ズームレンズ、カメラモジュール、電子機器、及びズームレンズの設計方法
【課題】液体レンズ内に気泡の発生しないズームレンズを提供することを目的とする。
【解決手段】第1の変形面を有し、その変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズ35、この第1の可変レンズ35の後段に配置され、第2の変形面を有し、その変形により焦点距離を変化させ、変倍による像面位置の移動を補正する第2の可変レンズ51を含む。第1、第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜による変形面、弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質、この媒質から弾性膜に加える圧力を変化させて変形面を変形させる。
【解決手段】第1の変形面を有し、その変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズ35、この第1の可変レンズ35の後段に配置され、第2の変形面を有し、その変形により焦点距離を変化させ、変倍による像面位置の移動を補正する第2の可変レンズ51を含む。第1、第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜による変形面、弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質、この媒質から弾性膜に加える圧力を変化させて変形面を変形させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ、カメラモジュール、電子機器、及びズームレンズの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ媒質に液体を用いた液体レンズの開発が盛んに進められるようになっている。このレンズでは、少なくとも一方のレンズ面を変形可能な膜状等の変形面とし、レンズ媒質に液体を用いることによりレンズ形状を変化させるものである。同様に、媒質にゲルを用いるゲルレンズも提案されている。これらのレンズは、レンズそのものの曲率を変えることができるため、可変焦点レンズとして用いることができる。
【0003】
例えば下記特許文献1では、こうしたレンズを撮像レンズ用のワイドコンバータとして用いることが開示されている。図14を参照して特許文献1に記載されたワイドコンバータを説明する。図14Aに示すように、このコンバータ110は第1のレンズ群120と第2のレンズ群130とから構成されている。そして第1のレンズ群120は、固体レンズからなる第1のレンズ121と、像側(図14中右側)に変形面として変形膜123を備える液体レンズより成る第2のレンズ122とにより構成される。
また第2のレンズ群130は、固体レンズである第3のレンズ131と像側(図14中右側)に変形膜133を備える液体レンズである第4のレンズ132とにより構成される。
【0004】
第2のレンズ122及び第4のレンズ132はともに上述した屈折面形状の変形による液体レンズであり、内部には光透過性の液体が封入されている。さらに、図示しない管状等の液体移動部を介してポンプ機構等にそれぞれ接続される。そしてこのポンプ機構等によって第2のレンズ122や第4のレンズ132内の液体へ加える圧力を変化させると、それに応じて変形膜123、133が変形する。
【0005】
図14Aでは第2のレンズ122内の液体を吸引等することにより変形膜123を凹形状とし、また第4のレンズ132は、内部に液体を導入することにより変形膜133を凸形状としてある。また固定レンズである第1のレンズ121は凹レンズであり、第3のレンズ131は凸レンズとされる。すなわち、第1のレンズ群120は負の屈折力を、また第2のレンズ群130は正の屈折力を有し、系全体で1より小さいアフォーカル倍率を有する状態とされる。
【0006】
これに対して図14Bの状態においては、第2のレンズ122内部に液体を導入する等して変形膜123を膨らませ、平凸レンズとする。これにより第1のレンズ群120として1より小さいアフォーカル倍率を有するレンズ群とされる。また第4のレンズは、内部の液体を吸引等することにより変形膜133をへこませ、両凹レンズとする。これにより第2のレンズ群130として1より大きいアフォーカル倍率を有するレンズ群とされる。つまりこの場合、系全体ではアフォーカル倍率が1の状態とすることができる。
【0007】
このように第2のレンズ及び第4のレンズを液体レンズとし、図14A及び図14Bのようにレンズ形状を変化させることで、全系の焦点面を一定位置に維持したまま、撮影系全体の焦点距離を広角側に変化させるワイドコンバータ110を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−185627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、レンズ屈折面形状が変形可能とされる可変焦点レンズを用いてレンズ面の曲率を変化させ、焦点距離を可変とする際には、その面形状を凹型へと変形させマイナスの屈折力を生じさせる場合が存在する。
【0010】
中でも、レンズ内に充填された液体等の媒質の圧力を変化させることによって面を変形させる場合、例えばレンズ内に充填されたその光透過性の液体をポンプ等にて引く等し、圧力を変化させることによって凹形状へと変化させる。この場合この光透過性液体の液圧は負圧となるため、液体内に気泡が発生しやすい環境となる。
なお、このように内部に充填された媒質の圧力を変化させることによって光屈折面を変形させる可変焦点レンズを以下「屈折面形状の変形による可変レンズ」と称することとする。
【0011】
図15は、屈折面形状の変形による可変レンズ内に気泡が発生するモデルを表す説明図である。シリンジ141内に液体143が充填されており、これをピストン142によって引く場合を考える。ここで、理想状態として液体143には気泡核が存在しない状態とする。
図15Aにおいては、ピストン142に力を加えておらず液体143の圧力と外気圧とが釣り合った状態を表している。これに対して図15Bのようにピストン142を外向きにD1方向に引くと、液体143は負圧状態となり気泡144が発生する。
【0012】
このシリンジ141内の液体143に気泡144を発生させるのに必要なエネルギEは、気泡144の表面エネルギと負圧下で気泡を生成するのに要するエネルギとの和となる。これは、気泡144の半径をrとすると下記数1によって表される。数1においてTは液体143の表面張力、ΔPは液体143のピストンを引くことにより発生する液圧と外気圧との差である。またここではΔPは負の値となる。
【0013】
【数1】
【0014】
図16は上記数1を気泡4の半径rの関数としてグラフ化したものである。図16から明らかなように、この関数には極値が存在する。ここでこの極値における半径rcを臨界半径、極値におけるエネルギΔEを気泡発生のエネルギ障壁とする。
すなわち臨界半径rcよりも小さい大きさの気泡は、よりエネルギの低い安定状態、より半径の小さくなる方へと向かうため消滅する。しかし、臨界半径rcよりも大きい半径気泡はエネルギがエネルギ障壁ΔEよりも大きいため液体内に残り続けることになる。
また、衝撃や振動などのエネルギが印加されることにより、系のエネルギがΔEよりも高まると、液体内に気泡が発生する。
【0015】
この臨界半径rc及びエネルギ障壁ΔEは下記数2、数3によって表される。
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
【0018】
このように、理想的な条件下においては気泡の発生は液体の表面張力や液圧と外気圧の差に依存する。特にエネルギ障壁ΔEは液圧と外気圧との差の2乗に反比例し、液体の表面張力の3乗に比例する。すなわち、気泡の発生を抑制するには表面張力の高い液体を用いるか、もしくは液圧と外気圧の差ΔPを与えないことが必要となる。
【0019】
図17は、屈折面形状の変形による可変レンズにおけるモデルを表す説明図である。可変レンズ150内部には媒質として光透過性の液体151が満たされ、この液体151を出し入れすることによって弾性膜152の形状が変化する。屈折面形状の変形による可変レンズの液圧PL、外気圧PA、膜弾性力PEの関係は上記の図1のモデルと等価となり、下記の式によって表される。
ΔP=PL−PA=−PE<0
屈折面形状の変形による可変レンズ150が図17の断面図に示すように凹レンズ形状の場合、弾性膜152の変形により生じる弾性力によって液体には上方向への引っ張り圧力が加わり、負圧の状態となる。また、これとは逆に液体151の量を増やして凸形状とした場合には、液体151には弾性膜152の弾性力によって圧縮力が働き、正圧となる。
【0020】
従来においては、既述のように屈折面形状の変形による可変レンズを凹形状へ変化させた状態も適用することが多く、この場合にはレンズ内の液体が負圧となる。したがって気泡発生のエネルギ障壁ΔEは有限の値となるため、気泡が発生する可能性をもつ。
【0021】
また、上記のようなワイドコンバータのみならず、ズームレンズにこうした可変焦点レンズを適用すれば、ズーム時にレンズを移動させるスペースを省くことができるので非常に有用性が高い。しかし、光学系の設計次第では屈折面形状の変形による可変レンズを用いると、液体レンズ面を凹形状とする必要があり、液体内に気泡が発生しうる状態となる。
【0022】
そこで本発明は上記問題に鑑み、屈折面形状の変形による可変レンズを用いてもレンズ内に気泡の発生しにくいズームレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上気課題を解決するために、本発明によるズームレンズは、第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、前記第1の可変レンズを有するレンズ群の後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、を含む。そして前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜による前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質とを備え、光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、使用範囲において、第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされる。
【0024】
すなわち本発明におけるズームレンズは、レンズ面を変形面とし、この変形面をバリエータとして用いるものである。この変形面は光透過性の弾性膜等によって構成することができる。そしてレンズ内部に充填される光透過性の媒質の増減等によって形状を変化させ、曲率を変動させる。なお、このレンズ内部に充填される媒質は液体以外にゲル状のものでもよく、光透過性を有し、レンズ内への充填量調整が容易な流動性の媒質であればよい。またこのレンズの後段にも変形面を有するレンズを配置し、いわゆるコンペンセータおよびフォーカスレンズとして用いる。すなわちこの変形面の形状変化によって、倍率の変動に伴う像面位置のズレを調整し、物体位置の変動による合焦をする。
【0025】
そして本発明においては、このズームレンズに用いられる可変レンズの変形面を平面形状から凸形状の範囲で変形する構成として用いる。したがって、可変レンズ内に充填される媒質が負圧となり、可変レンズ内に気泡が発生するのを防ぐことができる。
【0026】
また本発明によるカメラモジュールは、上述の本発明構成のズームレンズと、このズームレンズによって集光される光を受光する撮像部とを含む。
【0027】
また本発明におけるカメラモジュールにおいても、そのズームレンズに用いられる可変レンズの変形面を平面形状から凸形状の範囲で変形する構成として用いる。したがって、可変レンズ内に充填される媒質が負圧となり、可変レンズ内に気泡が発生するのを防ぐことができ、このため、本発明によるカメラモジュールは高品質な画像を長期間にわたって提供することが可能である。
またさらには、ズームレンズ内の光路上にミラー等の光路変更素子を配置することによって、カメラモジュールの厚みを低くすることもできる。
【0028】
また本発明における電子機器は、上述の本発明構成のズームレンズと、前記ズームレンズによって集光される光を受光する撮像部と、を含むカメラモジュールを備える。またこのカメラモジュールの撮像部によって取得されたデータの処理を行う画像処理部と、第1及び第2の可変レンズの変形面の変形を行う可変レンズ機構部と、前記画像処理部及び前記可変レンズ機構部の制御を行う制御部を備える。
本発明における電子機器においても、搭載されるカメラモジュールのズームレンズは、その可変レンズを平面形状から凸形状の範囲で変形する構成として用いる。このため可変レンズ内の媒質が負圧になるのを防ぐことができる。したがって、本発明による電子機器は高品質な画像の取得を維持することが可能となる。
【0029】
また本発明によるズームレンズの設計方法は、第1の変形面を有し、第1の変形面の変形により焦点距離を変化させる第1の可変レンズを配置する。そして第1の可変レンズの後段に、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させる第2の可変レンズを配置するものである。
【0030】
