説明

セグメントの継手構造

【課題】製造が容易でコストを低く抑えることである。
【解決手段】ピンボルト3を雌継手10の内筒12内に挿入すると、ピンボルト3に押されてコイルバネ13が圧縮し、内筒12は外筒11の後端部プレート14の方に後退する。それと同時に、スリット12bが設けられている内筒12の先端部12aが拡径され、ピンボルト3が内筒12内部に進入する。双方のセグメント1、2の接合端面1a、2aが密接し、ピンボルト3に作用していた押圧力が解除されると、コイルバネ13の弾性力により、内筒12は先端側に移動し、内筒12のテーパをなす先端外周部12cがテーパに形成した外筒11の先端部11aに当接する。スリット12bが設けられている内筒12の先端部12aは、外筒11の先端部11aに側方から押圧されて縮径し、ピンボルト3の側部を挟みつけて係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒状のトンネル壁体を構成するセグメントの継手構造に関し、特に、セグメント同士を接合する際に使用するピン継手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法によってトンネルを構築していく場合、シールド掘削機で地山を掘削しつつ、当該シールド掘削機のスキンプレート内で、複数のセグメントを、構築すべきトンネルの周方向(これを「セグメント間」という。)と、トンネルの軸方向(これを「リング間」という。)についてそれぞれ接合していく。このリング間継手として、特許文献1に記載されているようなピン継手が用いられることがある。
【0003】
特許文献1に記載されているピン継手は、一方のセグメントの接合端面に突出させて取り付けたピンボルトを、他方のセグメントの接合端面に設けた凹状係止部材に挿入かつ係止させてセグメント同士を接合する構造となっている。
ピンボルトは、一端部にねじ部が形成された均一径の棒状体で、一方のセグメントの接合端面に埋設されたホルダにねじ部がねじ込まれた状態で他端部側が接合端面より所定長さ突出している。一方、凹状係止部材は、テーパ状の周壁と平らな底部とからなるケーシングの中に、中空の挿入孔を有するくさび材が弾発部材上に収納された構成となっている。くさび材はスリットによって複数のピースに分割されていて、開口側である接合端面側に摺動可能であり、弾発部材の付勢力で接合端面側に摺動することによって各ピースが互いに近寄って挿入孔が絞られるようになっている。
セグメント同士を接合する際は、ピンボルトをくさび材の挿入孔に挿入すればよい。 ピンボルトをくさび材の挿入孔に挿入すると、ピンボルトの先端が弾発部材の中央突起部に当たって当該中央突起部が凹むと同時に、 弾発部材の周縁部がくさび部材の各ピースを接合端面側にスライドさせる。その結果、各ピースが縮径してピンボルトを挟み付けて係止する。さらにセグメント同士に引っ張り力が作用すると、各ピースが更に縮径してピンボルトを挟み付けて係止する。
【特許文献1】特開平8−189511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、特許文献1に記載されている従来のピン継手は、 ピンボルトをくさび材の挿入孔に挿入するだけでよく大きな利便性を有しているが、部品数が多く、組立に手間が掛かり、コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、製造が容易でコストを低く抑えることができるピン継手用の雌継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、一方のセグメントの接合端面に突設されたピンボルトを、他方のセグメントの接合端面に設けられた雌継手に挿入して係止するセグメントの継手構造であって、雌継手は、後端部が閉塞されていると共に先端側が開口する外筒と、当該外筒内に収納されていてピンボルトが内部に挿入される内筒と、外筒の後端部と内筒の後端部との間に介装される弾性体とからなり、外筒の先端部および内筒の先端外周部は先端に向けて縮径するテーパとされ、内筒の先端部には当該内筒の軸方向に沿って延在して先端側が開放されたスリットが設けられ、内筒の先端外周部が外筒の先端部に当接することを特徴とする。
【0007】
ここでは、雌継手から見て接合端面方向を「先」、その逆方向を「後」とし、以降の記載においても同様とする。
