説明

スロットル装置

【課題】スロットルバルブハウジング(2)と、スロットルバルブ(8)を有するスロットルバルブ軸(6)とが設けられており、該スロットルバルブ軸(6)が、スロットルバルブハウジング(2)内の、該スロットルバルブハウジング(2)に設けられた軸受収容部(10)内で旋回可能に支承されており、スロットルバルブ軸(6)に作用する調整装置(18)により旋回可能になっている形式の内燃機関のためのスロットル装置において、従来技術の欠点を改良する。
【解決手段】軸受収容部(10)の領域で、緊締エレメント(30)が軸受収容部(10)を取り囲んでいるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のためのスロットル装置であって、スロットルバルブハウジングと、スロットルバルブを有するスロットルバルブ軸とが設けられており、該スロットルバルブ軸が、スロットルバルブハウジング内の、該スロットルバルブハウジングに設けられた軸受収容部内で旋回可能に支承されており、スロットルバルブ軸に作用する調整装置により旋回可能になっている形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のためのスロットル装置は、通常はスロットルバルブハウジング内で旋回可能に支承されたスロットルバルブ軸を有しており、このスロットルバルブ軸にはスロットルバルブが一体成形されているか、又は固定されている。スロットルバルブハウジングを介してガス通路が延びている。このガス通路を介して、例えば空気又は燃料−空気−混合物が内燃機関へ流れる。スロットルバルブ軸の旋回により、スロットルバルブはガス通路を開閉する。
【0003】
スロットルバルブがガス通路の壁に突き当たらないように、スロットルバルブ軸の可動性を軸線方向に狭く許容することが公知となっている。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許公開第3924611号明細書に記載のスロットル装置では、スロットルバルブ軸が軸線方向に、すなわち、スロットルバルブ軸の長手方向に、スロットルバルブ軸を介して横方向に延びるピンにより固定される。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許公開第3048995号明細書に記載のスロットル装置では、スロットルバルブ軸とスロットルバルブハウジングとの間の軸線方向の力伝達が、スロットルバルブハウジング内に組み込まれた玉軸受けを介して行われる。
【0006】
ドイツ連邦共和国特許公開第19510622号明細書では、スロットルバルブハウジング内に軸受手段が圧入されており、この軸受手段に対して、スロットルバルブ軸の正確な軸線方向の位置決めのためにばねがスロットルバルブ軸を緊締する。
【0007】
使用される材料に関連して、特にスロットルバルブハウジングのために使用される材料に関連して、従来技術ではスロットルバルブ軸の軸線方向の支承部が摺動され、これにより、スロットルバルブハウジング内においてスロットルバルブの可動性がもはやあらゆる温度においても保証されているわけではないということが起こり得る。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第3924611号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第3048995号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許公開第19510622号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明の課題は、上に述べた従来技術の欠点を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決した本発明の手段によれば、軸受収容部の領域で、緊締エレメントが軸受収容部を取り囲んでいる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の特徴を有する、内燃機関のための本発明によるスロットル装置は、スロットルバルブハウジングが軸受収容部の領域で安定しており、これにより、スロットルバルブ軸とスロットルバルブハウジングとの間に生じた力を半径方向にも軸線方向にも確実に受けとめることができるという利点を有している。このことは、スロットルバルブハウジングのために、簡単な製造形式及び/又は安価な材料及び/又はそのほかの要請、例えば外部からの化学的な作用を考慮して比較的柔らかい、かつ/又は比較的弾性的な材料、及び/又は時間の経過に伴い、力作用に基づきたわむ材料が選択された場合にもいえる。
【0011】
緊締エレメントに基づき、スロットルバルブハウジングは軸受収容部の領域にもプラスチックが用いられていてよい。
【0012】