そして、広角端における第1の変形面の曲率を望遠端における第1の変形面の曲率よりも小さくし、広角端における第2の変形面の曲率を望遠端における第2の変形面の曲率よりも大きくするものである。これにより、第1の変形面および第2の変形面が常に物体側に凸形状を有する状態にてズーム動作を行うことが可能となり、第1および第2の可変レンズ内に充填される媒質に加わる力が負圧となるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、変倍、又は合焦及び像面位置補正に用いる屈折面形状の変形による可変レンズの変形面を平面形状から凸形状として用いることができる。したがって、レンズ内に充填される媒質が負圧となるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態によるズームレンズの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態によるズームレンズの広角端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図3】本発明の実施の形態によるズームレンズの中間焦点距離における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図4】本発明の実施の形態によるズームレンズの望遠端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図5】第3面を変形面とするズームレンズの広角端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図6】第3面を変形面とするズームレンズの中間焦点距離における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図7】第3面を変形面とするズームレンズの望遠端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図8】参照波長555nmの光に対する本発明の実施の形態によるズームレンズのMTFを示す説明図である。Aは広角端を、Bは中間焦点距離、Cは望遠端を示す。
【図9】第3面を変形面とするズームレンズのMTFを示す説明図である。Aは広角端を、Bは中間焦点距離、Cは望遠端を示す。
【図10】本発明の実施の形態によるズームレンズの色倍率収差を示す説明図である。Aは広角端を、Bは望遠端を示す。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるズームレンズを示す概略構成図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態による撮像装置を示す概略構成図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態による携帯情報端末装置を示す概略構成図である。
【図14】屈折面形状の変形による可変レンズを用いた従来のワイドコンバータの構成を示す構成図である。
【図15】気泡の発生モデルを説明する説明図である。
【図16】気泡の半径と、その気泡を発生させるのに必要とするエネルギとの関係を示す説明図である。
【図17】屈折面形状の変形による可変レンズにおいて働く圧力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ズームレンズの実施の形態)
2.第2の実施の形態(ズームレンズの他の実施の形態)
3.第3の実施の形態(カメラモジュールの実施の形態)
4.第4の実施の形態(電子機器の実施の形態)
【0034】
1.第1の実施の形態
以下本発明の実施の形態によるズームレンズ100の構成を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるズームレンズ100を表す構成図である。本発明によるズームレンズは、変形面を物体側の面に備えた第1の可変レンズを有するレンズ群34と、その後段に配置され、変形面を物体側の面に備えた第2の可変レンズを有するレンズ群50を含む。また図1に示す例では、正の屈折率を有する中間レンズ群40を可変レンズを有するレンズ群34及び50の間に配置する。またこれらにより集光された光はセンサカバー61を透過した後、撮像素子62等の受光面23に結像する。
なお、図1に示すように、ズームレンズ100を構成するそれぞれのレンズ、絞り48、センサカバー61の面及び撮像部62の受光面を物体側から第1〜23面とする。
【0035】
第1の可変レンズを有する第1のレンズ群34は、例えば物体側第1面に変形膜を有し、例えば像側が凹形状とされる第1の可変レンズ35を備える。そしてその像側に、物体側が凸、像側が凹のメニスカス形状とされた第1の固体レンズ36と両凹形状とされた第2の固体レンズ37とにより構成される。
第1の可変レンズ35は屈折面形状の変形による可変レンズにより構成され、例えば光透過性の平板又は所定の曲面形状を有する光透過性の基板の間に光透過性の液体、ゲル等の媒質が収容された構成とし得る。この構成において、基板の間の接合部に管状等の液体移動部を設け、液体移動部を介して内部の媒質を出し入れ可能とすることもできる。この場合図示しないポンプ機構等の制御機構により液体移動部を介して内部の媒質を出し入れしたり、媒質の圧力を変化させることにより、物体側の第1面に配置された変形膜が変形し、曲率が変化する。なお、本発明に適用する可変レンズとしては、その他の構成でもよい。例えばレンズ内に媒質を収容する領域が2か所以上設けられ、変形膜に接する領域内の媒質を移動させることで変形膜を変形させる構造であってもよく、屈折面形状の変形による可変レンズとしての構造や変形機構は特に限定されない。
【0036】
そして上述したように、図1に示すズームレンズ100においては、例えば物体側第1面を屈折面形状の変形による可変レンズの変形膜とすることにより、物体側焦点距離を変化させるバリエータとしての機能を持たせる。
またここでは、第1の可変レンズ35の像側に第1の固体レンズ36が組み合わされて一体化した接合型のダブレットレンズとする例としてある。
【0037】
中間レンズ群40は、物体側から第3の固体レンズ41と、第1の固体レンズ群40aと、絞り48と、第2の固体レンズ群40bと、第3の固体レンズ群40cによって構成される。例えば第3の固体レンズ41は両凸形状のレンズであり、第1の固体レンズ群40aは両凸形状の第4の固体レンズ42と両凹形状の第5の固体レンズ43とにより構成される。また、第2の固体レンズ群40bは両凹形状の第6の固体レンズ44と両凸形状の第7の固体レンズ45とにより構成される。
ここで、第1の固体レンズ群40aと第2の固体レンズ群40bは絞り48を介して前後に対称的に配置され、いわゆるガウスタイプのような構成とすることにより像面湾曲やディストーション等を打ち消すようにしてある。
【0038】
また第3の固体レンズ群40cは、両凹形状の第8の固体レンズ46と両凸形状の第9の固体レンズ47により構成される。第9の固体レンズ47の像側面17は非球面であり軸上収差や軸外の収差等を補正する機能を有する。またこのように、中間レンズ群40を構成する個々のレンズは全て固体レンズとなっている。
【0039】
第2の可変レンズを有するレンズ群50は、物体側に変形膜を有し像側が凸とされた第2の可変レンズ51と、物体側が凹形状とされた第10の固体レンズ52とによって構成される。第2の可変レンズ51も屈折面形状の変形による可変レンズ等によって構成することができ、物体側の面である第18面の形状変化によって像面位置を変化させるコンペンセータ、及びフォーカスレンズの機能等も兼ねている。また、第2の可変レンズ51内に充填される光透過性の媒質は液状でもゲル状のものであってもよい。
【0040】
これらズームレンズ100を構成するそれぞれのレンズ、絞り48、センサカバー61の面及び撮像素子62における曲率半径r、光軸上の面間隔d、面間の媒質におけるd線(波長587.56nm)の屈折率、同様にd線に対するアッベ数を下記設計例1に示す。なお第17面は非球面としてあり、非球面係数も下記に示す。また各レンズ、絞りの有効径をRに示す。なお、後ろ側焦点距離はセンサのガラスカバー厚を除く。
【0041】
設計例1
面データ 曲率半径r 面間隔d 屈折率nd アッベ数vd 有効径R
面番号
1 r1 d1 1.58 29.1 3.705
2 3.87357 1.45 1.743972 44.85 3.1247
3 9.59223 1.2 2.9804
4 -13.4527 0.6 1.744182 28.10 2.76
5 11.27496 6.368128 2.5783
6 47.04509 1.02 1.7552 27.58 2.0084
7 -10.7293 0.8 1.9515
8 9.94058 1.06 1.750507 32.82 1.6364
9 -11.04001 0.8 1.48749 70.41 1.4456
10 17.47191 0.4 1.1815
11 絞り 1.2 1.0378
12 -3.9439 0.8 1.749382 27.82 1.151
13 9.66673 1.54 1.604743 61.16 1.3566
14 -4.49862 1.357853 1.615
15 -9.80008 0.8 1.755201 27.58 1.8526
16 4.64493 2.35 1.663216 53.19 2.1149
17* -5.32866 d2 2.4
18 r2 d3 1.5057 34.90 2.5132
19 -18.55058 1 1.75520 27.58 2.4502
20 -218.9945 1.941048 2.419
21 INFINITY 0.105 1.48749 70.41
22 INFINITY 2.837622
23 INFINITY 0
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.75 4.80
画角 [度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(望遠端時)
BF 4.9
d1 0.02000 0.70661 1.08705
d2 0.03994 0.43108 1.1025
d3 1.56256 1.17142 0.5
r1 INFINITY 12.05152 8.05784
r2 6.65924 10.02216 INFINITY
【0042】
非球面データ
第22面
ε=1,A4=-2.8267×10-4,A6=-3.2148×10-5,A8=0.0000,A10=0.0000
【0043】
また、第1の可変レンズ35及び第2の可変レンズ51の形状の変化例として図1Aには広角端における構成を示してある。広角端においては第1の可変レンズ35内の変形膜によって構成される第1面はほぼ平面に近い状態とされる。この時、第2の可変レンズ51の第18面は正の屈折力を有する凸形状とされることにより、像面位置を調整する。
【0044】
中間焦点距離の状態を表す図1Bにおいては、第1の可変レンズ35内の液体やゲル等の媒質の量が、図示しないポンプ機構等の制御機構により増やしたりする等して圧力を高める。これにより第1面の曲率は大きくなり物体側焦点距離が図1Aの広角端に比べて長くなる。
一方、第2の可変レンズ51においては、レンズ内に充填される液体やゲル等の量を減らしたり、圧力を弱めることにより正の屈折力を弱める方向に変形膜を変形させる。このことにより、物体側焦点距離が長くなったことによる像面位置のズレを調整することができる。なお、変形面の変形態様は媒質の量の増減によるもの以外であってもよく、上述したレンズ内の領域間移動等でもよい。
【0045】
図1Cは、望遠端における状態を表している。望遠端においては屈折面形状の変形による可変レンズによって構成される第1の可変レンズ35内の液体やゲル等の量をさらに増やし、変形膜を凸形状、正の屈折力を強める方向に変形させることで物体側焦点距離を長くする。この時もう一方の屈折面形状の変形による可変レンズである第2の可変レンズ51の変形面である物体側の面は、内部に充填される液体の量をさらに減らしほぼ平面に近い状態において光を受光面33に結像させる。
【0046】
このように、本実施の形態においては第1の可変レンズ35が屈折面形状の変形による可変レンズとされ、その変形面である変形膜の変形によって物体側焦点距離の変化、変倍率を行うため、広角端において第1面が平面形状もしくは凸形状であれば、望遠端へとズームしても変形膜を常に凸形状の状態にて用いることができる。
また、もう一方の屈折面形状の変形による可変レンズによって構成される第2の可変レンズ51においても、例えば物体側の面18が変形膜としてある。したがって、第1の可変レンズ35の変形面が正の屈折力を有する方向に変形する場合、広角端から望遠端へとズームする場合に生じる像面位置のズレは、第2の可変レンズ51の変形面を負の屈折力を強める方向に変形させることで調整する。したがって、望遠端における変形膜をちょうどほぼ平面状とした状態で受光面に結像が行われるようにしておけば、中間焦点距離や広角端においては、変形膜を凸形状とすることによる像面位置の調整が可能となる。これにより第2の可変レンズ51も常に凸形状とされることになる。
【0047】
このように本実施の形態においては、第1の可変レンズ35の屈折力を正の方向に強くし、第2の可変レンズ51の屈折率を負の方向に強くすることによって広角端から望遠端へと変えるものである。この時の第1の可変レンズ35及び第2の可変レンズ51の変形膜の曲率の関係は下記式(1)、(2)によって表される。
なお、φAtは望遠端における第1の可変レンズ35の変形膜の曲率、φAwは広角端における第1の可変レンズ35の変形膜の曲率を表す。また、φBtは望遠端における第2の可変レンズ51の変形膜の曲率、φBwは広角端における第2の可変レンズ51の変形膜の曲率を表す。
φAt>φAw ・・・(1)
φBt<φBw ・・・(2)
【0048】
以上のように本実施の形態においては、ズーム動作を行っても2つの可変レンズを常に凸形状として用いるものである。このため、変形膜の張力によって可変レンズ内の光透過性液体やゲル等に加えられる力は圧縮力となり、第1の可変レンズ35内に充填される媒質の圧力が負圧となるのを抑制することができる。
したがって、このような可変レンズ等においては媒質内に気泡が発生するのを防ぐことができるため、光学性能を損なうことなく高い品質を維持することが可能となる。
【0049】
本実施の形態においては物体側最前のレンズを第1の可変レンズとしたが、第1の変形面を変形させることにより倍率の変化が可能となる構成であればこれに限らず、その後段に配置されるレンズを第1の可変レンズとしてもよい。また第1の可変レンズよりも物体側にカバーガラスやその他のレンズ等を配置してもよい。また、像側の面を変形面とする場合には、望遠端においてほぼ平面形状とし、変形膜を像側に凸形状へと変化させることによって広角端へと移行することになる。
