説明

セキュリティシステム及びエリア監視方法

【課題】人を乗せた車両が立入り制限区域を有するエリアを通行する状況で車内の人がこの区域への立入りを許可されている人物かどうかを確認する。
【解決手段】車両7に搭載されて車両7に乗る人の個人識別媒体から人物ID情報を取得し人物ID情報と車載器ID情報とを含む無線信号を送出する車載器10と、立入り制限された区域2を有するエリア1に設けられて車載器10からの無線信号を受信して警報表示を行う監視装置26とを備え、監視装置26が、エリア1に入ることを許可された車両7の車載器10の車載器ID情報と、区域2への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベースと、この無線信号に含まれる車載器ID情報とデータベース内の車載器ID情報とを照合した結果、又は無線信号に含まれる人物ID情報とデータベース内の人物ID情報とを照合した結果が不成立である場合に警報表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば立入りの制限が行われている区域を有するエリアに入る車両或いは船舶に対し、車両又は船舶に乗っている人がこの区域に立入りを許可された人物であるかどうかを確認する際に用いられるセキュリティシステム及びエリア監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セキュリティレベルの高い施設においては、人ごとに立入れるエリアが異なる場合がある。立入りを許可されたエリア名が明記されたIDカードを警備員が目視することにより、立入り許可の確認が行われている。
【0003】
このような施設を有する敷地にマイクロバスなどで多くの従業員が通勤する場合、マイクロバスに不審者が紛れ込んだとしても、警備員がIDカードを目視して識別するしか、不審者の乗車を知る手段がない。
【0004】
車両が施設に入る場合、立入る車両が許可されている必要があるとともに、車両に乗車している人も全て許可された人でなければならない。
【0005】
従来、複数の人を乗せたマイクロバスごとセキュリティゲートを通過するような場合、不審者の侵入を許してしまう恐れがあった。
【0006】
また、セキュリティレベルの高い施設の付近に、海或いは河川があり、この海或いは河川を船舶の航行が可能である場合、通行許可を与えられている船舶のみが航行でき、通行許可を与えられていない船舶は航行できないという状況もありえる。
【0007】
この場合においても、船舶が通行を許可された船舶であること、及び船舶を操縦している人が許可されている人であることが必要である。
【0008】
これらの状況から、車両又は船舶が、通行を許可された車両又は航行を許可された船舶であること、及び乗車或いは乗船をしている人が許可されている人物であるかを判断することが可能な警備システムを実現する必要がある。
【0009】
また、RFID(Radio Frequency IDentification)カードなどの電波を発射するIDカード及びセンサを用いてゲートチェックを行うこともある。この場合、電波の到達範囲が狭いため、IDカードはセンサの周辺においてのみ検知される。検知が報知された場合は、センサの周辺にRFIDカードがあることが分かるのだが、複数のRFIDカードが検出された場合、どのRFIDカードが目的のRFIDカードであるかをシステムが識別することは難しい。
【0010】
複数の人物がいる場所では、IDカードを所持している人物と、IDカードを所持していない不審者とが混在するような状況下で、IDカードを所持していない不審者を管理者が容易に特定することは難しい。
【0011】
従来、到来する電波の波源位置を観測者が認識しやすいように可視化する装置が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の波源可視化装置は、人間の内ポケットに収納された携帯電話を電波の波源と推定し、推定した波源と、撮影部で撮影された人間の画像とをディスプレー部に表示する。
【特許文献1】特開2005−24439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、車両に複数の人が乗車している場合、これらの人が制限区域への立入りを許可されている人物かどうかを容易に確認することができない。例えばセキュリティゲートを、入構を許可された関係者など従業員以外の人物が通過することがある。マイクロバスがエリア内のある場所において停車し、人が乗降を行った後、マイクロバスがエリア内の他の場所へ移動することもある。従って、エリア内で人の立入りが厳重に管理されている区域へ、車両が複数の人を乗せたまま近づく場合があり、この場合には、高いセキュリティ性を維持することができない。
