説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物及び成形品

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末組成物を使用してシートを成形する場合に、成形シートの金型脱型時に破れ、変形等が起こらないスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を、樹脂フィラーの原料にバイオマス原料を使用して提供することである。本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【解決手段】 熱可塑性樹脂粉末(B)、及び植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー及び植物由来ポリアミド樹脂フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂フィラー(A)を必須成分とし、樹脂フィラー(A)が熱可塑性樹脂粉末(B)の粒子中に含有されてなることを特徴とし、好ましくは(B)及び(A)の合計重量に対して(A)を5〜50重量%含有するするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品用熱可塑性樹脂粉末組成物に関するものである。さらに詳しくは
、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等の成形用素材として適する熱可塑性樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等の成形用素材として、スラッシュ成形用の樹脂粉末組成物が知られている。(例えば、特許文献1及び2参照)しかし、スラッシュ成形工程において、金型表面に成形されたシートを金型から剥ぎ取る時の樹脂強度が充分ではないために、成形シートの破れ、変形等が起こることがあった。
上記課題を解決するために無機フィラーを含むスラッシュ成形樹脂粉末組成物が知られている。(例えば、特許文献3参照)
一方、地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献するために、植物など生物由来のバイオマス原料を使用した樹脂材料を自動車等の材料として積極的に使用することが、社会から要請されている。
【特許文献1】特開平5−279485号公報
【特許文献2】特開2000−17033号公報
【特許文献3】特開2007−106811公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末材料にバイオマス原料を使用した樹脂材料を用いて、成形シートの破れ、変形等の問題点を解決した例は知られていない。本発明が解決しようとする課題は、バイオマス原料由来の樹脂材料を使用してスラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末材料の成形シートの破れ、変形等の問題点を解決し、地球温暖化防止、循環型社会の構築といった社会の要請に答えることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂粉末(B)、及び植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー及び植物由来ポリアミド樹脂フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂フィラー(A)を必須成分とし、樹脂フィラー(A)が熱可塑性樹脂粉末(B)の粒子中に含有されてなることを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物、及び該樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなるシートである。
【発明の効果】
【0005】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形されたシートは、金型脱型時に破れ、変形等が起こらない。また、原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
さらに、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形されたシートは、耐摩耗性、耐摩擦姓、耐傷付き性にも優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、熱可塑性樹脂粉末(B)及び、植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー及び植物由来ポリアミド樹脂フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂フィラー(A)を必須成分とする。
樹脂フィラー(A)は、植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー(A1)単独、植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2)単独、(A1)と(A2)の混合物のいずれであってもよいが、耐加水分解性、耐熱性の観点から植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2)単独が好ましい。
【0007】
植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー(A1)は、L−乳酸及び/またはD−乳酸を構成成分とする高分子であるが、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。
他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。微粒子化の方法としては例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法などがある。
【0008】
植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー(A1)の融点は、スラッシュ成形時の溶融性の観点から150〜230℃であることが好ましい。さらに好ましくは165〜215℃である。
【0009】
樹脂成形品の耐摩耗性の観点から、ポリ乳酸樹脂(A1)は重量平均分子量が10,000〜500,000であることが好ましい。さらに好ましくは重量平均分子量が30,000〜400,000であり、特に好ましくは重量平均分子量が50,000〜300,000である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0010】