また、第2の可変レンズにおいては物体側の面に第2の変形面を配置する構成としたが、第2の可変レンズの像側の面に第2の変形膜を配置する光学系を構成してもよい。この場合にも第2の変形膜は像側に凸の形状にて合焦及び像面位置の調整を行うことになる。
【0050】
また、ズームレンズにおけるバリエータおよびコンペンセータの機能を液体レンズ等の可変レンズによって実現することにより、ズーム時にレンズを移動させるスペースを省くことができる。このため密なレンズ構成とすることができ、光学系のサイズを小さくすることが可能となる。
【0051】
たとえば本実施の形態においては、レンズ第1面から受光面23までの全長が30.3mmであり、バックフォーカスを含まずセンサカバー61を空気換算すると、その長さは25.4mmとなる。また固体レンズの総厚みは10.4mm、可変レンズの総厚みは最大2.6mmである。したがって全長に占めるレンズ厚の割合は(10.4+1.78)/25.4=48.0%となり、全長のほぼ半分近くをレンズ厚が占める密な構成とすることができる。
【0052】
また例えば第1面を変形膜とし、ここにバリエータとしての機能を持たせる場合には入射する光線高さが高くなる。このため球面収差の影響が大きくなるが、本実施の形態においてはレンズ内に充填する液体に屈折率の高い媒体を用い、曲率の変動幅を小さくするようにしてある。またさらに、第1面でのビーム系が小さい光学系としてあり、球面収差の影響を小さくすることができるので好ましい。
例えば上述した設計例1においては、第1レンズ35に用いた液体は、屈折率1.58、アッベ数29.1である。また第11レンズに用いた液体の屈折率は1.5057、アッベ数は34.9である。
【0053】
また、液体レンズ等の可変レンズにおける変形面は、その変形膜の弾性等の特性のために、曲率が大きくなる程球面形状から離れ、非球面形状となっていく。ところが本実施の形態においては、第1面に配置される変形面は光線高さが最大になる広角端において曲率が最小となり、光線高さが最小となる望遠端において曲率が最大となる。このため、第1面の曲率が大きい時に、球面形状から乖離することによって生じる球面収差の影響を抑えることもできる。
【0054】
以上のような構成とされたズームレンズ100の収差を図2〜図4に示す。図2は広角端における収差、図3は中間焦点距離における収差、図4には望遠端における収差を表してある。また、図2A、図3A、図4Aは球面収差であり、実線は波長870nm、一点鎖線は波長800nm、2点鎖線は波長555nm、破線は波長510nm、飛び破線は波長470nmにおける収差を示す。図2B、図3B、図4Bにおける実線S、破線Tはそれぞれサジタル面、メリディオナル面における非点収差である。また、図2C、図3C、図4Cは歪曲収差を示す。
【0055】
また比較例として、第1の可変レンズ35を固体レンズまた第1の固体レンズ36を屈折面形状の変形による可変レンズとし、この可変レンズの像側の面である第3面を変形膜として形状変化させる場合の収差を図5〜図7に示す。ただし、この場合は変形面を凹形状としても用いることになるため、気泡発生の可能性を有するズームレンズとなる。
図5〜7はそれぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における収差を表してある。また同様に、図5A、図6A、図7Aは非球面収差であり、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、2点鎖線は波長555nm、破線は波長510nm、飛び破線は波長470nmにおける収差を示す。図5B、図6B、図7Bにおける実線S、破線Tはそれぞれサジタル面、メリディオナル面における非点収差である。また、図5C、図6C、図7Cは歪曲収差を示す。
【0056】
また、図8に本実施の形態によるズームレンズ100における設計例1の場合のMTF性能を示す。横軸は空間周波数(cycles/mm)、縦軸は変調度である。図8Aは広角端、図8Bは中間焦点距離、図8Cは望遠端におけるMTFである。
また図9は、これの比較例として第1レンズを固体レンズ、また第2レンズを屈折面形状の変形による可変レンズとし、第3面を変形膜とした場合のMTFである。図9Aは広角端、図9Bは中間焦点距離、図9Cは望遠端におけMTFを示す。これら図において線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度を表す。
これらのことから、本実施形態のように第1面に屈折面形状の変形による可変レンズの変形膜を配置し、バリエータとすることによって変倍率を行っても、光学性能を損なうことなく動作できることがわかる。
【0057】
ところで、図10は本実施の形態によるズームレンズ100の倍率色収差を示すものである。図10Aは広角端、図10Bは望遠端における倍率色収差を表す。横軸は規格化した画角を、縦軸には収差として波長530nmの光の像点位置に対するズレ量(mm)を示してある。また、破線は波長450nm、実線は波長600nmの光線の収差を表す。
このように本実施の形態においては、図10Bに示す望遠端の倍率色収差特性から明らかなように、周辺光線の倍率色収差もリニアに近い、すなわち画角に対して比例的に変化する関係となっている。このため、信号補正技術により容易に補正を行うことができ、鮮明な像を得ることができる。
【0058】
2.第2の実施の形態
図11は第2の実施の形態によるズームレンズ200を表す構成図である。なお、第1の実施の形態を表す図1と対応する箇所については同符号を付し、重複を避ける。
本実施の形態におけるズームレンズ200は、変形面を例えば物体側第1面に備え、負の屈折力を有する第1の可変レンズを有するレンズ群34と、第1の可変レンズを有するレンズ群34によって取込まれた光を反射等して光の進行方向を変える光路変更素子63を含む。また、光路変更素子63によって反射された光の光路上に配置され、正の屈折率を有する中間レンズ群40と、第2の可変レンズを有するレンズ群50を含む。またこれらにより集光された光はセンサカバー61を透過した後、撮像素子等の受光面33に結像する。
【0059】
本実施の形態においても同様に、第1の可変レンズを有するレンズ群34は、例えば物体側第1面に変形膜による変形面を有し、例えば像側が凹形状とされる第1の可変レンズ35と、物体側が凸、像側が凹のメニスカス形状とされた第1の固体レンズ36と両凹形状とされた第2の固体レンズ37とにより構成される。
第1の可変レンズ35は屈折面形状の変形による可変レンズにより構成され、レンズ内部の媒質の圧力を変化させることにより、第1面に配置された変形膜を変形させて、曲率の変化を行う。
【0060】
中間レンズ群40は、物体側から第3の固体レンズ41と、第1の固体レンズ群40aと、絞り48と、第2の固体レンズ群40bと、第3の固体レンズ群40cによって構成される。例えば第3の固体レンズ41は両凸形状のレンズであり、第1の固体レンズ群40aは両凸形状の第4の固体レンズ42と両凹形状の第5の固体レンズ43とにより構成される。また、第2の固体レンズ群40bは両凹形状の第6の固体レンズ44と両凸形状の第7の固体レンズ45とにより構成される。
また、第1の固体レンズ群40aと第2の固体レンズ群40bは本実施形態においても絞り48を介して前後に対称的に配置され、像面湾曲やディストーション等を打ち消すようにしてある。
【0061】
また第3の固体レンズ群40cは、両凹形状の第8の固体レンズ46と両凸形状の第9の固体レンズ47により構成される。第9の固体レンズの像側の面は非球面とされ、軸上収差や軸外の収差等の各収差を補正する。
【0062】
第2の可変レンズを有するレンズ群50は、例えば物体側に変形膜を有し像側が凸とされた第2の可変レンズ51と、物体側が凹形状とされた第10の固体レンズ52とによって構成される。第2の可変レンズ51は屈折面形状の変形による可変レンズによって構成でき、物体側の面の形状変化によって像面位置を変化させ調整する。
【0063】
図11では望遠端における状態を表してあり、第1の可変レンズ35の第1面は凸形状とされる。またこの時第2の可変レンズ51の変形面である物体側の面は、ちょうどほぼ平面形状において像を受光面に結ぶようにするのが好ましい。
そして第1の可変レンズ35は、内部に充填された液体やゲル等の量を減少させたり、圧力を減少させてマイナスの屈折力方向に、第2の可変レンズ51は内部の液体の量を増やしたりして圧力を高めることによって変形面を凸形状とし、プラスの屈折力方向へ変化させることによって望遠端から広角端へと推移する。変形面の変形態様は第1の実施の形態と同様これに限定されるものではなく、レンズ内の媒質の移動等であってもよい。
【0064】
このように本実施の形態においても、屈折面形状の変形による可変レンズである第1の可変レンズの変形面の曲率変化によって変倍率を行う。
また、倍率の変化によって生じる像面位置のズレは、もう一方の屈折面形状の変形による可変レンズである第2の可変レンズ51によって調整される。本実施の形態では、物体側の面を変形面とし、望遠端において面形状が平面に近い状態となるようにする。このことにより望遠端から広角端へと倍率を変化させても、変形面を凸形状としてプラスの屈折力方向へと変形させることにより像面位置の調整を行うことができる。すなわち、第2の可変レンズ51の変形面も常に凸形状として用いることができる。
【0065】
このように、第1の可変レンズ35及び第2の可変レンズ51はその変形面を常に凸形状として用いるため、レンズ内に充填された媒質が負圧となるのを抑制することができる。このため、媒質内に気泡が発生してしまうことを防ぐことができ、常時高い品質状態で使用者の利用に応えることが可能となる。
【0066】
また本実施の形態においては、第1の可変レンズを有するレンズ群34の光軸方向が、中間群40及び第2の可変レンズを有するレンズ群50の光軸方向と異なるように配置される。すなわち第1の可変レンズを有するレンズ群30からとりこまれた光は、ミラー等の光路変更素子63によって反射されることにより、中間レンズ群40へと導かれる。
【0067】
本実施の形態によるズームレンズ200は、バリエータやコンペンセータとして液体レンズ等による屈折面形状の変形による可変レンズを用いている。したがってズーム時にレンズを移動させるためのスペースを必要としない。このため、この空いたスペースに光路変更素子63を配置することが可能となり、光路を折り返すことができる。これにより、ズームレンズ200は第1の可変レンズを有するレンズ群34の光軸方向の厚さを薄くすることができ、電子機器にも搭載スペースを確保しやすい。
【0068】
また本実施の形態においても、第1の変形面を変形させることにより倍率の変化が可能となる構成であればこれに限らず、その後段に配置されるレンズを第1の可変レンズとすることができる。また第1の可変レンズよりも物体側にカバーガラスやその他のレンズ等を配置してもよい。また、像側の面を変形面とする場合には、望遠端においてほぼ平面形状とし、変形膜を像側に凸形状へと変化させることによって広角端へと移行することになる。
また、第2の可変レンズの像側の面に第2の変形膜を配置する光学系を構成する場合も、第2の変形膜は像側に凸の形状にて合焦及び像面位置の調整を行う。
【0069】
3.第3の実施の形態
次に、本発明のズームレンズを適用した撮像装置の一例を説明する。図12は、本実施形態の撮像装置の概略構成図である。
【0070】
撮像装置300は主に、屈折面形状の変形による可変レンズによるズームレンズ70と、ズームレンズ70を介して入射された光を電気信号に変換して映像信号を取得する固体撮像素子等の撮像部71とを有するカメラモジュール77を備える。そしてこのカメラモジュール77により取得した映像信号に所定の処理を施す映像信号処理部72を含む。また、映像信号記録/再生部73(CPU:Central Processing Unit)及び内部メモリ74を含み、内部メモリ74は映像信号処理部72にて処理された信号を映像データとして記憶する。そして映像信号記録/再生部73は、映像信号処理部72にて処理された信号や内部メモリ74に記憶されたデータの記録・再生を行う。更に、映像信号記録/再生部74により再生される映像等を表示させる表示装置74と、図示しないズームボタン等のオン、オフに従ってズームレンズ70を作動させる制御部76も含む。
【0071】
本実施形態においてズームレンズ70は第1の実施の形態(図1)や第2の実施の形態(図11)にて示したものを用いることができ、入射した光Liを固体撮像素子等の撮像部71の受光面に結像させる。
【0072】
すなわち、本実施形態における撮像装置300のズームレンズ70は、屈折面形状の変形による可変レンズである第1の可変レンズを備え、その例えば物体側の面が変形面とされる。そしてその変形面の曲率を変化させることによって、倍率を変化させる。
そしてその後段にはもう一方の屈折面形状の変形による可変レンズであるの第2の可変レンズが配置され、この変形面の曲率を変化させることによって、倍率の変化にともなう像面位置のズレを調整する。
【0073】
また、第1の可変レンズの変形面は望遠端において最大の曲率を有し、もう一方の第2の可変レンズの変形面はほぼ平面に近い状態において像を結像する。そして第1の可変レンズは内部の液体やゲル等の量を減らしたり、圧力を小さくすることによってマイナスの屈折力方向へと変形し、もう一方の可変レンズは内部の液体量を増やしたり、圧力を高めることによってその変形面をプラスの屈折力方向へと変形させて望遠端から広角端へと移行する。また、可変レンズ内に充填される媒質の圧力を変化させるポンプ機構等の制御機構は、カメラモジュール77内に内臓されていてもよいし、外付けしてあってもよい。
【0074】
ズームレンズ70によって集光される光は撮像部71に結像される。この撮像部71は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイス等の固体撮像素子で構成することができる。これらのデバイスは、照射された光エネルギーを電荷に変換する複数の光電変換部を有し、画素毎の受光量を映像信号に変換して外部に出力する。
【0075】
