、異なる圧力、及び異なるプロセスを行う2つの空間をつなげている流路を仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(2つの空間をつなぐ)とともに、その開度を調整可能なスライド弁に関する。
【背景技術】
【0002】
真空装置等においては、チャンバと配管との間、配管と配管との間、あるいは配管とポンプ等との間等、異なる真空度の2つの空間の間を仕切り、仕切られた2つの空間をつなげる仕切りバルブが設けられている。このような仕切りバルブとしては、様々な形態の弁が知られている。
【0003】
例えば、弁板をスライドさせて流路の弁開閉位置に弁板を挿入し、更にこの弁板を作動させて流路を仕切り(閉弁動作)、あるいは上記弁板を作動させて流路をつなぎ(開弁動作)、更に弁板をスライドさせ、流路から弁箱内の退避位置に弁板を退避させる構造が知られている。このような構造を有する弁としては、振り子型,直動型,ドア型等が知られている。
【0004】
直動型仕切弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成された弁箱の中空部に、弁棒(支持体)に固設された弁板が配置された構造を有する。この構造においては、上記弁棒をその長手方向に直動させて、上記弁板を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁板を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0005】
従来の上記直動型仕切弁としては、ベローズで接続された2枚の第1弁板及び第2弁板からなる弁体と、この2つの弁板の間において弁板の中央部に配置されたアクチュエータと、流路を構成する開口部が形成された弁箱とを備えた仕切弁が知られている。この仕切弁においては、アクチュエータによって、弁箱の開口部の周囲の内面に第1弁板を当接及び押圧させて流路を閉鎖し、または、アクチュエータによって第1弁板を上記弁箱の内面から離間させて流路を開放する(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、振り子型仕切弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成されかつ中空部を有する弁箱と、中空部において回転軸に固設されて回転軸と垂直をなす面に平行な方向において広がっている支持体と、この支持体に固設された弁体(シールリング板が開口部に設けられている構造の場合には弁板)とが配置された構造を有する。この仕切弁においては、上記回転軸を回転させて、上記弁体を回動させ、上記弁体を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁体を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0007】
従来の上記振り子型仕切弁としては、ハウジングの中空部内に、回転軸において回動可能な弁板と、ハウジングの開口部に配置された摺動可能なシールリング板と、ハウジングに一体形成されたフランジに上記シールリング板を摺動させるアクチュエータとが設けられた構造が知られている。この仕切弁においては、上記シールリング板を上記弁板に当接及び押圧して流路を閉鎖し、または、上記シールリング板を上記弁板から離間させて流路を開放する(例えば特許文献2参照)。
【0008】
こうした振り子型仕切弁において、弁板を回動させるための機構として、弁板が取り付けられた回転軸に固着されたピニオンギアと、このピニオンギアに噛合するラックギアが形成されたラック部材と、ラック部材を直線運動(往復運動)させるシリンダからなる弁板回転機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−181205号公報
【特許文献2】特許第3655715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の仕切弁においては、連通するチャンバ等を仕切るバルブであるという用途から、駆動部分、特に、弁板回動の駆動部分はできるだけ小型化することが望ましい。しかしながら、駆動部分を小型化する、つまり、シリンダを小型化するとその出力が低下して、弁板の移動速度、すなわち、弁の開閉速度が低下してしまうため一定以上の小型化ができないという問題があった。
さらに、上述した従来の仕切弁においては、筒状のシリンダ本体内を摺動するピストンが収縮する、シリンダを含む駆動部分の小型化を図る場合にはピストンを移動させる圧力空気供給が1系統とされてこの圧空の供給によって伸縮のうち片方の動作をおこなうとともに、逆の動作はバネ等の付勢手段によりおこなう、いわゆる単動シリンダとされる構造となっていた。
このため、バネ等の付勢力に打ち勝って圧空によりピストンを駆動する必要があるため、駆動速度が遅くなるという問題があった。
また、このような単動シリンダにおいて、弁の駆動用に供給される圧空が1系統であるにも関わらず、弁板の回動動作と、これと直交する方向である閉塞解除の動作との2つの動作をおこなわなくてはいけない。さらに、これらの動作のタイミングとして、閉塞解除が不充分な状態で回動した場合には弁の破損も起こり得るため、動作のタイミングにも正確性が必要である。また、停電や圧空供給停止などの制御系のトラブルに対応して弁破壊防止を可能する構成が求められていた。
さらにこのような構成をより簡単な構成で実現したいという要求があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、小型化が可能であり簡単な構成で高い信頼性の仕切り動作が可能なスライド弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のようなスライド弁を提供した。
すなわち、本発明のスライド弁は、スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させラックピニオン及びこれを駆動する復動式エアシリンダからなる回転手段と、
前記中立弁体を閉塞解除動作させる単動式エアシリンダからなる閉塞解除駆動手段と、を有するスライド弁において、
前記中立弁体の閉塞解除動作と該中立弁体の回転動作とを順次動作可能とするとともに、オープン時には、閉塞解除エアシリンダの駆動圧が所定の閾値を超えた際に回転エアシリンダを動作開始させるとともに、クローズ時には、回転動作終了時に閉塞動作を開始させるエアオペレイト式2チャンネル2方弁を有するシーケンス回路を具備してなることを特徴とする。
本発明は、前記シーケンス回路が、クローズ時に、前記中立弁体の回転動作を終了するまで、閉塞圧力を安定した状態で維持可能とする回転動作終了検出スイッチを有することができる。
本発明の前記シーケンス回路が、ハウジングと、該ハウジング内部で付勢されたボールと、該ボールの移動位置を規制するボールガイドとを有し、前記ボールの位置によらず流路断面積が一定となるチェック弁を有することができる。
【0013】
本発明は、スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させる回転手段と、
前記弁箱内において前記回転軸に固着され、前記中立弁部を脱着可能に保持する接続部材と、を具備するものとされ、
前記中立弁体は、前記接続部材を介して前記回転軸に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記回転手段は、前記回転軸の軸心周りに形成されたピニオンと、該ピニオンに噛合するラック歯を備えたラック部材と、該ラック部材を直線運動させるシリンダと、これらラック部材とピニオンとを密閉状態に収納するケーシングと、を有し、
前記ケーシングには、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が周設され、
前記シリンダが、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、該ピストンには、その往復運動方向に延在する前記ラック部材が固着され、
前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で伸圧力空間を成すとともに、
前記シリンダ本体の他端側に密閉状態に接続された前記ケーシング側と前記ピストンとの間で縮圧力空間を成し、
前記シリンダ本体に設けられ前記伸圧力空間と外部との間を連通させる伸通気口と、前記ピニオン収納側のケーシングに設けられ前記縮圧力空間と外部との間を連通させる縮通気口とを有し、
前記ラック部材と前記滑り軸受との間で対向する部分には、前記ラック部材が往復運動しても前記滑り軸受より前記ピストン側の縮圧力空間内と前記縮通気口との通気状態を維持する連通溝が形成されていることができる。
本発明は、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることができる。
本発明の前記ケーシングには、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて通気させる際、この通気量を制御可能とする制御緩衝流路が形成されていることが好ましい。
前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にはそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が配され、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で圧力空間を成し、
前記シリンダ本体には、前記圧力空間と外部との間を連通させる通気口を有し、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のスライド弁においては、第1の通気口から駆動用空気を供給することと、第2の通気口からケーシング内部のピニオン収納部分、ラック部材収納部分および連通溝を介して駆動用空気を供給することで、移動するピストンに接続されたラック部材が伸縮し中立弁体が開閉する。
【0015】
前記ラック部材は長手方向に垂直な断面が円形を成し、かつ、前記長手方向に沿った2箇所以上で、前記滑り軸受によって摺動自在に支持されることが好ましい。
【0016】
前記滑り軸受は、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分に生じる前記ラック部材の作用線と、前記ラック部材の軸中心線との交点よりも、前記噛合部分から遠ざかる方向に配されていることがある。
【0017】
前記ラック部材の表面には、長手方向に沿って延びる溝が更に形成されていることもできる。
【0018】
前記可動弁部には、該弁板に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに、
前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁体に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、を具備してなる手段を採用することができる。
【0019】
本発明のスライド弁は、中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で動作する位置切り替え手段として前記流路方向に延在する軸線を有する回転軸と、
を具備するものとされ、
前記中立弁体が、前記切り替え手段に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記可動弁部が、該可動弁部に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、
前記回転軸の軸線方向に離間して該回転軸を保持する2以上の軸受と、
前記回転軸の軸線方向におけるこれら軸受間の位置で前記回転軸周面に摺動可能に接触する流体経路リングと、
を有し、
前記回転軸の一端面と前記流体経路リングの外周面とに設けられた開口どうしを連通する密閉した流体経路が設けられ、前記回転軸が回動位置に依らずに、かつ、前記弁箱中空部に露出することなく前記中立弁部内部に形成された流体経路と前記回転軸径方向外側位置となる前記弁箱外部とを連通することができる。
【0020】
本発明の前記流体経路として、前記回転軸内部には軸内経路が設けられ、該軸内経路が、前記回転軸の軸線方向に延在して前記回転軸の一端側に開口する軸方向軸内経路と、該軸方向経路に接続されるとともに前記回転軸の周面に開口する径方向軸内経路とからなり、
前記流体経路として、前記流体経路リング内部には、該流体経路リングの径方向に延在しその外周面及び内周面に開口する径方向リング経路が設けられ、
前記流体経路リング内周面および回転軸周面の間に、周方向に設けられ前記径方向軸内経路と前記径方向リング経路とを連通する周方向経路が周設されることができる。
【0021】
本発明において、前記経路は、前記第2周囲領域において前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に前記第2付勢部として形成されたエアシリンダに駆動用気体を供給する供給路の一部とされる手段か、または、前記経路は、前記第2付勢部とされたエアシリンダの摺動部分に設けられた2重シール部において2重目のシールより気体供給側に設けられ、1重目のシールが破れた際に駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路の一部とされる手段を選択することができる。
【0022】
本発明の前記回転軸には、前記供給路と前記連絡路となる軸方向経路がそれぞれ平行に設けられてなるとともに、前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが前記回転軸の異なる軸方向位置に設けられてなることができる。
本発明における前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが、前記軸受の軸線方向中間位置に対して対称に配置されてなることができる。
本発明の前記軸受の軸線方向中間位置には、前記回転軸を駆動する駆動系ピニオンが接続されてなることが可能である。
さらに、本発明において、前記第2可動弁部には、前記第1付勢部の反力を前記第2開口部周囲の弁箱内面に伝達する反力伝達部が設けられることがより好ましい。
本発明の前記第2付勢部は、前記第2周囲領域において前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に形成されたエアシリンダとされ、バネ等とされる第1付勢部とあわせて単動エアシリンダを形成することが可能である。
また、本発明において、前記第2付勢部とされたエアシリンダには、摺動部分に2重シール部が設けられ、1重目のシールが破れた際に、2重目のシールより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路が設けられる手段を採用することもできる。
【0023】
また、前記第2付勢部とされたエアシリンダに駆動用気体を供給する供給路が形成され、該供給路には、前記第1可動弁部と前記中立弁部との流路方向位置が変更した際にも、前記第1可動弁部と前記中立弁部との間で駆動用気体を供給可能に摺動接続する接続ピン部が設けられることができる。
本発明においては、前記接続ピン部には、摺動部分に2重シール部が設けられ、1重目のシールが破れた際に、2重目のシールより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路が設けられることが望ましい。
さらに、前記切り替え手段が、前記流路方向に延在する軸線を有する回転軸を含むものとされてなることが可能である。
また、前記切り替え手段が、前記流路方向と交差する方向に延在し直線状に駆動される弁棒を含むものとされてなることがある。
【0024】
本発明は、前記回転軸の一端面と前記流体経路リングの外周面とに設けられた開口どうしを連通する密閉した流体経路が設けられ、前記回転軸が回動位置に依らずに、かつ、前記弁箱中空部に露出することなく前記中立弁部内部に形成された流体経路と前記回転軸径方向外側位置となる前記弁箱外部とを連通することにより、軸受と軸受との間の距離を長く確保でき、これにより、回転軸が傾く方向に回転軸へ作用するモーメントを2以上の軸受で保持する場合に、この軸受が受けるラジアル荷重を最小にすることができ、それにより軸受の耐久性を向上させることができる。あるいは、必要な回転軸の傾斜方向における変形防止能を維持した状態で回転軸の軸線方向長さを確保することができ、バルブとしての小型化を図ることができる。
また、上記の構成とすることにより、部品の構成を変えずに部品の組立方向を変えることのみによって、回転機構部の弁箱に対する取付面を、反転させることが可能である。
【0025】
本発明の前記流体経路として、前記回転軸内部には軸内経路が設けられ、該軸内経路が、前記回転軸の軸線方向に延在して前記回転軸の一端側に開口する軸方向軸内経路と、該軸方向経路に接続されるとともに前記回転軸の周面に開口する径方向軸内経路とからなり、
前記流体経路として、前記流体経路リング内部には、該流体経路リングの径方向に延在しその外周面及び内周面に開口する径方向リング経路が設けられ、
前記流体経路リング内周面および回転軸周面の間に、周方向に設けられ前記径方向軸内経路と前記径方向リング経路とを連通する周方向経路が周設されることによって、回転軸が回動しても、周設された周方向経路が前記径方向軸内経路と前記径方向リング経路とを連通した状態を維持することができる。また、周方向経路が周設されているため、経路内の流体からの作用力が軸受けにおける回転軸の支持状態に対して影響を及ぼすことを防止できる。
【0026】
本発明において、前記経路は、前記第2周囲領域において前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に前記第2付勢部として形成されたエアシリンダに駆動用気体を供給する供給路の一部とされる手段か、または、前記経路は、前記第2付勢部とされたエアシリンダの摺動部分に設けられた2重シール部において2重目のシールより気体供給側に設けられ、1重目のシールが破れた際に駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路の一部とされる手段を選択することにより、弁箱内部の中空部に露出(暴露)することなく、駆動用流体を回転軸内部経由で中立弁体へ供給するとともに、中間大気室への連絡路を回転軸内部経由で弁箱外部に連通させることが可能となる。
【0027】
本発明の前記回転軸には、前記供給路と前記連絡路となる軸方向経路がそれぞれ平行に設けられてなるとともに、前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが前記回転軸の異なる軸方向位置に設けられてなることにより、複数の経路を一本の回転軸内部を介して同時にそれぞれを別個に連通状態とすることができるので、駆動用流体の供給路とセーフティー用の中間大気用の連絡路とを一つの回転軸のみを介して配置することが可能となる。
本発明における前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが、前記軸受の軸線方向中間位置に対して対称に配置されてなることにより、軸受に対する加重を均等に近いものとして軸受の耐久性を向上し、バルブのメンテナンス費用を低減することが可能となる。
本発明の前記軸受の軸線方向中間位置には、前記回転軸を駆動する駆動系ピニオンが接続されてなることにより、軸受に対する加重を均等に近いものとして軸受の耐久性を向上し、バルブのメンテナンス費用を低減することができる。
【0028】
また、本発明においては、前記エアシリンダおよび接続ピン部は、第2シール部,第3シール部,及びワイパーを有することができ、前記ワイパーは、前記第3シール部よりも前記第2開口部に近い位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態のスライド弁においては、ラック歯の形成された部分が滑り軸受の両側位置まで移動するラック部材を有するシリンダであっても、ラックおよびピニオンを収納する部分のケーシングが密閉され、このケーシングのピニオン収納部分に対して駆動用空気を供給することで、ラックピニオンへの連通部分が密閉されていなくても、駆動用圧縮空気をシリンダに供給してピストンを往復動作させることが可能となり、中立弁体の駆動部分が従来できなかった程度に小型化することが可能となる。同時に、連通溝を設けることで、シリンダ内の縮圧力空間、ラック部材の収納部分、滑り軸受に対応する連通溝、ピニオンの収納部分、通気口の順に縮圧力空間を連通して、例えば、この経路の途中に通気口を設けた場合にピストンと反対側の密閉空間が、蓄圧部となって、中立弁体の動作が遅くなることを防止できる。
さらに、ピストンを伸位置から縮位置に移動させる際に、伸圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止、即ちラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力が加わらないように、ピストンに形成された緩衝溝によって、ピストンの縮位置への移動を滑らかに変化させる。
同様にピストンに形成された緩衝溝によって、ピストンを縮位置から伸位置に移動させる際に、縮圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止、即ちラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力が加わらないように、ピストンの伸位置への移動を滑らかに変化させる。
【0030】
即ち、縮圧力空間の内圧を増加させてピストンをその縮位置に向けて移動させる際に、伸圧力空間の内圧が急に高まり(伸圧力空間が圧縮され)、ピストンの移動速度が急激に減少する方向に力が働く。しかしながら、伸圧力空間内の空気は緩衝溝を介して通気口に誘導され、この緩衝溝は、ピストンの一面側からシリンダ本体の一端側に向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストンが縮位置に近づくほど、緩衝溝の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストンが縮位置に至る直前では、伸圧力空間から通気口に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、圧力空間の内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストンを緩やかに縮位置で停止させることができる。よって、伸圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止を防止し、ラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
さらに、伸圧力空間の内圧を増加させてピストンをその伸位置に向けて移動させる際に、縮圧力空間の内圧が急に高まり(縮圧力空間が圧縮され)、ピストンの移動速度が急激に減少する方向に力が働く。しかしながら、縮圧力空間内の空気は緩衝溝および制御緩衝流路を介して通気口側に誘導される。この際、緩衝溝は、シリンダ本体の一端側からピストンの一面側に向かって断面積が広がる、つまり、ピストンの他面側から滑り軸受側に向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストンが伸位置に近づくほど、緩衝溝の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストンが伸位置に至る直前では、縮圧力空間から通気口側の密閉空間に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、縮圧力空間の内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストンを緩やかに縮位置で停止させることができる。よって、縮圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止を防止し、ラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
さらに、縮圧力空間から通気口側の密閉空間に至る空気の流量を制御緩衝流路によって、制御することで、ピストンの移動速度、すなわち、ラック部材の伸張速度、つまり、中立弁体の開閉動作の停止する直前の速さを制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。
【図3】図2における円環状エアシリンダ付近の要部拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が弁閉位置とされている場合を示す図である。
【図5】図4におけるメインバネ付近の要部拡大図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リング付近の要部を拡大して示す径方向断面図(a)、軸方向断面図(b)である。
【図8】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(伸位置)である。
【図9】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(縮位置)である。
【図10】緩衝溝の作用を示す断面図である。
【図11】ラック部材、および滑り軸受を示す要部拡大断面図である。
【図12】ラック部材とピニオンとの噛合部分を示す要部拡大断面図である。
【図13】回転軸と中立弁体との係合部分を示す要部拡大図である。
【図14】本発明の第1実施形態における駆動シーケンス機構を示す回路図である。
【図15】本発明の第1実施形態における駆動シーケンス機構における圧力状態を示すタイムチャートである。
【図16】図15の丸数字1で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図17】図15の丸数字2で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図18】図15の丸数字3で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図19】図15の丸数字4で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図20】図15の丸数字5で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図21】本発明の第1実施形態における2チャンネル2方弁を示す断面図である。
【図22】本発明の第1実施形態におけるチェック弁を示す断面図である。
【図23】本発明の第1実施形態におけるチェック弁を示す分解断面図(a)、ケースの側面図(b)である。
【図24】本発明の第1実施形態におけるチェック弁の部品を示す破断斜視図である。
【図25】本発明の第1実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングの要部を透視した模式斜視図(a)、径方向の模式断面図(b)である。
【図26】本発明の他の実施形態のスライド弁における流体経路リングの内周面および回転軸の摺動面付近を示す模式図である。
【図27】本発明の第1実施形態における接続ピン付近の要部拡大図である。
【図28】本発明の第1実施形態におけるガイドピン付近を示す要部拡大図である。
【図29】本発明の他の実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、シリンダ付近の要部拡大図である。
【図30】本発明の他の実施形態における接続ピン付近の要部拡大図である。
【図31】本発明の他の実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングを示す要部を透視した斜視図である。
【図32】本発明の他の実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングを示す径方向断面図である。
【図33】本発明の他の実施形態のスライド弁における流体経路リングの内周面付近を示す軸方向断面図である。
【図34】本発明の他の実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングを示す軸方向断面図である。
【図35】本発明の実施形態のスライド弁に適用可能な開口部及び可動弁部の形状を示す図である。
【図36】本発明の第1実施形態における締結部材付近の要部拡大図である。
【図37】図36における締結部材とメインバネの配置の例を示す配置図である。
【図38】締結部材における係止部材の例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るスライド弁の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
また、以下の説明に用いられる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
本発明の技術範囲は、以下に述べる実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態におけるスライド弁の構成を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。図3は、図2の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図4は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が密閉閉塞位置とされている場合を示す図である。図5は、図4の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図6は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【0034】
[振り子型スライド弁]
第1実施形態のスライド弁1は、図1〜図6に示すように、振り子型スライド弁である。
このスライド弁1は、互いに対向した第1開口部12aと第2開口部12bとが設けられた弁箱10と、弁箱10を貫通した切り替え手段としての回転軸20と、回転軸20に固着された接続部材91と、この接続部材91を介して回転軸20に接続された中立弁部30と、回転軸20の軸線方向に移動可能として中立弁部30に接続された可動弁部40と、可動弁部40の厚さ方向寸法を拡大する方向に付勢されるメインバネ(第1付勢部)70と、メインバネ70の付勢方向と反対方向に伸張可能な駆動用の円環状エアシリンダ(第2付勢部)80と、可動弁部40を弁箱10の中央位置側にしようとする位置規制用の補助バネ(第3付勢部)90と、を備えている。
【0035】
中立弁部30及び可動弁部40は、中立弁体5を構成している。また、可動弁部40は、第2可動弁部(可動弁板部)50と第1可動弁部(可動弁枠部)60とによって構成されている。第1開口部12aから第2開口部12bに向かって流路Hが設定されている。なお、以下の説明において、この流路Hに沿った方向を流路方向Hと称することがある。
【0036】
回転軸20が符号A1で示された方向(流路Hの方向に交差する方向)に回転すると、この回転に従って、接続部材91を介して回転軸20に固定されている中立弁部30も方向A1に沿って回動する。また、可動弁部40は中立弁部30に厚さ方向のみ摺動可能として接続されているため、可動弁部40は、中立弁部30と一体に回転する。
このように中立弁部30を回転することにより、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置E1から第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置E2に可動弁部40が振り子運動で移動する。
【0037】
そして、メインバネ70が伸張する方向に作用することで流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が拡大する動作により(閉弁動作)、後述するように、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧することにより、可動弁部40は流路Hを閉鎖する。
【0038】
逆に、円環状エアシリンダ80が作用することで、メインバネ70の付勢力に円環状エアシリンダ80の押圧力が打ち勝って流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が収縮する動作により可動弁部40が表裏とも弁箱10の内面15aおよび内面15bから離間した後に(解除動作)、回転軸20が符号A2で示された向きに回転する(退避動作)と、この回転に従って中立弁部30および可動弁部40も向きA2に回動する。
この解除動作と退避動作とにより、可動弁部40は上記弁開閉位置から上記退避位置に退避して弁開状態とする弁開動作がおこなわれる。
【0039】
[弁箱10]
弁箱10は、中空部11を有するフレームによって構成されている。フレームの図示上面には第1開口部12aが設けられており、フレームの図示下面には第2開口部12bが設けられている。
スライド弁1は、第1開口部12aが露出されている空間(第1空間)と第2開口部12bが露出されている空間(第2空間)の間に挿入される。スライド弁1は、第1開口部12aと第2開口部12bとをつなげている流路H、即ち、第1空間と第2空間とをつなげている流路Hを仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(第1空間と第2空間をつなぐ)。
弁箱10の中空部11には、回転軸20、中立弁部30、可動弁部40、メインバネ(第1付勢部)70、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80、及び補助バネ(第3付勢部)90が設けられている。
【0040】
[回転軸20、流体経路リング17,18]
回転軸20は、流路Hとほぼ平行状態に延在して弁箱10を貫通するとともに回転可能に設けられている。
この回転軸20には、接続部材91が固着されている。この接続部材91は、例えば略平板状の部材であり、図7に示すように、回転軸20の一端20aに対してネジ92によって固着される。図7(b)に示すように、接続部材91は、流路方向Hに沿った一端側が広がった略T字状の断面形状を成す突起部93が形成されている。
【0041】
回転軸20は、図7に示すように、弁箱10に固設されるケーシング14に、ベアリング等とされる軸受16A,16Bを介して、この弁箱10を貫通して回動可能に支持されている。軸受16A,16Bは、回転軸20の軸線LL方向に可能な限り離間して配置される。
【0042】
ケーシング14は、弁箱10に対して密閉状態として貫通するように固定されるとともに、回転軸20が密閉状態で回動自在に貫通するシールケーシング14Aと、このシールケーシング14Aに接続され、その内周側に設けられた軸受16A,16Bを介して回転軸20を回動自在に支持する円筒ケーシング14Bと、円筒ケーシング14Bの一端を閉塞する蓋体ケーシング14Cとからなり、これらは互いに固定接続されている。蓋体ケーシング14Cには回転軸20を挿抜可能な開孔を閉塞する蓋体14Dが設けられる。
【0043】
シールケーシング14Aには、弁箱10内部をシールするために、シール部14Aa、14Ab,14Acおよび、大気圧の空間(空隙)である中間大気室14Adが設けられている。
円筒ケーシング14Bの内周面側には、軸線LL方向における軸受16A,16Bの間の位置に、流体経路リング17,18が、回転軸20の外周面20bに摺動可能に接触するように固定されている。
【0044】
回転軸20の外周面20bの流体経路リング17,18の間の中心位置には、この回転軸20を駆動させる(回転させる)ための回転軸駆動機構100(図8参照)を構成するピニオン21が固着される。ピニオン21は外部から密閉可能なケーシング14Bの内部空間22hに収納され、このピニオン21には、図7において紙面奥行方向に往復動作することで、ピニオン21を介して回転軸20を回動させる丸棒状のラック部材22が接続される。
【0045】
[回転軸駆動機構100]
図8は、回転軸駆動機構100を示す概要図である。
回転軸20を回転させるための回転軸駆動機構100は、回転軸20に固着されたピニオン21と、このピニオン21と噛合するラック歯22aを備えたラック部材22とを有している。
また、回転軸駆動機構100は、ラック部材22を往復運動させるための回転駆動エアシリンダ110を備えている。回転駆動エアシリンダ110によって、ラック部材22は軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能とされる。
【0046】
ラック部材22は、図8に示すように、回転軸20の軸線と直交方向の軸線を有し往復動作するピストン112に接続されている。ピストン112は筒状のシリンダ本体(ケーシング)111に格納されて回転駆動エアシリンダ(駆動手段)110を構成している。この回転駆動エアシリンダ110に接続されたラック部材22は、ピストン112のラック部材22に対して反対側の伸圧力空間113に圧縮空気(駆動用気体)を供給することで伸張し、ピストン112のラック部材22側の縮圧力空間22cに圧縮空気(駆動用気体)を供給することで収縮する。
【0047】
ラック部材22は、ケーシング14Bと一体とされたケーシング14Bb内部に、ラック部材22の径寸法よりも大きな径寸法とされて回転軸20と直行する方向に延在するように設けられたラック収納空間(空間)22d、22g、22m内部に軸方向に移動可能として収納される。この空間22d、22g、22mの内部では、ラック部材22は、その軸線方向においてピニオン21と噛み合う両側位置とされる2箇所の外周を覆うように設けられた滑り軸受(軸受)115B,115Cによって往復移動可能に支承されている。軸受115B,115Cは、いずれも、ケーシング14Bbと一体とされて、空間22gよりも小さな径寸法となるように縮径された外周面として形成されており、この軸受22B,22Cは、ラック部材22の外周面に密着している。
【0048】
ラック部材22の外周面の周方向の片側にはピニオン21と噛合うラック歯21aが軸方向に隣接して多数設けられ、このラック歯22aとは異なる周方向位置に、ラック部材22の軸線方向に対して軸受115B両側位置の空間22dおよび空間22gに連通する連通溝116が設けられる。この連通溝116は、図11に示すように、軸線方向に対して軸受115C両側位置の空間22gおよび空間22mに連通するとともに、ラック部材22が往復動作した場合でも、軸受22B両側位置の空間22dと空間22gにおける連通状態および軸受22C両側位置の空間22gと空間22mにおける連通状態を維持する長さとなるよう設定されている。
【0049】
伸圧力空間113aは、伸通気口(供給路)114を介して回転駆動エアシリンダ110外部から伸張用の圧縮空気を供給する供給源に接続されている。
縮圧力空間22cには回転駆動エアシリンダ110外部から収縮用の圧縮空気を供給源から供給する供給源が接続されているが、その経路は、縮圧力空間22c、ラック22の収納された空間22d、縮径した軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aに対応する部分空間、軸受115Bと軸受け115Cとの間で拡径した空間22g、ピニオン21の収納されるケーシング14Bの内部空間22h、この内部空間22hとケーシング14B外部とに接続された供給路(縮通気口)22j、とされている。
【0050】
軸受16A,16Bによってケーシング14に対して支持された回転軸20は、回転駆動エアシリンダ(回転駆動手段)によって往復運動するラック部材22により駆動され、このラック部材22に噛み合うピニオン21とともに回転動作する。
【0051】
また、回転駆動エアシリンダ(駆動手段)110の収縮動作時、および、ラック部材22の収縮位置Pbを維持する間は、これら縮圧力空間22c、収納空間22d、ラック部材22の収納された空間22g、縮径した軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aの噛み合わせ位置に対応する空間22g、軸受115Bと軸受け115Cとの位置にかかわらず拡径している空間22d、22g、22m、ピニオン21の収納されるケーシング14Bの内部空間22h、この内部空間22hとケーシング14B外部とに接続された供給路22j、のいずれにおいても加圧状態が維持されることになる。
【0052】
回転駆動エアシリンダ(シリンダ)110は、回転軸20を収納するケーシング14Bと一体とされ、一端側111aが閉塞された円筒状のシリンダ本体111と、このシリンダ本体111の内部空間111bに摺動可能に収容されたピストン112とを備えている。そして、この内部空間111bには、シリンダ本体111の一端側111aとピストン112の一面側112aとで区画されて、ピストン112の移動によって容量が可変する伸圧力空間113が形成される。また、シリンダ本体111には、この伸圧力空間113に連通し、外部から伸圧力空間113に駆動用に圧縮空気を供給する伸通気口(通気口)114が形成されている。こうした通気口114は、スライド弁1外部に設けられた駆動用圧力空気供給源として例えばポンプが接続されていればよい。
【0053】
