説明

スラッシュ成形用樹脂粉末組成物及び成形品

【課題】 本発明が解決しようとする課題は、バイオマス原料由来の樹脂材料を使用して、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末材料の粉体特性改良剤を開発し、地球温暖化防止、循環型社会の構築といった社会の要請に答えることである。
【解決手段】 熱可塑性樹脂粉末(B)を主体とし、植物由来ポリアミド及び植物由来ポリ乳酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の植物由来樹脂(A0)からなり体積平均粒径が0.01〜10μmであり球状である樹脂微粉末(A)を含有し、(B)と(A)の少なくとも2種の粉末混合物であることを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インスツルメントパネル、ドアトリム等の自動車内装部品の成形用素材として適する、熱可塑性樹脂粉末を主体とする、スラッシュ成形用の樹脂粉末組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末材料は、長時間保存するとブロッキングを引き起こし、粉体流動性が悪くなる問題があった。この問題を解決するために、シリカ微粉末(例えば特許文献1、2参照)や樹脂微粉末等(例えば特許文献3、4参照)を熱可塑性樹脂粉末に添加することが行われている。
一方、地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献するために、植物など生物由来のバイオマス原料を使用した樹脂材料を自動車等の材料として積極的に使用することが、社会から要請されている。
【特許文献1】特開2001−011301号公報
【特許文献2】特開2006−28319号公報
【特許文献3】特開2000−17033号公報
【特許文献4】特開2005−126534号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末材料の粉体特性改良材でバイオマス原料を使用したものは知られていない。
本発明が解決しようとする課題は、バイオマス原料由来の樹脂材料を使用して、スラッシュ成形用の熱可塑性樹脂粉末材料の粉体特性改良材を開発し、地球温暖化防止、循環型社会の構築といった社会の要請に答えることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、熱可塑性樹脂粉末(B)を主体とし、植物由来ポリアミド及び植物由来ポリ乳酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の植物由来樹脂(A0)からなり体積平均粒径が0.01〜10μmであり球状である樹脂微粉末(A)を含有し、(B)と(A)の少なくとも2種の粉末混合物であることを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物、及び該スラッシュ成形用樹脂粉末組成物からなる樹脂成形品である。
【発明の効果】
【0005】
本発明のスラッシュ成形品用樹脂粉末組成物は、植物由来樹脂微粉末を含有し、熱可塑性樹脂粉末材料の長期保存時にブロッキング性、粉体流動性を改良させることができるという効果を有する。さらに原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
植物由来樹脂微粉末(A)は植物由来ポリアミド(A1)単独、植物由来ポリ乳酸(A2)単独,(A1)と(A2)の混合物のいずれかであってもよいが、耐加水分解性、耐熱性の観点から植物由来ポリアミド(A1)単独が好ましい。
【0007】
植物由来ポリアミド(A1)の製造方法としては、ひまし油をエステル交換し、得られたリシノール酸エステルを加熱分解することによって生成したウンデシレン酸エステルを加水分解後、ウンデシレン酸を求核置換反応によりアミノ化し、得られた11−アミノウンデカン酸を加熱重合する方法などが挙げられる。
(A1)の融点は、スラッシュ成形時の溶融性の観点から160〜210℃であることが好ましい。さらに好ましくは175〜195℃である。
【0008】
(A1)は、11−アミノウンデカン酸またはウンデカンラクタム以外のその他の共重合成分を含んでいてもよい。他の共重合成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。微粒子化の方法としては例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法などがある。
【0009】
樹脂成型品の耐摩耗性の観点から、植物由来ポリアミド(A1)は重量平均分子量が10,000〜500,000であることが好ましい。さらに好ましくは重量平均分子量が30,000〜400,000であり、特に好ましくは重量平均分子量が50,000〜300,000である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。微粒子化の方法としては例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法などがある。
【0010】
植物由来ポリ乳酸(A2)は、L−乳酸、及びD−乳酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の乳酸を重合してなる高分子である。(A2)の融点は、スラッシュ成形時の溶融性の観点から150〜230℃であることが好ましい。さらに好ましくは165〜215℃である。
【0011】
