説明

スラッシュ成形用熱溶融性組成物

1400μm以下の粒径を有するペレットおよび/または粉末の形態の熱溶融性組成物であって、約40〜約70重量%の選択的に水素化されたスチレン系ブロック共重合体(HSBC)と、約1〜約30重量%のブチレン単独重合体、ブチレン共重合体、またはブチレン単独重合体およびブチレン共重合体の組み合わせとを含み、HSBC(i)は、一般構成A−B−A、(A−B)、(A−B−A)、(A−B−A)X、(A−B)Xもしくはこれらの混合物を有する直鎖状または分枝状の水素化されたブロック共重合体であって、式中、nは2〜約30の整数であり、Xはカップリング剤残基であり、かつ:a)水素化の前には、各Aブロックはモノアルケニルアレーンポリマーブロックであり、各Bブロックは、少なくとも1つの共役ジエンおよび少なくとも1つのモノアルケニルアレーンの分布が制御された共重合体ブロックであり;b)水素化の後は、約0〜10%のアレーン二重結合が還元されており、かつ少なくとも約90%の共役ジエン二重結合が還元されており;c)各Aブロックは約5.0〜約7.5kg/molの数平均分子量を有し、直鎖状HSBCは約70〜約150kg/molの全見かけ数平均分子量を有し、分枝状HSBCは、アーム1本あたり約35〜約75kg/molの全見かけ数平均分子量を有し、d)各Bブロックは、共役ジエン単位に富むAブロックに隣接した末端領域、およびモノアルケニルアレーン単位に富むAブロックに隣接していない1以上の領域を含み;e)水素化されたブロック共重合体中のモノアルケニルアレーンの全量は約20〜約45重量%であり;f)各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%は約10〜約40重量%であり;g)各Bブロックは、10%未満のスチレンブロック性指数を有し;かつh)各Bブロック中のビニルの重量%は少なくとも約40重量%である、熱溶融性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラッシュ成形用、および回転成形などの類似の(焼結)成形技術用に使用されてもよい熱溶融性組成物に関する。より詳細には、本発明は、熱可塑性エラストマー(TPE)に基づく熱溶融性組成物であって、このTPEが水素化されたスチレン系ブロック共重合体(HSBC)である熱溶融性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
スラッシュ成形は、TPEから中空の物品が調製されうるプロセスである。典型的には、このプロセスには、粉末の形態および/またはマイクロペレットの形態のTPE組成物が注入される中空の型を加熱することが伴う。次いでこの型は、回転および加熱され、これによってTPE組成物は「スキン層」へと焼結される。型が冷却されると、完成品は取り出されてもよい。この完成品は、単純な形状または複雑な形状のものでもよい。典型的な製品は、自動車用途で使用されるダッシュボードカバーまたはエアバッグカバーである。他の自動車用内装部品としては、ドアボックス(glove door boxes)、ドアパネル、コンソールなどが挙げられる。この場合、設計の柔軟性、リサイクル性、低温および高温での性能、光安定性、軽量化、および高生産性は、鍵となる性能指標である。
【0003】
現在、PVCがダッシュボードのスキン層に使用されている。PVCは、適度な融解/溶融特性(235℃および80〜150秒)を有し;適切に低い粘度を有して良好な流れを可能にし;粉末として利用でき;良好な引張強さを有し;良好なUV安定性を有し;良好な耐擦り傷性を有し;そして価格が低い。PVCの短所は、比較的高い密度(1.4)、ならびにPVCの環境への影響に起因して顧客および立法者の中の評判が低いこと、曇り、臭気および粘着性を引き起こす特定の可塑剤がPVCの中で使用されること、ならびに最後にリサイクル性の欠如に由来する。
【0004】
コンパウンドと呼ばれることもある、水素化されたスチレン系ブロック共重合体(HSBC)に基づく組成物を使用すると、PVCの欠点の多くを克服することができる。それゆえこの技術思想は、技術革新の努力の焦点となっている。しかし、商業的なスラッシュ成形にとっては、PVCはいまだ一般的な材料である。現在のHSBC組成物は、まだ、従来の商業的な設備で簡単におよび素早く流れ溶融し、丈夫で柔軟性のある物品を与える材料を提供することができない。
【0005】
特許文献1は、コンベヤーベルトであって、ブロック共重合体組成物が、ホットメルトまたは微粉化された粉末のいずれかとして布地の上に付与されており、このホットメルトまたは微粉化された粉末はその後に熱処理によって連続層へと溶融されるコンベヤーベルトに関する。
【0006】
特許文献2は、熱溶融性エラストマー組成物であって、(a)100重量部の、A’B’ブロック共重合体と、少なくとも2つの末端ブロックAおよび少なくとも1つの中間ブロックBを有するマルチブロック共重合体とを含む選択的に水素化されたブロック共重合体成分であって、このA’およびAブロックはモノアルケニルアレーンポリマーブロックであり、B’およびBブロックは実質的に完全に水素化された共役ジエンポリマーブロックであり、A’およびAブロックの数平均分子量は3,000〜7,000の範囲にあり、このマルチブロック共重合体のモノアルケニルアレーン含有量は7〜22重量%の範囲にある選択的に水素化されたブロック共重合体成分と、(b)20〜50phrの少なくとも1つの高メルトフローのポリオレフィンと、(c)0〜19phrの、ナフテン油およびパラフィン油から選択される可塑剤油(plasticizing oil)と、(d)0〜45phrの少なくとも1つのポリ(共役ジエン)ブロック相溶性樹脂であって、このエラストマー組成物は、1400ミクロン(1400μm)以下の粒径を有する少なくとも1つのポリ(共役ジエン)ブロック相溶性樹脂と、を含む熱溶融性エラストマー組成物を提供する。この組成物は低せん断プロセスで使用される。