【0013】
また、複数の人を乗せた船舶が、セキュリティレベルの高い施設の付近にある海や河川、或いは進入を制限されている海域や水域を航行する場合、監視者は、乗船している人が水上通航を許可されている人物かどうかを容易に判断することができない。
【0014】
上述した従来技術では、車両に乗車している人あるいは船舶に乗船している人のID情報を一括して確認することができない。
【0015】
そこで本発明は、上記の課題に鑑み、人を乗せた車両が立入り制限のある区域を有するエリアを通行しようとする状況において、車両に乗っている人がこの区域への立入りを許可されている人物かどうかを確認することができるセキュリティシステム及びエリア監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
このような課題を解決するため、本発明の一態様によれば、車両に搭載されて、この車両に乗る人が携帯する個人識別媒体から、前記人の人物ID情報を取得し、この人物ID情報と車載器自身の車載器ID情報とを含む無線信号を送出する車載器と、立入りの制限が行われている区域を有するエリアに設けられて、このエリアに入る車両に搭載された車載器からの無線信号を受信して警報表示を行う監視装置とを備え、この監視装置が、前記エリアに入ることを許可された車両に搭載された車載器の車載器ID情報と、前記区域への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベースと、前記車載器から送出された無線信号を受信する受信部と、この受信部にて受信された無線信号に含まれる車載器ID情報と前記データベースに記憶された車載器ID情報とを照合した結果と、この無線信号に含まれる人物ID情報と前記データベースに記憶された人物ID情報とを照合した結果とのうちのいずれか一方が不成立である場合に警報表示のためのデータを出力する検索処理部と、を備えたことを特徴とするセキュリティシステムが提供される。
【0017】
また、本発明の別の一態様によれば、車両に搭載された車載器が、この車両に乗る人が携帯する個人識別媒体に記憶された前記人の人物ID情報と車載器自身の車載器ID情報とを含む無線信号を送出するステップと、立入りの制限が行われている区域を有するエリアに設けられた監視装置が、このエリアに入る車両に搭載された車載器から送出された無線信号を受信するステップと、この監視装置が、前記エリアに入ることを許可された車両に搭載された車載器の車載器ID情報と、前記区域への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベースを検索し、受信した無線信号に含まれる車載器ID情報とこのデータベースに記憶された車載器ID情報とを照合した第1の結果を出力するステップと、前記監視装置が、前記データベースを検索し、受信した無線信号に含まれる人物ID情報と前記データベースに記憶された人物ID情報とを照合した第2の結果を出力するステップと、前記監視装置が、これらの第1の結果と第2の結果とのうちのいずれか一方が不成立である場合に警報表示を行うステップと、を備えたことを特徴とするエリア監視方法が提供される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、車両に乗っている人が、立入り制限のある区域への立入りを許可された人物であるかどうかが容易に判断されるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係るセキュリティシステム及びエリア監視方法について、図1乃至図7を参照しながら説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付すとともに、重複した説明は省略する。
【0020】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムが適用されるエリアにおける各種設備の配置例を示す図である。エリア1は敷地であり、人の立入りについてのセキュリティレベルが異なる区域2、3、4を有する。区域2は、これらの区域2〜4のうち最も高いセキュリティレベルが設定された区域であり、人の立入りを厳重に管理されている。5は外門としてのセキュリティゲートであり、6は建物である。セキュリティゲート5を通ってマイクロバス7などの車両がエリア1の中に入る。このマイクロバス7は、区域3、4及び建物6において停車し、人の乗降を行った後、区域2へ移動する。
【0021】