ピストン112は、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうしたピストン112は、伸圧力空間113が最大に拡張され、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて最も一端側111aから遠ざかった位置にピストン112がある伸位置Pa(図8)と、ピストン112のラック部材22側の縮圧力空間22cが最大に拡張されて収縮し、伸圧力空間113が最小に縮小され、最も一端側111aに接近した位置にピストン112がある縮位置Pb(図9)との間で摺動可能にされている。
【0054】
また、ピストン112の一面側112aには、突起部112cが形成されている。シリンダ本体111の一端側111aには、ピストン112が縮位置Pbにある時に突起部112cが入り込む凹部111cが形成されている。突起部112cの外径と凹部111cの内径とは略等しく、これらが摺動する際には凹部111c内部と伸圧力空間113とが気密状態に近くなるように設定されている。通気口114の一端側は、この凹部111cで露呈する位置に形成されている。また、ピストン112の他面側112bには、突起部112cと同様に形成された突起部(接続部)112dを介してラック部材22が固着される。接続部112dの外径とラック収納空間22dの内径とは略等しく、これらが摺動している際には、ラック収納空間22d内部と縮圧力空間22cとが気密状態に近くなるように設定されている。
【0055】
ピストン112の突起部112cには、ピストン112の往復運動方向、即ち軸線(長手方向)Cに沿って断面積が連続的に変化し、伸圧力空間113内の空気を通気口114に向けて徐々に通気させる緩衝溝(縮緩衝溝)118が形成されている。
具体的には、図10に示すように、緩衝溝118は、ピストン112の突起部112cに形成された、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した溝からなる。
【0056】
ピストン112の突起部112dには、ピストン112の往復運動方向、即ち軸線(長手方向)Cに沿って断面積が連続的に変化し、縮圧力空間22c内の空気を空間22gに向けて徐々に通気させる緩衝溝(伸緩衝溝)119が形成されている。
緩衝溝(伸緩衝溝)119は、図10に示した緩衝溝118と同様に、ピストン112の突起部112dに形成され、ピストン112の一面側112bからラック部材22側の空間22dに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した溝からなる。
【0057】
ラック部材22は、図8、9,11に示すように、軸線(長手方向)Cに垂直な断面が円形を成す丸棒状に形成されている。そして、この丸棒状のラック部材22の周面の一部には、ラック歯22aが軸線(長手方向)Cに沿って所定のピッチで配列形成されている。
【0058】
回転軸20に固着されたピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sの両側にはそれぞれ、ラック部材22を摺動可能に支持する滑り軸受115B,115Cが配されている。この滑り軸受115B,115Cは、図11に示すように、ラック部材22の断面よりも僅かに大きい断面円形の内周面115aが形成され、その内周面115aに外周が接触する丸棒状のラック部材22を軸線(長手方向)Cに沿って円滑に摺動可能に支持する。
【0059】
また、図8、図11に示すように、ラック部材22の表面(周面)には、上述したように連通溝(溝)116が、軸線C方向において、滑り軸受115Bと滑り軸受115Cとの両外位置側まで延在するように形成されている。また、ラック部材22を収納するケーシング14Bには、この連通溝116に入り込むボス(図示略)が形成されて、連通溝116とボスとの係合によって、ラック部材22が軸線C周りに回動することを防止することもできる。これによって、ラック部材22が往復運動する際に軸線C周りに捩れることがない。
【0060】
図12は、滑り軸受115B,115Cの配置位置を示す説明図である。
滑り軸受115B,115Cは、ピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sに生じるラック部材22の作用線(の延長線)L1,L2と、ラック部材22の軸心(軸中心線)Cとの交点P1,P2よりも、噛合部分Sから遠ざかる方向に配されるのが好ましい。
【0061】
即ち、2つの噛合歯であるピニオン21とラック歯22aとの接触点の移動方向である作用線L1,L2が、それぞれラック部材22の軸心(軸中心線)Cと交差する点を交点P1,P2としたときに、滑り軸受115B,115Cの中心線Qがこの交点P1,P2よりも外側になるように、滑り軸受115B,115Cをそれぞれ配置する。
【0062】
滑り軸受115B,115Cの配置位置を上述したように設定することによって、滑り軸受115B,115Cは、ピニオン21の回転によって生じる外力、即ちピニオン21から遠ざかる方向に向かう力を受けることがなくなる。これによって、滑り軸受115B,115Cは、ラック部材22との接触部分において、軸心(軸中心線)Cに直角な方向の応力が加わることを防止して、ラック部材22との摩擦力を低減して円滑に摺動可能にラック部材22を保持することが可能になる。
【0063】
シリンダ本体111の一端側111aには、縮位置Pbにピストン112がある場合に動作する接触式のリミッタスイッチ(回転動作終了検出スイッチ)cdSが設けられる。このスイッチcdSは、後述するように、図14に示すシーケンス回路SQにおける動作を、ピストン112の位置に依存させるものである。具体的には、後述する図21の2チャンネル2方弁ttVにおけるエアオペレート側ttV0の加圧に対応するように、縮位置Pbにピストン112がある場合にスイッチを押圧することでバネ等の付勢力に打ち勝って回路を連通させる。また、この縮位置Pbからピストン112が移動した場合には、ピストン112の動作に追従してバネ等の付勢力によって回路を切断するものである。なお、図9においては、後述の緩衝溝118等によるエアクッション動作を説明するために、縮位置Pbに到達する直前の状態を示している。このため、スイッチcdSは動作状態として示されていない。
【0064】
以上のような構成の回転軸駆動機構100によれば、例えば、図9に示す縮位置Pbにピストン112がある場合には、このピストン112に固着されたラック部材22からピニオン21を介して連動(回転)される回転軸20が、その回動範囲において、図9中の反時計回り方向いっぱいに回転した状態とされ、この回転軸20の位置においては、回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図1)に置かれる。
【0065】
一方、この縮位置Pbから、図8に示す伸位置Paにピストン112を移動させる際には、シリンダ本体111の内面とピストン112の一面側112aとで区画された伸圧力空間113内に、通気口114から駆動用圧縮空気を送り込む。すると伸圧力空間113の内圧が高まることによって、ピストン112は軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に移動(摺動)し、圧力空間113が広がる。この際、縮圧力空間22c内部の余分な空気は、縮圧力空間22cから、ラック22収納用の空間22d、軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aに対応する部分空間、ケーシング14Bbの内部空間22g、ケーシング14Bの内部空間22h、通気口22jを介して、外部へ排出される。
【0066】
ピストン112がシリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に伸位置Paまで移動すると、ピストン112に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図8中の時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)に振り子運動で移動する。
【0067】
さらに、図8に示す伸位置Paにピストン112があり、可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)とされた場合に、この伸位置Pa(図8)から、縮位置Pb(図9)にピストン112を移動させる際には、ケーシング14Bbの端面14Ba側とシリンダ本体111の内面111bとピストン112の他面側112bとで区画された縮圧力空間22c内に、通気口22jから駆動用圧縮空気を送り込む。すると縮圧力空間22cの内圧が高まることによって、ピストン112は軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体111の一端側111aに近づく方向に移動(摺動)し、圧力空間113が縮まる。
【0068】
この際、伸圧力空間113内部の余分な空気は、伸圧力空間113から、通気口114を介して、外部へ排出される。
縮圧力空間22cには、通気口22jからピニオン21の収納された内部空間22h、ラック22の収納された内部空間22g、軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aの噛み合わせ位置に対応する空間22g、収納空間22dを介して、圧縮空気が供給される。この際、軸受け115Cに対応した連通溝116内部、空間22dも加圧状態となっている。
【0069】
ピストン112がシリンダ本体111の一端側111aに近づく方向に縮位置Pbまで移動すると、ピストン112に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図9中の反時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も反時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図1)に振り子運動で移動する。
【0070】
このように、回転軸駆動機構100を構成するシリンダ本体111内の伸圧力空間113および縮圧力空間22cの内圧を可変させ、ピストン112を伸位置Pa(図8)と縮位置Pb(図9)との間で直線運動させることによって、ラック部材22、ピニオン21を介して回転軸20を回動させ、可動弁部40を流路Hに対して退避位置E1と弁閉位置E2(図1)との間で移動させることができる。
【0071】
以上のようなピストン112の伸位置Paと縮位置Pbとの間の移動においては、緩衝溝118によって、ピストン112の縮位置Pbへの移動を滑らかに変化させる。同様に、緩衝溝119によって、ピストン112の伸位置Paへの移動を滑らかに変化させる。
【0072】
先ず緩衝溝118について説明する。
ピストン112を伸位置Paから縮位置Pbに移動させる際には、伸圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止、即ちラック部材22とピニオン21との噛合部分Sに急激に大きな応力が加わらないように、ピストン112の突起部112c形成された緩衝溝118によって、ピストン112の縮位置Pbへの移動を滑らかに変化させる。
【0073】
例えば、図10(a)に示すように、縮圧力空間22cに駆動用圧縮空気を供給しその内圧を増大させてピストン112を縮位置Pbに向けて移動させる際に、突起部112cがシリンダ本体111の凹部111cに入り込む位置まで移動してくると、突起部112c周囲の伸圧力空間113から凹部111cに流入して通気口114から排出されていた空気の流れが遮断され、突起部112cの周縁に広がる伸圧力空間113aの内圧が急に高まり(伸圧力空間113aが圧縮され)、ピストン112の移動速度が急激に減少する方向に力が働く。
【0074】
しかしながら、突起部112cに形成された緩衝溝118によって、伸圧力空間113a内の空気はこの緩衝溝118を介して通気口114に誘導される。即ち、伸圧力空間113aは緩衝溝118を介して通気口114に連通される。
【0075】
しかも、この緩衝溝118は、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように形成されているので、図10(b)に示すように、ピストン112が縮位置Pb(図9)に近づくほど、緩衝溝118の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストン112が縮位置Pbに至る直前では、伸圧力空間113aから通気口114に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、伸圧力空間113aの内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストン112を緩やかに縮位置Pbで停止させることができる。よって、伸圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止を防止し、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【0076】
同様に、緩衝溝119によって、ピストン112の伸位置Paへの移動を滑らかに変化させる。
伸圧力空間113に駆動用圧縮空気を供給しその内圧を増大させてピストン112の伸位置Paに向けて移動させる際に、突起部112dがケーシング14Bbの空間22dに入り込む位置まで移動してくると、突起部112d周囲の縮圧力空間22cから空間22dに流入して空間22h側に移動して通気口22jから排出されていた空気の流れが遮断され、突起部112dの周縁に広がる縮圧力空間22cの内圧が急に高まり(縮圧力空間22cが圧縮され)、ピストン112の移動速度が急激に減少する方向に力が働く。
【0077】
しかしながら、突起部112dに形成された緩衝溝119によって、縮圧力空間22c内の空気はこの緩衝溝119を介して通気口22jに連通する空間22dに誘導される。即ち、縮伸圧力空間22cは緩衝溝119を介して空間22dに連通される。
【0078】
しかも、この緩衝溝119は、ピストン112の一面側112bからケーシング14Bbの他端側14Baに向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストン112が伸位置Pa(図8)に近づくほど、緩衝溝119の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストン112が伸位置Paに至る直前では、縮圧力空間22cから空間22dに至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、縮圧力空間22cの内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストン112を緩やかに伸位置Paで停止させることができる。よって、縮圧力空間22cの急激な縮小によるピストン112の急停止を防止し、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【0079】
回転駆動エアシリンダ110には、上記の緩衝溝118,119に加えて、ピストン112が伸位置Paに至る直前、または、ピストン112が伸位置Paから移動し始めた直後におけるピストン112の移動速度を調節するための制御緩衝流路119aが設けられる。
【0080】
制御緩衝流路119aは、図8,図9,図19に示すように、ピストン112が伸位置Pa(図8)とされた際に、突起部112dによって閉塞される位置の空間22dに一端が開口するとともに、他端がケーシング14Bbの他面側14Baに開口する流路119aとされる。
この流路119aには、交わる方向に連通し、ケーシング14Bb外部に開口する制御用孔116bが設けられ、この制御用孔16b内部には、流路119aを閉塞可能な制御ピン119cが制御用孔119bの延在する方向に摺動可能に設けられている。
【0081】
この制御緩衝流路119aは、緩衝溝119と同様、縮圧力空間22cと空間22dとの間で移動する空気の流量を制御するものである。
具体的には、制御緩衝流路119aでは、制御ピン119cが制御用孔16b内部を移動すると、その位置によって、流路119aの断面積が変化する。これにより、縮圧力空間22cと空間22dとの間で移動する空気の流量が変化する。したがって、制御緩衝流路119aが、空間22dに開口した状態で、かつ、突起部112dがケーシング14Bbの空間22dに入り込んだ状態の間は、制御ピン119cの位置によって、流路119aの開度を調節し、ピストン112の移動速度を制御することができる。
【0082】
制御ピン119cを抜いて流路119aの断面積を増やすと、ラック22の移動速度、つまり、可動弁体40のり子運動の移動速度が増大し、また、制御ピン119cを挿入して流路119aの断面積を減少させると、ラック22の移動速度、つまり、可動弁体40のり子運動の移動速度が減少する。
特に、ピストン112が伸位置Paに到着する直前のみならず、ピストン112が伸位置Paから縮位置Pbに動き始める場合、つまり、可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)に振り子運動で移動し始める場合にもこのようなエアダンパー効果を奏する。これにより、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに動作開始、および、停止させることが可能となる。
【0083】
このようなシリンダ110であると、圧縮空気の供給を伸通気口114と縮通気口22jとで切り替えるだけでシリンダ110の伸縮をおこなって中立弁体5の揺動動作をさせることが可能である。
【0084】
流体経路リング17と流体経路リング18とは、回転軸20とほぼ等しい内径とされ、ピニオン21よりも弁箱10側の流体経路リング17の外径がベアリング16Aの外径より大きくかつピニオン21の外径寸法よりも小さく設定され、ピニオン21よりも蓋体14D側の流体経路リング18の外径がピニオン21の径寸法よりも大きく設定されている。ベアリング16A,16Bで支持された回転軸20が回動すると、流体経路リング17と流体経路リング18とに対して、接触位置が周方向に変化することになる。
【0085】
流体経路リング17には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面17a及び内周面17bに開口する径方向リング経路17cが設けられる。この径方向リング経路17cの外周面17a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Bcに連通している。
【0086】
流体経路リング18には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に設けられた2重シール部において2重目のシールs1a,52aより気体供給側に設けられた中間大気室55に接続され、1重目のシール51b,52bが破れた際に駆動用気体をスライド弁1外部に向けて逃がす連絡路42の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面18a及び内周面18bに開口する径方向リング経路18cが設けられる。この径方向リング経路18cの外周面18a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Ccに連通している。
【0087】
流体経路リング17には、内周面17bに溝17dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝17dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路27が開口し、径方向軸内経路27は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路25に連通している。
【0088】
流体経路リング18には、内周面18bに溝18dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝18dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路28が開口し、径方向軸内経路28は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路26に連通している。
【0089】
これら軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、互いに平行状態でかつ軸線LLに平行とされ、回転軸20の蓋体14D側の他端20c側は閉塞されている。
軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、いずれも、中立弁部30内部の供給路41及び、連絡路42に接続されている。
【0090】
流体経路リング17には、内周面17bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝17dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材17h,17j,17kが周設されている。
流体経路リング17には、外周面17aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路17cの開口部分および経路14BcをシールするOリング等のシール部材17e,17f,17gが周設されている。
【0091】
流体経路リング18には、内周面18bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝18dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材18h,18j,18kが周設されている。
流体経路リング18には、外周面18aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路18cの開口部分および経路14CcをシールするOリング等のシール部材18e,18f,18gが周設されている。
【0092】
こうした流体経路リング17と流体経路リング18によって、回転軸20がどのような回動位置になっても、径方向軸内経路27と径方向軸内経路28が連通した状態を維持できるため、後述するように密閉度よく、駆動用流体の供給等を行うことができる。しかも、供給路41と連絡路42とを、独立してそれぞれ接続しているので、回転軸20の回動位置にかかわらず、異なる圧力状態あるいは、異なるガス状態の2系統を弁体10内部に影響を与えずに、制御することが可能となる。
【0093】
同時に、周方向経路となる溝17d,18dが周設されているため、溝17d、18d内の流体からの圧力が回転軸20の外周面20bに一周するように作用するため、径方向に作用する圧力を全周で均等にすることができるため、これらの流路における圧力状態にかかわらず、軸受16Aと軸受16Bにおける回転軸20の支持状態に対して影響を及ぼすことを防止できる。
【0094】
同時に、軸受16Aと軸受16Bとの間にこれらの流体経路リング17と流体経路リング18を位置して、回転軸を支持する軸受16Aと軸受16Bとの間の距離をできるだけ長く確保することができる。これにより、回転軸20が傾く方向に回転軸へ作用するモーメントを軸受16Aと軸受16Bで保持する場合、これらの軸受16Aと軸受16Bが受けるラジアル荷重を最小にすることができ、それによりこれら軸受16Aと軸受16Bの耐久性を向上させることができる。または、必要な回転軸20の傾斜方向における変形防止能を維持した状態で回転軸20の軸線方向長さを確保することができ、回転軸20の駆動手段を小型化し、バルブとしての小型化を図ることができる。
【0095】
また、軸受16Aと軸受16B、流体経路リング17、ピニオン21および流体経路リング18の外径寸法を上記の構成とすることにより、部品の構成を変えずに部品の組立方向を変えることのみによって、回転機構部の弁箱に対する取付面を反転させて、これらをケーシング14に対して組み付けることが可能である。
【0096】
本実施形態においてエアシリンダ80の駆動用とされる圧縮空気を、弁箱10内部の中空部11に露出(暴露)することなく、回転軸20内部経由で中立弁体5へ供給するとともに、後述する中間大気室55,56への連絡路42を回転軸20内部経由で弁箱10外部に連通させることが可能となる。
【0097】
本発明の回転軸20には、供給路41と連絡路42となる軸方向経路25,26がそれぞれ平行に設けられてなるとともに、供給路41と連絡路42とに対応する流体経路リング17と流体経路リング18とが回転軸20の異なる軸線LL方向位置に設けられてなることにより、一本の回転軸20内部を介して複数の経路25,26を同時にそれぞれ別個に連通状態とすることができるので、エアシリンダ80の駆動用流体の供給路41とセーフティー用の中間大気用の連絡路42とを一つの回転軸20のみで他の構成を用いずに配置することが可能となる。
【0098】
本発明における供給路41と連絡路42と対応する流体経路リング17,18が、軸受16A,16Bの軸線方向中間位置に対して対称に配置されてなることにより、軸受16A,16Bに対する加重を均等に近いものとして軸受16A,16Bの耐久性を向上し、スライド弁1のメンテナンス費用を低減することがる。
【0099】
なお、本実施形態においては、周方向経路として、図7、図25に示すように、溝17d、18dを流体経路リング17と流体経路リング18との内面17b、18bのみに形成したが、図31に示すように、回転軸20外周面20bに溝22p,溝23pを形成することが可能である。あるいは、これら流体経路リング17と流体経路リング18との内面17b、18bおよび回転軸20外周面20bの両方に溝を形成することもできる。
【0100】
また、本実施形態においては、周方向経路として、図7(a)、図25(b)に示すように、溝17d、18dを回転軸20の全周に設けたが、図1に矢印A1,A2で示した中立弁体5の回動範囲に対応した必要部分のみ、つまり、図32に示すように、回転軸20に要求される回動範囲に対応した周方向円弧範囲A1A2に対応した部分に円弧状に溝17d、18dを形成することもできる。この例では、溝17dが径方向リング経路18cに対する径方向軸内経路27の移動範囲A1A2に円弧状に設けられ、この溝17dは中立弁体5の回動範囲に体操する中心角度範囲とほぼ等しい中心角度範囲とされる。また、溝18dが、径方向リング経路18cに対する径方向軸内経路28の移動範囲A1A2に加えて、径方向リング経路18cに対する接続部分A1A2aにも設けられている。
【0101】
流体経路リング17の内周面17bにおいて、シール部材17hとシール部材17jとの間には、径方向リング経路17cに連通する溝17dが設けられ、シール部材17jとシール部材17kとの間には、溝17pが周設されている。
この溝17pと対向する回転軸20の外周面20bとは、大気圧の空間(空隙)である第2中間大気室を形成するとともに第2連通路42Aによって、ケーシング外部に接続されている。
【0102】
これらシール部材17jとシール部材17kとは、駆動用気体の存在する供給路41となる溝17dに対する2重シール部として機能しており、エアシリンダ80の加圧中に、回転軸20における1重目のシールであるシール部材17jが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)を溝17pおよび第2連通路42Aを介してケーシング14外部に逃がして、ケーシング14B内において流体経路リング17の溝17d側からピニオン21側の内部空間22hに圧縮空気が放出されてしまう等、溝17dと内部空間22hとの間で圧力状態が変化してしまうという不具合を防止するようになっている。
【0103】
同時に、シール部材17kとシール部材17jとは、回転軸20の回転駆動エアシリンダ(駆動手段)において加圧空間となる内部空間22hに対する2重シール部として機能しており、回転駆動エアシリンダの収縮中に、回転軸20における1重目のシールであるシール部材17kが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)を溝17pおよび第2連通路42Aを介してケーシング14外部に逃がして、ケーシング14B内において内部空間22h側から供給路41となる溝17dに圧縮空気が放出されてしまう等、溝17dと内部空間22hとの間で圧力状態が変化してしまうという不具合を防止するようになっている。
【0104】
これらの溝17d、内部空間22hは、いずれも加圧空間であるが、所定の動作に対応する圧力状態が、シール部の破れによって変化した場合、中立弁体5の厚さがいきなり膨張する、中立弁体5が回動動作するといった予期せぬ動作を起こしてしまうことを防止するものである。
つまり、シール部材17k、シール部材17j、溝17pおよび第2連通路42Aにより、スライド弁1がシール破れによって破損する等を防止することができる。
【0105】
流体経路リング18の内周面18bにおいて、シール部材18kとシール部材18jとの間には、径方向リング経路18cに連通する溝18dが設けられ、シール部材18jとシール部材18hとの間には、溝18pが周設されている。
この溝18pと対向する回転軸20の外周面20bとは、大気圧の空間(空隙)である第2中間大気室を形成するとともに第2連通路42Aによって、ケーシング外部に接続されている。
【0106】
これらシール部材18jとシール部材18hとは、回転軸20の回転駆動エアシリンダ(駆動手段)において加圧空間となる内部空間22hに対する2重シール部として機能しており、回転駆動エアシリンダの収縮中に、回転軸20における1重目のシールであるシール部材18hが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)を溝18pおよび第2連通路42Aを介してケーシング14外部に逃がして、ケーシング14B内において内部空間22h側から連通路42となる溝18dに圧縮空気が放出されてしまう等、溝18dと内部空間22hとの間で圧力状態が変化してしまうという不具合を防止するようになっている。
【0107】
これにより、内部空間22hは加圧空間であり、所定の動作に対応する圧力状態が、シール部の破れによって変化した場合、中立弁体5が回動動作するといった予期せぬ動作を起こしてしまうことを防止するものである。
つまり、シール部材18h、シール部材18j、溝18pおよび第2連通路42Aにより、スライド弁1がシール破れによって破損する等を防止することができる。
【0108】
なお、ピニオン21の収納される内部空間22hが、加圧空間とはならない場合には、図34に示すように、溝17p、溝18p、および、第2連通路42Aを設けない構成も可能である。この場合、さらに、シール部材17j、18jを設けないこともできる。
【0109】
また、溝17dおよび溝18dには、図26に示すように、その回転軸20の外周面20b側開口位置に、テーパ面17m、テーパ面18mが設けられて、拡径されている。
このテーパ面17m,18mは、流体経路リング17,18の径方向に奥行き寸法Tt1を有し、この奥行き寸法Tt1は、シール部材17h,17j,17k,18h,18j,18kがOリングとされた場合に、シール時における潰し代ではなく、回転軸20が流体経路リング17,18と接触しない状態で、このO−リングが回転軸20の外周面20bかた突出した高さ寸法Tt2よりも大きくなるように設定される。
【0110】
また、テーパ面17m,18mは、流体経路リング17,18内周面の径方向の法線となす角度θが45°以上、好ましくは30°以上となるように設定される。
これにより、回転軸20のケーシング14への組み付け時に、O−リングが溝17d,18dの開口部分に引っかかって破損するなどの不具合を防止することができる。
なお、テーパ面17m,18mは、O−リングの破損が可能であれば、この形状に限定されるものではない。
【0111】
さらに、溝17dおよび溝18dの回転軸20の外周面20b側開口位置には、テーパ面17m,18mの代わりに、図33に示すように、角を丸めた曲面17n,18nを形成することもできる。
この曲面17n,18nの奥行き寸法Tt1は、同様に、O−リングが回転軸20の外周面20bかた突出した高さ寸法Tt2よりも大きくなるように設定されることができる。
【0112】
円筒ケーシング14Bのシールケーシング14A側には、径方向に延在するリーク流路14Heが設けられる。このリーク流路14Heは、図10(b)に示すように、軸受16Aよりもシールケーシング14A側となるとともに回転軸20の表面20bと接するリーク空間22Heに連通している。
【0113】
リーク空間22Heと接する回短軸20の内部には、軸方向リーク流路27Heが設けられ、この軸方向リーク流路27Heは、その一端が、図10(a)および図11(b)に示すように、リーク空間22Heに開口するとともに、軸方向リーク流路27Heの他端は、後述するように、図10(b)および図12に示すように、回転軸20の中心に軸線方向に貫通し接続部材91を介して回転軸20と中立弁部30とを締結するための雄ネジ(締結具)21を貫通させる貫通穴21Aに向けて開口している。
【0114】
貫通穴21Aは、接続部材91の開口98および中立弁部30に設けられ、雄ネジ21を螺合する雌ネジ(締結具)31のある空間31Heに連通している。
後述するように雄ネジ21は、図12に示すように、締結されている雌ネジ31のある空間31Heまでネジ溝のない開口98を貫通している。この空間31Heは溝95B側が、図示しない閉塞部材によって閉塞されている。
【0115】
中立弁部30の空気溜まり空間31Heは、その先の溝95B側における図示しないOリング等による封止が破れているかを調べるヘリウムリークテストをおこなうことが必要である。このため、空気溜まり空間31Heは、開口98、貫通穴21A、軸方向リーク流路27He、リーク空間22He、リーク流路14Heを介してリーク空間22He側に連通され、ここから、空気溜まり空間31He、開口98、貫通穴21Aに対する密閉状態を検査するヘリウムリークテストのためにヘリウムの供給が可能となっている。
このように、軸方向リーク流路27Heおよびリーク流路14Heを設けることで、空気溜まり空間31He、開口98、貫通穴21Aに対するヘリウムリークテストが可能となる。
【0116】
同時に、リーク流路14Heから、回転軸20の表面20bに沿ったシール手段としてのシール部14Aa、14Ab,14Acおよび、大気圧の空間(空隙)である中間大気室14Adに対して、中空部11へのシールテストをおこなうことが可能となる。つまり、として、リーク流路14Heから、リーク空間22He側にヘリウムを供給し中空部11に対するリークを調べることで、ヘリウムリークテストをおこなうことが可能となる。
【0117】
さらに、リーク流路14Heは、シール部材17h,17j,17k、シール部材17e,17f,17gなどによる封止が破綻して、加圧空間である内部空間22hおよび径方向リング経路17c、溝17dなどから、圧縮空気がリーク空間22Heに漏れだした場合に、この圧縮空気を外部に逃がすことができる。これにより、シール部14Aa、14Ab,14Acに圧力が加わることを防止して、漏れた圧縮空気が中空部11へ流入してしまうことが防止できる。
【0118】
[中立弁部30、接続部材91]
中立弁部30は、回転軸20の軸線に対して直行する方向に延在し、この方向に平行な面を有している。図1に示すように、中立弁部30は、可動弁部40に重なる円形部30aと、回転軸20の回転に伴って円形部を回転させる回転部30bとを有する。回転部30bは、回転軸20と円形部30aとの間に位置しており、回転部30bの幅は回転軸20から円形部30aに向けて徐々に増加している。これら回転軸20、中立弁部30は、弁箱10に対して回動はするが、流路H方向には位置変動しないように設けられている。
【0119】
中立弁部30の一端には、図13に示すように、接続部材91の突起部93と嵌合する凹部95が形成されている。この凹部95は、その断面形状が接続部材91の断面形状と合致する略T字状を成す。こうした凹部95は、中立弁部30の流路方向Hにおける一面側30Aと他面側30Bの両側に、それぞれ凹部95A,95Bとして形成されている。これによって、回転軸20は、中立弁部30に対して流路方向Hに沿った上側と下側のいずれにも選択的に接続することができる。
【0120】
あるいは、回転軸20に対して、中立弁体5全体を両面どちらにも取り付けることができる。即ち、接続部材91の凹部95Aの側に中立弁体5を取り付ければ、スライド弁1の閉弁時において、可動弁部40が第1開口部12aを塞ぐ向きとなる。逆に、接続部材91の凹部95Bの側に中立弁体5を取り付ければ、可動弁部40が第2開口部12abを塞ぐ向きにとなる。
【0121】
図13に示すように、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とは互いに嵌合される。図13(a)に示すように、接続部材91と中立弁部30とは、係合状態において、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1で離間した一組の第1平行面96a,96bと、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1よりも広い第2間隔t2で離間した一組の第2平行面97a,97bとで互いに接触している。
【0122】
こうした一組の第1平行面96a,96b、および一組の第2平行面97a,97bは、それぞれ、流路方向Hに直角に延びる一軸Lを挟んで対称に配される。また、第1平行面96a,96bと第2平行面97a,97bとは、この一軸Lに沿って互いに重ならない位置に配される。
【0123】
接続部材91の突起部93には、図13に示すように、この一組の第1平行面96a,96bを構成する第1接触面93a,93bと、第2平行面97a,97bを構成する第2接触面93c,93dとが形成されている。そして、これら第1接触面93a,93bと第2接触面93c,93dのそれぞれを繋ぐ第1傾斜面93e,93fとともに、突起部93は全体として2段階の幅を持つ突起形状を成している。
【0124】
中立弁部30の一端に形成された凹部95は、図13に示すように、一組の第1平行面96a,96bを構成する第三接触面95a,95bと、第2平行面97a,97bを構成する第四接触面95c,95dとが形成されている。そして、これら第三接触面95a,95bと第四接触面95c,95dのそれぞれを繋ぐ第2傾斜面95e,95fとともに、凹部95は全体として2段階の幅を持つ溝形状を成している。
【0125】
回転軸20の中心には、図12に示すように、接続部材91を介して回転軸20と中立弁部30とを締結するための雄ネジ(締結具)21を貫通させる貫通穴21Aが形成されている。また、中立弁部30の一端に形成された凹部95には、雄ネジ(締結具)21と螺合する雌ネジ31が形成されている。更に、接続部材91には、雄ネジ(締結具)21を貫通させるネジ溝のない開口98が形成されている。
【0126】
以上の構成によって、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とを嵌合させ、更に、回転軸20の上端側から、雄ネジ21を貫通穴21Aおよび開口98に貫通させ、雄ネジ21の先端部分を、中立弁部30の雌ネジ31にネジ止めすることにより、回転軸20と中立弁部30とは、接続部材91を介して締結(固定)される。
【0127】
中立弁部30のメンテナンス、例えば、繰り返し開閉による中立弁部30の交換等で、中立弁部30を回転軸20に固着された接続部材91に取り付ける際には、中立弁部30の一端に形成された凹部95を接続部材91に形成された突起部93に対向させる。
次に、中立弁部30の凹部95を突起部93に差し込むと、凹部95の第三接触面95a,95bが、それぞれ突起部93の第1接触面93a,93bに接触する。また、凹部95の第四接触面95c,95dが、それぞれ突起部93の第2接触面93c,93dに接触する。
【0128】
こうした挿入工程での凹部95と突起部93との接触面は、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bに限られ、突起部93の第1傾斜面93e,93fと、凹部95の第2傾斜面95e,95fとは接触しない。つまり、矢印B1で示す方向である接続方向において、回転軸20の軸線を挟んだ両側位置となる部分で周方向の取り付け位置を規制することができるので、取り付け位置、特に、回転軸20の軸線周りの中立弁部30の取り付け方向の正確性を容易に向上することができる。
【0129】
同時に、例えば、凹部95と突起部93との接触面(第1平行面96a,96b、第2平行面97a,97b)のクリアランス(隙間)を極めて小さく設定しても、凹部95を突起部93に押し込む際の摩擦力が軽減され、スムーズに凹部95と突起部93とを嵌合させることができる。
【0130】
また、互いに幅の異なる第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bで凹部95と突起部93とを接触させることによって、凹部95を突起部93に押し込む際の取付精度を向上させると共に、取付時に摩擦力の軽減によって、容易にその取付位置、即ち突起部93に対する凹部95の押し込み量を調整することができる。即ち、凹部95と突起部93との係合時には、凹部95に形成されためねじ31のネジ穴位置を、接続部材91の突起部93に形成された開口98と合致させる必要がある。
【0131】
