説明

セラミック体、触媒担持能を有するセラミック担体、セラミック触媒体及びその製造方法

【課題】高温安定、高比表面積のコーディエライト多孔体を基材とする針状セラミックス体、針状セラミック触媒体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ウィスカー成長した針状のコーディエライト結晶相を基材とする針状セラミック体であって、針状又は柱状形状を有する原料粒子(カオリン)、又は焼成時に消失する造孔材(カーボンブラック)を原料に配合して針状コーディエライト結晶の成長空間を設けることにより作製されたセラミック体、針状セラミック触媒体、及びその製造方法。
【効果】ウィスカー成長した針状形状粒子を多量に有し、触媒の早期活性化のための熱容量が小さく、また圧損が少なく、耐熱衝撃性に優れたコーディエライトハニカムが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針状セラミック体、針状セラミック触媒体に関するものであり、更に詳しくは、例えば、NOx除去のための自動車用三元触媒、ガスタービン用燃焼触媒、及び高温ガス浄化用触媒のような、700℃を超える高温・高速気流に曝される部位に好適に使用することが可能な針状セラミックハニカム触媒体に関するものである。
【0002】
本発明は、例えば、自動車の三元触媒の触媒担持用の酸化物系ハニカム構造体の製造技術の分野において、従来、高比表面積を有し、しかも、高温に長時間曝されても焼結による比表面積の低下が少ない、高比表面積コーディエライト多孔体の開発が強く求められていたことを踏まえて、高い比表面積を有し、800℃を超える温度に長時間曝されても、焼結による比表面積の低下が少ないコーディエライト多孔体を基材とする針状セラミック体、及びそのような多孔質コーディエライトで直接形成される触媒担持用ハニカム構造体等を製造することを可能とする新しいコーディエライト多孔体の製造技術及びその製品を提供するものとして有用である。
【0003】
本発明は、針状結晶を3次元的に連結させたポーラス構造体から構成される多孔質コーディエライトを、特に、触媒担持用ハニカム構造体として用いることを特徴とするものであり、それにより、コーディエライト多孔体を基材とする針状セラミック体について、焼結による比表面積の低下を抑制すること、コーディエライト焼結体そのものでハニカム体を直接製造すること、ハニカム内部にコーティングを施す従来の工程を簡略化させ得ること、及びそれらの安価な製造方法を提供すること、等を実現するものである。
【背景技術】
【0004】
従来、触媒担持用の酸化物系ハニカム構造体については、例えば、自動車の三元触媒や燃焼触媒等の高温で長時間曝されるような部位で、すでに実用化が果たされており、また、その更なる特性の向上を目的とした開発が積極的に進められている。それらの内、特に、コーディエライトは、融点が1400℃程度と高いこと、熱膨張係数が極端に小さいこと、耐熱衝撃性に優れていること等から、例えば、自動車の三元触媒やガスタービン用の燃焼触媒、あるいは高温ガス浄化用の触媒等の、800℃を超える高温部における触媒の担体として、そのハニカム構造体が用いられている。
【0005】
このように、従来、コーディエライトの触媒担体としての有用性は認められているものの、従来のコーディエライト多孔体の製造法では、高い比表面積を有し、熱的に安定なものを作製することが困難であり、そのため、排ガス浄化用触媒として、従来より、高耐熱衝撃性のコーディエライトハニカム構造体よりなる担体表面を、ガンマアルミナで被覆(コート)し、貴金属触媒を担持させたものが広く用いられている。コート層を形成するのは、コーディエライトの比表面積が小さく、そのままでは、必要な量の触媒成分を担持させることができないからであり、そのために、ガンマアルミナのような高比表面積材料を用いて、担体の表面積を大きくしている。
【0006】
しかしながら、担体のセル壁表面をガンマアルミナでコートすることは、重量増加による熱容量増加をまねく。近年、触媒の早期活性化のために、セル壁を薄くして熱容量を下げることが検討されているが、コート層を形成すると、その効果が半減してしまうことから、その改善が課題となっていた。また、各セルの開口面積が低下するため圧損が増加する、担体としての熱膨張係数がコーディエライトのみの場合より大きくなる、ガンマアルミナは、1000℃以上の高温では、アルファアルミナに転移し、また、焼結が進行するために、高比表面積を維持することが困難であるという問題点を有している、といった不具合があった。