ピンボルトを雌継手の内筒内に挿入すると、ピンボルトに押されて内筒が弾性体を圧縮させて外筒の後端部側に後退する。それと同時に、スリットが設けられている内筒の先端部が拡径され、ピンボルトが内筒内部に進入する。双方のセグメントの接合端面が密接し、ピンボルトに作用していた押圧力が解除されると、弾性体の弾性力により内筒は先端側に移動し、内筒の先端外周部がテーパをなす外筒の先端部に当接する。スリットが設けられている内筒の先端部は、外筒の先端部に側方から押圧されて縮径し、ピンボルトの側部を挟みつけて係止する。さらにセグメント同士に引っ張り力が作用すると、内筒の先端部が更に縮径してピンボルトを一層強固に挟み付ける。
【0008】
また、本発明は、一方のセグメントの接合端面に突設されたピンボルトを、他方のセグメントの接合端面に設けられた雌継手に挿入して係止するセグメントの継手構造であって、雌継手は、後端部が閉塞されていると共に先端側が開口する外筒と、当該外筒内に収納されていてピンボルトが内部に挿入される内筒と、当該内筒の先端部外側に配設されている円筒部材と、外筒の後端部と内筒の後端部との間に介装された弾性体とからなり、円筒部材の内周部および内筒の先端外周部は先端に向けて縮径するテーパとされ、内筒の先端部には当該内筒の軸方向に沿って延在して先端側が開放されたスリットが設けられ、内筒の先端外周部が円筒部材の内周部に当接することを特徴とする。
【0009】
本発明は、内周部をテーパとした円筒部材を外筒の先端内部に配設したため、ピンボルトを雌継手の内筒内に挿入すると、ピンボルトに押されて内筒が弾性体を圧縮させて外筒の後端部側に後退すると共に、内筒の先端部がスリットで拡径されてピンボルトが内筒内部に進入する。双方のセグメントの接合端面が密接し、ピンボルトに作用していた押圧力が解除されると、弾性体の弾性力により内筒は先端側に移動し、内筒の先端外周部がテーパをなす円筒部材の内周部に当接するため、内筒の先端部は円筒部材のテーパ状内周部によって側方から押圧されて縮径し、ピンボルトを挟みつけて係止する。さらにセグメント同士に引っ張り力が作用すると、内筒の先端部が更に縮径してピンボルトを一層強固に挟み付ける。
しかも、偏心してピンボルトを内筒内に挿入した場合でも、内筒と一緒に円筒部材も偏心するため、ピンボルトの側部を内筒の先端部が全周で挟みつけて係止する。このため、ピンボルトが内筒に片当たりすることがなく、組立上の誤差を吸収することができる。
【0010】
また、外筒の先端側外周部と先端側内周部の少なくともいずれか一方にフランジ部が径方向に突出して設けられていてもよい。
外筒の先端外周部にフランジが設けられていると、ピンボルトに引き抜き力が作用したり、外筒を押し広げる力が作用した場合でも、十分な強度で雌継手をセグメントに保持してピンボルトの側部を挟みつけて係止することができ、フランジに補強効果を与えることができる。また、外筒の先端側内周部にフランジ部が設けられていると、円筒部材や内筒の係止機能を発揮し、弾性部材に押された内筒や円筒部材が外側に突出することを確実に防止できる。
【0011】
さらに、本発明では、外筒の後端部の外側または該後端部と弾性体の間に雌ねじ部が設けられていてもよく、或いは外筒の後端部に雌ねじ部が設けられていてもよい。
雌ねじ部として例えばナットを外筒の後端部内側または外側に固着してもよく、或いは後端部を構成する部材に穿孔して雌ねじを形成してもよい。これらのいずれかに雌ねじ部を設けることにより、雌ねじ部に裸合して外筒の外側に突出するアンカーボルトを取り付けることができる。これにより、雌継手の付着強度が増大し、ピンボルトに大きな引き抜き力が作用した場合でもセグメントのコーン破壊を防止することができる。また、セグメントの製造時に、雌継手を接合端面の型枠に当接させ、型枠に設けた孔から内筒内に長ボルトを挿入して上述したナットや後端部の穿孔部におけるいずれかの雌ねじ部に螺合させれば、雌継手を型枠に容易に固定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、雌継手が、テーパ状の先端部を有する外筒と、外筒の先端部に当接して縮径し、ピンボルトの側部を挟みつけて係止する先端部を有する内筒と、内筒に復元力を付与する弾性体とから構成されており、従来の凹状係止部材に比べて構造がシンプルで部品数が少ない。このため、製造が容易でコストを低く抑えることができる。