地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献するという観点からポリ乳酸樹脂はとうもろこし等由来のでんぷん、糖質から発酵法により得られる乳酸を原料とし、高分子量化される製造方法であることが好ましい。
商品名としては、LACEA H400(三井化学(株)製)、U’z S−09(トヨタ自動車(株)製)などが挙げられる。
【0011】
植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2)は、ひまし油由来の11−アミノウンデカン酸またはウンデカンラクタムを重合する方法が知られているが、その他の共重合成分を含んでいてもよい。
他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオ−ル、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノ−ルA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4´−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。微粒子化の方法としては例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法などがある。
【0012】
植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2)の製造方法としては、ひまし油をエステル交換し、得られたリシノール酸エステルを加熱分解することによって生成したウンデシレン酸エステルを加水分解後、ウンデシレン酸を求核置換反応によりアミノ化し、得られた11−アミノウンデカン酸を加熱重合する方法などが挙げられる。微粒子化の方法としては例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法などがある。
【0013】
植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2)の融点は、スラッシュ成形時の溶融性の観点から160〜210℃であることが好ましい。さらに好ましくは175〜195℃である。
【0014】
樹脂成形品の耐摩耗性の観点から、ポリアミド樹脂フィラー(A2)は重量平均分子量が10,000〜500,000であることが好ましい。さらに好ましくは重量平均分子量が30,000〜400,000であり、特に好ましくは重量平均分子量が50,000〜300,000である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0015】
(A1)、(A2)は、熱可塑性樹脂粉末(B)の粒子中に含有された形態で、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物に含有される。
(A)が(B)の粒子中に含有されることで(A)が粒子のままで(B)の粒子中に含有されない場合に比べ、成形樹脂シート中により均一に分散することができる。
このような本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物の態様を取ることにより、該樹脂粉末組成物を成形して得られる成形樹脂シートは、耐摩耗性・耐傷付き性に優れる。また、引張強度及び引裂強度に優れるため、金型脱型時に破れ、変形等が起こらない。
特に熱可塑性樹脂がポリウレタン樹脂である場合、耐摩耗性・耐傷付き性をより向上させ、また、引張強度及び引裂強度をより向上させることが出来るので、好ましい。理由としては、熱可塑性樹脂中に均一に分散した(A)が、熱可塑性樹脂中で粒子の形で分散され、ミクロ相分離構造を形成しているためと推定される。
【0016】
熱可塑性樹脂粉末(B)及び樹脂フィラー(A)の合計重量に対して、樹脂フィラー(A)を好ましくは5〜50重量%、より好ましくは5.5〜30重量%、さらに好ましくは6.5〜20重量%含有する。(B)及び(A)の合計重量に対して(A)が5重量%以上であると、(A)の補強効果が十分に発揮され、耐摩耗性・耐傷付き性に優れ、また金型脱型時に成形シートに破れ、変形等が起こらない。(A)が50重量%以下であると、溶融性が良く成形シートの強度も充分である。
【0017】
樹脂フィラー(A)の体積平均粒径は、熱可塑性樹脂中への分散性の観点から好ましくは0.1〜50μm、さらに好ましくは1〜30μm、特に好ましくは5〜20μmである。
【0018】
熱可塑性樹脂粉末(B)の体積平均粒径は、好ましくは50〜400μm、さらに好ましくは100〜200μmである。
樹脂フィラー(A)及び熱可塑性樹脂粉末(B)の体積平均粒径は、レーザー回折/散乱法で行い、例えばマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製MKIISRA 7997−10)で測定することができる。
【0019】
熱可塑性樹脂粉末(B)は、スラッシュ成形用に使用可能な樹脂粉末であれば特に制限はない。
好ましい例としては、(以下、熱可塑性を省略して記載する。)ポリウレタン樹脂粉末(B0)、塩化ビニル樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ビニル芳香族樹脂粉末、アクリレート樹脂粉末、共役ジエン樹脂粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、特に好ましいものはポリウレタン樹脂粉末(B0)である。
【0020】
ポリウレタン樹脂粉末(B0)のポリウレタン樹脂は高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等からなる樹脂である。
(B0)の製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)ウレタン結合およびウレア結合の組成を有し、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には例えば特開平8−120041号公報等に記載されたものを使用することができる。
(2)ウレタン結合およびウレア結合の組成を有したウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはグリコール)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には例えば特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)ジイソシアネート、高分子ポリオール、必要に応じて鎖伸長剤(低分子グリコール、低分子ジアミン)を反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法)する方法で製造される物。