このようにしてカメラモジュール77により取得された映像信号は、映像信号処理部72においてデータ処理が行われるが、レベル補正やシェーディング補正等の画像処理は撮像部71にて行われるようにしてあってもよい。処理後の映像信号は映像信号記録/再生部73によって内部メモリ74に記録される。また、記録された映像を再生する時には内部メモリ74より記録データを読み出し、表示装置75に表示させる。
【0076】
制御部76は、ズームボタン等によってズーム機能のオン、オフの信号を受けると、図示しないポンプ機構等の制御を行い、ズームレンズ70を構成する可変レンズに充填された光透過性液体やゲル等の出し入れを行う。すなわち、望遠端へと移行する時には物体側に配置される第1の可変レンズ内に充填される光透過性液体等の圧力を高め、正の屈折力を強める方向に物体側の変形膜を変形させる。また、その後段に配置されるもう一方の第2の可変レンズに対しては、充填される光透過性液体の圧力を小さくする。これにより、負の屈折力を強める方向に物体側のレンズ面である変形膜を変形させ、像面位置を調整する。
また広角端へと移行する時には、第1の可変レンズ内の光透過性液体やゲル等の圧力を減らし、負の屈折力を強める方向へ物体側の変形膜を変形させる。そして、その後段に配置される第2の可変レンズ内の光透過性液体やゲル等の圧力を高め、正の屈折力を強める方向に物体側のレンズ面を変形させる。
この場合においてももちろん、光透過性液体やゲル等のレンズ媒質の量の増減のみではなく、レンズ内の移動等によって変形する構成等、その他の変形機構を有する可変レンズでもよい。
【0077】
このように本実施の形態による撮像装置300は、そのズームレンズ70の第1の可変レンズの第1面の変形により倍率を変化させる。このため、可変レンズの変形面を常に凸形状として用いることができる。これにより、可変レンズ内の媒質が負圧となるのを防ぐことができるので、媒質内に気泡が発生するのを抑制することができる。よって高品質な画像を取得し続けることが可能となる。
また、液体レンズやゲルレンズ等による可変レンズによって倍率の変化及び像面位置の調整を行うので、従来のようにレンズを移動させるためのスペースを必要とせず、装置を小型化することができる。
【0078】
4.第4の実施の形態
次に、本発明によるズームレンズを電子機器に搭載する例として、携帯通信端末装置に用いる場合について説明する。
図13は本実施の形態による携帯情報端末装置400の構成を表すブロック図である。
携帯情報端末装置400は、制御部(CPU)81を備え、信号バス80を介して携帯通信端末装置400内の各部に指令を送ることができる構成とされる。
すなわち、制御部81はROM(Read Only Memory)82に保存されている制御プログラムをRAM(Random Access Memory)83に展開し、信号バス80を介して各部の制御を行う。
【0079】
また、基地局等とのと無線通信を行うアンテナ84は通信制御部85に接続され、無線信号の送信処理及び受信処理が行われる。受信された信号が音声信号である場合には、音声処理部90に供給され、アナログ音声信号としてスピーカ91から出力される。逆にマイクロフォン92が外部より拾う音声信号は、音声処理部90においてデジタル音声データに変換され、信号バス80を介して通信制御部85に供給される。
【0080】
また、液晶表示パネルなどで構成されるLCD87を有し、表示制御部86の制御によって各種文字や画像などの表示が行われる。操作部95は、数字などのダイヤルキーや各種機能キー、タッチパネルなどにより構成され、それぞれのキーによる入力情報を制御部81へと伝達する。ROM82には、制御部81で用いるプログラムや、各種保存データが格納される。
【0081】
カメラモジュール89は主にズームレンズとズームレンズにより結像される像を電気信号に変換して画像データを取得する撮像部とによって構成される。このズームレンズには第1及び第2の実施の形態(図1、11)にて示したズームレンズを用いることができる。すなわち、ズームレンズは物体側第1レンズ及びその後段に配置されるレンズ屈折面形状の変形による可変レンズによって構成され、例えばその物体側の面が変形面とされる。そして図示しないポンプ機構等の可変レンズ機構部により、可変レンズ内に充填された光透過性媒質の圧力を変化させ、変形面の曲率を変化させる。なお、第2の実施の形態(図11)のように光路変更素子をズームレンズ内の光路中に配置して折り返す構成としてあると、モジュール高さを低くすることができ搭載スペースを確保しやすいので好ましい。
【0082】
カメラ制御部88はカメラモジュール89の動作を制御するとともに、取得された映像信号を圧縮処理等して信号バス80へと送る。また、ズームレンズの動作を制御するポンプ機構等の可変レンズ機構部の制御やカメラモジュール89にて取得された映像信号の処理を行う映像信号処理部等は、カメラモジュール89内に内蔵されていてもよいし、カメラ制御部88にて行うようにしてもよい。
【0083】
信号バス80へと送られた映像データはRAM83に一時的に保存されるが、必要に応じてメモリーカードインターフェース93へと出力されメモリーカード94に保存される。または、表示制御部86を介してLCD(液晶ディスプレイ)87に表示される。
【0084】
これらの映像データや、アンテナ84により受信された通信データ等は、例えば赤外線インターフェース96によって赤外線通信部97を介して外部に出力され、同じような赤外線通信部を備えた機器へ伝達されるようにしてもよい。外部の機器としては例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)等の外部の情報機器等が挙げられる。
【0085】
このように、本実施の形態における携帯通信端末装置400は、本発明によるズームレンズを搭載したカメラモジュールを搭載している。
ズームレンズには屈折面形状の変形による可変レンズである第1の可変レンズが備えられ、例えばその物体側の面が変形膜、すなわち変形面とされる。そしてこのレンズ内の光透過性媒質の圧力を変化させることにより変形面の曲率を変化させ、倍率の変動を行う。またこの後段には第2の可変レンズが配置され、第2の可変レンズの変形面の形状を変化させることによって、倍率の変動にともなう像面位置のズレを補正する。
【0086】
広角端においては、第1の可変レンズの変形面はほぼ平面形状とされ、もう一方の第2の可変レンズはその変形面が凸形状の状態において像を撮像部の受光面に結像させる。そして第1レンズの変形面は正の屈折力の方向に、つまりほぼ平面状の面の曲率が大きくなる方向に形状を変化させることによって広角端から望遠端へと倍率を変化させる。
またこの際には、もう一方第2の可変レンズの物体側の面の変形面を負の屈折力を有する方向、すなわちレンズ内の媒質の圧力を小さくすることによって像面位置を調整する。
この場合も、可変レンズの変形面の変形態様はレンズ媒質の量の増減のみならずレンズ内の移動等、他の構成によるものでもよい。
【0087】
このように、本実施の形態においても屈折面形状の変形による可変レンズを常に凸形状として用いることが可能となる。このため、レンズ内部に充填された液体等の媒質が負圧になるのを抑制できる。したがって媒質内に気泡が発生しないので光学性能が劣化せず、本実施形態による携帯通信端末装置400は品質の高い画像を常に提供し続けることができる。
【0088】
また、液体レンズやゲルレンズ等の可変レンズをバリエータやコンペンセータとして用いているので、ズーム時にはレンズを移動させる必要がなく、そのためのスペースを省くことができる。従って密なレンズ構成とすることができ、小型化をはかることができる。
【0089】
以上、本発明によるズームレンズ、カメラモジュール、電子機器、及びズームレンズの設計方法について説明したが、本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、なお考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1〜23・・・面、35・・・第1の可変レンズ、36、37,41〜47,52・・・レンズ、51・・・第2の可変レンズ、48・・・絞り、34,40,40a,40b,40c,50,120,130・・・レンズ群、61・・・センサカバー、62・・・撮像部、63・・・光路変更素子、70,100,200・・・ズームレンズ、71・・・撮像部、72・・・映像信号処理部、73・・・映像信号記録/再生部、74・・・表示装置、75・・・内部メモリ、76・・・制御部、77・・・カメラモジュール、80・・・信号バス、81・・・制御部、82・・・ROM、83・・・RAM、84・・・アンテナ、85・・・通信制御部、86・・・表示制御部、87・・・LCD、88・・・カメラ制御部、89・・・カメラモジュール、90・・・音声処理部、91・・・スピーカ、92・・・マイクロフォン、93・・・メモリーカードインターフェース、94・・・メモリーカード、95・・・操作部、96・・・赤外線インターフェース、97・・・赤外線通信部、110・・・ワイドコンバータ、121,122,131,132・・・レンズ、123,133・・・変形膜、141・・・シリンジ、142・・・ピストン、143・・・液体、144・・・気泡、150・・・液体レンズ、151・・・液体、152・・・弾性膜、300・・・撮像装置、400・・・携帯通信端末装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ、カメラモジュール、電子機器、及びズームレンズの設計方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レンズ媒質に液体を用いた液体レンズの開発が盛んに進められるようになっている。このレンズでは、少なくとも一方のレンズ面を変形可能な膜状等の変形面とし、レンズ媒質に液体を用いることによりレンズ形状を変化させるものである。同様に、媒質にゲルを用いるゲルレンズも提案されている。これらのレンズは、レンズそのものの曲率を変えることができるため、可変焦点レンズとして用いることができる。
【0003】
例えば下記特許文献1では、こうしたレンズを撮像レンズ用のワイドコンバータとして用いることが開示されている。図14を参照して特許文献1に記載されたワイドコンバータを説明する。図14Aに示すように、このコンバータ110は第1のレンズ群120と第2のレンズ群130とから構成されている。そして第1のレンズ群120は、固体レンズからなる第1のレンズ121と、像側(図14中右側)に変形面として変形膜123を備える液体レンズより成る第2のレンズ122とにより構成される。
また第2のレンズ群130は、固体レンズである第3のレンズ131と像側(図14中右側)に変形膜133を備える液体レンズである第4のレンズ132とにより構成される。
【0004】
第2のレンズ122及び第4のレンズ132はともに上述した屈折面形状の変形による液体レンズであり、内部には光透過性の液体が封入されている。さらに、図示しない管状等の液体移動部を介してポンプ機構等にそれぞれ接続される。そしてこのポンプ機構等によって第2のレンズ122や第4のレンズ132内の液体へ加える圧力を変化させると、それに応じて変形膜123、133が変形する。
【0005】
図14Aでは第2のレンズ122内の液体を吸引等することにより変形膜123を凹形状とし、また第4のレンズ132は、内部に液体を導入することにより変形膜133を凸形状としてある。また固定レンズである第1のレンズ121は凹レンズであり、第3のレンズ131は凸レンズとされる。すなわち、第1のレンズ群120は負の屈折力を、また第2のレンズ群130は正の屈折力を有し、系全体で1より小さいアフォーカル倍率を有する状態とされる。
【0006】
これに対して図14Bの状態においては、第2のレンズ122内部に液体を導入する等して変形膜123を膨らませ、平凸レンズとする。これにより第1のレンズ群120として1より小さいアフォーカル倍率を有するレンズ群とされる。また第4のレンズは、内部の液体を吸引等することにより変形膜133をへこませ、両凹レンズとする。これにより第2のレンズ群130として1より大きいアフォーカル倍率を有するレンズ群とされる。つまりこの場合、系全体ではアフォーカル倍率が1の状態とすることができる。
【0007】
このように第2のレンズ及び第4のレンズを液体レンズとし、図14A及び図14Bのようにレンズ形状を変化させることで、全系の焦点面を一定位置に維持したまま、撮影系全体の焦点距離を広角側に変化させるワイドコンバータ110を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−185627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、レンズ屈折面形状が変形可能とされる可変焦点レンズを用いてレンズ面の曲率を変化させ、焦点距離を可変とする際には、その面形状を凹型へと変形させマイナスの屈折力を生じさせる場合が存在する。
【0010】
中でも、レンズ内に充填された液体等の媒質の圧力を変化させることによって面を変形させる場合、例えばレンズ内に充填されたその光透過性の液体をポンプ等にて引く等し、圧力を変化させることによって凹形状へと変化させる。この場合この光透過性液体の液圧は負圧となるため、液体内に気泡が発生しやすい環境となる。
なお、このように内部に充填された媒質の圧力を変化させることによって光屈折面を変形させる可変焦点レンズを以下「屈折面形状の変形による可変レンズ」と称することとする。
【0011】
図15は、屈折面形状の変形による可変レンズ内に気泡が発生するモデルを表す説明図である。シリンジ141内に液体143が充填されており、これをピストン142によって引く場合を考える。ここで、理想状態として液体143には気泡核が存在しない状態とする。
図15Aにおいては、ピストン142に力を加えておらず液体143の圧力と外気圧とが釣り合った状態を表している。これに対して図15Bのようにピストン142を外向きにD1方向に引くと、液体143は負圧状態となり気泡144が発生する。
【0012】