(A2)は、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよい。他のモノマー単位としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールなどのグリコール化合物、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、マロン酸、グルタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸などのジカルボン酸、グリコール酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸、およびカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどのラクトン類を挙げることができる。このような共重合成分は、全単量体成分中、通常0〜30モル%の含有量とするのが好ましく、0〜10モル%であることが好ましい。微粒子化の方法としては例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法などがある。
【0012】
樹脂成型品の耐摩耗性の観点から、植物由来ポリ乳酸(A2)は重量平均分子量が10,000〜500,000であることが好ましい。さらに好ましくは重量平均分子量が30,000〜400,000であり、特に好ましくは重量平均分子量が50,000〜300,000である。ここでいう重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリメチルメタクリレート(PMMA)換算の分子量をいう。
【0013】
地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献するという観点からポリ乳酸樹脂はとうもろこし等由来のでんぷん、糖質から発酵法により得られる乳酸を原料とし、高分子量化される製造方法であることが好ましい。
製造メーカーとしてLACEA(三井化学)、U’z(トヨタ自動車製)などが挙げられる。
【0014】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物が含有する樹脂微粉末(A)は、体積平均粒径が0.01〜10μmでありかつ粒子形状が球状であることを必須要件とする。
(A)の体積平均粒径が10μmより大きい場合はスラッシュ成形用樹脂粉末組成物の耐ブロッキング性が悪化する。
(A)の体積平均粒径が0.01μmより小さい微粉末は入手することが困難である。
(A)の体積平均粒径は10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上である。
【0015】
樹脂微粉末(A)の体積平均粒径は、レーザー回析/散乱法で行い、例えばマイクロトラック粒度分析計(日機装(株)製MKIISRA 7997−10)で測定することができる。
体積平均粒径が0.01〜10μmでありかつ粒子形状が球状である樹脂微粉末(A)を製造する方法は以下の例が挙げられる。
ヘリウム循環式ジェット粉砕システム(日本ニューマチック工業株式会社)を用いることにより、樹脂粉末を微粒子化することができる。ここで、粉砕用ガスにヘリウムガスを使用することで、粒子に作用する衝突エネルギーを大きくでき、超音速気流中で粒子同士の強い衝撃により粉砕を促進し、粉砕粒子径を極めて小さくすることができる。さらにSurfaceFusing System(日本ニューマチック工業株式会社)を用いることで粒子形状を球状にすることができる。樹脂微粉末を熱風中に分散噴霧することで、粒子温度は直ぐに溶融開始温度以上になる。溶融された粒子は、粒子自信の表面張力により、粒子形状が球状になる。
【0016】
(A)の粒子形状が球状でない場合は粉体流動性が悪化する。
ここで粒子形状が球状であるとは、例えば、粒子の最長径aと最短経bの比a/bの値が1〜1.5であることで表すことができ、1〜1.25がより好ましい。なお上記比a/bの数値が1に近いほど真球に近い。上記真球度は、3次元スキャン等の方法により撮影した画像を、コンピューター等を用いて画像解析することにより計算することで測定できる。また、2次元スキャン等の方法により撮影した画像を、コンピューター等を用いて画像解析することにより計測した真円度をもって代用してもよい。
【0017】
本発明において、熱可塑性樹脂粉末(B)とは、スラッシュ成形用に使用可能な樹脂粉末であれば特に制限はない。
好ましい例としては、(以下、熱可塑性を省略して記載する。)ポリウレタン系樹脂粉末、塩化ビニル系樹脂粉末、ポリオレフィン系樹脂粉末、ビニル芳香族系樹脂粉末、アクリレート系樹脂粉末、共役ジエン系樹脂粉末、およびこれらの2種以上の混合物が挙げられ、特に好ましいものはポリウレタン系樹脂粉末である。
【0018】
ポリウレタン系樹脂粉末のポリウレタン系樹脂は高分子ポリオール、ポリイソシアネート、必要に応じて低分子ジオール、低分子ジアミン等からなる樹脂である。 製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)ウレタン結合およびウレア結合の組成を有し、水および分散安定剤存在下で、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとブロックされた鎖伸長剤(例えばケチミン化合物)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には例えば特開平8−120041号公報等に記載されたものを使用することができる。
(2)ウレタン結合およびウレア結合の組成を有したウレタンプレポリマーを、該ウレタンプレポリマーが溶解しない有機溶剤および分散安定剤存在下で、鎖伸長剤(例えばジアミンおよび/またはグリコール)とを反応させる方法で製造されるもの。具体的には例えば特開平4−202331号公報等に記載されたものを使用することができる。
(3)ジイソシアネート、高分子グリコール、必要に応じて鎖伸長剤(低分子グリコール、低分子ジアミン)を反応させることで熱可塑性ポリウレタン樹脂の塊状物を得る。ついで粉末化(例えば冷凍粉砕、溶融状態下細孔を通し切断する方法)する方法で製造される物。
【0019】
塩化ビニル系樹脂粉末は、懸濁重合法又は塊状重合法によって製造した塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーとエチレン酢酸ビニル等塩化ビニルモノマーを主成分とする共重合体の樹脂粉末が含まれる。
