説明

セグメント化反応性ブロックコポリマーを含むコーティング溶液

本発明はデバイスの表面処理に関する。表面処理は、末端官能化界面活性剤材料の反応性官能基を、ポリマー基材に沿ったモノマー単位中の相補的な表面反応性官能基と反応させることによって、基材の表面に反応性セグメント化ブロックコポリマーを結合させることを含む。本発明は、また、表面変性されたメディカルデバイスにも関し、その例として、コンタクトレンズ、眼内レンズ、血管ステント、有水晶体眼内レンズ、無水晶体眼内レンズ、角膜インプラント、カテーテル、インプラントなどが挙げられ、そのメディカルデバイスはこのような方法により製造された表面を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼科デバイスの表面コーティングとして有用な新規のクラスの調整されたポリマーを含むコーティング溶液に関する。これらのポリマーは、制御されたラジカル重合法を用いて特に調整して作ることができそしてある数の官能性ドメインを含むことができる。制御されたラジカル重合により、化学組成が調整可能なセグメント化ブロックコポリマーを容易に合成することが可能であり、結果として、そのコポリマーは従来のフリーラジカル重合により調製されるものとは異なる化学特性を示す。官能基(グリシジル基、活性化エステル、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボン酸基など)を含む基材結合性ドメインと親水性ドメインとを有するセグメント化ブロックコポリマーは、相補的官能基を含む基材と共有結合するときに良好な表面特性を示す。
【背景技術】
【0002】
眼科レンズなどのメディカルデバイスは様々な材料から製造される。コンタクトレンズの分野において、材料は、従来のヒドロゲル又はシリコーンヒドロゲルに広く分類される。最近では、シリコーン含有材料(シリコーンヒドロゲル)の使用が好まれている。その材料は含水率が様々であることができる。しかしながら、その含水率に関係なく、シリコーン材料は、比較的に疎水性であり、非湿潤性でありそして脂質に対して親和性が高い傾向がある。シリコーンデバイスの親水性を上げそして生体適合性を改良することによる、シリコーンデバイスの表面を変性する方法は非常に重要である。
【0003】
表面のコーティングのための幾つかのコポリマーは研究されている。米国特許第6,958,169号明細書は、共重合性基及び電子供与性部分を含む親水性デバイス形成性モノマー、及び、共重合性基及び反応性官能基を含む第二のデバイス形成性モノマーを含むモノマー混合物から形成されたメディカルデバイスを提供し、そしてこのメディカルデバイスの表面を、上記の第二のレンズ形成性モノマーにより提供される官能基と反応性であるプロトン供与性部分であって、上記の親水性レンズ形成性モノマーにより提供される電子供与性部分と錯化するプロトン供与性部分を含む湿潤剤と接触させることを開示している。
【0004】
米国特許第6,858,310号明細書は、除去可能な親水性ポリマーでメディカルデバイスをコーティングすることによる、メディカルデバイスの生体適合性又は親水性を上げるためのメディカルデバイスの表面変性方法あって、この親水性ポリマー上の反応性官能基とメディカルデバイスの表面上又はその表面付近の相補的な官能基との間の反応による、方法を開示している。
【0005】
米国特許第6,599,559号明細書は、除去可能な親水性ポリマーでメディカルデバイスをコーティングすることによる、メディカルデバイスの生体適合性又は親水性を上げるためのメディカルデバイスの表面変性方法あって、この親水性ポリマー上の反応性官能基であって、メディカルデバイスの表面上又はその表面付近の反応性官能基と相補的である反応性官能基の反応による、方法を開示している。
【0006】
米国特許第6,428,839号明細書は、(a)親水性モノマー及びシリコーン含有モノマーを含むモノマー混合物から形成されたメディカルデバイスであって、表面酸化処理がなされていないメディカルデバイスを提供し、(b) このメディカルデバイスの表面を、プロトン供与性湿潤剤を含む溶液と接触させ、それにより、表面酸化処理工程及びカップリング剤の添加なしに、この湿潤剤がメディカルデバイスの表面上で親水性モノマーと錯体を形成する、という工程を含む、メディカルデバイスの湿潤性を改良する方法を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多くのコポリマーは従来のフリーラジカル重合技術を用いて現在製造されており、そのポリマーの構造は完全にランダムであるか又はそれぞれのモノマーの反応性比によって制御されている。制御されたラジカル重合技術を用いることにより、制御された様式でコポリマーを組み立てることが可能になり、そしてその結果、そのコポリマーは従来のフリーラジカル重合技術を用いて調製したコポリマーとは完全に異なる溶液特性及びコーティング特性を示す。制御されたフリーラジカル重合は、ATRP(原子移動ラジカル重合)及びRAFT(可逆的付加開裂連鎖移動重合)などの様々な方法によって行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示によると、本発明は、一般に、メディカルデバイスの製造において、結合したコーティングを形成するための、反応性セグメント化ブロックコポリマーを含むコーティング溶液に関する。本明細書中に用いる際に、用語「結合した(bound)」、「結合性(binding)」又は同様の趣旨の用語は、反応性セグメント化ブロックコポリマーとデバイスの表面官能基との間の共有結合を指し、それにより、コーティング組成物とデバイスの結合がもたらされる。適切なデバイスの例として、コンタクトレンズ、眼内レンズ、眼内レンズインサーター、血管ステント、有水晶体眼内レンズ、無水晶体眼内レンズ、角膜インプラント、カテーテル、インプラントなどが挙げられる。
【0009】
本発明による原子移動ラジカル重合(ATRP)法により調製される反応性セグメント化ブロックコポリマーは、下記の一般式(I)を有することができる。
−[(A)−[(B)−X (I)
【0010】
上式中、Rは原子移動ラジカル重合のための開始剤として作用することができる部分の反応性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Xは原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基である。原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基の重合後除去もしくは転化の方法が数多く存在し、それらは当業者に知られていることに注意すべきである。それゆえ、本発明によるATRPを用いて調製されるポリマーとしては、Xが原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基であるもの、及び、原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基が重合後除去もしくは転化を受けたポリマー(すなわち、誘導化反応生成物)が挙げられる。ハロゲン末端基を含むポリマーは伝統的なアルキルハロゲン化物有機反応のホストにおいて利用できる。1つの例において、ラジカル源(AIBN又はCu(I)錯体)の存在下でのポリマーアルキルハロゲン化物への水素化トリブチルスズの付加によって、飽和水素末端ポリマーが生じる。別の例において、水素化トリブチルスズをアリルトリ−n−ブチルスタンナンで置き換えることにより、アリル末端基を有するポリマーを調製することができる。末端ハロゲンは、また、求核置換、フリーラジカル化学又はルイス酸によって触媒される求電子付加によって置換されて、様々なテレケリック誘導体、たとえば、幾つかを述べると、アルケン、アルキン、アルコール、チオール、アルカン、アジド、アミン、ホスホニウム又はエポキシ基を生じることができる。
【0011】
本発明による可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)法により調製される反応性セグメント化ブロックコポリマーは、下記の一般式(II)を有することができる。
−[(A)−[(B)−R (II)
【0012】
上式中、RはRAFT剤又はフリーラジカル開始剤のラジカル形成性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Rは連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントである。チオカルボニルチオ化学をベースとするRAFT剤は当業者によく知られており、そして、たとえば、キサンテート、トリチオカーボネート及びジチオエステルが挙げられる。連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントの重合後除去もしくは転化のための方法は数多く存在し、それらは当業者に知られていることに注意すべきである。それゆえ、本発明によるRAFT剤を用いて調製されるポリマーとしては、Rが連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントであるもの、及び、連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントが重合後除去もしくは転化されたポリマー(すなわち、誘導化反応生成物)が挙げられる。このような転化の1つの例は、チオカルボニルチオ基を水素で置換するためのフリーラジカル還元剤の使用である。その他として、末端基の熱分解、又は、アミノリシスによるチオカルボニルチオ基のチオール基への転化が挙げられる。様々なテレケリック誘導体、たとえば、幾つかを述べると、アルケン、アルキン、アルコール、チオール、アルカン、アジド、アミン、ホスホニウム又はエポキシ基を調製することができる。
【0013】
本発明による可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)法により調製される反応性セグメント化ブロックコポリマーは、下記の一般式(III)を有することができる。
−[(B)−[(A)−R −[(A)−[(B)−R
(III)
【0014】
上式中、RはRAFT剤又はフリーラジカル開始剤のラジカル形成性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Rはチオカルボニルチオ基である。
【0015】
一般式I、II及びIIIの各ポリマーについて、ブロック単位の順序は重要でなく、そして反応性セグメント化ブロックコポリマーは2つより多くのブロックを含んでよい。それゆえ、反応性セグメント化ブロックコポリマーはマルチブロックコポリマーであることができ、そして1つ以上のブロックの繰り返しを含むことができる。例として、下記の限定しない代表例を参照されたい。その各々は一般式I、II及びIIIの範囲に入ることが意図される。
(1)−(A)−(B)
(2)−(B)−(A)
(3)−(A)−(B)−(A)
【0016】
本発明において有用な反応性セグメント化ブロックコポリマーは、また、結合性又は親水性とは考えられないブロック、たとえば、ポリスチレン又はポリメチルメタクリレートのブロックを含むこともできる。ポリマー中の非結合性又は非親水性ブロックの存在は、本発明の、特許請求される反応性セグメント化ブロックコポリマー及び式I、II及びIIIの範囲に入るものと考えられる。
【0017】
表面変性されたメディカルデバイスを形成するための方法がここで提供され、その方法は、メディカルデバイスの少なくとも1つの表面上に反応官能性を備えた少なくとも1種の基を有するメディカルデバイスを提供すること、このメディカルデバイスの表面官能性を備えた上記の少なくとも1種の基と相補的である反応性を有する、親水性ブロック及び化学結合性単位ブロックを含む反応性セグメント化ブロックコポリマーを含む表面変性剤を提供すること、上記のメディカルデバイスの反応官能性を有する少なくとも1つの表面と、上記の表面変性剤とを接触させること、及び、上記のデバイスの表面と表面変性剤との間に共有結合を形成するのに適する反応条件にデバイスの表面と表面変性剤とを付し、表面変性したメディカルデバイスを形成することを含む。
【0018】
また、メディカルデバイスの少なくとも1つの表面上に反応官能性を備えた少なくとも1種の基を有するメディカルデバイス、及び、このメディカルデバイスの表面に適用された、化学結合性単位ブロック及び親水性ブロックを含む反応性セグメント化ブロックコポリマーを含み、それにより、メディカルデバイスの表面官能基と、化学結合単位ユニット及び親水性ブロックを含む1つ以上の反応性セグメント化ブロックコポリマーとの間の化学反応により、それらの間に共有結合を形成している、表面変性されたメディカルデバイスがここで提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1はセグメント化ブロックコポリマーを製造するために使用される原子移動ラジカル重合(ATRP)の模式図であり、ここで、ポリマーの1つの末端に化学結合性単位のオリゴマーブロックが存在し、次いで、大きな親水性ブロックが存在している。
【図2】本発明のセグメント化ブロックコポリマーの反応官能性を与えるために使用されうる様々なモノマーの構造式である。
【図3】どのようにRAFT重合を用いて官能性ドメインを有するブロックコポリマーを重合するかを示す反応図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
本発明は、一般に、反応性セグメント化ブロックコポリマーを含むコーティング溶液に関する。反応性セグメント化ブロックコポリマーを含む組成物はメディカルデバイスの製造において、表面に結合したコーティングを提供するのに有用である。好ましい実施形態において、本発明は、眼科レンズなどのメディカルデバイスの表面官能性と相補的である反応官能性を有する反応性セグメント化ブロックコポリマーに関する。用語「表面」は「少なくとも1つの完全な表面」に限定されないことが理解されるべきである。表面被覆物は表面官能性又は表面処理に有効であるために均一又は完全である必要はない。本発明の反応性セグメント化ブロックコポリマーはコンタクトレンズを含む眼科レンズに一般的に使用されているソフト材料及びハード材料の両方を含む生体適合性材料のためのコーティングとして有用である。
【0021】
本発明による原子移動ラジカル重合(ATRP)法により調製される反応性セグメント化ブロックコポリマーは、下記の一般式(I)を有することができる。
−[(A)−[(B)−X (I)
【0022】
上式中、Rは原子移動ラジカル重合のための開始剤として作用することができる部分の反応性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Xは原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基である。原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基の重合後除去もしくは転化の方法が数多く存在し、それらは当業者に知られていることに注意すべきである。それゆえ、本発明によるATRPを用いて調製されるポリマーとしては、Xが原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基であるもの、及び、原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基が重合後除去もしくは転化を受けたポリマー(すなわち、誘導化反応生成物)が挙げられる。ハロゲン末端基を含むポリマーは伝統的なアルキルハロゲン化物有機反応のホストにおいて利用できる。1つの例において、ラジカル源(AIBN又はCu(I)錯体)の存在下でのポリマーアルキルハロゲン化物への水素化トリブチルスズの付加によって、飽和水素末端ポリマーが生じる。別の例において、水素化トリブチルスズをアリルトリ−n−ブチルスタンナンで置き換えることにより、アリル末端基を有するポリマーを調製することができる。末端ハロゲンは、また、求核置換、フリーラジカル化学又はルイス酸によって触媒される求電子付加によって置換されて、様々なテレケリック誘導体、たとえば、幾つかを述べると、アルケン、アルキン、アルコール、チオール、アルカン、アジド、アミン、ホスホニウム又はエポキシ基を生じることができる。
【0023】
本発明による可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)法により調製される反応性セグメント化ブロックコポリマーは、下記の一般式(II)を有することができる。
−[(A)−[(B)−R (II)
【0024】
上式中、RはRAFT剤又はフリーラジカル開始剤のラジカル形成性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Rは連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントである。チオカルボニルチオ化学をベースとするRAFT剤は当業者によく知られており、そして、たとえば、キサンテート、トリチオカーボネート及びジチオエステルが挙げられる。連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントの重合後除去もしくは転化のための方法は数多く存在し、それらは当業者に知られていることに注意すべきである。それゆえ、本発明によるRAFT剤を用いて調製されるポリマーとしては、Rが連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントであるもの、及び、連鎖移動剤のチオカルボニルチオフラグメントが重合後除去もしくは転化されたポリマー(すなわち、誘導化反応生成物)が挙げられる。このような転化の1つの例は、チオカルボニルチオ基を水素で置換するためのフリーラジカル還元剤の使用である。その他として、末端基の熱分解、又は、アミノリシスによるチオカルボニルチオ基のチオール基への転化が挙げられる。様々なテレケリック誘導体、たとえば、幾つかを述べると、アルケン、アルキン、アルコール、チオール、アルカン、アジド、アミン、ホスホニウム又はエポキシ基を調製することができる。
【0025】
本発明による可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)法により調製される反応性セグメント化ブロックコポリマーは、下記の一般式(III)を有することができる。
−[(B)−[(A)−R −[(A)−[(B)−R
(III)
【0026】
上式中、RはRAFT剤又はフリーラジカル開始剤のラジカル形成性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Rはチオカルボニルチオ基である。
【0027】
一般式I、II及びIIIの各ポリマーについて、ブロック単位の順序は重要でなく、そして反応性セグメント化ブロックコポリマーは2つより多くのブロックを含んでよい。それゆえ、反応性セグメント化ブロックコポリマーはマルチブロックコポリマーであることができ、そして1つ以上のブロックの繰り返しを含むことができる。例として、下記の限定しない代表例を参照されたい。その各々は一般式I、II及びIIIの範囲に入ることが意図される。
(1)−(A)−(B)
(2)−(B)−(A)
(3)−(A)−(B)−(A)
【0028】
本発明において有用な反応性セグメント化ブロックコポリマーは、また、結合性又は親水性とは考えられないブロック、たとえば、ポリスチレン又はポリメチルメタクリレートのブロックを含むこともできる。ポリマー中の非結合性又は非親水性ブロックの存在は、本発明の、特許請求される反応性セグメント化ブロックコポリマー及び式I、II及びIIIの範囲に入るものと考えられる。
【0029】
本発明は相補的な官能性を使用することにより、コンタクトレンズなどのメディカルデバイスの表面変性を行うのに有用な材料を提供する。単純化の目的で、以下においてコンタクトレンズのみを参照するが、このような参照は限定することを意図しない。というのは、主題のコポリマーはコンタクトレンズに加えて、有水晶体眼内レンズ及び無水晶体眼内レンズ並びに角膜インプラントなどの他のメディカルデバイスの表面変性にも適するからである。コンタクトレンズ及びその他のバイオメディカルデバイスのポリマー材料の表面基は化学結合を形成するために使用され、すなわち、本発明の反応性セグメント化ブロックコポリマーと結合するために使用される。本発明における好ましい反応性セグメント化ブロックコポリマーはコーティングされるポリマー材料の具体的な表面基に基づいて選択される。本発明によると、表面変性のために選択される1種以上の反応性セグメント化ブロックコポリマーは基材の表面基に対して相補的反応性の化学官能性を有するべきである。このような相補的反応性の化学官能性によって、反応性セグメント化ブロックコポリマーと、基材の相補的表面基との間の化学反応が可能になり、それにより、それらの間に共有結合を形成することができる。このようにして、1種以上の反応性セグメント化ブロックコポリマーはコンタクトレンズなどのメディカルデバイスの表面に結合し、それにより、その表面変性が行われる。
【0030】
反応性セグメント化ブロックコポリマーは分子の所望の表面結合性を提供するために化学結合性単位ブロックを含む。化学結合性単位ブロックは様々であることができ、そして反応性セグメント化ブロックコポリマーの意図する使用に基づいて決定される。すなわち、反応性セグメント化ブロックコポリマーの化学結合性単位ブロックはデバイスの表面官能性に相補的である官能性を提供するように選択される。
【0031】
ブロックコポリマーの化学結合性単位モノマーの選択はデバイスの表面上の官能基によって決定される。たとえば、もし、デバイスの表面上の反応性分子がカルボン酸基を含むならば、グリシジル基含有モノマーは反応性セグメント化ブロックコポリマーの化学結合単位モノマーであることができる。もし、デバイスの表面上の反応性分子がヒドロキシ又はアミノ官能基を含むならば、イソシアネート基もしくはカルボニルクロリド基含有モノマーは反応性セグメント化ブロックコポリマーの化学結合性単位モノマーであることができる。デバイスの表面上の反応性基に相補的である化学結合性単位の官能性基含有モノマーの様々な適切な組み合わせは当業者に明らかであろう。たとえば、化学結合性単位ブロックはアミン、ヒドロキシル、ヒドラジン、ヒドラジド、チオール(求核性基)、カルボン酸、カルボン酸エステル(イミドエステルを含む)、オルトエステル、カーボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、エポキシ、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、ハロシラン、ホスホルアミデートから選ばれる部分を含むことができる。これらの基のより具体的な例としては、スクシンイミジルエステルもしくはカーボネート、イミダゾイルエステルもしくはカーボネート、ベンゾトリアゾールエステルもしくはカーボネート、p−ニトロフェニルカーボネート、ビニルスルホン、クロロエチルスルホン、ビニルピリジン、ピリジルジスルフィド、ヨードアセトアミド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレート及びトレシレートが挙げられる。また、他の活性化カルボン酸誘導体、ならびに、上記の部分のいずれかの水和物もしくは保護誘導体(たとえば、アルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール、チオアセタール)が挙げられる。好ましい求電子性基としては、スクシンイミジルカーボネート、スクシンイミジルエステル、マレイミド、ベンゾトリアゾールカーボネート、グリシジルエーテル、イミダゾイルエステル、p−ニトロフェニルカーボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド及びオルトピリジルジスルフィドが挙げられる。相補的な官能基の例を下記の表1に示す。
【0032】
【表1】