【0021】
塩化ビニル樹脂粉末は、懸濁重合法又は塊状重合法によって製造した塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーとエチレン酢酸ビニル等塩化ビニルモノマーを主成分とする共重合体の樹脂粉末が含まれる。
【0022】
ポリオレフィン樹脂粉末は、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーに属する物であればいかなるものも使用でき、さらに、エチレン−プロピレン−ジエン−ゴム(EPM、EPDM)とプロピレン系重合体を含むポリオレフィン等とを複合したオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げることができる。また、α−オレフィン共重合体よりなるオレフィン熱可塑性エラストマー、α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂から成るオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末も使用することができる。
【0023】
ビニル芳香族系樹脂粉末は、芳香族ビニル化合物単独重合体、芳香族ビニル化合物とビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末が含まれる。 芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、αーメチルスチレン、pーメチルスレン、ジビニルベンゼン、1,1ージフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、特にスチレン、αーメチルスチレンが好ましい。
【0024】
アクリレート系樹脂粉末は、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末が含まれる。
【0025】
共役ジエン系樹脂粉末は、共役ジエン系共重合体中の共役ジエン系部分を水素添加または一部水素添加して得られる共重合体であり、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ランダム共重合体、芳香族ビニル化合物−共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物の樹脂粉末が含まれる。
【0026】
本発明では、熱可塑性樹脂粉末(B)に植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー(A1)、植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2)を含有させる製造方法は特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂粉末(B)と樹脂フィラー(A)とを混練させる製造方法、樹脂フィラー(A)を加えて重合反応を行い、樹脂フィラー(A)を熱可塑性樹脂(B)中に分散させる製造方法等が挙げられる。具体的には、(B)がポリウレタン樹脂粉末の場合は、例えば高分子ポリオールやウレタンプレポリマー中に予め(A)を分散させておき、ポリウレタン樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。塩化ビニル系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ビニル芳香族系樹脂粉末、アクリレート系樹脂粉末、共役ジエン系樹脂粉末の場合は、例えば各モノマー中に予め(A)を分散させておき樹脂粒子を製造する方法が挙げられる。
【0027】
また、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物には、必要に応じて、上記の成分以外に、本発明に特有の効果である金型脱型時に成形シートに破れ、変形等が起こらない、また耐摩耗性・耐傷付き性の効果を発揮できる範囲で、添加助剤(C)を添加することができる。添加助剤(C)としては、公知慣用の耐加水分解剤、顔料、可塑剤、離型剤、有機充填剤、ブロッキング防止剤、分散剤、紫外線吸収剤(光安定剤)、酸化防止剤等が添加出来る。
【0028】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物をスラッシュ成形法で成形するには、例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと200〜280℃に加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後冷却後固化させ、シートを製造する方法で好適に実施することができる。
本発明の成形用材料で成形されたシート厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0029】
実施例
以下、製造例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
【0030】
製造例1
プレポリマー溶液1の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1,000のポリブチレンアジペート(431.3部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(184.9部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、MEK(125.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(155.3部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571]を仕込み均一攪拌しプレポリマー溶液1を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.4%であった。
【0031】
製造例2
ジアミンのMEKケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(116部)、過剰のメチルエチルケトン(以下、MEKと記す。288部、ジアミンに対して4倍モル量)、n−ヘキサン(29部)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEK、n−ヘキサンを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0032】
製造例3