【0007】
特許文献3は、a)少なくとも2つの末端ポリ(ビニル芳香族化合物)ブロックおよび少なくとも1つの内部ポリ(共役ジエン)ブロックを含有するブロック共重合体であって、このブロック共重合体でのもともとのエチレン性不飽和結合は、任意に、選択的に水素化されていてもよく、このブロック共重合体は、任意に、極性要素でグラフトされていてもよい、ブロック共重合体と、b)非芳香族可塑性油と、c)カーペットの布地の裏側にある末端ブロック相溶性樹脂とを少なくとも含む粉末のブロック共重合体組成物の付与によって得られるリサイクルできるカーペット、ならびにこのようなカーペットの製造のためのブロック共重合体組成物に関する。
【0008】
特許文献4は、800μm以下の粒径を有する自由流動性粉末組成物であって、(a)100重量部の、少なくとも1つのポリ(モノビニル芳香族炭化水素)ブロックおよび少なくとも1つの水素化されたまたは水素化されていないポリ(共役ジエン)ブロックを含み、かつブロック共重合体の総重量に基づいて10〜60重量%の範囲のモノビニル芳香族炭化水素含有量を有するブロック共重合体と、(b)50〜200重量部の可塑性油と、(c)50〜200重量部のポリ(モノビニル芳香族炭化水素)ブロック相溶性樹脂と、(d)組成物の総重量に基づいて0.1〜10重量%の互着防止剤(dusting agent)とを含む組成物に関する。上記の自由流動性粉末組成物の調製のためのプロセスは、互着防止剤および(存在する場合は)発泡剤を除くすべての成分を最初に溶融ブレンドし、次いで冷却することを含む。次いで、得られた組成物はペレット化または顆粒化され、このようにして得られた顆粒またはペレットは、低温で粉砕される。最後に、互着防止剤および任意に発泡剤が、それまでの工程から得られる粉末と乾式ブレンドされる。この自由流動性粉末組成物は、滑らかな表面を有する均一な層を得るのに非常に有用である。これらの層は、カーペットの裏地、コンベヤーベルト、ボトルキャップ封止材用に、成功裏に付与されうる。
【0009】
特許文献5は、ポリプロピレン樹脂、水素化されたスチレンブタジエンゴム、プロセス油、エラストマー(例えば、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体)、接着性改善剤(例えば、酸変性されたポリプロピレンまたはヒドロキシル含有ポリプロピレン)、内部離型剤(例えばジメチルシロキサン)および任意に有機過酸化物をコンパウンディングすることにより製造される、粉末スラッシュ成形用の熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0010】
同様に、特許文献6では、水素化されたスチレン/ブタジエンゴム(H−SBR)、プロセス油および油吸収能力に優れるエラストマーを、100〜800g/10分のMFR(メルトフローレート JIS K720)を有するポリプロピレン樹脂に少なくとも加え、加熱下でこれらの成分を混練することによって、粉末成形用に熱可塑性エラストマー組成物が製造される。
【0011】
特許文献7では、ポリプロピレン樹脂、水素化されたスチレン/ブタジエンゴム、プロセス油および油吸収力に優れるエラストマーから構成される粉末スラッシュ成形用の熱可塑性エラストマー組成物が記載されている。その熱可塑性エラストマー組成物を製造するためのプロセスは、有機過酸化物を上記の成分に加えること、および得られる混合物を加熱しながら混練することを含んでもよい。
【0012】
特許文献8は、ポリプロピレン単独重合体,共重合体、またはターポリマー;オレフィンゴム;スチレンゴム;プロセス油;およびポリプロピレンワックスの混合物である粉末スラッシュ成形用のポリプロピレン系樹脂組成物を記載する。この組成物は、低温耐衝撃性および耐熱性に優れ、不快な臭気を有しない。この組成物は、液体窒素の存在下での凍結粉砕(cryofreeze pulverization)法によって、粉末スラッシュ成形に適した200〜300μmの平均粒径を有する粉末へと形成されてもよい。この粉末は、プライマーコーティングなしでポリウレタンフォームの層および表面処理剤に接着することができる。この粉末は、機器パネルなどの自動車の表面の製造のための内部表面を形成することに特に適している。
【0013】
特許文献9では、50〜97重量%の水素化された共重合体(1)および3〜50重量%の熱可塑性樹脂(2)からなる水素化された共重合体組成物から構成されるスラッシュ成形材料が開示されている。この水素化された共重合体(1)は、共重合体の中に(a)>50重量%〜≦90重量%のビニル芳香族化合物および(b)≦40重量%のビニル芳香族ポリマーブロックを含有する共役ジエンおよびビニル芳香族化合物の組成を含み、この共重合体は、(c)50,000〜1,000,000の重量平均分子量を有し、かつ(d)この共重合体の中の共役ジエン化合物の≧75%が水素化された二重結合である。この水素化された共重合体組成物は粉砕され、粉末スラッシュ成形に使用されて、スキン層材料に適した成形物を与える。
【0014】
特許文献10からは、回転成形における使用のために適切であり、かつ(少なくとも2つのポリスチレン末端ブロックおよび水素化された共役ジエン中間ブロックを有する)SEBS型のブロック共重合体に基づく組成物が公知である。この熱可塑性材料は、互着防止剤と組み合わせると流れて広がり、型の内面上に溶融した熱可塑性層を形成する非常に微細な粉末またはマイクロペレットの形態にある。
【0015】
特許文献11には、ポリプロピレンおよびスチレン系エラストマーのブレンドを含む、柔らかいシートの用途のための同様の組成物が記載されている。この組成物は、粉末および/またはマイクロペレットの形態にあってもよい。この組成物は、エチレン共重合体を含んでもよい。スラッシュ成形のプロセスでは、適切な流動添加剤の添加によって改善された流動が成し遂げられる。