【0020】
ポリオレフィン系樹脂粉末は、一般的にオレフィン系熱可塑性エラストマーに属する物であればいかなるものも使用でき、さらに、エチレン‐プロピレン‐ジエン‐ゴム(EPM、EPDM)とプロピレン系重合体を含むポリオレフィン等とを複合したオレフィン系熱可塑性エラストマーを挙げる事ができる。また、α‐オレフィン共重合体よりなるオレフィン熱可塑性エラストマー、α‐オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂から成るオレフィン熱可塑性エラストマーの微粉末も使用することができる。
【0021】
ビニル芳香族系樹脂粉末は、芳香族ビニル化合物単独重合体、芳香族ビニル化合物とビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末が含まれる。 芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、αーメチルスチレン、pーメチルスレン、ジビニルベンゼン、1,1ージフェニルスチレン、ブロモスチレン、ビニルスチレン、ビニルキシレン、フルオロスチレン、エチルスチレンなどが挙げられ、特にスチレン、αーメチルスチレンが好ましい。
【0022】
アクリレート系樹脂粉末は、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステルとビニル系モノマーの共重合体の樹脂粉末が含まれる。
【0023】
共役ジエン系樹脂粉末は、共役ジエン系共重合体中の共役ジエン系部分を水素添加または一部水素添加して得られる共重合体であり、芳香族ビニル化合物‐共役ジエン化合物ランダム共重合体、芳香族ビニル化合物‐共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物、共役ジエン化合物ブロック共重合体の水素添加物の樹脂粉末が含まれる。
【0024】
熱可塑性樹脂粉末(B)の平均粒径は、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは70〜300μmの範囲にある。
(B)は樹脂微粉末(A)と熱可塑性樹脂粉末(B)の合計重量に対して、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは80重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、好ましくは99重量%以下、さらに好ましくは98重量%以下、特に好ましくは97重量%以下含有される。
【0025】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物において、樹脂微粉末(A)は、樹脂微粉末(A)と熱可塑性樹脂粉末(B)の合計重量に対して、粉体流動性、ブロッキング性の観点から好ましくは0.1重量%以上、さらに好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上、溶融性の観点から好ましくは13重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下、特に好ましくは7重量%以下含有される。
【0026】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、熱可塑性樹脂粉末(B)を主体とし、樹脂微粉末(A)を含有するが、(B)と(A)は互いに独立に粉末の形で混合物を形成しており、(A)が(B)中に含有されたり、又は逆に(B)が(A)中に含有されたり、又は(A)と(B)が合体して1種の粉末を形成することはない。
【0027】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物は、さらに粉体特性改良剤として石油由来樹脂微粉末(C)及び/又は無機微粉末を含有してもよい。
また、添加助剤(D)を含有してもよい。
(C)は、樹脂微粉末(A)と熱可塑性樹脂粉末(B)の合計重量に対して、好ましくは0.05重量%以上、さらに好ましくは0.15重量%以上、好ましくは5.0重量%以下、さらに好ましくは3.0重量%以下含有される。
(D)は、(A)と(B)の合計重量に対して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは、0.2重量%以上、さらに好ましくは0.3重量%以上、好ましくは80重量%以下、さらに好ましくは60重量%以下含有される。
【0028】
石油由来樹脂微粉末(C)としては、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリシリコン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂およびポリウレタン系樹脂から選ばれる。これらの樹脂は石油由来の原料から製造されるものである。
(C)は、160℃以下(好ましくは180℃以下)で溶融せず、平均粒子径が10μm以下、好ましくは5μm以下、さらに好ましくは3μm以下であり、好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上である粉末状の熱可塑性樹脂および/または熱硬化性樹脂が用いられる。これらのうち好ましいものは、熱軟化開始温度が通常170〜280℃、好ましくは180〜250℃の熱可塑性樹脂粉末である。具体的には、例えばシクロヘキシルマレイミド微粒子、架橋シクロヘキシルマレイミド微粒子、メチルメタクリレート・エチレングリコールジメタクリレート共重合体等が好ましい。粒子の形状は、粒子の最長径aと最短経bの比a/bの値が1〜1.25であることが好ましい。
【0029】
添加助剤(D)としては、公知慣用の顔料、無機充填剤、可塑剤、離型剤、有機充填剤、分散剤、紫外線吸収剤(光安定剤)、酸化防止剤等が添加出来る。
【0030】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物を製造する方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