本実施形態のように、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bだけで凹部95と突起部93とを接触させることで、雌ネジ31のネジ穴位置と突起部93に形成された開口98とを容易に微調整しつつ合致させることができる。これによって、回転軸20の貫通穴21Aから開口98を介して雄ネジ(締結具)21を容易に雌ネジ31に締結することができる。また、端面93mと端面95mとを接触させることで、図13において矢印B1で示す方向である接続方向における互いの位置決めをおこなうことも可能である。
【0132】
なお、この実施形態においては、接続部材91に突起部93を、また中立弁部30の一端に凹部95を設けているが、凹凸が逆の構造とすることもできる。つまり、回転軸20に固着される接続部材に凹部を形成して、この凹部と嵌合する突起部を中立弁部の一端に形成する構造である。
【0133】
[可動弁部40、第2可動弁部(可動弁板部)50、第1可動弁部(可動弁枠部)60]
可動弁部40は略円板状とされ、円形部30aと略同心円状に形成された可動弁板部50と、この可動弁板部50の周囲を囲むように配置された略円環状の第2可動弁部60とを有する。第2可動弁部60は、中立弁部30に流路H方向に摺動可能として接続されている。
【0134】
また、可動弁板部50は、第2可動弁部60に摺動可能として嵌合されている。可動弁板部50と第2可動弁部60とは、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80によって符号B1,B2で示された方向(往復方向)に摺動しながら移動可能である。ここで、符号B1,B2で示された方向とは、可動弁板部50および第2可動弁部60の面に垂直な方向であり、回転軸20の軸方向に平行な流路H方向である。
【0135】
また、可動弁板部50の外周付近における全領域には、内周クランク部50cが形成されている。また、可動弁枠部60の内周付近における全領域には、外周クランク部60cが形成されている。
第1実施形態においては、外周クランク部60cと内周クランク部50cとが、流路H方向と平行な摺動面50b、60bどうしで摺動可能に嵌合している。
【0136】
弁箱10の内面に対向(当接)する可動弁枠部60の表面には、第1開口部12aの形状に対応して円環状に形成された、例えば、Oリング等からなる第1シール部61(主シール部)が設けられている。
この第1シール部61は、閉弁時に可動弁部40が第1開口部12aを覆っている状態で、第1開口部12aの周縁となる弁箱10の内面15aに接触し、可動弁枠部60及び弁箱10の内面によって押圧される。これによって、第1空間は第2空間から確実に隔離される(仕切り状態が確保される)。
【0137】
[メインバネ(第1付勢部)70]
メインバネ(第1付勢部)70は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに隣接した第1周囲領域40bに配置されている。メインバネ70においては、可動弁枠部60を第1開口部12aに向けて(B1方向)に押圧するように、同時に、可動弁板部50を第2開口部12bに向けて(B2方向)に押圧するように復元力が生じている。
【0138】
これにより可動弁部40による弁閉状態において、メインバネ70は、可動弁板部50に力を加え(付勢し)、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bに向けて可動弁板部50を押圧して内面15bと可動弁板部50の反力伝達部59とを当接させているとともに、同時に、可動弁枠部60に力を加え(付勢し)、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに向けて可動弁枠部60を押圧して内面15aと可動弁枠部60の第1シール部61とを当接させている。
【0139】
第1実施形態においては、メインバネ70は、可動弁板部50に第2開口部12b側を向いて開口するよう設けられた凹部50aとこの凹部50aの対向位置に可動弁枠部60に第1開口部12a側を向いて開口するよう設けられた凹部60aとに嵌め込まれて設けられた弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
【0140】
メインバネ70は、第1端と第2端とを有する。第1端は、可動弁板部50の凹部50aの底面に当接している。第2端は、可動弁枠部60の凹部60aの天井面に当接している。また、図1に示すように、円環状の可動弁枠部60において、複数の第1付勢部70が周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0141】
メインバネ70を構成する弾性部材の自然長は、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧する可動弁部40の最大厚さ寸法となった状態における可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面との間の距離よりも大きい。このため、可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面とによって圧縮されつつ凹部50aおよび凹部60aの内部に配置されているメインバネ70においては、弾性復元力(延伸力,付勢力)が生じている。この弾性復元力が作用することにより、可動弁枠部60がB1方向に、同時に、可動弁板部50がB2方向に摺動しながら、第1シール部61および反力伝達部59が弁箱10の内面に当接して押圧され、閉弁動作が行われる。
【0142】
また、メインバネ70は、第1シール部61に対する押圧力を効率よく伝達してスライド弁1の閉塞を確実にするために、第1シール部61に近接した第2周囲領域40bに配置される。具体的には、第1シール部61直下のすぐ外周位置には後述する反力伝達部59となる突条が位置するのに対し、可動弁板部50の径方向位置として、この第1シール部61を挟んだ突条(反力伝達部)59の反対側位置にメインバネ70は位置される。これにより、メインバネ70の付勢力は効率よく可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とに伝達され、第1シール部61の変形による弁の密閉の確実性を向上することができる。
【0143】
また、メインバネ70は、第1シール部61を直接押圧できるようにするために、第1シール部61の直下付近とされる第2周囲領域40bに配置されることもできる。この場合、スライド弁においては、第1付勢部70を可動弁枠部60に設けられているので、第1付勢部70を第1シール部61の直下に位置させることが可能である。
【0144】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行う第2付勢部80(後述)とが近接して設けられている。この構成において、メインバネ70及び第2付勢部80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域(第1周囲領域40a及び第2周囲領域40b)において、互いに近接するように径方向に隣接して配置されている。また、メインバネ70は、第1シール部61の直下付近に位置している。つまり、スライド弁1の構造は、第1シール部61、反力伝達部59、メインバネ70の位置関係が、作用点及び支点が存在するモーメント荷重を加える構造として効率よくシールをおこなうことができるように構成される。
【0145】
さらに、メインバネ70の付勢力が可動弁板部50と可動弁枠部60とを拡げる方向、つまり、可動弁部40の厚さを増大して、可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とを弁箱10の内面15a,15bに押圧する方向に設定されているので、停電等によってユーティリティ設備からスライド弁1を備える装置への電力供給(エネルギー供給)が停止した場合であっても、メインバネ70において生じる機械的な力のみで確実にスライド弁1を閉じることができる。このため、フェイルセーフなスライド弁を確実に実現できる。
【0146】
一方、スライド弁40の厚さを減じる付勢がおこなわれているもの、あるいは、ユーティリティ設備から供給される電力等のエネルギーによって閉弁動作が行われている構造を有するスライド弁においては、ユーティリティ設備から装置へのエネルギー供給が停止した場合に閉弁動作を行うことができない場合がある。このため、このような構造においては、フェイルセーフなスライド弁を実現できない。
【0147】
[円環状エアシリンダ(第2付勢部)80]
円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに配置されている。円環状エアシリンダ80においては、円環状エアシリンダ80に駆動流体として圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて(B2方向)移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。同時に、可動弁板部50を第1開口部12aに向けて(B1方向)に移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。これによって、メインバネ70の付勢力に打ち勝って、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから可動弁枠部60を離間させるのと同時に、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bから可動弁板部50を離間させる。
これにより、後述する補助バネ(第3付勢部)90の付勢力により体40は流路H方向において弁箱10の厚さ中央位置となりの弁箱10内で回動可能な状態となる。
【0148】
なお、可動弁部40において、第1周囲領域40aは、円環状である可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59との内側に位置する。同時に、可動弁部40において、第2周囲領域40bは、第1周囲領域40aの内側に位置する。即ち、可動弁部40の径方向において、メインバネ70は、円環状エアシリンダ80の内側に配置されている。言い換えれば、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向(流路H方向)に交差する方向においてメインバネ70に隣接している。つまり、円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の径方向において、シール部61および反力伝達部59、と、メインバネ70との間に位置する。
【0149】
第1実施形態においては、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つのエアシリンダ(空隙)である。
具体的に、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の第1開口部12aに向けて開口した凹部60dと可動弁板部50の第2開口部12bに向けて突出した凸部50dとが勘合した状態で形成され、これら環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動するように形成されている。また、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の周縁部に形成された円環状の空間、および、可動弁板部50の最外周に形成された突条(環状凸部)からなり、1つの円環シリンダ(円環空隙)として機能する。また、言い換えると、円環シリンダは、流路Hを囲むように形成されている。
【0150】
円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給されると、第2付勢部80の体積を膨張させる膨張力(付勢力)がB1,B2方向に生じる。膨張力の大きさがメインバネ70に生じる復元力よりも大きい場合、この膨張力がメインバネ70の付勢力に打ち勝ってメインバネ70が圧縮され、可動弁板部50がB1方向に可動弁枠部60がB2方向に摺動して弁体40の厚さ方向寸法が縮小して、第1シール部61が弁箱10の内面15aから離間し、同時に、反力伝達部59が弁箱10の内面15bから離間して、開弁動作が行われる。この際、円環状の凹部60dと凸部50dとが摺動することで、可動弁板部50と可動弁枠部60との移動する方向が流路方向のみに規制されるとともに、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、シール部61および反力伝達部59が弁箱10内面15a、15bに当接した状態から平行移動するように位置規制される。つまり、この円環状エアシリンダ80は可動弁板部50と可動弁枠部60との相対移動方向とその姿勢を規制することができる。
【0151】
[補助バネ(第3付勢部)90]
補助バネ90は、中立弁部30と可動弁枠部60との間に設けられ、弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置する中立弁部30に対して、弁体40の厚さ寸法が縮小した際に、弁体40を弁箱10の中央よりに付勢するものである。
補助バネ90は、中立弁部30の外周位置(図2,図4では右側位置)に設けられた開口30aを貫通して可動弁枠部60に接続された棒状の位置規制部65に設けられている。補助バネ90もメインバネ70と同様に弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
補助バネ90は、中立弁部30開口30aの第1開口部12a側に設けられたフランジ部30bと、位置規制部65の先端65aとに係止されて、可動弁枠部60を第2開口部12b側に移動するB2に向かう向きに付勢されている。
【0152】
補助バネ90は、この中立弁部30より第1開口部12a側に位置する可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて付勢して、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに可動弁枠部60のシール部61が当接している場合であって、円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60が第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから離間するように付勢している。
【0153】
これにより、円環状エアシリンダ80に圧縮空気が供給された際に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に向かって移動し、最終的に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置するように姿勢制御される。また、補助バネ90の付勢力は、メインバネ70の付勢力と円環状エアシリンダ80の付勢力の差よりも遙かに小さいものとされる。つまり、弁閉状態を実現するための能動的バネあるいは、アクチュエータとしてのメインバネ70や円環状エアシリンダ80に比べて、弁体の厚さ寸法を変化させるものであるから極めて小さなものでよい。
【0154】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、弁体40厚さを増大する動作を行うメインバネ70と、弁体40厚さを縮小する動作を行う円環状エアシリンダ80と、弁体40を流路方向において弁箱10中央位置側にする姿勢制御をおこなう補助バネ90と、が設けられている。
【0155】
この構成において、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域において、互いに近接するように並列に配置されている。円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つの円環シリンダを構成している。この構成によれば、一方向に圧縮空気第2付勢部80に供給する供給路41が1つ設けられていれば、圧縮空気を円環状エアシリンダ80に沿ってこの円環シリンダの内部に供給することができ、弁体40の厚さ寸法の伸縮(開弁動作及び閉弁動作)を行うことができるとともに、この動作中において補助バネ90により弁体40の伸縮に伴う弁体40の流路方向位置を弁箱10中央付近に容易に維持することができる。このため、簡易かつコンパクトな構成を有するアクチュエータを実現することができる。
【0156】
また、円環状エアシリンダ80は、開弁動作を行うために用いられるので、第2付勢部80において発生する力の大きさ(出力)として、第1付勢部70を圧縮することができる大きさ(出力)があれば十分である。
【0157】
第1実施形態においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とによって1つの厚さ方向寸法を可変な可動弁部40が構成されているので、2枚の可動弁部を設ける必要がなく、簡単かつコンパクトな構造を有する可動弁部を実現することができる。
【0158】
また、中立弁部30にはアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、中立弁部30には振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。また、回転軸20にもアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、回転軸20振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。同時に、回転軸20に弁密閉するためのモーメントが必要なものに比べて、弁体40の揺動機構の出力を抑えることができるので、この回転軸20の回動機構を小型化することができる。
この構造においては、剛性として、上記中立弁部30の強度に加えて、退避位置と弁開閉位置の間で可動弁部40を回動させる際にその自重を支える強度があれば十分である。
【0159】
図2は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに嵌合されている部分および中立弁部30と可動弁板部50とが互いに嵌合されている部分を示す拡大縦断面図であり、第1付勢部70及びガイドピン62が設けられた部位を示している。
【0160】
[第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52b]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面には、可動弁枠部60の環状凹部60dの内周面に当接し、可動弁板部50と可動弁枠部60との間をシールする2重シール部として、Oリング等の円環状の第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが設けられている。
【0161】
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fに第2シール部51a,51bが設けられている。また、径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gに、第3シール部52a,52bが設けられている。第2シール部51a,51bは、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、第3シール部52a,52bは、可動弁枠部60の第2外周面60gに当接する。
【0162】
第2シール部51a,51bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第1開口部12aに近い中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第2開口部12bに中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。
【0163】
第2シール部51a,51bは、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、例えば圧力が低い空間である第1開口部12aに連通する第1空間側とを遮断するものであり、この仕切り状態を確保することができる。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間であって第2開口部12bに近い第2空間側とを仕切り、仕切り状態を確保することができる。
【0164】
[ガイドピン62]
ガイドピン62は、可動弁枠部60に固設されて流路方向に立設された太さ寸法均一の棒状体とされ、円環状エアシリンダ80内を貫通し、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに形成された孔部50hに嵌合している。
このガイドピン62は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向が符号B1,B2に示された方向からずれないように、かつ、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動した際にもその姿勢が変化せずに平行移動をおこなうように、これらの位置規制を確実に誘導する。
【0165】
これによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、符号B1,B2に対して斜め方向に移動することを防止している。同時に、可動弁枠部60は、弁閉状態としてシール部61と反力伝達部59とがそれぞれ弁箱10の内面15a,15bに当接した状態に対して、可動弁板部50と可動弁枠部60との流路方向位置が変化した場合でも、これらが平行状態を維持して平行移動し、可動弁板部50と可動弁枠部60とが傾いてしまうことを防止している。
【0166】
この構造においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに位置決めされつつ、符号B1及びB2で示された方向に平行状態を維持したまま相対的に移動し、閉弁動作及び開弁動作を行うことができる。これによって、開弁動作においては、可動弁枠部60に設けられた第1シール部61に均一に押圧力を生じさせ、リークが抑制されたシール構造を実現できる。
【0167】
また、このようにガイドピン62を備えた構造においては、スライド弁1が真空装置に取り付けられる姿勢が決められていない場合、即ち、スライド弁1が取り付け方向が自由である場合に、弁体40の重量の負荷が第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bに局所的に加わることを防止することができる。例えば、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向に対して直角に重力が作用するようにスライド弁1が取り付けられている場合、摺動する部材である可動弁板部50と可動弁枠部60との重量がガイドピン62に加わる。このため、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52b(O−ring)に可動弁板部50と可動弁枠部60との重量が直接的に加わることを防止される。これにより、スライド弁1が取り付けられる姿勢がいかなる姿勢であっても、シール部の寿命が短くならず、リークを防止する効果を確保・維持することができる。
【0168】
ガイドピン62と孔部50hとの摺動面の面積を低減するため、また、スライド弁1の外部である第1空間及び第2空間からガイドピン62を隔離するために、ガイドピン62は、円環状エアシリンダ80内を貫通するように配置されている。
また、このように、円環状エアシリンダ80内にガイドピン62を配置することにより、可動弁板部50と可動弁枠部60とを互いに滑らかに摺動させることができる。
【0169】
なお、ガイドピンの強度が十分に得られていれば、大口径を有するスライド弁においても、可動弁部60が摺動する方向がずれることが防止される。また、ガイドピン62は、特殊な形状を有する可動弁部においても流路と直行する面内配置を設定して荷重を適宜分散することでより一層開閉動作の良好なスライド弁として適用可能である。
【0170】
ガイドピン62には、図28に示すように、その先端と可動弁枠部60側に形成された内部空間62aに連通する開口を有し、ガイドピン62内部を貫通する軸方向経路62bが設けられその基部側が、連絡路42に接続されている。また、円筒状の内部空間62aは、中立弁部5の径方向内側および外側に向かう経路42aを介してガイドピン62中心側に位置する中間大気室55,56にそれぞれ連通されている。ガイドピン62の可動弁板部50側となる先端側には、Oリング等とされるシール部材62cが設けられて孔部50hとの摺動面をシールしている。
【0171】
[ワイパー53,54]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fには、可動弁部60の内周面に当接する円環状のワイパー53が設けられている。同様に、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gには、可動弁部60の外周面に当接する円環状のワイパー54が設けられている。
【0172】
ワイパー53は、第2シール部51a,51bと同様にして、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、ワイパー54は、第3シール部52a,52bと同様にして、可動弁枠部60の第1外周面60gに当接する。
ワイパー53,54、第2シール部51a,51b、第3シール部52a,52bは、いずれも、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに配置されている。第2シール部51aは、第1開口部12a(第1空間)に近い位置に配置されている。第3シール部52aは、第2開口部12b(第2空間)に近い位置に配置されている。
【0173】
これらのワイパー53,54は、開弁動作及び閉弁動作によって環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動する円環状エアシリンダ80において、その可動弁枠部60の凹部60dの内周面を潤滑あるいは清掃し、上記摺動によって発生するダスト及び円環状エアシリンダ80から発生するダストを第1空間及び第2空間に放出させない機能を有する。
また、ワイパー53,54を構成する部材(材料)として、例えば、スポンジ状のポーラスな弾性体を選択すれば、その部材の内部に潤滑油を浸透(保持)させておくことができる。
【0174】
これにより、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bによってシールされるシール面に一定の膜厚を有する薄い油膜が形成された状態を維持することが可能となる。つまり、ワイパー53,54は、余剰な油膜を拭き取り、油膜が枯渇した際には一定の膜厚を有する油膜を塗布する。
【0175】
[中間大気室55,56]
第2シール部51a,51bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室55が設けられている。同様に、第3シール部52a,52bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室56が設けられている。
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面50fで第2シール部51a,51bによって仕切られた部分に中間大気室55が設けられている。また、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの内周面50gで第3シール部52a,52bによって仕切られた部分に中間大気室56が設けられている。中間大気室55は、可動弁枠部60の第1内周面60fと可動弁板部50の外周面50fに設けられた溝とで形成された空間であり、中間大気室56は、可動弁枠部60の第1外周面60gと可動弁板部50の第2内周面50gに設けられた溝とで形成された空間である。
【0176】
そして、これらの中間大気室55,56は、後述する供給路41と同様の構成とされた図示しない連絡路によってスライド弁1の外部に連通され、円環状エアシリンダ80の加圧中に1重目のシールが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)をスライド弁外部に向けて逃がして、圧縮空気が弁箱10内部に放出されてしまうことを防止するようになっている。
【0177】
つまり、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第2シール部51bが破れた際に、2重目のシールである第2シール部51aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室55および連絡路が設けられている。また、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第3シール部52bが破れた際に、2重目のシールである第3シール部52aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室56および連絡路が設けられている。
これにより、圧縮空気が弁体10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0178】
同時にまた、これらの中間大気室55,56の圧力は、連絡路によりモニタ可能である。即ち、圧力計が中間大気室55,56の圧力を測定するようにスライド弁1外部に設けられるとともに連絡路によって接続されており、ユーザによってその圧力が監視される。
例えば、第1開口部12aに近い第1空間が減圧空間であり、第2シール部51aが破損している場合においては、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第2シール部51bが破損している場合には、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0179】
同様に、第2開口部12bに近い第2空間が減圧空間であり、第3シール部52aが破損している場合においては、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第3シール部52bが破損している場合には、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0180】
このようにスライド弁1は、中間大気室55,56の圧力をモニタする構造を有することができるので、例えば、中間大気室55,56の圧力値が大気圧よりも低い圧力であって閾値の圧力よりも低い場合、あるいは大気圧よりも高い圧力であって閾値の圧力よりも高い場合に、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常を検知することができる。
【0181】
例えば、と中間大気室55,56中あるいは連絡路にアラーム装置が設けられた構造、或いは、スライド弁1に接続された制御装置にアラーム装置が設けられた構造が採用されていれば、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常をアラームによって報知することができる。従って、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが破損し、内部リークがスライド弁1に発生し、メンテナンスが必要であることをすぐに認識することができる。
これにより、真空装置等の外部から検知することができない、スライド弁において発生した内部リーク等の不具合を確実に判断することができる。
【0182】
[接続ピン部69、供給路41]
スライド弁1には、図に二点差線で示すように、円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41が形成され、この供給路41は、可動弁枠部60の躯体内部、および、中立弁部30の躯体内部、回転軸10内部を経由して、スライド弁1の外部に設けられた図示しない駆動用気体供給手段に連通するよう設けられている。
この供給路41には、可動弁枠部60と中立弁部30との流路方向位置が変化した際にも、可動弁枠部60と中立弁部30との間で駆動用気体を供給可能に摺動接続する接続ピン部69が設けられる。
【0183】
接続ピン部69は、中立弁部30に流路方向と平行に穿孔された円形断面の孔部38と、この孔部38に回動可能に勘合された棒状の接続ピン68とからなっている。孔部38の内面38aは、開口側の内面38aに比べて底部側の内面38bが縮径され、これに対応して、接続ピン68の径寸法も基部68aに対して先端68bが縮径している。そして、この径寸法が変化する部分にそれぞれ段差38c、段差68cが形成されている。
【0184】
接続ピン部69は、図に二点差線で示すように、その中心軸線付近に供給路41が形成されて管状となっており、可動弁枠部60内部の供給路41が連通されている。また、接続ピン68の先端面68daには供給路41が開口しており、この先端面68dと孔部38の底部38d付近とで形成される加圧空間69aには、中立弁部30躯体内に形成された供給路41が連通されている。
【0185】
駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に供給される。
【0186】
接続ピン部69においては、接続ピン68の外周面68aには孔部38の内周面38aが当接するとともに、接続ピン68の外周面68bには孔部38の内周面38bが当接している。
【0187】
接続ピン68には、孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動した場合でも、加圧面となる先端面68dと底面38dとの間ではなく、摺動方向となる面に、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である加圧空間69aと、例えば圧力が低い空間である第2開口部1bに連通する第2空間側とを遮断する2重シール部が設けられる。
シール部は、加圧空間69aと中空部11との仕切り状態を確保できるものとされる。
【0188】
具体的には、接続ピン68には、接続ピン68と孔部38との間をシールする2重シール部として、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の太シール部68fが設けられるとともに、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の小シール部68gが外周面68bに設けられている。
【0189】
同時に、段差68cおよび段差38cで形成された円環状の中間大気室69cが、この2重シールの間にあり、図示しない連絡路42に連通されることで、圧縮空気が弁箱10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0190】
特に、加圧面となるとともにその距離が変化する先端面68dと底面38dとの間でシールするのではなく、直接的に加圧面とはならずかつ摺動面であり距離が変化しない外周面68aと内周面38aおよび外周面68bと内周面38bとの間でシールをおこなうので、より確実な密閉状態を維持することが可能となる。
このようなシール部68f、68gの構成によれば、上述した円環状エアシリンダ80における第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52bおよびガイドピン62の構成と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0191】
孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動中あるいは移動して流路方向の相対位置が変化した場合でも、駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、この体積の変化した空間69aを介して、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に安定的に供給される。
【0192】
[シーケンス回路SQ]
本実施形態においてスライド弁1は、図14に示すように、供給路41とされるOPENポートから円環状エアシリンダ(第2付勢部)80とメインバネ70とからなる単動エアシリンダに中立弁体30の厚さ収縮用の圧縮空気を供給するとともに、回転駆動エアシリンダ(駆動手段)110の伸張動作時に、OPENポートから伸通気口(供給路)114を介して伸圧力空間113aに伸張用の圧縮空気を供給し、回転駆動エアシリンダ110の収縮動作時に、CLOSEポートから供給路(縮通気口)22jを介して縮圧力空間22cに収縮用の圧縮空気を供給するシーケンス回路SQを有する。
【0193】
シーケンス回路SQは、OPENポートから、2チャンネル2方弁ttV、および、チェック弁と流量調整弁とが組み合わされたスピードコントロール弁NCV2を介して伸圧力空間113aに接続される。また、シーケンス回路SQは、OPENポートから、スピードコントロール弁NCV1、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート部ttV0、チェック弁CV3と並列にリミッタスイッチ弁cdS、および、メンテナンススイッチmSWを介して円環状エアシリンダ80に接続され、同時に、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート部ttV0に連続する流路が分岐して、チェック弁CV1を介して2チャンネル2方弁ttVおよびスピードコントロール弁NCV2の間に接続されている。
【0194】
また、シーケンス回路SQは、CLOSEポートから、チェック弁CV2と並列に2チャンネル2方弁ttV、および、スピードコントロール弁NCV3を介して縮圧力空間22cに接続されている。
スピードコントロール弁NCV1は、円環状エアシリンダ80および2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0からOPENポートに向かう側が順方向となるとともに、このスピードコントロール弁NCV1は2チャンネル2方弁ttVにおいてttV2からttV1への流れと平行となるように並列接続される。
スピードコントロール弁NCV2は、出力OP側から伸圧力空間113aに向かう側が順方向となるように接続され、スピードコントロール弁NCV3は、出力CL側から縮圧力空間22cに向かう側が順方向となるように接続される。
【0195】
チェック弁CV1は、出力OPおよび2チャンネル2方弁ttVのttV2側からエアオペレート側ttV0および円環状エアシリンダ80に向かう側が順方向となるとともに、チェック弁CV1は2チャンネル2方弁ttVにおいてttV2からttV1への流れと平行となるように並列接続される。
チェック弁CV2は、CLOSEポート側から縮圧力空間22cに向かう側が順方向となるとともに、チェック弁CV2は2チャンネル2方弁ttVにおいてttV3からttV4への流れと平行となるように並列接続される。
チェック弁CV3は、OPENポート側から円環状エアシリンダ80に向かう側が順方向となるとともに、チェック弁CV3はリミッタスイッチcdSで連通した流れと平行となるように並列接続される。
【0196】
円環状エアシリンダ80とチェック弁CV3との間には、手動で円環状エアシリンダ80を大気圧の外部Airに接続するように切り替え可能なメンテナンススイッチmSWが接続されている。このメンテナンススイッチmSWにより、出力ポイントFRおよび入力のOPENポートとCLOSEポートの圧力状態がどのような状態でも、円環状エアシリンダ80の圧力を低圧PLo状態にすることができる。
【0197】
2チャンネル2方弁ttVは、図21に示すように、エアオペレート側ttV0から駆動用圧縮空気を供給することで流路ttV1と流路ttV2とを接続・切断するとともに、同時に、流路ttV3と流路ttV4とを接続・切断するよう構成されている。このため、流路ttV1と流路ttV2と流路ttV3と流路ttV4とが貫通するように形成されたシリンダ状のケースttV9に、摺動可能な弁体ttV5が挿入されて、バネttV8等の付勢手段により、エアオペレート側ttV0に付勢されている。弁体ttV5には、その表面に流路溝ttV6,ttV7が形成されて、弁体ttV5の軸線に沿った摺動位置により、流路ttV1と流路ttV2とを接続・切断可能とされるとともに、流路ttV3と流路ttV4とを接続・切断可能とされる。また、ケースttV9のエアオペレート側ttV0と逆側には、バネttV8の付勢力を受けるとともに、図に矢印で示す軸線方向位置を調整可能に設定できる調整部材ttVaが設けられ、図示しない固定手段によってこの調整部材ttVaをケースttV9に固定する軸線方向位置を調節することで、バネttV8付勢力が変化し、エアオペレート側ttV0から供給する圧力において、チャンネル接続・切断の閾値を調節させることができる。
【0198】
チェック弁CV1、CV2,CV3は、図22〜24に符号CVで示すように、流路CVaから流路CVbには圧縮空気を流し、逆方向には流さない逆止弁である。チェック弁CVは、流路となるハウジングCVcに形成された凹部CVdと、この凹部CVdに挿入される有底円筒状のケースCVWと、ケース(ボールガイド)CVW内部に設けられた弁体となるボールCVBと、ボールCVBを流路CVa側に付勢するバネCVSとケースCVWと凹部CVdとの間をシールするシール部材CVrとからなる。