【0007】
本発明者らは、これまでに、サブミクロンの直径を有するコーディエライト針状結晶で構成されるコーディエライト多孔体の開発に成功しており、コーディエライト多孔体で構成されるハニカム構造体としては、先行技術文献に記載されているように、コーディエライト多孔体を直接利用するもの、及びコーディエライト多孔体の内壁へコーティングを施したものを提案した(特許文献1〜8参照)。そして、コーディエライトを高温に曝される部位に用いる場合は、ハニカム構造体の内壁にガンマアルミナ等のコーティングを施す以外に方法がなかった。
【0008】
このため、コート層を形成することなく、触媒成分を担持可能なセラミック体について、種々検討がなされている。例えば、酸処理した後、熱処理することによりコーディエライト自体の比表面積を向上させる方法が提案されている(特許文献9参照)。しかしながら、この方法では、酸処理や熱処理によりコーディエライトの結晶格子が破壊されて強度が低下する問題があり、実用的ではなかった。
【0009】
そこで、本発明者らは、先に、比表面積を向上させるためのコート層を形成することなく、必要量の触媒成分を担持可能なセラミック担体を提案した(特許文献10参照)。このセラミック担体は、基材セラミックを構成する元素の内の少なくとも1種類又はそれ以上の元素を、構成元素以外の元素と置換してなり、このセラミック担体を、例えば、ヘキサクロロ白金酸、塩化第二白金、塩化ロジウム等の貴金属化合物の溶液に浸漬後、焼成することによって、貴金属触媒を置換元素上に直接担持させることが可能である。よって、この担体では、酸処理や熱処理を行って空孔を形成する従来の担体に比べて強度が高く、耐久性が向上する。また、触媒成分を直接担持可能なセラミック担体に、主触媒成分と助触媒成分を担体表面に直接担持させるにあたり、主触媒を先に、助触媒を後に担持させることにより熱劣化し難い触媒体としたセラミック触媒が提案されている(特許文献11参照)。
【0010】
【特許文献1】特開2003−321280号公報
【特許文献2】特開2003−212672号公報
【特許文献3】特開2003−025316号公報
【特許文献4】特開2002−355511号公報
【特許文献5】特開2002−119870号公報
【特許文献6】特開2002−172329号公報
【特許文献7】特開2001−310128号公報
【特許文献8】特開平11−171537号公報
【特許文献9】特公平05−050338号公報
【特許文献10】特開2003−080080号公報
【特許文献11】特開2003−230838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術における諸問題を抜本的に解決することを可能とする、新しい触媒担持用コーディエライトハニカム構造体を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、制御されたアスペクト比を有し、焼成過程において形成した空間内に成長した針状結晶を、3次元的に連結させて、針状形状粒子を有する構造体を作製することができること、それにより、比表面積を飛躍的に向上させることができること、バルク全体が針状結晶相で構成されているため、高温で加熱処理を施しても焼結が進みにくく、焼結による比表面積の低下を劇的に抑制させ得ることが可能となること、従来の製造法におけるハニカム構造体の内壁へのガンマアルミナのコーティング等の工程を省略することができること等を見出し、更に研究を重ねて、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、この触媒成分を直接担持可能なセラミック担体を用い、より優れた触媒性能を有するセラミック触媒体を実現することを目的とするものである。また、本発明は、高比表面積を有し、1000℃以上での熱処理でも比表面積の低下を抑制することが可能な、新規コーディエライト多孔体を基材とする針状セラミック体、そのハニカム構造体、それらの製造方法及びその製品としての針状セラミック触媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための本発明は、セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有することを特徴とするセラミック体、である。