【0016】
特許文献12には、良好な加工性、柔軟性、耐候性および種々の他の特性を有するHSBC組成物が記載されている。しかしながら、スラッシュ成形に優れる組成物は、まだ開示されていない。
【0017】
特許文献13でも、PP、スチレン系エラストマー、直鎖状低密度PEおよび油のブレンドを含む、スラッシュ成形できるTPO組成物が提供されている。
【0018】
同様に特許文献14は、改善された溶融粘度を有するTPO組成物、およびそれを製造する方法を開示する。
【0019】
最後に、特許文献15には、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、粘着性付与樹脂、およびエンジニアリング熱可塑性樹脂を含めた実に様々な他のポリマーとコンパウンディングされてもよい分布が制御されたブロック共重合体が開示されている。このコンパウンドは、例えば、自動車用スキン層のスラッシュ成形のために使用されてもよい。
【0020】
スラッシュ成形用組成物に関するこれらの多くの特許文献にもかかわらず、今なお多くの市販の製品がPVCに基づいている。PVCは、曇り(fogging)、揮発性有機化合物の放出、油および可塑剤、臭気などが挙げられる種々の短所を有する。これらの短所は、SBCに基づく組成物を用いると克服することができるであろうが、これらの新しいSBCコンパウンドの特性および/または加工性は、いまだ十分に良好とはいえない。
【0021】
例えば自動車用途(ダッシュボード)における使用のために要求される特性には、典型的には11±2MPaの引張強さσおよび≧250%の破断点伸び(elongation at break)εが含まれる。実際に、引張強さσ≧10が要求される。他の特性としては、硬度、密度、耐摩耗性、耐擦り傷性、曇り、可燃性および耐光堅ろう度が挙げられる。より詳細には、自動車用途(ダッシュボード)において、この新しい組成物は、以下の性能特性を満たすべきである:
・ASTM−D2240による、60〜95 ショアAの硬度;
・ASTM D412−Cによる、引張強さ≧8MPa;
・コンパウンド融解試験に合格すること。
【0022】
このコンパウンド融解試験は、スラッシュ成形/回転成形加工に対する組成物の適性を判定するために行われる。この試験は、熱可塑性材料が、制御された条件下で加熱されたときに、特定の規定された融解挙動特徴を満たすかどうかを示す。目視による評価および厚さ変化の評価の両方が肯定的であると示される場合に、試験片はこの試験に合格する。このコンパウンド融解試験は、実験項にさらに詳細に記載される。
【0023】
さらに、上記の特性に加えて外観および感触も重要である。例えば、最終製品は、可塑性の(粘着性のあるまたは油っぽい)感触を持つべきではない。最終製品は、低品質の安価なプラスチック類が使用されているときの消費者の印象に関連する、「安っぽく」または低品質であるように見えてはならない。同様に、最終製品は、ピンホールがないものでなければならないが、望まれない流動パターンも類似の凹凸も示してもいけない。
【0024】
加工性の点では、非常に重要な要求特性は融解速度であり、これは、例えば本願明細書に後述される方法によって試験することができる。
【0025】
本願明細書では、いずれかの所定の温度での溶融粘度は、ゼロせん断速度粘度によって規定される特性など、低せん断速度で測定される特性と呼ばれる。スラッシュ成形における使用のための熱溶融性組成物の溶融粘度は、平行板レオメータによって加えられるせん断速度などの低せん断速度で測定される場合、180℃〜260℃の加工温度範囲にわたって50Pa.s〜250Pa.sの範囲にあるべきである(これに限定されるわけではない)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】欧州特許出願公開第673970(A)号明細書
【特許文献2】国際公開第99/32558号パンフレット
【特許文献3】国際公開第95/03447号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第659831(A)号明細書
【特許文献5】特開平11−092602号公報
【特許文献6】特開平11−342509号公報
【特許文献7】欧州特許出願公開第811657(A)号明細書
【特許文献8】米国特許第6906144号明細書
【特許文献9】特開2003−246910号公報
【特許文献10】欧州特許出願公開第0733677(A)号明細書
【特許文献11】欧州特許出願公開第1396525(A)号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開第1605002(A)号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2006100380号明細書
【特許文献14】欧州特許出願公開第2009053(A)号明細書
【特許文献15】国際公開第03/066731号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
興味深いことに、本発明において、現在スラッシュ成形用途でPVCを使用しているエンドユーザーが困難なく(新しい設備の必要性なしに)使用することができ、それによってPVCと比べてより低い加工温度および短縮されたサイクル時間で製品が製造される組成物が見出された。この製品は環境に優しく(ハロゲン不含で、容易にリサイクルできる)、優れた感触および機械的特性の優れた組み合わせを有する。このように、本発明は、特定のコンパウンドに基づく。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、請求項1に記載の熱溶融性組成物を提供する。さらに、この新しい組成物を使用して型の内面上に融合した熱可塑性層を生成するための方法が提供される。この新しい組成物に基づく溶融した熱可塑性層を含むダッシュボードおよび類似の製品も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】当該新しい熱溶融性組成物からスラッシュ成形によって製造されうるダッシュボードのスキン層の写真である。