このシリンジ141内の液体143に気泡144を発生させるのに必要なエネルギEは、気泡144の表面エネルギと負圧下で気泡を生成するのに要するエネルギとの和となる。これは、気泡144の半径をrとすると下記数1によって表される。数1においてTは液体143の表面張力、ΔPは液体143のピストンを引くことにより発生する液圧と外気圧との差である。またここではΔPは負の値となる。
【0013】
【数1】
【0014】
図16は上記数1を気泡4の半径rの関数としてグラフ化したものである。図16から明らかなように、この関数には極値が存在する。ここでこの極値における半径rcを臨界半径、極値におけるエネルギΔEを気泡発生のエネルギ障壁とする。
すなわち臨界半径rcよりも小さい大きさの気泡は、よりエネルギの低い安定状態、より半径の小さくなる方へと向かうため消滅する。しかし、臨界半径rcよりも大きい半径気泡はエネルギがエネルギ障壁ΔEよりも大きいため液体内に残り続けることになる。
また、衝撃や振動などのエネルギが印加されることにより、系のエネルギがΔEよりも高まると、液体内に気泡が発生する。
【0015】
この臨界半径rc及びエネルギ障壁ΔEは下記数2、数3によって表される。
【0016】
【数2】
【0017】
【数3】
【0018】
このように、理想的な条件下においては気泡の発生は液体の表面張力や液圧と外気圧の差に依存する。特にエネルギ障壁ΔEは液圧と外気圧との差の2乗に反比例し、液体の表面張力の3乗に比例する。すなわち、気泡の発生を抑制するには表面張力の高い液体を用いるか、もしくは液圧と外気圧の差ΔPを与えないことが必要となる。
【0019】
図17は、屈折面形状の変形による可変レンズにおけるモデルを表す説明図である。可変レンズ150内部には媒質として光透過性の液体151が満たされ、この液体151を出し入れすることによって弾性膜152の形状が変化する。屈折面形状の変形による可変レンズの液圧PL、外気圧PA、膜弾性力PEの関係は上記の図1のモデルと等価となり、下記の式によって表される。
ΔP=PL−PA=−PE<0
屈折面形状の変形による可変レンズ150が図17の断面図に示すように凹レンズ形状の場合、弾性膜152の変形により生じる弾性力によって液体には上方向への引っ張り圧力が加わり、負圧の状態となる。また、これとは逆に液体151の量を増やして凸形状とした場合には、液体151には弾性膜152の弾性力によって圧縮力が働き、正圧となる。
【0020】
従来においては、既述のように屈折面形状の変形による可変レンズを凹形状へ変化させた状態も適用することが多く、この場合にはレンズ内の液体が負圧となる。したがって気泡発生のエネルギ障壁ΔEは有限の値となるため、気泡が発生する可能性をもつ。
【0021】
また、上記のようなワイドコンバータのみならず、ズームレンズにこうした可変焦点レンズを適用すれば、ズーム時にレンズを移動させるスペースを省くことができるので非常に有用性が高い。しかし、光学系の設計次第では屈折面形状の変形による可変レンズを用いると、液体レンズ面を凹形状とする必要があり、液体内に気泡が発生しうる状態となる。
【0022】
そこで本発明は上記問題に鑑み、屈折面形状の変形による可変レンズを用いてもレンズ内に気泡の発生しにくいズームレンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上気課題を解決するために、本発明によるズームレンズは、第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、前記第1の可変レンズを有するレンズ群の後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、を含む。そして前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜による前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質とを備え、光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、使用範囲において、第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされる。
【0024】
すなわち本発明におけるズームレンズは、レンズ面を変形面とし、この変形面をバリエータとして用いるものである。この変形面は光透過性の弾性膜等によって構成することができる。そしてレンズ内部に充填される光透過性の媒質の増減等によって形状を変化させ、曲率を変動させる。なお、このレンズ内部に充填される媒質は液体以外にゲル状のものでもよく、光透過性を有し、レンズ内への充填量調整が容易な流動性の媒質であればよい。またこのレンズの後段にも変形面を有するレンズを配置し、いわゆるコンペンセータおよびフォーカスレンズとして用いる。すなわちこの変形面の形状変化によって、倍率の変動に伴う像面位置のズレを調整し、物体位置の変動による合焦をする。
【0025】
そして本発明においては、このズームレンズに用いられる可変レンズの変形面を平面形状から凸形状の範囲で変形する構成として用いる。したがって、可変レンズ内に充填される媒質が負圧となり、可変レンズ内に気泡が発生するのを防ぐことができる。
【0026】
また本発明によるカメラモジュールは、上述の本発明構成のズームレンズと、このズームレンズによって集光される光を受光する撮像部とを含む。
【0027】
また本発明におけるカメラモジュールにおいても、そのズームレンズに用いられる可変レンズの変形面を平面形状から凸形状の範囲で変形する構成として用いる。したがって、可変レンズ内に充填される媒質が負圧となり、可変レンズ内に気泡が発生するのを防ぐことができ、このため、本発明によるカメラモジュールは高品質な画像を長期間にわたって提供することが可能である。
またさらには、ズームレンズ内の光路上にミラー等の光路変更素子を配置することによって、カメラモジュールの厚みを低くすることもできる。
【0028】
また本発明における電子機器は、上述の本発明構成のズームレンズと、前記ズームレンズによって集光される光を受光する撮像部と、を含むカメラモジュールを備える。またこのカメラモジュールの撮像部によって取得されたデータの処理を行う画像処理部と、第1及び第2の可変レンズの変形面の変形を行う可変レンズ機構部と、前記画像処理部及び前記可変レンズ機構部の制御を行う制御部を備える。
本発明における電子機器においても、搭載されるカメラモジュールのズームレンズは、その可変レンズを平面形状から凸形状の範囲で変形する構成として用いる。このため可変レンズ内の媒質が負圧になるのを防ぐことができる。したがって、本発明による電子機器は高品質な画像の取得を維持することが可能となる。
【0029】
また本発明によるズームレンズの設計方法は、第1の変形面を有し、第1の変形面の変形により焦点距離を変化させる第1の可変レンズを配置する。そして第1の可変レンズの後段に、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させる第2の可変レンズを配置するものである。
【0030】
そして、広角端における第1の変形面の曲率を望遠端における第1の変形面の曲率よりも小さくし、広角端における第2の変形面の曲率を望遠端における第2の変形面の曲率よりも大きくするものである。これにより、第1の変形面および第2の変形面が常に物体側に凸形状を有する状態にてズーム動作を行うことが可能となり、第1および第2の可変レンズ内に充填される媒質に加わる力が負圧となるのを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、変倍、又は合焦及び像面位置補正に用いる屈折面形状の変形による可変レンズの変形面を平面形状から凸形状として用いることができる。したがって、レンズ内に充填される媒質が負圧となるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態によるズームレンズの概略構成図である。
【図2】本発明の実施の形態によるズームレンズの広角端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図3】本発明の実施の形態によるズームレンズの中間焦点距離における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図4】本発明の実施の形態によるズームレンズの望遠端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図5】第3面を変形面とするズームレンズの広角端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図6】第3面を変形面とするズームレンズの中間焦点距離における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図7】第3面を変形面とするズームレンズの望遠端における収差を示す説明図である。Aは球面収差、Bは非点収差、Cは歪曲収差を示す。
【図8】参照波長555nmの光に対する本発明の実施の形態によるズームレンズのMTFを示す説明図である。Aは広角端を、Bは中間焦点距離、Cは望遠端を示す。
【図9】第3面を変形面とするズームレンズのMTFを示す説明図である。Aは広角端を、Bは中間焦点距離、Cは望遠端を示す。
【図10】本発明の実施の形態によるズームレンズの色倍率収差を示す説明図である。Aは広角端を、Bは望遠端を示す。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるズームレンズを示す概略構成図である。
【図12】本発明の第3の実施の形態による撮像装置を示す概略構成図である。
【図13】本発明の第4の実施の形態による携帯情報端末装置を示す概略構成図である。
【図14】屈折面形状の変形による可変レンズを用いた従来のワイドコンバータの構成を示す構成図である。
【図15】気泡の発生モデルを説明する説明図である。
【図16】気泡の半径と、その気泡を発生させるのに必要とするエネルギとの関係を示す説明図である。
【図17】屈折面形状の変形による可変レンズにおいて働く圧力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下本発明を実施するための最良の形態の例を説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施の形態(ズームレンズの実施の形態)
2.第2の実施の形態(ズームレンズの他の実施の形態)
3.第3の実施の形態(カメラモジュールの実施の形態)
4.第4の実施の形態(電子機器の実施の形態)
【0034】
1.第1の実施の形態
以下本発明の実施の形態によるズームレンズ100の構成を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態によるズームレンズ100を表す構成図である。本発明によるズームレンズは、変形面を物体側の面に備えた第1の可変レンズを有するレンズ群34と、その後段に配置され、変形面を物体側の面に備えた第2の可変レンズを有するレンズ群50を含む。また図1に示す例では、正の屈折率を有する中間レンズ群40を可変レンズを有するレンズ群34及び50の間に配置する。またこれらにより集光された光はセンサカバー61を透過した後、撮像素子62等の受光面23に結像する。
なお、図1に示すように、ズームレンズ100を構成するそれぞれのレンズ、絞り48、センサカバー61の面及び撮像部62の受光面を物体側から第1〜23面とする。
【0035】
第1の可変レンズを有する第1のレンズ群34は、例えば物体側第1面に変形膜を有し、例えば像側が凹形状とされる第1の可変レンズ35を備える。そしてその像側に、物体側が凸、像側が凹のメニスカス形状とされた第1の固体レンズ36と両凹形状とされた第2の固体レンズ37とにより構成される。
第1の可変レンズ35は屈折面形状の変形による可変レンズにより構成され、例えば光透過性の平板又は所定の曲面形状を有する光透過性の基板の間に光透過性の液体、ゲル等の媒質が収容された構成とし得る。この構成において、基板の間の接合部に管状等の液体移動部を設け、液体移動部を介して内部の媒質を出し入れ可能とすることもできる。この場合図示しないポンプ機構等の制御機構により液体移動部を介して内部の媒質を出し入れしたり、媒質の圧力を変化させることにより、物体側の第1面に配置された変形膜が変形し、曲率が変化する。なお、本発明に適用する可変レンズとしては、その他の構成でもよい。例えばレンズ内に媒質を収容する領域が2か所以上設けられ、変形膜に接する領域内の媒質を移動させることで変形膜を変形させる構造であってもよく、屈折面形状の変形による可変レンズとしての構造や変形機構は特に限定されない。
【0036】
そして上述したように、図1に示すズームレンズ100においては、例えば物体側第1面を屈折面形状の変形による可変レンズの変形膜とすることにより、物体側焦点距離を変化させるバリエータとしての機能を持たせる。
またここでは、第1の可変レンズ35の像側に第1の固体レンズ36が組み合わされて一体化した接合型のダブレットレンズとする例としてある。
【0037】
中間レンズ群40は、物体側から第3の固体レンズ41と、第1の固体レンズ群40aと、絞り48と、第2の固体レンズ群40bと、第3の固体レンズ群40cによって構成される。例えば第3の固体レンズ41は両凸形状のレンズであり、第1の固体レンズ群40aは両凸形状の第4の固体レンズ42と両凹形状の第5の固体レンズ43とにより構成される。また、第2の固体レンズ群40bは両凹形状の第6の固体レンズ44と両凸形状の第7の固体レンズ45とにより構成される。
ここで、第1の固体レンズ群40aと第2の固体レンズ群40bは絞り48を介して前後に対称的に配置され、いわゆるガウスタイプのような構成とすることにより像面湾曲やディストーション等を打ち消すようにしてある。
【0038】
また第3の固体レンズ群40cは、両凹形状の第8の固体レンズ46と両凸形状の第9の固体レンズ47により構成される。第9の固体レンズ47の像側面17は非球面であり軸上収差や軸外の収差等を補正する機能を有する。またこのように、中間レンズ群40を構成する個々のレンズは全て固体レンズとなっている。
【0039】