また、本発明は、セラミック体の表面の一部又は全部に、コート層として、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有することを特徴とするセラミック体、である。また、本発明は、セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有し、セラミック体のセラミック粒子表面に、触媒成分を直接担持可能な細孔及び元素の少なくとも一方を有していることを特徴とするセラミック体、である。また、本発明は、セラミック体の表面の一部又は全部に、コート層として、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有し、セラミック体のセラミック粒子表面に、触媒成分を直接担持可能な細孔及び元素の少なくとも一方を有していることを特徴とするセラミック体、である。
【0014】
また、本発明は、上記のセラミック体に触媒成分を担持したことを特徴とするセラミック触媒体、である。また、本発明は、上記のセラミック体、及び/又はセラミック触媒体に、助触媒成分を含有することを特徴とするセラミック触媒体、である。また、本発明は、Si源としてSiOとAlの化合物からなる原料を使用して、セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状化のために、針状又は柱状形状を有する原料粒子を用いてセラミック体を製造することを特徴とするセラミック体の製造方法、である。また、本発明は、焼結体の表面にカオリンを含むスラリーを被覆し、乾燥後、焼成し、前記カオリンを原料の一部として針状のセラミック体を成長させることにより、セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状化のために、針状又は柱状形状を有する原料粒子を用いてセラミック体を製造することを特徴とするセラミック体の製造方法、である。
【0015】
また、本発明は、上記の方法で作製したセラミック体に、酸処理、アルカリ処理、又はドライエッチングを施すことにより、針状形状粒子を発現させることを特徴とする針状形状粒子を有するセラミック体の製造方法、である。また、本発明は、上記のセラミック体に、触媒成分を担持させることを特徴とするセラミック触媒体の製造方法、である。更に、本発明は、上記のセラミック体、及び/又は上記のセラミック触媒体に、助触媒成分を担持することを特徴とするセラミック触媒体の製造方法、である。
【0016】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、針状結晶層からなるセラミック担体自体に、必要量の触媒成分を担持可能とすることにより、比表面積増加のためにガンマアルミナでコートする必要をなくし、熱容量及び圧損を低減できると共に、熱膨張係数を低下させることができるセラミック担体とセラミック触媒体及びその製造方法を提供するものである。本発明のセラミック体は、基本的には、制御されたアスペクト比を有し、焼成過程で形成した空間内に成長した針状結晶相が、3次元的に絡み合った構造を有するコーディエライト多孔体バルクを基材とするものであり、こうした針状結晶を3次元的に連結させることにより、比表面積を向上させた、高比表面積を有し、所定の気孔率のポーラス構造体からなるコーディエライト多孔体から形成される。
【0017】
また、本発明は、針状化のために、針状あるいは柱状形状を有する原料粒子を使用すること、それにより、針状又は柱状形状を有する原料粒子から細長い針状形状粒子を生成すること、焼結の完了を遅延させ、針状セラミック体を成長させるための空間を設けるために焼成過程で消失する物質(造孔材)を原料の一部として配合し、焼成過程で該物質を焼き飛ばすこと、焼結体の表面に針状、柱状のカオリンを含むスラリーに浸漬する工程と、乾燥後、焼成し、前記カオリンを原料の一部として針状のセラミック体を成長させることに特徴を有するものである。
【0018】