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液1(100.0部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(6.2部)を投入し、そこに分散剤[三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8](24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、撹拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、ポリウレタンからなる熱可塑性樹脂粉末(B−1)を製造した。
【0033】
実施例1
製造例3で得た熱可塑性樹脂粉末(B−1)(92.7部)と体積平均粒径25μmの植物由来ポリ乳酸樹脂(A1−1)[三井化学(株)製;LACEA H−400(Mn20,000)の冷凍粉砕品、とうもろこしから得られるでんぷん由来](10.3部)を二軸押出機で混練して製造した樹脂ペレットを冷凍粉砕機[日本分析工業(株)製;Cryogenic Sample Crusher JFC−1500]に入れて、粉砕する事により、ポリ乳酸含有ポリウレタン樹脂組成物を得た。次いでポリ乳酸含有ポリウレタン樹脂組成物103.0部、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−1)を得た。ポリ乳酸樹脂の、ポリ乳酸樹脂と熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−1)の体積平均粒径は158μmであった。(S−1)を−100℃に冷却後、ウルトラミクロトームにて平滑な面を作成し、AFM(原子間力顕微鏡)のタッピングモードで位相像の観察を行ったところ、ポリ乳酸樹脂が約10μm径でポリウレタン樹脂中に分散していることを確認した。
【0034】
実施例2
製造例3で得た熱可塑性樹脂粉末(B−1)(92.7部)と体積平均粒径30μmの植物由来ポリアミド樹脂フィラー(A2−1)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来](10.3部)を二軸押出機で混練して製造した樹脂ペレットを冷凍粉砕機[日本分析工業(株)製;Cryogenic Sample Crusher JFC−1500]に入れて、粉砕する事により、ポリアミド含有熱可塑性樹脂粉末を得た。次いでポリアミド含有熱可塑性樹脂粉末103.0部、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−2)を得た。ポリアミド樹脂のポリアミド樹脂と熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−2)の体積平均粒径は151μmであった。熱可塑性樹脂粉末(S−2)を−100℃に冷却後、ウルトラミクロトームにて平滑な面を作成し、AFM(原子間力顕微鏡)のタッピングモードで位相像の観察を行ったところ、ポリアミド樹脂が約10μm径でポリウレタン樹脂中に分散していることを確認した。
【0035】
製造例4
プレポリマー溶液2の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1,000のポリブチレンアジペート(431.3部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(184.9部)、体積平均粒径25μmのポリ乳酸樹脂粉末(A1−1)(90.0部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、MEK(125.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(155.3部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571]を仕込み均一攪拌しプレポリマー溶液2を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.2%であった。
【0036】
製造例5
プレポリマー溶液3の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1,000のポリブチレンアジペート(431.3部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(184.9部)、体積平均粒径30μmのポリアミド樹脂粉末(A2−1)(90.0部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、MEK(125.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(155.3部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571]を仕込み均一攪拌しプレポリマー溶液3を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.2%であった。
【0037】
実施例3
反応容器に、製造例4で得たプレポリマー溶液2(100.0部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(5.9部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8(25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、ポリ乳酸含有熱可塑性樹脂粉末(B−3)を製造した。(B−3)のMnは2.5万、体積平均粒径は150μmであった。得られたポリ乳酸含有熱可塑性樹脂粉末(B−3)(103.0部)、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−3)を得た。ポリ乳酸樹脂のポリ乳酸樹脂と熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−3)の体積平均粒径は151μmであった。熱可塑性樹脂粉末(S−3)を−100℃に冷却後、ウルトラミクロトームにて平滑な面を作成し、AFM(原子間力顕微鏡)のタッピングモードで位相像の観察を行ったところ、ポリ乳酸樹脂が約25μm径でポリウレタン樹脂中に分散していることを確認した。
【0038】
実施例4