【図2】スラッシュ成形で使用される熱溶融性組成物(マイクロペレットおよび粉末)の写真である。
【図3】融解試験において「不合格」と評価された試験片(左)および「合格」と評価された試験片(右)の写真である。左側の試験片は、尖った/正方形の縁がまだ存在することを示すのに対し、右の試験片は丸くなった/滑らかな縁(これらは融解の証拠である)を示し、表面欠陥を示さない。
【発明を実施するための形態】
【0030】
当該熱溶融性組成物は、
(i)約40〜約70重量%の選択的に水素化されたスチレン系ブロック共重合体(HSBC)と、
(ii)0〜約15重量%のプロピレン単独重合体および/またはプロピレン共重合体(PP)と、
(iii)約1〜約30重量%のブチレン単独重合体(iiia)、ブチレン共重合体(iiib)、またはブチレン単独重合体(iiia)およびブチレン共重合体(iiib)の組み合わせ(PB)と、
(iv)0〜約20重量%の、ナフテン油およびパラフィン油から選択される可塑性油と、
(v)0〜約10重量%の耐引掻き性付与剤(scratching agent)と、
(vi)0〜約10重量%の互着防止剤と、
(vii)0〜約10重量%の1以上の添加剤と
を含む。
【0031】
この新しい組成物において成分(i)として使用されるためのHSBCは、モノアルケニルアレーン末端ブロックAならびにモノアルケニルアレーンおよび共役ジエンの独特の中間ブロックBを含有する有機ポリマーであって、このモノアルケニルアレーンおよび共役ジエンは分布が制御されて並んでいる有機ポリマーである。分布が制御されたブロックBを有するブロック共重合体は公知であり、欧州特許出願公開第1474458(A)号明細書に記載されている。本発明の目的のために、「分布が制御された」は、以下の属性を有する分子構造を指すと定義される:(1)共役ジエン単位に富む(すなわち、共役ジエン単位の平均量よりも多くを有する)、モノアルケニルアレーン単独重合体(「A」)ブロックに隣接した末端領域;(2)モノアルケニルアレーン単位に富む(すなわち、モノアルケニルアレーン単位の平均量よりも多くを有する)、Aブロックに隣接していない1以上の領域;および(3)比較的低いブロック性を有する全体構造。本発明の目的のために、「〜に富む」は、平均量よりも多い、好ましくは平均量よりも5%超多いと定義される。
【0032】
スチレンブロック性指数は、単に、全スチレン単位に対するブロック状スチレン(または他のアルケニルアレーン)の百分率である:
ブロック性%=100×(ブロック状スチレン単位/全スチレン単位)。
【0033】
本発明の熱溶融性組成物で使用されるHSBCについては、ブロックBのスチレンブロック性指数が約10未満であることが好ましい。
【0034】
好ましくは、この分布が制御された共重合体ブロックは、3つの別個の領域 −ブロックの末端にある共役ジエンに富む領域およびブロックの中央または中心近くにあるモノアルケニルアレーンに富む領域− を有する。典型的には、Aブロックに隣接した領域は、当該ブロックの最初の15〜25%を含み、かつジエンに富む領域(1つまたは複数)を含み、残部はアレーンに富むと考えられる。用語「ジエンに富む」は、その領域では、アレーンに対するジエンの比が、アレーンに富む領域よりもある程度高いということを意味する。望まれるものは、モノアルケニルアレーン/共役ジエンの分布が制御された共重合体ブロックであって、モノアルケニルアレーン単位の割合が、ブロックの中央または中心近くの最大値に向かって徐々に増加し(ABA構造を記載する場合)、その後、そのポリマーブロックが完全に重合されるまで徐々に減少する共重合体ブロックである。この構造は独特のものであり、先行技術で論じられる漸減型(tapered)構造および/またはランダム構造とは異なる。
【0035】
このモノアルケニルアレーンは、スチレン、α−メチルスチレン、para−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、およびpara−ブチルスチレンまたはこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。これらのうちで、スチレンが最も好ましい。共役ジエンは、1,3−ブタジエン、およびイソプレン、ピペリレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、および1−フェニル−1,3−ブタジエンなどの置換ブタジエン、またはこれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。これらのうちで、1,3−ブタジエンが最も好ましい。本願明細書で、および特許請求の範囲で使用する場合、「ブタジエン」は、特定して「1,3−ブタジエン」を指す。
【0036】
この選択的に水素化されたモノアルキルアレーン−共役ジエンブロック共重合体は、A−B−Aなどの直鎖状構成を有してもよい。このブロック共重合体は、分枝状(枝分かれ、branched)ポリマー、(A−B)Xまたは(A−B−A)Xを形成するように構造化されていてもよく、または分枝状および直鎖状の構造の両方が混合物の中で合わせられてもよい。いくつかのA−Bジブロックポリマーは、HSBCの約30重量%まで存在することができるが、好ましくは当該ブロック共重合体の少なくとも約70重量%は、強度を付与するために、A−B−Aまたは分枝状(これらでなければ、1分子あたり2以上の末端樹脂状ブロックを有するように分枝状)である。他の構造としては、(A−B)および(A−B)Aが挙げられる。上記の式では、nは約2〜約30、好ましくは約2〜約15、より好ましくは約2〜6の整数であり、Xはカップリング剤の残部または残基である。