まず、本発明の針状セラミック体について説明すると、本発明では、出発物質として、コーディエライト組成になるように配合した出発粉末が用いられる。例えば、出発物質として、針状あるいは柱状結晶を有するカオリン、タルク、アルミナ、シリカ粉末を使用し、これらをコーディエライト組成になるように秤量し、配合する。この際に、コーディエライトの生成温度を降下させるために、出発粉末に、結晶化温度低下剤、例えば、酸化ホウ素(B)等を3wt%以下添加することができる。また、ウィスカーを成長させるために、出発粉末に、針状化添加剤、例えば、酸化ストロンチウム(SrO)等のアルカリ土類金属酸化物を2wt%以下、あるいは希土類酸化物を5wt%以下添加することができる。更に、焼結体の焼結後の気孔率を上げるために、焼成過程で消失する物質、例えば、10〜30wt%のカーボンブラック等を添加することができる。それにより、針状結晶が成長するための空間が形成され、針状結晶の生成量は増加するとともに、例えば、38〜55%の気孔率の焼結体を得ることが可能となる。
【0019】
本発明では、上記出発粉末と添加剤の混合粉末を、例えば、ボールミル混合し、得られた混合スラリーを、エバポレーター、オーブン等で乾燥させ、得られた乾燥体を粉砕し、分級し、次いで、この粉末を加圧成形し、1200〜1400℃で焼結する。それにより、サブミクロンのコーディエライト針状結晶を有するコーディエライトバルクを作製することができる。
【0020】
本発明のコーディエライトセラミック体は、針状形状粒子を多量に有し、その粒子のアスペクト比は5以上が好適である。こうした針状形状粒子が3次元的に連結することにより比表面積を向上させた、高比表面積を有することができる。本発明のコーディエライトセラミック体を作製するにあたっては、その原料粒子として、針状あるいは柱状形状を有する原料粒子を使用するのが好ましく、原料粒子のアスペクト比によって、生成するコーディエライト針状結晶のアスペクト比を制御することが可能である。その材質としては、例えば、針状あるいは柱状形状を有するカオリンを使用するのが好適である。針状あるいは柱状形状有する原料粒子を使用することにより、焼成過程において、非常に細長い形状をした針状形状粒子の生成が促進される。カオリンは、Al・2SiOの組成を有する鉱物であり、コーディエライト製造の原料成分としては一般的なものであるが、本発明では、特に、針状あるいは柱状形状を有するカオリンを使用するのが好適であり、例えば、針状あるいは柱状形状を有する原料粒子としてのカオリンは、そのアスペクト比が、5〜20のものが好適である。このような針状あるいは柱状形状を有する原料粒子は、セラミック体の作製原料中に、30〜60重量%、特に、35〜50重量%含有するのが好適である。
【0021】
本発明のコーディエライトセラミックを作製するにあたっては、焼成過程において、焼成が完了する前に、針状形状粒子を発現させることが好ましい。焼成が完了する前に針状形状粒子を発現させるためには、例えば、焼成過程で消失する物質(造孔材)を原料の一部として配合し、焼成過程で、この造孔材を焼き飛ばすことにより実施される。造孔材が焼き飛ばされる過程において、焼結の完了が遅延され、その間に、針状形状粒子が成長する。この造孔材が焼き飛ばされた跡には空間が形成されるので、焼結の完了前に、その空間内で針状形状粒子が成長することができる。そのため、生成したセラミック体が含有する針状形状粒子を増加させることが可能となる。
【0022】
また、この空間は、針状形状粒子が成長する余裕を提供するため、アスペクト比を増加させる一因ともなる。造孔材としては、例えば、カーボンブラック、デンプン、フェノール樹脂等が例示される。これ等の造孔材を、原料中に、2〜15重量%、特に5〜10重量%配合するのが好適である。焼成過程で形成される針状形状粒子が成長するための空間の大きさは、造孔材の粒度が関連するところであり、最適な成長空間を形成させるためには、造孔材の平均粒度は、0.02〜5μm、特に、0.02〜1μmが好適である。また、こうした造孔材の配合により、焼結体自体の気孔率が制御できる。
【0023】
このように、本発明では、針状あるいは柱状形状の原料を使用すること、及び/又は焼成過程で消失する物質(造孔材)を原料中へ添加することにより、生成するセラミック体の針状形状粒子のアスペクト比等の粒子形状、及びその生成量を制御して、優れた特性を有するセラミック体とすることが可能となる。本発明のセラミック体は、出発物質として、コーディエライト組成となるように配合したセラミック原料、例えば、高純度のカオリン、タルク、アルミナ、シリカ粉末に、結晶化温度低下剤、針状化添加剤、焼成の過程で消失する物質(造孔材)等の配合物を、ハニカム等に成形して、1200〜1400℃に焼成することにより作製することができる。
【0024】