(1)熱可塑性樹脂粉末(B)、樹脂微粉末(A)及び、必要に応じて添加される石油由来樹脂微粉末(C)、及び添加助剤(D)を一括して混合装置で混合する方法。
(2)必要に応じて予め熱可塑性樹脂粉末(B)に添加助剤(D)を含有させておき、その後樹脂微粉末(A)と必要に応じて石油由来樹脂微粉末(C)を添加混合する方法。
このうち(2)の方法が好ましい。
上記方法により得られたスラッシュ成形用材料は、熱可塑性樹脂粉末(B)の粒子表面に樹脂微粉末(A)が吸着された状態で形成されている。また、石油由来樹脂微粉末(C)及び添加助剤(D)を添加する場合は、(B)の粒子表面に(C),(D)が吸着された状態で形成されている。
【0031】
上記混合に使用する混合装置としては、公知の粉体混合装置を使用でき、容器回転型混合機、固定容器型混合機、流体運動型混合機のいずれも使用できる。例えば固定容器型混合機としては高速流動型混合機、複軸パドル型混合機や円錐型スクリュー混合機を使って混合する方法が良く知られている。これらの方法の中で、複軸パドル型混合機および円錐型スクリュー混合機を使用するのが好ましい。
【0032】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物をスラッシュ成形法で成形するには、例えば、本発明の粉末組成物が入ったボックスと200〜280℃に加熱した金型を共に振動回転させ、パウダーを型内で溶融流動させた後冷却後固化させ、表皮を製造する方法で好適に実施することができる。
本発明の成形用材料で成形された表皮厚さは、0.5〜1.5mmが好ましい。該表皮は自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の表皮に好適に使用される。
【0033】
実施例
以下、製造例、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下において「部」は重量部、「%」は重量%を示す。
製造例1
プレポリマー溶液の製造
温度計、撹拌機及び窒素吹込み管を備えた反応容器に、数平均分子量(以下Mnと記す。)が1000のポリブチレンアジペート(616.2部)、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)社製 イルガノックス1010]を仕込み、窒素置換した後、撹拌しながら120℃で均一撹拌した。続いて1−オクタノール(10.4部)、メチルエチルケトン(以下、MEKと記す)(125.0部)を仕込み、均一撹拌した後、60℃まで冷却し、ヘキサメチレンジイソシアネート(155.3部)を仕込み、90℃で6時間反応させた。次いで、60℃に冷却した後、紫外線吸収剤(1.9部)[メーカー チヌビン571]を仕込み均一撹拌子し、プレポリマー溶液を得た。得られたプレポリマー溶液のNCO含量は、2.4%であった。
【0034】
製造例2
ジアミンのMEKケチミン化物の製造
ヘキサメチレンジアミン(116.0部)、過剰のMEK(288.0部、ジアミンに対して4倍モル量)、n−ヘキサン(29.0部)を80℃で24時間還流させながら生成水を系外に除去した。その後減圧にて未反応のMEK、n−ヘキサンを除去してMEKケチミン化物を得た。
【0035】
製造例3
反応容器に、製造例1で得たプレポリマー溶液(100.0部)と製造例2で得たMEKケチミン化合物(6.2部)を投入し、そこに分散剤(三洋化成工業(株)製サンスパールPS−8(24重量部)を溶解した水溶液300重量部を加え、JANKE&KUNKEL IKA−Labortechnik製ULTRA−TURRAX T50を用いて回転数5000rpmで1分間混合した。この混合物を温度計、攪拌機及び窒素吹込み
管を備えた反応容器に移し、攪拌しながら60℃減圧下で2時間脱MEKを行った。濾別及び乾燥を行い、熱可塑性樹脂粉末(B−1)を製造した。
【0036】
実施例1
100Lのナウターミキサー内に製造例3で得た熱可塑性樹脂粉末(B−1)100部、リン酸エステル系可塑剤[大八化学(株)製;CR-741]15部を投入し、70℃で2時間含浸した。次いで変性ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製;KF96]0.1部を投入し、1時間混合した後、室温まで冷却し、樹脂粉末組成物(P−1)を得た。
次いで、植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−1)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を5.0部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−1)を得た。
(A1−1)の体積平均粒径は10μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−1)の体積平均粒径は152μmであった。
【0037】
実施例2
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に、植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−2)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を5.0部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−2)を得た。
(A1−2)の体積平均粒径は10μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.5であった。(S−2)の体積平均粒径は152μmであった。
【0038】
実施例3
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に、植物由来ポリ乳酸樹脂微粉末(A2−1)[三井化学(株)製;LACEA H−400(Mn20,000、とうもろこし由来)]を5.0部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−3)を得た。