前記緊締エレメントは摩擦保護部又は打撃保護部としても極めて良好に働き、これにより、スロットルバルブハウジングは機械的な摩耗、押圧又は打撃による損傷から保護される。緊締エレメントはスロットルバルブハウジングを、例えば場合によっては振動するばねによる損傷から保護することができる。
【0013】
従属請求項に記載の手段により、請求項1に記載のスロットル装置の有利な発展形及び改良形が可能である。
【0014】
スロットルバルブハウジングに軸受収容部のために延長部が一体成形されているか、又は取り付けられている場合にも、緊締エレメントにより、スロットルバルブハウジングがこの構成の場合にもスロットルバルブの確実な支承が保証されている。
【0015】
緊締エレメントは、有利にはスリーブの形状に形成されていてよい。このことは、緊締エレメントをわずかな手間により製造することができるという利点を有している。
【0016】
スロットルバルブハウジングの全体が、又は少なくとも軸受収容部の領域がプラスチックより成っている場合には、このことは、スロットルバルブハウジングを極めて簡単に製造することができ、それにも関わらず、緊締エレメントによりスロットルバルブ軸の確実な支承が得られるという利点を有する。
【0017】
緊締エレメントは例えば金属より成っていてよい。このことは、例えば薄い板より成る小さい緊締エレメントによっても安定化する良好な作用が得られるという利点を有している。
【0018】
前記緊締エレメントに基づき軸受収容部の領域で良好な安定性が得られる。このことは、軸受収容部内に問題なしに軸受を組み込むことができるという利点を有している。この場合には軸受は例えば滑り軸受又はころがり軸受、特にローラ軸受又は玉軸受けであってよい。
【0019】
緊締エレメントの安定化する作用に基づき、軸受収容部内には、著しく大きい半径方向プレロードをもって軸受が組み込まれているか、又は圧入されてよい。
【0020】
緊締エレメントのために、軸受収容部内に組み込まれた軸受が有する熱膨張係数にほぼ対応する熱膨張係数を有する材料が選択された場合、このことは、温度が著しく高い場合にも著しく低い場合にも、軸受と軸受収容部との間の押圧力がほぼ不変に維持されるという利点を有している。このことは、スロットルバルブハウジング、若しくは延長部の軸受収容部の領域が、別の熱膨張係数を有する材料より成っている場合にもいえる。すなわち、スロットルバルブハウジング若しくは延長部のためには、問題なしにプラスチックを使用することもできる。
【0021】
次に本発明の実施の形態を図面につき詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明によるスロットル装置は、スロットルバルブによってガス通路を介した通過が制御されることが望ましい種々異なった内燃機関において使用することができる。ガス通路は、例えば空気、燃料−空気−混合物などの流れのために設けられている。スロットルバルブの旋回位置に応じてガスの流れが幾分絞られる。通常はスロットルバルブは90°まで旋回させることができる。しかしながら、スロットルバルブを90°よりもわずかにだけ、又は90°よりも多く、例えば180°まで旋回させることができる構成もある。スロットルバルブを有するスロットルバルブ軸は、スロットルバルブ軸に作用する調整装置により旋回させることができる。この調整装置は、例えばスロットルバルブ軸に作用する調整モータであり、この調整モータは例えば直接に、又は伝動装置を介してスロットルバルブ軸を調整する。
【0023】
図1、図2及び図3は、スロットル装置の、選り抜かれた特に有利な実施例を示している。
【0024】
図1は、スロットル装置の平面図を示している。図2は、スロットル装置のガス通路の長手方向に延びる切断平面で見たスロットル装置の横断面図を示している。この切断平面は図1にはII−II線により示されている。図2に破線による円IIIでマークした領域を図3に拡大して示す。
【0025】
全ての図面では、等しい又は等しい作用の部材には同じ符号を付す。
【0026】
図1〜図3は、スロットルバルブハウジング2を有するスロットル装置を示している。スロットルバルブハウジング2を介して、図1の前面図に示したガス通路4が延びている。このガス通路4は、例えば内燃機関の燃焼室へ通じる吸込管の一部である。ガス通路4を横断して、スロットルバルブハウジング2内で旋回可能に支承されたスロットルバルブ軸6が延びている。このスロットルバルブ軸6にはスロットルバルブ8が固定されている。このスロットルバルブ8は、例えばスロットルバルブ軸6と一緒に一体的にプラスチックから製造されていてもよい。
【0027】
スロットルバルブハウジング2には、若しくはスロットルバルブハウジング2内には軸受収容部10と別の軸受収容部12とが設けられている。これらの軸受収容部10,12内には、スロットルバルブ軸6が旋回可能に支承されている。
【0028】