他の作製方法としては、焼結体の表面に、カオリンを含むスラリーを浸漬して、コーティングした後、乾燥し、焼成することにより、カオリンをその原料の一部として針状のセラミック体を焼結体面に成長させることにより、本発明の針状形状粒子を有するセラミック体を作製することができる。カオリンを含むスラリーとしては、例えば、カオリン、水酸化アルミニウム、シリカを含有するものが好適であり、例えば、コーディエライト焼結体の表面に、このスラリーを被覆し、焼成することにより、コーディエライトの針状形状粒子が、コーティング層上に、溶解−析出のメカニズムにより生成する。また、カオリンとしては、針状あるいは柱状形状のものを使用することにより、針状形状粒子が発達しやすくなる。
【0025】
本発明のセラミック体を製造するにあたっては、針状形状粒子をできるだけ低温での発達を促進するために、結晶化温度低下剤、例えば、酸化ホウ素等を配合するのが好適である。また、結晶粒子を針状に発達させるための添加剤(針状化添加剤)を配合するのが好適である。針状化添加剤としては、ランタノイド元素、遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種が使用され、更に具体的には、酸化ストロンチウム等が好適である。
【0026】
コーディエライト焼結体を酸で処理することにより多孔質化させる技術は既に公知であり、コーディエライト焼結体を強酸で処理することにより比表面積を劇的に向上させることができる。しかしながら、一般に報告されている高比表面積のコーディエライト多孔体は、結晶粒表面のシリカ相を多孔質化させるものであるため、例えば、1000℃以上の高温では、焼結が進行し、比表面積が極端に低下するという問題を有していた。本発明者らが、先に開発したコーディエライト多孔体では、原料としてカオリンを用いることにより、コーディエライトの針状結晶相を析出させることができ、これを、弱酸を用いて処理することで、サブミクロンオーダーの直径を有する針状結晶相で構成される高強度のコーディエライト多孔体を製造することが可能となった。
【0027】
本発明者らは、上記コーディエライト多孔体について、強度を維持しつつ、更なる比表面積の向上を可能とする方法を開発することを目的として種々研究を行った結果、このコーディエライト多孔体を、カルボキシル基(−COOH)を有する酸、リン酸、硫化水素等の、解離度の小さな弱酸で処理することにより、コーディエライトの針状結晶相が形成されることを見出した。更に、弱酸で処理する場合に、処理に要する時間及び弱酸の濃度を変化させることにより、析出されるナノオーダーの針状結晶相の大きさ及び数、すなわち、比表面積を制御できることが分かった。本発明で使用される弱酸としては、例えば、シュウ酸、酢酸、蟻酸、アクリル酸などのカルボン酸が例示されるが、これらに限定されるものではなく、これらと同等又は類似のものであれば同様に使用することができる。
【0028】
すなわち、本発明の高温安定高比表面積コーディエライト多孔体を基材とする針状セラミック体は、多孔体全体が、針状結晶相で構成されており、それを製造するには、例えば、弱酸による処理を施すことが必要であり、更に、酸の種類、酸の濃度、及び/又は処理時間を調整することで、コーディエライト多孔体の構造、気孔率、及び比表面積を任意に変化させることが可能である。本発明では、酸の種類、酸の濃度、及び/又は処理時間との関係において、実用化の際に、実質的に応用可能となる時間を考慮して、上記に掲げた全ての弱酸に対して、酸の濃度を0.001規定から2規定の範囲で、比表面積が最大となる好適な処理条件を設定することができる。
【0029】
酸処理によるコーディエライトの多孔質化のメカニズムは、未だ明らかではないが、酸処理によりコーディエライト相の成分が表面から溶出されていることが見出された。解離度の高い酸、すなわち、強酸で処理すると、多量の構成成分が溶出し、多孔質化はするものの、溶出速度が速いため、溶出速度を調整することができず、すぐに結晶相の表面をなめらかにし、比表面積は向上しないことが分かった。
【0030】
解離度の低い酸、すなわち、弱酸で処理すると、溶出のメカニズムは、強酸の場合と同じであると考えられるが、溶出速度を緩やかに調整することが可能となり、溶出初期に形成される微細な針状結晶相が析出する段階で処理を停止させることが可能となる。すなわち、比表面積が好適となる時に処理を停止させることが容易になり、高比表面積を有するコーディエライト多孔体を製造することが可能となる。
【0031】
