説明

セラミックス柱状体用移載装置及びセラミックス柱状体の移載方法

【課題】長尺で真直度の悪いセラミックス焼成体をロボットで移載するに際し、応力集中等によるクラックの発生や破損が起こり難い手段を提供すること。
【解決手段】球面及び平面を呈する緩衝材で構成される複数の当接パッド52a,52bをパッド用枠体42a,42bに支持をするとともに弾性機構72a,72bを備える当接パッドシャフト62a,62b、及び、その当接パッドシャフト62a,62bが弾性機構72a,72bによって外部圧力を吸収した状態を保持する状態保持機構82a,82bを備える一対のグリッパユニット22a,22bと、その一対のグリッパユニット22a,22bの間隔を調整する間隔調整機構32と、で構成されるグリッパ12を具備するセラミックス柱状体用移載装置の提供による。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に長尺のセラミックス柱状体の移載をするのに好適な装置と、それを用いたセラミックス柱状体の移載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
外形が柱状のセラミック焼成体は、ナトリウム−硫黄電池のβアルミナ管をはじめとして、種々の用途に用いられている。このようなセラミック焼成体は、成形手段によってセラミックス材料を成形し、セラミック成形体を得て、それを焼成することによって製造される。
【0003】
一般に、外形が柱状のセラミックス焼成体を、真直度よく製造することは難しい。特に、軸方向に長い長尺のセラミックス焼成体では、全く曲がらせずに製造することは困難である。又、セラミックス焼成体に他の部材を接合することによっても、セラミックス焼成体の真直度は悪化する。ところが、例えば、βアルミナ管では、ナトリウム−硫黄電池における電気容量確保や抵抗低減を図るためには、高さと直径の比を大きくする方が有利なことから、長尺化される傾向にある。そして、固体電解質管であるβアルミナ管には、陰極及び陽極の絶縁部材(絶縁リング)としてαアルミナリングがガラス等で接合され、更には、その絶縁リングと陰極及び陽極の金具とが熱圧接合される。従って、セラミックス焼成体であるβアルミナ管を用いた製品の真直度は悪化し易い。
【0004】
一方、セラミックス焼成体は、打痕等の衝撃による損傷が生じ易いものである。そのため、製造工程におけるセラミックス焼成体の移載作業においては、設備や治具等へのセラミックス焼成体の接触を、極力なくすことが好ましい。特に、βアルミナ管では、表面への異物接触や取り扱いによる打痕によって、βアルミナ管に破損が生じ、ナトリウム−硫黄電池の特性を低下させる懸念があり、品質確保のためには、人による作業では自ずと限界がある。このような事情から、セラミックス焼成体の移載手段について、ロボットによる自動化が進められるようになった。
【0005】
本発明は、このような真直度が悪化し易いセラミック焼成体をロボットで移載する手段にかかる技術を背景にするものである。尚、このような技術背景を有する発明にかかる先行文献は、これまで存在しないようである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、長尺のセラミックス焼成体をロボットで移載するに際しては、セラミックス焼成体の一部(例えば頭部(端部)や胴部)を固定する。そして、移載中にふらつかないように安定的な移載をするため、あるいは、固定箇所の持ち替えのためには、2箇所(例えば頭部と胴部)を同時に固定することが好ましい。
【0007】
特に、セラミックス柱状体の胴部を把持するロボットハンドにおいては、従来、安定した固定力を得るため、広い接触面積を持つパッドや把持力の伝達効果を挙げるためのV字型の溝を持つブロック形状のパッドを備えるものが多い。図13及び図14は、従来のロボットハンドの態様の一例及び他例を示す図であり、セラミックス柱状体と、それを両側から把持しようとするパッドを表す斜視図である。図13には、セラミックス柱状体104に対して広い接触面積を持つパッド152a,152bが示され、図14には、セラミックス柱状体104を把持する力の伝達効果を挙げるためのV字型の溝を持つブロック形状のパッド252a,252bが示されている。これら従来のロボットハンドは、リジッドな状態でセラミックス柱状体の胴部を把持するものである。
【0008】