また、本発明は、内筒の先端部外側に円筒部材を配設し、円筒部材の内周部および内筒の先端外周部を先端に向けて縮径するテーパとしたから、上記作用効果に加えて、偏心してピンボルトを内筒内に挿入した場合でも、内筒と一緒に円筒部材も偏心するため、ピンボルトの側部を内筒の先端部が全周で係止し、ピンボルトが内筒に片当たりすることがなく、組立上の誤差を吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明によるセグメントの継手構造の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1および図2は、本発明に係るセグメントの継手構造の第一実施形態を示したものである。
本継手構造は、一方のセグメント2の接合端面2aに埋設されたホルダ40にピンボルト3の一方の端部を装着した後、他方のセグメント1の接合端面1aに埋設された雌継手10に、当該ピンボルト3の他方の端部を挿入して係止し、双方のセグメント1、2を接合するものである。
【0014】
ピンボルト3は、略均一径の棒状体からなり、ホルダ40に装着するための雄ねじ部3bが一方の端部に形成されている。また、雌継手10に挿入する際の抵抗を小さくするとともに、引き抜きに対する抵抗を大きくするため、他方の端部の外周面には、全周に亘って鋸歯状をなす複数の突条部3aが形成されている。
【0015】
雌継手10は、後端部が後端部プレート14で閉塞された略円筒状の外筒11と、当該外筒11内に収納されていてピンボルト3が内部に挿入される略円筒状の内筒12と、当該内筒12の後端部と後端部プレート14との間に介装される弾性体、例えばコイルバネ13とから概略構成されている。また、後端部プレート14の一方の面(コイルバネ13が設置されている側)には、ナット16が固着されている。
外筒11の先端部11aは先端に向けて縮径する円錐台状のテーパとされ、先端外周部には外形が平面視方形もしくは円形の補強フランジ15が取り付けられている。補強フランジ15はピンボルト3に引き抜き力が作用した際に、外筒11の先端部11aが側方に拡がらないようにするためのものであり、セグメント1の接合端面1aと面一となるように取り付けられている。なお、外筒11の先端部11aは少なくとも内周面がテーパに形成されていれば外周面は円筒状でもよい。
一方、内筒12は、その内径がピンボルト3と略同径または若干小径とされ、先端外周部12cは先端に向けて縮径する円錐台状のテーパとされている。また、内筒12の先端部12aには、内筒12の軸方向に延在すると共に先端側が先端部12aに開放するスリット12bが周方向に所定間隔で複数条、例えば90度間隔で4条設けられている。
また、コイルバネ13はナット16と内筒12の間に配設されて略円筒状に形成されている。
【0016】
ホルダ40は、表面が接合端面2aと面一とされたプレート41と、プレート41の略中央に装着された取付部42とから構成されている。プレート41は鋼製で長方形状をなし、中央にはピンボルト3が挿通可能なピン挿通孔41aが設けられている。また、プレート41の裏面には、側板4 4が溶接されている。
取付部42は、ピン挿通孔41aと、プレート41の裏面にピン挿通孔41aと同軸となるように固着された袋ナットからなるナット部材43および有底筒状のケース45とから構成されている。ナット部材43のねじ孔43aには、ピンボルト3の雄ねじ部3bが螺挿される。ケース45は、ナット部材43を覆ってその開口縁部がプレート41の裏面に溶接され、ケース45とナット部材43との間には空隙46が設けられている。
ピンボルト3をホルダ40に装着する際は、その雄ねじ部3bを、プレート41のピン挿通孔41aからナット部材43のねじ孔43aに螺挿し、ピンボルト3が接合端面2aより所定長さ突出するようにする。なお、ホルダ40は単純なインサートとしてもよい。
【0017】
本実施の形態による継手構造は上述の構成を備えているから、一方のセグメント2に設けた雄継手のピンボルト3を他方のセグメント1の雌継手10における内筒12内に挿入すると、外筒11内でピンボルト3に押されて内筒12が、コイルバネ13を圧縮して後端部プレート14の方に後退する。それと同時に、スリット12bが設けられている内筒12の先端部12aが拡径され、ピンボルト3が内筒12内部に進入する。