弱酸を用いた場合でも、濃度を低くした溶液で処理することにより、更に容易に上記の比表面積が好適となる段階で処理を調整することが可能となる。比表面積が好適となる段階で酸処理を停止させる場合、酸の濃度が低いと、要する処理時間が長くなり、濃度が高いと、要する処理時間は短くなる。すなわち、比表面積が好適となる処理条件は、弱酸の濃度と処理時間で調整することが可能となる。
【0032】
酸の解離度は、酸の種類により異なるため、本発明の高比表面積コーディエライト多孔体の製造方法において、好適な高比表面積を有する処理条件は、酸の種類、酸の濃度、及び/又は処理時間で適宜調整することができる。本発明における弱酸による処理とは、溶出初期に形成される微細な針状結晶相が析出する段階で処理を停止させることが可能で、しかも、それにより、針状結晶を3次元的に連結させることを可能とする酸処理を意味するものであり、本発明は、これらの処理を可能とする全ての酸処理を含むものである。本発明の高温安定高比表面積コーディエライト多孔体は、1m/g以上の高比表面積を有し、1000℃以上の高温における焼結による比表面積の低下が抑制される。
【0033】
高比表面積を有するコーディエライト多孔体の作製に関して、コーディエライト多結晶体の上にシリカ層を形成させ、そのシリカ層を多孔質化させる方法は、公知である。しかし、これまで報告されている高比表面積を有するコーディエライト多孔体は、粒界層を介した多結晶体であり、例えば、1050℃での熱処理により焼結が進み、比表面積が極端に低下することが知られている。
【0034】
本発明は、上記針状セラミック体において、上記セラミック粒子表面に触媒成分を直接担持可能な細孔及び元素の少なくとも一方を有していることが好ましい。すなわち、本発明では、セラミック体表面に、担持する触媒成分イオンの直径の1000倍以下、好ましくは1〜1000倍の直径、あるいは幅の細孔を有し、この細孔の数が1×1011個/L以上、好ましくは1×1016個/L以上、より好ましくは1×l017個/L以上であるセラミック担体が、好適に使用される。この細孔は、具体的には、セラミック結晶中の酸素欠陥や格子欠陥といった欠陥、セラミック表面に形成される微細なクラック、セラミックを構成する元素の欠損、によって形成される。これらの細孔は、少なくとも1種類がセラミック担体に形成されていればよいが、複数種類を組み合わせて形成することもできる。
【0035】
本発明では、セラミック担体としては、例えば、理論組成が2MgO・2Al・5SiOで表されるコーディエライトを主成分として含有し、ハニカム形状の担体形状を有するコーディエライトハニカム構造体が好適に使用される。触媒成分イオンの直径は、通常、0.1nm程度であるので、コーディエライトハニカム構造体の表面に形成される細孔の直径、あるいは幅は、その1〜1000倍の0.1〜100nm、細孔の深さは、触媒成分イオンの直径の1/2倍以上、つまり0.05nm以上であることが好ましい。セラミック担体は、このような細孔を上記所定数以上有することにより、必要な強度を確保しながら、触媒成分の直接担持を可能にする。
【0036】
セラミック担体が、酸素欠陥や格子欠陥からなる細孔を有する場合、細孔の数はコーディエライトハニカム構造体中の酸素量に大きく関係し、細孔を上記所定数以上とするためには、コーディエライトハニカム構造体の酸素量が47重量%未満もしくは48重量%より多くなるようにする。また、コーディエライト結晶の結晶軸の内、b軸の格子定数が16.99より大きい又は16.99より小さくなるようにするとよい。具体的には、コーディエライトハニカム構造体が、酸素欠陥、あるいは格子欠陥の少なくとも1種類を単位結晶格子に1個以上有するコーディエライト結晶を4×10−6%以上、好ましくは、4×10−5%以上含有する、あるいは、酸素欠陥あるいは格子欠陥の少なくとも1種類をコーディエライトの単位結晶格子当たり4×10−8個以上、好ましくは、4×10−7個以上含有すると、セラミック担体の細孔の数が、1×1016個/L以上、好ましくは1×1017個/L以上となる。
【0037】