【0033】
反応性セグメント化ブロックコポリマーの化学結合性単位ブロックはオリゴマー又はポリマーであり、そしてコーティングされるメディカルデバイスの表面に適切な結合を提供するサイズである。それゆえ、式I、II及びIIIの変数mは1〜約1000であることができ、好ましくは1〜約100であり、最も好ましくは1〜約30である。
【0034】
化学結合単位に加えて、本発明の反応性セグメント化ブロックコポリマーは、相補的な官能性を有する基材にブロックコポリマーが共有結合したときに、良好な表面特性を示す親水性ドメインをも含むであろう。親水性ドメインは少なくとも1種の親水性モノマー、たとえば、HEMA、グリセリルメタクリレート、メタクリル酸(MAA)、アクリル酸(AA)、メタクリルアミド、アクリルアミド、N,N’−ジメチルメタクリルアミド又はN,N’−ジメチルアクリルアミド;それらのコポリマー;親水性プレポリマー、たとえば、エチレン系不飽和ポリ(アルキレンオキシド)、環状ラクタム、たとえば、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)又はそれらの誘導体を含むであろう。なおもさらなる例は親水性ビニルカーボネート又はビニルカルバメートモノマーである。親水性モノマーは非イオン性モノマーであることができ、たとえば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(メタ)アクリレート)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N,N’−ジメチルメタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド(DMA)、N−ビニル−2−ピロリドン(又は他のN−ビニルラクタム)、N−ビニルアセトアミド及びそれらの組み合わせである。親水性モノマーのなおもさらなる例は米国特許第5,070,215号明細書に開示されているビニルカーボネート及びビニルカルバメートモノマー、及び、米国特許第4,910,277号明細書に開示されている親水性オキサゾロンモノマーである。これらの特許の内容を参照により本明細書中に取り込む。親水性モノマーは、また、アニオン性モノマーであることもでき、たとえば、2−メタクリロイルオキシエチルスルホン塩である。アクリル酸及びメタクリル酸などから得られる置換アニオン性親水性モノマーであって、置換基が簡単な化学プロセスで除去されうるものも利用できる。このような置換アニオン性親水性モノマーの限定しない例としては、(メタ)アクリル酸のトリメチルシリルエステルが挙げられ、それは加水分解されて、アニオン性カルボキシル基を再生する。親水性モノマーは、また、カチオン性モノマーであることもでき、3−メタクリルアミドプロピル−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩、2−メタクリロイルオキシエチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム塩及びアミン含有モノマー、たとえば、3−メタクリルアミドプロピル−N,N−ジメチルアミンからなる群より選ばれる。他の適切な親水性モノマーは当業者に明らかであろう。
【0035】
親水性モノマーブロックは反応性セグメント化ブロックコポリマーの所望の表面コーティング特性を提供するようなサイズであろう。親水性オリゴマーもしくはポリマーブロックのサイズは、コーティングされる基材及び意図された使用によって様々であろう。それゆえ、式I、II又はIIIの変数nは1〜約1000であることができ、好ましくは約10〜約1000であり、より好ましくは約20〜約300である。
【0036】
原子移動ラジカル重合(ATRP)はセグメント化ブロックコポリマーを調製するために使用することができ、ここで、各々のブロック及び全体のポリマーの分子量は正確に制御されうる。図1に示すとおり、原子移動ラジカル重合(ATRP)はポリマーの1つの末端に化学結合性単位のブロックが存在し、次いで、大きな親水性ブロックが存在するセグメント化ブロックコポリマーを調製するために使用することができる。化学結合性単位ドメインを含むモノマー及び親水性ドメインを含むモノマーの付加の順序は重要でないことは理解されるべきである。多数のモノマーはポリマーの組み立てに利用可能である(たとえば、図2を参照されたい)。可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)もセグメント化ブロックコポリマーを調製するために使用することができ、ここで、各々のブロック及び全体のポリマーの分子量は正確に制御されうる(図3を参照されたい)。
【0037】
本発明の反応性セグメント化ブロックコポリマーは基材のコーティングを提供するのに有用である。本発明で有用な基材材料の例はKunzlerらの米国特許第5,908,906号明細書、Kunzlerらの同第5,714,557号明細書、Kunzlerらの同第5,710,302号明細書、Laiらの同第5,708,094号明細書、Bamburyらの同第5,616,757号明細書、Bamburyらの同第5,610,252号明細書、Laiの同第5,512,205号明細書、Laiの同第5,449,729号明細書、Kunzlerらの同第5,387,662号明細書、Laiの同第5,310,779号明細書及びKunzlerらの同第6,891,010号明細書に教示されており、それらの特許をあたかもその長さで示したようにして、参照により本明細書中に取り込む。
【0038】
本発明では、「ハード」及び「ソフト」コンタクトレンズの両方を含むメディカルデバイスとともに反応性セグメント化ブロックコポリマーを使用することが考慮されている。上記のとおり、本発明は様々な材料に応用可能である。ヒドロゲルは、一般によく知られたクラスの材料であり、それは平衡状態で水を含有する、水和され、架橋されたポリマー系を含む。ケイ素含有ヒドロゲルは含水率が約5質量%を超え、より一般的には約10質量%〜約80質量%である。このような材料は、通常、少なくとも1種のケイ素含有モノマー及び少なくとも1種の親水性モノマーを含む混合物を重合することにより調製される。通常、ケイ素含有モノマー又は親水性モノマーのいずれかが架橋剤として機能し(クロスリンカーは複数の重合性官能基を有するモノマーとして定義される)、又は、別個の架橋剤が使用されてもよい。ケイ素含有ヒドロゲルの形成における使用のための応用可能なケイ素含有モノマー単位は当業界においてよく知られており、そして多くの例は米国特許第4,136,250号明細書、同第4,153,641号明細書、同第4,740,533号明細書、同第5,034,461号明細書、同第5,070,215号明細書、同第5,260,000号明細書、同第5,310,779号明細書及び同第5,358,995号明細書に提供されている。
【0039】
応用可能なケイ素含有モノマー単位の例として、嵩高なポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。嵩高なポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの例は下記式IVで表される。
【0040】
【化1】

【0041】
上式中、Xは−O−又は−NR−であり、
各Rは独立に水素又はメチルであり、
各Rは独立に低級アルキル基、フェニル基又は下記式の基
【0042】
【化2】

【0043】
により表される基であり、ここで、各R’は独立に低級アルキル又はフェニル基であり、hは1〜10である。幾つかの好ましい嵩高モノマーはメタクリルオキシプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン又はトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレートであり、時折、TRISと呼ばれる。
【0044】
別のクラスの代表的なケイ素含有モノマーとして、ケイ素含有ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマー、たとえば、1,3−ビス[4−ビニルオキシカルボニルオキシ)ブチル]テトラメチル−ジシロキサン、3−(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート、3−(ビニルオキシカルボニルチオ)プロピル−[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート、t−ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート、トリメチルシリルエチルビニルカーボネート及びトリメチルシリルメチルビニルカーボネートが挙げられる。
【0045】
ケイ素含有ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマーの例は式Vで表される。
【0046】
【化3】

【0047】
上式中、Y’は−O−、−S−又は−NH−であり、
Siはケイ素含有有機基であり、
は水素又はメチルであり、
dは1、2、3又は4であり、そしてqは0又は1である。
【0048】
適切なケイ素含有有機基RSiとしては下記のものが挙げられる。
【0049】
【化4】

【0050】
上式中、R
【化5】

【0051】
であり、p’は1〜6であり、
は1〜6個の炭素原子を有するアルキル基又はフルオロアルキル基であり、
eは1〜200であり、n’は1、2、3又は4であり、そしてm’は0、1、2、3、4又は5である。
【0052】
式Vに含まれる特定の種の例は式VIで表される。
【化6】