【0037】
この種々のブロックの分子量を制御することも重要である。所望の数平均ブロック量(block weight)は、モノアルケニルアレーンAブロックについては、約5.0〜約7.5kg/molである。連続的なABAまたはカップリングされた(AB)Xブロック共重合体であってもよいトリブロックについては、全見かけ数平均分子量は、約70〜約150kg/mol、好ましくは約125〜約150kg/molであるべきであり、カップリングされた共重合体については、アーム1本あたり約35〜約75kg/mol、好ましくはアーム1本あたり約62,500〜約75,000であるべきである。本願明細書全体を通して使用される場合、表現「見かけ」を用いると、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)とも呼ばれるゲル透過クロマトグラフィ(GPC)を用いて、(ASTM D5296−05に記載される方法と同様の方法を使用して)ポリスチレンの較正用標品を使用して測定されるポリマーの分子量を意味する。本発明では数平均分子量が参照される。アニオン重合によるポリマーについての分子量分布(M/M)は小さい。それゆえ、当該技術分野で一般的であるように、数平均分子量としてピーク位置が使用される。なぜなら、ピーク分子量(M)と数平均分子量(M)との差は非常に小さいからである。本発明の別の重要な態様は、当該分布が制御された共重合体ブロックの中での微細構造または共役ジエンのビニル含有量を制御することである。用語「ビニル含有量」は、共役ジエンが1,2−付加(ブタジエンの場合。イソプレンの場合は、3,4−付加ということになる)によって重合するということを指す。従って、「ビニル」がPVCを指すことはない。共役ジエンとしてのブタジエンの使用に言及する際には、この共重合体ブロックの中の重合した(condensed)ブタジエン単位の少なくとも約40重量%、好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは約60〜約80重量%、最も好ましくは約65〜約75重量%が、プロトンNMR分析によって測定した場合に、1,2ビニル配置を有することが好ましい。
【0038】
分布が制御されたBブロックについては、各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%は、約10重量%〜約40重量%、好ましくは約15〜30重量%、最も好ましくは約20重量%〜約25重量%である。
【0039】
当該ブロック共重合体は、選択的に水素化されている。水素化は、先行技術で公知のいくつかの水素化プロセスまたは選択的水素化プロセスのいずれによっても行うことができる。例えば、このような水素化は、例えば、米国特許第3670054号明細書、および米国特許第3700633号明細書に教示される方法などの方法を使用して成し遂げられた。水素化は、共役ジエン二重結合の少なくとも約90%が還元され、アレーン二重結合の0〜10%が還元されるような条件下で行うことができる。好ましい範囲は、還元される共役ジエン二重結合の少なくとも約95%であり、より好ましくは共役ジエン二重結合の約98%が還元される。あるいは、芳香族不飽和(結合)も上述の10%のレベルを超えて還元されるように、当該ポリマーを水素化することも可能である。その場合、共役ジエンおよびアレーンの両方の二重結合は、90%以上還元されてもよい。
【0040】
換言すると、HSBC(i)は、好ましくは、一般構成A−B−A、(A−B)、(A−B−A)、(A−B−A)X、(A−B)Xまたはこれらの混合物を有する選択的に水素化されたブロック共重合体であって、式中、nは2〜約30、好ましくは2〜約15、より好ましくは2〜6の整数であり、Xはカップリング剤残基であり、かつ:
a)水素化の前には、各Aブロックはモノアルケニルアレーンポリマーブロックであり、各Bブロックは、少なくとも1つの共役ジエンおよび少なくとも1つのモノアルケニルアレーンの分布が制御された共重合体ブロックであり;
b)水素化の後は、約0〜10%、好ましくは5%未満のアレーン二重結合が還元されており、かつ少なくとも約90%、好ましくは約95%以上、さらにより好ましくは約98%以上の共役ジエン二重結合が還元されており;
c)(GPCによって測定される)全見かけ数平均分子量は、直鎖状HSBCについては約70〜約150kg/mol、好ましくは約125〜約150kg/molの範囲にあり、分枝状HSBCの各アームについては約35〜約75kg/mol、好ましくは約62.5〜約75kg/molの範囲にあり、各Aブロックは約5.0〜約7.5kg/molの数平均分子量を有し;
d)各Bブロックは、共役ジエン単位に富むAブロックに隣接した末端領域、およびモノアルケニルアレーン単位に富むAブロックに隣接していない1以上の領域を含み;
e)水素化されたブロック共重合体中のモノアルケニルアレーンの全量は約20〜約45重量%、好ましくは約30〜約40重量%であり;かつ
f)各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%は約10〜約40重量%、好ましくは約15〜約30重量%、最も好ましくは約20〜約25重量%であり;
g)各Bブロックは、10%未満のスチレンブロック性指数を有し;かつ
h)各Bブロック中のビニルの重量%は少なくとも約40重量%である、
選択的に水素化されたブロック共重合体である。
【0041】