反応容器に、製造例5で得たプレポリマー溶液3(100.0部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(5.9部)を投入し、そこに分散剤[三洋化成工業(株)製;サンスパールPS−8](25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、ポリアミド含有熱可塑性樹脂粉末(B−4)を製造した。(B−4)のMnは2.5万、体積平均粒径は150μmであった。得られたポリアミド含有熱可塑性樹脂粉末(B−4)(103.0部)、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−4)を得た。ポリアミド樹脂のポリアミド樹脂と熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−4)の体積平均粒径は151μmであった。熱可塑性樹脂粉末(S−4)を−100℃に冷却後、ウルトラミクロトームにて平滑な面を作成し、AFM(原子間力顕微鏡)のタッピングモードで位相像の観察を行ったところ、ポリアミド樹脂が約30μm径でポリウレタン樹脂中に分散していることを確認した。
【0039】
実施例5
ポリ塩化ビニル樹脂[新第一塩ビ(株)製;ZEST700L](86.2部)と体積平均粒径25μmのポリ乳酸樹脂粉末(A1−1)(13.8部)を二軸押出機で混練して製造した樹脂ペレットを冷凍粉砕機[日本分析工業(株)製;Cryogenic Sample Crusher JFC−1500]に入れて、粉砕する事により、ポリ乳酸含有熱可塑性樹脂粉末(B−5)を得た。
得られたポリ乳酸含有熱可塑性樹脂粉末(B−5)100.0部、ジオクチルフタレート50.0部、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571]を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し、樹脂粉末組成物(S−5)を得た。ポリ乳酸樹脂のポリ乳酸樹脂と熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−5)の体積平均粒径は151μmであった。
【0040】
実施例6
ポリ塩化ビニル樹脂[新第一塩ビ(株)製;ZEST700L](86.2部)と体積平均粒径30μmのポリアミド樹脂粉末(A2−1)(13.8部)を二軸押出機で混練して製造した樹脂ペレットを冷凍粉砕機[日本分析工業(株)製;Cryogenic Sample Crusher JFC−1500]に入れて、粉砕する事により、ポリアミド含有熱可塑性樹脂粉末(B−6)を得た。
得られたポリアミド含有熱可塑性樹脂粉末(B−6)100.0部、ジオクチルフタレート50.0部、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製 イルガノックス1010]、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製 チヌビン571]を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−6)を得た。ポリアミド樹脂粉末のポリアミド樹脂と熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−6)の体積平均粒径は151μmであった。
【0041】
製造例6
プレポリマー溶液4の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、Mnが1,000のポリブチレンアジペート(431.3部)、Mnが900のポリヘキサメチレンイソフタレート(184.9部)、体積平均粒径9μmのカオリン(C1)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P](90.0部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;IRGANOX1010]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら60℃で均一攪拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、MEK(125.0部)を仕込み、均一攪拌した後、50℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(155.3部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。60℃まで冷却し、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製;TINUVIN571]を仕込み均一攪拌しプレポリマー溶液4を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.2%であった。
【0042】
比較例1
反応容器に、製造例6で得たプレポリマー溶液4(100.0部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(5.9部)を投入し、そこに分散剤[三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8](25重量部)を溶解した水溶液340重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製;ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に移し、窒素置換した後、撹拌しながら50℃で10時間反応させた。反応終了後、濾別及び乾燥を行い、カオリン含有熱可塑性樹脂粉末(B−7)を製造した。(B−7)のMnは2.5万、体積平均粒径は150μmであった。得られたカオリン含有熱可塑性樹脂粉末(B−7)(103.0部)、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し脂粉末組成物(S−7’)を得た。カオリンのカオリンと熱可塑性樹脂の合計重量に対する含有率は9.0%であった。(S−7’)の体積平均粒径は151μmであった。
【0043】
比較例2
製造例3で得た熱可塑性樹脂粉末(B−1)(92.7部)と体積平均粒径9μmのカオリン(C1)[ジョージアエンゲル社製;ASP400P](10.3部)を二軸押出機で混練して製造した樹脂ペレットを日本分析工業(株)製冷凍粉砕機(Cryogenic Sample Crusher JFC−1500)に入れて、粉砕する事により、カオリン含有ポリウレタン樹脂組成物を得た。次いでカオリン含有ポリウレタン樹脂組成物103.0部、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−8’)を得た。カオリン樹脂のカオリン+熱可塑性樹脂の重量に対する含有率は9.0%であった。(S−8’)の体積平均粒径は158μmであった。(S−8’)を−100℃に冷却後、ウルトラミクロトームにて平滑な面を作成し、AFM(原子間力顕微鏡)のタッピングモードで位相像の観察を行ったところ、カオリンが約9μm径でポリウレタン樹脂中に分散していることを確認した。
【0044】
比較例3