【0053】
別のクラスのケイ素含有モノマーとしては、ポリウレタン−ポリシロキサンマクロモノマー(時折、プレポリマーとも呼ぶ)が挙げられ、それは伝統的なウレタンエラストマーと同様のハード−ソフト−ハードブロックを有することができる。そのモノマーはHEMAなどの親水性モノマーでエンドキャップされていてよい。このようなケイ素含有ウレタンの例はLai, Yu-Chin, “The Role of Bulky Polysiloxanylalkyl Methacrylates in Polyurethane-Polysiloxane Hydrogels,”Journal of Applied Polymer Science, Vol. 60, 1193-1199(1996)を含む様々な文献中に開示されている。国際公開WO96/31792号明細書はこのようなモノマーの例を開示しており、その内容の全体を参照により本明細書中に取り込む。ケイ素含有ウレタンモノマーのさらなる例は式VII及びVIIIによって表される。
【0054】
(VII) E(G)E’ 又は
(VIII) E(A)E’
【0055】
上式中、Dはアルキル二価基、アルキルシクロアルキル二価基、シクロアルキル二価基、アリール二価基又はアルキルアリール二価基であり、6〜30個の炭素原子を有し、
Gはアルキル二価基、シクロアルキル二価基、アルキルシクロアルキル二価基、アリール二価基又はアルキルアリール二価基であり、1〜40個の炭素原子を有し、そしてそれは、エーテル、チオ又はアミン結合を主鎖に含むことができ、
*はウレタン又はウレイド結合であり、
aは少なくとも1であり、
Aは式IXの二価ポリマー基であり、
【0056】
【化7】

【0057】
各Rは独立に1〜10個の炭素原子を有するアルキル又はフルオロ置換アルキルであり、それは炭素原子の間にエーテル結合を含むことができ、
m’は少なくとも1であり、
pは400〜10,000の部分分子量を提供する数であり、
各E及びE’は独立に式Xにより表される重合性不飽和有機基であり、
【0058】
【化8】

【0059】
上式中、Rは水素又はメチルであり、
は、水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基、又は、−CO−Y−R基であり、ここで、Yは−O−、−S−又は−NH−であり、
は1〜10個の炭素原子を有する二価のアルキレン基であり、
は1〜12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Xは−CO−又は−OCO−であり、
Zは−O−又は−NH−であり、
Arは6〜30個の炭素原子を有する芳香族基であり、
wは0〜6であり、xは0又は1であり、yは0又は1であり、zは0又は1である。
【0060】
ケイ素含有ウレタンモノマーのより具体的な例は下記式(XI)により表される。
【化9】

【0061】
上式中、mは少なくとも1であり、好ましくは3又は4であり、aは少なくとも1であり、好ましくは1であり、pは400〜10,000の部分分子量を提供する数であり、好ましくは少なくとも30であり、R10はイソシアネート基を取り除いた後のジイソシアネートの二価基であり、たとえば、イソホロンジイソシアネートの二価基であり、各E”は下記の基である。
【0062】
【化10】

