説明

スラスト軸受構造及び過給機

【課題】回転軸の回転方向が異なる場合であっても、部品点数及び組付工数の増加を抑制することができるスラスト軸受構造及び過給機を提供する。
【解決手段】スラスト軸受構造5は、回転軸3に保持され回転軸3とともに回転するスラストカラー51と、スラストカラー51の回転軸3の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受(コンプレッサ側スラスト軸受52及びタービン側スラスト軸受53)と、を有し、スラストカラー51のスラスト軸受52,53と対峙する受圧面51aに、回転軸3を垂線とする平面に対して傾斜したテーパ面511と、テーパ面511に連なり回転軸3を垂線とする平面に平行なランド面512と、を回転軸3の周方向に交互に複数配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラスト軸受構造及び過給機に関し、特に、回転軸の回転方向が異なる場合であっても容易に対応することができるスラスト軸受構造及び該スラスト軸受構造を有する過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
過給機(例えば、ターボチャージャ)は、エンジンの排気エネルギーでタービンを駆動し、その回転軸と同軸に連結されたコンプレッサを駆動させて空気を圧縮し、エンジンに高密度の圧縮空気を供給することにより、エンジンの出力を増大させる装置である。かかる過給機は、一般に、タービンの外殻を構成するタービンハウジングと、回転軸(又はシャフト)を枢支するセンターハウジング(又は軸受ハウジング)と、コンプレッサの外殻を構成するコンプレッサハウジングと、を有する。
【0003】
また、過給機は、一般に、回転軸の軸方向に生じるスラスト力を保持し、回転軸の移動を規制するスラスト軸受構造を有している。かかるスラスト軸受構造は、回転軸に保持され回転軸とともに回転するスラストカラーと、スラストカラーの回転軸の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受と、を有している(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に記載されたスラスト軸受構造は、スラスト軸受にテーパランド型スラスト軸受を採用したものである。テーパランド型スラスト軸受は、回転軸に設けられたスラストディスク(スラストカラー)と対向する軸受面に、給油ポートに連続するテーパ部と、このテーパ部に連なるランド部とを有する軸受パッドが、周方向に複数個設けられたものである。
【0005】
特許文献2に記載されたスラスト軸受構造は、テーパランド型スラスト軸受において、スラスト軸受と接触摺動するスラストカラーの負荷側摺動面が小径部に移るにつれて前記スラスト軸受との隙間が多くなるようにテーパ状に形成したものである。このスラストカラーは、負荷側摺動面が円板状中心に向って軸受との隙間が厚くなるようにテーパ加工が施されているので、回転作動時のスラストカラーの左右温度差による熱変形が生じても、負荷側スラストカラーと軸受との油膜厚さを一様に保つことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−77803号公報
【特許文献2】実開平5−75519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、テーパランド型スラスト軸受を採用した過給機において、その回転軸の回転方向は、自動車メーカー等の過給機を搭載する機器側のメーカーの要請により、時計回り又は反時計回りに設定される。したがって、同じ過給機であっても、搭載される機器の種類によって、時計回り用の過給機と反時計回り用の過給機とを用意しなければならず、スラスト軸受構造も回転軸の回転方向に応じて製造し、組み付ける必要があった。
【0008】
したがって、従来のスラスト軸受構造では、部品点数が増加して製造コスト及び組付工数が増加してしまう、組付け時に誤組付けがないか確認する必要があることから組付工数が増加してしまう等の問題があった。
【0009】
例えば、上述した特許文献1に記載されたスラスト軸受構造では、タービン側及びコンプレッサ側の両方のスラスト軸受にテーパランド部が形成されており、スラストカラーはタービン側の面とコンプレッサ側の面とが表裏対称の平面形状を有する円板状に形成されている。したがって、スラストカラーは表裏対称の平面形状であるため、回転軸の回転方向を考慮する必要はないが、タービン側及びコンプレッサ側の両方のスラスト軸受は、回転軸の回転方向に応じて、テーパ面の向きを調整して組み付けなければならない。
【0010】
また、上述した特許文献2に記載されたスラスト軸受構造では、タービン側及びコンプレッサ側の両方のスラスト軸受にテーパランド部が形成されており、更に、スラストカラーの負荷側摺動面に径方向のテーパ面が形成されており、スラストカラーのタービン側の面とコンプレッサ側の面とが表裏非対称に形成されている。したがって、タービン側及びコンプレッサ側の両方のスラスト軸受だけでなく、スラストカラーの表裏も回転軸の回転方向に応じて調整して組み付けなければならない。