一般に、触媒成分を担持する場合、触媒成分イオンを溶媒に溶解し、この溶液にセラミック担体を浸漬することによって触媒を担持している。従来のガンマアルミナでコートしたコーディエライトハニカム構造体の場合、触媒成分が担持されるガンマアルミナの細孔径は、通常、2nm程度であるが、触媒金属粒子は、通常、5nm程度とガンマアルミナの細孔径より大きい。このことから、ガンマアルミナの細孔は触媒金属粒子を保持するというよりは、触媒担持時に触媒成分イオンを保持するために必要と考えられる。触媒成分イオンの直径と、直径、あるいは幅が同等以上の細孔、すなわち0.1nm以上の直径、あるいは幅を有する細孔であれば、触媒成分のイオンを保持することが可能である。ただし、ハニカム構造体の強度を確保するためには、細孔の直径、あるいは幅が触媒成分イオンの直径の1000倍程度以下であることが必要であり、これは直径が0.1nmの場合、100nm以下となる。また、細孔の深さは、担持する触媒成分イオンの直径の1/2倍以上あれば、触媒成分イオンを保持可能である。
【0038】
欠陥やクラックからなる細孔は極めて微細であり、通常の方法では比表面積を測定することができないため、本発明では、所定量の触媒成分を担持するに必要な細孔の数を規定する。現在使用されている三元触媒に担持されている触媒金属は、ハニカム構造体の容積1L当たり、およそ1.5gである。触媒金属が排ガス浄化性能を現すためには、触媒金属粒子の直径が1000nm程度好ましくは20nm程度より小さい必要がある。
【0039】
現在使用されている三元触媒と同じ1.5g/Lの白金が担持され、その白金粒子の直径が全て1000nmであるとすると、担持された白金粒子の数は、1.34×1011個/L、20nmであるとすると1.67×1016個/Lである。触媒金属を担持するためには、触媒金属粒子1個に対して、およそ1個の細孔が必要であるため、触媒金属粒子を直接担持するために必要な細孔の数は、少なくとも1×1011個/Lないしそれ以上、好ましくは1×1016個/Lないしそれ以上である。また、触媒金属粒子の平均直径が全て10nm程度になると、浄化性能は三元触媒と同等となる。この時の触媒金属粒子の個数は、1.34×1017個/Lであり、必要とされる細孔の数は、1×1017個/L以上であるとより好ましい。
【0040】
一方、セル壁厚100μm、セル密度400cpsi(1平方インチ当たりのセル個数)のコーディエライトハニカム構造体の重量は、容積1L当たり約230gである。これが全てコーディエライト(MgAlSi18)からなっているとすると、コーディエライト結晶の数は、コーディエライトハニカム構造体に酸素欠陥又は格子欠陥が1×1016個/Lあり、結晶1個には欠陥が1個しか形成されないとすると、コーディエライト結晶全体に対する欠陥を有する結晶の割合は、欠陥が1×1017個の場合には、4×10−5%となる。コーディエライト結晶1個当たりに含有される欠陥の数も、欠陥が1×1016個/Lの場合は、単位結晶格子当たりの欠陥の数が4×10−8個、欠陥が1×1017個/Lの場合には、単位結晶格子当たりの欠陥の数は4×10−7個となる。
【0041】
本発明では、コーディエライトハニカム構造体に触媒担持能を持たせるために、(1)コーディエライト結晶格子に酸素欠陥や格子欠陥(金属空格子点、格子歪)を形成する、(2)アモルファス相及び結晶相の少なくとも一方に多数の微細なクラックを形成する、(3)液相法によりコーディエライト構成元素や不純物を溶出させて欠損を形成する、(4)気相法により化学的ないし物理的に欠損を形成する、(5)酸素吸蔵能を有する物質を含有させる、といった方法で細孔を形成する。本発明では、これらの細孔を上記所定数以上形成することにより、ガンマアルミナをコートすることなく直接触媒成分を担持可能である。また、これらの方法で形成される細孔は、従来のように、セラミック結晶格子を破壊することがないので、セル壁厚を薄くしても流路方向の圧壊強度を10MPa以上、熱膨張係数を1×10−6/℃以下とすることができる。
【0042】
次に、これらの方法により触媒担持能を持たせたコーディライトハニカム構造体について説明する。始めに、上記(1)のコーディエライトの結晶格子に酸素欠陥・格子欠陥(金属空格子点と格子歪)を有したコーディエライトハニカム構造体について説明する。触媒成分の担持を可能とする欠陥には、酸素欠陥と格子欠陥がある。このうち、酸素欠陥は、コーディエライト結晶格子を構成するための酸素が不足することにより生ずる欠陥であり、酸素が抜けたことにより形成される細孔に触媒成分を担持できる。必要量の触媒成分の担持を可能とするには、ハニカム構造体中に含まれる結晶相の酸素量が47重量%未満となるようにすることが好ましい。格子欠陥は、コーディエライト結晶格子を構成するために必要な量以上の酸素を取り込むことにより生じる格子欠陥であり、結晶格子の歪みや金属空格子点によって形成される細孔に触媒成分を担持することが可能となる。具体的には、ハニカム構造体中に含まれる酸素量が48重量%より多くなるようにすることが好ましい。
