説明

スラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法

【課題】スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒のアルカリ性水溶液による洗浄に伴い、遊離砥粒から溶出した金属イオンによるシリコンウェーハの金属汚染を防止可能なスラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法を提供する。
【解決手段】pH9以上のアルカリ性水溶液に、キレート剤が添加されたスラリー流通経路用洗浄液を使用してスラリー流通経路を洗浄する。これにより、スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒をアルカリ性水溶液により洗浄する際、遊離砥粒から溶出した金属イオンによるシリコンウェーハの金属汚染を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法、詳しくはスラリーの流通経路(スラリー供給タンク、配管など)の内壁面に堆積した遊離砥粒を洗浄するスラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウェーハの研磨は、上面に研磨布が展張された研磨定盤と、研磨定盤の直上に配置された研磨ヘッドとを備えた研磨装置により行われる。具体的には、研磨ヘッドの下面に固定されたキャリアプレートに、表面を下に向けてシリコンウェーハを保持し、遊離砥粒(研磨砥粒)を含むスラリーを研磨布に供給しながら、研磨定盤および研磨ヘッドを相対回転させて、シリコンウェーハを研磨布に押し付ける。これにより、シリコンウェーハの表面が研磨される。
スラリーは、アルカリ性水溶液中に焼成シリカからなる遊離砥粒が分散されたものである。研磨装置へのスラリーの供給は、スラリーポンプにより、スラリー供給タンク内のスラリーを、配管を通して、研磨布上に配置されたスラリーノズルから流下させることで行われる。
【0003】
ところで、上述したようにスラリー中には、焼成シリカからなる遊離砥粒が含まれている。そのため、研磨装置を長期間稼働することで、スラリー供給タンクの内壁面および配管の内壁面に、多量の遊離砥粒が堆積して固化していた。
そこで、従来、この堆積した遊離砥粒(堆積物)を除去するため、研磨装置の稼働を停止し、スラリー供給タンクおよび配管に、pH9〜pH13のアルカリ性水溶液(水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液など)を封入または循環させる洗浄方法が知られている(例えば特許文献1)。すなわち、堆積物をアルカリ性水溶液によりエッチングし、その後、超純水により堆積物の除去面をリンスする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−34809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような洗浄後、シリコンウェーハの研磨を再開したとき、シリコンウェーハの金属不純物による汚染の度合いが高まるという課題があった。これは、上記堆積した遊離砥粒をアルカリ性水溶液によりエッチングしたとき、遊離砥粒に含まれた金属不純物がアルカリ性水溶液中に溶出することを原因としている。すなわち、溶け出した金属不純物は、スラリー供給タンクの内壁面および配管の内壁面に付着する。その後、研磨の再開に伴い、スラリーをスラリー供給タンクなどに充填した際、スラリー供給タンクの内壁面などに付着した金属不純物がスラリーに溶け込み、その結果、金属不純物が研磨中のシリコンウェーハを汚染していた。
【0006】
そこで、発明者は、鋭意研究の結果、金属イオンを捕獲、錯体化可能なキレート剤に着目した。すなわち、スラリー供給タンクの内壁面などに堆積した遊離砥粒をエッチングしながら、その遊離砥粒から溶出した金属イオンを、キレート剤によって捕獲、錯体化して廃棄すれば、スラリー供給タンクの内壁面などへの金属イオンの付着を防止し、その後、スラリー供給タンクなどへ充填されたスラリー中への金属イオンの溶け込みによるシリコンウェーハの金属汚染も防止可能であることを知見し、この発明を完成させた。
【0007】