区域2の内側には、セキュリティゲート8及び守衛室9が設置されている。マイクロバス7には、車載器10が搭載されている。この車載器10は、マイクロバス7に乗る人が持つIDカードから、この人の人物ID情報を取得し、この人物ID情報と車載器自身の車載器ID情報とを含む無線信号を送出するものである。セキュリティゲート8には、この車載器10の送受信アンテナ部11に対し、無線信号を常時送信する質問信号送出部12が設置されている。この質問信号送出部12には無線送信機が用いられる。
【0022】
図2は車載器10のブロック図である。車載器10は、マイクロバス7へ乗車する人がこの車載器10にかざしたIDカードに対し、送信アンテナ13を介して電波を送出する送信部14と、IDカードから送信されるIDカードの人物ID情報を含む電波を受信アンテナ15を介して受信する受信部16と、受信部16にて受信された人物ID情報を人物ID記憶部17に書き込む処理と、これらの送信部14及び受信部16の送受信の制御と、送受信アンテナ部11の制御とを行う制御部18とを備えている。
【0023】
図3は乗車する人が携帯するIDカードの一例を示す図である。IDカード19は個人識別媒体であり例えばRFIDカードが用いられている。IDカード19は、受信アンテナ20を介して車載器10からの電波を受信する受信部21と、人物ID情報が書き込まれたID記録部22と、このID記録部22から人物ID情報を読み出す処理や送受信の制御を行う制御部23と、制御部23により読み出された人物ID情報を含む無線信号を送信アンテナ24から送信する送信部25とを備えている。ID記録部22には、各従業員の従業員番号や、入構を許可された関係者の識別番号などの人物ID情報が書き込まれている。
【0024】
これにより、IDカード19は、車載器10からの電波により誘起された起電力によって人物ID情報を読み出し、この読み出した人物ID情報を含む無線信号を車載器10へ送信する。
【0025】
また、図1の守衛室9には、監視装置26が設けられている。図4は監視装置26のブロック図である。この監視装置26は、受信アンテナ27を介して車載器10から送出された無線信号を受信する受信部28と、この受信部28により受信された無線信号からID情報を復調するID復調部29と、エリア1に入ることを許可されたマイクロバス7に搭載された車載器10の車載器ID情報と、区域2への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベース(DB)30と、ID復調部29により復調されたID情報に基づいてこのデータベース30を検索するデータベース検索部(DB検索部)31と、DB検索部31により検索された検索結果を表示する表示部32とを備えている。
【0026】
また、DB検索部31と表示部32とによって、受信部28にて受信された無線信号に含まれる車載器ID情報とデータベース30に記憶された車載器ID情報とを照合した結果と、この無線信号に含まれる人物ID情報とデータベース30に記憶された人物ID情報とを照合した結果とのうちのいずれか一方が不成立である場合に警報表示のためのデータを出力する検索処理部として機能が実現される。
【0027】
図5は本実施形態に係るエリア監視方法を説明するためのフローチャートである。本実施形態に係るエリア監視方法は、乗車する人が、IDカードを車載器10にかざすことによってこのIDカードの人物ID情報を車載器10が登録処理する(ステップA1)。マイクロバス7に複数の人が乗る場合には、車載器10は、乗車しようとする全ての人の人物ID情報を収集する。
【0028】
車載器10は、IDカードに記憶されたこの人の人物ID情報と車載器ID情報とを含む無線信号を送出する(ステップA2)。監視装置26は、エリア1に入るマイクロバス7に搭載された車載器10から送出された無線信号を受信する(ステップA3)。監視装置26は、車載器10の車載器ID情報と、区域2への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベース30を検索する(ステップA4)。
【0029】
監視装置26は、受信した無線信号に含まれる車載器ID情報とこのデータベース30に記憶された車載器ID情報とを照合した結果(第1の結果)を出力する(ステップA5)。さらに、監視装置26は、データベース30を検索し、受信した無線信号に含まれる人物ID情報とデータベース30に記憶された人物ID情報とを照合した結果(第2の結果)を出力し(ステップA6)、これらの第1の結果と第2の結果とのそれぞれが成立したかどうかを判定する(ステップA7)。このステップA7において、監視装置26が、2つの照合結果が成立したと判定した場合には、YESルートを通り、マイクロバス7の入場を許可する旨の表示を行う(ステップA8)。
【0030】
ステップA7において、監視装置26が、2つの照合結果のうちの片方が不成立である、又は2つの照合結果のいずれもが不成立であると判定した場合には、NOルートを通り、警報表示を行う(ステップA9)。