しかしながら、上記したように、長尺のセラミックス焼成体には真直度が悪いものが存在し、真直度が悪いと固定すべき位置が変動することから、従来のリジッドな(ロボット)ハンドで把持しようとすると、セラミックス焼成体に曲げ応力等の集中荷重がかかってしまい、その結果、クラックを発生させたり破損に至るおそれがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、長尺で真直度の悪いセラミックス焼成体をロボットで移載するに際し、応力集中等によるクラックの発生や破損が起こり難い手段を提供することにある。研究が重ねられた結果、(ロボット)ハンドにセラミックス焼成体の曲がりを吸収する機能を付与することによって、上記課題が解決されることが見出された。具体的には、本発明によれば、以下の手段が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
先ず、本発明によれば、パッド用枠体、そのパッド用枠体に平行に取り付けられ球面又は平面を呈する緩衝材で構成される複数の当接パッド、その当接パッドをパッド用枠体に支持をするとともに弾性機構を備える当接パッドシャフト、及び、その当接パッドシャフトが弾性機構によって反力を吸収した状態を保持する状態保持機構、を備え、複数の当接パッドが向き合うように、対向して配設される一対のグリッパユニットと、その対向して配設される一対のグリッパユニットの間隔を調整する間隔調整機構と、で構成されるグリッパを具備するセラミックス柱状体用移載装置が提供される。
【0011】
即ち、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置は、グリッパを具備する。そして、そのグリッパは、対向して配設される2つのグリッパユニットと、そのグリッパユニットの間隔を調整する間隔調整機構を備える。グリッパユニットの状態保持機構が保持すべき、反力を吸収した状態とは、当接パッドシャフトで支持された当接パッドをセラミックス柱状体に当接をさせたときに生じる反力を、弾性機構によって吸収した状態である。
【0012】
グリッパユニットあたりの当接パッドの数は、好ましくは2以上10以下、更に好ましくは2以上6以下、特に好ましくは4である。当接パッドは、グリッパユニット毎に、鉛直方向に2列で配設することが好ましい。
【0013】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置においては、グリッパに加えて、複数の指を有するチャックを具備することが好ましい。
【0014】
そして、このチャックは、水平可動機能及び固定機能を有することが好ましい。例えば、好ましいチャックとして、一般にセンタリングデバイスと呼ばれる求芯機構ユニットが付加されているものを挙げることが出来る。このようなチャックによれば、水平可動するフリー状態と、センター(芯)に移動し固定される状態(ロック状態)と、を実現することが可能である。フリーな状態は、LM(リニアモーション)ガイドやボール等でXY方向(通常は水平方向)に自在に動くような状態であり、ロック状態は、テーパーピン等で軸中心に移動し固定された状態である。
【0015】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置においては、ハンド用枠体、そのハンド用枠体に取り付けられた上記グリッパ及び上記チャック、及び、それらグリッパ及びチャックのうち何れか又は両方を動かしてグリッパとチャックとの位置関係を調節する位置調節機構、を備えるハンドと、そのハンドを先端に取り付けたアームと、を具備することが好ましい。
【0016】
即ち、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置は、その好ましい態様において、ハンドとアームを具備する。そして、ハンドは、上記したグリッパ、チャック、及びそれらの位置関係を調節する位置調節機構を有する。
【0017】
次に、本発明によれば、一の位置に置かれたセラミックス柱状体の端部(例えば、頭部)を、複数の指を有するチャックで把持をするとともに、その把持をされたセラミックス柱状体の胴部を挟むように、弾性機構を備える当接パッドシャフトで支持され球面又は平面を呈する緩衝材で構成される複数の当接パッドを、胴部の両側から当接をさせ、その当接によって生じた反力を当接パッドシャフトの弾性機構によって吸収し、その反力を吸収した状態を保持しつつ、セラミックス柱状体の胴部を掴持し、セラミックス柱状体を他の位置へ移載するセラミックス柱状体の移載方法が提供される。これを、単に、セラミックス柱状体の移載方法、ともいう。