リンク手段14が前記スロットルバルブ軸6に堅固に結合されている。図示の実施例では、前記リンク手段14は、スロットルバルブ軸6に射出成形された、又は溶接された歯車の形で形成されている。スロットルバルブ8が、例えば110°よりも多く旋回することは望ましくないので、射出成形された歯車は110°の範囲内にのみ外歯車を有していれば十分であり、これらの外歯車は、別の大歯車を介して調整モータの駆動ピニオンと噛み合う。調整モータは、大歯車とリンク手段14と共に、スロットルバルブ軸6に支承されたスロットルバルブ8を調整するための調整装置18を形成している。
【0029】
調整ばね20の端部は、一方では直接又は間接にスロットルバルブハウジング2にリンクされており、かつ他方では調整ばね20は直接又は間接にスロットルバルブ軸6若しくはスロットルバルブ8にリンクされている。図示の実施例では、調整ばね20の右側端部はリンク手段14を介してスロットルバルブ軸6に作用する。調整ばね20の左側端部はスロットルバルブハウジング2で支持される。調整ばね20は、スロットルバルブ軸6若しくはスロットルバルブ8を操作されてない静止位置へ戻すために働く。
【0030】
スロットルバルブハウジング2には側方に突き出した延長部22が成形されている。この延長部22は、有利にはスロットルバルブハウジング2と共に一体的に成形されている。延長部22は、有利にはスロットルバルブハウジング2と同じ材料より成っている。延長部22は、有利には残りのスロットルバルブハウジング2と同様にプラスチックより成っている。これにより、スロットルバルブハウジング2は延長部22と一緒に極めて簡単に、例えば射出成形により製造することができる。
【0031】
軸受収容部10は、例えば外側からスロットルバルブハウジング2の延長部22内へ延びる段付孔より形成されている。軸受収容部10内には、余剰寸法を有する軸受24が圧入されている。軸受24の周24aの直径は、軸受24の領域では軸受収容部10の直径よりも大きくなっている。これにより、軸受24が半径方向にスロットルバルブハウジング2に対して押圧し、軸受24がスロットル装置の運転の間に力が生じた場合に摺動されないことが達成される。
【0032】
軸受24は、例えばころがり軸受24bである。有利に選択された実施例では、このころがり軸受24bは外側リング24dと複数のローラ24c若しくは軸受ニードルを有している。これらのローラ24c若しくは軸受ニードルは、前記外側リング24d内に収容される。
【0033】
外側リング24dの周24aは、外側リング24dがプレロード(予荷重)をもって軸受収容部10内に保持されるように寸法取りされている。
【0034】
スロットルバルブ軸6には環状の溝6bが設けられている。この溝6b内にはディスク26が組み込まれている。軸線方向にばね弾性的に起伏をつけられた(gewellte)ばねディスク28は、溝6b内に組み込まれたディスク26を、軸受24の外側リング24dに対して緊締する。この場合に、ばねディスク28はスロットルバルブハウジング2で、より正確にいえば、軸受収容部10を形成する段付孔の端面側で支持される。これにより、スロットル装置の運転の間にスロットルバルブ軸6の長手方向の相対運動が、ディスク26と軸受24との間に、若しくはディスク26とスロットルバルブハウジング2との間に生じないことが保証されている。
【0035】
スロットルバルブ軸6内に設けられた溝6bは、ディスク26の厚さよりも最小限に幅広くなっており、これにより、ディスク26が静止している場合には、スロットルバルブ軸6を容易に回転させることができるようになっている。
【0036】
緊締エレメント30が軸受収容部10を取り囲んでいる。有利に選択された実施例では、前記緊締エレメント30は、スロットルバルブハウジング2の延長部22の外周に設けられている。前記緊締エレメント30は、軸受収容部10の領域で延長部22を完全に取り囲んでいる。有利に選択された実施例では、軸受24の外側リング24dは内側から外側へ、延長部22に対して押圧し、緊締エレメント30は外側から内側へ延長部22に対して押圧する。緊締エレメント30は外側から内側へ半径方向に延長部22に対して押圧するので、この延長部22は、圧入された軸受24の、延長部22に作用する半径方向の力にもかかわず、逃れることができない。このことは、延長部22若しくはスロットルバルブハウジング2全体がプラスチックより成っており、このプラスチックが、緊締エレメント30により提供された締付けなしにはたわんでしまうか、若しくはプラスチックが、安定化する緊締エレメント30なしには時間の経過に伴って這い出してしまうであろう場合についてもいえる。
【0037】
緊締エレメント30は有利には円筒状に、又はスリーブ状になっており、段付けされた、端面が開かれた、円筒領域30aと半径方向領域30bとを有する帽子状の円筒の形状を有している。
【0038】
緊締エレメント30は周方向に見て、有利には閉じられている。しかしながら、緊締エレメント30は、例えば周面線に沿ってスリットを設けられてもよい。
【0039】
緊締エレメント30は、例えば金属、有利には硬化された金属、特にばね鋼より成っている。
【0040】