【0031】
このような構成の本実施形態に係るセキュリティシステムの動作を説明する。マイクロバス7に乗り込む従業員はIDカードを所持しており、また、エリア1への立入りを許可された関係者などにも一時的にエリア1への入構を許可するためのIDカードが発行されている。
【0032】
セキュリティゲート5の外側において、エリア1へ入構しようとする従業員や関係者がマイクロバス7に乗車する際に、これらの従業員や関係者は、マイクロバス7のドア付近に設けられた車載器10に自らのIDカードをかざす。人がこのリーダにIDカードをかざすことによって、車載器10は、正規のIDカードあるいは正規に発行されたIDカードであることを識別し、IDカードに記録されたID情報をID記憶部17に登録する。
【0033】
この登録が正常に行われることにより、マイクロバス7に乗車したまま、エリア1の奥へ進むことが可能にされる。登録が正常に行われない人については、ID情報が正しくない旨の警報を車載器10が行う。これによって、不審者はマイクロバス7の運転手などによりチェックされ、乗車が拒否される。従って、不審者はエリア1への入場ができない。車載器10による登録処理が完了すると、マイクロバス7に乗車している全ての人の人物ID情報が車載器10に蓄積される。
【0034】
乗車している全ての人の人物ID情報が車載器10に登録された後、人を乗せたマイクロバス7がセキュリティゲート5を通過してエリア1に入場する。このマイクロバス7は、最初の外門であるセキュリティゲート5を通過した後、種々の建物や、区域3、4において停車し、人の乗降を行った後に、最終目的地である区域2まで移動する。マイクロバス7は、セキュリティレベルの高い施設などがある区域2の入り口に設けられたセキュリティゲート8の前で停止する。また、質問信号送受信器12は、電波が入り口から所定距離の範囲まで届くように質問信号を送出している。
【0035】
車載器10は、質問信号を受信すると、マイクロバス7を識別する車両ID情報と、乗車している全ての人の人物ID情報とを含む無線信号を監視装置26へ送出する。
【0036】
監視装置26は、車載器10からの電波を受信し、ID復調部29により車載器10のID情報と乗車している人のID情報を取得する。DB検索部31は、取得したID情報とデータベース30にあらかじめ登録されている各ID情報とを比較し、マイクロバス7に乗車している全ての人が許可された人物かどうかの照合を行う。許可されていない人物であるとDB検索部31が判定した場合には、表示部32は、警報を発する。これによって、許可されていない人物がマイクロバス7に乗車していることが、警備員に通知される。
【0037】
このように、本実施形態に係るセキュリティシステムによれば、立入り制限された区域2に許可されない人が入らないようにすることができる。マイクロバス7で入れるような広いエリア1に、それぞれが外門を通過するIDカードを持つ人がマイクロバス7で入った後、区域2においてマイクロバス7に対して許可を与えるとともに、このマイクロバス7に乗車する各人に対してもIDのチェックを行うことによって、セキュリティ性を向上させることができるようになる。
【0038】
区域2へ立入り制限される期間や時間帯は、区域2での事業の進捗に応じて変動することもある。区域2内にある施設へ立入る人員の数や、人員の変更もある。このような場合、従来技術では、広いエリア1の外側に設けられたセキュリティゲート5だけでのチェックだけでは不十分である。最初の外門でのチェックを行うだけでは、厳重管理対象である区域2に至る間、人の乗降によって、マイクロバス7に乗車する人の入れ替わりに対して有効な対策をとることができない。
【0039】
これに対して、本実施形態に係るセキュリティシステムによれば、外門から入構したマイクロバス7に乗っている人についての特定の区域2への立入り制限を、マイクロバス7に乗車している人が乗車した状態のまま、その区域2の入り口に設けられたセキュリティゲート8において管理することができる。
【0040】
従って、従業員が通勤用のマイクロバス7に乗車して、このマイクロバス7がゲートを通行後、立入りを厳重に制限された区域2に近づいた際に、この区域2の警備員は、そのバスに乗っている人の全員が、区域2への立入りを許可された人物であるか否かを容易にチェックすることができるようになる。
【0041】
換言すれば、本発明のセキュリティシステムでは、車載器10を識別するIDと、人を識別するIDとの2つのIDを用いることにより、エリア内に入ることができることを表す権限と、このエリア内の特定の区域に立ち入ることを表すより詳細な権限とが管理される。
【0042】