【0018】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置及び移載方法において、セラミック柱状体を構成するセラミックス材料は特に限定されない。例えば、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、マグネシア、フェライト、コージェライト、イットリア等の希土類元素の酸化物を含む酸化物系セラミックス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸ジルコン酸鉛、希土類元素のマンガナイト、希土類元素のクロマイト等、窒化アルミニウム、窒化珪素,サイアロン、炭化珪素、炭化ホウ素、炭化タングステン等を挙げることが出来る。
【0019】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置及び移載方法において、移載の対象であるセラミック柱状体とは、主原料がセラミックであり外形が柱状である定形体を意味する即ち、柱状体には、中実なものではない中空の筒状体等が含まれる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置は、セラミックス柱状体の端部を、複数の指を有するチャックで把持をするとともに、その把持されたセラミックス柱状体の胴部に当接パッドを当接をさせたときに、その当接によって生じた反力を、当接パッドシャフトが備える弾性機構によって吸収し、その吸収した状態を保持する状態保持機構を備えているので、セラミックス柱状体を掴んだときに、セラミックス柱状体にストレスを与えることがない。
【0021】
例えば、真直度が悪いセラミックス柱状体であれば、端部を、複数の指を有するチャックで把持し、その曲がった形状に合わせて当接パッドがセラミックス柱状体に当接をするように当接パッドシャフトが伸縮し、真直度が悪いセラミックス柱状体の形状のまま、当接パッドでセラミックス柱状体を掴持することが出来る。掴持する側の状況に合わせて、真直度が悪いセラミックス柱状体を変形させようとする力が、はたらかない。そのため、セラミックス柱状体には、従来手段のように、曲げ応力等の集中荷重はかからない。よって、セラミックス柱状体を移載するに際し、クラックを発生させたり破損に至る心配はない。
【0022】
又、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置は、真直度が異なる(変形の程度が異なる)セラミックス柱状体を連続して移載する工程で使用されても、それぞれの変形の程度が異なるセラミックス柱状体に曲げ応力をかけずに、移載をすることが可能である。
【0023】
そして、既述のように、真直度は、セラミックス柱状体が長尺であればあるほど悪化する傾向にあるが、本発明によれば、長尺のセラミックス柱状体であっても、曲げ応力をかけずに、移載することが可能である。
【0024】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置は、状態保持機構を備えることに加えて平行に取り付けられる複数の当接パッドが球面又は平面を呈する緩衝材で構成されているので、掴持しようとするセラミックス柱状体の位置がずれても、常に複数点で当接してセラミックス柱状体を掴持することが可能である。従って、掴持する動作における安定性に優れる。
【0025】
本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法は、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置を用いて行う移載方法であり、上記本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の奏する効果を、現に導く手段である。
【0026】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載方法では、一の位置に置かれたセラミックス柱状体に対し、先にセラミックス柱状体の端部を把持し、後に胴部を掴持するが、後に胴部を掴んだときに、当接パッドの当接によって生じた反力が当接パッドシャフトの弾性機構によって吸収され、その状態が保持される。よって、セラミックス柱状体に曲げ応力等の集中荷重がかからない。
【0027】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載方法では、一の位置に置かれたセラミックス柱状体に対し、先にセラミックス柱状体の端部を把持し、後に胴部を掴持する。但し、複数の指を有するチャックに水平可動機能及び固定機能が付加されているセラミックス柱状体用移載装置を使用する場合には、先に胴部を掴んだ場合でも、セラミックス柱状体に曲げ応力等の集中荷重がかからずに、掴み直すことが出来る。例えば、先ず、一の位置に置かれたセラミックス柱状体の胴部を挟むように、胴部の両側から当接パッドに当接をさせ、その当接によって生じた反力を当接パッドシャフトの弾性機構によって吸収し、その反力を吸収した状態を保持しつつ、セラミックス柱状体の胴部を掴持する。