【0063】
好ましいケイ素含有ヒドロゲル材料は(共重合されるバルクモノマー混合物中に)5〜50質量%、好ましくは10〜25質量%の1種以上のケイ素含有マクロモノマー、5〜75質量%、好ましくは30〜60質量%の1種以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー、及び、10〜50質量%、好ましくは20〜40質量%の親水性モノマーを含む。一般に、ケイ素含有マクロモノマーは分子の2つ以上の末端で不飽和基によってキャッピングされたポリ(オルガノシロキサン)である。上記の構造式の末端基に加えて、Deichertらの米国特許第4,153,641号明細書はアクリルオキシ又はメタクリルオキシを含む追加の不飽和基を開示している。Laiの米国特許第5,512,205号明細書、同第5,449,729号明細書及び同第5,310,779号明細書に教示されるようなフマレート含有材料も本発明による有用な基材である。好ましくは、シランマクロモノマーは、ケイ素含有ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマー又は1つ以上のハード−ソフト−ハードブロックを有しかつ親水性モノマーでエンドキャップされているポリウレタン−ポリシロキサンである。
【0064】
適切な親水性モノマーは、本発明において有用なケイ素含有ヒドロゲル材料などのヒドロゲルを形成する。有用なモノマーの例としては、ジメチルアクリルアミド、ジメチルメタクリルアミドなどのアミド、n−ビニル−2−ピロリドンなどの環状ラクタム及び重合性基で官能化されたポリ(アルケングリコール)が挙げられる。有用な官能化ポリ(アルケングリコール)の例としては、モノメタクリレート又はジメタクリレートエンドキャップを含む様々な鎖長のポリ(ジエチレングリコール)が挙げられる。好ましい実施形態において、ポリ(アルケングリコール)ポリマーは少なくとも2種のアルケングリコールモノマー単位を含む。なおもさらなる例は米国特許第5,070,215号明細書に開示されている親水性ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメートモノマー及び米国特許第4,910,277号明細書に開示されている親水性オキサゾロンである。他の適切な親水性モノマーは当業者に明らかであろう。
【0065】
デバイス形成用添加剤及びコモノマー
モノマーミックスは、必要なときに、本発明の目的及び効果を損なわない範囲で、酸化防止剤、着色剤、紫外線吸収剤及び潤滑剤などの様々な添加剤を含んでよい。
【0066】
モノマーミックスは、得られるポリマー成形品の最終使用などによって、1種又は少なくとも2種の上記のコモノマー及びオリゴマーを用いて、そして必要な場合には、1種以上の架橋剤を用いて調製されうる。
【0067】
ポリマー成形品が、たとえば、医療品、特にコンタクトレンズである場合には、高い酸素透過性を有するコンタクトレンズを得るためには、モノマーミックスは1種以上のケイ素化合物、たとえば、シロキサニル(メタ)アクリレート、シロキサニル(メタ)アクリルアミド及びケイ素含有オリゴマーから適切に調製される。
【0068】
モノマーミックスは、架橋剤、内部湿潤剤、親水性モノマー単位、強化剤及び当業界でよく知られているその他の成分などの追加の成分を含んでよい。
【0069】
必須ではないが、モノマーミックスは強化剤を含むことができ、好ましくは、約80質量%未満の量、たとえば、約5〜約80質量%、より典型的には約20〜約60質量%の量で含む。適切な強化剤の例は米国特許第4,327,203号明細書に記載されている。これらの強化剤としては、シクロアルキルアクリレートもしくはシクロアルキルメタクリレート、たとえば、メチルアクリレート及びメチルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、イソプロピルシクロペンチルアクリレート、t−ペンチルシクロヘプチルメタクリレート、t−ブチルシクロヘキシルアクリレート、イソヘキシルシクロペンチルアクリレート及びメチルイソペンチルシクロオクチルアクリレートが挙げられる。適切な強化剤の追加の例は、米国特許第4,355,147号明細書に記載されている。この文献は多環式アクリレートもしくはメタクリレート、たとえば、イソボルニルアクリレート及びイソボルニルメタクリレート、ジシクロペンタジエニルアクリレート及びジシクロペンタジエニルメタクリレート、アダマンチルアクリレート及びアダマンチルメタクリレート、ならびに、イソピノカンフィルアクリレート及びイソピノカンフィルメタクリレートを記載している。強化剤のさらなる例は、米国特許第5,270,418号明細書に提供されている。この文献は枝分かれ鎖アルキルヒドロキシルシクロアルキルアクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミドを記載している。代表的な例としては、4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート(TBE)、4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロペンチルメタクリレート、メタクリルオキシアミノ−4−t−ブチル−2−ヒドロキシシクロヘキサン、6−イソペンチル−3−ヒドロキシシクロヘキシルメタクリレート及びメタクリルオキシアミノ−2−イソヘキシル−5−ヒドロキシシクロペンタンが挙げられる。
【0070】
特に、コンタクトレンズに関し、ケイ素含有ヒドロゲルの形成に使用される特定のモノマーのフッ素化は、米国特許第4,954,587号明細書、同第5,079,319号明細書、同第5,010,141号明細書及び同第6,891,010号明細書に記載されているとおり、それにより製造されるコンタクトレンズ上の付着物の蓄積を低減することが示されている。さらに、特定のフッ素化側基、すなわち、−(CF)−Hを有するケイ素含有モノマーを使用すると、米国特許第5,387,662号明細書及び同第5,321,108号明細書に記載されているとおり、親水性モノマー単位とケイ素含有モノマー単位との間の相容性が改良されることが判っている。
【0071】
上記のとおり、表面構造及び組成は固体材料の多くの物理的特性及び最終使用を決定する。湿潤性、摩擦性及び付着性又は潤滑性などの特性は表面特性に大きく影響を受ける。表面特性の変更は生体適合性が特に問題となる生体技術用途において特に重要である。このように、光学的に透明で、親水性の表面フィルムを備えたケイ素含有ヒドロゲルコンタクトレンズであって、湿潤性が改良されているとともに、ヒトの目に長時間にわたって使用することが一般に可能であるケイ素含有ヒドロゲルコンタクトレンズを提供することが望まれている。長時間装着のためのケイ素含有ヒドロゲルレンズの場合には、光学的に透明な表面フィルムを備えた改良されたケイ素含有ヒドロゲルコンタクトレンズであって、脂質及び微生物に対する挙動が改良されているとともに、ヒトの目に長時間にわたって使用することが一般に可能である、改良されたケイ素含有ヒドロゲルコンタクトレンズを提供することがさらに望まれている。このような表面処理されたレンズは実使用で快い装着感があり、角膜に対する刺激作用又は他の悪影響を及ぼすことなくレンズの長時間装着が可能になる。
【0072】
これらの表面改良コーティングを眼内レンズ材料などのインプラント可能なメディカルデバイスに適用することも、インプラントされたデバイスに対するレンズ上皮細胞の固着を低減しそして眼内レンズがインサーターをとおして目の中に通るときの摩擦を低減するために望ましい。これらの表面改良コーティングを眼内レンズインサーターに適用することも望ましい。
【0073】
本発明は、ポリマーデバイスの表面処理のために有用である。表面処理はポリマー基材表面の反応性官能基と、反応性セグメント化ブロックコポリマーの相補的反応性基とを反応させることにより、ポリマーメディカルデバイスの表面に反応性セグメント化ブロックコポリマーを結合することを含む。
【0074】
上記に示したとおり、本発明のセグメント化ブロックコポリマーによるコンタクトレンズの表面変性のために、コンタクトレンズ材料(すなわち、基材)の表面と、表面変性処理ポリマー(表面変性剤)として使用される反応性セグメント化ブロックコポリマーの化学結合性単位ブロックとの間に相補的官能性が導入される。たとえば、表面変性剤がエポキシ官能基を有するならば、処理されるコンタクトレンズ材料はその表面変性剤の官能基と反応するであろう相補的な官能性を有する残基を有しなければならない。このような場合に、コンタクトレンズ材料は、表面変性剤のエポキシド官能基と反応するビス−α,ω−フマリルブチルポリジメチルシロキサン二酸などの反応性プレポリマーを含むことができる。同様に、もしコンタクトレンズがエポキシド官能性を提供する残基を有する材料から形成されるならば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート官能基を含む表面変性剤を本発明による表面変性のために用いることができる。このような相補的化学官能性により、コンタクトレンズの表面と、1種以上の表面変性剤の反応性基との間に結合を生じさせることができる。この官能基間の結合でその間に共有結合を形成する。たとえば、表面ヒドロキシル官能基を有するプレポリマーを含むコンタクトレンズは、好ましくは、カルボン酸官能基、イソシアネート官能基又はエポキシ官能基を含む表面変性剤を用いて表面変性がなされる。同様に、表面カルボン酸基を有するコンタクトレンズは、好ましくは、エポキシ官能基を提供するグリシジルメタクリレート(GMA)モノマー単位を含む表面変性剤を用いて表面変性がなされる。表面反応性官能基を含むコンタクトレンズと反応性表面変性剤との反応は当業者に知られた条件下に行われる。
【0075】
基材材料に反応性基が存在しない場合には、反応性基を導入することができる。たとえば、酸素プラズマ、アンモニア−ブタジエン−アンモニア(ABA)処理及び水素−アンモニア−ブタジエン−アンモニア(HABA)処理などの表面活性化処理を用いることにより行われる。基材材料のプラズマ処理は知られておりそしてValintらの米国特許第6,193,369号明細書、Valintらの同第6,213,604号明細書及びGrobe, IIIの同第6,550,915号明細書に記載されている。
【0076】
基材をコーティングする方法として、表面変性剤を含む溶液中に基材をディップコーティングすることが挙げられる。表面変性剤を含む溶液は溶剤中に実質的に表面変性剤を含むか、又は、クリーニング材及び抽出材などの他の材料を含んでもよい。他の方法として、表面変性剤によりデバイスをスプレイコーティングすることが挙げられる。共有結合反応を生じさせるために、適切な触媒、たとえば、縮合触媒を用いることが必要な場合がある。又は、基材及び他の表面変性剤はオートクレーブ条件に付されることもできる。特定の実施形態において、基材及び表面変性剤はコーティングされた基材を含むパッケージ材料中でオートクレーブ処理されてよい。いったん、基材と表面変性剤との間の反応が起こったら、残存している表面変性剤を実質的に除去しそして基材パッケージ材料にパッケージ溶液を添加する。その後、通常行うとおりにシーリング及び他の処理工程を行う。又は、表面変性剤は貯蔵の間及び基材を最終使用者に輸送する間に基材パッケージ材料中に残されてもよい。