また、従来技術では、多数の人がマイクロバス7に乗っている場合では、これらの人が携帯するIDカードから送信される電波を監視装置26は直接受信することができない。これに対して、本実施形態に係るセキュリティシステムでは、乗車時において、IDカードを持っていない人はマイクロバス7に乗れないため、IDカードを持っていない不審者は厳重な立入り制限が行われている区域2まで通行することができない。
【0043】
このようにして、本発明のこの実施形態に係るセキュリティ及びエリア監視方法によれば、車両に乗っている人が、立入り制限のある区域への立入りを許可された人物であるかどうかについて容易に判断されるようになる。
【0044】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係るセキュリティシステムに用いられる監視装置は、本発明の第1の実施形態に係る監視装置26と同じ機能を有するほかに、車載器10から送信される電波を受信し、マイクロバス7がどの方向から守衛室9に向かっているかを警備員が推測する機能を付加されている。
【0045】
図6は本実施形態に係るセキュリティシステムに用いられる監視装置のブロック図である。この監視装置33は、基準アンテナ34a及び複数のアレイアンテナ34bから構成される電波受信部34と、電波受信部34にて受信された受信信号を中間周波数に変換する周波数変換部35と、周波数変換部35からの出力をディジタル変換したデータを受信データとして出力するAD変換部36とを備えている。
【0046】
基準アンテナ34a及びアレイアンテナ34bには、それぞれが平面上に縦及び横の各方向に所定間隔で格子状に配置された複数のアンテナ素子が用いられる。これにより、電波受信部34は、水平面上においてこの電波受信部34を取り囲む例えば360°の方位方向から到来する電波を受信可能にされている。また、基準アンテナ34a及びアレイアンテナ34bを垂直に立てて使用することもできる。これらの基準アンテナ34a及びアレイアンテナ34bはいずれも周波数変換部35に接続されている。本実施形態では、これらの電波受信部34、周波数変換部35及びAD変換部36が協働することによって、車載器10から送出された無線信号を受信する受信部として機能する。
【0047】
更に、電波装置33は、AD変換部36から出力された受信データに基づいて車載器10からの電波の到来方向を推定し、電波の強さの分布についての2次元画像を出力する電波到来方向推定部37と、電波到来方向推定部37によって推定された電波の到来方向の視野内についての画像を出力する撮影部としてのカメラ部38と、電波到来方向推定部37から出力された2次元画像を、このカメラ部38から出力された画像に合成する処理を行う画像処理部39とを備えている。
【0048】
電波到来方向推定部37は、電波受信部34を構成する各アンテナ素子にて受信された受信信号に対し、電波ホログラフィ法を用いた演算処理を行うことによって、電波の到来方向を推定する。カメラ部38は、360°のパノラマ撮影が可能であり、電波装置33の筐体などに取り付けられている。また、360°のパノラマ撮影ができてもよい。
【0049】
また、本実施形態に係るセキュリティシステムが設けられるエリアにおける各種の設備の配置も、図1の例と同じである。図6の中で、これら以外の要素のうちの上述した符号と同じ符号を有するものはそれらと同じものである。従って、監視装置33は、本発明の第1の実施形態に係る監視装置26が有する機能と同様の機能を有するほかに、電波の発射源を特定することが可能な構成が付加されている。
【0050】
このような構成によって、マイクロバス7に搭載された車載器10は、乗車する人の人物ID情報を取得する。車載器10は、質問信号送出部12からの質問信号を受信すると、マイクロバス7を識別する車両ID情報と、乗車している全ての人の人物ID情報とを含む無線信号を送出する。
【0051】
監視装置33は、車載器10からの電波を受信し、取得した人物ID情報とデータベース30に登録されている情報とを比較し、マイクロバス7に乗車している人が立入りを許可された人物かどうかを照合により判断する。車載器ID情報とデータベース30に記憶された車載器ID情報とを照合した結果と、人物ID情報とデータベース30に記憶された人物ID情報とを照合した結果とのそれぞれが成立したかどうかを監視装置33は判定する。
【0052】
監視装置33は、2つの照合結果が成立したと判定した場合には、人を乗せたままのマイクロバス7の入場を許可する旨の表示を行う。監視装置33は、2つの照合結果のうちのいずれかが成立しない場合には警報を発する。これによって、警備員は、許可されていない人物がマイクロバス7に乗車していることを知る。
【0053】