【0011】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、回転軸の回転方向が異なる場合であっても、部品点数及び組付工数の増加を抑制することができるスラスト軸受構造及び過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、回転軸に保持され該回転軸とともに回転するスラストカラーと、該スラストカラーの前記回転軸の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受と、を有し、前記スラスト軸受によって前記回転軸及び前記スラストカラーの移動を規制するスラスト軸受構造であって、前記スラストカラーの前記スラスト軸受と対峙する受圧面に、前記回転軸を垂線とする平面に対して傾斜したテーパ面と、該テーパ面に連なり前記平面に平行なランド面と、を前記回転軸の周方向に交互に複数配置した、ことを特徴とするスラスト軸受構造が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、排気ガスの供給により駆動されるタービンと、該タービンと同軸に連結された回転軸と、該回転軸と同軸に連結されることによって駆動され空気を吸入するコンプレッサと、前記回転軸の移動を規制するスラスト軸受構造と、を有する過給機であって、前記スラスト軸受構造は、前記回転軸に保持され前記回転軸とともに回転するスラストカラーと、該スラストカラーの前記回転軸の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受と、を有し、前記スラストカラーの前記スラスト軸受と対峙する受圧面に、前記回転軸を垂線とする平面に対して傾斜したテーパ面と、該テーパ面に連なり前記平面に平行なランド面と、を前記回転軸の周方向に交互に複数配置した、ことを特徴とする過給機が提供される。
【0014】
上述したスラスト軸受構造及び過給機において、前記テーパ面は、例えば、前記受圧面の周方向に沿って潤滑油が流れる方向に向かって、前記スラスト軸受との距離が狭まるように傾斜している。
【0015】
前記スラストカラーは、前記受圧面の両面に前記テーパ面及び前記ランド面が形成されていてもよい。また、前記回転軸の回転方向に応じて、前記スラストカラーを反転させて前記回転軸に保持させるようにしてもよい。
【0016】
前記スラスト軸受は、前記スラストカラーと対峙する受圧面が平面状に形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明に係るスラスト軸受構造及び過給機によれば、テーパランド部(テーパ部及びランド部)をスラストカラーに形成することにより、スラスト軸受にテーパランド部を形成する必要がなく、回転軸の回転方向が異なる場合であっても、スラストカラーの組付けを変更するだけで対応することができる。したがって、回転軸の回転方向に対応したスラスト軸受を製造する必要がなく、部品点数及び組付工数の増加を抑制することができる。
【0018】
特に、スラストカラーの両面にテーパランド部を形成することにより、回転軸の回転方向が異なる場合であっても、スラストカラーを反転させて回転軸に保持させるだけで、時計回り及び反時計回りの両方の回転に対応することができ、効果的に部品点数及び組付工数の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一実施形態に係る過給機の断面図である。
【図2】図1に示したスラストカラーを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は図2(b)におけるC−C断面図、を示している。
【図3】本発明の第二実施形態に係るスラスト軸受構造において、回転軸が反時計回りする場合のスラストカラーの保持状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、を示している。
【図4】図3に示したスラストカラーを反転させた状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図4(a)に示したスラストカラーの側面図、を示している。
【図5】本発明の第二実施形態に係るスラスト軸受構造のスラスト軸受を示す図であり、(a)はコンプレッサ側スラスト軸受の正面図、(b)はタービン側スラスト軸受の正面図、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1〜図5を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る過給機の断面図である。図2は、図1に示したスラストカラーを示す図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は図2(b)におけるC−C断面図、を示している。
【0021】