そして、双方のセグメント1、2の接合端面1a、2aが密接し、ピンボルト3に作用していた押圧力が解除されると、コイルバネ13の弾性力により、内筒12は先端側に移動し、内筒12の先端外周部12cがテーパになった外筒11の先端部11aに当接する。内筒12の先端部12aはスリット12bが設けられているため、外筒11の先端部11aに側方から押圧されて縮径し、ピンボルト3の側部を挟みつけて係止する。さらにセグメント1,2同士に引っ張り力が作用すると、内筒12の先端部12aが更に縮径してピンボルト3を一層強固に挟み付ける。
【0018】
上述のように本実施形態によれば、雌継手10がテーパ状の先端部11aを有する外筒11と、外筒11の先端部11aに当接して縮径し、ピンボルト3の側部を挟みつけて係止する先端部12aを有する内筒12と、内筒12に外筒11の先端部11a方向に向かう弾性力を付与するコイルバネ13とから概略構成されているので、従来の 凹状係止部材に比べて構造がシンプルで部品数が少ない。このため、製造が容易でコストを低く抑えることができる。
【0019】
図3は、セグメント製造時に雌継手10を型枠に固定する方法を示したものである。
補強フランジ15を利用して雌継手10を接合端面の型枠4に当接させる。そして、型枠4に設けた孔4aから内筒12内に長ボルト5を挿入し、後端部プレート14に固着したナット16に長ボルト5を螺合させれば、雌継手10を型枠4に容易に固定することができる。
従って、雌継手10に型枠固定用の雌ねじ部を別途形成する必要がない。
【0020】
次に、雌継手の他の実施形態について説明するが、上述の実施形態と同一部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
図4は、雌継手の第二の実施形態を示したものである。
本実施形態では、第一の実施形態の雌継手10の後端部プレート14の中央部に貫通孔14aを設け、後端部プレート14に固着したナット16に貫通孔14aを介して外側から頭部17a付きのアンカーボルト17を螺合したものである。これにより、雌継手10のセグメント1に対する付着強度が増大し、ピンボルト3に大きな引き抜き力が作用した場合でもセグメント1のコーン破壊を防止することができる。
【0021】
図5および図6は、雌継手の第三の実施形態を示したものである。
本実施形態の雌継手20は、後端部が後端部プレート24で閉塞されていて先端部に補強フランジ25が取り付けられた略円筒状の外筒21と、当該外筒21内に収納されていてピンボルト3が内部に挿入される略円筒状の内筒22と、内筒22の先端外周部22cの外側に環装される円筒部材28と、内筒22の後端部と後端部プレート24に固着したナット26との間に介装されるコイルバネ23(弾性体)とから概略構成されている。
外筒21の先端部は、先の実施形態と異なり、円錐台状のテーパではなく円筒状をなす一様断面とされている。また、先端部に取り付けられた例えば円形または矩形の板状をなす補強フランジ25の中央部にはピンボルト3を挿入するための断面円形をなす挿通孔25aが設けられている。補強フランジ25は外筒21の先端に略直交して固着され、外筒21に対して径方向外側及び内側に突出して形成され、内側中央に上述した挿通孔25aが穿孔されている。挿通孔25aの内径はピンボルト3の外径より大きく設定されている。
一方、円筒部材28の内周部は先端に向けて縮径していて、中空部は円錐台状のテーパになっている。円筒部材28の先端面は補強フランジ25に当接し、円筒部材28と外筒21との間にはクリアランスCが設けられている。
内筒22は、第一および第二の実施形態と同様に、その内径がピンボルト3と略同径とされ、先端外周部22cは先端に向けて縮径する円錐台状のテーパとされている。また、内筒22の先端部22aには、内筒22の軸方向に延在し先端側が開放するスリット22bが例えば90度間隔で4条設けられている。
【0022】
本実施形態の雌継手20では、ピンボルト3を内筒22内に押し込んで挿入した後、コイルバネ23の弾性力により内筒22が先端側に移動した際、内筒22の先端外周部22cが円筒部材28の内周部に当接する。スリット22bが設けられている内筒22の先端部22aは、円筒部材28に側方から押圧されて縮径し、ピンボルト3の側部を挟みつけて係止する。さらにセグメント1,2同士に引っ張り力が作用すると、内筒22の先端部22aが更に縮径してピンボルト3を一層強固に挟み付ける。
【0023】
本実施形態の場合、雌継手20の補強フランジ25に設けた挿通孔25aを通して外筒21の内周面に対して偏心してピンボルト3を内筒22内に挿入した際に、内筒22と一緒に円筒部材28も偏心するため、ピンボルト3の側部を内筒22の先端部22aが全周で挟みつけて係止する。このため、ピンボルト3が内筒22に片当たりすることがなく、組立上の誤差を吸収することができる。