【0077】
以下にコーティングの一般法を記載する。市販のSofLens59(登録商標)コンタクトレンズなどのメディカルデバイスをパッケージングから取り出し、そしてポリマー溶液中に入れる前に少なくとも15分間、精製水中に浸漬する。ここに開示している溶液の量は、メディカルデバイスのサイズに適合するように特定の環境下に調節されうることが当業者に理解されるべきである。ガラスバイアルにラベルを付け、約4mlのポリマー溶液で満たし、そして各バイアル中にレンズを入れる。2種のポリマー溶液をコーティングのために用いる場合には、それらをバイアル中に入れる直前に混合する。バイアルをシリコーンストッパー及びひだ付きアルミニウムキャップでキャッピングし、その後、オートクレーブ中に30分サイクルで1回入れる。処理されたレンズを最低で3時間冷却させ、その後、バイアルから取り出し、そして脱イオン水で少なくとも3回リンスする。その後、リンスしたレンズを、4mlのホウ酸塩緩衝塩溶液(細菌付着試験を行うサンプルについてはリン酸塩)を含む新規のバイアル中に入れそして無菌化のために30分サイクルで1回オートクレーブ処理する。
【0078】
他のヒドロゲル材料を含むコンタクトレンズなどの他のタイプのコンタクトレンズは、上述のとおりにコーティングポリマーによって処理されうる。1つの実施形態において、米国特許第5,260,000号明細書(参照により本明細書中に取り込む)に開示されている、バラフィルコンA(Balafilcon A)ヒドロゲル材料を含むPure Vision (登録商標)コンタクトレンズは上記のとおりにコーティングポリマーで表面処理されている(Pure Vision (登録商標)コンタクトレンズはBausch and Lomb Incorporated, Rochester, New Yorkから入手可能である )。1つの態様において、Pure Vision (登録商標)コンタクトレンズを最初に空気及びアンモニアを含むチャンバー中で発生されるプラズマ放電で処理し、それにより、反応性表面官能基の数を増加させた。表面変性のための溶液はセグメント化ブロックポリ(DMA−コ−GMA)及びポリ(アクリル酸)を含んだ。
【0079】
シリコーンヒドロゲルコンタクトレンズは、コンタクトレンズを保持するためのレセプタクル部分及び無菌パッケージ溶液を含む容器中にパッケージされている。容器の例は従来のコンタクトレンズブリスターパッケージである。この溶液中に浸漬されたコンタクトレンズを含むこのレセプタクルは、たとえば、レセプタクル上方でパッケージに蓋材(lidstock)をシールすることにより、密閉してにシールされる。たとえば、蓋材(lidstock)はレセプタクルの周縁のまわりでシールされる。
【0080】
パッケージレセプタクル中にシールされている間に溶液及びコンタクトレンズは無菌化される。無菌化技術の例としては、溶液及びコンタクトレンズを熱エネルギー、マイクロ波、γ線又は紫外線に付すことが挙げられる。特定の例では、溶液及びコンタクトレンズをパッケージ容器内でシールしている間に、オートクレーブなどによって、少なくとも100℃、より好ましくは少なくとも120℃の温度に加熱することを用いる。
【0081】
パッケージ溶液はパッケージ溶液の合計質量を基準として、好ましくは0.02〜5.0質量%の量の相互作用性セグメント化ブロックコポリマーを含む水溶液である。相互作用セグメント化ブロックコポリマーの特定の量は、基材及びコポリマーによって様々であろうが、一般には、相互作用セグメント化ブロックコポリマーはこの範囲の量で存在するであろう。
【0082】
パッケージ溶液は好ましくはpHが約6.0〜約8.0であり、より好ましくは約6.5〜約7.8であり、そして最も好ましくは6.7〜7.7である。適切な緩衝剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、Tris)、ビス-Tris、ビス-Trisプロパン、ボレート、シトレート、ホスフェート、ビカーボネート、アミノ酸及びそれらの混合物が挙げられる。特定の緩衝剤の例としては、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、ビス-Tris、Bis-Trisプロパン及び重炭酸ナトリウムが挙げられる。存在するならば、緩衝剤は一般に約0.05〜2.5質量%の範囲の量、そして好ましくは0.1〜1.5質量%の範囲の量で使用されるであろう。ある相互作用性界面活性セグメント化ブロックコポリマーは緩衝剤として作用し、そして所望ならば、追加の緩衝剤が使用されてよい。安定化は添付の実施例に示すとおり、pH依存性であることが判った。
【0083】
パッケージ溶液は、場合により緩衝剤の形で、浸透圧調節剤をさらに含むことができ、その浸透圧調節剤は重量オスモル濃度が約200〜約400mOsm/kg、より好ましくは約250〜350mOsm/kgである等張性もしくは近等張性溶液を提供するためのものである。適切な浸透圧調節剤の例としては、塩化ナトリウム及び塩化カリウム、デキストロース、グリセリン、塩化カルシウム及び塩化マグネシウムが挙げられる。存在する場合には、これらの浸透圧調節剤は、一般に約0.01〜2.5質量%の範囲で、そして好ましくは約0.2〜約1.5質量%の範囲の量で使用されるであろう。
【0084】
場合により、パッケージ溶液は抗微生物剤を含むことができるが、溶液はこのような薬剤を含まないことが好ましい。
【0085】
本発明の特定の実施形態において有用な反応性セグメント化ブロックコポリマーは、当該技術分野においてよく知られた合成法及び下記の実施例に開示される方法によって調製されうる。
【実施例】
【0086】
例A NVP−b−GVCコポリマーの合成
AIBN(46mg、2.82×10−4モル)を、磁気攪拌棒を装備した100mLのシュレンクフラスコに添加した。このフラスコに、少量のジオキサン中に溶解させた586mg(2.82×10−4)のエチル−α−(O−エチルキサンチル)プロピオネート(EEXP)を添加した。ジオキサン(15ml)及びN−ビニルピロリドン(NVP)[15ml、0.141モル]をシュレンクフラスコに添加し、それをシールしそしてNで30分間パージした。フラスコをオイルバス(60℃)に23時間入れた。室温に冷却した後に、20mlのTHFをフラスコに添加し、反応物をジエチルエーテル中に沈殿させた。沈殿物をろ過により分離し、そして真空下に乾燥し、10.53gの白色固形分(PVPマクロRAFT剤)を生じた。
【0087】
第二の結合性ブロック(GVC)をPVPマクロRAFT剤に第二の反応において添加した。2gのPVPマクロRAFT剤(5Kモル質量と仮定して約4.0×10−4モル)を4mlの1,4−ジオキサン及び攪拌棒とともに100mLシュレンクフラスコに添加した。1.136g(2.82×10−4モル)のグリシジルビニルカルバメート(N−ビニル)及び20mgのAIBN(1.22×10−4モル)を、その後、フラスコに添加し、それをシールしそしてNで30分間パージした。粘性混合物をオイルバス(60℃)に22.5時間入れた。反応物を室温に冷却し、そして生成物をジエチルエーテル中に沈殿させる前に5mlのTHFをフラスコに添加した。沈殿物をろ過し、そして25℃で真空下に乾燥させ、2.44gの単離生成物を得た。*注:グリシジルビニルカルバメートはグリシドールとビニルイソシアネートとの反応により得られる生成物である。
【0088】
PVPマクロRAFT剤及びNVPとGVCとのブロックコポリマーの両方をプロトンNMR(CDCl)及びGPCによって特性化し、そしてデータはPVP鎖の末端にGVCブロックを取り込んでいることを支持している。GPCはGVCブロックの付加の後により短い時間(より高いMw)へと溶離ピークがシフトしたことを示している。さらに、NMRスペクトルは、PVPマクロRAFT剤のスペクトルに存在しない2.65ppm及び2.85ppmに存在するグリシジル基についてのピークを示す。NMRスペクトルの積分はPVP:PGVCのモル比が約7:1であることを示す。
【0089】
例B DMA−b−GMAコポリマーの合成
50mlシュレンクフラスコ中に353mg(0.97ミリモル)のS−1−ドデシル−S−(α,α’−ジメチル−α”−酢酸)トリチオカーボネート及び33mgのAIBNを計量した。10ml(97ミリモル)のN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)及び20mlのテトラヒドロフラン(THF)をフラスコに添加し、セプタムでフラスコをシールし、その後、アルゴンでパージし、脱酸素を30分間行った。フラスコを50℃のオイルバス中に4.5時間入れた。別個の容器において、2.0ml(14.66ミリモル)のグリシジルメタクリレート(GMA)をアルゴンで30分間バブリングし、その後、4.5時間後にフラスコに添加した。*注:GMA添加の直前に小アリコートをフラスコから取り出し、そしてジエチルエーテル中で沈殿させた。反応をGMA添加の15時間後(19.5時間の総反応時間)で止めた。最終生成物をTHF中に溶解させそしてジエチルエーテル中に沈殿させた。
【0090】
第一の沈殿物及び、DMA及びGMAのブロックコポリマーの両方を、プロトンNMR(CDCl)及びGPCによって特性化した。GPCはGMAブロックの付加の後により短い時間(より高いMw)へと溶離ピークがシフトしたことを示している。さらに、ブロックコポリマーのNMRスペクトルは、3.7ppm及び4.3ppmにグリシジルメタクリレートに起因するピークを示す。
*注:この重合により、ブロックコポリマー、PDMA−ブロック−(PGMA−コ−PDMA)が生じ、ここで、第二のブロックは実際に、GMAと、GMAの付加の時には重合しなかった残りのDMAとの統計共重合体である。第二の「ブロック」は、それゆえ、組成的に不均一である。しかしながら、このモノマー対の反応性比からして(rDMA約0.5、rGMA約2.5で、GMA及びMMAが同様に挙動すると仮定する)、GMAは第二の「ブロック」に優先的に取り込まれるはずである。第二のブロックとして統計学的共重合又は組成的に不均一なブロックを生じる重合でも、本発明による反応性セグメント化ブロックコポリマーであると考えられる。
【0091】
さらに、DMAモノマーの残りの量をGCによってモニターすることができ、そして第二のモノマーの付加は反応中のDMAのすべてが消費された後に起こることができる。
【0092】
例C:末端基の除去
RAFT末端基を除去するために、4.0gの例Bからのコポリマー(DMA−b−GMA)を丸底フラスコ中で15mLのジオキサン中に溶解させた。このフラスコに、250マイクロリットルのトリス(トリメチルシリル)シラン及び65.8gのAIBNを添加した。溶液を窒素で30分間スパージし、その後、80℃で12時間窒素ブランケット下で加熱した。冷却した溶液を、ジエチルエーテル中に滴下して添加することで沈殿させた。この白色固形分を真空ろ過で回収し、そして室温で真空乾燥した。トリチオカーボネート末端基の開裂は生成物の黄色が消失したこと及びプロトンNMR中のドデシル共鳴が消失したことで証明された。
【0093】
例D:各ブロックのMwが様々であるGMA−b−DMAコポリマーのマトリックスの合成
【表2】