第2の可変レンズを有するレンズ群50は、物体側に変形膜を有し像側が凸とされた第2の可変レンズ51と、物体側が凹形状とされた第10の固体レンズ52とによって構成される。第2の可変レンズ51も屈折面形状の変形による可変レンズ等によって構成することができ、物体側の面である第18面の形状変化によって像面位置を変化させるコンペンセータ、及びフォーカスレンズの機能等も兼ねている。また、第2の可変レンズ51内に充填される光透過性の媒質は液状でもゲル状のものであってもよい。
【0040】
これらズームレンズ100を構成するそれぞれのレンズ、絞り48、センサカバー61の面及び撮像素子62における曲率半径r、光軸上の面間隔d、面間の媒質におけるd線(波長587.56nm)の屈折率、同様にd線に対するアッベ数を下記設計例1に示す。なお第17面は非球面としてあり、非球面係数も下記に示す。また各レンズ、絞りの有効径をRに示す。なお、後ろ側焦点距離はセンサのガラスカバー厚を除く。
【0041】
設計例1
面データ 曲率半径r 面間隔d 屈折率nd アッベ数vd 有効径R
面番号
1 r1 d1 1.58 29.1 3.705
2 3.87357 1.45 1.743972 44.85 3.1247
3 9.59223 1.2 2.9804
4 -13.4527 0.6 1.744182 28.10 2.76
5 11.27496 6.368128 2.5783
6 47.04509 1.02 1.7552 27.58 2.0084
7 -10.7293 0.8 1.9515
8 9.94058 1.06 1.750507 32.82 1.6364
9 -11.04001 0.8 1.48749 70.41 1.4456
10 17.47191 0.4 1.1815
11 絞り 1.2 1.0378
12 -3.9439 0.8 1.749382 27.82 1.151
13 9.66673 1.54 1.604743 61.16 1.3566
14 -4.49862 1.357853 1.615
15 -9.80008 0.8 1.755201 27.58 1.8526
16 4.64493 2.35 1.663216 53.19 2.1149
17* -5.32866 d2 2.4
18 r2 d3 1.5057 34.90 2.5132
19 -18.55058 1 1.75520 27.58 2.4502
20 -218.9945 1.941048 2.419
21 INFINITY 0.105 1.48749 70.41
22 INFINITY 2.837622
23 INFINITY 0
広角端 中間焦点距離 望遠端
焦点距離 3.73 6.46 11.19
Fナンバー 3.20 3.75 4.80
画角 [度] 63.4 39.3 23.3
全長 30.3(望遠端時)
BF 4.9
d1 0.02000 0.70661 1.08705
d2 0.03994 0.43108 1.1025
d3 1.56256 1.17142 0.5
r1 INFINITY 12.05152 8.05784
r2 6.65924 10.02216 INFINITY
【0042】
非球面データ
第22面
ε=1,A4=-2.8267×10-4,A6=-3.2148×10-5,A8=0.0000,A10=0.0000
【0043】
また、第1の可変レンズ35及び第2の可変レンズ51の形状の変化例として図1Aには広角端における構成を示してある。広角端においては第1の可変レンズ35内の変形膜によって構成される第1面はほぼ平面に近い状態とされる。この時、第2の可変レンズ51の第18面は正の屈折力を有する凸形状とされることにより、像面位置を調整する。
【0044】
中間焦点距離の状態を表す図1Bにおいては、第1の可変レンズ35内の液体やゲル等の媒質の量が、図示しないポンプ機構等の制御機構により増やしたりする等して圧力を高める。これにより第1面の曲率は大きくなり物体側焦点距離が図1Aの広角端に比べて長くなる。
一方、第2の可変レンズ51においては、レンズ内に充填される液体やゲル等の量を減らしたり、圧力を弱めることにより正の屈折力を弱める方向に変形膜を変形させる。このことにより、物体側焦点距離が長くなったことによる像面位置のズレを調整することができる。なお、変形面の変形態様は媒質の量の増減によるもの以外であってもよく、上述したレンズ内の領域間移動等でもよい。
【0045】
図1Cは、望遠端における状態を表している。望遠端においては屈折面形状の変形による可変レンズによって構成される第1の可変レンズ35内の液体やゲル等の量をさらに増やし、変形膜を凸形状、正の屈折力を強める方向に変形させることで物体側焦点距離を長くする。この時もう一方の屈折面形状の変形による可変レンズである第2の可変レンズ51の変形面である物体側の面は、内部に充填される液体の量をさらに減らしほぼ平面に近い状態において光を受光面33に結像させる。
【0046】
このように、本実施の形態においては第1の可変レンズ35が屈折面形状の変形による可変レンズとされ、その変形面である変形膜の変形によって物体側焦点距離の変化、変倍率を行うため、広角端において第1面が平面形状もしくは凸形状であれば、望遠端へとズームしても変形膜を常に凸形状の状態にて用いることができる。
また、もう一方の屈折面形状の変形による可変レンズによって構成される第2の可変レンズ51においても、例えば物体側の面18が変形膜としてある。したがって、第1の可変レンズ35の変形面が正の屈折力を有する方向に変形する場合、広角端から望遠端へとズームする場合に生じる像面位置のズレは、第2の可変レンズ51の変形面を負の屈折力を強める方向に変形させることで調整する。したがって、望遠端における変形膜をちょうどほぼ平面状とした状態で受光面に結像が行われるようにしておけば、中間焦点距離や広角端においては、変形膜を凸形状とすることによる像面位置の調整が可能となる。これにより第2の可変レンズ51も常に凸形状とされることになる。
【0047】
このように本実施の形態においては、第1の可変レンズ35の屈折力を正の方向に強くし、第2の可変レンズ51の屈折率を負の方向に強くすることによって広角端から望遠端へと変えるものである。この時の第1の可変レンズ35及び第2の可変レンズ51の変形膜の曲率の関係は下記式(1)、(2)によって表される。
なお、φAtは望遠端における第1の可変レンズ35の変形膜の曲率、φAwは広角端における第1の可変レンズ35の変形膜の曲率を表す。また、φBtは望遠端における第2の可変レンズ51の変形膜の曲率、φBwは広角端における第2の可変レンズ51の変形膜の曲率を表す。
φAt>φAw ・・・(1)
φBt<φBw ・・・(2)
【0048】
以上のように本実施の形態においては、ズーム動作を行っても2つの可変レンズを常に凸形状として用いるものである。このため、変形膜の張力によって可変レンズ内の光透過性液体やゲル等に加えられる力は圧縮力となり、第1の可変レンズ35内に充填される媒質の圧力が負圧となるのを抑制することができる。
したがって、このような可変レンズ等においては媒質内に気泡が発生するのを防ぐことができるため、光学性能を損なうことなく高い品質を維持することが可能となる。
【0049】
本実施の形態においては物体側最前のレンズを第1の可変レンズとしたが、第1の変形面を変形させることにより倍率の変化が可能となる構成であればこれに限らず、その後段に配置されるレンズを第1の可変レンズとしてもよい。また第1の可変レンズよりも物体側にカバーガラスやその他のレンズ等を配置してもよい。また、像側の面を変形面とする場合には、望遠端においてほぼ平面形状とし、変形膜を像側に凸形状へと変化させることによって広角端へと移行することになる。
また、第2の可変レンズにおいては物体側の面に第2の変形面を配置する構成としたが、第2の可変レンズの像側の面に第2の変形膜を配置する光学系を構成してもよい。この場合にも第2の変形膜は像側に凸の形状にて合焦及び像面位置の調整を行うことになる。
【0050】
また、ズームレンズにおけるバリエータおよびコンペンセータの機能を液体レンズ等の可変レンズによって実現することにより、ズーム時にレンズを移動させるスペースを省くことができる。このため密なレンズ構成とすることができ、光学系のサイズを小さくすることが可能となる。
【0051】
たとえば本実施の形態においては、レンズ第1面から受光面23までの全長が30.3mmであり、バックフォーカスを含まずセンサカバー61を空気換算すると、その長さは25.4mmとなる。また固体レンズの総厚みは10.4mm、可変レンズの総厚みは最大2.6mmである。したがって全長に占めるレンズ厚の割合は(10.4+1.78)/25.4=48.0%となり、全長のほぼ半分近くをレンズ厚が占める密な構成とすることができる。
【0052】
また例えば第1面を変形膜とし、ここにバリエータとしての機能を持たせる場合には入射する光線高さが高くなる。このため球面収差の影響が大きくなるが、本実施の形態においてはレンズ内に充填する液体に屈折率の高い媒体を用い、曲率の変動幅を小さくするようにしてある。またさらに、第1面でのビーム系が小さい光学系としてあり、球面収差の影響を小さくすることができるので好ましい。
例えば上述した設計例1においては、第1レンズ35に用いた液体は、屈折率1.58、アッベ数29.1である。また第11レンズに用いた液体の屈折率は1.5057、アッベ数は34.9である。
【0053】
また、液体レンズ等の可変レンズにおける変形面は、その変形膜の弾性等の特性のために、曲率が大きくなる程球面形状から離れ、非球面形状となっていく。ところが本実施の形態においては、第1面に配置される変形面は光線高さが最大になる広角端において曲率が最小となり、光線高さが最小となる望遠端において曲率が最大となる。このため、第1面の曲率が大きい時に、球面形状から乖離することによって生じる球面収差の影響を抑えることもできる。
【0054】
以上のような構成とされたズームレンズ100の収差を図2〜図4に示す。図2は広角端における収差、図3は中間焦点距離における収差、図4には望遠端における収差を表してある。また、図2A、図3A、図4Aは球面収差であり、実線は波長870nm、一点鎖線は波長800nm、2点鎖線は波長555nm、破線は波長510nm、飛び破線は波長470nmにおける収差を示す。図2B、図3B、図4Bにおける実線S、破線Tはそれぞれサジタル面、メリディオナル面における非点収差である。また、図2C、図3C、図4Cは歪曲収差を示す。
【0055】
また比較例として、第1の可変レンズ35を固体レンズまた第1の固体レンズ36を屈折面形状の変形による可変レンズとし、この可変レンズの像側の面である第3面を変形膜として形状変化させる場合の収差を図5〜図7に示す。ただし、この場合は変形面を凹形状としても用いることになるため、気泡発生の可能性を有するズームレンズとなる。
図5〜7はそれぞれ広角端、中間焦点距離、望遠端における収差を表してある。また同様に、図5A、図6A、図7Aは非球面収差であり、実線は波長670nm、一点鎖線は波長600nm、2点鎖線は波長555nm、破線は波長510nm、飛び破線は波長470nmにおける収差を示す。図5B、図6B、図7Bにおける実線S、破線Tはそれぞれサジタル面、メリディオナル面における非点収差である。また、図5C、図6C、図7Cは歪曲収差を示す。
【0056】
また、図8に本実施の形態によるズームレンズ100における設計例1の場合のMTF性能を示す。横軸は空間周波数(cycles/mm)、縦軸は変調度である。図8Aは広角端、図8Bは中間焦点距離、図8Cは望遠端におけるMTFである。
また図9は、これの比較例として第1レンズを固体レンズ、また第2レンズを屈折面形状の変形による可変レンズとし、第3面を変形膜とした場合のMTFである。図9Aは広角端、図9Bは中間焦点距離、図9Cは望遠端におけMTFを示す。これら図において線a、bは回折限界を示し、線c、dは像高30%、線e、fは像高50%、線g、hは像高70%、線i、jは像高100%におけるタンジェンシャル(接線)、ラジアル(半径)方向の変調度を表す。
これらのことから、本実施形態のように第1面に屈折面形状の変形による可変レンズの変形膜を配置し、バリエータとすることによって変倍率を行っても、光学性能を損なうことなく動作できることがわかる。
【0057】
ところで、図10は本実施の形態によるズームレンズ100の倍率色収差を示すものである。図10Aは広角端、図10Bは望遠端における倍率色収差を表す。横軸は規格化した画角を、縦軸には収差として波長530nmの光の像点位置に対するズレ量(mm)を示してある。また、破線は波長450nm、実線は波長600nmの光線の収差を表す。
このように本実施の形態においては、図10Bに示す望遠端の倍率色収差特性から明らかなように、周辺光線の倍率色収差もリニアに近い、すなわち画角に対して比例的に変化する関係となっている。このため、信号補正技術により容易に補正を行うことができ、鮮明な像を得ることができる。
【0058】
2.第2の実施の形態
図11は第2の実施の形態によるズームレンズ200を表す構成図である。なお、第1の実施の形態を表す図1と対応する箇所については同符号を付し、重複を避ける。
本実施の形態におけるズームレンズ200は、変形面を例えば物体側第1面に備え、負の屈折力を有する第1の可変レンズを有するレンズ群34と、第1の可変レンズを有するレンズ群34によって取込まれた光を反射等して光の進行方向を変える光路変更素子63を含む。また、光路変更素子63によって反射された光の光路上に配置され、正の屈折率を有する中間レンズ群40と、第2の可変レンズを有するレンズ群50を含む。またこれらにより集光された光はセンサカバー61を透過した後、撮像素子等の受光面33に結像する。
【0059】
本実施の形態においても同様に、第1の可変レンズを有するレンズ群34は、例えば物体側第1面に変形膜による変形面を有し、例えば像側が凹形状とされる第1の可変レンズ35と、物体側が凸、像側が凹のメニスカス形状とされた第1の固体レンズ36と両凹形状とされた第2の固体レンズ37とにより構成される。
第1の可変レンズ35は屈折面形状の変形による可変レンズにより構成され、レンズ内部の媒質の圧力を変化させることにより、第1面に配置された変形膜を変形させて、曲率の変化を行う。