この発明は、スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒のアルカリ性水溶液による洗浄に伴い、遊離砥粒から溶出した金属イオンを原因とするシリコンウェーハの金属汚染を防止可能なスラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、pH9以上のアルカリ性水溶液に、キレート剤が添加されたスラリー流通経路用洗浄液である。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、スラリー流通経路にスラリー流通経路用洗浄液を供給することで、スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒がエッチングされる。このとき、遊離砥粒から金属イオンが溶出するが、金属イオンはキレート剤によって捕獲、錯体化される。よって、錯体化後の金属イオンを廃棄することで、スラリー流通経路の内壁面への金属イオンの付着が防止される。その結果、スラリー流通経路の内壁面からスラリー中へ溶け込んだ金属イオンによるシリコンウェーハの金属汚染を防止することができる。
【0010】
スラリー流通経路としては、例えば、スラリーが貯留される各種のタンク(スラリー供給タンク、スラリー回収タンクなど)を採用することができる。その他、スラリーが流通する各種の配管(スラリー供給用の配管、スラリー回収用の配管など)や各種の流路などを採用することができる。
スラリーとしては、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ性水溶液中に所定量の遊離砥粒が混入されたものを採用することができる。遊離砥粒中には、遊離砥粒の製造過程での金属不純物の混入や、スラリー溶液中に含まれる金属不純物の拡散などにより、Al、Cr、Fe、Ni、Cu、Znなどの金属が含まれている。
スラリーの用途としては、例えば、シリコンウェーハに対する各種の研磨、各種の研削などが挙げられる。その他、化合物半導体ウェーハやガラス基板などの研磨、研削などでもよい。
遊離砥粒の素材としては、スラリー流通経路用洗浄液によりエッチング除去が可能なシリカ、酸化セリウム(CeO)などが挙げられる。
スラリー流通経路用洗浄液の使用時の液温は、15℃〜60℃である。15℃未満では、遊離砥粒に対するエッチングレートが低くなる。また、60℃を超えると、キレート剤による錯体形成能力が低下する。このため、スラリー流通経路用洗浄液の使用時の好ましい液温は、15℃〜60℃である。
【0011】
アルカリ性水溶液としては、例えば水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液などを採用することができる。
アルカリ性水溶液がpH9未満では、ウェーハ加工用スラリーの遊離砥粒として一般的に用いられるシリカの場合、アルカリ性水溶液に難溶解である。このため、アルカリ性水溶液の好ましいpHは9以上(特に好ましくは、pH10〜pH13)である。
キレート(chelate)剤としては、金属イオンに対するキレート能力を有する物質であれば任意である。キレートとは、複数の配位座を有する配位子による金属イオンへの結合(配位)をいう。
【0012】
キレート剤の種類としては、例えばホスホン酸系キレート剤、アミノカルボン酸系キレート剤などを採用することができる。ただし、アルカリ性水溶液への溶解性を考慮した場合には、アミノカルボン酸系キレート剤が好ましい。さらに、重金属イオンのキレート能力を考慮した場合には、EDTA(Ethylene Diamine Tetraacetic Acid)またはDTPA(Diethylene Triamine Pentaacetic Acid)がより好ましい。
キレート剤により捕獲される金属イオンとしては、例えばCu、Zn、Fe、Cr、Ni、Alなどが挙げられる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記キレート剤がアミノカルボン酸系である請求項1に記載のスラリー流通経路用洗浄液である。
キレート剤として、アミノカルボン酸系のものを採用したので、スラリー流通経路用洗浄液の主剤であるアルカリ性水溶液に対して高い溶解性が得られる。しかも、スラリーが研磨に用いられた場合でも、アミノカルボン酸系キレート剤であれば、仮にウェーハ表面に付着しても、キレート剤成分が抵抗率に影響を与えるドーパントとして作用しない。そのため、キレート剤がシリコンウェーハの汚染物質となり難い点で有効である。