また、監視装置33は、全方位からの電波を受信する。電波到来方向推定部37は、電波の到来方向、すなわち方向角、仰角、電界強度の分布を信号処理によって算出する。この信号処理は、例えば、所定の時間において基準アンテナ34aから受信された信号と、この時間と同じ時間において各アレーアンテナから受信された信号との間の位相差などを算出することにより行われる。カメラ部38は、例えばエリア1において区域2へ向かって移動するマイクロバス7の画像を画像処理部39に出力する。
【0054】
画像処理部39は、電波到来方向推定部37から出力される推定結果を2次元画像に変換する。画像処理部39は、この2次元画像と、カメラ部38からの画像とを重ね合わせる処理を行って、実際のマイクロバス7の画像に電波強度の2次元分布を重ね合わせて、合成画像のデータを生成する。表示部32は、この合成画像を画面に表示する。従って、車載器10を装着したマイクロバス7のエリア1における位置が可視化される。監視員はマイクロバス7から電波が発射されたかどうかを確認する。
【0055】
複数のマイクロバス7が、エリア1を移動している場合においても、警備員は、合成画像を常時モニタすることによって、これらのマイクロバス7の位置を広い範囲において容易に特定することができる。
【0056】
このようにして、本実施形態に係るセキュリティシステム及びエリア監視方法によれば、車載器10からの電波の到来方向別の電波の強度が画像化されて、この強度の分布とカメラ画像とが合成された合成画像が表示されるため、監視カメラ上の車両に乗車している人物に関する情報を収集することができるようになる。例えば不審者を特定することを行うセキュリティ分野の技術に応用することもできる。
【0057】
(第3の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムでは、敷地などのエリア1を車両が入場するものであった。本発明の第3の実施形態に係るセキュリティシステムでは、海や河川をエリアとして、この海や河川において立入りを制限された特定の区域に船舶が航行する例について述べる。
【0058】
図7は本実施形態に係るセキュリティシステムが適用される海上における各種設備の配置を説明するための図である。図7に示す海40はエリアである。例えば海40にある柵や浮遊物と船舶が衝突することを避けるために、水域41a〜41cが決められている。これらの水域41a〜41cのうちの水域41bは、立入りの制限が行われている区域である。
【0059】
本実施形態の例では、海上には複数の船舶42が異なる方向から沿岸43に向かって近づいている。また、沿岸43にある監視センタ内には監視装置44が設けられている。この監視装置44は、本発明の第2の実施形態に係るセキュリティシステムに用いられる監視装置33と同じ機能を有し、加えて、監視装置44の質問信号送出部12が送出可能な電波の強さは大きくされている。
【0060】
監視装置44は、水域41a〜41cを航行する船舶44のそれぞれと無線通信できるようにされている。監視装置44は、これらの船舶42に搭載された車載器10から送信される電波を受信し、これらの船舶42の到来方向を推測する機能を有する。監視装置44は、電波を可視化する機能によって、これらの船舶44が近づいてくる方向を知る。監視装置44は、様々な方向から沿岸に向かって航行する船舶42に乗船している人が全て水域41bに立入りを許可された人物であるかどうかをも監視する。
【0061】
本実施形態では、監視センタにいる監視員が沿岸43に向かって航行する船舶42のうち水域41bを通過する船舶があるかどうかについて監視装置44を用いて監視する。監視装置44はこの水域41bを通過する船舶42がある場合には警報を発し、監視員はこの警報に基づいて船舶42に対して警告等を行う。
【0062】
すなわち、本実施形態に係るセキュリティシステムの例は、本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムの例と同様の機能を有するが、車載器10が車両ではなく、船舶42に取り付けられている点が異なる。
【0063】
このような構成の本実施形態に係るセキュリティシステムでは、他の港において水域41a、41cを通過しようとする人が船舶42に乗船する際、乗船する人は、船舶42に設けられた車載器10に自らのIDカードをかざし、車載器10は、IDカードに記録された人物ID情報を登録する。この登録が正常に行われた人は、船舶42に乗船したまま、水域41a、41cを通行することを許可される。登録が正常に行われない人は、船舶42の乗務員によりチェックされて、乗船をすることができない。車載器10による登録処理が完了すると、船舶42に乗船している全ての人の人物ID情報が車載器10に蓄積される。
【0064】