【0199】
チェック弁CVのケースCVWの外周面には、凹部CVdの開口部分に二重のフランジCVeが形成されて、これらの内側に位置するリング状シール部材CVrによって密閉される。ケースCVWは、凹部CVdの内側部分においては、凹部CVd内表面とケースCVW外周面とは接触していない部分を有するように外径寸法が設定される。
【0200】
また、ボールCVBの外径よりもケースCVW内径は大きく、ケースCVW内表面とボールCVB外周面とは常に接触していない部分を有する。
ケースCVW内周面には、図22〜24に示すように、中心軸線に向けて突出する3枚のフィン(ボールガイド)CVfが形成され、このフィンCVfの中心軸側端面CVf1がボールCVB外周面と常に接触している部分を有し、これにより、ボールCVBのケースCVW内での移動位置を規制している。ケースCVWには、周方向でフィンCVfどうしの間となる位置に、貫通孔CVgが形成されてケースCVW内外を連通状態としている。
【0201】
ケースCVWは、流路CVa側に開口する状態で配置され、軸線方向にほぼ同径寸法となるように配置されるフィンCVfの端面CVf1により、ボールCVWの移動方向が軸線方向に記載され、軸線方向の移動位置規制は、ケースCVWの開口側で弁座となるテーパ部CVaaおよび、ケースCVW底部側となるフィンCVfの端面CVf1が基端部側で縮径した箇所でおこなう。
【0202】
ボールCVBは、バネCVSにより流路CVa側に付勢されて、流路CVaに形成されたテーパ部CVaaに押圧されることで密着し、流路CVbから流路CVaに圧縮空気を流さない状態となる。流路CVaから加圧され、バネCVSの付勢力に打ち勝ってボールCVBをテーパ部CVaaから離間させると流路CVaから流路CVbには圧縮空気が流れる。また、バネCVS側のフィンCVfが軸線側に突出することで、ボールCVBの移動位置を規制している。
【0203】
この際、ケースCVW内周面にフィンCVfが形成されていることにより、ケースCVW内表面とボールCVB外周面とは常に接触していない部分、つまり、軸線方向におけるボールCVBの位置にかかわらず、ケースCVW内表面とボールCVB外周面との間で流路断面となる空間が存在している。このため、バネCVSの付勢力と流路CVaからの圧力で決まるどのような位置にボールCVBがあったとしても、ケースCVW内表面とボールCVB外周面との間で決まる流路断面の大きさは変化しない。
同時に、流路CVaから閉塞するテーパ部CVaaとボールCVB、ボールCVBとケースCVW内周面、貫通孔CVg、CVW外周面と凹部CVdの内面、流路CVbとして形成される流れが、ボールCVBの位置にかかわらず安定している。
【0204】
これにより、大流量あるいは、高流速で圧縮流体を流した場合でも、ケースCVW内表面とボールCVB外周面との間などで発生する流速変化により、ボールCVBとテーパ部CVaaとの位置が変動して、流量、流速が変動することがない。特に、ボールCVBがテーパ部CVaaに対して振動し、流量、流速が周期的に変動してしまうことを防止できる。
【0205】
したがって、大流量あるいは、高流速で圧縮流体を流すことが可能となるため、円環状エアシリンダ80および回転駆動エアシリンダ110の伸縮動作における出力を増大し、スライド弁1としての動作を高速化することができる。
【0206】
次に、シーケンス回路SQにおける圧力状態および、エアオペレート状態を説明する。
【0207】
図15は、駆動用の圧縮空気入力2系統と、出力3系統における圧力状態の変化を示すものである。ここで、OPENポート、CLOSEポート、FR,OP,CLの各点は、図14に示す各点に対応する。図16〜図20は、シーケンス回路SQにおける圧力状態を示すものであり、太線が高圧PHi状態を示し、細線が低圧PLo状態を示すとともに、二点差線は、実際の構成に対応する回路ブロックを示している。
【0208】
まず、スライド弁1が閉塞密閉している弁閉の状態を始状態とする。
このとき、中立弁部30は弁閉位置E2(図1)にあり、かつ可動弁部40の厚さが最大となっている。
【0209】
閉状態において、圧力状態としては、図15で丸数字1で示すように、入力側では、圧縮空気を供給する駆動用2系統の入力のうち、弁開動作をおこなうためのOPENポートには、圧縮空気は供給されずほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態であり、弁閉動作をおこなうためのCLOSEポートには、圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態とされる。また、出力側では、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80を動作させる出力ポイントFRではほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態、回転駆動エアシリンダ110の伸圧力空間113aを加圧する点OPではほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態、回転駆動エアシリンダ110の縮圧力空間22cを加圧する点CLでは圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態とされる。
【0210】
同時に、図16に示すように、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0も大気圧であるため、バネttV8による付勢力により図21の右方向に弁体が位置し、流路ttV1と流路ttV2、および、流路ttV3と流路ttV4がいずれも切断状態となっている。これにより、CLOSEポート、チェック弁CV2、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3が高圧PHi状態として連続することになり、縮圧力空間22cが加圧されて、回転駆動エアシリンダ110ではピストン112が縮位置Pbにある。
同時に、リミットスイッチcdSはピストン112が接触して連通状態となっている。
【0211】
次に、開動作として弁開のコマンドがonになったタイミングで、圧力状態としては、図15で丸数字2で示すように、入力側では、OPENポートには圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態となり、CLOSEポートには圧縮空気は供給されずほぼ大気圧同じ低圧PLo状態となるように切り替えられる。
これに伴って、図17に示すように、OPENポート、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0、チェック弁CV1まで、および、チェック弁CV3、リミットスイッチcdS、出力ポイントFRが加圧状態となり、図15で丸数字2で示すように、これらの回路の部分における圧力が上昇してゆく。
なお、この出力ポイントFRにおける圧力は、円環状エアシリンダ80の圧力をほぼ等しいと見なすことができる。
【0212】
この際、円環状エアシリンダ80の圧力上昇に伴って、可動弁板部50がB1方向に可動弁枠部60がB2方向に摺動することで、可動弁部40の厚さ方向寸法が縮小して、閉塞解除状態へと動作する。
この際、可動弁部40の回動動作は開始しないで、弁閉位置(解除位置)E2を維持する。
【0213】
同時に、図17に示すように、2チャンネル2方弁ttVが切断された状態であり、また、チェック弁CV1のために、流路ttV2、出力ポイントOP、スピードコントロール弁NCV2、伸圧力空間113aは、ほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態となる。同時に、2チャンネル2方弁ttVが切断された状態であり、また、チェック弁CV2のために圧力が抜けず、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3、縮圧力空間22cは、高圧PHi状態を維持している。
同時に、リミットスイッチcdSはピストン112が接触して連通状態となっている。
【0214】
OPENポートからの圧縮空気の供給が所定量となり、円環状エアシリンダ80がメインバネ70の付勢力に打ち勝って、OPENポート、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0、チェック弁CV1まで、および、チェック弁CV3、リミットスイッチcdS、出力ポイントFR、円環状エアシリンダ80の圧力が所定の閾値Pthを超えると、図15で丸数字3で示すように、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0の圧力が高くなり、バネttV8の付勢力に対抗して弁体ttV5が移動して図21(b)に示す連通状態となる。
【0215】
これにより、CLOSEポートから、2チャンネル2方弁ttVにおいてttV4からttV3への流れ、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3、縮圧力空間22cが連通して、縮圧力空間22cが減圧される。同時に、OPENポートから、2チャンネル2方弁ttVにおいてttV1からttV2への流れ、出力ポイントOP、伸圧力空間113aが連通し、伸圧力空間113aが加圧される。
その結果、回転駆動エアシリンダ110では、ピストン112が縮位置Pbから伸位置Pa側に向けて移動し、ピストン112が非接触となったリミットスイッチcdSが切断状態となる。これにより、チェック弁CVにより円環状エアシリンダ80は加圧状態を維持する。
【0216】
この際、縮圧力空間22cの減圧、伸圧力空間113aの加圧によるピストン112の移動に従って、回転軸20および中立弁体5が回動して、可動弁部40は弁閉位置(閉塞解除位置)E2(図1)から、退避位置E1(図1)に向けて回転動作する。
ここで、中立弁部30の回転動作中、つまり、ピストン112が縮位置Pbから移動している間は、円環状エアシリンダ80は加圧状態であるため、可動弁部40の厚さ方向寸法が縮小した状態を維持する。
このように、スライド弁1の開動作が終了すると、図15に丸数字3ダッシュで示すように、弁開の状態を維持する。
【0217】
なお、円環状エアシリンダ80の圧力閾値Pthとしては、弁体40の厚さ方向寸法が縮小動作が終了する状態で、なおかつ、高圧PHi状態以下であればよい。つまり、弁体40の厚さ縮小動作終了後に回転軸20の回転動作をおこなうという動作順を維持可能で、かつ、回転軸20の回転速度(回転)が、スライド弁1において要求される俊敏さを維持できる値となるように、
PLo < Pth < PHi
であればよく、さらに、回転軸20の回転が30°/sec(±1割)の場合に、
3 < Pth/PLo < 5
0.5 < (PHi−Pth)/PLo < 4
とすることができる。この圧力閾値Pth設定は、2チャンネル2方弁ttVにおいて、簡便にはバネttV8の付勢力を調節部材ttVaの固定位置によって調節することでおこなう。具体的には、これらの値を絶対圧表記として、PLo=1.0kgf/cm2(98.1kPa)、Pth=3.0〜5.0kgf/cm2(294.2〜490.3kPa)、PHi=5.5〜7.0kgf/cm2(539.4〜686.5kPa)、とすることができるが、これらの数値は、弁のサイズ、開閉速度の設定などによって変動させることができる。
【0218】
次に、開状態からの閉動作を説明する。
【0219】
閉動作として弁閉のコマンドがonになったタイミングで、圧力状態としては、図15に丸数字4で示すように、入力側では、CLOSEポートには圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態となり、OPENポートには圧縮空気は供給されずほぼ大気圧同じ低圧PLo状態となるように切り替えられる。
【0220】
これに伴って、図19に示すように、CLOSEポート、チェック弁CV2、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3が高圧PHi状態として連続することになり、縮圧力空間22cが加圧されて、回転駆動エアシリンダ110ではピストン112が伸位置Paから縮位置Pbに移動し始める。このタイミングでは、リミットスイッチcdSはピストン112が非接触で切断状態となっている。
同時に、OPENポートからの減圧により、OPENポート、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0、チェック弁CV1、2チャンネル2方弁ttVにおいてttV2からttV1への流れ、出力ポイントOP、伸圧力空間113aが連通し、伸圧力空間113aが減圧される。
すると、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0の圧力が所定の閾値Pthより低くなると、バネttV8の付勢力に対抗して弁体ttV5が移動して図21(a)に示す切断状態となる。
【0221】
同時に、開状態において、加圧状態であった円環状エアシリンダ80側では、リミットスイッチcdSが切断された状態であり、かつ、チェック弁CV3のために圧力が抜けず、出力ポイントFR、円環状エアシリンダ80は、高圧PHi状態を維持している。
これにより、回転駆動エアシリンダ110において伸圧力空間113aの減圧、縮圧力空間22cの加圧により、ピストン112が伸位置Paから縮位置Pbに向けて移動し始める。同時に、可動弁部40は退避位置E1(図1)から弁閉位置(閉塞解除位置)E2(図1)に向けて回転動作する。この際、可動弁部40の厚さ方向寸法が縮小した状態を維持する。
【0222】
可動弁部40の回転動作が終了して弁閉位置(閉塞解除位置)E2に到達すると、同時に、回転駆動エアシリンダ110において、ピストン112が縮位置Pbに到達する。これにより、ピストン112がリミッタスイッチcdSに接触して、リミッタスイッチcdSが連通状態になる。
これにより、圧力状態としては、図15で丸数字5で示すように、円環状エアシリンダ80および出力ポイントFRがOPENポートと連通して減圧される。
この際、メインバネ70の付勢力により円環状エアシリンダ80の圧力下降に伴って、可動弁板部50がB2方向に可動弁枠部60がB1方向に摺動することで、可動弁部40の厚さ方向寸法が拡大して、閉塞状態へと動作する。
図19に示すように、出力側では、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80を動作させる出力ポイントFRがほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態となり、閉状態となる。
【0223】
以上のように、OPENポートとCLOSEポートとの2ポートとされた入力に対し、FR,OP,CLの3出力ポイントにおいて、圧力状態を電気的な機構を用いずに制御可能とするとともに、これらの圧力変化順を設定して、閉塞位置、閉塞解除位置、退避位置の状態を順番に実現することにより、スライド弁1の動作を迅速、かつ、安全におこなうことが可能となる。
【0224】
上記のシーケンス回路SQを有することにより、可動弁部40の回転移動動作、可動弁部40の昇降動作(閉塞・解除動作)の2回の独立した動作を有し、しかも、回動動作は複動式エアシリンダ110、昇降動作は単動式エアシリンダ80で行うスライド弁1において、これら移動動作・昇降動作を連動させることが可能となる。可動弁部40の移動動作および昇降動作をいずれも電気的な制御で行わず、機械的な制御で行うことができるので、停電時の異常動作等を防止することが容易に可能となる。
【0225】
1チャンネル2方弁を2個使う場合と比較して、2チャンネル2方弁ttVとすることで、弁の動作タイミングを正確に合わせることが可能となり、シーケンスを正確に実現できる。
回路形成体を、分割することで、シリンダの変更、3位置シリンダ制御用回路に変更する場合においても、ブロック1を共用することが可能となり、コスト低減効果を得られる。
【0226】
メンテナンススイッチmSWにより、円環状エアシリンダ80への圧空供給を遮断する操作が可能となり、回転駆動エアシリンダ110への圧空供給を保持したまま、円環状エアシリンダ80の脱着作業が可能となる。
チェック弁CVにおいて、ケース(ボールガイド)CVWの内周面および外周面が流路となるようにフィンCVfおよび貫通孔CVgを形成することで、ボールCVBが弁座となるテーパ部CVaaに吸い寄せられることを防止することを可能とし、これにより、圧縮空気の供給流量を増加させ、回転駆動エアシリンダ110の動作時間を短縮して、スライド弁1の開閉動作時間を短縮することができる。
【0227】
なお、メンテナンススイッチmSWは、次に説明する締結ボルト43とともにメンテナンス時に使用することができる。
【0228】
[締結ボルト(締結部材)43]
締結ボルト(締結部材)43は、図36に示すように、外周面に雄ネジの設けられた先端部分43aが可動弁枠部60に設けられた締結螺着部63に設けられたネジ穴63aに螺接されている。締結ボルト43は、可動弁体40の厚さ方向、つまり、可動弁板部50と可動弁枠部60との移動方向であるB1方向またはB2方向と平行な方向に軸線が向くように設けられている。
【0229】
締結ボルト43の中央部分43bは、先端部分43aと略同径とされ、可動弁板部50に設けられた締結螺着部63に設けられた貫通孔57bに軸方向移動可能として貫通されている。中央部分43bの径寸法は貫通孔57bの径寸法よりも小さく設定され、これらが軸方向に相対移動した場合でも互いに接触しないようになっている。
締結ボルト43の基端部分43cには、先端部分43aおよび中央部分43bよりも拡径したボルトヘッドとされ、先端部分43a側の当接面43dが、対向する締結部57における貫通孔57b外側の当接面57dと当接して、締結ボルト43と可動弁板部50との流路方向変動位置を規制可能になっている。
【0230】
締結ボルト43には、先端部分43aの雄ネジが螺設された部分より先端位置に、係止用溝43eが周設されて、この係止用溝43eに勘合されたワッシャ等の止め輪(係止部材)43fが、ネジ穴63aの外側面63fに当接することで締結ボルト43の軸方向(流路方向)における内側方向(図示下方向)の移動を規制し、締結ボルト43を回転させても可動弁枠部6位から離脱しないように係止している。
止め輪(係止部材)43fは、締結ボルト(締結部材)43が単純に外れないだけではなく、可動弁板部50と可動弁枠部60と締結解除した状態で、締結ボルト43が、長期的に緩みなく、かつ、位置を保持していることを可能とする。つまり止め輪(係止部材)43fが締付軸力を安定的に負担する必要があるため、図38(a)に示すように、E形止め輪とされるか、あるいは、図38(b)に示すように、C型止め輪を適用することが好ましい。なお、止め輪のタイプによって係止用溝43eの形状も対応したものとされる。また、係止部材としては、ピン型のものも適応可能で、この場合は、係止用溝43eに代えて締結ボルト43の径方向に設けられた係止孔に固定されることができる。
【0231】
締結ボルト43の長さは、止め輪43fが外側面63fに当接した状態で、可動弁部40が最大厚さとなっても、先端部分43a側の当接面43dが、対向する締結部57における貫通孔57b外側の当接面57dと当接しない程度に長く設定されている。また、可動弁部40が最小厚さとなった場合には、締結螺着部63と締結螺着部63との対向する当接面63gと、当接面57gとが当接することで、可動弁板部50と可動弁枠部60との位置規制がおこなわれる。つまり、螺接された締結ボルト43に対して、可動弁板部50は、B1方向には当接面57gが当接面63gに当接する位置まで、また、B2方向には当接面57dが当接面43dに当接する位置まで移動可能となる。
【0232】
したがって、締結ボルト43をネジ穴63aに対して回転し、締結長さを変化することで、可動弁板部50の移動範囲、つまり、可動弁板部50と可動弁枠部60との流路方向位置を規制することができる。特に、エアシリンダ80によって、メインバネ70の付勢力に打ち勝って可動弁部40の厚さが縮小した状態で、当接面57dが当接面43dに当接するように、締結ボルトを回動させることにより、エアシリンダ80の駆動を停止した状態でも、可動弁部40の厚さが縮小した状態を維持することが可能となる。これにより、メンテナンス時などに、中立弁体を弁箱10と接触しないように自由な状態で回動可能とすることができる。
【0233】
また、締結ボルト43は、複数設けられたメインバネ70の付勢力に打ち勝って安定的に可動弁部40の厚さが縮小した状態を維持するために、可動弁部40を流路方向に平面視して、複数のメインバネ70が配置された中心位置に対して、この締結ボルト43が対称に配置される。
具体的には、図37に示すように、可動弁部40が流路方向に平面視して略円形とされ、可動弁部40の最外周である第1周囲領域40aに複数のメインバネ70が同心状に位置するように配置された場合、締結ボルト43は、メインバネ70と同心状にかつ、メインバネ70と等間隔になるように、メインバネ70と同数設けられる。
【0234】
一例として、図37(a)には、メインバネ70と締結ボルト43とがメインバネとが4本ずつ配置された例を、図37(b)には、メインバネ70と締結ボルト43とがメインバネとが3本ずつ配置された例を示す。また、図37(c)には、6本のメインバネ70が同心状に配置され、締結ボルト43と中心に設けられた例を示す。
なお、これらの例はメインバネ70の付勢力が全て等しいものとして例示したが、複数のメインバネの付勢力が不均等である場合には、これらの付勢力を効率よく受けて、可動弁部40の厚み寸法の縮小幅が、中立弁体面方向全体で等しくなるように締結ボルトを設けることが好ましい。
【0235】
これにより、常にメインバネ70の付勢力が働いている可動弁部40に対してその厚さを縮小する冶具を別途用意することなく、中立弁部30と可動弁部40とからなる中立弁体の取り外しを可能とすることができる。
さらに、止め輪43fを設けることで、メンテナンス時に、締結ボルト43を取り外した上で紛失してしまうリスクを排除することができる。
【0236】
以上のように、第1実施形態においては、流路方向に互いに離間接近可能な可動弁板部50と可動弁枠部60とによって構成された可動弁部40が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを流路方向外側に向けて付勢するメインバネ70が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させる円環状エアシリンダ80が設けられ、可動弁枠部60を中立弁部30に接近する方向に付勢する補助バネ90が設けられることによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱の内面15a、15bに押圧して、シール部61及び反力伝達部59とで確実に弁閉塞をおこなうことができる。
【0237】
また、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させることで、弁箱10に弁体40が接触しないようにして回動させ、回動以外の動作が必要な機構に比べて小型で出力の小さい駆動機構によって退避位置まで弁体40を移動することができる。
【0238】
この構成においては、1つの可動弁部40と3つの付勢部70,80,90とによって弁体を形成することができる。また、可動弁部40の周囲領域に配置されたメインバネ70の復元力によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面に直接押し付けて、確実に閉弁できる。同様に、可動弁部40の周囲領域に配置された円環状エアシリンダ80に供給された圧縮空気の作用によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面から離間させて、確実に回動可能状態として開弁できる。従って、第1実施形態においては、簡単な構造を有し、高い信頼性で仕切り動作を行うことができるスライド弁を実現することができる。
【0239】
<他の実施形態>
上述した本発明の実施形態においては、可動弁板部50の外周にU字形状のU字部が形成されており、可動弁枠部60の内周に逆U字形状の逆U字部が形成されている。また、可動弁板部50のU字部と可動弁枠部60の逆U字部とが互いに嵌合するように、可動弁板部50及び可動弁枠部60が設けられている。
図29は、本発明の他の実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、固定弁部と可動弁部とが嵌合されているシリンダ付近の要部拡大図である。
図29において、図1ないし図6に示した第1実施形態と同一の部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
一方、他の実施形態の可動弁部40の構造においては、図29に示すように可動弁板部50の外周に形成された外周クランク部と可動弁枠部60の内周に形成された内周クランク部とが嵌合されている。
【0240】
メインバネ70を構成する弾性部材の自然長は、凹部60aの深さよりも大きい。このため、凹部60aの天井面と可動弁板部50とによって圧縮されつつ凹部60a内に配置されている第1付勢部70においては、弾性復元力(延伸力,付勢力)が生じている。この弾性復元力が作用することにより、可動弁部60がB1方向に摺動しながら、第1シール部61が弁箱10の内面に当接して押圧され、閉弁動作が行われる。
【0241】
メインバネ70は、第1シール部61を直接押圧できるようにするために、第1シール部61の直下に配置されることが望ましい。
本実施形態においては、メインバネ70が可動弁枠部60に設けられているので、メインバネ70を第1シール部61の直下に位置させることが可能である。
【0242】
このような他の実施形態においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行う円環状エアシリンダ80とが設けられている。この構成において、メインバネ70及びエアシリンダ80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域において、互いに近接するように並列に配置されている。
具体的には、可動弁部40の最外周である第1周囲領域40aにメインバネ70が設けられ、第1周囲領域40aに隣接した第2周囲領域40bにはエアシリンダ80が配置される。また、メインバネ70は、第1シール部61の直下に位置している。
【0243】
この構造においては、メインバネ70は第1シール部61を直接押圧することができ、第1シール部61にほぼ垂直方向に荷重を直接加えることができる。
つまり、スライド弁100の構造は、作用点及び支点が存在するモーメント荷重を加える構造ではない。このため、梃子に相当する部分の構造部材(強度)は必要なく、アクチュエータの構造を簡易化することができる。また、可動弁部60に要求される剛性として、可動弁部60の自重を支えることができる強度があれば十分である。
【0244】
本実施形態の構造においては、可動弁枠部60の第1シール部61の直下にメインバネ70が配置され、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つの円環状エアシリンダによって第2付勢部(エアシリンダ)80が形成されている。この構造においては、アクチュエータの構成も簡単にすることにでき、閉弁動作及び開弁動作の信頼性を向上させることができる。
また、このように可動弁部40の周囲領域にアクチュエータが配置された構成が大口径を有するスライド弁に適用された場合であっても、上述した同様の構造によって確実に閉弁動作及び開弁動作を行うことができ、逆圧が作用した場合においても同様の動作ができる。
【0245】
この他の実施形態においては、第3シール部52b,中間大気室56,第3シール部52a,及びワイパー54の位置が、上記の実施形態とは異なっている。
具体的に、上記の実施形態においては、第1外周面50fとは反対の面である内側面50gに第3シール部52b,中間大気室56,第3シール部52a,及びワイパー54が設けられているが、第2実施形態においては、第2外周面50jに第3シール部52b,中間大気室56,第3シール部52a,及びワイパー54が設けられている。
【0246】
可動弁板部50の外周クランク部において、径方向外側に位置する第1外周面50fに第2シール部51a,51b、ワイパー53が設けられている。また、径方向において第1外周面50fの内側であって第2シール部51a,51bの下方に位置する第2外周面50jに、第3シール部52a,52b、ワイパー54が設けられている。第2シール部51a,51bは、可動弁枠部60の第1内周面60jに当接し、第3シール部52a,52bは、可動弁部60の第1内周面60jの下方に位置する第2内周面60kに当接する。
【0247】
第2シール部51a,51b、ワイパー53、中間大気室55は、圧力が高い空間であるエアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第1開口部12aに近い第1空間とを仕切り、仕切り状態を確保する。同様に、第3シール部52a,52b、ワイパー54、中間大気室56は、圧力が高い空間であるエアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第2開口部12bに近い第2空間とを仕切り、仕切り状態を確保する。
【0248】
これらのワイパー53,54は、開弁動作及び閉弁動作によって摺動する可動弁枠部60の内周面を潤滑あるいは清掃し、上記摺動によって発生するダスト及びエアシリンダ80から発生するダストを第1空間及び第2空間に放出させない機能を有する。
また、ワイパー53,54の内部に潤滑油を浸透(保持)させておくことができる。
これにより、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bによってシールされるシール面に一定の膜厚を有する薄い油膜が形成された状態を維持することが可能となる。つまり、ワイパー53,54は、余剰な油膜を拭き取り、油膜が枯渇した際には一定の膜厚を有する油膜を塗布する。
【0249】
以上のように、この実施形態によれば、上述した実施形態と同様の効果が得られる。更に、この実施形態においては、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行うエアシリンダ80とを、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域に配置しているので、弁箱10にアクチュエータを設ける必要がなく、簡単な構成を有するスライド弁を実現できる。
【0250】
図27は、本発明の他の実施形態のスライド弁における縦断面図であり、中立弁部と可動弁部(可動弁枠部)とが接続されている接続ピン部付近の要部拡大図である。
図27において、図1ないし図6に示した第1実施形態と同一の部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0251】
第1実施形態においては、接続ピン部69として、可動弁枠部60と一体とされた接続ピン68が形成されていたが、本実施形態の接続ピン部69としては、可動弁枠部60に接続されたフローティングピン(接続ピン)68Aが貫通孔67に勘合されている。
フローティングピン68Aは、図8に示すように、孔部38に回動可能かつ軸方向に摺動可能として勘合されている図示下部側が、上述した第1実施形態と略同等の構成とされている。
【0252】
[接続ピン部69、フローティングピン68A、供給路41]
本実施形態の接続ピン部69は、供給路41として設けられたもので、図27に示すように、可動弁枠部60に流路方向と平行に穿孔された円形断面の貫通孔67を有し、この貫通孔67にフランジ部68Aaを有する棒状のフローティングピン68Aが回動可能かつ半径方向に微動可能で、かつ傾斜は最小限になる様に勘合されている。貫通孔67の内面67aは、フランジ部68Aaの径寸法に対応して可動弁枠部60に対向した孔部38よりも拡径したフランジ内面67aを有し、この開口側のフランジ内面67aに比べて図示上となる貫通側のガス接続位置内面38bが縮径され、このガス接続位置内面67bに比べて図示上となる貫通側の支持位置内面67cが縮径され、この支持位置内面67cに比べて図示上となる貫通側の外側内面67dが拡径されている。
【0253】
フローティングピン68Aは、その径寸法がこの貫通孔67の径寸法に対応して、フランジ部68Aaに対して縮径したガス接続部68Abが縮径し、ガス接続部68Abに対して固定端68Acが縮径している。
固定端68Acには、固定溝68Adが周設されて、この固定溝68Adに勘合されたワッシャ等の固定部材68Aeが、貫通孔67の外側面67eに当接することでフローティングピン68Aの軸方向(流路方向)における内側方向(図示下方向)の移動を規制し位置を固定している。
フランジ部68Aaの上側となるシール面68Afと、ガス接続部68Abの上側となるシール面68Agは、対向する段差面67fおよび段差面67gとの間に、Oリング等とされるシール部材67h、67jが設けられている。
【0254】
フローティングピン68Aの外径寸法として、固定端68Acは支持位置内面67cの内径寸法とほぼ等しく設定されているが、フランジ部68Aaおよびガス接続部68Abは、それぞれ、フランジ内面67aおよびガス接続位置内面38bに対して、微少寸法小さく設定されて、フローティングピン68Aが可動弁枠部60に対して径方向に僅かに遊びがある状態とされている。傾斜すると、シール部材67hの潰し代が変化してしまう為、傾斜は最低限に抑え、径方向に微小変位するというのが技術的特徴である。
【0255】
フローティングピン68Aは、固定端68Acの固定部材68Aeと、シール面68Afおよびシール面68Agのシール部材67h、67jで対向する方向に可動弁枠部60を挟持するように固定されている。これにより、フローティングピン68Aは、図示上側に押圧された状態で、軸線方向(貫通孔67の長さ方向)には移動しないように可動弁枠部60に固定されている。
同時に、フローティングピン68Aは、シール部材67hがシール面68Afと段差面67fとに押圧されて変形するとともに、シール部材67jがシール面68Agと段差面67gとに押圧されて変形するようになっている。
このように、フローティングピン68AのOリング等とされるシール部材67h、67jが段差面67fおよび段差面67gに押圧されて変形することで、ガス接続部68Ab、および、接続位置内面67b部分がシールされる。
【0256】
孔部38の底部38d付近には、供給路41となる
フローティングピン68Aの内部には、その先端面68dに開口し軸方向に沿って中心に開けられるとともに、接続位置内面67bに設けられた開口に対向する位置とされるガス接続部68Abの表面に開口する供給路41が設けられて、加圧空間69aとエアシリンダ80とを接続可能となっている。
【0257】
[接続ピン部69、フローティングピン68B、連絡路42]
本実施形態の接続ピン部69としては、連絡路42として設けられたフローティングピン68Bが、図30に示すように、可動弁枠部60側は図27に示すフローティングピン68Aと略同様の構成とされるため、対応する構成には同一の符号を付すか、68Aとの符号を68Bと読み替えてその説明を省略する。
フローティングピン68Bは、中立弁部30側が短くなっている。 このため、中間大気室となる空間69Baは加圧されておらず、開口した連絡路42は、段差68cに対応する位置で端面68Bdとなっている。また、加圧状態でないため、2重シールも採用されていない。連絡路42の一部であるフローティングピン68Bと、供給路41の一部であるフローティングピン68Aとは、図1に示すように、中立弁体5の面内で異なる位置にそれぞれ設けられている。このように、連絡路42と供給路41とは、回転軸20内部において平行位置とされたように、並行して中立弁部30内部、可動弁枠部60内部に設けられている。
【0258】
フローティングピン68Bの内部には、その先端面68Bdに開口し軸方向に沿って中心に開けられるとともに、接続位置内面67bに設けられた開口に対向する位置とされるガス接続部68Bbの表面に開口する連絡路42が設けられて、中間大気空間69Baと中間大気室55,56とを接続可能となっている。
【0259】
本実施形態においては、フローティングピン68Aは、摺動面と同じ方向となる内面67aとフランジ部68Aa外周、ガス接続位置内面67bとガス接続部68Abではなく、加圧面となる先端面68dと平行な方向、つまり、摺動方向と直行する面であるシール面68Afと段差面67fとの間、および、シール部材67jがシール面68Agと段差面67gとの間に、シール部材67h、シール部材67jが設けられることで、フローティングピン68Aが傾斜した場合や、フローティングピン68Aが僅かに径方向に移動した場合であっても、Oリング等とされるシール部材67h、67jの潰し代は変化しない。したがって、このようにフローティングピン68Aが移動した場合、つまり、中立弁部30と可動弁枠部60とが、流路方向以外の相対位置変動した場合であっても、加圧されたガス接続部68Ab付近の供給路41に対するシールを維持し、密閉が破れることがない。フローティングピン68Bも同様に連絡路42に対するシールを維持し、密閉が破れることがない。
【0260】
同時に、本実施形態においては、太シール部68fおよび小シール部68gにおいて、製作公差等によってフローティングピン68Aに対して半径方向の位置ズレなどがある場合においても、フローティングピン68Aと可動弁枠部60に流路と直交する方向(フローティングピン68A径方向)の遊びがあるため、太シール部68fおよび小シール部68gの摺動Oリングには偏芯が生じない。したがって、摺動時にも接続ピン68と孔部38との間のシールを維持し、密閉が破れることがない。
同時に、フローティングピン68Aの位置変動時においても、太シール部68fおよび小シール部68gに変形が集中することがないので、変形・破損の可能性を低減することができ、密閉維持をより確実におこなうことができる。
【0261】
なお、上記本発明の実施形態においては、第1付勢部70としてスプリングが用いられた構造について説明したが、他の弾性体を用いてもよい。
また、第2付勢部80の構造として、円環状の1つのエアシリンダが採用された構造について説明したが、油圧シリンダ等とされる他の駆動流体を使用する構成を採用してもよい。この場合にも、1つの円環状のシリンダが駆動することによって弁箱10(10a,10b)の内面から可動弁板部50と可動弁枠部60との厚さ寸法を収縮させる駆動装置が第2付勢部として用いられる。
【0262】
また、上記本発明の実施形態においては、図35(a)に示すような円形に形成された開口部及び可動弁部について説明した。本発明のスライド弁はこれらの形状に限定されない。本発明のスライド弁は、可動弁部の周囲領域にアクチュエータが設けられた構造を有するので、例えば、或いは図35(b)に示すような角部に丸みを有する略正方形に形成された開口部及び可動弁部、図35(c)に示すような角部に丸みを有する略三角形に形成された開口部及び弁板(可動弁部)が採用されてもよい。また、図35(d)に示すような角部に丸みを有する略長方形に形成された開口部及び弁板が採用されてもよい。また、図35(e)に示すような角部に丸みを有する略六角形に形成された開口部及び弁板が採用されてもよい。また、図35(f)に示すような角部に丸みを有する略U字形に形成された開口部及び弁板に適用することも可能である。
更には、楕円形に形成された開口部及び弁板、あるいは角部に丸みを有する略八角形に形成された開口部及び弁板等、あらゆる形状に形成された開口部及び弁板を本発明に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、真空装置等において、真空度や温度あるいはガス雰囲気等性質の異なる2つの空間を連結している流路を仕切る状態と、この仕切り状態を開放した状態を切り替える用途および、これらの状態の間で開度をコントロールする用途のスライド弁に広く適用できる。
【符号の説明】
【0264】
1…スライド弁、 5…中立弁体、 10,10a,10b…弁箱、 11…中空部、 12a…第1開口部、 12b…第2開口部、 17,18…流体経路リング、 20…回転軸、 21…ピニオン、 22…ラック、 26…弁軸、 30…中立弁部、 40…可動弁部、 41…供給路、 42…連絡路、 50…可動弁板部(第2可動弁部)、 51a,51b…第2シール部、 52a,52b…第3シール部、 53,54…ワイパー、 55,56…中間大気室、 60…可動弁枠部(第1可動弁部)、 61…第1シール部、 62…ガイドピン、 68…接続ピン、68A…フローティングピン、 69…接続ピン部、 70…メインバネ(第1付勢部)、 80…円環状エアシリンダ(第2付勢部)、 90…補助バネ(第3付勢部)、 91…接続部材、100…スライド弁、 110…シリンダ、 111…シリンダ本体、 112…ピストン、 113…圧力空間、 114…通気口、 118…緩衝溝、 236…緩衝材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁体(弁板)による流路を開閉する動作に加えて、弁体をスライド動作させる振り子型に適したスライド弁に関する。特に、本発明は、真空装置等において、異なる圧力、及び異なるプロセスを行う2つの空間をつなげている流路を仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(2つの空間をつなぐ)とともに、その開度を調整可能なスライド弁に関する。
【背景技術】
【0002】