アミノカルボン酸系キレート剤としては、例えば、アルカリ性水溶液に対しての溶解度が高いNTA(Nitrilo Triacetic Acid)、1〜4価の金属イオンと錯形成し、8座配位での錯体安定度が高く、アルカリ性水溶液に対して溶解度が高いEDTA、キレート剤としての性質はEDTAに類似し、8座配位での錯体安定度がEDTAより高いDTPAを採用することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記キレート剤がDTPAである請求項2に記載のスラリー流通経路用洗浄液である。
アミノカルボン酸系キレート剤の中でも、DTPAを採用したので、金属イオン、特に重金属イオンに対する高いキレート能力と、錯形成後の高い安定性が得られる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記キレート剤の濃度が0.3ppm以上である請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載のスラリー流通経路用洗浄液である。
0.3ppm未満では、アルカリ性水溶液成分であるNa、Kなどのイオンと結合し、目的とする金属との錯体形成が弱くなってしまう。キレート剤の好ましい濃度は5〜50ppmである。
【0016】
請求項5に記載の発明は、pH9以上のアルカリ性水溶液に、キレート剤が添加されたスラリー流通経路用洗浄液を使用し、スラリー流通経路の内壁面を洗浄する工程と、該スラリー流通経路の内壁面を洗浄した後、該内壁面を純水または超純水によりリンスする工程とを備えたスラリー流通経路の洗浄方法である。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、スラリー流通経路にスラリー流通経路用洗浄液を供給することで、スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒がエッチングされる。このとき、遊離砥粒から金属イオンが溶出するが、金属イオンはキレート剤によって捕獲、錯体化される。よって、錯体化された金属イオンを廃棄することで、スラリー流通経路の内壁面への金属イオンの付着が防止される。その結果、スラリー流通経路の内壁面からスラリー中へ溶け込んだ金属イオンを原因としたシリコンウェーハの金属汚染を防止することができる。
【0018】
純水とは、物理的または化学的な処理によって不純物を除去した純度の高い水をいう。具体的には、1〜10MΩ・cmまたは1.0〜0.1μS/cmの水を採用することができる。
超純水としては、水に含まれる不純物の量が、例えば0.01μg/リットル以下のものを採用することができる。
リンス時間は、0.5〜5時間が望ましい。0.5時間未満では錯体化された金属を含むスラリー流通経路用洗浄液の排出が不十分になるおそれがある。また、5時間を超えてリンスして錯体化された金属を含む洗浄液の排出効果には余り差がなく、むしろスルーブットが低下し、シリコンウェーハの生産性の低下を生じてしまう。なお、リンス方法としては循環方式でも非循環方式でもよい。
【0019】
請求項6に記載の発明は、前記キレート剤がアミノカルボン酸系である請求項5に記載のスラリー流通経路の洗浄方法である。
【0020】
請求項7に記載の発明は、前記キレート剤がDTPAである請求項6に記載のスラリー流通経路の洗浄方法である。
【0021】
請求項8に記載の発明は、前記キレート剤の濃度が0.3ppm以上である請求項5〜請求項7のうち、何れか1項に記載のスラリー流通経路の洗浄方法である。
【発明の効果】
【0022】
請求項1および請求項5に記載の発明によれば、スラリー流通経路にスラリー流通経路用洗浄液を供給することで、スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒がエッチングされる。このとき、遊離砥粒から金属イオンが溶出するが、金属イオンはキレート剤によって捕獲、錯体化される。よって、錯体化された金属イオンを廃棄することで、スラリー流通経路の内壁面への金属イオンの付着が防止される。その結果、スラリー流通経路の内壁面からスラリー中へ溶け込んだ金属イオンを原因としたシリコンウェーハの金属汚染を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の実施例1に係るスラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法が使用される両面研磨装置へのスラリー循環システムの全体構成図である。