乗船している全ての人の人物ID情報が車載器10に登録された後、船舶42は航行を開始し、沿岸43の決められた場所に向かって航行する。監視装置44に設置されている質問信号送出器は、質問信号を常時送出し続ける。船舶42の車載器10は、質問信号を受信すると、船舶42を識別する船舶ID情報と、乗船している全ての人の人物ID情報とを含む無線信号を送出する。
【0065】
監視装置44は、車載器10からの電波を受信し、取得した船舶ID情報及び人物ID情報と、データベース30に登録されている情報とを比較し、乗船した人が許可された人物かどうかを判断する。許可されていない人物であると監視装置44が判定した場合には警報を発する。これによって、許可されていない人物が船舶42に乗船していることが、監視員に通知される。
【0066】
また、監視装置44は、全方位からの電波を受信する。電波到来方向推定部37は、電波の到来方向を信号処理によって算出する。カメラ部38は、例えば監視装置44から水域41bへ向かう方向に位置する船舶42や海面の画像を画像処理部39に出力する。
【0067】
画像処理部39は、電波到来方向推定部37から出力される推定結果を2次元画像に変換する。画像処理部39は、この2次元画像と、カメラ部38からの画像とを重ね合わせる処理を行って、実際の船舶42の画像に電波強度の2次元分布が重ね合わせられた合成画像のデータを生成する。表示部32は、この合成画像を画面に表示する。従って、車載器10を装着した船舶42の海上における位置が可視化される。監視員は各船舶42から電波が発射されたかどうかを確認する。
【0068】
複数の船舶42が、水域41a〜41c又はこれらの水域41a〜41c以外の水域にある場合においても、監視員は、合成画像を常時モニタすることによって、これらの船舶42の位置を広い範囲において容易に特定することができる。従って、エリアである海40は方向別に監視される。
【0069】
そして、監視員は、水域41aを通過することを許可された船舶42だけに対して無線通信を行って通過を許可する。監視員は許可されていない船舶42が近づいた場合にはこの船舶42に対して警告を発する。
【0070】
このようにして、本実施形態に係るセキュリティシステム及びエリア監視方法によれば、複数の船舶42がカメラ画像に映っている場合においても、電波を発射している船舶を特定することができる。
【0071】
また、この実施形態に係るセキュリティシステム及びエリア監視方法によれば、車載器10からの電波の到来方向別の電波強度が画像化され、カメラ画像と合成して表示することにより、監視カメラ上の船舶42に乗船している人が、立入り制限のある区域への立入りを許可された人物であるかどうかを判断することができるようになる。
【0072】
尚、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0073】
上記の第1の実施形態では、マイクロバス7に乗るときに人が車載器10にIDカードをかざすことにより人物ID情報を登録していたが、本発明は、IDカードの代わりに、人物ID情報を記録した磁気カードを用いることもできる。この場合には、車載器には、磁気カードから人物ID情報を読み取る磁気カードリーダが設けられる。マイクロバス7への人の乗車時に、人がこの磁気カードを通す。磁気カードリーダが読み取った人物IDと、車載器10自身の車載器ID情報とを車載器10が監視装置26に対して送信し、これによって監視装置26は2種類のIDを取得する。このようにしても、やはり、IDカードを持っていない人や、偽造されたIDカードを用いたゲートのすり抜けが防止される。
【0074】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムが適用されるエリアにおける各種設備の配置例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムに用いられる車載器のブロック図である。
【図3】車両に乗る人が携帯する個人識別媒体の一例を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るセキュリティシステムに用いられる監視装置のブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るエリア監視方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るセキュリティシステムに用いられる監視装置のブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係るセキュリティシステムが適用されるエリアにおける各種設備の配置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