真空装置等においては、チャンバと配管との間、配管と配管との間、あるいは配管とポンプ等との間等、異なる真空度の2つの空間の間を仕切り、仕切られた2つの空間をつなげる仕切りバルブが設けられている。このような仕切りバルブとしては、様々な形態の弁が知られている。
【0003】
例えば、弁板をスライドさせて流路の弁開閉位置に弁板を挿入し、更にこの弁板を作動させて流路を仕切り(閉弁動作)、あるいは上記弁板を作動させて流路をつなぎ(開弁動作)、更に弁板をスライドさせ、流路から弁箱内の退避位置に弁板を退避させる構造が知られている。このような構造を有する弁としては、振り子型,直動型,ドア型等が知られている。
【0004】
直動型仕切弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成された弁箱の中空部に、弁棒(支持体)に固設された弁板が配置された構造を有する。この構造においては、上記弁棒をその長手方向に直動させて、上記弁板を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁板を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0005】
従来の上記直動型仕切弁としては、ベローズで接続された2枚の第1弁板及び第2弁板からなる弁体と、この2つの弁板の間において弁板の中央部に配置されたアクチュエータと、流路を構成する開口部が形成された弁箱とを備えた仕切弁が知られている。この仕切弁においては、アクチュエータによって、弁箱の開口部の周囲の内面に第1弁板を当接及び押圧させて流路を閉鎖し、または、アクチュエータによって第1弁板を上記弁箱の内面から離間させて流路を開放する(例えば特許文献1参照)。
【0006】
また、振り子型仕切弁は、流路を構成する第1開口部及び第2開口部が形成されかつ中空部を有する弁箱と、中空部において回転軸に固設されて回転軸と垂直をなす面に平行な方向において広がっている支持体と、この支持体に固設された弁体(シールリング板が開口部に設けられている構造の場合には弁板)とが配置された構造を有する。この仕切弁においては、上記回転軸を回転させて、上記弁体を回動させ、上記弁体を開口部(流路)の弁開閉位置に挿入し、または、上記弁体を開口部が形成されていない退避位置に退避させる。
【0007】
従来の上記振り子型仕切弁としては、ハウジングの中空部内に、回転軸において回動可能な弁板と、ハウジングの開口部に配置された摺動可能なシールリング板と、ハウジングに一体形成されたフランジに上記シールリング板を摺動させるアクチュエータとが設けられた構造が知られている。この仕切弁においては、上記シールリング板を上記弁板に当接及び押圧して流路を閉鎖し、または、上記シールリング板を上記弁板から離間させて流路を開放する(例えば特許文献2参照)。
【0008】
こうした振り子型仕切弁において、弁板を回動させるための機構として、弁板が取り付けられた回転軸に固着されたピニオンギアと、このピニオンギアに噛合するラックギアが形成されたラック部材と、ラック部材を直線運動(往復運動)させるシリンダからなる弁板回転機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−181205号公報
【特許文献2】特許第3655715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した従来の仕切弁においては、連通するチャンバ等を仕切るバルブであるという用途から、駆動部分、特に、弁板回動の駆動部分はできるだけ小型化することが望ましい。しかしながら、駆動部分を小型化する、つまり、シリンダを小型化するとその出力が低下して、弁板の移動速度、すなわち、弁の開閉速度が低下してしまうため一定以上の小型化ができないという問題があった。
さらに、上述した従来の仕切弁においては、筒状のシリンダ本体内を摺動するピストンが収縮する、シリンダを含む駆動部分の小型化を図る場合にはピストンを移動させる圧力空気供給が1系統とされてこの圧空の供給によって伸縮のうち片方の動作をおこなうとともに、逆の動作はバネ等の付勢手段によりおこなう、いわゆる単動シリンダとされる構造となっていた。
このため、バネ等の付勢力に打ち勝って圧空によりピストンを駆動する必要があるため、駆動速度が遅くなるという問題があった。
また、このような単動シリンダにおいて、弁の駆動用に供給される圧空が1系統であるにも関わらず、弁板の回動動作と、これと直交する方向である閉塞解除の動作との2つの動作をおこなわなくてはいけない。さらに、これらの動作のタイミングとして、閉塞解除が不充分な状態で回動した場合には弁の破損も起こり得るため、動作のタイミングにも正確性が必要である。また、停電や圧空供給停止などの制御系のトラブルに対応して弁破壊防止を可能する構成が求められていた。
さらにこのような構成をより簡単な構成で実現したいという要求があった。
【0011】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、小型化が可能であり簡単な構成で高い信頼性の仕切り動作が可能なスライド弁を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明のいくつかの態様は、次のようなスライド弁を提供した。
すなわち、本発明のスライド弁は、スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させラックピニオン及びこれを駆動する復動式エアシリンダからなる回転手段と、
前記中立弁体を閉塞解除動作させる単動式エアシリンダからなる閉塞解除駆動手段と、を有するスライド弁において、
前記中立弁体の閉塞解除動作と該中立弁体の回転動作とを順次動作可能とするとともに、オープン時には、閉塞解除エアシリンダの駆動圧が所定の閾値を超えた際に回転エアシリンダを動作開始させるとともに、クローズ時には、回転動作終了時に閉塞動作を開始させるエアオペレイト式2チャンネル2方弁を有するシーケンス回路を具備してなることを特徴とする。
本発明は、前記シーケンス回路が、クローズ時に、前記中立弁体の回転動作を終了するまで、閉塞圧力を安定した状態で維持可能とする回転動作終了検出スイッチを有することができる。
本発明の前記シーケンス回路が、ハウジングと、該ハウジング内部で付勢されたボールと、該ボールの移動位置を規制するボールガイドとを有し、前記ボールの位置によらず流路断面積が一定となるチェック弁を有することができる。
【0013】
本発明は、スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させる回転手段と、
前記弁箱内において前記回転軸に固着され、前記中立弁部を脱着可能に保持する接続部材と、を具備するものとされ、
前記中立弁体は、前記接続部材を介して前記回転軸に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記回転手段は、前記回転軸の軸心周りに形成されたピニオンと、該ピニオンに噛合するラック歯を備えたラック部材と、該ラック部材を直線運動させるシリンダと、これらラック部材とピニオンとを密閉状態に収納するケーシングと、を有し、
前記ケーシングには、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が周設され、
前記シリンダが、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、該ピストンには、その往復運動方向に延在する前記ラック部材が固着され、
前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で伸圧力空間を成すとともに、
前記シリンダ本体の他端側に密閉状態に接続された前記ケーシング側と前記ピストンとの間で縮圧力空間を成し、
前記シリンダ本体に設けられ前記伸圧力空間と外部との間を連通させる伸通気口と、前記ピニオン収納側のケーシングに設けられ前記縮圧力空間と外部との間を連通させる縮通気口とを有し、
前記ラック部材と前記滑り軸受との間で対向する部分には、前記ラック部材が往復運動しても前記滑り軸受より前記ピストン側の縮圧力空間内と前記縮通気口との通気状態を維持する連通溝が形成されていることができる。
本発明は、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることができる。
本発明の前記ケーシングには、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて通気させる際、この通気量を制御可能とする制御緩衝流路が形成されていることが好ましい。
前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分の両側にはそれぞれ、前記ラック部材を摺動可能に支持する滑り軸受が配され、
前記シリンダは、筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体内で往復運動可能なピストンとからなり、前記シリンダ本体の一端側と前記ピストンとの間で圧力空間を成し、
前記シリンダ本体には、前記圧力空間と外部との間を連通させる通気口を有し、前記ピストンには、前記往復運動方向に沿って断面積が連続的に変化し、前記圧力空間内の空気を前記通気口に向けて徐々に通気させる緩衝溝が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明のスライド弁においては、第1の通気口から駆動用空気を供給することと、第2の通気口からケーシング内部のピニオン収納部分、ラック部材収納部分および連通溝を介して駆動用空気を供給することで、移動するピストンに接続されたラック部材が伸縮し中立弁体が開閉する。
【0015】
前記ラック部材は長手方向に垂直な断面が円形を成し、かつ、前記長手方向に沿った2箇所以上で、前記滑り軸受によって摺動自在に支持されることが好ましい。
【0016】
前記滑り軸受は、前記ピニオンと前記ラック歯との噛合部分に生じる前記ラック部材の作用線と、前記ラック部材の軸中心線との交点よりも、前記噛合部分から遠ざかる方向に配されていることがある。
【0017】
前記ラック部材の表面には、長手方向に沿って延びる溝が更に形成されていることもできる。
【0018】
前記可動弁部には、該弁板に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに、
前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁体に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、を具備してなる手段を採用することができる。
【0019】
本発明のスライド弁は、中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で動作する位置切り替え手段として前記流路方向に延在する軸線を有する回転軸と、
を具備するものとされ、
前記中立弁体が、前記切り替え手段に接続される中立弁部と、該中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される可動弁部と、を有し、
前記可動弁部が、該可動弁部に周設され前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着されるシール部が設けられるとともに前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続される第1可動弁部と、
前記第1可動弁部を前記流路方向前記第1開口部に向けて付勢して前記シール部を前記第1開口部周囲の弁箱内面に密着可能とする第1付勢部と、
前記第1可動弁部に対して前記流路方向に摺動可能とされる第2可動弁部と、
前記第1付勢部の付勢力に対抗して前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との前記流路方向厚み寸法を収縮可能なように駆動する第2付勢部と、
前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との流路方向厚み寸法変化に対応して、前記第1可動弁部を前記中立弁部に対して流路方向位置変更可能に接続するとともに、前記第1可動弁部を前記流路方向中央位置側に付勢する第3付勢部と、
前記回転軸の軸線方向に離間して該回転軸を保持する2以上の軸受と、
前記回転軸の軸線方向におけるこれら軸受間の位置で前記回転軸周面に摺動可能に接触する流体経路リングと、
を有し、
前記回転軸の一端面と前記流体経路リングの外周面とに設けられた開口どうしを連通する密閉した流体経路が設けられ、前記回転軸が回動位置に依らずに、かつ、前記弁箱中空部に露出することなく前記中立弁部内部に形成された流体経路と前記回転軸径方向外側位置となる前記弁箱外部とを連通することができる。
【0020】
本発明の前記流体経路として、前記回転軸内部には軸内経路が設けられ、該軸内経路が、前記回転軸の軸線方向に延在して前記回転軸の一端側に開口する軸方向軸内経路と、該軸方向経路に接続されるとともに前記回転軸の周面に開口する径方向軸内経路とからなり、
前記流体経路として、前記流体経路リング内部には、該流体経路リングの径方向に延在しその外周面及び内周面に開口する径方向リング経路が設けられ、
前記流体経路リング内周面および回転軸周面の間に、周方向に設けられ前記径方向軸内経路と前記径方向リング経路とを連通する周方向経路が周設されることができる。
【0021】
本発明において、前記経路は、前記第2周囲領域において前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に前記第2付勢部として形成されたエアシリンダに駆動用気体を供給する供給路の一部とされる手段か、または、前記経路は、前記第2付勢部とされたエアシリンダの摺動部分に設けられた2重シール部において2重目のシールより気体供給側に設けられ、1重目のシールが破れた際に駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路の一部とされる手段を選択することができる。
【0022】
本発明の前記回転軸には、前記供給路と前記連絡路となる軸方向経路がそれぞれ平行に設けられてなるとともに、前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが前記回転軸の異なる軸方向位置に設けられてなることができる。
本発明における前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが、前記軸受の軸線方向中間位置に対して対称に配置されてなることができる。
本発明の前記軸受の軸線方向中間位置には、前記回転軸を駆動する駆動系ピニオンが接続されてなることが可能である。
さらに、本発明において、前記第2可動弁部には、前記第1付勢部の反力を前記第2開口部周囲の弁箱内面に伝達する反力伝達部が設けられることがより好ましい。
本発明の前記第2付勢部は、前記第2周囲領域において前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に形成されたエアシリンダとされ、バネ等とされる第1付勢部とあわせて単動エアシリンダを形成することが可能である。
また、本発明において、前記第2付勢部とされたエアシリンダには、摺動部分に2重シール部が設けられ、1重目のシールが破れた際に、2重目のシールより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路が設けられる手段を採用することもできる。
【0023】
また、前記第2付勢部とされたエアシリンダに駆動用気体を供給する供給路が形成され、該供給路には、前記第1可動弁部と前記中立弁部との流路方向位置が変更した際にも、前記第1可動弁部と前記中立弁部との間で駆動用気体を供給可能に摺動接続する接続ピン部が設けられることができる。
本発明においては、前記接続ピン部には、摺動部分に2重シール部が設けられ、1重目のシールが破れた際に、2重目のシールより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路が設けられることが望ましい。
さらに、前記切り替え手段が、前記流路方向に延在する軸線を有する回転軸を含むものとされてなることが可能である。
また、前記切り替え手段が、前記流路方向と交差する方向に延在し直線状に駆動される弁棒を含むものとされてなることがある。
【0024】
本発明は、前記回転軸の一端面と前記流体経路リングの外周面とに設けられた開口どうしを連通する密閉した流体経路が設けられ、前記回転軸が回動位置に依らずに、かつ、前記弁箱中空部に露出することなく前記中立弁部内部に形成された流体経路と前記回転軸径方向外側位置となる前記弁箱外部とを連通することにより、軸受と軸受との間の距離を長く確保でき、これにより、回転軸が傾く方向に回転軸へ作用するモーメントを2以上の軸受で保持する場合に、この軸受が受けるラジアル荷重を最小にすることができ、それにより軸受の耐久性を向上させることができる。あるいは、必要な回転軸の傾斜方向における変形防止能を維持した状態で回転軸の軸線方向長さを確保することができ、バルブとしての小型化を図ることができる。
また、上記の構成とすることにより、部品の構成を変えずに部品の組立方向を変えることのみによって、回転機構部の弁箱に対する取付面を、反転させることが可能である。
【0025】
本発明の前記流体経路として、前記回転軸内部には軸内経路が設けられ、該軸内経路が、前記回転軸の軸線方向に延在して前記回転軸の一端側に開口する軸方向軸内経路と、該軸方向経路に接続されるとともに前記回転軸の周面に開口する径方向軸内経路とからなり、
前記流体経路として、前記流体経路リング内部には、該流体経路リングの径方向に延在しその外周面及び内周面に開口する径方向リング経路が設けられ、
前記流体経路リング内周面および回転軸周面の間に、周方向に設けられ前記径方向軸内経路と前記径方向リング経路とを連通する周方向経路が周設されることによって、回転軸が回動しても、周設された周方向経路が前記径方向軸内経路と前記径方向リング経路とを連通した状態を維持することができる。また、周方向経路が周設されているため、経路内の流体からの作用力が軸受けにおける回転軸の支持状態に対して影響を及ぼすことを防止できる。
【0026】
本発明において、前記経路は、前記第2周囲領域において前記第1可動弁部と前記第2可動弁部との間に前記第2付勢部として形成されたエアシリンダに駆動用気体を供給する供給路の一部とされる手段か、または、前記経路は、前記第2付勢部とされたエアシリンダの摺動部分に設けられた2重シール部において2重目のシールより気体供給側に設けられ、1重目のシールが破れた際に駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす連絡路の一部とされる手段を選択することにより、弁箱内部の中空部に露出(暴露)することなく、駆動用流体を回転軸内部経由で中立弁体へ供給するとともに、中間大気室への連絡路を回転軸内部経由で弁箱外部に連通させることが可能となる。
【0027】
本発明の前記回転軸には、前記供給路と前記連絡路となる軸方向経路がそれぞれ平行に設けられてなるとともに、前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが前記回転軸の異なる軸方向位置に設けられてなることにより、複数の経路を一本の回転軸内部を介して同時にそれぞれを別個に連通状態とすることができるので、駆動用流体の供給路とセーフティー用の中間大気用の連絡路とを一つの回転軸のみを介して配置することが可能となる。
本発明における前記供給路と前記連絡路と対応する流体経路リングが、前記軸受の軸線方向中間位置に対して対称に配置されてなることにより、軸受に対する加重を均等に近いものとして軸受の耐久性を向上し、バルブのメンテナンス費用を低減することが可能となる。
本発明の前記軸受の軸線方向中間位置には、前記回転軸を駆動する駆動系ピニオンが接続されてなることにより、軸受に対する加重を均等に近いものとして軸受の耐久性を向上し、バルブのメンテナンス費用を低減することができる。
【0028】
また、本発明においては、前記エアシリンダおよび接続ピン部は、第2シール部,第3シール部,及びワイパーを有することができ、前記ワイパーは、前記第3シール部よりも前記第2開口部に近い位置に配置されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一実施形態のスライド弁においては、ラック歯の形成された部分が滑り軸受の両側位置まで移動するラック部材を有するシリンダであっても、ラックおよびピニオンを収納する部分のケーシングが密閉され、このケーシングのピニオン収納部分に対して駆動用空気を供給することで、ラックピニオンへの連通部分が密閉されていなくても、駆動用圧縮空気をシリンダに供給してピストンを往復動作させることが可能となり、中立弁体の駆動部分が従来できなかった程度に小型化することが可能となる。同時に、連通溝を設けることで、シリンダ内の縮圧力空間、ラック部材の収納部分、滑り軸受に対応する連通溝、ピニオンの収納部分、通気口の順に縮圧力空間を連通して、例えば、この経路の途中に通気口を設けた場合にピストンと反対側の密閉空間が、蓄圧部となって、中立弁体の動作が遅くなることを防止できる。
さらに、ピストンを伸位置から縮位置に移動させる際に、伸圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止、即ちラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力が加わらないように、ピストンに形成された緩衝溝によって、ピストンの縮位置への移動を滑らかに変化させる。
同様にピストンに形成された緩衝溝によって、ピストンを縮位置から伸位置に移動させる際に、縮圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止、即ちラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力が加わらないように、ピストンの伸位置への移動を滑らかに変化させる。
【0030】
即ち、縮圧力空間の内圧を増加させてピストンをその縮位置に向けて移動させる際に、伸圧力空間の内圧が急に高まり(伸圧力空間が圧縮され)、ピストンの移動速度が急激に減少する方向に力が働く。しかしながら、伸圧力空間内の空気は緩衝溝を介して通気口に誘導され、この緩衝溝は、ピストンの一面側からシリンダ本体の一端側に向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストンが縮位置に近づくほど、緩衝溝の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストンが縮位置に至る直前では、伸圧力空間から通気口に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、圧力空間の内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストンを緩やかに縮位置で停止させることができる。よって、伸圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止を防止し、ラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
さらに、伸圧力空間の内圧を増加させてピストンをその伸位置に向けて移動させる際に、縮圧力空間の内圧が急に高まり(縮圧力空間が圧縮され)、ピストンの移動速度が急激に減少する方向に力が働く。しかしながら、縮圧力空間内の空気は緩衝溝および制御緩衝流路を介して通気口側に誘導される。この際、緩衝溝は、シリンダ本体の一端側からピストンの一面側に向かって断面積が広がる、つまり、ピストンの他面側から滑り軸受側に向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストンが伸位置に近づくほど、緩衝溝の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストンが伸位置に至る直前では、縮圧力空間から通気口側の密閉空間に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、縮圧力空間の内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストンを緩やかに縮位置で停止させることができる。よって、縮圧力空間の急激な縮小によるピストンの急停止を防止し、ラック部材とピニオンとの噛合部分に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
さらに、縮圧力空間から通気口側の密閉空間に至る空気の流量を制御緩衝流路によって、制御することで、ピストンの移動速度、すなわち、ラック部材の伸張速度、つまり、中立弁体の開閉動作の停止する直前の速さを制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す横断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。
【図3】図2における円環状エアシリンダ付近の要部拡大図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が弁閉位置とされている場合を示す図である。
【図5】図4におけるメインバネ付近の要部拡大図である。
【図6】本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【図7】本発明の第1実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リング付近の要部を拡大して示す径方向断面図(a)、軸方向断面図(b)である。
【図8】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(伸位置)である。
【図9】本発明の第1実施形態における回転軸駆動機構を示す断面図(縮位置)である。
【図10】緩衝溝の作用を示す断面図である。
【図11】ラック部材、および滑り軸受を示す要部拡大断面図である。
【図12】ラック部材とピニオンとの噛合部分を示す要部拡大断面図である。
【図13】回転軸と中立弁体との係合部分を示す要部拡大図である。
【図14】本発明の第1実施形態における駆動シーケンス機構を示す回路図である。
【図15】本発明の第1実施形態における駆動シーケンス機構における圧力状態を示すタイムチャートである。
【図16】図15の丸数字1で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図17】図15の丸数字2で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図18】図15の丸数字3で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図19】図15の丸数字4で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図20】図15の丸数字5で示すタイミングにおける駆動シーケンス機構での圧力状態を示す図である。
【図21】本発明の第1実施形態における2チャンネル2方弁を示す断面図である。
【図22】本発明の第1実施形態におけるチェック弁を示す断面図である。
【図23】本発明の第1実施形態におけるチェック弁を示す分解断面図(a)、ケースの側面図(b)である。
【図24】本発明の第1実施形態におけるチェック弁の部品を示す破断斜視図である。
【図25】本発明の第1実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングの要部を透視した模式斜視図(a)、径方向の模式断面図(b)である。
【図26】本発明の他の実施形態のスライド弁における流体経路リングの内周面および回転軸の摺動面付近を示す模式図である。
【図27】本発明の第1実施形態における接続ピン付近の要部拡大図である。
【図28】本発明の第1実施形態におけるガイドピン付近を示す要部拡大図である。
【図29】本発明の他の実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、シリンダ付近の要部拡大図である。
【図30】本発明の他の実施形態における接続ピン付近の要部拡大図である。
【図31】本発明の他の実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングを示す要部を透視した斜視図である。
【図32】本発明の他の実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングを示す径方向断面図である。
【図33】本発明の他の実施形態のスライド弁における流体経路リングの内周面付近を示す軸方向断面図である。
【図34】本発明の他の実施形態のスライド弁における回転軸および流体経路リングを示す軸方向断面図である。
【図35】本発明の実施形態のスライド弁に適用可能な開口部及び可動弁部の形状を示す図である。
【図36】本発明の第1実施形態における締結部材付近の要部拡大図である。
【図37】図36における締結部材とメインバネの配置の例を示す配置図である。
【図38】締結部材における係止部材の例を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るスライド弁の第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
また、以下の説明に用いられる各図においては、各構成要素を図面上で認識し得る程度の大きさとするため、各構成要素の寸法及び比率を実際のものとは適宜に異ならせてある。
本発明の技術範囲は、以下に述べる実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0033】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態におけるスライド弁の構成を示す平面図である。図2は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避動作可能位置とされている場合を示す図である。図3は、図2の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図4は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が密閉閉塞位置とされている場合を示す図である。図5は、図4の中立弁部と第1可動弁部の接続部分および第1と第2との付勢部付近を示す要部拡大図である。図6は、本発明の第1実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図で、弁体が退避位置とされている場合を示す図である。
【0034】
[振り子型スライド弁]
第1実施形態のスライド弁1は、図1〜図6に示すように、振り子型スライド弁である。
このスライド弁1は、互いに対向した第1開口部12aと第2開口部12bとが設けられた弁箱10と、弁箱10を貫通した切り替え手段としての回転軸20と、回転軸20に固着された接続部材91と、この接続部材91を介して回転軸20に接続された中立弁部30と、回転軸20の軸線方向に移動可能として中立弁部30に接続された可動弁部40と、可動弁部40の厚さ方向寸法を拡大する方向に付勢されるメインバネ(第1付勢部)70と、メインバネ70の付勢方向と反対方向に伸張可能な駆動用の円環状エアシリンダ(第2付勢部)80と、可動弁部40を弁箱10の中央位置側にしようとする位置規制用の補助バネ(第3付勢部)90と、を備えている。
【0035】
中立弁部30及び可動弁部40は、中立弁体5を構成している。また、可動弁部40は、第2可動弁部(可動弁板部)50と第1可動弁部(可動弁枠部)60とによって構成されている。第1開口部12aから第2開口部12bに向かって流路Hが設定されている。なお、以下の説明において、この流路Hに沿った方向を流路方向Hと称することがある。
【0036】
回転軸20が符号A1で示された方向(流路Hの方向に交差する方向)に回転すると、この回転に従って、接続部材91を介して回転軸20に固定されている中立弁部30も方向A1に沿って回動する。また、可動弁部40は中立弁部30に厚さ方向のみ摺動可能として接続されているため、可動弁部40は、中立弁部30と一体に回転する。
このように中立弁部30を回転することにより、流路Hが設けられていない中空部11とされる退避位置E1から第1開口部12aに対応する位置とされる流路Hの弁閉位置E2に可動弁部40が振り子運動で移動する。
【0037】
そして、メインバネ70が伸張する方向に作用することで流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が拡大する動作により(閉弁動作)、後述するように、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧することにより、可動弁部40は流路Hを閉鎖する。
【0038】
逆に、円環状エアシリンダ80が作用することで、メインバネ70の付勢力に円環状エアシリンダ80の押圧力が打ち勝って流路H方向に可動弁部40の厚さ寸法が収縮する動作により可動弁部40が表裏とも弁箱10の内面15aおよび内面15bから離間した後に(解除動作)、回転軸20が符号A2で示された向きに回転する(退避動作)と、この回転に従って中立弁部30および可動弁部40も向きA2に回動する。
この解除動作と退避動作とにより、可動弁部40は上記弁開閉位置から上記退避位置に退避して弁開状態とする弁開動作がおこなわれる。
【0039】
[弁箱10]
弁箱10は、中空部11を有するフレームによって構成されている。フレームの図示上面には第1開口部12aが設けられており、フレームの図示下面には第2開口部12bが設けられている。
スライド弁1は、第1開口部12aが露出されている空間(第1空間)と第2開口部12bが露出されている空間(第2空間)の間に挿入される。スライド弁1は、第1開口部12aと第2開口部12bとをつなげている流路H、即ち、第1空間と第2空間とをつなげている流路Hを仕切り(閉鎖し)、この仕切り状態を開放する(第1空間と第2空間をつなぐ)。
弁箱10の中空部11には、回転軸20、中立弁部30、可動弁部40、メインバネ(第1付勢部)70、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80、及び補助バネ(第3付勢部)90が設けられている。
【0040】
[回転軸20、流体経路リング17,18]
回転軸20は、流路Hとほぼ平行状態に延在して弁箱10を貫通するとともに回転可能に設けられている。
この回転軸20には、接続部材91が固着されている。この接続部材91は、例えば略平板状の部材であり、図7に示すように、回転軸20の一端20aに対してネジ92によって固着される。図7(b)に示すように、接続部材91は、流路方向Hに沿った一端側が広がった略T字状の断面形状を成す突起部93が形成されている。
【0041】
回転軸20は、図7に示すように、弁箱10に固設されるケーシング14に、ベアリング等とされる軸受16A,16Bを介して、この弁箱10を貫通して回動可能に支持されている。軸受16A,16Bは、回転軸20の軸線LL方向に可能な限り離間して配置される。
【0042】
ケーシング14は、弁箱10に対して密閉状態として貫通するように固定されるとともに、回転軸20が密閉状態で回動自在に貫通するシールケーシング14Aと、このシールケーシング14Aに接続され、その内周側に設けられた軸受16A,16Bを介して回転軸20を回動自在に支持する円筒ケーシング14Bと、円筒ケーシング14Bの一端を閉塞する蓋体ケーシング14Cとからなり、これらは互いに固定接続されている。蓋体ケーシング14Cには回転軸20を挿抜可能な開孔を閉塞する蓋体14Dが設けられる。
【0043】
シールケーシング14Aには、弁箱10内部をシールするために、シール部14Aa、14Ab,14Acおよび、大気圧の空間(空隙)である中間大気室14Adが設けられている。
円筒ケーシング14Bの内周面側には、軸線LL方向における軸受16A,16Bの間の位置に、流体経路リング17,18が、回転軸20の外周面20bに摺動可能に接触するように固定されている。
【0044】
回転軸20の外周面20bの流体経路リング17,18の間の中心位置には、この回転軸20を駆動させる(回転させる)ための回転軸駆動機構100(図8参照)を構成するピニオン21が固着される。ピニオン21は外部から密閉可能なケーシング14Bの内部空間22hに収納され、このピニオン21には、図7において紙面奥行方向に往復動作することで、ピニオン21を介して回転軸20を回動させる丸棒状のラック部材22が接続される。
【0045】
[回転軸駆動機構100]
図8は、回転軸駆動機構100を示す概要図である。
回転軸20を回転させるための回転軸駆動機構100は、回転軸20に固着されたピニオン21と、このピニオン21と噛合するラック歯22aを備えたラック部材22とを有している。
また、回転軸駆動機構100は、ラック部材22を往復運動させるための回転駆動エアシリンダ110を備えている。回転駆動エアシリンダ110によって、ラック部材22は軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能とされる。
【0046】
ラック部材22は、図8に示すように、回転軸20の軸線と直交方向の軸線を有し往復動作するピストン112に接続されている。ピストン112は筒状のシリンダ本体(ケーシング)111に格納されて回転駆動エアシリンダ(駆動手段)110を構成している。この回転駆動エアシリンダ110に接続されたラック部材22は、ピストン112のラック部材22に対して反対側の伸圧力空間113に圧縮空気(駆動用気体)を供給することで伸張し、ピストン112のラック部材22側の縮圧力空間22cに圧縮空気(駆動用気体)を供給することで収縮する。
【0047】
ラック部材22は、ケーシング14Bと一体とされたケーシング14Bb内部に、ラック部材22の径寸法よりも大きな径寸法とされて回転軸20と直行する方向に延在するように設けられたラック収納空間(空間)22d、22g、22m内部に軸方向に移動可能として収納される。この空間22d、22g、22mの内部では、ラック部材22は、その軸線方向においてピニオン21と噛み合う両側位置とされる2箇所の外周を覆うように設けられた滑り軸受(軸受)115B,115Cによって往復移動可能に支承されている。軸受115B,115Cは、いずれも、ケーシング14Bbと一体とされて、空間22gよりも小さな径寸法となるように縮径された外周面として形成されており、この軸受22B,22Cは、ラック部材22の外周面に密着している。
【0048】
ラック部材22の外周面の周方向の片側にはピニオン21と噛合うラック歯21aが軸方向に隣接して多数設けられ、このラック歯22aとは異なる周方向位置に、ラック部材22の軸線方向に対して軸受115B両側位置の空間22dおよび空間22gに連通する連通溝116が設けられる。この連通溝116は、図11に示すように、軸線方向に対して軸受115C両側位置の空間22gおよび空間22mに連通するとともに、ラック部材22が往復動作した場合でも、軸受22B両側位置の空間22dと空間22gにおける連通状態および軸受22C両側位置の空間22gと空間22mにおける連通状態を維持する長さとなるよう設定されている。
【0049】
伸圧力空間113aは、伸通気口(供給路)114を介して回転駆動エアシリンダ110外部から伸張用の圧縮空気を供給する供給源に接続されている。
縮圧力空間22cには回転駆動エアシリンダ110外部から収縮用の圧縮空気を供給源から供給する供給源が接続されているが、その経路は、縮圧力空間22c、ラック22の収納された空間22d、縮径した軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aに対応する部分空間、軸受115Bと軸受け115Cとの間で拡径した空間22g、ピニオン21の収納されるケーシング14Bの内部空間22h、この内部空間22hとケーシング14B外部とに接続された供給路(縮通気口)22j、とされている。
【0050】
軸受16A,16Bによってケーシング14に対して支持された回転軸20は、回転駆動エアシリンダ(回転駆動手段)によって往復運動するラック部材22により駆動され、このラック部材22に噛み合うピニオン21とともに回転動作する。
【0051】
また、回転駆動エアシリンダ(駆動手段)110の収縮動作時、および、ラック部材22の収縮位置Pbを維持する間は、これら縮圧力空間22c、収納空間22d、ラック部材22の収納された空間22g、縮径した軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aの噛み合わせ位置に対応する空間22g、軸受115Bと軸受け115Cとの位置にかかわらず拡径している空間22d、22g、22m、ピニオン21の収納されるケーシング14Bの内部空間22h、この内部空間22hとケーシング14B外部とに接続された供給路22j、のいずれにおいても加圧状態が維持されることになる。
【0052】