【図2】本発明法と従来法とを適用してスラリー流通経路を洗浄後、シリコンウェーハを研磨したときの各Cu汚染量を比較したグラフである。
【図3】本発明法と従来法とを適用したスラリー流通経路を洗浄後、シリコンウェーハを研磨したときの研磨バッチ数とシリコンウェーハのCu汚染量との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、この発明の実施例を具体的に説明する。ここでは、多数枚のシリコンウェーハの表裏面を同じに研磨する遊星歯車式の両面研磨装置において、スラリー流通経路用の洗浄液およびその洗浄方法を例にとる。
【実施例】
【0025】
図1において、10はこの発明のスラリー流通経路の洗浄液およびその洗浄方法が適用される遊星歯車式の両面研磨装置で、この両面研磨装置10は、互いに平行に設けられた上定盤11および下定盤12と、これらの上定盤11、下定盤12間に介在されて、軸線回りに回転自在に設けられた小径な太陽ギヤ13と、この軸線と同じ軸線を中心にして回転自在に設けられた大径なインターナルギヤ14、太陽ギヤ13およびインターナルギヤ14に噛合する外ギヤが形成された合計4枚の円板形状のキャリアプレート15とを備えている。上定盤11の下面には、ウェーハ裏面を研磨する発泡性ウレタンパッドからなる研磨布16が貼着されている。また、下定盤12の上面には、ウェーハ表面を研磨する同じく発泡性ウレタンパッドからなる研磨布16が貼着されている。
【0026】
両面研磨時には、両定盤11,12を互いに逆方向に30rpmで回転させ、研磨布16間にスラリーを1リットル/分で供給しながら、各シリコンウェーハWへの各研磨布16の当接圧力を250gf/cmとし、シリコンウェーハWの表裏面を数μm研磨する。ここで使用されるスラリーは、pH10.25の有機系アルカリ水溶液に焼成シリカが5重量%含まれたものである。スラリーは、スラリーポンプ18の圧送力により、スラリー供給タンク19から供給配管20を通して両面研磨装置10の研磨布16間に供給される。
【0027】
また、使用済みのスラリーは、回収配管30からスラリー回収タンク21に流下される。その後、スラリー回収タンク21の使用済みのスラリーには所定の再生処理が施されて再生される。次に、再生されたスラリーは、再生用のスラリーポンプ22を介して、再生配管23を通してスラリー供給タンク19に戻される。これらのスラリー供給タンク19、供給配管20、回収配管30、スラリー回収タンク21、再生配管23からスラリー流通経路が構成される。
スラリー流通経路は、長期間使用することで、スラリー流通経路の内壁面にスラリー中の遊離砥粒が堆積する。具体的には、スラリー供給タンク19の場合、タンク21底面の角張った部位などの内壁面に、遊離砥粒が厚さ1〜10mm程度堆積する。そのため、定期的に、スラリー流通経路に洗浄液(スラリー流通経路用洗浄液)を流し、遊離砥粒の堆積物のエッチング除去が行われる。
【0028】
以下、洗浄液によるスラリー流通経路の洗浄方法を説明する。
洗浄液としては、シリカに対するエッチング性が高いpH12.1の水酸化カリウム水溶液を主剤とし、これに濃度20ppmとなるDTPA(キレート剤)を攪拌混合したものを使用する。
洗浄に際しては、液温25℃の上記洗浄液を使用し、これをスラリー供給タンク19、供給配管20、回収配管30およびスラリー回収タンク21に10リットル/分で循環供給する。洗浄時間は3時間である。なお、洗浄液を循環供給するのではなく、洗浄液をスラリー流通経路に所定時間だけ封入してもよい。
【0029】
このように、洗浄液をスラリー供給タンク19、供給配管20などのスラリー流通経路に流通させることで、スラリー流通経路の内壁面に堆積した遊離砥粒がエッチングにより除去される。このとき、シリカ製の遊離砥粒からCuなどの金属イオンが溶出する。しかしながら、この溶け出した金属イオンは、洗浄液中に含まれたキレート剤によって捕獲、錯体化される。そのため、洗浄後の使用済みの洗浄液の排出に伴い、錯体化後の金属イオンを廃棄することで、スラリー流通経路の内壁面への金属イオンの付着が防止される。
【0030】
その結果、両面研磨装置10の再稼働にあたって、スラリーをスラリー供給タンク19などのスラリー流通経路に再び充填した際、スラリー流通経路の内壁面からスラリー中へ溶け込む金属イオンの量を低減させることができる。よって、スラリー流通経路の内壁面からスラリー中に溶出した金属イオンを原因としたシリコンウェーハWの金属汚染量を低減させることができる。