本発明の第一実施形態に係る過給機1は、図1及び図2に示したように、排気ガスの供給により駆動されるタービン2と、タービン2と同軸に連結された回転軸3と、回転軸3と同軸に連結されることによって駆動され空気を吸入するコンプレッサ4と、回転軸3の移動を規制するスラスト軸受構造5と、を有し、スラスト軸受構造5は、回転軸3に保持され回転軸3とともに回転するスラストカラー51と、スラストカラー51の回転軸3の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受(コンプレッサ側スラスト軸受52及びタービン側スラスト軸受53)と、を有し、スラストカラー51のスラスト軸受52,53と対峙する受圧面51aに、回転軸3を垂線とする平面に対して傾斜したテーパ面511と、テーパ面511に連なり回転軸3を垂線とする平面に平行なランド面512と、を回転軸3の周方向に交互に複数配置したものである。
【0022】
図1に示した過給機1は、流体機械の一例である。過給機1は、タービン2の外殻を構成するタービンハウジング2aと、回転軸3を枢支する軸受ハウジング3aと、コンプレッサ4の外殻を構成するコンプレッサハウジング4aと、を有している。なお、過給機1の構成は、例えば、従来の車両用過給機(いわゆるターボチャージャ)と同じ構成を有している。
【0023】
タービン2は、遠心式タービンであり、複数の動翼21を有する翼車22の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部23と、スクロール部23に排気ガスを供給する排気ガス入口(図示せず)と、翼車22に供給された排気ガスを回転軸3の延伸方向に排出する排気ガス出口24と、を有している。
【0024】
コンプレッサ4は、いわゆる遠心式圧縮機であり、羽根車41の回転軸周りに渦巻き形状に形成されたスクロール部42と、回転軸3の延伸方向から空気を供給する空気入口43と、羽根車41により圧縮された空気をスクロール部42から外部に排出する空気出口(図示せず)と、を有している。また、羽根車41の表面には、複数のコンプレッサインペラ44が精密鋳造等により一体に形成されている。
【0025】
回転軸3は、大径部分31及び小径部分32を有し、従来と同様に、仕上加工、硬化処理及び外径研削が施された後、大径部分31の一端が翼車22に接合され、動翼21と一体化されている。また、大径部分31と小径部分32との間には、スラストカラー51が配置され、スラストカラー51の軸方向両側にはコンプレッサ側スラスト軸受52及びタービン側スラスト軸受53が配置され、スラストカラー51が挟持されている。また、コンプレッサ側スラスト軸受52の背面には油切り33が配置され、回転軸3の小径部分32の先端部には、羽根車41が嵌合され、軸端ナット34により固定される。
【0026】
また、軸受ハウジング3aは、回転軸3の径方向の荷重を受ける一対のラジアル軸受3bと、軸受ハウジング3aとタービン2との間を遮熱する遮熱板3cと、軸受ハウジング3aとコンプレッサ4との間を遮断するシールプレート3dと、回転軸3の軸方向の荷重(スラスト力)を受けるスラスト軸受(コンプレッサ側スラスト軸受52及びタービン側スラスト軸受53)と、ラジアル軸受3b及びスラスト軸受52,53に潤滑油を供給する潤滑油供給配管3eと、を有する。
【0027】
スラスト軸受構造5は、図1に示したように、回転軸3に保持され回転軸3とともに回転するスラストカラー51と、スラストカラー51の回転軸3の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受(コンプレッサ側スラスト軸受52及びタービン側スラスト軸受53)と、により構成される。潤滑油供給配管3eから供給された潤滑油は、コンプレッサ側スラスト軸受52に形成された給油ポート52aを介してスラストカラー51の受圧面51aに供給される。
【0028】
図2(a)及び(b)に示したように、スラストカラー51は、略円板形状をなしており、回転軸3に保持され回転軸3とともに回転するように構成されている。スラストカラー51の軸方向の両面がスラスト軸受52,53と対峙する受圧面51aを構成している。すなわち、受圧面51aは、回転軸3を垂線とする平面を構成する。なお、図2(a)に示したスラストカラー51は、コンプレッサ側の受圧面51aを図示しており、図2(b)はコンプレッサ側の受圧面51aの正面図である。
【0029】
図2(a)及び(b)に示したように、コンプレッサ側の受圧面51aのベース面513からテーパ面511が軸方向の肉厚が増す方向に傾斜して形成され、ベース面513と平行なランド面512が形成される。このベース面513、テーパ面511及びランド面512は、図示したように、この並び順に回転軸3の周方向に複数配置される(例えば、2〜8個程度)。
【0030】
また、テーパ面511は、受圧面51aの周方向に沿って潤滑油が流れる方向に向かって、スラスト軸受52,53との距離が狭まるように傾斜している。すなわち、回転軸3の回転方向と反対方向に、ベース面513、テーパ面511及びランド面512が、この並び順に形成される。
【0031】
かかる構成により、ベース面513に供給された潤滑油は、回転軸3の回転、すなわち、スラストカラー51の回転に伴って、テーパ面511に沿ってランド面512とコンプレッサ側スラスト軸受52との狭い隙間に入り込み、スラストカラー51の受圧面51aとコンプレッサ側スラスト軸受52の受圧面(図示せず)との間で油膜を形成することができる。したがって、スラスト軸受構造5の磨耗や焼付きを抑制することができる。