回転駆動エアシリンダ(シリンダ)110は、回転軸20を収納するケーシング14Bと一体とされ、一端側111aが閉塞された円筒状のシリンダ本体111と、このシリンダ本体111の内部空間111bに摺動可能に収容されたピストン112とを備えている。そして、この内部空間111bには、シリンダ本体111の一端側111aとピストン112の一面側112aとで区画されて、ピストン112の移動によって容量が可変する伸圧力空間113が形成される。また、シリンダ本体111には、この伸圧力空間113に連通し、外部から伸圧力空間113に駆動用に圧縮空気を供給する伸通気口(通気口)114が形成されている。こうした通気口114は、スライド弁1外部に設けられた駆動用圧力空気供給源として例えばポンプが接続されていればよい。
【0053】
ピストン112は、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて、軸線(長手方向)Cに沿って直線的に往復運動可能に収容されている。こうしたピストン112は、伸圧力空間113が最大に拡張され、シリンダ本体111の内部空間111bにおいて最も一端側111aから遠ざかった位置にピストン112がある伸位置Pa(図8)と、ピストン112のラック部材22側の縮圧力空間22cが最大に拡張されて収縮し、伸圧力空間113が最小に縮小され、最も一端側111aに接近した位置にピストン112がある縮位置Pb(図9)との間で摺動可能にされている。
【0054】
また、ピストン112の一面側112aには、突起部112cが形成されている。シリンダ本体111の一端側111aには、ピストン112が縮位置Pbにある時に突起部112cが入り込む凹部111cが形成されている。突起部112cの外径と凹部111cの内径とは略等しく、これらが摺動する際には凹部111c内部と伸圧力空間113とが気密状態に近くなるように設定されている。通気口114の一端側は、この凹部111cで露呈する位置に形成されている。また、ピストン112の他面側112bには、突起部112cと同様に形成された突起部(接続部)112dを介してラック部材22が固着される。接続部112dの外径とラック収納空間22dの内径とは略等しく、これらが摺動している際には、ラック収納空間22d内部と縮圧力空間22cとが気密状態に近くなるように設定されている。
【0055】
ピストン112の突起部112cには、ピストン112の往復運動方向、即ち軸線(長手方向)Cに沿って断面積が連続的に変化し、伸圧力空間113内の空気を通気口114に向けて徐々に通気させる緩衝溝(縮緩衝溝)118が形成されている。
具体的には、図10に示すように、緩衝溝118は、ピストン112の突起部112cに形成された、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した溝からなる。
【0056】
ピストン112の突起部112dには、ピストン112の往復運動方向、即ち軸線(長手方向)Cに沿って断面積が連続的に変化し、縮圧力空間22c内の空気を空間22gに向けて徐々に通気させる緩衝溝(伸緩衝溝)119が形成されている。
緩衝溝(伸緩衝溝)119は、図10に示した緩衝溝118と同様に、ピストン112の突起部112dに形成され、ピストン112の一面側112bからラック部材22側の空間22dに向かって断面積が広がるように、軸線(長手方向)Cに対して傾斜した溝からなる。
【0057】
ラック部材22は、図8、9,11に示すように、軸線(長手方向)Cに垂直な断面が円形を成す丸棒状に形成されている。そして、この丸棒状のラック部材22の周面の一部には、ラック歯22aが軸線(長手方向)Cに沿って所定のピッチで配列形成されている。
【0058】
回転軸20に固着されたピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sの両側にはそれぞれ、ラック部材22を摺動可能に支持する滑り軸受115B,115Cが配されている。この滑り軸受115B,115Cは、図11に示すように、ラック部材22の断面よりも僅かに大きい断面円形の内周面115aが形成され、その内周面115aに外周が接触する丸棒状のラック部材22を軸線(長手方向)Cに沿って円滑に摺動可能に支持する。
【0059】
また、図8、図11に示すように、ラック部材22の表面(周面)には、上述したように連通溝(溝)116が、軸線C方向において、滑り軸受115Bと滑り軸受115Cとの両外位置側まで延在するように形成されている。また、ラック部材22を収納するケーシング14Bには、この連通溝116に入り込むボス(図示略)が形成されて、連通溝116とボスとの係合によって、ラック部材22が軸線C周りに回動することを防止することもできる。これによって、ラック部材22が往復運動する際に軸線C周りに捩れることがない。
【0060】
図12は、滑り軸受115B,115Cの配置位置を示す説明図である。
滑り軸受115B,115Cは、ピニオン21とラック歯22aとの噛合部分Sに生じるラック部材22の作用線(の延長線)L1,L2と、ラック部材22の軸心(軸中心線)Cとの交点P1,P2よりも、噛合部分Sから遠ざかる方向に配されるのが好ましい。
【0061】
即ち、2つの噛合歯であるピニオン21とラック歯22aとの接触点の移動方向である作用線L1,L2が、それぞれラック部材22の軸心(軸中心線)Cと交差する点を交点P1,P2としたときに、滑り軸受115B,115Cの中心線Qがこの交点P1,P2よりも外側になるように、滑り軸受115B,115Cをそれぞれ配置する。
【0062】
滑り軸受115B,115Cの配置位置を上述したように設定することによって、滑り軸受115B,115Cは、ピニオン21の回転によって生じる外力、即ちピニオン21から遠ざかる方向に向かう力を受けることがなくなる。これによって、滑り軸受115B,115Cは、ラック部材22との接触部分において、軸心(軸中心線)Cに直角な方向の応力が加わることを防止して、ラック部材22との摩擦力を低減して円滑に摺動可能にラック部材22を保持することが可能になる。
【0063】
シリンダ本体111の一端側111aには、縮位置Pbにピストン112がある場合に動作する接触式のリミッタスイッチ(回転動作終了検出スイッチ)cdSが設けられる。このスイッチcdSは、後述するように、図14に示すシーケンス回路SQにおける動作を、ピストン112の位置に依存させるものである。具体的には、後述する図21の2チャンネル2方弁ttVにおけるエアオペレート側ttV0の加圧に対応するように、縮位置Pbにピストン112がある場合にスイッチを押圧することでバネ等の付勢力に打ち勝って回路を連通させる。また、この縮位置Pbからピストン112が移動した場合には、ピストン112の動作に追従してバネ等の付勢力によって回路を切断するものである。なお、図9においては、後述の緩衝溝118等によるエアクッション動作を説明するために、縮位置Pbに到達する直前の状態を示している。このため、スイッチcdSは動作状態として示されていない。
【0064】
以上のような構成の回転軸駆動機構100によれば、例えば、図9に示す縮位置Pbにピストン112がある場合には、このピストン112に固着されたラック部材22からピニオン21を介して連動(回転)される回転軸20が、その回動範囲において、図9中の反時計回り方向いっぱいに回転した状態とされ、この回転軸20の位置においては、回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図1)に置かれる。
【0065】
一方、この縮位置Pbから、図8に示す伸位置Paにピストン112を移動させる際には、シリンダ本体111の内面とピストン112の一面側112aとで区画された伸圧力空間113内に、通気口114から駆動用圧縮空気を送り込む。すると伸圧力空間113の内圧が高まることによって、ピストン112は軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に移動(摺動)し、圧力空間113が広がる。この際、縮圧力空間22c内部の余分な空気は、縮圧力空間22cから、ラック22収納用の空間22d、軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aに対応する部分空間、ケーシング14Bbの内部空間22g、ケーシング14Bの内部空間22h、通気口22jを介して、外部へ排出される。
【0066】
ピストン112がシリンダ本体111の一端側111aから遠ざかる方向に伸位置Paまで移動すると、ピストン112に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図8中の時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)に振り子運動で移動する。
【0067】
さらに、図8に示す伸位置Paにピストン112があり、可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)とされた場合に、この伸位置Pa(図8)から、縮位置Pb(図9)にピストン112を移動させる際には、ケーシング14Bbの端面14Ba側とシリンダ本体111の内面111bとピストン112の他面側112bとで区画された縮圧力空間22c内に、通気口22jから駆動用圧縮空気を送り込む。すると縮圧力空間22cの内圧が高まることによって、ピストン112は軸線(長手方向)Cに沿って、シリンダ本体111の一端側111aに近づく方向に移動(摺動)し、圧力空間113が縮まる。
【0068】
この際、伸圧力空間113内部の余分な空気は、伸圧力空間113から、通気口114を介して、外部へ排出される。
縮圧力空間22cには、通気口22jからピニオン21の収納された内部空間22h、ラック22の収納された内部空間22g、軸受115Bに対応する位置の連通溝116およびラック歯22aの噛み合わせ位置に対応する空間22g、収納空間22dを介して、圧縮空気が供給される。この際、軸受け115Cに対応した連通溝116内部、空間22dも加圧状態となっている。
【0069】
ピストン112がシリンダ本体111の一端側111aに近づく方向に縮位置Pbまで移動すると、ピストン112に固着されたラック部材22は、ラック歯22aと噛合するピニオン21を図9中の反時計回り方向に回転させる。これによって、回転軸20も反時計回り方向に回転され、この回転軸20に固定された中立弁部30を介して可動弁部40が流路Hの弁閉位置E2(図1)に振り子運動で移動する。
【0070】
このように、回転軸駆動機構100を構成するシリンダ本体111内の伸圧力空間113および縮圧力空間22cの内圧を可変させ、ピストン112を伸位置Pa(図8)と縮位置Pb(図9)との間で直線運動させることによって、ラック部材22、ピニオン21を介して回転軸20を回動させ、可動弁部40を流路Hに対して退避位置E1と弁閉位置E2(図1)との間で移動させることができる。
【0071】
以上のようなピストン112の伸位置Paと縮位置Pbとの間の移動においては、緩衝溝118によって、ピストン112の縮位置Pbへの移動を滑らかに変化させる。同様に、緩衝溝119によって、ピストン112の伸位置Paへの移動を滑らかに変化させる。
【0072】
先ず緩衝溝118について説明する。
ピストン112を伸位置Paから縮位置Pbに移動させる際には、伸圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止、即ちラック部材22とピニオン21との噛合部分Sに急激に大きな応力が加わらないように、ピストン112の突起部112c形成された緩衝溝118によって、ピストン112の縮位置Pbへの移動を滑らかに変化させる。
【0073】
例えば、図10(a)に示すように、縮圧力空間22cに駆動用圧縮空気を供給しその内圧を増大させてピストン112を縮位置Pbに向けて移動させる際に、突起部112cがシリンダ本体111の凹部111cに入り込む位置まで移動してくると、突起部112c周囲の伸圧力空間113から凹部111cに流入して通気口114から排出されていた空気の流れが遮断され、突起部112cの周縁に広がる伸圧力空間113aの内圧が急に高まり(伸圧力空間113aが圧縮され)、ピストン112の移動速度が急激に減少する方向に力が働く。
【0074】
しかしながら、突起部112cに形成された緩衝溝118によって、伸圧力空間113a内の空気はこの緩衝溝118を介して通気口114に誘導される。即ち、伸圧力空間113aは緩衝溝118を介して通気口114に連通される。
【0075】
しかも、この緩衝溝118は、ピストン112の一面側112aからシリンダ本体111の一端側111aに向かって断面積が広がるように形成されているので、図10(b)に示すように、ピストン112が縮位置Pb(図9)に近づくほど、緩衝溝118の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストン112が縮位置Pbに至る直前では、伸圧力空間113aから通気口114に至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、伸圧力空間113aの内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストン112を緩やかに縮位置Pbで停止させることができる。よって、伸圧力空間113の急激な縮小によるピストン112の急停止を防止し、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【0076】
同様に、緩衝溝119によって、ピストン112の伸位置Paへの移動を滑らかに変化させる。
伸圧力空間113に駆動用圧縮空気を供給しその内圧を増大させてピストン112の伸位置Paに向けて移動させる際に、突起部112dがケーシング14Bbの空間22dに入り込む位置まで移動してくると、突起部112d周囲の縮圧力空間22cから空間22dに流入して空間22h側に移動して通気口22jから排出されていた空気の流れが遮断され、突起部112dの周縁に広がる縮圧力空間22cの内圧が急に高まり(縮圧力空間22cが圧縮され)、ピストン112の移動速度が急激に減少する方向に力が働く。
【0077】
しかしながら、突起部112dに形成された緩衝溝119によって、縮圧力空間22c内の空気はこの緩衝溝119を介して通気口22jに連通する空間22dに誘導される。即ち、縮伸圧力空間22cは緩衝溝119を介して空間22dに連通される。
【0078】
しかも、この緩衝溝119は、ピストン112の一面側112bからケーシング14Bbの他端側14Baに向かって断面積が広がるように形成されているので、ピストン112が伸位置Pa(図8)に近づくほど、緩衝溝119の断面積、即ち開口面積が減少する。これによって、ピストン112が伸位置Paに至る直前では、縮圧力空間22cから空間22dに至る空気の流量が徐々に絞られる(減少する)ため、縮圧力空間22cの内圧減少が徐々に低下する。これによって、ピストン112を緩やかに伸位置Paで停止させることができる。よって、縮圧力空間22cの急激な縮小によるピストン112の急停止を防止し、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに停止させることが可能になる。
【0079】
回転駆動エアシリンダ110には、上記の緩衝溝118,119に加えて、ピストン112が伸位置Paに至る直前、または、ピストン112が伸位置Paから移動し始めた直後におけるピストン112の移動速度を調節するための制御緩衝流路119aが設けられる。
【0080】
制御緩衝流路119aは、図8,図9,図19に示すように、ピストン112が伸位置Pa(図8)とされた際に、突起部112dによって閉塞される位置の空間22dに一端が開口するとともに、他端がケーシング14Bbの他面側14Baに開口する流路119aとされる。
この流路119aには、交わる方向に連通し、ケーシング14Bb外部に開口する制御用孔116bが設けられ、この制御用孔16b内部には、流路119aを閉塞可能な制御ピン119cが制御用孔119bの延在する方向に摺動可能に設けられている。
【0081】
この制御緩衝流路119aは、緩衝溝119と同様、縮圧力空間22cと空間22dとの間で移動する空気の流量を制御するものである。
具体的には、制御緩衝流路119aでは、制御ピン119cが制御用孔16b内部を移動すると、その位置によって、流路119aの断面積が変化する。これにより、縮圧力空間22cと空間22dとの間で移動する空気の流量が変化する。したがって、制御緩衝流路119aが、空間22dに開口した状態で、かつ、突起部112dがケーシング14Bbの空間22dに入り込んだ状態の間は、制御ピン119cの位置によって、流路119aの開度を調節し、ピストン112の移動速度を制御することができる。
【0082】
制御ピン119cを抜いて流路119aの断面積を増やすと、ラック22の移動速度、つまり、可動弁体40のり子運動の移動速度が増大し、また、制御ピン119cを挿入して流路119aの断面積を減少させると、ラック22の移動速度、つまり、可動弁体40のり子運動の移動速度が減少する。
特に、ピストン112が伸位置Paに到着する直前のみならず、ピストン112が伸位置Paから縮位置Pbに動き始める場合、つまり、可動弁部40が流路Hの退避位置E1(図1)に振り子運動で移動し始める場合にもこのようなエアダンパー効果を奏する。これにより、ラック部材22とピニオン21との噛合部分S(図12)に急激に大きな応力を加えずに滑らかに動作開始、および、停止させることが可能となる。
【0083】
このようなシリンダ110であると、圧縮空気の供給を伸通気口114と縮通気口22jとで切り替えるだけでシリンダ110の伸縮をおこなって中立弁体5の揺動動作をさせることが可能である。
【0084】
流体経路リング17と流体経路リング18とは、回転軸20とほぼ等しい内径とされ、ピニオン21よりも弁箱10側の流体経路リング17の外径がベアリング16Aの外径より大きくかつピニオン21の外径寸法よりも小さく設定され、ピニオン21よりも蓋体14D側の流体経路リング18の外径がピニオン21の径寸法よりも大きく設定されている。ベアリング16A,16Bで支持された回転軸20が回動すると、流体経路リング17と流体経路リング18とに対して、接触位置が周方向に変化することになる。
【0085】
流体経路リング17には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面17a及び内周面17bに開口する径方向リング経路17cが設けられる。この径方向リング経路17cの外周面17a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Bcに連通している。
【0086】
流体経路リング18には、第2周囲領域40aにおいて可動弁板部50と可動弁枠部60との間に形成された円環状エアシリンダ80に設けられた2重シール部において2重目のシールs1a,52aより気体供給側に設けられた中間大気室55に接続され、1重目のシール51b,52bが破れた際に駆動用気体をスライド弁1外部に向けて逃がす連絡路42の一部とされる流体経路として、径方向に延在しその外周面18a及び内周面18bに開口する径方向リング経路18cが設けられる。この径方向リング経路18cの外周面18a側は円筒ケーシング14Bの径方向に貫通する経路14Ccに連通している。
【0087】
流体経路リング17には、内周面17bに溝17dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝17dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路27が開口し、径方向軸内経路27は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路25に連通している。
【0088】
流体経路リング18には、内周面18bに溝18dが周設され、回転軸20外周面20bとで囲まれることで周方向経路となっている。
溝18dに対向する位置とされる回転軸20外周面20bには、径方向軸内経路28が開口し、径方向軸内経路28は、回転軸20の軸線LL方向に延在して回転軸20の一端面20aに開口する軸方向軸内経路26に連通している。
【0089】
これら軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、互いに平行状態でかつ軸線LLに平行とされ、回転軸20の蓋体14D側の他端20c側は閉塞されている。
軸方向軸内経路25と軸方向軸内経路26とは、いずれも、中立弁部30内部の供給路41及び、連絡路42に接続されている。
【0090】
流体経路リング17には、内周面17bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝17dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材17h,17j,17kが周設されている。
流体経路リング17には、外周面17aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路17cの開口部分および経路14BcをシールするOリング等のシール部材17e,17f,17gが周設されている。
【0091】
流体経路リング18には、内周面18bと回転軸20外周面20bとの間において径方向軸内経路27の開口部分および溝18dを摺動可能にシールするOリング等のシール部材18h,18j,18kが周設されている。
流体経路リング18には、外周面18aと円筒ケーシング14B内面との間において径方向リング経路18cの開口部分および経路14CcをシールするOリング等のシール部材18e,18f,18gが周設されている。
【0092】
こうした流体経路リング17と流体経路リング18によって、回転軸20がどのような回動位置になっても、径方向軸内経路27と径方向軸内経路28が連通した状態を維持できるため、後述するように密閉度よく、駆動用流体の供給等を行うことができる。しかも、供給路41と連絡路42とを、独立してそれぞれ接続しているので、回転軸20の回動位置にかかわらず、異なる圧力状態あるいは、異なるガス状態の2系統を弁体10内部に影響を与えずに、制御することが可能となる。
【0093】
同時に、周方向経路となる溝17d,18dが周設されているため、溝17d、18d内の流体からの圧力が回転軸20の外周面20bに一周するように作用するため、径方向に作用する圧力を全周で均等にすることができるため、これらの流路における圧力状態にかかわらず、軸受16Aと軸受16Bにおける回転軸20の支持状態に対して影響を及ぼすことを防止できる。
【0094】
同時に、軸受16Aと軸受16Bとの間にこれらの流体経路リング17と流体経路リング18を位置して、回転軸を支持する軸受16Aと軸受16Bとの間の距離をできるだけ長く確保することができる。これにより、回転軸20が傾く方向に回転軸へ作用するモーメントを軸受16Aと軸受16Bで保持する場合、これらの軸受16Aと軸受16Bが受けるラジアル荷重を最小にすることができ、それによりこれら軸受16Aと軸受16Bの耐久性を向上させることができる。または、必要な回転軸20の傾斜方向における変形防止能を維持した状態で回転軸20の軸線方向長さを確保することができ、回転軸20の駆動手段を小型化し、バルブとしての小型化を図ることができる。
【0095】
また、軸受16Aと軸受16B、流体経路リング17、ピニオン21および流体経路リング18の外径寸法を上記の構成とすることにより、部品の構成を変えずに部品の組立方向を変えることのみによって、回転機構部の弁箱に対する取付面を反転させて、これらをケーシング14に対して組み付けることが可能である。
【0096】
本実施形態においてエアシリンダ80の駆動用とされる圧縮空気を、弁箱10内部の中空部11に露出(暴露)することなく、回転軸20内部経由で中立弁体5へ供給するとともに、後述する中間大気室55,56への連絡路42を回転軸20内部経由で弁箱10外部に連通させることが可能となる。
【0097】
本発明の回転軸20には、供給路41と連絡路42となる軸方向経路25,26がそれぞれ平行に設けられてなるとともに、供給路41と連絡路42とに対応する流体経路リング17と流体経路リング18とが回転軸20の異なる軸線LL方向位置に設けられてなることにより、一本の回転軸20内部を介して複数の経路25,26を同時にそれぞれ別個に連通状態とすることができるので、エアシリンダ80の駆動用流体の供給路41とセーフティー用の中間大気用の連絡路42とを一つの回転軸20のみで他の構成を用いずに配置することが可能となる。
【0098】
本発明における供給路41と連絡路42と対応する流体経路リング17,18が、軸受16A,16Bの軸線方向中間位置に対して対称に配置されてなることにより、軸受16A,16Bに対する加重を均等に近いものとして軸受16A,16Bの耐久性を向上し、スライド弁1のメンテナンス費用を低減することがる。
【0099】
なお、本実施形態においては、周方向経路として、図7、図25に示すように、溝17d、18dを流体経路リング17と流体経路リング18との内面17b、18bのみに形成したが、図31に示すように、回転軸20外周面20bに溝22p,溝23pを形成することが可能である。あるいは、これら流体経路リング17と流体経路リング18との内面17b、18bおよび回転軸20外周面20bの両方に溝を形成することもできる。
【0100】
また、本実施形態においては、周方向経路として、図7(a)、図25(b)に示すように、溝17d、18dを回転軸20の全周に設けたが、図1に矢印A1,A2で示した中立弁体5の回動範囲に対応した必要部分のみ、つまり、図32に示すように、回転軸20に要求される回動範囲に対応した周方向円弧範囲A1A2に対応した部分に円弧状に溝17d、18dを形成することもできる。この例では、溝17dが径方向リング経路18cに対する径方向軸内経路27の移動範囲A1A2に円弧状に設けられ、この溝17dは中立弁体5の回動範囲に体操する中心角度範囲とほぼ等しい中心角度範囲とされる。また、溝18dが、径方向リング経路18cに対する径方向軸内経路28の移動範囲A1A2に加えて、径方向リング経路18cに対する接続部分A1A2aにも設けられている。
【0101】
流体経路リング17の内周面17bにおいて、シール部材17hとシール部材17jとの間には、径方向リング経路17cに連通する溝17dが設けられ、シール部材17jとシール部材17kとの間には、溝17pが周設されている。
この溝17pと対向する回転軸20の外周面20bとは、大気圧の空間(空隙)である第2中間大気室を形成するとともに第2連通路42Aによって、ケーシング外部に接続されている。
【0102】
これらシール部材17jとシール部材17kとは、駆動用気体の存在する供給路41となる溝17dに対する2重シール部として機能しており、エアシリンダ80の加圧中に、回転軸20における1重目のシールであるシール部材17jが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)を溝17pおよび第2連通路42Aを介してケーシング14外部に逃がして、ケーシング14B内において流体経路リング17の溝17d側からピニオン21側の内部空間22hに圧縮空気が放出されてしまう等、溝17dと内部空間22hとの間で圧力状態が変化してしまうという不具合を防止するようになっている。
【0103】
同時に、シール部材17kとシール部材17jとは、回転軸20の回転駆動エアシリンダ(駆動手段)において加圧空間となる内部空間22hに対する2重シール部として機能しており、回転駆動エアシリンダの収縮中に、回転軸20における1重目のシールであるシール部材17kが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)を溝17pおよび第2連通路42Aを介してケーシング14外部に逃がして、ケーシング14B内において内部空間22h側から供給路41となる溝17dに圧縮空気が放出されてしまう等、溝17dと内部空間22hとの間で圧力状態が変化してしまうという不具合を防止するようになっている。
【0104】
これらの溝17d、内部空間22hは、いずれも加圧空間であるが、所定の動作に対応する圧力状態が、シール部の破れによって変化した場合、中立弁体5の厚さがいきなり膨張する、中立弁体5が回動動作するといった予期せぬ動作を起こしてしまうことを防止するものである。
つまり、シール部材17k、シール部材17j、溝17pおよび第2連通路42Aにより、スライド弁1がシール破れによって破損する等を防止することができる。
【0105】
流体経路リング18の内周面18bにおいて、シール部材18kとシール部材18jとの間には、径方向リング経路18cに連通する溝18dが設けられ、シール部材18jとシール部材18hとの間には、溝18pが周設されている。
この溝18pと対向する回転軸20の外周面20bとは、大気圧の空間(空隙)である第2中間大気室を形成するとともに第2連通路42Aによって、ケーシング外部に接続されている。
【0106】
これらシール部材18jとシール部材18hとは、回転軸20の回転駆動エアシリンダ(駆動手段)において加圧空間となる内部空間22hに対する2重シール部として機能しており、回転駆動エアシリンダの収縮中に、回転軸20における1重目のシールであるシール部材18hが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)を溝18pおよび第2連通路42Aを介してケーシング14外部に逃がして、ケーシング14B内において内部空間22h側から連通路42となる溝18dに圧縮空気が放出されてしまう等、溝18dと内部空間22hとの間で圧力状態が変化してしまうという不具合を防止するようになっている。
【0107】
これにより、内部空間22hは加圧空間であり、所定の動作に対応する圧力状態が、シール部の破れによって変化した場合、中立弁体5が回動動作するといった予期せぬ動作を起こしてしまうことを防止するものである。
つまり、シール部材18h、シール部材18j、溝18pおよび第2連通路42Aにより、スライド弁1がシール破れによって破損する等を防止することができる。
【0108】
なお、ピニオン21の収納される内部空間22hが、加圧空間とはならない場合には、図34に示すように、溝17p、溝18p、および、第2連通路42Aを設けない構成も可能である。この場合、さらに、シール部材17j、18jを設けないこともできる。
【0109】
また、溝17dおよび溝18dには、図26に示すように、その回転軸20の外周面20b側開口位置に、テーパ面17m、テーパ面18mが設けられて、拡径されている。
このテーパ面17m,18mは、流体経路リング17,18の径方向に奥行き寸法Tt1を有し、この奥行き寸法Tt1は、シール部材17h,17j,17k,18h,18j,18kがOリングとされた場合に、シール時における潰し代ではなく、回転軸20が流体経路リング17,18と接触しない状態で、このO−リングが回転軸20の外周面20bかた突出した高さ寸法Tt2よりも大きくなるように設定される。
【0110】
また、テーパ面17m,18mは、流体経路リング17,18内周面の径方向の法線となす角度θが45°以上、好ましくは30°以上となるように設定される。
これにより、回転軸20のケーシング14への組み付け時に、O−リングが溝17d,18dの開口部分に引っかかって破損するなどの不具合を防止することができる。
なお、テーパ面17m,18mは、O−リングの破損が可能であれば、この形状に限定されるものではない。
【0111】
さらに、溝17dおよび溝18dの回転軸20の外周面20b側開口位置には、テーパ面17m,18mの代わりに、図33に示すように、角を丸めた曲面17n,18nを形成することもできる。
この曲面17n,18nの奥行き寸法Tt1は、同様に、O−リングが回転軸20の外周面20bかた突出した高さ寸法Tt2よりも大きくなるように設定されることができる。
【0112】
円筒ケーシング14Bのシールケーシング14A側には、径方向に延在するリーク流路14Heが設けられる。このリーク流路14Heは、図10(b)に示すように、軸受16Aよりもシールケーシング14A側となるとともに回転軸20の表面20bと接するリーク空間22Heに連通している。
【0113】
リーク空間22Heと接する回短軸20の内部には、軸方向リーク流路27Heが設けられ、この軸方向リーク流路27Heは、その一端が、図10(a)および図11(b)に示すように、リーク空間22Heに開口するとともに、軸方向リーク流路27Heの他端は、後述するように、図10(b)および図12に示すように、回転軸20の中心に軸線方向に貫通し接続部材91を介して回転軸20と中立弁部30とを締結するための雄ネジ(締結具)21を貫通させる貫通穴21Aに向けて開口している。
【0114】
貫通穴21Aは、接続部材91の開口98および中立弁部30に設けられ、雄ネジ21を螺合する雌ネジ(締結具)31のある空間31Heに連通している。
後述するように雄ネジ21は、図12に示すように、締結されている雌ネジ31のある空間31Heまでネジ溝のない開口98を貫通している。この空間31Heは溝95B側が、図示しない閉塞部材によって閉塞されている。
【0115】
中立弁部30の空気溜まり空間31Heは、その先の溝95B側における図示しないOリング等による封止が破れているかを調べるヘリウムリークテストをおこなうことが必要である。このため、空気溜まり空間31Heは、開口98、貫通穴21A、軸方向リーク流路27He、リーク空間22He、リーク流路14Heを介してリーク空間22He側に連通され、ここから、空気溜まり空間31He、開口98、貫通穴21Aに対する密閉状態を検査するヘリウムリークテストのためにヘリウムの供給が可能となっている。
このように、軸方向リーク流路27Heおよびリーク流路14Heを設けることで、空気溜まり空間31He、開口98、貫通穴21Aに対するヘリウムリークテストが可能となる。
【0116】
同時に、リーク流路14Heから、回転軸20の表面20bに沿ったシール手段としてのシール部14Aa、14Ab,14Acおよび、大気圧の空間(空隙)である中間大気室14Adに対して、中空部11へのシールテストをおこなうことが可能となる。つまり、として、リーク流路14Heから、リーク空間22He側にヘリウムを供給し中空部11に対するリークを調べることで、ヘリウムリークテストをおこなうことが可能となる。
【0117】
さらに、リーク流路14Heは、シール部材17h,17j,17k、シール部材17e,17f,17gなどによる封止が破綻して、加圧空間である内部空間22hおよび径方向リング経路17c、溝17dなどから、圧縮空気がリーク空間22Heに漏れだした場合に、この圧縮空気を外部に逃がすことができる。これにより、シール部14Aa、14Ab,14Acに圧力が加わることを防止して、漏れた圧縮空気が中空部11へ流入してしまうことが防止できる。
【0118】
[中立弁部30、接続部材91]
中立弁部30は、回転軸20の軸線に対して直行する方向に延在し、この方向に平行な面を有している。図1に示すように、中立弁部30は、可動弁部40に重なる円形部30aと、回転軸20の回転に伴って円形部を回転させる回転部30bとを有する。回転部30bは、回転軸20と円形部30aとの間に位置しており、回転部30bの幅は回転軸20から円形部30aに向けて徐々に増加している。これら回転軸20、中立弁部30は、弁箱10に対して回動はするが、流路H方向には位置変動しないように設けられている。
【0119】
中立弁部30の一端には、図13に示すように、接続部材91の突起部93と嵌合する凹部95が形成されている。この凹部95は、その断面形状が接続部材91の断面形状と合致する略T字状を成す。こうした凹部95は、中立弁部30の流路方向Hにおける一面側30Aと他面側30Bの両側に、それぞれ凹部95A,95Bとして形成されている。これによって、回転軸20は、中立弁部30に対して流路方向Hに沿った上側と下側のいずれにも選択的に接続することができる。
【0120】
あるいは、回転軸20に対して、中立弁体5全体を両面どちらにも取り付けることができる。即ち、接続部材91の凹部95Aの側に中立弁体5を取り付ければ、スライド弁1の閉弁時において、可動弁部40が第1開口部12aを塞ぐ向きとなる。逆に、接続部材91の凹部95Bの側に中立弁体5を取り付ければ、可動弁部40が第2開口部12abを塞ぐ向きにとなる。
【0121】
図13に示すように、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とは互いに嵌合される。図13(a)に示すように、接続部材91と中立弁部30とは、係合状態において、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1で離間した一組の第1平行面96a,96bと、流路方向Hに沿って互いに平行に広がり第1間隔t1よりも広い第2間隔t2で離間した一組の第2平行面97a,97bとで互いに接触している。
【0122】
こうした一組の第1平行面96a,96b、および一組の第2平行面97a,97bは、それぞれ、流路方向Hに直角に延びる一軸Lを挟んで対称に配される。また、第1平行面96a,96bと第2平行面97a,97bとは、この一軸Lに沿って互いに重ならない位置に配される。
【0123】
接続部材91の突起部93には、図13に示すように、この一組の第1平行面96a,96bを構成する第1接触面93a,93bと、第2平行面97a,97bを構成する第2接触面93c,93dとが形成されている。そして、これら第1接触面93a,93bと第2接触面93c,93dのそれぞれを繋ぐ第1傾斜面93e,93fとともに、突起部93は全体として2段階の幅を持つ突起形状を成している。
【0124】
中立弁部30の一端に形成された凹部95は、図13に示すように、一組の第1平行面96a,96bを構成する第三接触面95a,95bと、第2平行面97a,97bを構成する第四接触面95c,95dとが形成されている。そして、これら第三接触面95a,95bと第四接触面95c,95dのそれぞれを繋ぐ第2傾斜面95e,95fとともに、凹部95は全体として2段階の幅を持つ溝形状を成している。
【0125】
回転軸20の中心には、図12に示すように、接続部材91を介して回転軸20と中立弁部30とを締結するための雄ネジ(締結具)21を貫通させる貫通穴21Aが形成されている。また、中立弁部30の一端に形成された凹部95には、雄ネジ(締結具)21と螺合する雌ネジ31が形成されている。更に、接続部材91には、雄ネジ(締結具)21を貫通させるネジ溝のない開口98が形成されている。
【0126】
以上の構成によって、接続部材91に形成された突起部93と、中立弁部30に形成された凹部95とを嵌合させ、更に、回転軸20の上端側から、雄ネジ21を貫通穴21Aおよび開口98に貫通させ、雄ネジ21の先端部分を、中立弁部30の雌ネジ31にネジ止めすることにより、回転軸20と中立弁部30とは、接続部材91を介して締結(固定)される。
【0127】
中立弁部30のメンテナンス、例えば、繰り返し開閉による中立弁部30の交換等で、中立弁部30を回転軸20に固着された接続部材91に取り付ける際には、中立弁部30の一端に形成された凹部95を接続部材91に形成された突起部93に対向させる。
次に、中立弁部30の凹部95を突起部93に差し込むと、凹部95の第三接触面95a,95bが、それぞれ突起部93の第1接触面93a,93bに接触する。また、凹部95の第四接触面95c,95dが、それぞれ突起部93の第2接触面93c,93dに接触する。
【0128】
こうした挿入工程での凹部95と突起部93との接触面は、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bに限られ、突起部93の第1傾斜面93e,93fと、凹部95の第2傾斜面95e,95fとは接触しない。つまり、矢印B1で示す方向である接続方向において、回転軸20の軸線を挟んだ両側位置となる部分で周方向の取り付け位置を規制することができるので、取り付け位置、特に、回転軸20の軸線周りの中立弁部30の取り付け方向の正確性を容易に向上することができる。
【0129】
同時に、例えば、凹部95と突起部93との接触面(第1平行面96a,96b、第2平行面97a,97b)のクリアランス(隙間)を極めて小さく設定しても、凹部95を突起部93に押し込む際の摩擦力が軽減され、スムーズに凹部95と突起部93とを嵌合させることができる。
【0130】
また、互いに幅の異なる第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bで凹部95と突起部93とを接触させることによって、凹部95を突起部93に押し込む際の取付精度を向上させると共に、取付時に摩擦力の軽減によって、容易にその取付位置、即ち突起部93に対する凹部95の押し込み量を調整することができる。即ち、凹部95と突起部93との係合時には、凹部95に形成されためねじ31のネジ穴位置を、接続部材91の突起部93に形成された開口98と合致させる必要がある。
【0131】
本実施形態のように、第1平行面96a,96b、および第2平行面97a,97bだけで凹部95と突起部93とを接触させることで、雌ネジ31のネジ穴位置と突起部93に形成された開口98とを容易に微調整しつつ合致させることができる。これによって、回転軸20の貫通穴21Aから開口98を介して雄ネジ(締結具)21を容易に雌ネジ31に締結することができる。また、端面93mと端面95mとを接触させることで、図13において矢印B1で示す方向である接続方向における互いの位置決めをおこなうことも可能である。
【0132】
なお、この実施形態においては、接続部材91に突起部93を、また中立弁部30の一端に凹部95を設けているが、凹凸が逆の構造とすることもできる。つまり、回転軸20に固着される接続部材に凹部を形成して、この凹部と嵌合する突起部を中立弁部の一端に形成する構造である。
【0133】