その後、その胴部を掴持されたセラミックス柱状体の端部を、水平可動機能を有するチャックで把持をする。そして、その状態で反力吸収状態を開放してから、セラミックス柱状体の端部を把持した状態で、チャックを固定する。これ以降は、本発明に係るセラミックス柱状体用移載方法と同一である。胴部への当接によって生じた反力を当接パッドシャフトの弾性機構によって吸収し、その状態を保持することで、先に胴部を掴んだ場合でもセラミックス柱状体に、曲げ応力等の集中荷重がかかることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明について、適宜、図面を参酌しながら、実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されて解釈されるべきものではない。本発明に係る要旨を損なわない範囲で、当業者の知識に基づいて、種々の変更、修正、改良、置換を加え得るものである。例えば、図面は、好適な本発明に係る実施形態を表すものであるが、本発明は図面に表される態様や図面に示される情報により制限されない。本発明を実施し又は検証する上では、本明細書中に記述されたものと同様の手段若しくは均等な手段が適用され得るが、好適な手段は、以下に記述される手段である。
【0029】
先ず、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の構成要素について説明する。
【0030】
図1〜図8は、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図である。図1は全体を表す図であり、図2はハンドを表す斜視図である。図3〜図5はグリッパを表す図であり、図3は正面図であり、図4は(左)側面図であり、図5は平面図(上面図)である。図6〜図8はグリッパユニットを表す図であり、図6は断面図であり、図7は前方上方から見た斜視図であり、図8は後方上方から見た斜視図である。
【0031】
図1に示されるセラミックス柱状体用移載装置100は、例えばナトリウム−硫黄電池に用いられるβアルミナ管であるセラミックス柱状体4を把持ないし把持するハンド1、ハンド1を先端に接続していて掴持ないし把持したセラミックス柱状体4を移動するアーム2、及び必要な動力源により構成される。
【0032】
図2に示されるように、ハンド1は、アーム2と接続するハンド用枠体13と、そのハンド用枠体13に取り付けられたグリッパ12及びチャック11、並びにチャック11を動かす位置調節機構51及び位置調節機構61を備えている。ハンド用枠体13は、L字型に折り曲げた板状体を呈し、その背面でアーム2と接続され、正面で位置調節機構51及び位置調節機構61を介してチャック11と接続され、下面でグリッパ12と接続される。4つの指71を有するチャック11は、位置調節機構51によって図2における上方向へスライドし、これによって、チャック11とグリッパ12との位置関係が調節される。
【0033】
主に図3〜図5に示されるように、グリッパ12は、一対のグリッパユニット22a、グリッパユニット22bと、間隔調整機構32を備える。間隔調整機構32は、図3及び図5に示される矢印の方向に、グリッパユニット22a及びグリッパユニット22bを動かし、グリッパユニット22aとグリッパユニット22bとの間隔を、広げあるいは狭めて、調整する。
【0034】
主に図6〜図8に示されるように、グリッパユニット22aは、パッド用枠体42a、パッド用枠体42aに2列2段で平行に取り付けられた4つの当接パッド52a、4つの当接パッド52aをパッド用枠体42aに支持をする当接パッドシャフト62a、当接パッドシャフト62aを伸縮させて外部圧力を吸収する弾性機構72a、及び当接パッドシャフト62aが弾性機構72aによって外部圧力を吸収し伸び又は縮んだ状態を保持する状態保持機構82aを備える。同様に、グリッパユニット22bは、パッド用枠体42b、4つの当接パッド52b、弾性機構72b、当接パッドシャフト62b、及び状態保持機構82bを備える。当接パッド52a,52bは、緩衝材で構成され、図7及び図8に明示されるように球面を呈する。尚、当接パッドとして、平面を呈するものも用いることが出来る。
【0035】
次に、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置を製造する方法について、上記したセラミックス柱状体用移載装置100の場合を一例にして、説明する。
【0036】