なお、錯体化された金属イオンを含む洗浄液が供給タンク19および供給配管20内に残留する場合を考慮して、洗浄液による洗浄後に、純水により供給タンク19および供給配管20内のリンスを行うことが望ましい。具体的には、水温15℃〜35℃の純水により、10分〜5時間の範囲でリンスすることが望ましい。
【0031】
ここで、実際に実施例1の洗浄液を使用し、実施例1と同じ洗浄条件でスラリー流通経路の内壁面をアルカリ洗浄した。その結果、図2のグラフに示すように研磨再開後のシリコンウェーハのCu汚染量は、6.85×10atoms/cmと少なかった。これは、従来の水酸化カリウム水溶液のpHが12.3で、かつキレート剤を含まない洗浄液による洗浄を行った場合のCu汚染量8.65×1012atoms/cmに比べて、約12000分の1まで低減した。Cu汚染の評価は高周波誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)法による。具体的には、研磨処理を施したシリコンウェーハを40mm×40mmの小片試験サンプルに切り出し、その小片サンプルを全溶解して、シリコンウェーハのCu汚染量を評価した。
【0032】
また、図3はスラリー流通経路を洗浄後、シリコンウェーハの研磨加工を複数バッチ実施した場合のシリコンウェーハのCu汚染量に対して、本発明法と従来法とを比較した結果を示す。
従来法では、シリコンウェーハのCu汚染が安定領域(1×10atoms/cm)に達するまで、9回の研磨バッチ数を必要とした。これに対して、本発明法の場合、スラリー流通経路の洗浄処理の直後、1回の研磨バッチのみで前記安定領域に達することができた。ここでの研磨は、研磨時間が1バッチ当たり60分、研磨後の使用済みのスラリーは廃液せず、循環して使用した。これにより、スラリー流通経路の洗浄処理後のダウンタイムが顕著に短縮可能であることが確認された。
【0033】
したがって、本発明法により遊離砥粒研磨粒子を含むスラリーのタンクおよび配管の洗浄処理を行うことで、従来法と比較して大幅な初期金属汚染量の低減と、洗浄後の余分なダミー研磨バッチの削減による高い生産性が期待できる。
なお、本実施例では、洗浄に用いるアルカリ性水溶液を水酸化カリウム水溶液としたが、水酸化カリウム水溶液に限定するものではなく、例えば水酸化ナトリウム水溶液等を用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、例えば、研磨装置に供給される研磨用のスラリー流通経路の洗浄、その他、ワイヤソーの切断液、研削装置の研削液の流通経路の洗浄を行う際に有用である。
【符号の説明】
【0035】
19 スラリー供給タンク(スラリー流通経路)、
20 供給配管(スラリー流通経路)、
30 回収配管(スラリー流通経路)、
21 スラリー回収タンク(スラリー流通経路)、
23 再生配管(スラリー流通経路)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH9以上のアルカリ性水溶液に、キレート剤が添加されたスラリー流通経路用洗浄液。
【請求項2】
前記キレート剤がアミノカルボン酸系である請求項1に記載のスラリー流通経路用洗浄液。
【請求項3】
前記キレート剤がDTPAである請求項2に記載のスラリー流通経路用洗浄液。
【請求項4】
前記キレート剤の濃度が0.3ppm以上である請求項1〜請求項3のうち、何れか1項に記載のスラリー流通経路用洗浄液。
【請求項5】
pH9以上のアルカリ性水溶液に、キレート剤が添加されたスラリー流通経路用洗浄液を使用し、スラリー流通経路の内壁面を洗浄する工程と、
該スラリー流通経路の内壁面を洗浄した後、該内壁面を純水または超純水によりリンスする工程とを備えたスラリー流通経路の洗浄方法。
【請求項6】
前記キレート剤がアミノカルボン酸系である請求項5に記載のスラリー流通経路の洗浄方法。
【請求項7】
前記キレート剤がDTPAである請求項6に記載のスラリー流通経路の洗浄方法。
【請求項8】
前記キレート剤の濃度が0.3ppm以上である請求項5〜請求項7のうち、何れか1項に記載のスラリー流通経路の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−16185(P2011−16185A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161602(P2009−161602)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】