[可動弁部40、第2可動弁部(可動弁板部)50、第1可動弁部(可動弁枠部)60]
可動弁部40は略円板状とされ、円形部30aと略同心円状に形成された可動弁板部50と、この可動弁板部50の周囲を囲むように配置された略円環状の第2可動弁部60とを有する。第2可動弁部60は、中立弁部30に流路H方向に摺動可能として接続されている。
【0134】
また、可動弁板部50は、第2可動弁部60に摺動可能として嵌合されている。可動弁板部50と第2可動弁部60とは、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80によって符号B1,B2で示された方向(往復方向)に摺動しながら移動可能である。ここで、符号B1,B2で示された方向とは、可動弁板部50および第2可動弁部60の面に垂直な方向であり、回転軸20の軸方向に平行な流路H方向である。
【0135】
また、可動弁板部50の外周付近における全領域には、内周クランク部50cが形成されている。また、可動弁枠部60の内周付近における全領域には、外周クランク部60cが形成されている。
第1実施形態においては、外周クランク部60cと内周クランク部50cとが、流路H方向と平行な摺動面50b、60bどうしで摺動可能に嵌合している。
【0136】
弁箱10の内面に対向(当接)する可動弁枠部60の表面には、第1開口部12aの形状に対応して円環状に形成された、例えば、Oリング等からなる第1シール部61(主シール部)が設けられている。
この第1シール部61は、閉弁時に可動弁部40が第1開口部12aを覆っている状態で、第1開口部12aの周縁となる弁箱10の内面15aに接触し、可動弁枠部60及び弁箱10の内面によって押圧される。これによって、第1空間は第2空間から確実に隔離される(仕切り状態が確保される)。
【0137】
[メインバネ(第1付勢部)70]
メインバネ(第1付勢部)70は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに隣接した第1周囲領域40bに配置されている。メインバネ70においては、可動弁枠部60を第1開口部12aに向けて(B1方向)に押圧するように、同時に、可動弁板部50を第2開口部12bに向けて(B2方向)に押圧するように復元力が生じている。
【0138】
これにより可動弁部40による弁閉状態において、メインバネ70は、可動弁板部50に力を加え(付勢し)、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bに向けて可動弁板部50を押圧して内面15bと可動弁板部50の反力伝達部59とを当接させているとともに、同時に、可動弁枠部60に力を加え(付勢し)、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに向けて可動弁枠部60を押圧して内面15aと可動弁枠部60の第1シール部61とを当接させている。
【0139】
第1実施形態においては、メインバネ70は、可動弁板部50に第2開口部12b側を向いて開口するよう設けられた凹部50aとこの凹部50aの対向位置に可動弁枠部60に第1開口部12a側を向いて開口するよう設けられた凹部60aとに嵌め込まれて設けられた弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
【0140】
メインバネ70は、第1端と第2端とを有する。第1端は、可動弁板部50の凹部50aの底面に当接している。第2端は、可動弁枠部60の凹部60aの天井面に当接している。また、図1に示すように、円環状の可動弁枠部60において、複数の第1付勢部70が周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0141】
メインバネ70を構成する弾性部材の自然長は、可動弁枠部60のシール部61と、可動弁板部50の反力伝達部59とが、それぞれ、弁箱10の内面15aと内面15bとを押圧する可動弁部40の最大厚さ寸法となった状態における可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面との間の距離よりも大きい。このため、可動弁板部50の凹部50aの底面と可動弁枠部60の凹部60aの天井面とによって圧縮されつつ凹部50aおよび凹部60aの内部に配置されているメインバネ70においては、弾性復元力(延伸力,付勢力)が生じている。この弾性復元力が作用することにより、可動弁枠部60がB1方向に、同時に、可動弁板部50がB2方向に摺動しながら、第1シール部61および反力伝達部59が弁箱10の内面に当接して押圧され、閉弁動作が行われる。
【0142】
また、メインバネ70は、第1シール部61に対する押圧力を効率よく伝達してスライド弁1の閉塞を確実にするために、第1シール部61に近接した第2周囲領域40bに配置される。具体的には、第1シール部61直下のすぐ外周位置には後述する反力伝達部59となる突条が位置するのに対し、可動弁板部50の径方向位置として、この第1シール部61を挟んだ突条(反力伝達部)59の反対側位置にメインバネ70は位置される。これにより、メインバネ70の付勢力は効率よく可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とに伝達され、第1シール部61の変形による弁の密閉の確実性を向上することができる。
【0143】
また、メインバネ70は、第1シール部61を直接押圧できるようにするために、第1シール部61の直下付近とされる第2周囲領域40bに配置されることもできる。この場合、スライド弁においては、第1付勢部70を可動弁枠部60に設けられているので、第1付勢部70を第1シール部61の直下に位置させることが可能である。
【0144】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行う第2付勢部80(後述)とが近接して設けられている。この構成において、メインバネ70及び第2付勢部80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域(第1周囲領域40a及び第2周囲領域40b)において、互いに近接するように径方向に隣接して配置されている。また、メインバネ70は、第1シール部61の直下付近に位置している。つまり、スライド弁1の構造は、第1シール部61、反力伝達部59、メインバネ70の位置関係が、作用点及び支点が存在するモーメント荷重を加える構造として効率よくシールをおこなうことができるように構成される。
【0145】
さらに、メインバネ70の付勢力が可動弁板部50と可動弁枠部60とを拡げる方向、つまり、可動弁部40の厚さを増大して、可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59とを弁箱10の内面15a,15bに押圧する方向に設定されているので、停電等によってユーティリティ設備からスライド弁1を備える装置への電力供給(エネルギー供給)が停止した場合であっても、メインバネ70において生じる機械的な力のみで確実にスライド弁1を閉じることができる。このため、フェイルセーフなスライド弁を確実に実現できる。
【0146】
一方、スライド弁40の厚さを減じる付勢がおこなわれているもの、あるいは、ユーティリティ設備から供給される電力等のエネルギーによって閉弁動作が行われている構造を有するスライド弁においては、ユーティリティ設備から装置へのエネルギー供給が停止した場合に閉弁動作を行うことができない場合がある。このため、このような構造においては、フェイルセーフなスライド弁を実現できない。
【0147】
[円環状エアシリンダ(第2付勢部)80]
円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の最外周となる第1周囲領域40aに配置されている。円環状エアシリンダ80においては、円環状エアシリンダ80に駆動流体として圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて(B2方向)移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。同時に、可動弁板部50を第1開口部12aに向けて(B1方向)に移動させる力(付勢力、圧縮空気に起因する力)が生じる。これによって、メインバネ70の付勢力に打ち勝って、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから可動弁枠部60を離間させるのと同時に、第2開口部12bの周囲に位置する弁箱10の内面15bから可動弁板部50を離間させる。
これにより、後述する補助バネ(第3付勢部)90の付勢力により体40は流路H方向において弁箱10の厚さ中央位置となりの弁箱10内で回動可能な状態となる。
【0148】
なお、可動弁部40において、第1周囲領域40aは、円環状である可動弁枠部60のシール部61と可動弁板部50の反力伝達部59との内側に位置する。同時に、可動弁部40において、第2周囲領域40bは、第1周囲領域40aの内側に位置する。即ち、可動弁部40の径方向において、メインバネ70は、円環状エアシリンダ80の内側に配置されている。言い換えれば、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向(流路H方向)に交差する方向においてメインバネ70に隣接している。つまり、円環状エアシリンダ80は、可動弁部40の径方向において、シール部61および反力伝達部59、と、メインバネ70との間に位置する。
【0149】
第1実施形態においては、円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つのエアシリンダ(空隙)である。
具体的に、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の第1開口部12aに向けて開口した凹部60dと可動弁板部50の第2開口部12bに向けて突出した凸部50dとが勘合した状態で形成され、これら環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動するように形成されている。また、この円環状エアシリンダ80は、可動弁枠部60の周縁部に形成された円環状の空間、および、可動弁板部50の最外周に形成された突条(環状凸部)からなり、1つの円環シリンダ(円環空隙)として機能する。また、言い換えると、円環シリンダは、流路Hを囲むように形成されている。
【0150】
円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給されると、第2付勢部80の体積を膨張させる膨張力(付勢力)がB1,B2方向に生じる。膨張力の大きさがメインバネ70に生じる復元力よりも大きい場合、この膨張力がメインバネ70の付勢力に打ち勝ってメインバネ70が圧縮され、可動弁板部50がB1方向に可動弁枠部60がB2方向に摺動して弁体40の厚さ方向寸法が縮小して、第1シール部61が弁箱10の内面15aから離間し、同時に、反力伝達部59が弁箱10の内面15bから離間して、開弁動作が行われる。この際、円環状の凹部60dと凸部50dとが摺動することで、可動弁板部50と可動弁枠部60との移動する方向が流路方向のみに規制されるとともに、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、シール部61および反力伝達部59が弁箱10内面15a、15bに当接した状態から平行移動するように位置規制される。つまり、この円環状エアシリンダ80は可動弁板部50と可動弁枠部60との相対移動方向とその姿勢を規制することができる。
【0151】
[補助バネ(第3付勢部)90]
補助バネ90は、中立弁部30と可動弁枠部60との間に設けられ、弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置する中立弁部30に対して、弁体40の厚さ寸法が縮小した際に、弁体40を弁箱10の中央よりに付勢するものである。
補助バネ90は、中立弁部30の外周位置(図2,図4では右側位置)に設けられた開口30aを貫通して可動弁枠部60に接続された棒状の位置規制部65に設けられている。補助バネ90もメインバネ70と同様に弾性部材(例えば、スプリング、ゴム、密閉されたエアダンパーなど)である。
補助バネ90は、中立弁部30開口30aの第1開口部12a側に設けられたフランジ部30bと、位置規制部65の先端65aとに係止されて、可動弁枠部60を第2開口部12b側に移動するB2に向かう向きに付勢されている。
【0152】
補助バネ90は、この中立弁部30より第1開口部12a側に位置する可動弁枠部60を第2開口部12bに向けて付勢して、第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aに可動弁枠部60のシール部61が当接している場合であって、円環状エアシリンダ80に駆動用流体である圧縮空気が供給された際に、可動弁枠部60が第1開口部12aの周囲に位置する弁箱10の内面15aから離間するように付勢している。
【0153】
これにより、円環状エアシリンダ80に圧縮空気が供給された際に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に向かって移動し、最終的に、弁体40が弁箱10の流路方向ほぼ中央に位置するように姿勢制御される。また、補助バネ90の付勢力は、メインバネ70の付勢力と円環状エアシリンダ80の付勢力の差よりも遙かに小さいものとされる。つまり、弁閉状態を実現するための能動的バネあるいは、アクチュエータとしてのメインバネ70や円環状エアシリンダ80に比べて、弁体の厚さ寸法を変化させるものであるから極めて小さなものでよい。
【0154】
このように、スライド弁1においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、弁体40厚さを増大する動作を行うメインバネ70と、弁体40厚さを縮小する動作を行う円環状エアシリンダ80と、弁体40を流路方向において弁箱10中央位置側にする姿勢制御をおこなう補助バネ90と、が設けられている。
【0155】
この構成において、メインバネ70及び円環状エアシリンダ80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域において、互いに近接するように並列に配置されている。円環状エアシリンダ80は、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つの円環シリンダを構成している。この構成によれば、一方向に圧縮空気第2付勢部80に供給する供給路41が1つ設けられていれば、圧縮空気を円環状エアシリンダ80に沿ってこの円環シリンダの内部に供給することができ、弁体40の厚さ寸法の伸縮(開弁動作及び閉弁動作)を行うことができるとともに、この動作中において補助バネ90により弁体40の伸縮に伴う弁体40の流路方向位置を弁箱10中央付近に容易に維持することができる。このため、簡易かつコンパクトな構成を有するアクチュエータを実現することができる。
【0156】
また、円環状エアシリンダ80は、開弁動作を行うために用いられるので、第2付勢部80において発生する力の大きさ(出力)として、第1付勢部70を圧縮することができる大きさ(出力)があれば十分である。
【0157】
第1実施形態においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とによって1つの厚さ方向寸法を可変な可動弁部40が構成されているので、2枚の可動弁部を設ける必要がなく、簡単かつコンパクトな構造を有する可動弁部を実現することができる。
【0158】
また、中立弁部30にはアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、中立弁部30には振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。また、回転軸20にもアクチュエータの力、特に弁閉状態を維持するように弁体40を密閉する際にかかる力が作用しない。このため、回転軸20振り子弁として弁体を揺動するに足る強度があれば充分である。同時に、回転軸20に弁密閉するためのモーメントが必要なものに比べて、弁体40の揺動機構の出力を抑えることができるので、この回転軸20の回動機構を小型化することができる。
この構造においては、剛性として、上記中立弁部30の強度に加えて、退避位置と弁開閉位置の間で可動弁部40を回動させる際にその自重を支える強度があれば十分である。
【0159】
図2は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに嵌合されている部分および中立弁部30と可動弁板部50とが互いに嵌合されている部分を示す拡大縦断面図であり、第1付勢部70及びガイドピン62が設けられた部位を示している。
【0160】
[第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52b]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面には、可動弁枠部60の環状凹部60dの内周面に当接し、可動弁板部50と可動弁枠部60との間をシールする2重シール部として、Oリング等の円環状の第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが設けられている。
【0161】
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fに第2シール部51a,51bが設けられている。また、径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gに、第3シール部52a,52bが設けられている。第2シール部51a,51bは、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、第3シール部52a,52bは、可動弁枠部60の第2外周面60gに当接する。
【0162】
第2シール部51a,51bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第1開口部12aに近い中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第2開口部12bに中空部11とを仕切り、仕切り状態を確保する。
【0163】
第2シール部51a,51bは、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、例えば圧力が低い空間である第1開口部12aに連通する第1空間側とを遮断するものであり、この仕切り状態を確保することができる。同様に、第3シール部52a,52bは、圧力が高い空間である円環状エアシリンダ80と、圧力が低い空間であって第2開口部12bに近い第2空間側とを仕切り、仕切り状態を確保することができる。
【0164】
[ガイドピン62]
ガイドピン62は、可動弁枠部60に固設されて流路方向に立設された太さ寸法均一の棒状体とされ、円環状エアシリンダ80内を貫通し、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに形成された孔部50hに嵌合している。
このガイドピン62は、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向が符号B1,B2に示された方向からずれないように、かつ、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動した際にもその姿勢が変化せずに平行移動をおこなうように、これらの位置規制を確実に誘導する。
【0165】
これによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とが、符号B1,B2に対して斜め方向に移動することを防止している。同時に、可動弁枠部60は、弁閉状態としてシール部61と反力伝達部59とがそれぞれ弁箱10の内面15a,15bに当接した状態に対して、可動弁板部50と可動弁枠部60との流路方向位置が変化した場合でも、これらが平行状態を維持して平行移動し、可動弁板部50と可動弁枠部60とが傾いてしまうことを防止している。
【0166】
この構造においては、可動弁板部50と可動弁枠部60とが互いに位置決めされつつ、符号B1及びB2で示された方向に平行状態を維持したまま相対的に移動し、閉弁動作及び開弁動作を行うことができる。これによって、開弁動作においては、可動弁枠部60に設けられた第1シール部61に均一に押圧力を生じさせ、リークが抑制されたシール構造を実現できる。
【0167】
また、このようにガイドピン62を備えた構造においては、スライド弁1が真空装置に取り付けられる姿勢が決められていない場合、即ち、スライド弁1が取り付け方向が自由である場合に、弁体40の重量の負荷が第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bに局所的に加わることを防止することができる。例えば、可動弁板部50と可動弁枠部60とが摺動する方向に対して直角に重力が作用するようにスライド弁1が取り付けられている場合、摺動する部材である可動弁板部50と可動弁枠部60との重量がガイドピン62に加わる。このため、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52b(O−ring)に可動弁板部50と可動弁枠部60との重量が直接的に加わることを防止される。これにより、スライド弁1が取り付けられる姿勢がいかなる姿勢であっても、シール部の寿命が短くならず、リークを防止する効果を確保・維持することができる。
【0168】
ガイドピン62と孔部50hとの摺動面の面積を低減するため、また、スライド弁1の外部である第1空間及び第2空間からガイドピン62を隔離するために、ガイドピン62は、円環状エアシリンダ80内を貫通するように配置されている。
また、このように、円環状エアシリンダ80内にガイドピン62を配置することにより、可動弁板部50と可動弁枠部60とを互いに滑らかに摺動させることができる。
【0169】
なお、ガイドピンの強度が十分に得られていれば、大口径を有するスライド弁においても、可動弁部60が摺動する方向がずれることが防止される。また、ガイドピン62は、特殊な形状を有する可動弁部においても流路と直行する面内配置を設定して荷重を適宜分散することでより一層開閉動作の良好なスライド弁として適用可能である。
【0170】
ガイドピン62には、図28に示すように、その先端と可動弁枠部60側に形成された内部空間62aに連通する開口を有し、ガイドピン62内部を貫通する軸方向経路62bが設けられその基部側が、連絡路42に接続されている。また、円筒状の内部空間62aは、中立弁部5の径方向内側および外側に向かう経路42aを介してガイドピン62中心側に位置する中間大気室55,56にそれぞれ連通されている。ガイドピン62の可動弁板部50側となる先端側には、Oリング等とされるシール部材62cが設けられて孔部50hとの摺動面をシールしている。
【0171】
[ワイパー53,54]
可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向外側に位置する第1外周面50fには、可動弁部60の内周面に当接する円環状のワイパー53が設けられている。同様に、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの径方向において第1外周面50fの内側である第2内周面50gには、可動弁部60の外周面に当接する円環状のワイパー54が設けられている。
【0172】
ワイパー53は、第2シール部51a,51bと同様にして、可動弁枠部60の第1内周面60fに当接し、ワイパー54は、第3シール部52a,52bと同様にして、可動弁枠部60の第1外周面60gに当接する。
ワイパー53,54、第2シール部51a,51b、第3シール部52a,52bは、いずれも、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dに配置されている。第2シール部51aは、第1開口部12a(第1空間)に近い位置に配置されている。第3シール部52aは、第2開口部12b(第2空間)に近い位置に配置されている。
【0173】
これらのワイパー53,54は、開弁動作及び閉弁動作によって環状の凹部60dと環状の凸部50dとが摺動する円環状エアシリンダ80において、その可動弁枠部60の凹部60dの内周面を潤滑あるいは清掃し、上記摺動によって発生するダスト及び円環状エアシリンダ80から発生するダストを第1空間及び第2空間に放出させない機能を有する。
また、ワイパー53,54を構成する部材(材料)として、例えば、スポンジ状のポーラスな弾性体を選択すれば、その部材の内部に潤滑油を浸透(保持)させておくことができる。
【0174】
これにより、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bによってシールされるシール面に一定の膜厚を有する薄い油膜が形成された状態を維持することが可能となる。つまり、ワイパー53,54は、余剰な油膜を拭き取り、油膜が枯渇した際には一定の膜厚を有する油膜を塗布する。
【0175】
[中間大気室55,56]
第2シール部51a,51bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室55が設けられている。同様に、第3シール部52a,52bによって仕切られた円環状エアシリンダ80の表面には、大気圧の空間(空隙)である中間大気室56が設けられている。
具体的には、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの外周面50fで第2シール部51a,51bによって仕切られた部分に中間大気室55が設けられている。また、可動弁板部50の環状凸部(突条)50dの内周面50gで第3シール部52a,52bによって仕切られた部分に中間大気室56が設けられている。中間大気室55は、可動弁枠部60の第1内周面60fと可動弁板部50の外周面50fに設けられた溝とで形成された空間であり、中間大気室56は、可動弁枠部60の第1外周面60gと可動弁板部50の第2内周面50gに設けられた溝とで形成された空間である。
【0176】
そして、これらの中間大気室55,56は、後述する供給路41と同様の構成とされた図示しない連絡路によってスライド弁1の外部に連通され、円環状エアシリンダ80の加圧中に1重目のシールが破れた場合でも、圧縮空気(駆動用気体)をスライド弁外部に向けて逃がして、圧縮空気が弁箱10内部に放出されてしまうことを防止するようになっている。
【0177】
つまり、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第2シール部51bが破れた際に、2重目のシールである第2シール部51aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室55および連絡路が設けられている。また、加圧状態にある円環状エアシリンダ80に対して、1重目のシールである第3シール部52bが破れた際に、2重目のシールである第3シール部52aより気体供給側に、駆動用気体をスライド弁外部に向けて逃がす中間大気室56および連絡路が設けられている。
これにより、圧縮空気が弁体10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0178】
同時にまた、これらの中間大気室55,56の圧力は、連絡路によりモニタ可能である。即ち、圧力計が中間大気室55,56の圧力を測定するようにスライド弁1外部に設けられるとともに連絡路によって接続されており、ユーザによってその圧力が監視される。
例えば、第1開口部12aに近い第1空間が減圧空間であり、第2シール部51aが破損している場合においては、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第2シール部51bが破損している場合には、中間大気室55の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0179】
同様に、第2開口部12bに近い第2空間が減圧空間であり、第3シール部52aが破損している場合においては、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも低くなる。
また、圧縮空気が供給されている円環状エアシリンダ80内の圧力は大気圧よりも高くなるため、第3シール部52bが破損している場合には、中間大気室56の圧力は、大気圧よりも高くなる。
【0180】
このようにスライド弁1は、中間大気室55,56の圧力をモニタする構造を有することができるので、例えば、中間大気室55,56の圧力値が大気圧よりも低い圧力であって閾値の圧力よりも低い場合、あるいは大気圧よりも高い圧力であって閾値の圧力よりも高い場合に、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常を検知することができる。
【0181】
例えば、と中間大気室55,56中あるいは連絡路にアラーム装置が設けられた構造、或いは、スライド弁1に接続された制御装置にアラーム装置が設けられた構造が採用されていれば、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bの異常をアラームによって報知することができる。従って、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bが破損し、内部リークがスライド弁1に発生し、メンテナンスが必要であることをすぐに認識することができる。
これにより、真空装置等の外部から検知することができない、スライド弁において発生した内部リーク等の不具合を確実に判断することができる。
【0182】
[接続ピン部69、供給路41]
スライド弁1には、図に二点差線で示すように、円環状エアシリンダ80に駆動用気体を供給する供給路41が形成され、この供給路41は、可動弁枠部60の躯体内部、および、中立弁部30の躯体内部、回転軸10内部を経由して、スライド弁1の外部に設けられた図示しない駆動用気体供給手段に連通するよう設けられている。
この供給路41には、可動弁枠部60と中立弁部30との流路方向位置が変化した際にも、可動弁枠部60と中立弁部30との間で駆動用気体を供給可能に摺動接続する接続ピン部69が設けられる。
【0183】
接続ピン部69は、中立弁部30に流路方向と平行に穿孔された円形断面の孔部38と、この孔部38に回動可能に勘合された棒状の接続ピン68とからなっている。孔部38の内面38aは、開口側の内面38aに比べて底部側の内面38bが縮径され、これに対応して、接続ピン68の径寸法も基部68aに対して先端68bが縮径している。そして、この径寸法が変化する部分にそれぞれ段差38c、段差68cが形成されている。
【0184】
接続ピン部69は、図に二点差線で示すように、その中心軸線付近に供給路41が形成されて管状となっており、可動弁枠部60内部の供給路41が連通されている。また、接続ピン68の先端面68daには供給路41が開口しており、この先端面68dと孔部38の底部38d付近とで形成される加圧空間69aには、中立弁部30躯体内に形成された供給路41が連通されている。
【0185】
駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に供給される。
【0186】
接続ピン部69においては、接続ピン68の外周面68aには孔部38の内周面38aが当接するとともに、接続ピン68の外周面68bには孔部38の内周面38bが当接している。
【0187】
接続ピン68には、孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動した場合でも、加圧面となる先端面68dと底面38dとの間ではなく、摺動方向となる面に、駆動用の圧縮空気が供給されて圧力が高い空間である加圧空間69aと、例えば圧力が低い空間である第2開口部1bに連通する第2空間側とを遮断する2重シール部が設けられる。
シール部は、加圧空間69aと中空部11との仕切り状態を確保できるものとされる。
【0188】
具体的には、接続ピン68には、接続ピン68と孔部38との間をシールする2重シール部として、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の太シール部68fが設けられるとともに、Oリング等とこれを埋設する周設溝とされる円環状の小シール部68gが外周面68bに設けられている。
【0189】
同時に、段差68cおよび段差38cで形成された円環状の中間大気室69cが、この2重シールの間にあり、図示しない連絡路42に連通されることで、圧縮空気が弁箱10内部に噴出して、スライド弁1内部、および、第1空間、第2空間、に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0190】
特に、加圧面となるとともにその距離が変化する先端面68dと底面38dとの間でシールするのではなく、直接的に加圧面とはならずかつ摺動面であり距離が変化しない外周面68aと内周面38aおよび外周面68bと内周面38bとの間でシールをおこなうので、より確実な密閉状態を維持することが可能となる。
このようなシール部68f、68gの構成によれば、上述した円環状エアシリンダ80における第2シール部(2重シール部)51a,51b及び第3シール部(2重シール部)52a,52bおよびガイドピン62の構成と同様の作用効果を奏することが可能となる。
【0191】
孔部38内で接続ピン68が軸線方向(流路方向)に移動中あるいは移動して流路方向の相対位置が変化した場合でも、駆動用気体供給手段から供給された圧縮空気は、中立弁部30内部の供給路41を介して空間69aに噴出し、この体積の変化した空間69aを介して、接続ピン部69内部の供給路41および可動弁枠部60内部の供給路41を介して円環状エアシリンダ80に安定的に供給される。
【0192】
[シーケンス回路SQ]
本実施形態においてスライド弁1は、図14に示すように、供給路41とされるOPENポートから円環状エアシリンダ(第2付勢部)80とメインバネ70とからなる単動エアシリンダに中立弁体30の厚さ収縮用の圧縮空気を供給するとともに、回転駆動エアシリンダ(駆動手段)110の伸張動作時に、OPENポートから伸通気口(供給路)114を介して伸圧力空間113aに伸張用の圧縮空気を供給し、回転駆動エアシリンダ110の収縮動作時に、CLOSEポートから供給路(縮通気口)22jを介して縮圧力空間22cに収縮用の圧縮空気を供給するシーケンス回路SQを有する。
【0193】
シーケンス回路SQは、OPENポートから、2チャンネル2方弁ttV、および、チェック弁と流量調整弁とが組み合わされたスピードコントロール弁NCV2を介して伸圧力空間113aに接続される。また、シーケンス回路SQは、OPENポートから、スピードコントロール弁NCV1、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート部ttV0、チェック弁CV3と並列にリミッタスイッチ弁cdS、および、メンテナンススイッチmSWを介して円環状エアシリンダ80に接続され、同時に、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート部ttV0に連続する流路が分岐して、チェック弁CV1を介して2チャンネル2方弁ttVおよびスピードコントロール弁NCV2の間に接続されている。
【0194】
また、シーケンス回路SQは、CLOSEポートから、チェック弁CV2と並列に2チャンネル2方弁ttV、および、スピードコントロール弁NCV3を介して縮圧力空間22cに接続されている。
スピードコントロール弁NCV1は、円環状エアシリンダ80および2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0からOPENポートに向かう側が順方向となるとともに、このスピードコントロール弁NCV1は2チャンネル2方弁ttVにおいてttV2からttV1への流れと平行となるように並列接続される。
スピードコントロール弁NCV2は、出力OP側から伸圧力空間113aに向かう側が順方向となるように接続され、スピードコントロール弁NCV3は、出力CL側から縮圧力空間22cに向かう側が順方向となるように接続される。
【0195】
チェック弁CV1は、出力OPおよび2チャンネル2方弁ttVのttV2側からエアオペレート側ttV0および円環状エアシリンダ80に向かう側が順方向となるとともに、チェック弁CV1は2チャンネル2方弁ttVにおいてttV2からttV1への流れと平行となるように並列接続される。
チェック弁CV2は、CLOSEポート側から縮圧力空間22cに向かう側が順方向となるとともに、チェック弁CV2は2チャンネル2方弁ttVにおいてttV3からttV4への流れと平行となるように並列接続される。
チェック弁CV3は、OPENポート側から円環状エアシリンダ80に向かう側が順方向となるとともに、チェック弁CV3はリミッタスイッチcdSで連通した流れと平行となるように並列接続される。
【0196】
円環状エアシリンダ80とチェック弁CV3との間には、手動で円環状エアシリンダ80を大気圧の外部Airに接続するように切り替え可能なメンテナンススイッチmSWが接続されている。このメンテナンススイッチmSWにより、出力ポイントFRおよび入力のOPENポートとCLOSEポートの圧力状態がどのような状態でも、円環状エアシリンダ80の圧力を低圧PLo状態にすることができる。
【0197】
2チャンネル2方弁ttVは、図21に示すように、エアオペレート側ttV0から駆動用圧縮空気を供給することで流路ttV1と流路ttV2とを接続・切断するとともに、同時に、流路ttV3と流路ttV4とを接続・切断するよう構成されている。このため、流路ttV1と流路ttV2と流路ttV3と流路ttV4とが貫通するように形成されたシリンダ状のケースttV9に、摺動可能な弁体ttV5が挿入されて、バネttV8等の付勢手段により、エアオペレート側ttV0に付勢されている。弁体ttV5には、その表面に流路溝ttV6,ttV7が形成されて、弁体ttV5の軸線に沿った摺動位置により、流路ttV1と流路ttV2とを接続・切断可能とされるとともに、流路ttV3と流路ttV4とを接続・切断可能とされる。また、ケースttV9のエアオペレート側ttV0と逆側には、バネttV8の付勢力を受けるとともに、図に矢印で示す軸線方向位置を調整可能に設定できる調整部材ttVaが設けられ、図示しない固定手段によってこの調整部材ttVaをケースttV9に固定する軸線方向位置を調節することで、バネttV8付勢力が変化し、エアオペレート側ttV0から供給する圧力において、チャンネル接続・切断の閾値を調節させることができる。
【0198】
チェック弁CV1、CV2,CV3は、図22〜24に符号CVで示すように、流路CVaから流路CVbには圧縮空気を流し、逆方向には流さない逆止弁である。チェック弁CVは、流路となるハウジングCVcに形成された凹部CVdと、この凹部CVdに挿入される有底円筒状のケースCVWと、ケース(ボールガイド)CVW内部に設けられた弁体となるボールCVBと、ボールCVBを流路CVa側に付勢するバネCVSとケースCVWと凹部CVdとの間をシールするシール部材CVrとからなる。
【0199】
チェック弁CVのケースCVWの外周面には、凹部CVdの開口部分に二重のフランジCVeが形成されて、これらの内側に位置するリング状シール部材CVrによって密閉される。ケースCVWは、凹部CVdの内側部分においては、凹部CVd内表面とケースCVW外周面とは接触していない部分を有するように外径寸法が設定される。
【0200】
また、ボールCVBの外径よりもケースCVW内径は大きく、ケースCVW内表面とボールCVB外周面とは常に接触していない部分を有する。
ケースCVW内周面には、図22〜24に示すように、中心軸線に向けて突出する3枚のフィン(ボールガイド)CVfが形成され、このフィンCVfの中心軸側端面CVf1がボールCVB外周面と常に接触している部分を有し、これにより、ボールCVBのケースCVW内での移動位置を規制している。ケースCVWには、周方向でフィンCVfどうしの間となる位置に、貫通孔CVgが形成されてケースCVW内外を連通状態としている。
【0201】
ケースCVWは、流路CVa側に開口する状態で配置され、軸線方向にほぼ同径寸法となるように配置されるフィンCVfの端面CVf1により、ボールCVWの移動方向が軸線方向に記載され、軸線方向の移動位置規制は、ケースCVWの開口側で弁座となるテーパ部CVaaおよび、ケースCVW底部側となるフィンCVfの端面CVf1が基端部側で縮径した箇所でおこなう。
【0202】
ボールCVBは、バネCVSにより流路CVa側に付勢されて、流路CVaに形成されたテーパ部CVaaに押圧されることで密着し、流路CVbから流路CVaに圧縮空気を流さない状態となる。流路CVaから加圧され、バネCVSの付勢力に打ち勝ってボールCVBをテーパ部CVaaから離間させると流路CVaから流路CVbには圧縮空気が流れる。また、バネCVS側のフィンCVfが軸線側に突出することで、ボールCVBの移動位置を規制している。
【0203】
この際、ケースCVW内周面にフィンCVfが形成されていることにより、ケースCVW内表面とボールCVB外周面とは常に接触していない部分、つまり、軸線方向におけるボールCVBの位置にかかわらず、ケースCVW内表面とボールCVB外周面との間で流路断面となる空間が存在している。このため、バネCVSの付勢力と流路CVaからの圧力で決まるどのような位置にボールCVBがあったとしても、ケースCVW内表面とボールCVB外周面との間で決まる流路断面の大きさは変化しない。