セラミックス柱状体用移載装置100は、市販品を購入し又はステンレス鋼等からなる金属板等を加工して、既述の構成要素を得て、それらを組み立てるとともに、シーケンサ等の制御機器を用いて制御系を構築し(制御盤を設け)、更に、例えば電気、空圧、油圧等の動力系を構築する(動力盤を設け動力源を供給する)ことで、得ることが出来る。
【0037】
アーム2は複数の間接からなる産業用ロボット用アームを採用し、チャック11は4つの指71からなる産業用ロボット用チャック(ハンド)を採用する。ハンド用枠体13及びパッド用枠体42a,42bは、金属板を機械加工して得ればよい。位置調節機構51,61及び間隔調整機構32は、LMガイド及びLMアクチュエータ等で構成される直線運動機器を使用することが出来る。
【0038】
当接パッド52a,52bは球状のゴムを使用する。当接パッドシャフト62a,62bはステンレス鋼等からなる金属棒を使用する。弾性機構72a,72bはステンレス鋼等からなるバネを用いる。状態保持機構82a,82bとしては、エアシリンダ、油圧シリンダ、又はLMガイド及びLMアクチュエータ等で構成される直線運動機器を採用することが出来る。
【0039】
次に、本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法について、上記した図1〜図8に示されるセラミックス柱状体用移載装置100を使用する場合を一例にして、説明する。これは、本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置を使用する方法に相当する。
【0040】
図9〜図12は、本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法の一の実施形態を模式的に示す図である。図9及び図10は、セラミックス柱状体用移載装置100を用いて、セラミックス柱状体4を移載するために取り出し又は取り付ける様子を表した図であり、図9は取り出す様子を表した図であり、図10は取り付ける様子を表した図である。図11及は、セラミックス柱状体用移載装置100を用いて、曲がった(真直度が悪い)セラミックス柱状体4を移載する際におけるチャック11とグリッパ12の状態遷移の一例を表す図であり、図12は、同様に、チャック11とグリッパ12の状態遷移の他例を表す図である。尚、図11及び図12において、グリッパ12を構成する要素の符号は、グリッパユニット22a,22bを示すに留めているので、他の構成要素は図3〜図5を参照するものとする。
【0041】
図9に示されるように、セラミックス柱状体4を移載するために、槽91に設置されている状態から取り出すに際しては、先ず、アーム2を動かして、ハンド1をセラミックス柱状体4が設置されている場所の近傍へ移動させる。次いで、位置調節機構51及び位置調節機構61によって、チャック11を下方に移動させ、セラミックス柱状体4の上側の端部に位置づける。そして、チャック11の4つの指71を開閉させて、セラミックス柱状体4の上側の端部を把持する(図11の左を参照)。このとき、グリッパ12の位置は変わらないから、チャック11は、グリッパ12に近接した位置になる。
【0042】
次に、位置調節機構51及び位置調節機構61によって、ゆっくりとチャック11を上方に移動させ、槽91からセラミックス柱状体4を上方へ取り出す。そうすると、(アーム2を動かさない限り)グリッパ12の位置は変わらないから、グリッパ12は、セラミックス柱状体4の下側の胴部に位置するようになる。そこで、その位置で、セラミックス柱状体4の胴部をグリッパ12で掴持する。具体的には、先ず、グリッパユニット22a,22bの状態保持機構82a,82bを駆動せずフリーにしたまま、間隔調整機構32でグリッパユニット22a,22bを相互に近づけるように動かし、当接パッド52a,52bをセラミックス柱状体4の胴部に当接をさせる(図11の中央を参照)。このとき、曲がったセラミックス柱状体4の形状、状態に合わせて、当接パッドシャフト62a,62bは弾性機構72a,72bによって伸縮する。当接の後に、状態保持機構82a,82bを駆動させてロックし、曲がったセラミックス柱状体4の形状、状態に合わせて、当接パッド52a,52bがセラミックス柱状体4の胴部に当接をしている状態を維持すればよい(図11の右を参照)。
【0043】
図10に示されるように、チャック11で把持されグリッパ12で掴持されたセラミックス柱状体4を、槽92に取り付けるには、先ず、アーム2を動かして、セラミックス柱状体4を設置すべき場所の近傍へ、ハンド1を移動させる。そして、その位置で、セラミックス柱状体4の胴部からグリッパ12を離す。具体的には、グリッパユニット22a,22bの状態保持機構82a,82bを開放し、間隔調整機構32でグリッパユニット22a,22bを相互に遠ざけるように動かし、当接パッド52a,52bをセラミックス柱状体4の胴部から離隔させればよい。次いで、位置調節機構51及び位置調節機構61によって、チャック11を下方に移動させ、チャック11で把持されたセラミックス柱状体4を槽92に挿入する。そして、チャック11の4つの指71を開閉させて、セラミックス柱状体4の上側の端部からチャック11を開放する。