製造例3で得た熱可塑性樹脂粉末(B−1)(92.7部)と体積平均粒径9μmのタルク(C2)[日本ミストロン社製;SOAPSTONE A](10.3部)を二軸押出機で混練して製造した樹脂ペレットを日本分析工業(株)製冷凍粉砕機(Cryogenic Sample Crusher JFC−1500)に入れて、粉砕する事により、タルク含有ポリウレタン樹脂組成物を得た。次いでカオリン含有ポリウレタン樹脂組成物103.0部、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR−741]12.0部、変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、70℃で3時間混合した。
次いで、室温まで冷却後、シリカ微粉末[グレースデヴィソン社製;サイロブロックS200]を0.3部投入混合し樹脂粉末組成物(S−9’)を得た。タルク樹脂のタルク+熱可塑性樹脂の重量に対する含有率は9.0%であった。(S−9’)の体積平均粒径は158μmであった。(S−9’)を−100℃に冷却後、ウルトラミクロトームにて平滑な面を作成し、AFM(原子間力顕微鏡)のタッピングモードで位相像の観察を行ったところ、タルクが約9μm径でポリウレタン樹脂中に分散していることを確認した。
【0045】
実施例1〜6の樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−6)、及び比較例1〜3の樹脂粉末組成物(S−7’)〜(S−9’)を使用して、下記に示す方法でシートを作成した。該シートの引張強度及び引裂強度を測定した。また耐摩耗試験、耐傷付き試験を実施し、結果を表1に示した。
【0046】
<成形シートの作成方法>
予め270℃に加熱したシボ付きNi電鋳型に樹脂粉末組成物を流し込み、10秒後余分な樹脂粉末組成物を排出する。室温下で90秒間放置した後、水冷、脱型すると膜厚1mm程度の均一なシートが得られた。
【0047】
上記の方法で作成した成形シートは、作成後、30分以内に下記の方法で引張強度及び引裂強度を測定した。
・引張強度はJIS K6251−2004に準拠して測定した。
・引裂強度はJIS K6252−2004に準拠して測定した。
ただし、試験片の状態調節については、JIS K6250−2004に準拠せずに、成形シート作成後、30分以内に測定を行った。
成形シート作成後、30分以内に測定した引張強度及び引裂強度は、成形シートの金型脱型時に起こる破れ、変形等と相関が認められるものである。
【0048】
また、耐摩耗試験、耐摩擦試験、耐傷付き性試験はシート作成後、23℃、50%RHの条件下、24時間保管したものを使用した。
【0049】
評価方法
・耐摩耗試験
幅約40mm、長さ約200mmの試験片を切り取り、平面摩耗試験機(型番 FR−T、スガ試験機製)に取り付け、白綿布を摩擦子にかぶせて固定する。摩擦子の荷重3.0kgとして試験片を5回往復し、耐摩耗試験を行った。
試験片の表面摩耗状態を観察し、下記判定基準にて評価した。
◎・・・全く異常が認められない。
○・・・わずかに異常が認められるが目立たない。
△・・・わずかに異常が認められるがはっきりと見える。
×・・・著しく異常が認められる。
【0050】
・耐摩擦試験
幅約30mm、長さ約200mmの試験片を切り取り、染色物摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製)に取り付け、白綿布を摩擦子にかぶせて固定する。摩擦子の荷重200gとして試験片を100回往復し、耐摩擦試験を行った。
試験片の表面状態を観察し、下記判定基準にて評価した。
◎・・・全く異常が認められない。
○・・・わずかに異常が認められるが目立たない。
△・・・わずかに異常が認められるがはっきりと見える。
×・・・著しく異常が認められる。
【0051】
・耐傷付性試験
直径120mmの試験片を切り取り、テーパースクラッチテスター(東洋精機製)のターンテーブルに固定する。200gの荷重で刃を試料上に置き、試験片を2cm以上引っかき、耐傷付性試験を行った。
試験片の表面傷付き状態を観察し、下記判定基準にて評価した。
◎・・・全く異常が認められない。
○・・・わずかに異常が認められるが目立たない。
△・・・わずかに異常が認められるがはっきりと見える。
×・・・著しく異常が認められる。
【0052】
【表1】

【0053】
表1からわかるように、植物由来樹脂フィラーを含有した本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形されたシートは、30分以内に測定した引張強度及び引裂強度が、従来の無機フィラー含有シートと比較しても同等又はそれ以上の強度を有することがわかり、金型脱型時に破れ、変形等が起こらないと考えられる。また、原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
さらに、本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形されたシートは、従来の無機フィラー含有シートと比較して、耐摩耗性、耐摩擦姓、耐傷付き性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車部品や家電部品、玩具、雑貨品等に好適に使用される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粉末(B)、及び植物由来ポリ乳酸樹脂フィラー及び植物由来ポリアミド樹脂フィラーからなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂フィラー(A)を必須成分とし、樹脂フィラー(A)が熱可塑性樹脂粉末(B)の粒子中に含有されてなることを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂粉末(B)及び樹脂フィラー(A)の合計重量に対して樹脂フィラー(A)を5〜50重量%含有する請求項1に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項3】
樹脂フィラー(A)の体積平均粒径が0.1〜50μmである請求項1又は2に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粉末(B)が熱可塑性ポリウレタン樹脂粉末(B0)である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなるシート。


【公開番号】特開2010−121002(P2010−121002A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294463(P2008−294463)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】