なお、後端部プレート24に固着されたナット26の機能は、先の実施形態と同様である。
【0024】
次に上述の各実施形態の変形例について図7乃至図11により説明する。
図7乃至図9は各実施形態に共通する変形例であり、ここでは第一実施形態による継手構造に基づいて説明する。
図7は第一の変形例による雌継手10の一部を示すものであり、図中ナット16は設けられておらず、内筒12に押されたコイルバネ13の他端は外筒11の後端部プレート14に当接して圧縮されている。そして、後端部プレート14の中央部に穿孔した中央孔には雌ねじが形成された雌ねじ部27を構成する。
そのため、外筒11の外側からアンカーボルト17を雌ねじ部27に螺合することができ、これによってセグメント1に対する付着強度を増し、引き抜き力に対してコーン破壊を防止できる。また、型枠4に設けた孔4aから内筒12内に長ボルト5を挿入して雌ねじ部27に螺合すれば雌継手10を型枠4に容易に固定できる。
【0025】
図8は第二変形例による雌継手10の一部を示すものであり、図中、コイルバネ13と内筒12の後端部との間にリング状のプレート29を配設している。この構成によるコイルバネ13の付勢力を確実に内筒12に伝達して前方へ押すことができる。
図9は第三変形例による雌継手10の一部を示すものであり、図中、外筒11の後端近傍に後端部プレート30が固着され、コイルバネ13の後端が後端部プレート30に圧接されている。また、後端部プレート30の外側にはナット16が固着されている。そのため、型枠4に固定する長ボルト5を内筒12内に挿入してナット16を螺合させる場合には、後端部プレート30に挿通孔31を形成する必要がある。
また、外筒11の後端部プレート30よりも後端側の外周面11bはラッパ状またはコーン状に外側に拡がっている。これによってアンカーボルトを用いることなくセグメント1に対する付着強度を増し、引き抜き力に対してコーン破壊を防止する機能を強化できる。
【0026】
次に図10及び図11は他の変形例を示すものである。
図10は第三実施形態による雌継手20の第四変形例である。図中、外筒21の先端側の内面には径方向内側に突出する係止フランジ33が設けられている。この係止フランジ33によって円筒部材28を係止して外筒21の外側に突出するのを阻止できる。
次に図11は第三実施形態による雌継手20の第五変形例である。図中、外筒21の先端側にはその径方向の内外に突出する補強フランジ34が設けられている。この補強フランジ34の内側突出部分34aは円筒部材28を係止して外筒21の外側に突出するのを阻止する。補強フランジ34の外側突出部分34bは補強フランジ15と同様の補強効果を発揮する。
更に補強フランジ34の内側突出部分34aの内端には雌ねじ部35が形成されており、セグメント1の製造時に型枠4から突出するボルトに雌ねじ部35を螺合させることで、この雌継手20を型枠4に位置決め固定できる。
なお、本第四、第五変形例にも上述した第一乃至第三変形例の構成を適宜採用してもよい。第四変形例の係止フランジ33内端に雌ねじ部35を設けても良い。
【0027】
以上、本発明に係るセグメントの継手構造の実施形態や変形例について説明したが、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記の実施形態等では、弾性体としてコイルバネ13,23を使用しているが皿バネやウレタンバネなど他の弾性体でもよく、要は内筒12、22に所要の復元力を付与できればよい。
また、上記の実施形態では、ピンボルト3の表面に鋸歯状の突条部3aを設けて引き抜き抵抗を大きくしているが、突条部3aはリング状のものを複数配列する構成に限定されることなく、例えば螺旋状に形成されていてもよい。或いはピンボルト3の外周面に突条部3aを設けずに、内筒12の先端部12cの内周面に設けてもよい。ピンボルト3の外周面と内筒12の先端部12c内周面の両方に突条部3aを設けてもよいし、いずれにも設けなくてもよい。
外筒21内の後端部プレート14,24にナット16,26を設けなくてもよい。補強フランジ15、25も必ずしも設けなくてもよい。
なお、ナット16,26や雌ねじ部27、35等は本発明における雌ねじ部に含まれる。補強フランジ28,35や係止フランジ33は本件発明のフランジを構成する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明によるセグメントの継手構造の第一の実施形態を示す側断面図である。