【0044】
尚、以上の説明では、セラミックス柱状体4を移載するために取り出すに際し、先に、チャック11でセラミックス柱状体4の端部を把持し、後に、グリッパ12でセラミックス柱状体4の胴部を掴持したが、最初に胴部を掴持しなければいけない場合には、チャック11が水平可動機能及び固定機能を有していれば、図12に示されるように、持ち換え(掴み直し)を行うことで対応出来る。即ち、チャック11でセラミックス柱状体4を把持していない状態で、グリッパユニット22a,22bの状態保持機構82a,82bを駆動せずフリーにしたまま、間隔調整機構32でグリッパユニット22a,22bを相互に近づけるように動かし、当接パッド52a,52bをセラミックス柱状体4の胴部に当接をさせる(図12の左を参照)。このとき、曲がったセラミックス柱状体4の形状、状態に合わせて、当接パッドシャフト62a,62bは弾性機構72a,72bによって伸縮する。当接の後に、状態保持機構82a,82bを駆動させ、曲がったセラミックス柱状体4の形状、状態に合わせて、当接パッド52a,52bがセラミックス柱状体4の胴部に当接をしている状態が維持される(図12の中央を参照)。その後、フリーの状態でチャック11の4つの指71を開閉させて、セラミックス柱状体4の上側の端部を把持し、グリッパユニット22a,22bの状態保持機構82a,82bを開放した後、チャック11を固定する。それ以降の動作は、既述の移載動作と同様である(図12の右を参照)。
【実施例】
【0045】
以下、本発明について実施例を用いて、詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限られるものではない。
【0046】
(実施例1)既述のセラミックス柱状体用移載装置100を使用し、セラミックス柱状体4として、ナトリウム−硫黄電池に用いられる有底円筒形状のβアルミナ管を用い、掴持した際に、βアルミナ管に、発生する歪量の変化を測定した。具体的には、チャック11でβアルミナ管の開口した端部を把持した後に、βアルミナ管の胴部をグリッパ12で掴持し、この掴持した際のβアルミナ管の表面における歪量の変化を、βアルミナ管の開口部近傍の位置において歪ゲージ(共和電業社製のKFG−5−120−C11 L5M2R)を用いて測定した。掴持の際には、本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法に従い、状態保持機構82a,82bを駆動せずフリーにしたまま、当接パッド52a,52bをβアルミナ管の胴部に当接をさせ、当接の後に、状態保持機構82a,82bを駆動させロックした。βアルミナ管の表面に発生する歪量は、0.8μεであった。
【0047】
(比較例1)図13に示されるパッド152a,152bを備えた従来のリジッドなロボットハンドを用いて、βアルミナ管の胴部の掴持を行った。これ以外は、実施例1に準じて、掴持した際に、βアルミナ管表面に、発生する歪量の変化を測定した。結果は、歪量が2.2μεであり、実施例1に比して3倍程度大きな力がはたらいた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置及びセラミックス柱状体の移載方法は、例えば、ナトリウム−硫黄電池の製造工程において、βアルミナ管を取り出し又は取り付ける際の手段として好適に利用することが出来る。具体的には、βアルミナ管に損傷を与えないロボットハンドリング、あるいは、βアルミナ管を組み立てた製品の取り出し又は取り付ける際の手段として、利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、全体を表す図である。
【図2】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、ハンドを表す斜視図である。
【図3】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、グリッパを表す正面図である。
【図4】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、グリッパを表す側面図である。
【図5】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、グリッパを表す平面図である。