(A2−1)の体積平均粒径は5μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−3)の体積平均粒径は152μmであった。
【0039】
実施例4
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−3)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を5.0部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−4)を得た。
(A1−3)の体積平均粒径は0.01μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−4)の体積平均粒径は152μmであった。
【0040】
実施例5
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−4)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を4.0部、メチルメタクリレート・エチレングリコールジメタクリレート共重合体微粒子粉末[共重合比95:5(重量比)、ガンツ化成(株)ガンツパールPM−030](C−1)を0.2部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−5)を得た。
(A1−4)の体積平均粒径は5μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1、(C−1)の体積平均粒径は10μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−5)の体積平均粒径は152μmであった。
【0041】
実施例6
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−4)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を4.0部、シリカ微粉末サイロブロックS200(グレースデヴィソン化学製)(D−1)を0.2部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−6)を得た。
(A1−4)の体積平均粒径は5μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1、(D−1)の体積平均粒径は3μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−6)の体積平均粒径は152μmであった。
【0042】
実施例7
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−4)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を4.0部、メチルメタクリレート・エチレングリコールジメタクリレート共重合体微粒子粉末[共重合比95:5(重量比)、ガンツ化成(株)ガンツパールPM−030](C−1)を0.1部、シリカ微粉末サイロブロックS200(グレースデヴィソン化学製)(D−1)を0.1部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−7)を得た。
(A1−4)の体積平均粒径は5μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1、(C−1)の体積平均粒径は10μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1、(D−1)の体積平均粒径は3μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−7)の体積平均粒径は152μmであった。
【0043】
実施例8
100Lのナウターミキサー内にポリ塩化ビニル樹脂[新第一塩ビ(株)製;ZEST700L](B−2)(100部)、ジオクチルフタレート50.0部、酸化防止剤(1.2部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製 イルガノックス1010]、紫外線吸収剤(1.9部)[チバスペシャリティーケミカルズ(株)製 チヌビン571]を投入し、70℃で3時間混合した後、室温まで冷却し、樹脂粉末組成物(P−2)を得た。
次いで、植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−4)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を5.0部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−8)を得た。
(A1−4)の体積平均粒径は5μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−8)の体積平均粒径は152μmであった。
【0044】
比較例1
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部にメチルメタクリレート・エチレングリコールジメタクリレート共重合体微粒子粉末[共重合比95:5(重量比)、ガンツ化成(株)ガンツパールPM−030](C−1)を0.3部、シリカ微粉末サイロブロックS200(グレースデヴィソン化学製)(D−1)を0.2部混合し、スラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−9)を得た。
(C−1)の体積平均粒径は10μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1、(D−1)の体積平均粒径は3μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−9)の体積平均粒径は152μmであった。