【0060】
中間レンズ群40は、物体側から第3の固体レンズ41と、第1の固体レンズ群40aと、絞り48と、第2の固体レンズ群40bと、第3の固体レンズ群40cによって構成される。例えば第3の固体レンズ41は両凸形状のレンズであり、第1の固体レンズ群40aは両凸形状の第4の固体レンズ42と両凹形状の第5の固体レンズ43とにより構成される。また、第2の固体レンズ群40bは両凹形状の第6の固体レンズ44と両凸形状の第7の固体レンズ45とにより構成される。
また、第1の固体レンズ群40aと第2の固体レンズ群40bは本実施形態においても絞り48を介して前後に対称的に配置され、像面湾曲やディストーション等を打ち消すようにしてある。
【0061】
また第3の固体レンズ群40cは、両凹形状の第8の固体レンズ46と両凸形状の第9の固体レンズ47により構成される。第9の固体レンズの像側の面は非球面とされ、軸上収差や軸外の収差等の各収差を補正する。
【0062】
第2の可変レンズを有するレンズ群50は、例えば物体側に変形膜を有し像側が凸とされた第2の可変レンズ51と、物体側が凹形状とされた第10の固体レンズ52とによって構成される。第2の可変レンズ51は屈折面形状の変形による可変レンズによって構成でき、物体側の面の形状変化によって像面位置を変化させ調整する。
【0063】
図11では望遠端における状態を表してあり、第1の可変レンズ35の第1面は凸形状とされる。またこの時第2の可変レンズ51の変形面である物体側の面は、ちょうどほぼ平面形状において像を受光面に結ぶようにするのが好ましい。
そして第1の可変レンズ35は、内部に充填された液体やゲル等の量を減少させたり、圧力を減少させてマイナスの屈折力方向に、第2の可変レンズ51は内部の液体の量を増やしたりして圧力を高めることによって変形面を凸形状とし、プラスの屈折力方向へ変化させることによって望遠端から広角端へと推移する。変形面の変形態様は第1の実施の形態と同様これに限定されるものではなく、レンズ内の媒質の移動等であってもよい。
【0064】
このように本実施の形態においても、屈折面形状の変形による可変レンズである第1の可変レンズの変形面の曲率変化によって変倍率を行う。
また、倍率の変化によって生じる像面位置のズレは、もう一方の屈折面形状の変形による可変レンズである第2の可変レンズ51によって調整される。本実施の形態では、物体側の面を変形面とし、望遠端において面形状が平面に近い状態となるようにする。このことにより望遠端から広角端へと倍率を変化させても、変形面を凸形状としてプラスの屈折力方向へと変形させることにより像面位置の調整を行うことができる。すなわち、第2の可変レンズ51の変形面も常に凸形状として用いることができる。
【0065】
このように、第1の可変レンズ35及び第2の可変レンズ51はその変形面を常に凸形状として用いるため、レンズ内に充填された媒質が負圧となるのを抑制することができる。このため、媒質内に気泡が発生してしまうことを防ぐことができ、常時高い品質状態で使用者の利用に応えることが可能となる。
【0066】
また本実施の形態においては、第1の可変レンズを有するレンズ群34の光軸方向が、中間群40及び第2の可変レンズを有するレンズ群50の光軸方向と異なるように配置される。すなわち第1の可変レンズを有するレンズ群30からとりこまれた光は、ミラー等の光路変更素子63によって反射されることにより、中間レンズ群40へと導かれる。
【0067】
本実施の形態によるズームレンズ200は、バリエータやコンペンセータとして液体レンズ等による屈折面形状の変形による可変レンズを用いている。したがってズーム時にレンズを移動させるためのスペースを必要としない。このため、この空いたスペースに光路変更素子63を配置することが可能となり、光路を折り返すことができる。これにより、ズームレンズ200は第1の可変レンズを有するレンズ群34の光軸方向の厚さを薄くすることができ、電子機器にも搭載スペースを確保しやすい。
【0068】
また本実施の形態においても、第1の変形面を変形させることにより倍率の変化が可能となる構成であればこれに限らず、その後段に配置されるレンズを第1の可変レンズとすることができる。また第1の可変レンズよりも物体側にカバーガラスやその他のレンズ等を配置してもよい。また、像側の面を変形面とする場合には、望遠端においてほぼ平面形状とし、変形膜を像側に凸形状へと変化させることによって広角端へと移行することになる。
また、第2の可変レンズの像側の面に第2の変形膜を配置する光学系を構成する場合も、第2の変形膜は像側に凸の形状にて合焦及び像面位置の調整を行う。
【0069】
3.第3の実施の形態
次に、本発明のズームレンズを適用した撮像装置の一例を説明する。図12は、本実施形態の撮像装置の概略構成図である。
【0070】
撮像装置300は主に、屈折面形状の変形による可変レンズによるズームレンズ70と、ズームレンズ70を介して入射された光を電気信号に変換して映像信号を取得する固体撮像素子等の撮像部71とを有するカメラモジュール77を備える。そしてこのカメラモジュール77により取得した映像信号に所定の処理を施す映像信号処理部72を含む。また、映像信号記録/再生部73(CPU:Central Processing Unit)及び内部メモリ74を含み、内部メモリ74は映像信号処理部72にて処理された信号を映像データとして記憶する。そして映像信号記録/再生部73は、映像信号処理部72にて処理された信号や内部メモリ74に記憶されたデータの記録・再生を行う。更に、映像信号記録/再生部74により再生される映像等を表示させる表示装置74と、図示しないズームボタン等のオン、オフに従ってズームレンズ70を作動させる制御部76も含む。
【0071】
本実施形態においてズームレンズ70は第1の実施の形態(図1)や第2の実施の形態(図11)にて示したものを用いることができ、入射した光Liを固体撮像素子等の撮像部71の受光面に結像させる。
【0072】
すなわち、本実施形態における撮像装置300のズームレンズ70は、屈折面形状の変形による可変レンズである第1の可変レンズを備え、その例えば物体側の面が変形面とされる。そしてその変形面の曲率を変化させることによって、倍率を変化させる。
そしてその後段にはもう一方の屈折面形状の変形による可変レンズであるの第2の可変レンズが配置され、この変形面の曲率を変化させることによって、倍率の変化にともなう像面位置のズレを調整する。
【0073】
また、第1の可変レンズの変形面は望遠端において最大の曲率を有し、もう一方の第2の可変レンズの変形面はほぼ平面に近い状態において像を結像する。そして第1の可変レンズは内部の液体やゲル等の量を減らしたり、圧力を小さくすることによってマイナスの屈折力方向へと変形し、もう一方の可変レンズは内部の液体量を増やしたり、圧力を高めることによってその変形面をプラスの屈折力方向へと変形させて望遠端から広角端へと移行する。また、可変レンズ内に充填される媒質の圧力を変化させるポンプ機構等の制御機構は、カメラモジュール77内に内臓されていてもよいし、外付けしてあってもよい。
【0074】
ズームレンズ70によって集光される光は撮像部71に結像される。この撮像部71は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)デバイス等の固体撮像素子で構成することができる。これらのデバイスは、照射された光エネルギーを電荷に変換する複数の光電変換部を有し、画素毎の受光量を映像信号に変換して外部に出力する。
【0075】
このようにしてカメラモジュール77により取得された映像信号は、映像信号処理部72においてデータ処理が行われるが、レベル補正やシェーディング補正等の画像処理は撮像部71にて行われるようにしてあってもよい。処理後の映像信号は映像信号記録/再生部73によって内部メモリ74に記録される。また、記録された映像を再生する時には内部メモリ74より記録データを読み出し、表示装置75に表示させる。
【0076】
制御部76は、ズームボタン等によってズーム機能のオン、オフの信号を受けると、図示しないポンプ機構等の制御を行い、ズームレンズ70を構成する可変レンズに充填された光透過性液体やゲル等の出し入れを行う。すなわち、望遠端へと移行する時には物体側に配置される第1の可変レンズ内に充填される光透過性液体等の圧力を高め、正の屈折力を強める方向に物体側の変形膜を変形させる。また、その後段に配置されるもう一方の第2の可変レンズに対しては、充填される光透過性液体の圧力を小さくする。これにより、負の屈折力を強める方向に物体側のレンズ面である変形膜を変形させ、像面位置を調整する。
また広角端へと移行する時には、第1の可変レンズ内の光透過性液体やゲル等の圧力を減らし、負の屈折力を強める方向へ物体側の変形膜を変形させる。そして、その後段に配置される第2の可変レンズ内の光透過性液体やゲル等の圧力を高め、正の屈折力を強める方向に物体側のレンズ面を変形させる。
この場合においてももちろん、光透過性液体やゲル等のレンズ媒質の量の増減のみではなく、レンズ内の移動等によって変形する構成等、その他の変形機構を有する可変レンズでもよい。
【0077】
このように本実施の形態による撮像装置300は、そのズームレンズ70の第1の可変レンズの第1面の変形により倍率を変化させる。このため、可変レンズの変形面を常に凸形状として用いることができる。これにより、可変レンズ内の媒質が負圧となるのを防ぐことができるので、媒質内に気泡が発生するのを抑制することができる。よって高品質な画像を取得し続けることが可能となる。
また、液体レンズやゲルレンズ等による可変レンズによって倍率の変化及び像面位置の調整を行うので、従来のようにレンズを移動させるためのスペースを必要とせず、装置を小型化することができる。
【0078】
4.第4の実施の形態
次に、本発明によるズームレンズを電子機器に搭載する例として、携帯通信端末装置に用いる場合について説明する。
図13は本実施の形態による携帯情報端末装置400の構成を表すブロック図である。
携帯情報端末装置400は、制御部(CPU)81を備え、信号バス80を介して携帯通信端末装置400内の各部に指令を送ることができる構成とされる。
すなわち、制御部81はROM(Read Only Memory)82に保存されている制御プログラムをRAM(Random Access Memory)83に展開し、信号バス80を介して各部の制御を行う。
【0079】
また、基地局等とのと無線通信を行うアンテナ84は通信制御部85に接続され、無線信号の送信処理及び受信処理が行われる。受信された信号が音声信号である場合には、音声処理部90に供給され、アナログ音声信号としてスピーカ91から出力される。逆にマイクロフォン92が外部より拾う音声信号は、音声処理部90においてデジタル音声データに変換され、信号バス80を介して通信制御部85に供給される。
【0080】
また、液晶表示パネルなどで構成されるLCD87を有し、表示制御部86の制御によって各種文字や画像などの表示が行われる。操作部95は、数字などのダイヤルキーや各種機能キー、タッチパネルなどにより構成され、それぞれのキーによる入力情報を制御部81へと伝達する。ROM82には、制御部81で用いるプログラムや、各種保存データが格納される。
【0081】
カメラモジュール89は主にズームレンズとズームレンズにより結像される像を電気信号に変換して画像データを取得する撮像部とによって構成される。このズームレンズには第1及び第2の実施の形態(図1、11)にて示したズームレンズを用いることができる。すなわち、ズームレンズは物体側第1レンズ及びその後段に配置されるレンズ屈折面形状の変形による可変レンズによって構成され、例えばその物体側の面が変形面とされる。そして図示しないポンプ機構等の可変レンズ機構部により、可変レンズ内に充填された光透過性媒質の圧力を変化させ、変形面の曲率を変化させる。なお、第2の実施の形態(図11)のように光路変更素子をズームレンズ内の光路中に配置して折り返す構成としてあると、モジュール高さを低くすることができ搭載スペースを確保しやすいので好ましい。
【0082】
カメラ制御部88はカメラモジュール89の動作を制御するとともに、取得された映像信号を圧縮処理等して信号バス80へと送る。また、ズームレンズの動作を制御するポンプ機構等の可変レンズ機構部の制御やカメラモジュール89にて取得された映像信号の処理を行う映像信号処理部等は、カメラモジュール89内に内蔵されていてもよいし、カメラ制御部88にて行うようにしてもよい。
【0083】
信号バス80へと送られた映像データはRAM83に一時的に保存されるが、必要に応じてメモリーカードインターフェース93へと出力されメモリーカード94に保存される。または、表示制御部86を介してLCD(液晶ディスプレイ)87に表示される。
【0084】
これらの映像データや、アンテナ84により受信された通信データ等は、例えば赤外線インターフェース96によって赤外線通信部97を介して外部に出力され、同じような赤外線通信部を備えた機器へ伝達されるようにしてもよい。外部の機器としては例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistance)等の外部の情報機器等が挙げられる。
【0085】
このように、本実施の形態における携帯通信端末装置400は、本発明によるズームレンズを搭載したカメラモジュールを搭載している。
ズームレンズには屈折面形状の変形による可変レンズである第1の可変レンズが備えられ、例えばその物体側の面が変形膜、すなわち変形面とされる。そしてこのレンズ内の光透過性媒質の圧力を変化させることにより変形面の曲率を変化させ、倍率の変動を行う。またこの後段には第2の可変レンズが配置され、第2の可変レンズの変形面の形状を変化させることによって、倍率の変動にともなう像面位置のズレを補正する。
【0086】
広角端においては、第1の可変レンズの変形面はほぼ平面形状とされ、もう一方の第2の可変レンズはその変形面が凸形状の状態において像を撮像部の受光面に結像させる。そして第1レンズの変形面は正の屈折力の方向に、つまりほぼ平面状の面の曲率が大きくなる方向に形状を変化させることによって広角端から望遠端へと倍率を変化させる。