同時に、流路CVaから閉塞するテーパ部CVaaとボールCVB、ボールCVBとケースCVW内周面、貫通孔CVg、CVW外周面と凹部CVdの内面、流路CVbとして形成される流れが、ボールCVBの位置にかかわらず安定している。
【0204】
これにより、大流量あるいは、高流速で圧縮流体を流した場合でも、ケースCVW内表面とボールCVB外周面との間などで発生する流速変化により、ボールCVBとテーパ部CVaaとの位置が変動して、流量、流速が変動することがない。特に、ボールCVBがテーパ部CVaaに対して振動し、流量、流速が周期的に変動してしまうことを防止できる。
【0205】
したがって、大流量あるいは、高流速で圧縮流体を流すことが可能となるため、円環状エアシリンダ80および回転駆動エアシリンダ110の伸縮動作における出力を増大し、スライド弁1としての動作を高速化することができる。
【0206】
次に、シーケンス回路SQにおける圧力状態および、エアオペレート状態を説明する。
【0207】
図15は、駆動用の圧縮空気入力2系統と、出力3系統における圧力状態の変化を示すものである。ここで、OPENポート、CLOSEポート、FR,OP,CLの各点は、図14に示す各点に対応する。図16〜図20は、シーケンス回路SQにおける圧力状態を示すものであり、太線が高圧PHi状態を示し、細線が低圧PLo状態を示すとともに、二点差線は、実際の構成に対応する回路ブロックを示している。
【0208】
まず、スライド弁1が閉塞密閉している弁閉の状態を始状態とする。
このとき、中立弁部30は弁閉位置E2(図1)にあり、かつ可動弁部40の厚さが最大となっている。
【0209】
閉状態において、圧力状態としては、図15で丸数字1で示すように、入力側では、圧縮空気を供給する駆動用2系統の入力のうち、弁開動作をおこなうためのOPENポートには、圧縮空気は供給されずほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態であり、弁閉動作をおこなうためのCLOSEポートには、圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態とされる。また、出力側では、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80を動作させる出力ポイントFRではほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態、回転駆動エアシリンダ110の伸圧力空間113aを加圧する点OPではほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態、回転駆動エアシリンダ110の縮圧力空間22cを加圧する点CLでは圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態とされる。
【0210】
同時に、図16に示すように、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0も大気圧であるため、バネttV8による付勢力により図21の右方向に弁体が位置し、流路ttV1と流路ttV2、および、流路ttV3と流路ttV4がいずれも切断状態となっている。これにより、CLOSEポート、チェック弁CV2、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3が高圧PHi状態として連続することになり、縮圧力空間22cが加圧されて、回転駆動エアシリンダ110ではピストン112が縮位置Pbにある。
同時に、リミットスイッチcdSはピストン112が接触して連通状態となっている。
【0211】
次に、開動作として弁開のコマンドがonになったタイミングで、圧力状態としては、図15で丸数字2で示すように、入力側では、OPENポートには圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態となり、CLOSEポートには圧縮空気は供給されずほぼ大気圧同じ低圧PLo状態となるように切り替えられる。
これに伴って、図17に示すように、OPENポート、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0、チェック弁CV1まで、および、チェック弁CV3、リミットスイッチcdS、出力ポイントFRが加圧状態となり、図15で丸数字2で示すように、これらの回路の部分における圧力が上昇してゆく。
なお、この出力ポイントFRにおける圧力は、円環状エアシリンダ80の圧力をほぼ等しいと見なすことができる。
【0212】
この際、円環状エアシリンダ80の圧力上昇に伴って、可動弁板部50がB1方向に可動弁枠部60がB2方向に摺動することで、可動弁部40の厚さ方向寸法が縮小して、閉塞解除状態へと動作する。
この際、可動弁部40の回動動作は開始しないで、弁閉位置(解除位置)E2を維持する。
【0213】
同時に、図17に示すように、2チャンネル2方弁ttVが切断された状態であり、また、チェック弁CV1のために、流路ttV2、出力ポイントOP、スピードコントロール弁NCV2、伸圧力空間113aは、ほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態となる。同時に、2チャンネル2方弁ttVが切断された状態であり、また、チェック弁CV2のために圧力が抜けず、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3、縮圧力空間22cは、高圧PHi状態を維持している。
同時に、リミットスイッチcdSはピストン112が接触して連通状態となっている。
【0214】
OPENポートからの圧縮空気の供給が所定量となり、円環状エアシリンダ80がメインバネ70の付勢力に打ち勝って、OPENポート、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0、チェック弁CV1まで、および、チェック弁CV3、リミットスイッチcdS、出力ポイントFR、円環状エアシリンダ80の圧力が所定の閾値Pthを超えると、図15で丸数字3で示すように、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0の圧力が高くなり、バネttV8の付勢力に対抗して弁体ttV5が移動して図21(b)に示す連通状態となる。
【0215】
これにより、CLOSEポートから、2チャンネル2方弁ttVにおいてttV4からttV3への流れ、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3、縮圧力空間22cが連通して、縮圧力空間22cが減圧される。同時に、OPENポートから、2チャンネル2方弁ttVにおいてttV1からttV2への流れ、出力ポイントOP、伸圧力空間113aが連通し、伸圧力空間113aが加圧される。
その結果、回転駆動エアシリンダ110では、ピストン112が縮位置Pbから伸位置Pa側に向けて移動し、ピストン112が非接触となったリミットスイッチcdSが切断状態となる。これにより、チェック弁CVにより円環状エアシリンダ80は加圧状態を維持する。
【0216】
この際、縮圧力空間22cの減圧、伸圧力空間113aの加圧によるピストン112の移動に従って、回転軸20および中立弁体5が回動して、可動弁部40は弁閉位置(閉塞解除位置)E2(図1)から、退避位置E1(図1)に向けて回転動作する。
ここで、中立弁部30の回転動作中、つまり、ピストン112が縮位置Pbから移動している間は、円環状エアシリンダ80は加圧状態であるため、可動弁部40の厚さ方向寸法が縮小した状態を維持する。
このように、スライド弁1の開動作が終了すると、図15に丸数字3ダッシュで示すように、弁開の状態を維持する。
【0217】
なお、円環状エアシリンダ80の圧力閾値Pthとしては、弁体40の厚さ方向寸法が縮小動作が終了する状態で、なおかつ、高圧PHi状態以下であればよい。つまり、弁体40の厚さ縮小動作終了後に回転軸20の回転動作をおこなうという動作順を維持可能で、かつ、回転軸20の回転速度(回転)が、スライド弁1において要求される俊敏さを維持できる値となるように、
PLo < Pth < PHi
であればよく、さらに、回転軸20の回転が30°/sec(±1割)の場合に、
3 < Pth/PLo < 5
0.5 < (PHi−Pth)/PLo < 4
とすることができる。この圧力閾値Pth設定は、2チャンネル2方弁ttVにおいて、簡便にはバネttV8の付勢力を調節部材ttVaの固定位置によって調節することでおこなう。具体的には、これらの値を絶対圧表記として、PLo=1.0kgf/cm2(98.1kPa)、Pth=3.0〜5.0kgf/cm2(294.2〜490.3kPa)、PHi=5.5〜7.0kgf/cm2(539.4〜686.5kPa)、とすることができるが、これらの数値は、弁のサイズ、開閉速度の設定などによって変動させることができる。
【0218】
次に、開状態からの閉動作を説明する。
【0219】
閉動作として弁閉のコマンドがonになったタイミングで、圧力状態としては、図15に丸数字4で示すように、入力側では、CLOSEポートには圧縮空気が供給されて動作する高圧PHi状態となり、OPENポートには圧縮空気は供給されずほぼ大気圧同じ低圧PLo状態となるように切り替えられる。
【0220】
これに伴って、図19に示すように、CLOSEポート、チェック弁CV2、出力ポイントCL、スピードコントロール弁NCV3が高圧PHi状態として連続することになり、縮圧力空間22cが加圧されて、回転駆動エアシリンダ110ではピストン112が伸位置Paから縮位置Pbに移動し始める。このタイミングでは、リミットスイッチcdSはピストン112が非接触で切断状態となっている。
同時に、OPENポートからの減圧により、OPENポート、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0、チェック弁CV1、2チャンネル2方弁ttVにおいてttV2からttV1への流れ、出力ポイントOP、伸圧力空間113aが連通し、伸圧力空間113aが減圧される。
すると、2チャンネル2方弁ttVのエアオペレート側ttV0の圧力が所定の閾値Pthより低くなると、バネttV8の付勢力に対抗して弁体ttV5が移動して図21(a)に示す切断状態となる。
【0221】
同時に、開状態において、加圧状態であった円環状エアシリンダ80側では、リミットスイッチcdSが切断された状態であり、かつ、チェック弁CV3のために圧力が抜けず、出力ポイントFR、円環状エアシリンダ80は、高圧PHi状態を維持している。
これにより、回転駆動エアシリンダ110において伸圧力空間113aの減圧、縮圧力空間22cの加圧により、ピストン112が伸位置Paから縮位置Pbに向けて移動し始める。同時に、可動弁部40は退避位置E1(図1)から弁閉位置(閉塞解除位置)E2(図1)に向けて回転動作する。この際、可動弁部40の厚さ方向寸法が縮小した状態を維持する。
【0222】
可動弁部40の回転動作が終了して弁閉位置(閉塞解除位置)E2に到達すると、同時に、回転駆動エアシリンダ110において、ピストン112が縮位置Pbに到達する。これにより、ピストン112がリミッタスイッチcdSに接触して、リミッタスイッチcdSが連通状態になる。
これにより、圧力状態としては、図15で丸数字5で示すように、円環状エアシリンダ80および出力ポイントFRがOPENポートと連通して減圧される。
この際、メインバネ70の付勢力により円環状エアシリンダ80の圧力下降に伴って、可動弁板部50がB2方向に可動弁枠部60がB1方向に摺動することで、可動弁部40の厚さ方向寸法が拡大して、閉塞状態へと動作する。
図19に示すように、出力側では、円環状エアシリンダ(第2付勢部)80を動作させる出力ポイントFRがほぼ大気圧と同じ低圧PLo状態となり、閉状態となる。
【0223】
以上のように、OPENポートとCLOSEポートとの2ポートとされた入力に対し、FR,OP,CLの3出力ポイントにおいて、圧力状態を電気的な機構を用いずに制御可能とするとともに、これらの圧力変化順を設定して、閉塞位置、閉塞解除位置、退避位置の状態を順番に実現することにより、スライド弁1の動作を迅速、かつ、安全におこなうことが可能となる。
【0224】
上記のシーケンス回路SQを有することにより、可動弁部40の回転移動動作、可動弁部40の昇降動作(閉塞・解除動作)の2回の独立した動作を有し、しかも、回動動作は複動式エアシリンダ110、昇降動作は単動式エアシリンダ80で行うスライド弁1において、これら移動動作・昇降動作を連動させることが可能となる。可動弁部40の移動動作および昇降動作をいずれも電気的な制御で行わず、機械的な制御で行うことができるので、停電時の異常動作等を防止することが容易に可能となる。
【0225】
1チャンネル2方弁を2個使う場合と比較して、2チャンネル2方弁ttVとすることで、弁の動作タイミングを正確に合わせることが可能となり、シーケンスを正確に実現できる。
回路形成体を、分割することで、シリンダの変更、3位置シリンダ制御用回路に変更する場合においても、ブロック1を共用することが可能となり、コスト低減効果を得られる。
【0226】
メンテナンススイッチmSWにより、円環状エアシリンダ80への圧空供給を遮断する操作が可能となり、回転駆動エアシリンダ110への圧空供給を保持したまま、円環状エアシリンダ80の脱着作業が可能となる。
チェック弁CVにおいて、ケース(ボールガイド)CVWの内周面および外周面が流路となるようにフィンCVfおよび貫通孔CVgを形成することで、ボールCVBが弁座となるテーパ部CVaaに吸い寄せられることを防止することを可能とし、これにより、圧縮空気の供給流量を増加させ、回転駆動エアシリンダ110の動作時間を短縮して、スライド弁1の開閉動作時間を短縮することができる。
【0227】
なお、メンテナンススイッチmSWは、次に説明する締結ボルト43とともにメンテナンス時に使用することができる。
【0228】
[締結ボルト(締結部材)43]
締結ボルト(締結部材)43は、図36に示すように、外周面に雄ネジの設けられた先端部分43aが可動弁枠部60に設けられた締結螺着部63に設けられたネジ穴63aに螺接されている。締結ボルト43は、可動弁体40の厚さ方向、つまり、可動弁板部50と可動弁枠部60との移動方向であるB1方向またはB2方向と平行な方向に軸線が向くように設けられている。
【0229】
締結ボルト43の中央部分43bは、先端部分43aと略同径とされ、可動弁板部50に設けられた締結螺着部63に設けられた貫通孔57bに軸方向移動可能として貫通されている。中央部分43bの径寸法は貫通孔57bの径寸法よりも小さく設定され、これらが軸方向に相対移動した場合でも互いに接触しないようになっている。
締結ボルト43の基端部分43cには、先端部分43aおよび中央部分43bよりも拡径したボルトヘッドとされ、先端部分43a側の当接面43dが、対向する締結部57における貫通孔57b外側の当接面57dと当接して、締結ボルト43と可動弁板部50との流路方向変動位置を規制可能になっている。
【0230】
締結ボルト43には、先端部分43aの雄ネジが螺設された部分より先端位置に、係止用溝43eが周設されて、この係止用溝43eに勘合されたワッシャ等の止め輪(係止部材)43fが、ネジ穴63aの外側面63fに当接することで締結ボルト43の軸方向(流路方向)における内側方向(図示下方向)の移動を規制し、締結ボルト43を回転させても可動弁枠部6位から離脱しないように係止している。
止め輪(係止部材)43fは、締結ボルト(締結部材)43が単純に外れないだけではなく、可動弁板部50と可動弁枠部60と締結解除した状態で、締結ボルト43が、長期的に緩みなく、かつ、位置を保持していることを可能とする。つまり止め輪(係止部材)43fが締付軸力を安定的に負担する必要があるため、図38(a)に示すように、E形止め輪とされるか、あるいは、図38(b)に示すように、C型止め輪を適用することが好ましい。なお、止め輪のタイプによって係止用溝43eの形状も対応したものとされる。また、係止部材としては、ピン型のものも適応可能で、この場合は、係止用溝43eに代えて締結ボルト43の径方向に設けられた係止孔に固定されることができる。
【0231】
締結ボルト43の長さは、止め輪43fが外側面63fに当接した状態で、可動弁部40が最大厚さとなっても、先端部分43a側の当接面43dが、対向する締結部57における貫通孔57b外側の当接面57dと当接しない程度に長く設定されている。また、可動弁部40が最小厚さとなった場合には、締結螺着部63と締結螺着部63との対向する当接面63gと、当接面57gとが当接することで、可動弁板部50と可動弁枠部60との位置規制がおこなわれる。つまり、螺接された締結ボルト43に対して、可動弁板部50は、B1方向には当接面57gが当接面63gに当接する位置まで、また、B2方向には当接面57dが当接面43dに当接する位置まで移動可能となる。
【0232】
したがって、締結ボルト43をネジ穴63aに対して回転し、締結長さを変化することで、可動弁板部50の移動範囲、つまり、可動弁板部50と可動弁枠部60との流路方向位置を規制することができる。特に、エアシリンダ80によって、メインバネ70の付勢力に打ち勝って可動弁部40の厚さが縮小した状態で、当接面57dが当接面43dに当接するように、締結ボルトを回動させることにより、エアシリンダ80の駆動を停止した状態でも、可動弁部40の厚さが縮小した状態を維持することが可能となる。これにより、メンテナンス時などに、中立弁体を弁箱10と接触しないように自由な状態で回動可能とすることができる。
【0233】
また、締結ボルト43は、複数設けられたメインバネ70の付勢力に打ち勝って安定的に可動弁部40の厚さが縮小した状態を維持するために、可動弁部40を流路方向に平面視して、複数のメインバネ70が配置された中心位置に対して、この締結ボルト43が対称に配置される。
具体的には、図37に示すように、可動弁部40が流路方向に平面視して略円形とされ、可動弁部40の最外周である第1周囲領域40aに複数のメインバネ70が同心状に位置するように配置された場合、締結ボルト43は、メインバネ70と同心状にかつ、メインバネ70と等間隔になるように、メインバネ70と同数設けられる。
【0234】
一例として、図37(a)には、メインバネ70と締結ボルト43とがメインバネとが4本ずつ配置された例を、図37(b)には、メインバネ70と締結ボルト43とがメインバネとが3本ずつ配置された例を示す。また、図37(c)には、6本のメインバネ70が同心状に配置され、締結ボルト43と中心に設けられた例を示す。
なお、これらの例はメインバネ70の付勢力が全て等しいものとして例示したが、複数のメインバネの付勢力が不均等である場合には、これらの付勢力を効率よく受けて、可動弁部40の厚み寸法の縮小幅が、中立弁体面方向全体で等しくなるように締結ボルトを設けることが好ましい。
【0235】
これにより、常にメインバネ70の付勢力が働いている可動弁部40に対してその厚さを縮小する冶具を別途用意することなく、中立弁部30と可動弁部40とからなる中立弁体の取り外しを可能とすることができる。
さらに、止め輪43fを設けることで、メンテナンス時に、締結ボルト43を取り外した上で紛失してしまうリスクを排除することができる。
【0236】
以上のように、第1実施形態においては、流路方向に互いに離間接近可能な可動弁板部50と可動弁枠部60とによって構成された可動弁部40が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを流路方向外側に向けて付勢するメインバネ70が設けられ、可動弁部40には、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させる円環状エアシリンダ80が設けられ、可動弁枠部60を中立弁部30に接近する方向に付勢する補助バネ90が設けられることによって、可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱の内面15a、15bに押圧して、シール部61及び反力伝達部59とで確実に弁閉塞をおこなうことができる。
【0237】
また、可動弁板部50と可動弁枠部60とを中空部11の流路方向中央位置側に向けて移動させることで、弁箱10に弁体40が接触しないようにして回動させ、回動以外の動作が必要な機構に比べて小型で出力の小さい駆動機構によって退避位置まで弁体40を移動することができる。
【0238】
この構成においては、1つの可動弁部40と3つの付勢部70,80,90とによって弁体を形成することができる。また、可動弁部40の周囲領域に配置されたメインバネ70の復元力によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面に直接押し付けて、確実に閉弁できる。同様に、可動弁部40の周囲領域に配置された円環状エアシリンダ80に供給された圧縮空気の作用によって可動弁板部50と可動弁枠部60とを弁箱10の内面から離間させて、確実に回動可能状態として開弁できる。従って、第1実施形態においては、簡単な構造を有し、高い信頼性で仕切り動作を行うことができるスライド弁を実現することができる。
【0239】
<他の実施形態>
上述した本発明の実施形態においては、可動弁板部50の外周にU字形状のU字部が形成されており、可動弁枠部60の内周に逆U字形状の逆U字部が形成されている。また、可動弁板部50のU字部と可動弁枠部60の逆U字部とが互いに嵌合するように、可動弁板部50及び可動弁枠部60が設けられている。
図29は、本発明の他の実施形態におけるスライド弁の構成を示す縦断面図であり、固定弁部と可動弁部とが嵌合されているシリンダ付近の要部拡大図である。
図29において、図1ないし図6に示した第1実施形態と同一の部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
一方、他の実施形態の可動弁部40の構造においては、図29に示すように可動弁板部50の外周に形成された外周クランク部と可動弁枠部60の内周に形成された内周クランク部とが嵌合されている。
【0240】
メインバネ70を構成する弾性部材の自然長は、凹部60aの深さよりも大きい。このため、凹部60aの天井面と可動弁板部50とによって圧縮されつつ凹部60a内に配置されている第1付勢部70においては、弾性復元力(延伸力,付勢力)が生じている。この弾性復元力が作用することにより、可動弁部60がB1方向に摺動しながら、第1シール部61が弁箱10の内面に当接して押圧され、閉弁動作が行われる。
【0241】
メインバネ70は、第1シール部61を直接押圧できるようにするために、第1シール部61の直下に配置されることが望ましい。
本実施形態においては、メインバネ70が可動弁枠部60に設けられているので、メインバネ70を第1シール部61の直下に位置させることが可能である。
【0242】
このような他の実施形態においては、閉弁動作及び開弁動作を行うアクチュエータとして、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行う円環状エアシリンダ80とが設けられている。この構成において、メインバネ70及びエアシリンダ80は、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域において、互いに近接するように並列に配置されている。
具体的には、可動弁部40の最外周である第1周囲領域40aにメインバネ70が設けられ、第1周囲領域40aに隣接した第2周囲領域40bにはエアシリンダ80が配置される。また、メインバネ70は、第1シール部61の直下に位置している。
【0243】
この構造においては、メインバネ70は第1シール部61を直接押圧することができ、第1シール部61にほぼ垂直方向に荷重を直接加えることができる。
つまり、スライド弁100の構造は、作用点及び支点が存在するモーメント荷重を加える構造ではない。このため、梃子に相当する部分の構造部材(強度)は必要なく、アクチュエータの構造を簡易化することができる。また、可動弁部60に要求される剛性として、可動弁部60の自重を支えることができる強度があれば十分である。
【0244】
本実施形態の構造においては、可動弁枠部60の第1シール部61の直下にメインバネ70が配置され、可動弁板部50と可動弁枠部60との間に設けられた1つの円環状エアシリンダによって第2付勢部(エアシリンダ)80が形成されている。この構造においては、アクチュエータの構成も簡単にすることにでき、閉弁動作及び開弁動作の信頼性を向上させることができる。
また、このように可動弁部40の周囲領域にアクチュエータが配置された構成が大口径を有するスライド弁に適用された場合であっても、上述した同様の構造によって確実に閉弁動作及び開弁動作を行うことができ、逆圧が作用した場合においても同様の動作ができる。
【0245】
この他の実施形態においては、第3シール部52b,中間大気室56,第3シール部52a,及びワイパー54の位置が、上記の実施形態とは異なっている。
具体的に、上記の実施形態においては、第1外周面50fとは反対の面である内側面50gに第3シール部52b,中間大気室56,第3シール部52a,及びワイパー54が設けられているが、第2実施形態においては、第2外周面50jに第3シール部52b,中間大気室56,第3シール部52a,及びワイパー54が設けられている。
【0246】
可動弁板部50の外周クランク部において、径方向外側に位置する第1外周面50fに第2シール部51a,51b、ワイパー53が設けられている。また、径方向において第1外周面50fの内側であって第2シール部51a,51bの下方に位置する第2外周面50jに、第3シール部52a,52b、ワイパー54が設けられている。第2シール部51a,51bは、可動弁枠部60の第1内周面60jに当接し、第3シール部52a,52bは、可動弁部60の第1内周面60jの下方に位置する第2内周面60kに当接する。
【0247】
第2シール部51a,51b、ワイパー53、中間大気室55は、圧力が高い空間であるエアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第1開口部12aに近い第1空間とを仕切り、仕切り状態を確保する。同様に、第3シール部52a,52b、ワイパー54、中間大気室56は、圧力が高い空間であるエアシリンダ80と、圧力が低い空間等であって第2開口部12bに近い第2空間とを仕切り、仕切り状態を確保する。
【0248】
これらのワイパー53,54は、開弁動作及び閉弁動作によって摺動する可動弁枠部60の内周面を潤滑あるいは清掃し、上記摺動によって発生するダスト及びエアシリンダ80から発生するダストを第1空間及び第2空間に放出させない機能を有する。
また、ワイパー53,54の内部に潤滑油を浸透(保持)させておくことができる。
これにより、第2シール部51a,51b及び第3シール部52a,52bによってシールされるシール面に一定の膜厚を有する薄い油膜が形成された状態を維持することが可能となる。つまり、ワイパー53,54は、余剰な油膜を拭き取り、油膜が枯渇した際には一定の膜厚を有する油膜を塗布する。
【0249】
以上のように、この実施形態によれば、上述した実施形態と同様の効果が得られる。更に、この実施形態においては、閉弁動作を行うメインバネ70と、開弁動作を行うエアシリンダ80とを、第1シール部61に近い可動弁部40の周囲領域に配置しているので、弁箱10にアクチュエータを設ける必要がなく、簡単な構成を有するスライド弁を実現できる。
【0250】
図27は、本発明の他の実施形態のスライド弁における縦断面図であり、中立弁部と可動弁部(可動弁枠部)とが接続されている接続ピン部付近の要部拡大図である。
図27において、図1ないし図6に示した第1実施形態と同一の部材には同一符号を付して、その説明は省略または簡略化する。
【0251】
第1実施形態においては、接続ピン部69として、可動弁枠部60と一体とされた接続ピン68が形成されていたが、本実施形態の接続ピン部69としては、可動弁枠部60に接続されたフローティングピン(接続ピン)68Aが貫通孔67に勘合されている。
フローティングピン68Aは、図8に示すように、孔部38に回動可能かつ軸方向に摺動可能として勘合されている図示下部側が、上述した第1実施形態と略同等の構成とされている。
【0252】
[接続ピン部69、フローティングピン68A、供給路41]
本実施形態の接続ピン部69は、供給路41として設けられたもので、図27に示すように、可動弁枠部60に流路方向と平行に穿孔された円形断面の貫通孔67を有し、この貫通孔67にフランジ部68Aaを有する棒状のフローティングピン68Aが回動可能かつ半径方向に微動可能で、かつ傾斜は最小限になる様に勘合されている。貫通孔67の内面67aは、フランジ部68Aaの径寸法に対応して可動弁枠部60に対向した孔部38よりも拡径したフランジ内面67aを有し、この開口側のフランジ内面67aに比べて図示上となる貫通側のガス接続位置内面38bが縮径され、このガス接続位置内面67bに比べて図示上となる貫通側の支持位置内面67cが縮径され、この支持位置内面67cに比べて図示上となる貫通側の外側内面67dが拡径されている。
【0253】
フローティングピン68Aは、その径寸法がこの貫通孔67の径寸法に対応して、フランジ部68Aaに対して縮径したガス接続部68Abが縮径し、ガス接続部68Abに対して固定端68Acが縮径している。
固定端68Acには、固定溝68Adが周設されて、この固定溝68Adに勘合されたワッシャ等の固定部材68Aeが、貫通孔67の外側面67eに当接することでフローティングピン68Aの軸方向(流路方向)における内側方向(図示下方向)の移動を規制し位置を固定している。
フランジ部68Aaの上側となるシール面68Afと、ガス接続部68Abの上側となるシール面68Agは、対向する段差面67fおよび段差面67gとの間に、Oリング等とされるシール部材67h、67jが設けられている。
【0254】
フローティングピン68Aの外径寸法として、固定端68Acは支持位置内面67cの内径寸法とほぼ等しく設定されているが、フランジ部68Aaおよびガス接続部68Abは、それぞれ、フランジ内面67aおよびガス接続位置内面38bに対して、微少寸法小さく設定されて、フローティングピン68Aが可動弁枠部60に対して径方向に僅かに遊びがある状態とされている。傾斜すると、シール部材67hの潰し代が変化してしまう為、傾斜は最低限に抑え、径方向に微小変位するというのが技術的特徴である。
【0255】
フローティングピン68Aは、固定端68Acの固定部材68Aeと、シール面68Afおよびシール面68Agのシール部材67h、67jで対向する方向に可動弁枠部60を挟持するように固定されている。これにより、フローティングピン68Aは、図示上側に押圧された状態で、軸線方向(貫通孔67の長さ方向)には移動しないように可動弁枠部60に固定されている。
同時に、フローティングピン68Aは、シール部材67hがシール面68Afと段差面67fとに押圧されて変形するとともに、シール部材67jがシール面68Agと段差面67gとに押圧されて変形するようになっている。
このように、フローティングピン68AのOリング等とされるシール部材67h、67jが段差面67fおよび段差面67gに押圧されて変形することで、ガス接続部68Ab、および、接続位置内面67b部分がシールされる。
【0256】
孔部38の底部38d付近には、供給路41となる
フローティングピン68Aの内部には、その先端面68dに開口し軸方向に沿って中心に開けられるとともに、接続位置内面67bに設けられた開口に対向する位置とされるガス接続部68Abの表面に開口する供給路41が設けられて、加圧空間69aとエアシリンダ80とを接続可能となっている。
【0257】
[接続ピン部69、フローティングピン68B、連絡路42]
本実施形態の接続ピン部69としては、連絡路42として設けられたフローティングピン68Bが、図30に示すように、可動弁枠部60側は図27に示すフローティングピン68Aと略同様の構成とされるため、対応する構成には同一の符号を付すか、68Aとの符号を68Bと読み替えてその説明を省略する。
フローティングピン68Bは、中立弁部30側が短くなっている。 このため、中間大気室となる空間69Baは加圧されておらず、開口した連絡路42は、段差68cに対応する位置で端面68Bdとなっている。また、加圧状態でないため、2重シールも採用されていない。連絡路42の一部であるフローティングピン68Bと、供給路41の一部であるフローティングピン68Aとは、図1に示すように、中立弁体5の面内で異なる位置にそれぞれ設けられている。このように、連絡路42と供給路41とは、回転軸20内部において平行位置とされたように、並行して中立弁部30内部、可動弁枠部60内部に設けられている。
【0258】
フローティングピン68Bの内部には、その先端面68Bdに開口し軸方向に沿って中心に開けられるとともに、接続位置内面67bに設けられた開口に対向する位置とされるガス接続部68Bbの表面に開口する連絡路42が設けられて、中間大気空間69Baと中間大気室55,56とを接続可能となっている。
【0259】
本実施形態においては、フローティングピン68Aは、摺動面と同じ方向となる内面67aとフランジ部68Aa外周、ガス接続位置内面67bとガス接続部68Abではなく、加圧面となる先端面68dと平行な方向、つまり、摺動方向と直行する面であるシール面68Afと段差面67fとの間、および、シール部材67jがシール面68Agと段差面67gとの間に、シール部材67h、シール部材67jが設けられることで、フローティングピン68Aが傾斜した場合や、フローティングピン68Aが僅かに径方向に移動した場合であっても、Oリング等とされるシール部材67h、67jの潰し代は変化しない。したがって、このようにフローティングピン68Aが移動した場合、つまり、中立弁部30と可動弁枠部60とが、流路方向以外の相対位置変動した場合であっても、加圧されたガス接続部68Ab付近の供給路41に対するシールを維持し、密閉が破れることがない。フローティングピン68Bも同様に連絡路42に対するシールを維持し、密閉が破れることがない。
【0260】
同時に、本実施形態においては、太シール部68fおよび小シール部68gにおいて、製作公差等によってフローティングピン68Aに対して半径方向の位置ズレなどがある場合においても、フローティングピン68Aと可動弁枠部60に流路と直交する方向(フローティングピン68A径方向)の遊びがあるため、太シール部68fおよび小シール部68gの摺動Oリングには偏芯が生じない。したがって、摺動時にも接続ピン68と孔部38との間のシールを維持し、密閉が破れることがない。
同時に、フローティングピン68Aの位置変動時においても、太シール部68fおよび小シール部68gに変形が集中することがないので、変形・破損の可能性を低減することができ、密閉維持をより確実におこなうことができる。
【0261】
なお、上記本発明の実施形態においては、第1付勢部70としてスプリングが用いられた構造について説明したが、他の弾性体を用いてもよい。
また、第2付勢部80の構造として、円環状の1つのエアシリンダが採用された構造について説明したが、油圧シリンダ等とされる他の駆動流体を使用する構成を採用してもよい。この場合にも、1つの円環状のシリンダが駆動することによって弁箱10(10a,10b)の内面から可動弁板部50と可動弁枠部60との厚さ寸法を収縮させる駆動装置が第2付勢部として用いられる。
【0262】
また、上記本発明の実施形態においては、図35(a)に示すような円形に形成された開口部及び可動弁部について説明した。本発明のスライド弁はこれらの形状に限定されない。本発明のスライド弁は、可動弁部の周囲領域にアクチュエータが設けられた構造を有するので、例えば、或いは図35(b)に示すような角部に丸みを有する略正方形に形成された開口部及び可動弁部、図35(c)に示すような角部に丸みを有する略三角形に形成された開口部及び弁板(可動弁部)が採用されてもよい。また、図35(d)に示すような角部に丸みを有する略長方形に形成された開口部及び弁板が採用されてもよい。また、図35(e)に示すような角部に丸みを有する略六角形に形成された開口部及び弁板が採用されてもよい。また、図35(f)に示すような角部に丸みを有する略U字形に形成された開口部及び弁板に適用することも可能である。
更には、楕円形に形成された開口部及び弁板、あるいは角部に丸みを有する略八角形に形成された開口部及び弁板等、あらゆる形状に形成された開口部及び弁板を本発明に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0263】
本発明は、真空装置等において、真空度や温度あるいはガス雰囲気等性質の異なる2つの空間を連結している流路を仕切る状態と、この仕切り状態を開放した状態を切り替える用途および、これらの状態の間で開度をコントロールする用途のスライド弁に広く適用できる。
【符号の説明】
【0264】
1…スライド弁、 5…中立弁体、 10,10a,10b…弁箱、 11…中空部、 12a…第1開口部、 12b…第2開口部、 17,18…流体経路リング、 20…回転軸、 21…ピニオン、 22…ラック、 26…弁軸、 30…中立弁部、 40…可動弁部、 41…供給路、 42…連絡路、 50…可動弁板部(第2可動弁部)、 51a,51b…第2シール部、 52a,52b…第3シール部、 53,54…ワイパー、 55,56…中間大気室、 60…可動弁枠部(第1可動弁部)、 61…第1シール部、 62…ガイドピン、 68…接続ピン、68A…フローティングピン、 69…接続ピン部、 70…メインバネ(第1付勢部)、 80…円環状エアシリンダ(第2付勢部)、 90…補助バネ(第3付勢部)、 91…接続部材、100…スライド弁、 110…シリンダ、 111…シリンダ本体、 112…ピストン、 113…圧力空間、 114…通気口、 118…緩衝溝、 236…緩衝材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させラックピニオン及びこれを駆動する復動式エアシリンダからなる回転手段と、
前記中立弁体を閉塞解除動作させる単動式エアシリンダからなる閉塞解除駆動手段と、を有するスライド弁において、
前記中立弁体の閉塞解除動作と該中立弁体の回転動作とを順次動作可能とするとともに、オープン時には、閉塞解除エアシリンダの駆動圧が所定の閾値を超えた際に回転エアシリンダを動作開始させるとともに、クローズ時には、回転動作終了時に閉塞動作を開始させるエアオペレイト式2チャンネル2方弁を有するシーケンス回路を具備してなることを特徴とするスライド弁。
【請求項2】
前記シーケンス回路が、クローズ時に、前記中立弁体の回転動作を終了するまで、閉塞圧力を安定した状態で維持可能とする回転動作終了検出スイッチを有することを特徴とする請求項1記載のスライド弁。
【請求項3】
前記シーケンス回路が、ハウジングと、該ハウジング内部で付勢されたボールと、該ボールの移動位置を規制するボールガイドとを有し、前記ボールの位置によらず流路断面積が一定となるチェック弁を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライド弁。
【請求項1】
スライド弁であって、
中空部と、前記中空部を挟み互いに対向するように設けられて連通する流路となる第1開口部及び第2開口部とを有する弁箱と、
前記弁箱の前記中空部内に配置され前記第1開口部を閉塞可能な中立弁体と、
前記中立弁体を、前記第1開口部に対して閉塞状態にする弁閉塞位置と前記第1開口部から退避した開放状態とする弁開放位置との間で回動させる回転軸と、
該回転軸を回転させラックピニオン及びこれを駆動する復動式エアシリンダからなる回転手段と、
前記中立弁体を閉塞解除動作させる単動式エアシリンダからなる閉塞解除駆動手段と、を有するスライド弁において、
前記中立弁体の閉塞解除動作と該中立弁体の回転動作とを順次動作可能とするとともに、オープン時には、閉塞解除エアシリンダの駆動圧が所定の閾値を超えた際に回転エアシリンダを動作開始させるとともに、クローズ時には、回転動作終了時に閉塞動作を開始させるエアオペレイト式2チャンネル2方弁を有するシーケンス回路を具備してなることを特徴とするスライド弁。
【請求項2】
前記シーケンス回路が、クローズ時に、前記中立弁体の回転動作を終了するまで、閉塞圧力を安定した状態で維持可能とする回転動作終了検出スイッチを有することを特徴とする請求項1記載のスライド弁。
【請求項3】
前記シーケンス回路が、ハウジングと、該ハウジング内部で付勢されたボールと、該ボールの移動位置を規制するボールガイドとを有し、前記ボールの位置によらず流路断面積が一定となるチェック弁を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のスライド弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2012−251623(P2012−251623A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125727(P2011−125727)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000231464)株式会社アルバック (1,740)
【Fターム(参考)】
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