【0032】
また、回転軸の回転方向に対して、徐々に隙間が狭くなるテーパ面511を形成したことにより、受圧面51aの周方向の圧力分布を安定させることができ、コンプレッサ側スラスト軸受52とタービン側スラスト軸受53との間でスラストカラー51を安定して保持することができる。
【0033】
また、図2(c)に示したように、ベース面513から段差部514を介してテーパ面511を形成するようにしてもよい。かかる構成により、テーパ面511を有するスラストカラー51の加工を容易に行うことができる。なお、段差部514を省略して、ベース面513から滑らかにテーパ面511を形成するようにしてもよい。
【0034】
上述したように、テーパ面511及びランド面512をスラストカラー51に形成することにより、この受圧面51aと対峙するスラスト軸受(ここでは、コンプレッサ側スラスト軸受52)の受圧面には、テーパランド部を形成する必要がなく、回転軸3の回転方向が異なる場合であっても、スラストカラー51を交換するだけで対応することができる。したがって、回転軸3の回転方向に対応したスラスト軸受(例えば、コンプレッサ側スラスト軸受52)を製造する必要がなく、部品点数及び組付工数の増加を抑制することができる。
【0035】
なお、上述した第一実施形態では、コンプレッサ側の受圧面51aに、テーパ面511及びランド面512を形成した場合について説明したが、これは潤滑油の給油ポート52aがコンプレッサ側スラスト軸受52に形成されていることが多いためである。勿論、過給機1又はスラスト軸受構造5の構成によっては、タービン側の受圧面51aに、テーパ面511及びランド面512を形成するようにしてもよい。
【0036】
次に、本発明の第二実施形態に係るスラスト軸受構造5について説明する。ここで、図3は、本発明の第二実施形態に係るスラスト軸受構造において、回転軸が反時計回りする場合のスラストカラーの保持状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は側面図、を示している。図4は、図3に示したスラストカラーを反転させた状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図4(a)に示したスラストカラーの側面図、を示している。図5は、本発明の第二実施形態に係るスラスト軸受構造のスラスト軸受を示す図であり、(a)はコンプレッサ側スラスト軸受の正面図、(b)はタービン側スラスト軸受の正面図、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0037】
図3(a)及び(b)に示したように、第二実施形態に係るスラスト軸受構造5におけるスラストカラー51は、受圧面51aの両面にテーパ面511及びランド面512が形成されている。ここでは、両面に形成したテーパ面511、ランド面512及びベース面513が同じ位相となるように形成されている。したがって、コンプレッサ側の受圧面51aにおけるテーパ面511の反対側であるタービン側の受圧面51aにはテーパ面511が形成され、同様に、ランド面512の反対側にはランド面512が形成され、ベース面513の反対側にはベース面513が形成されている。なお、回転軸3及びスラストカラー51は、図の矢印方向(反時計回り)に回転するものとする。
【0038】
かかる構成により、テーパ面511及びランド面512を形成した受圧面51aと対峙するスラスト軸受(コンプレッサ側スラスト軸受52及びタービン側スラスト軸受53)の受圧面には、テーパランド部を形成する必要がない。
【0039】
具体的には、図5(a)に示したように、コンプレッサ側スラスト軸受52は、スラストカラー51と対峙する受圧面52bが略平面状に形成されている。すなわち、コンプレッサ側スラスト軸受52は、従来技術のようなテーパランド部を有していない。したがって、回転軸3の回転方向が時計回りであっても反時計回りであっても同じ構成を採用することができ、部品点数及び組付工数の増加を抑制することができる。なお、コンプレッサ側スラスト軸受52には、図示したように、スラスト軸受構造5に潤滑油を供給する給油ポート52a及び給油ライン52cが形成されていてもよい。
【0040】
また、図5(b)に示したように、タービン側スラスト軸受53は、スラストカラー51と対峙する受圧面53aが略平面状に形成されている。すなわち、タービン側スラスト軸受53は、従来技術のようなテーパランド部を有していない。したがって、回転軸3の回転方向が時計回りであっても反時計回りであっても同じ構成を採用することができ、部品点数及び組付工数の増加を抑制することができる。
【0041】
一方、上述した第二実施形態に係るスラスト軸受構造5では、回転軸3の回転方向に応じて、スラストカラー51を反転させて回転軸3に保持させるようにしている。例えば、図4(a)及び(b)に示したように、回転軸3及びスラストカラー51は、図の矢印方向(時計回り)に回転するものとする。この回転方向は、図3(a)に示した回転方向と反対の回転方向である。