またこの際には、もう一方第2の可変レンズの物体側の面の変形面を負の屈折力を有する方向、すなわちレンズ内の媒質の圧力を小さくすることによって像面位置を調整する。
この場合も、可変レンズの変形面の変形態様はレンズ媒質の量の増減のみならずレンズ内の移動等、他の構成によるものでもよい。
【0087】
このように、本実施の形態においても屈折面形状の変形による可変レンズを常に凸形状として用いることが可能となる。このため、レンズ内部に充填された液体等の媒質が負圧になるのを抑制できる。したがって媒質内に気泡が発生しないので光学性能が劣化せず、本実施形態による携帯通信端末装置400は品質の高い画像を常に提供し続けることができる。
【0088】
また、液体レンズやゲルレンズ等の可変レンズをバリエータやコンペンセータとして用いているので、ズーム時にはレンズを移動させる必要がなく、そのためのスペースを省くことができる。従って密なレンズ構成とすることができ、小型化をはかることができる。
【0089】
以上、本発明によるズームレンズ、カメラモジュール、電子機器、及びズームレンズの設計方法について説明したが、本発明は上記実施の形態にとらわれることなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、なお考えられる種々の形態を含むものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0090】
1〜23・・・面、35・・・第1の可変レンズ、36、37,41〜47,52・・・レンズ、51・・・第2の可変レンズ、48・・・絞り、34,40,40a,40b,40c,50,120,130・・・レンズ群、61・・・センサカバー、62・・・撮像部、63・・・光路変更素子、70,100,200・・・ズームレンズ、71・・・撮像部、72・・・映像信号処理部、73・・・映像信号記録/再生部、74・・・表示装置、75・・・内部メモリ、76・・・制御部、77・・・カメラモジュール、80・・・信号バス、81・・・制御部、82・・・ROM、83・・・RAM、84・・・アンテナ、85・・・通信制御部、86・・・表示制御部、87・・・LCD、88・・・カメラ制御部、89・・・カメラモジュール、90・・・音声処理部、91・・・スピーカ、92・・・マイクロフォン、93・・・メモリーカードインターフェース、94・・・メモリーカード、95・・・操作部、96・・・赤外線インターフェース、97・・・赤外線通信部、110・・・ワイドコンバータ、121,122,131,132・・・レンズ、123,133・・・変形膜、141・・・シリンジ、142・・・ピストン、143・・・液体、144・・・気泡、150・・・液体レンズ、151・・・液体、152・・・弾性膜、300・・・撮像装置、400・・・携帯通信端末装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、
前記第1の可変レンズを有するレンズの後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、
を含み、
前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜より成る前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質と、を備え、前記光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、
使用範囲において、前記第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされる
ズームレンズ。
【請求項2】
前記第1の変形面を正の屈折力を強める方向に変形させ、前記第2の変形面を負の屈折力を強める方向に変形させることにより、広角端から望遠端方向へズームする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第1及び第2の変形面は物体側に配置され、
広角端において前記第1の変形面はほぼ平面形状とされ、前記第2の変形面は物体側に凸形状とされる請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第1の変形面を有するレンズへの光線高さが最小となるズーム位置において、前記第1の変形面の曲率が最大となる請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第1の変形面が前記第1の可変レンズを有するレンズ群の最も物体側に配置される請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第1の可変レンズを透過した光を反射し、前記第2の可変レンズへと導く光路変更素子を有する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させる第1の可変レンズを配置し、前記第1の可変レンズの後段に、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させる第2の可変レンズを配置し、下記条件式
φAt>φAw
φBt<φBw
(式中、φAtは望遠端における第1の変形面の曲率、φAwは広角端における第1の変形面の曲率を表す。また、φBtは望遠端における第2の変形面の曲率、φBwは広角端における第2の変形面の曲率を表す)を満たすように前記第1及び第2の変形面を変形させる
ズームレンズの設計方法。
【請求項8】
前記第1の変形面を有するレンズへの光線高さが最小となるズーム位置において、前記第1の変形面の曲率を最大とする請求項7に記載のズームレンズの設計方法。
【請求項9】
前記第1の変形面は、広角端から望遠端にズームする際にほぼ平面形状から凸形状へと変形する請求項7に記載のズームレンズの設計方法。
【請求項10】
前記第2の変形面は、広角端から望遠端にズームする際に凸形状からほぼ平面形状へと変化する請求項7に記載のズームレンズの設計方法。
【請求項11】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、前記第1の可変レンズを有するレンズの後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、を含み、前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜より成る前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質と、を備え、前記光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、使用範囲において、前記第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされるズームレンズと、
前記ズームレンズによって集光される光を受光する撮像部と、
を備えるカメラモジュール。
【請求項12】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、前記第1の可変レンズの後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、を含み、前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜より成る前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質と、を備え、前記光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、使用範囲において、前記第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされるズームレンズと、前記ズームレンズによって集光される光を受光する撮像部と、を含むカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの前記撮像部によって取得されたデータの処理を行う画像処理部と、
前記第1及び第2の可変レンズの変形面の変形を行う可変レンズ機構部と、
前記画像処理部及び前記可変レンズ機構部の制御を行う制御部と、
を備える電子機器。
【請求項1】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、
前記第1の可変レンズを有するレンズの後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、
を含み、
前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜より成る前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質と、を備え、前記光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、
使用範囲において、前記第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされる
ズームレンズ。
【請求項2】
前記第1の変形面を正の屈折力を強める方向に変形させ、前記第2の変形面を負の屈折力を強める方向に変形させることにより、広角端から望遠端方向へズームする請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記第1及び第2の変形面は物体側に配置され、
広角端において前記第1の変形面はほぼ平面形状とされ、前記第2の変形面は物体側に凸形状とされる請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記第1の変形面を有するレンズへの光線高さが最小となるズーム位置において、前記第1の変形面の曲率が最大となる請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記第1の変形面が前記第1の可変レンズを有するレンズ群の最も物体側に配置される請求項3に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記第1の可変レンズを透過した光を反射し、前記第2の可変レンズへと導く光路変更素子を有する請求項1に記載のズームレンズ。
【請求項7】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させる第1の可変レンズを配置し、前記第1の可変レンズの後段に、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させる第2の可変レンズを配置し、下記条件式
φAt>φAw
φBt<φBw
(式中、φAtは望遠端における第1の変形面の曲率、φAwは広角端における第1の変形面の曲率を表す。また、φBtは望遠端における第2の変形面の曲率、φBwは広角端における第2の変形面の曲率を表す)を満たすように前記第1及び第2の変形面を変形させる
ズームレンズの設計方法。
【請求項8】
前記第1の変形面を有するレンズへの光線高さが最小となるズーム位置において、前記第1の変形面の曲率を最大とする請求項7に記載のズームレンズの設計方法。
【請求項9】
前記第1の変形面は、広角端から望遠端にズームする際にほぼ平面形状から凸形状へと変形する請求項7に記載のズームレンズの設計方法。
【請求項10】
前記第2の変形面は、広角端から望遠端にズームする際に凸形状からほぼ平面形状へと変化する請求項7に記載のズームレンズの設計方法。
【請求項11】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、前記第1の可変レンズを有するレンズの後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、を含み、前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜より成る前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質と、を備え、前記光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、使用範囲において、前記第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされるズームレンズと、
前記ズームレンズによって集光される光を受光する撮像部と、
を備えるカメラモジュール。
【請求項12】
第1の変形面を有し、前記第1の変形面の変形により焦点距離を変化させて変倍を行う第1の可変レンズと、前記第1の可変レンズの後段に配置され、第2の変形面を有し、前記第2の変形面の変形により焦点距離を変化させ、前記変倍にともなう像面位置の移動を補正する第2の可変レンズと、を含み、前記第1または第2の可変レンズの少なくとも一方は、光透過性の弾性膜より成る前記変形面と、少なくとも前記弾性膜を含んで形成される閉空間内に充填される光透過性の媒質と、を備え、前記光透過性の媒質が前記変形面に加える圧力を変化させることで前記変形面を変形させる可変レンズとされ、使用範囲において、前記第1及び第2の変形面が、平面形状から凸形状の範囲で変形する構成とされるズームレンズと、前記ズームレンズによって集光される光を受光する撮像部と、を含むカメラモジュールと、
前記カメラモジュールの前記撮像部によって取得されたデータの処理を行う画像処理部と、
前記第1及び第2の可変レンズの変形面の変形を行う可変レンズ機構部と、
前記画像処理部及び前記可変レンズ機構部の制御を行う制御部と、
を備える電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−13582(P2011−13582A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159347(P2009−159347)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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