【0094】
*すべての反応に約33mgのAIBNを添加した。
*注:すべての反応を上記の表に示す量を用いて同様に行った。
反応2748−114は使用される手順の例として下記に記載される。
250ml丸底フラスコ中に350mg(0.97ミリモル)のS−1−ドデシル−S−(α,α’−ジメチル−α”−酢酸)トリチオカーボネート及び33mgのAIBNを計量した。20ml(194ミリモル)のN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)及び60mlのジオキサンをフラスコに添加し、セプタムでフラスコをシールし、その後、アルゴンでパージし、脱酸素を30分間行った。フラスコをオイルバス(50℃)中に6.0時間入れた。別個の容器において、2.0ml(14.66ミリモル)のグリシジルメタクリレート(GMA)をアルゴンで30分間バブリングし、その後、6.0時間後にフラスコに添加した。*注:GMA添加の直前に小アリコートをフラスコから取り出し、そしてジエチルエーテル中で沈殿させた。反応をGMA添加の15時間後(19.5時間の総反応時間)で止めた。最終生成物を反応混合物からジエチルエーテル中に沈殿させた。
【0095】
第一の沈殿物及びDMAとGMAとのブロックコポリマーの両方を、プロトンNMR(CDCl)及びGPCによって特性化した。GPCはGMAブロックの付加の後により短い時間(より高いMw)へと溶離ピークがシフトしたことを示している。さらに、ブロックコポリマーのNMRスペクトルは、3.7ppm及び4.3ppmにグリシジルメタクリレートに起因するピークを示す。DMFを溶離剤として用い、PMMA標品及びPVP標品の両方を検量剤として用いたこれらのポリマーのGPCデータを下記に示す。Mwの傾向は同じであるが、PMMA標品はMwがポリDMAに対して理論的に期待される値にずっと近いことを示す。
【0096】
【表3】

【0097】
例E:従来のフリーラジカル重合を用いた比較例としてのDMA−r−GMAのランダムコポリマーの合成
【表4】

【0098】
*注:GPCデータは溶離剤としてDMFを用い、対PMMA標品で報告する。
上記の表に示す量を用いて同様にして両方の反応を行った。反応2748−123Aを、用いた手順の例として下記に記載する。20mlのDMA及び2.94mlのGMAを0.5L丸底フラスコに添加した。46mgのAIBN及び200mlのジオキサンを添加し、その後、反応混合物をとおしてアルゴンを1時間バブリングし、溶解酸素を除去した。その後、丸底フラスコを64℃に設定されたオイルバス中に入るように下げ、重合を48時間進行させた。その後、フラスコをオイルバスから取り出し、そしてジエチルエーテル中に滴下して加えることで生成物を沈殿させた。沈殿したポリマーをろ過で分離しそして真空炉内で室温で乾燥させた。
【0099】
DMA及びGMAのランダムコポリマーをプロトンNMR(CDCl)及びGPCによって特性化した。DMFを溶離剤として用いたGPCデータを上記の表に示し、そしてこれらのサンプルの両方のMwは例Dにおいて詳述したRAFT重合したものよりもかなり大きかったことを示している。さらに、ランダムコポリマーのNMRスペクトルは3.7ppm及び4.3ppmでグリシドールメタクリレートに起因するピークを示した。
【0100】
ランダム重合したサンプルのDMA対GMAのモル比は例DにおいてRAFT重合によって生成されたもののモル比とほぼ同一であるように選択した。ランダムのサンプルについて、2つのポリマーはDMA(90)−r−GMA(10)[2748−123A]及びDMA(85)−r−GMA(15)[2748−123B]であった。*各モノマーのモル%は括弧内に与えている。
【0101】
例F:シリコーンヒドロゲル配合物のコーティング
下記に示す2種のシリコーン含有モノマー(M2D39+及びM1−MCR−C12)、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(TRIS)、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、紫外線遮断性モノマー(SAモノマー)及びAIBNを含むカチオン性シリコーンヒドロゲル配合物のコンタクトレンズを調製した。この基材に存在する「反応性ハンドル」はHEMAの−OH基であり、それは配合物中に18.6部の量で存在した。レンズ配合物を、2つのポリプロピレン成形型の間で110℃で4時間熱硬化させ、成形型から取り出し、そしてIPA中で4時間抽出し、その後、脱イオン水に移した。
【0102】
【化11】