1…エリア、2〜4…区域、5,8…セキュリティゲート、6…建物、7…マイクロバス(車両)、9…守衛所、10…車載器、11…送受信アンテナ部、12…質問信号送出部、12a,13,24…送信アンテナ、14,25…送信部、15,20,27…受信アンテナ、16,21,28…受信部、17…人物ID記憶部、18,23…制御部、19…IDカード(個人識別媒体)、22…ID記録部、26,33,44…監視装置、29…ID復調部、30…データベース、31…データベース検索部(検索処理部)、32…表示部(検索処理部)、34…電波受信部、34a…基準アンテナ、34b…アレイアンテナ、35…周波数変換部、36…AD変換部、37…電波到来方向推定部、38…カメラ部(撮影部)、39…画像処理部、40…海(エリア)、41a〜41c…水域(区域)、42…船舶(車両)、43…沿岸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて、この車両に乗る人が携帯する個人識別媒体から、前記人の人物ID情報を取得し、この人物ID情報と車載器自身の車載器ID情報とを含む無線信号を送出する車載器と、
立入りの制限が行われている区域を有するエリアに設けられて、このエリアに入る車両に搭載された車載器からの無線信号を受信して警報表示を行う監視装置とを備え、
この監視装置が、
前記エリアに入ることを許可された車両に搭載された車載器の車載器ID情報と、前記区域への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベースと、
前記車載器から送出された無線信号を受信する受信部と、
この受信部にて受信された無線信号に含まれる車載器ID情報と前記データベースに記憶された車載器ID情報とを照合した結果と、この無線信号に含まれる人物ID情報と前記データベースに記憶された人物ID情報とを照合した結果とのうちのいずれか一方が不成立である場合に警報表示のためのデータを出力する検索処理部と、
を備えたことを特徴とするセキュリティシステム。
【請求項2】
前記受信部から出力された受信データに基づいて、前記車載器からの電波の到来方向を推定し、電波の強さの分布についての2次元画像を出力する電波到来方向推定部と、
この電波到来方向推定部によって推定された電波の到来方向の視野内についての画像を出力する撮影部と、
前記電波到来方向推定部から出力された2次元画像を、この撮影部から出力された画像に合成する画像処理部と、
この画像処理部により合成された画像を表示する表示部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のセキュリティシステム。
【請求項3】
前記電波到来方向推定部は、電波ホログラフィ法を用いた演算処理を行うことによって、前記電波の到来方向を推定することを特徴とする請求項2記載のセキュリティシステム。
【請求項4】
前記車載器が前記車両としての船舶に搭載されて、前記監視装置が立入りを制限された水域を有するエリアに設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のセキュリティシステム。
【請求項5】
車両に搭載された車載器が、この車両に乗る人が携帯する個人識別媒体に記憶された前記人の人物ID情報と車載器自身の車載器ID情報とを含む無線信号を送出するステップと、
立入りの制限が行われている区域を有するエリアに設けられた監視装置が、このエリアに入る車両に搭載された車載器から送出された無線信号を受信するステップと、
この監視装置が、前記エリアに入ることを許可された車両に搭載された車載器の車載器ID情報と、前記区域への立入りを許可された人の人物ID情報とを記憶するデータベースを検索し、受信した無線信号に含まれる車載器ID情報とこのデータベースに記憶された車載器ID情報とを照合した第1の結果を出力するステップと、
前記監視装置が、前記データベースを検索し、受信した無線信号に含まれる人物ID情報と前記データベースに記憶された人物ID情報とを照合した第2の結果を出力するステップと、
前記監視装置が、これらの第1の結果と第2の結果とのうちのいずれか一方が不成立である場合に警報表示を行うステップと、
を備えたことを特徴とするエリア監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−15578(P2009−15578A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176302(P2007−176302)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】