【0045】
比較例2
上記樹脂粉末組成物(P−1)115.1部に植物由来ポリアミド樹脂微粉末(A1−5)[11−アミノウンデカン酸ホモポリマーの冷凍粉砕品(Mn10,000)、ひまし油由来]を5.0部混合し、スラッシュ成形用樹脂微粉末組成物(S−10)を得た。
(A1−5)の体積平均粒径は15μm、形状は最長径aと最短経bの比a/bの値が1.1であった。(S−10)の体積平均粒径は152μmであった。
【0046】
実施例1〜8のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−1)〜(S−8)、及び比較例1〜2のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物(S−9)〜(S−10)を使用して、下記に示す方法でブロッキング率、安息角、流下時間を測定した。また、下記に示す方法でシートを作成した。該シートの引張強度及び引裂強度を測定した。
【0047】
・ ブロッキング率
スラッシュ成形用樹脂組成物50gをポリエチレン袋に詰め、10cm×7cm×1cmのサイズにヒートシーラーを用いて、パッキングする。その袋を、2枚の10cm×10cmのスリ板鋼板にて上下に挟み、上に1638gのおもりを載せる。それを50℃の恒温槽にいれ、3日間放置する。その後、袋を開封し、850μmの目開きの篩上にパウダーをおとし、軽く篩った後、篩上に残った凝集物の重さを測る。ブロッキング率は下記式にて算出した。
ブロッキング率(%)=100×凝集物の重さ(g)/50g
【0048】
・ 安息角
粉体流動性を評価するために、パウダーテスター(ホソカワミクロン(株)製PT−R型)にて安息角を測定した。測定は、温度23±0.5℃、湿度50±2%に調節した温調室にて実施した。安息角が小さいほど、粉体流動性が良い。
【0049】
・ 流下時間
粉体流動性を測定するために、かさ比重測定装置(蔵持科学器機製作所製)にて流下時間を測定した。かさ比重測定用カップ約2杯のパウダーを漏斗に入れ、空のかさ比重測定用カップを漏斗の下に置き、ダンパーを開ける。かさ比重測定用カップの縁に棒を当て、カップの縁から溢れているパウダーを落とす。かさ比重測定装置の漏斗下部のダンパーを閉じ、かさ比重測定用カップで測り取ったパウダーを入れる。漏斗下部のダンパーを開けると同時に流下する時間をストップウォッチで測定する。
流下時間が短いほど、粉体流動性が良い。
【0050】
<成形シートの作成方法>
予め270℃の加熱したシボ付きNi電鋳型スラッシュ成形用材料を流し込み、10秒後余分な着色スラッシュ成形用材料を排出する。室温下で90秒間放置した後、水冷、脱型すると膜厚1mm程度の均一な表皮が得られた。
得られた表皮裏面の状態を目視で確認した。
【0051】
・引張強度及び引裂強度の測定
上記の方法で作成した成形シートは、作成後、30分以内に下記の方法で引張強度及び引裂強度を測定した。
引張強度はJIS K6251−2004に準拠して測定した。
引裂強度はJIS K6252−2004に準拠して測定した。
ただし、試験片の状態調節については、JIS K6250−2004に準拠せずに、成形シート作成後、30分以内に測定を行った。
成形シート作成後、30分以内の測定した引張強度及び引裂強度は、成形シートの金型脱型時に起こる破れ、変形等と相関が認められるものである。
【0052】
【表1】

【0053】
上記表1の結果より、本発明のスラッシュ成型品用樹脂粉末組成物は、植物由来の樹脂微粉末(A)を含有することで、熱可塑性樹脂粉末材料のブロッキング性、粉体流動性を、石油由来樹脂微粉末(c)および無機微粉末を含有する従来のスラッシュ成型品用樹脂粉末組成物(比較例1)と同等に改良させることができることがわかった。さらに原料にバイオマス原料を使用していることから、本品を使用することにより地球温暖化防止、循環型社会の構築に貢献することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物から成形される表皮は、自動車内装材、例えばインストルメントパネル、ドアトリム等の表皮として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂粉末(B)を主体とし、植物由来ポリアミド及び植物由来ポリ乳酸からなる群より選ばれた少なくとも1種の植物由来樹脂(A0)からなり体積平均粒径が0.01〜10μmであり球状である樹脂微粉末(A)を含有し、(B)と(A)の少なくとも2種の粉末混合物であることを特徴とするスラッシュ成形用樹脂粉末組成物。
【請求項2】
樹脂微粉末(A)の形状が、最長径aと最短経bの比a/bの値が1〜1.5である請求項1に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂粉末(B)が、熱可塑性ポリウレタン系樹脂粉末である請求項1又は2に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂粉末(B)100重量部に対して、樹脂微粉末(A)が0.1〜15重量部含有されてなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項5】
さらに 体積平均粒径が0.01〜10μmである石油由来樹脂微粉末(C)を含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂粉末組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のスラッシュ成形用樹脂粉末組成物をスラッシュ成形してなるシート。

【公開番号】特開2010−121003(P2010−121003A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294488(P2008−294488)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】