【図2】図1において雌継手をA方向から見た矢視図である。
【図3】セグメント製造時に雌継手を型枠に固定する方法を説明するための図である。
【図4】雌継手の第二の実施形態を示した側断面図である。
【図5】雌継手の第三の実施形態を示した側断面図である。
【図6】図5において雌継手をB方向から見た矢視図である。
【図7】第一の実施形態による雌継手の第一変形例を示す部分側断面図である。
【図8】同じく第二変形例を示す部分側断面図である。
【図9】同じく第二変形例を示す部分側断面図である。
【図10】第三の実施形態による雌継手の第四変形例を示す部分側断面図である。
【図11】同じく第五変形例を示す部分側断面図である。
【符号の説明】
【0029】
1、2 セグメント
1a、2a 接合端面
3 ピンボルト
3a 突条部
4 型枠
4a 孔
10、20 雌継手
11、21 外筒
11a、12a、22a 先端部
12b、22b スリット
12c、22c 先端外周部
12、22 内筒
13、23 コイルバネ(弾性体)
14、24、30 後端部プレート
15、25 補強フランジ(フランジ)
25a、41a、31 挿通孔
16、26 ナット(雌ねじ部)
27、35 雌ねじ部
28 円筒部材
33 係止フランジ(フランジ)
C クリアランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方のセグメントの接合端面に突設されたピンボルトを、他方のセグメントの接合端面に設けられた雌継手に挿入して係止するセグメントの継手構造であって、
前記雌継手は、後端部が閉塞されていると共に先端側が開口する外筒と、当該外筒内に収納されていて前記ピンボルトが内部に挿入される内筒と、前記外筒の後端部と前記内筒の後端部との間に介装される弾性体とからなり、
前記外筒の先端部および前記内筒の先端外周部は先端に向けて縮径するテーパとされ、前記内筒の先端部には当該内筒の軸方向に沿って延在して先端側が開放されたスリットが設けられ、前記内筒の先端外周部が前記外筒の先端部に当接することを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項2】
一方のセグメントの接合端面に突設されたピンボルトを、他方のセグメントの接合端面に設けられた雌継手に挿入して係止するセグメントの継手構造であって、
前記雌継手は、後端部が閉塞されていると共に先端側が開口する外筒と、当該外筒内に収納されていて前記ピンボルトが内部に挿入される内筒と、当該内筒の先端部外側に配設されている円筒部材と、前記外筒の後端部と前記内筒の後端部との間に介装された弾性体とからなり、
前記円筒部材の内周部および前記内筒の先端外周部は先端に向けて縮径するテーパとされ、前記内筒の先端部には当該内筒の軸方向に沿って延在して先端側が開放されたスリットが設けられ、前記内筒の先端外周部が前記円筒部材の内周部に当接することを特徴とするセグメントの継手構造。
【請求項3】
前記外筒の先端側外周部と先端側内周部の少なくともいずれか一方にフランジ部が径方向に突出して設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のセグメントの継手構造。
【請求項4】
前記外筒の後端部の外側または該後端部と前記弾性体の間に雌ねじ部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセグメントの継手構造。
【請求項5】
前記外筒の後端部に雌ねじ部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のセグメントの継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−284913(P2007−284913A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110877(P2006−110877)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000198307)石川島建材工業株式会社 (139)
【出願人】(591160279)小林工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】