成分(ii)として、プロピレン単独重合体,共重合体(この定義はターポリマーを包含する)を含めてもよいが、プロピレンポリマー(PP)の使用は必須ではない。適切なプロピレンポリマーとしては、結晶性のポリプロピレン、ならびに少量の、通常はポリプロピレンの総重量に基づき約15重量%以下の他のオレフィンモノマー、例えばエチレン、ブテン、オクテンなどを含有する共重合体およびターポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。適切なプロピレンポリマーは、2.16キログラム(kg)の重量を用いて230℃で測定する場合、約25〜約150グラム/10分(g/10分)、好ましくは約75〜約125g/10分、より好ましくは約100g/10分のメルトフローレート(MFR(D):ASTM D1238)を有する。適切なPP共重合体は、Lyondellbasell製のMoplen(商標) EP648Vである。
【0042】
成分(iii)は、ブチレンの単独重合体(「PB単独重合体」)、または少量の、2〜20個の炭素原子を有する別のα−オレフィンを含むブチレンの共重合体(「PB共重合体」)、またはこれらの組み合わせであることができる。好ましくは、成分(iii)は、単独重合体および共重合体(この定義はターポリマーを包含する)の組み合わせである。成分(iii)は、約1〜30重量%の量で、より好ましくは10〜30重量%の量で存在することができる。単独重合体および共重合体の組み合わせの場合には、共重合体に対する単独重合体の重量−重量比は、好ましくは約1:1〜約10:1、より好ましくは約2:1〜約3:1である。
【0043】
PB単独重合体のメルトフローレート(MFR(E):ASTM D1238)は、2.16kgの重量を用いて190℃で測定する場合、約0,1〜500g/10分、好ましくは約0,5〜250g/10分、より好ましくは約200g/10分の範囲にあることが適切である。適切なPB単独重合体は、Lyondellbasell製のポリブテン−1 等級PB0800Mである。
【0044】
共重合体を考慮すると、共重合の対象となる別のα−オレフィンの比は、20mol%以下、好ましくは10mol%以下、特に好ましくは5mol%以下である。共重合の対象となる別のα−オレフィンの例としては、エチレン、プロピレン、ヘキセン、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1、オクタデセン−1などが挙げられる。好ましいPB共重合体は、(LyondellBasellにより)商標 Koattro、等級KT AR03またはKT AR05として販売されているプラストマーである。この共重合体は、約890kg/mの密度(ISO 1183による)、約114℃の融解温度(DSCによって測定する)、および約0.8g/10分のMFR(E)(190℃/2.16kg)を有する。
【0045】
可塑剤が、例えば、ホワイトパラフィン油(white paraffinic oil)または他の石油由来の油、オレフィンオリゴマー、低分子量ポリマー、ならびに植物油および動物油ならびにそれらの誘導体の形態で含まれてもよい。この可塑剤は、曇りまたは滲み出しを引き起こしてはいけない。
【0046】
当該熱溶融性組成物は、耐引掻き性付与剤および互着防止剤、UV安定剤および熱安定剤(BASF製のLowilite(商標) 26、Tinuvin(商標) 326および3V Sgima製のUvasorb(商標) S26など)、酸化防止剤(Irganox(商標) 1010、Irgafos(商標) 168など)、有機および無機の充填剤、色素(Cabot製のPlasblak(登録商標)など)、離型剤、分散剤ならびに他の添加剤などの添加剤をさらに含んでもよい。
【0047】
適切な耐引掻き性付与剤(擦り傷防止剤としても知られる)は、オレイン酸アミドおよびエルカ酸アミドなどの脂肪酸アミド、ならびにシロキサン、例えば高分子量ポリジメチルシロキサンである。この熱溶融性組成物は、10重量%まで、好ましくは約1〜約3重量%の耐引掻き性付与剤を含んでもよい。
【0048】
互着防止剤は、0.1〜20μmの体積平均粒径を有する無機の微細粉末、例えば酸化マグネシウム(HallStar製のMaglite(商標) Dなど)、および酸化亜鉛であることが適切である。タルクおよびモンモリロナイトクレーなどの水和ケイ酸塩も適切である。この熱溶融性組成物は、0〜10重量%、好ましくは約3〜7重量%の互着防止剤を含んでもよい。
【0049】
適切な熱安定剤としては、フェノール系化合物、ヒドロキシルアミン、ホスフェートおよびこれらの組み合わせが挙げられる。この熱溶融性組成物は、0.1〜4重量%の熱安定剤を含んでもよい。
【0050】
UV安定剤、酸化防止剤、有機および無機の充填剤、色素、離型剤ならびに分散剤は、典型的には、約0.1〜3重量%の量で使用される。
【0051】
上記の熱溶融性組成物の調製のためのプロセスは、最初に、互着防止剤を除くすべての成分を、公知の粉末混合装置を使用して溶融ブレンドすることと、次いで冷却することを含む。次いで、得られた組成物はペレット化または顆粒化され、このようにして得られた顆粒またはペレットは低温粉砕される。最後に、互着防止剤が、それまでの工程から得られる粉末と乾式ブレンドされる。あるいは、得られた組成物は、1400μmよりも小さい粒径を有するマイクロペレットの形態で調製される。好ましくは、粉砕によってまたはマイクロペレット化によって得られる50μm〜800μmの範囲のサイズの粒子が使用される。より好ましくは、この熱溶融性組成物は、粉末(800μmよりも小さい、好ましくは0.01μm〜500μmの範囲の粒径)およびマイクロペレットの両方を含むことが好ましい。
【0052】
スラッシュ成形は、典型的には、PVC系熱溶融性組成物とともに現在使用される従来の設備で行われる。
【0053】
以下の実施例は本発明を説明する。これらの実施例は説明の目的で提示されており、本発明を限定しないということは理解される。これらの実施例では、すべての部数および百分率は、特段の記載がない限り、組成物の総重量に基づく重量によるものである。
【実施例】
【0054】