【0103】
例Dからのサンプル2748−118、及び、例Eからのサンプル2748−123A及び2748−123Bを用いてコーティング溶液を調製した。典型的なコーティング実験において、上記で調製したレンズをポリプロピレン(PP)ブリスター中に入れ、そのブリスターは、pH=7.2のトリズマ(Trizma)緩衝剤中に溶解した主題のポリマーの250ppm(w/v)溶液3.8mLを含んでいた。コーティングポリマーを含まない対照ロットも製造した。レンズブリスターをシールしそして121℃で30分間オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理の後に、レンズをブリスターパッケージから取り出し、精製水中で24時間リンスし、そして表面をX−線光電子分光測定法(XPS)を用いて分析し、表面の元素組成及び静的接触角を決定した。表面データを下記の表に示す。
【0104】
【表5】

【0105】
XPSデータから判るように、反応性セグメント化ブロックコポリマー2748−118はレンズの表面においてケイ素(Si2p)の最も大きな減少及び窒素(N1s)の最も大きな増加をもたらす。これは、このGMA−b−DMA反応性セグメント化ブロックコポリマーがレンズ表面と反応するのに効率的でレンズ基材をコーティングするのに効率的であることを示す。さらに、ブロックコポリマー2748−118の静的接触角は対照よりも低く、また、いずれのランダムコポリマーよりも低く、このことはレンズに結合した親水性の反応性セグメント化ブロックコポリマーの量がより多いことも示唆している。
【0106】
XPSデータをPhysical Electronics Quantera SXM(走査X−線マイクロプローブ)に回収した。サンプルの獲得は1400ミクロン×100ミクロン分析スポットをラスターした。すべての分析の間に2重ビーム中性化(イオン及び電子)を用いた。機器のベース圧力は5×10−10トルであり、そして操作の間に、圧力は1×10−7トル以下であった。各試料を低解像度調査スペクトル(0〜1100eV)を用いて分析して、サンプル表面上に存在する元素を特定した。元素組成の定量化は、光電子ピーク領域の積分によって行った。分析器送信、光電子断面及び源角度補正を考慮に入れて、正確な原子濃度値を与えた。
【0107】
各ロットからの3つのレンズを、HPLCグレードの水を含むガラスバイアルに入れ、そしてシェーカー上に24時間置き、未結合のコーティングポリマーを濯ぎ落とした。その時間の後に、サンプルを無菌ペトリ皿に入れ、そしてHPLCグレードの水中で15分間リンスした。その後、レンズをきれいな無菌メス、きれいなピンセット及びケイ素不含ラテックス手袋を用いて4等分にスライスした。XPS分析のために1/4部分をきれいな金属マスクを用いて、3つの前方側及び3つの後方側を上に向けて、きれいな金属平板上に置いた。サンプルを窒素乾燥ボックス中に一晩入れ、その後、分光分析計に導入した。
【0108】
接触角分析では、サンプルをきれいなスライドガラス上に載せ、そして窒素乾燥ボックス中で一晩乾燥させた。脱水したレンズ上で接触角を各サンプル上の2点で測定した。測定に用いた機器はAST Products Video Contact Angle System (VCA) 2500XEであった。この機器は低出力顕微鏡を用い、それはシャープに解像された水滴の画像を生成し、その画像をコンピュータスクリーン上に即座にキャプチャーする。HPLC水をVCA装置のマイクロシリンジに吸い上げ、そして0.6μlの液滴をシリンジからサンプルに出す。液滴の周囲に沿って3から5つのマーカーを配置することにより接触角を計算する。ソフトウェアは液滴の周囲を示す曲線を計算し、そして接触角を記録する。右と左の両方の接触角を各測定について報告する。上記の表に両方の平均を報告している。
【0109】
例G:二官能トリチオカーボネートを用いたDMA−b−GMAコポリマーの合成
353mgのS,S’−ビス(α,α’−ジメチル−α”−酢酸)トリチオカーボネート及び33mgのAIBNを50mlシュレンクフラスコに計量する。10mlのN,N−ジメチルアクリルアミド(DMA)及び20mlのテトラヒドロフラン(THF)をフラスコに添加する。フラスコをセプタムでシールしそしてアルゴンでパージし、30分間脱酸素する。フラスコを50℃のオイルバスに4.5時間入れる。別個の容器において、2.0mlのグリシジルメタクリレート(GMA)をアルゴンで30分間バブリングし、その後、4.5時間後にフラスコに添加する。GMAの添加から15時間後に反応を止め、そして最終生成物をジエチルエーテル中に沈殿させる。
【0110】
例H:様々な緩衝剤中の幾つかのレンズ基材上のコーティング
下記の例は様々な基材が本発明において示すポリマーによって処理されうることを示すことが意図される。この例で用いた3つのレンズ材料は、この例の目的でRD−1881と指定することとする例Fで詳述したシリコーンヒドロゲルと、市販のレンズ材料ポリマコン(SoftLens 38(登録商標))及びバラフィルコンA(balafilcon A) (Pure Vision (登録商標))である。シリコーンヒドロゲル及びポリマコンは本発明に使用されるポリマーのための反応性ハンドルとして基材中に−OH基を含み、そしてバラフィルコンAは基材中に−COOH基を含む。
【0111】
典型的なコーティング実験において、下記の表に示すレンズをポリプロピレン(PP)ブリスター中に入れ、そのブリスターは、pH=7.2のBBS緩衝剤又はトリズマ(TRIZMA)緩衝剤中に溶解した主題のポリマーの250ppm〜2000ppm(w/v)溶液3.8mLを含んでいた。コーティングポリマーを含まない対照ロットも製造した。レンズブリスターをシールしそして121℃で30分間オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理の後に、レンズをブリスターパッケージから取り出し、精製水中で24時間リンスし、そして表面をX−線光電子分光測定法(XPS)を用いて分析し、表面の元素組成を決定した。XPSデータを下記の表に示す。
【0112】
【表6】