調整ばね20は、一方の端部により、円筒領域30aと半径方向領域30bとの間の移行部で支承されている。このことは、調整ばね20の端部がスロットルバルブハウジング2の比較的柔らかい材料内に埋め込まれ得ることを阻止する。
【0041】
スロットルバルブハウジング2の延長部22と調整ばね20との間には、緊締エレメント30の円筒領域20aが位置している。これにより、スロットル装置に強い振動が負荷された場合にも、調整ばね20の巻線がスロットルバルブハウジング2の延長部22に直接に当接し得ないことが保証される。これにより、延長部22のために比較的柔らかい材料が使用された場合にも、調整ばね20が延長部22もスロットルバルブハウジング2の別の領域も損傷することができないことを保証することができる。
【0042】
緊締エレメント30の材料は有利には次のように選択される、すなわち、緊締エレメント30の材料が軸受24、少なくとも軸受24の外側リング24dとほぼ等しい熱膨張特性を有しているように選択される。このことは、軸受24若しくは少なくとも軸受24の外側リング24dが金属より成っており、かつ緊締エレメント30も同様に金属から成っており、これにより、緊締エレメント30も軸受24若しくは外側リング24dもほぼ等しい熱膨張特性を有していることにより、極めて簡単に達成することができる。軸受24と緊締エレメント30とが等しい熱膨張係数を有していることにより、極めて高い運転温度が生じた場合にも極めて低い温度の場合にも、軸受24と緊締エレメント30との間で、延長部22若しくはスロットルバルブハウジング2の材料の押圧力はほぼ不変に維持されることが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】スロットル装置の選択された実施例の平面図である。
【図2】図1のII−II線に沿ったスロットルバルブの横断面図である。
【図3】図2にIIIに円で示した部分の拡大横断面図である。
【符号の説明】
【0044】
2 スロットルバルブハウジング、 4 ガス通路、 6 スロットルバルブ軸、 6b 溝、 8 スロットルバルブ、 10,12 軸受収容部、 14 リンク手段、 18 調整装置、 20 調整ばね、 22 延長部、 24 軸受、 24a 周、 24b ころがり軸受、 24c ローラ、 24d 外側リング、 26 ディスク、 28 ばねディスク、 30 緊締エレメント、 30a 円筒領域、 30b 半径方向領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のためのスロットル装置であって、スロットルバルブハウジング(2)と、スロットルバルブ(8)を有するスロットルバルブ軸(6)とが設けられており、該スロットルバルブ軸(6)が、スロットルバルブハウジング(2)内の、該スロットルバルブハウジング(2)に設けられた軸受収容部(10)内で旋回可能に支承されており、スロットルバルブ軸(6)に作用する調整装置(18)により旋回可能になっている形式のものにおいて、軸受収容部(10)の領域で、緊締エレメント(30)が、軸受収容部(10)を取り囲んでいることを特徴とする、スロットル装置。
【請求項2】
スロットルバルブハウジング(2)に、軸受収容部(10)を収容する延長部(22)が一体成形されており、緊締エレメント(30)が、前記延長部(22)を取り囲んでいる、請求項1記載のスロットル装置。
【請求項3】
緊締エレメント(30)が、スリーブにより形成されている、請求項1又は2記載のスロットル装置。
【請求項4】
スロットルバルブハウジング(2)の、少なくとも軸受収容部(10)の領域が、プラスチックより成っている、請求項1から3までのいずれか1項記載のスロットル装置。
【請求項5】
緊締エレメント(30)が、金属より成っている、請求項1から4までのいずれか1項記載のスロットル装置。
【請求項6】
スロットルバルブ軸(6)を支承するために、軸受収容部(10)内に軸受け(24)が組み込まれている、請求項1から5までのいずれか1項記載のスロットル装置。
【請求項7】
軸受(24)の周(24a)が、半径方向応力をもって軸受収容部(10)内に組み込まれている、請求項6記載のスロットル装置。
【請求項8】
軸受(24)が、ころがり軸受である、請求項6又は7記載のスロットル装置。
【請求項9】
軸受(24)が、滑り軸受である、請求項6又は7記載のスロットル装置。
【請求項10】
緊締エレメント(30)が、軸受(24)の熱膨張係数とほぼ等しい大きさの熱膨張係数を有している、請求項6から9までのいずれか1項記載のスロットル装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−77771(P2006−77771A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−259438(P2005−259438)
【出願日】平成17年9月7日(2005.9.7)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】