【図6】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、グリッパユニットを表す断面図である。
【図7】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、グリッパユニットを表す斜視図である。
【図8】本発明に係るセラミックス柱状体用移載装置の一の実施形態を示す図であり、グリッパユニットを表す斜視図である。
【図9】本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法の一の実施形態を模式的に示す図であり、セラミックス柱状体を移載するために取り出す様子を表した図である。
【図10】本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法の一の実施形態を模式的に示す図であり、セラミックス柱状体を移載するために取り付ける様子を表した図である。
【図11】本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法の一の実施形態を模式的に示す図であり、曲がったセラミックス柱状体を移載する際におけるチャックとグリッパの状態遷移の一例を表す図である。
【図12】本発明に係るセラミックス柱状体の移載方法の一の実施形態を模式的に示す図であり、曲がったセラミックス柱状体を移載する際におけるチャックとグリッパの状態遷移の他例を表す図である。
【図13】従来のロボットハンドの態様の一例を示す図であり、セラミックス柱状体と、それを把持しようとするパッドを表す斜視図である。
【図14】従来のロボットハンドの態様の他例を示す図であり、セラミックス柱状体と、それを把持しようとするパッドを表す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1:ハンド、2:アーム、4:セラミックス柱状体、11:チャック、12:グリッパ、13:ハンド用枠体、22a,22b:グリッパユニット、32:間隔調整機構、42a,42b:パッド用枠体、51,61:位置調節機構、52a,52b:当接パッド、62a,62b:当接パッドシャフト、71:指、72a,72b:弾性機構、82a,82b:状態保持機構、100:セラミックス柱状体用移載装置、104:セラミックス柱状体、152a,152b:パッド、252a,252b:パッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド用枠体、そのパッド用枠体に平行に取り付けられ球面又は平面を呈する緩衝材で構成される複数の当接パッド、その当接パッドを前記パッド用枠体に支持をするとともに弾性機構を備える当接パッドシャフト、及び、その当接パッドシャフトが前記弾性機構によって反力を吸収した状態を保持する状態保持機構、を備え、前記複数の当接パッドが向き合うように、対向して配設される一対のグリッパユニットと、
その対向して配設される一対のグリッパユニットの間隔を調整する間隔調整機構と、
で構成されるグリッパを具備するセラミックス柱状体用移載装置。
【請求項2】
前記グリッパに加えて、複数の指を有するチャックを具備する請求項1に記載のセラミックス柱状体用移載装置。
【請求項3】
ハンド用枠体、そのハンド用枠体に取り付けられた前記グリッパ及び前記チャック、及び、それらグリッパ及びチャックのうち何れか又は両方を動かして前記グリッパと前記チャックとの位置関係を調節する位置調節機構、を備えるハンドと、
そのハンドを先端に取り付けたアームと、
を具備する請求項2に記載のセラミックス柱状体用移載装置。
【請求項4】
一の位置に置かれたセラミックス柱状体の端部を、複数の指を有するチャックで把持をするとともに、
その把持をされたセラミックス柱状体の胴部を挟むように、弾性機構を備える当接パッドシャフトで支持され球面又は平面を呈する緩衝材で構成される複数の当接パッドを、前記胴部の両側から当接をさせ、その当接によって生じた反力を当接パッドシャフトの弾性機構によって吸収し、その反力を吸収した状態を保持しつつ、セラミックス柱状体の胴部を掴持し、
セラミックス柱状体を他の位置へ移載するセラミックス柱状体の移載方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−241197(P2009−241197A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90468(P2008−90468)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】