【0042】
このように、回転軸3の回転方向が逆転している場合には、図4(a)に示したように、スラストカラー51の表裏を反転させて回転軸3に保持させる。すなわち、スラストカラー51は、図3(b)におけるコンプレッサ側の受圧面51aが、図4(b)におけるタービン側の受圧面51aを構成し、図3(b)におけるタービン側の受圧面51aが、図4(b)におけるコンプレッサ側の受圧面51aを構成するように、反転されて回転軸3に保持される。
【0043】
その結果、図4(b)に示したように、回転軸3の回転方向が時計回りの場合であっても、テーパ面511は、受圧面51aの周方向に沿って潤滑油が流れる方向に向かって、スラスト軸受52,53との距離が狭まるように傾斜することとなる。すなわち、回転軸3の回転方向と反対方向に、ベース面513、テーパ面511及びランド面512が形成されることとなる。
【0044】
したがって、回転軸3の回転方向が時計回りの場合であっても、スラストカラー51を反転させるだけで、図3に示した回転軸3の回転方向が反時計回りの場合と同様にスラスト軸受構造5としての効果を発揮する。
【0045】
すなわち、上述した第二実施形態に係るスラスト軸受構造5によれば、スラストカラー51の両面にテーパランド部(テーパ面511及びランド面512)を形成したことにより、回転軸3の回転方向が異なる場合であっても、スラストカラー51を反転させて回転軸3に保持させるだけで、時計回り及び反時計回りの両方の回転に対応することができ、効果的に部品点数及び組付工数の増加を抑制することができる。
【0046】
上述した第二実施形態に係るスラスト軸受構造5のスラストカラー51において、コンプレッサ側の受圧面51a及びタービン側の受圧面51aに形成された、ベース面513、テーパ面511及びランド面512の位相を一致させているが、コンプレッサ側の受圧面51aとタービン側の受圧面51aとにおいて、ベース面513、テーパ面511及びランド面512の位相を異なるように配置してもよい。
【0047】
また、ベース面513、テーパ面511及びランド面512の割合(面積比)、配置個数(繰り返し数)、テーパ面511の傾斜角度等についても、コンプレッサ側の受圧面51aとタービン側の受圧面51aとで異なるように変更してもよい。
【0048】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
1 過給機
2 タービン
3 回転軸
4 コンプレッサ
5 スラスト軸受構造
51 スラストカラー
51a 受圧面
52 コンプレッサ側スラスト軸受
52b 受圧面
53 タービン側スラスト軸受
53a 受圧面
511 テーパ面
512 ランド面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に保持され該回転軸とともに回転するスラストカラーと、該スラストカラーの前記回転軸の軸方向における両側に配置される一対のスラスト軸受と、を有し、前記スラスト軸受によって前記回転軸及び前記スラストカラーの移動を規制するスラスト軸受構造であって、
前記スラストカラーの前記スラスト軸受と対峙する受圧面に、前記回転軸を垂線とする平面に対して傾斜したテーパ面と、該テーパ面に連なり前記平面に平行なランド面と、を前記回転軸の周方向に交互に複数配置した、ことを特徴とするスラスト軸受構造。
【請求項2】
前記テーパ面は、前記受圧面の周方向に沿って潤滑油が流れる方向に向かって、前記スラスト軸受との距離が狭まるように傾斜している、ことを特徴とする請求項1に記載のスラスト軸受構造。
【請求項3】
前記スラストカラーは、前記受圧面の両面に前記テーパ面及び前記ランド面が形成されている、ことを特徴とする請求項2に記載のスラスト軸受構造。
【請求項4】
前記回転軸の回転方向に応じて、前記スラストカラーを反転させて前記回転軸に保持させるようにした、ことを特徴とする請求項3に記載のスラスト軸受構造。
【請求項5】
前記スラスト軸受は、前記スラストカラーと対峙する受圧面が平面状に形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のスラスト軸受構造。
【請求項6】
排気ガスの供給により駆動されるタービンと、該タービンと同軸に連結された回転軸と、該回転軸と同軸に連結されることによって駆動され空気を吸入するコンプレッサと、前記回転軸の移動を規制するスラスト軸受構造と、を有する過給機であって、
前記スラスト軸受構造は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスラスト軸受構造である、ことを特徴とする過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−2466(P2013−2466A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131228(P2011−131228)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】