異なるHSBCの効果を示すために、54.2重量%のHSBCを含む8つの配合物を調製した。使用したHSBCの仕様は表1に列挙されており、他の成分および当該配合物の中でそれらが存在する量は表2に列挙されている。Kraton A−1536、G−1650およびG1651、(Kratonは登録商標である)ならびにポリマー4および5は比較目的で含められている。これらのポリマーは、本発明の範囲外のものである。
【0055】
(例えば、単軸押出機、二軸押出機またはバンバリーミキサーを使用して)高せん断条件下で成分(互着防止剤を除く)を溶融ブレンドし、マイクロペレットまたはペレットを得ることによって、上記熱溶融性組成物を製造した。マイクロペレットは、約200〜1000マイクロメートルの平均サイズを有する。ペレット(1000マイクロメートルよりも大きい寸法を少なくとも特徴とする粒子)を低温粉砕した。この低温粉砕プロセスによって、マイクロペレットまたはペレットのいずれもが、サイズが約100〜700マイクロメートルである粒子(これは熱溶融性粉末である)へと変換される。マイクロペレットおよび熱溶融性粉末を0%−100%から100%−0%の範囲で一緒に混合した。互着防止剤は、低温粉砕の間に加えたか、または当該熱溶融性組成物に混ぜ込んだ。
【0056】
【表1】

【表2】

【0057】
配合物は、典型的には、30:70(重量%)の割合で、マイクロペレットおよび粉末の両方からなっていた。
【0058】
【表3】

【0059】
適正な性能特性、すなわち:
・50ショアA(ASTM−D2240)より大きい、好ましくは60〜95 ショアAの、3秒後の硬度;
・引張強さ≧8MPa(ASTM D412−C);および
・コンパウンド融解試験に合格
を有する配合物を選択するために、上記配合物の物性を測定した。
【0060】
スラッシュ成形/回転成形加工に対する材料の適性を判定するために、コンパウンド融解試験を行った。この試験は、熱可塑性材料が、制御された条件下で加熱されたときに、特定の規定された融解挙動特徴を満たすかどうかを示す。この目的のために、当該配合物の試験片を、射出成形した板から切り出した。試験片の長さ寸法は50×2×2mmであった。融解挙動は、試験片をホットプレート上に一定時間のあいだ置くことにより判定した。厚さの変化(Vt)を測定するために、試験片の厚さを加熱の前後で測定した。
【0061】
目視による評価および厚さ変化の評価の両方が肯定的であると示された場合に、試験片を「合格」と示した。この目視による評価は、加熱後の試験片が、
・丸くなった縁を示し、
・表面欠陥(点、気泡、ピンホール)を示さず、かつ
・グリース状に/油っぽく/粘着性があるように見えなかった
ときに、肯定的と示した。厚さの変化(Vt)が50%以上である場合には、厚さ変化の評価は、肯定的と示した。融解試験の結果を、射出成形した試料に対して測定した場合の物性と一緒に表3に列挙する。
【0062】
【表4】

【0063】
本発明は、配合物5および配合物6で具体化され、他は比較例である。配合物5(ポリマー2)および配合物6(ポリマー3)だけが、ショアA硬度、引張強さおよびコンパウンド融解試験についての上記の基準を満たした。
【0064】
下記の表4では、配合物3および配合物5の引張強さ(σ)および破断点伸び(ε)は、自動車製造業者によって典型的に規定されるこれらの特性の値と一緒に、列挙されている。配合物3は、融解試験を満たさず単に伸びの要求だけを満たす比較例であり、他方で配合物5は、これらの性能特性を実際に満たす本発明に係る例を代表する。特性σおよびεは、DIN EN ISO 527−2(試験片番号5A、試験速度100mm/分)に従って測定した。このように、表3および表4の中の引張強さ(σ)についての値は、異なる方法を用いて測定されており、それゆえ、これらの値は互いに比較するべきではない。
【0065】
【表5】

【0066】
成分(iii)の効果:
当該配合物で使用するポリブチレン成分の影響を試験するために、上記の配合物と同様であるが、しかしながら異なる量のこの成分を有する3つの配合物を製造した。ポリマー2をHSBCとして使用した。配合物成分およびこれらの成分が存在する量を表5に列挙する。
【0067】
【表6】

【0068】
最適の配合物組成を確立するために、これらの配合物に対してコンパウンド融解試験を行った。融解試験を230℃および260℃の温度で行い、以下の評価を得た。
【0069】
【表7】

【0070】
これらの結果は、PB単独重合体およびPB共重合体の組み合わせを用いた配合物9はこれらの性能特性を最も満足させる配合物であるということを示す。とはいうものの、高められた試験温度での結果は、PB単独重合体のみ(配合物11)、またはPB共重合体のみ(配合物10)を用いて満足できる配合物を調製することが可能であるということも示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1400μm以下の粒径を有するペレットおよび/または粉末の形態の熱溶融性組成物であって、
(i)約40〜約70重量%の選択的に水素化されたスチレン系ブロック共重合体(HSBC)と、
(ii)0〜約15重量%のプロピレン単独重合体および/またはプロピレン共重合体(PP)と、
(iii)約1〜約30重量%のブチレン単独重合体(iiia)、ブチレン共重合体(iiib)、または前記ブチレン単独重合体(iiia)および前記ブチレン共重合体(iiib)の組み合わせ(PB)と、
(iv)0〜約20重量%の、ナフテン油およびパラフィン油から選択される可塑性油と、
(v)0〜約10重量%の耐引掻き性付与剤と、
(vi)0〜約10重量%の互着防止剤と、
(vii)0〜約10重量%の1以上の添加剤と
を含み、前記HSBC(i)は、一般構成A−B−A、(A−B)、(A−B−A)、(A−B−A)X、(A−B)Xもしくはこれらの混合物を有する直鎖状または分枝状の水素化されたブロック共重合体であって、式中、nは2〜約30の整数であり、Xはカップリング剤残基であり、かつ:
a)水素化の前には、各Aブロックはモノアルケニルアレーンポリマーブロックであり、各Bブロックは、少なくとも1つの共役ジエンおよび少なくとも1つのモノアルケニルアレーンの分布が制御された共重合体ブロックであり;
b)水素化の後は、約0〜10%の前記アレーンの二重結合が還元されており、かつ少なくとも約90%の前記共役ジエンの二重結合が還元されており;
c)各Aブロックは約5.0〜約7.5kg/molの数平均分子量を有し、前記直鎖状HSBCは約70〜約150kg/molの全見かけ数平均分子量を有し、前記分枝状HSBCは、アーム1本あたり約35〜約75kg/molの全見かけ数平均分子量を有し;
d)各Bブロックは、共役ジエン単位に富む前記Aブロックに隣接した末端領域、およびモノアルケニルアレーン単位に富む前記Aブロックに隣接していない1以上の領域を含み;
e)前記水素化されたブロック共重合体中のモノアルケニルアレーンの全量は約20〜約45重量%であり;かつ
f)各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%は約10〜約40重量%であり;
g)各Bブロックは、10%未満のスチレンブロック性指数を有し;かつ
h)各Bブロック中のビニルの重量%は少なくとも約40重量%である、
熱溶融性組成物。
【請求項2】
前記モノアルケニルアレーンはスチレンであり、前記共役ジエンはブタジエンである、請求項1に記載の熱溶融性組成物。
【請求項3】
前記HSBC(i)は45〜55重量%の量で存在する、請求項1または請求項2に記載の熱溶融性組成物。
【請求項4】
前記直鎖状HSBCは、125〜150kg/molの全見かけ数平均分子量を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱溶融性組成物。
【請求項5】
前記HSBC中のモノアルケニルアレーンの全量は約30〜約40重量%である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の熱溶融性組成物。
【請求項6】
各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%は約15〜約30重量%であり、各Bブロック中のモノアルケニルアレーンの重量%は約20〜約25重量%であり、各Bブロック中のビニルの重量%は少なくとも約60重量%、好ましくは約60〜約80重量%である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の熱溶融性組成物。
【請求項7】
前記ブチレン共重合体(iiib)は、5kgの重量を用いて190℃で測定する場合、約0.1〜約500g/10分のメルトフローレートを有するブチレンおよびプロピレンの共重合体である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の熱溶融性組成物。
【請求項8】
前記ブチレン共重合体(iiib)は、5kgの重量を用いて190℃で測定する場合、約0.8g/10分のメルトフローレートを有する、請求項7に記載の熱溶融性組成物。
【請求項9】
前記組成物は、約10〜約30重量%の、ブチレン単独重合体(iiia)、ブチレン共重合体(iiib)、または前記ブチレン単独重合体(iiia)および前記ブチレン共重合体(iiib)の組み合わせ、好ましくは(iiia)および(iiib)の組み合わせの形態のPBを含む、請求項7または請求項8に記載の熱溶融性組成物。
【請求項10】
ブチレン単独重合体(iiia) 対 ブチレン共重合体(iiib)の比は、約1:1〜約10:1、好ましくは約2:1〜約3:1である、請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の熱溶融性組成物。
【請求項11】
前記添加剤(iv)は、1以上の可塑剤、耐引掻き性付与剤、互着防止剤、着色剤、安定剤および/または充填剤を含む、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の熱溶融性組成物。
【請求項12】
請求項1に記載の熱溶融性組成物を使用して型の内面に溶融した熱可塑性層を生成する方法であって、
a)粉末の形態および/またはマイクロペレットの形態の前記熱溶融性組成物を型の中へと注入する工程と、
b)前記熱溶融性組成物を熱可塑性層へと焼結するのに十分な条件で、前記型を回転、または回転かつ振盪、および加熱する工程と、
c)前記型および前記熱可塑性層を冷却する工程と、
を含む方法。
【請求項13】
前記熱溶融性組成物は、約180℃〜約260℃の温度で焼結される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
溶融した熱可塑性層を含む物品であって、前記熱可塑性層は、請求項1に記載の熱可塑性組成物に基づく、物品。
【請求項15】
前記物品はダッシュボードである、請求項14に記載の物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−518156(P2013−518156A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550387(P2012−550387)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050538
【国際公開番号】WO2011/092071
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(511262429)エッセオ.エッフェ.ティエエッレ.ソチエタ ペル アチオニ (1)
【出願人】(510145211)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】