【0113】
上記の表中のサンプルB、C、D及びFは、緩衝剤中に溶解した、1000ppmの例Dからの2673−208を含む。
サンプルGはpH7.2のBBS中に溶解した2000ppmの2673−208を含む。
サンプルHはpH7.2のTRIZMA緩衝剤中に溶解した、500ppmの2673−208を含む。
サンプルI及びMはpH7.2のTRIZMA緩衝剤中に溶解した、250ppmの2673−208を含む。
サンプルKは例Aにおいて製造した1000ppmのポリマーを含む。
【0114】
XPSデータから判るように、反応性セグメント化ブロックコポリマー2673−208は様々な基材をコーティングするために使用することができる。サンプルA〜Dにおいて、RD−1881レンズを、異なる緩衝剤中に1000ppmのDMA−b−GMAコポリマー(2673−208)を含む溶液で処理する。すべての緩衝剤は、コポリマーで処理したときに、レンズの表面において窒素の増加があり、また、ケイ素濃度の減少があることを示すが、最も大きなケイ素の減少はエポキシド含有ポリマーとともにTRIZMA又はMOPS緩衝剤のいずれかを用いたときに起こる。これらの緩衝剤は、これらのポリマーの反応を改良するのに好ましい。サンプルE及びFは、ポリマコンがこれらの反応性セグメント化ブロックコポリマーで処理されうることを示し、そのことは処理されたレンズの表面で窒素が増加しそして酸素が減少していることから示される。このことはポリDMA含有コポリマーがレンズの表面で結合していることとも一貫している。サンプルG、H及びIは緩衝溶液中のコポリマーの濃度の研究の一部を構成し、かなり低い濃度(250ppm)まで低くすることができることを示し、これらのコポリマーによって表面ケイ素の有意な減少がなおも得られることを示す。サンプルJ及びKはポリマコンレンズであり、このポリマコンレンズはPVP−b−GVCコポリマー(例A)で処理したレンズが窒素の増加及び酸素の減少を示すことを示し、それも、ポリPVP含有コポリマーがレンズ表面で結合していることと一貫する。最後に、例L及びMにおいて、非プラズマ処理バラフィルコンAレンズはGMA−b−DMAコポリマー(2673−208)で処理され、そしてケイ素の実質的な減少ならびに炭素及び窒素の増加を示し、ポリマーが結合していることを示す。XPS分析及びサンプル調製は例Fに詳述したものと同一であった。
【0115】
本明細書中において、本発明のある特定の構造及び組成を示しそして記載してきたが、根本的な本発明の概念の精神及び範囲から逸脱することなく様々な変更がなされてよいこと、そして添付の特許請求の範囲によって示される場合を除いて、本明細書に示しそして記載した特定の構造に本発明が限定されないことは当業者に明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディカルデバイスの少なくとも1つの表面上に反応官能性を備えた少なくとも1種の基を有するメディカルデバイスを提供すること、
前記メディカルデバイスの表面官能性を備えた前記少なくとも1種の基と相補的な反応性を有する、親水性ブロック及び化学結合性単位ブロックを含む反応性セグメント化ブロックコポリマーを含む、表面変性剤を提供すること、
前記メディカルデバイスの反応官能性を有する前記少なくとも1つの表面と、前記表面変性剤とを接触させること、及び、
前記デバイスの表面及び表面変性剤を、前記デバイスの表面と前記表面変性剤との間に共有結合を形成するのに適する反応条件下に付し、表面変性されたメディカルデバイスを形成すること、
を含む、表面変性されたメディカルデバイスを形成する方法。
【請求項2】
前記メディカルデバイスはケイ素含有モノマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ケイ素含有モノマーは、ケイ素含有ビニルカーボネート、ケイ素含有ビニルカルバメート、1つ以上のハード−ソフト−ハードブロックを有しかつ親水性モノマーでエンドキャップされたポリウレタン−ポリシロキサン、フマレート含有ケイ素含有モノマー、分子の2つ以上の末端が不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)、ポリウレタン−ポリシロキサンマクロモノマー及びそれらの混合物からなる群より選ばれるケイ素含有モノマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記メディカルデバイスは共重合されるべきバルクモノマー混合物として、5〜50質量%の1種以上のケイ素含有マクロモノマー、5〜75質量%の1種以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー、及び、10〜50質量%の親水性モノマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記メディカルデバイスは共重合されるべきバルクモノマー混合物として、10〜25質量%の1種以上のケイ素含有マクロモノマー、30〜60質量%の1種以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマー、及び、20〜40質量%の親水性モノマーを含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記メディカルデバイスはヒドロゲル材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記メディカルデバイスはケイ素含有ヒドロゲル材料を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記メディカルデバイスは親水性モノマーと共重合したビニル官能化ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記メディカルデバイスはフッ素化モノマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記メディカルデバイスは親水性モノマーと共重合したメタクリレート官能化フッ素化ポリエチレンオキシドを含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記メディカルデバイスは、心臓弁、眼内レンズ、眼内レンズインサーター、コンタクトレンズ、子宮内デバイス、血管置換物、人工尿管、血管ステント、有水晶体眼内レンズ、無水晶体眼内レンズ、角膜インプラント、カテーテル、インプラント及び人工乳房組織からなる群より選ばれる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
形成されるメディカルデバイスはソフトコンタクトレンズである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記メディカルデバイスはケイ素含有ヒドロゲルコンタクトレンズ材料である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記メディカルデバイスはエポキシド、カルボン酸、酸無水物、オキサゾリノン、ラクタム、ラクトン、アミン、ヒドロキシ、ヒドラジン、ヒドラジド、チオール、求核性基、求電子性基、カルボン酸エステル、イミドエステル、オルトエステル、カーボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、ハロシラン、ホスホルアミデート及びアルコール官能基からなる群より選ばれる少なくとも1種の表面官能基を有する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記表面官能基はアルデヒド水和物、ヘミアセタール、アセタール、ケトン水和物、ヘミケタール、ケタール、チオケタール及びチオアセタールからなる群より選ばれる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記表面官能基はスクシンイミジルカーボネート、スクシンイミジルエステル、マレイミド、ベンゾトリアゾールカーボネート、グリシジルエーテル、イミダゾイルエステル、p−ニトロフェニルカーボネート、アクリレート、トレシレート、アルデヒド及びオルトピリジルジスルフィドからなる群より選ばれる、請求項14記載の方法。
【請求項17】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは下記一般式(I)
−[(A)−[(B)−X (I)
(上式中、Rは原子移動ラジカル重合のための開始剤として作用することができる部分の反応性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Xは原子移動ラジカル重合のための開始剤のハロゲンキャッピング基又は誘導反応生成物である)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは下記一般式(II)
−[(A)−[(B)−R (II)
(上式中、RはRAFT剤又はフリーラジカル開始剤のラジカル形成性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Rは連鎖移動剤のチオカルボニルフラグメント又は誘導反応生成物である)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは下記一般式(III)
−[(B)−[(A)−R −[(A)−[(B)−R
(III)
(上式中、RはRAFT剤又はフリーラジカル開始剤のラジカル形成性残基であり、Aは化学結合性単位ブロックであり、Bは親水性単位ブロックであり、mは1〜10,000であり、nは1〜10,000であり、p及びqは自然数であり、Rはチオカルボニルチオ基である)を有する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーはエポキシド、カルボン酸、酸無水物、オキサゾリノン、ラクタム、ラクトン、アミン、ヒドロキシ、ヒドラジン、ヒドラジド、チオール、求核性基、求電子性基、カルボン酸エステル、イミドエステル、オルトエステル、カーボネート、イソシアネート、イソチオシアネート、アルデヒド、ケトン、チオン、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、スルホン、マレイミド、ジスルフィド、ヨード、スルホネート、チオスルホネート、シラン、アルコキシシラン、ハロシラン、ホスホルアミデート及びアルコール官能基からなる群より選ばれる官能基を含むモノマーからなる群より選ばれる化学結合性単位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリルアミド、アクリルアミド、N,N’−ジメチルメタクリルアミド、N,N’−ジメチルアクリルアミド、エチレン系不飽和ポリ(アルキレンオキシド)、環状ラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、親水性ビニルカーボネート、親水性ビニルカルバメートモノマー、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−(2−エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、グリセリル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール(メタ)アクリレート)、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ビニルアセトアミド、それらのコポリマー、誘導体及び組み合わせからなる群より選ばれる親水性単位モノマーを含む、請求項1記載の方法。
【請求項22】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは1〜約1,000単位含む化学結合性単位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは1〜約100単位含む化学結合性単位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは1〜約30単位含む化学結合性単位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは1〜約10,000単位含む親水性ブロックを有する、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは約10〜約1,000単位含む親水性ブロックを有する、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは約20〜約300単位含む親水性ブロックを有する、請求項1記載の方法。
【請求項28】
メディカルデバイスの少なくとも1つの表面上に反応官能性を備えた少なくとも1種の基を有するメディカルデバイス、及び、
前記メディカルデバイスの表面に適用された、化学結合性単位ブロック及び親水性ブロックを含む反応性セグメント化ブロックコポリマーを含み、
前記メディカルデバイスの表面官能基と、前記化学結合性単位ブロック及び親水性ブロックを含む1種以上の反応性セグメント化ブロックコポリマーとの間の化学反応により、それらの間に共有結合を形成している、表面変性されたメディカルデバイス。
【請求項29】
前記メディカルデバイスは、心臓弁、眼内レンズ、眼内レンズインサーター、コンタクトレンズ、子宮内デバイス、血管置換物、人工尿管、血管ステント、有水晶体眼内レンズ、無水晶体眼内レンズ、角膜インプラント、カテーテル、インプラント及び人工乳房組織からなる群より選ばれる、請求項28記載の表面変性されたメディカルデバイス。
【請求項30】
前記メディカルデバイスは親水性コンタクトレンズである、請求項29記載の表面変性されたメディカルデバイス。
【請求項31】
前記メディカルデバイスはヒドロゲルコンタクトレンズである、請求項29記載の表面変性されたメディカルデバイス。
【請求項32】
前記デバイスの表面及び表面変性剤を、前記デバイスの表面と前記表面変性剤との間に共有結合を形成するのに適する反応条件下に付し、表面変性されたメディカルデバイスを形成する工程はオートクレーブ処理条件下に行われる、請求項1記載の方法。
【請求項33】
前記デバイス及び表面変性剤を含むパッケージをオートクレーブ処理の工程に付す前に、前記デバイス及び表面変性剤を含むパッケージに蓋材を適用する工程をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項34】
オートクレーブ処理の後に前記表面変性剤を除去し、コーティングされたデバイスをリンスし、貯蔵溶液を提供しそして前記デバイスをさらにオートクレーブ処理して前記デバイスを無菌化する工程をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項35】
前記化学結合性単位ブロック又は親水性ブロックの1つは統計共重合体又は組成的に不均一なブロックである、請求項17記載の方法。
【請求項36】
前記化学結合性単位ブロック又は親水性ブロックの1つは統計共重合体又は組成的に不均一なブロックである、請求項18記載の方法。
【請求項37】
前記化学結合性単位ブロック又は親水性ブロックの1つは統計共重合体又は組成的に不均一なブロックである、請求項19記載の方法。
【請求項38】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは非結合性ブロック、非親水性ブロック及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つのブロックをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項39】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは非結合性ブロック、非親水性ブロック及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つのブロックをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項40】
前記反応性セグメント化ブロックコポリマーは非結合性ブロック、非親水性ブロック及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる少なくとも1つのブロックをさらに含む、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−508059(P2011−508059A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−540781(P2010−540781)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/086989
【国際公開番号】WO2009/085755
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】