【0043】
結晶格子に欠陥を有するコーディエライトハニカム構造体は、ハニカム構造体の焼成雰囲気を調整することによって、あるいは特定の出発原料を用いることによって、製造することができる。このうち、酸素欠陥については、1)焼成雰囲気を減圧又は還元雰囲気とする、2)コーディエライト化原料の少なくとも一部に酸素を含まない化合物を用い、低酸素濃度雰囲気で焼成する、3)酸素以外のコーディエライトの構成元素の少なくとも1種類について、その一部を該元素より価数の小さな元素で置換する、ことにより形成することができる。また、格子欠陥については、4)酸素以外のコーディエライトの構成元素の一部を該元素より価数の大きな元素で置換する、ことにより形成することができる。
【0044】
次に、これらの形成方法について説明する。まず、上記1)の方法により、酸素欠陥を有するコーディエライトハニカム構造体を製造する場合、出発原料としては、コーディエライト化原料として一般に用いられる材料、例えば、タルク(MgSi10(OH))、カオリン(AlSi(OH))、カオリンの仮焼物(仮焼カオリン)、アルミナ(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))等を使用することができる。これら化合物以外にも、コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgのうち少なくとも1種類を含む酸化物、水酸化物等をSi源、Al源、Mg源として用いることができる。
【0045】
これらのコーディエライト化原料を、上記理論組成となるように調合し、バインダ、潤滑剤、保湿剤等の成形助剤、及び水を添加して混練し、押出成形することによりハニカム形状に成形する。この成形体を大気中で約500℃以上に加熱し、脱脂した後、減圧雰囲気又は還元雰囲気で焼成してハニカム構造体とする。減圧雰囲気で焼成する場合、真空度は4000Pa(30Torr)程度ないしそれ以下とすることが好ましく、焼成は、通常、約1350℃以上で、2時間以上保持することによって行う。
【0046】
減圧雰囲気で焼成することにより、焼成時の反応過程で原料中に含まれる酸素が気体となって出ていくため、コーディエライト結晶を構成するための酸素が不足して、コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成される。また、還元雰囲気で焼成する場合も同様であり、水素等の還元ガス雰囲気中で、上記と同様の条件で焼成すると、焼成時の反応過程で原料中に含まれる酸素が還元ガスと反応して抜け出す。このため、コーディエライト結晶を構成するための酸素が不足して、コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成される。コーディエライト化原料として、酸化物のみを用いた場合には、原料中に含まれる酸素のみでコーディエライト結晶を構成するための酸素をまかなうことが可能であるため、減圧雰囲気又は還元雰囲気として酸素を取り除く必要がある。
【0047】
上記2)の方法により、酸素欠陥を有するコーディエライトハニカム構造体を製造する場合には、コーディエライト化原料となるSi源、Al源、Mg源の少なくとも一部に、Si、Al、Mgの少なくとも1種類を含み酸素を含まない化合物を使用する。これらの化合物としては、コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの少なくとも1種類を含む窒化物、フッ化物又は塩化物等のハロゲン化物等が挙げられ、Si源、Al源、Mg源の内、少なくとも1種類について、その一部又は全部を、酸素を含まない上記化合物とすればよい。その他のコーディエライト化原料は、上記1)の方法と同様のものが使用できる。
【0048】
このコーディエライト化原料を上記理論組成となるように調合し、上記1)の方法と同様にしてハニカム状に成形、脱脂した後、低酸素濃度雰囲気で焼成する。雰囲気中の酸素濃度は、0%以上3%未満、好ましくは0%以上1%以下とし、これにより、コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成される。コーディエライト化原料として酸素を含まない化合物を使用すると、原料中に含まれる酸素だけでは、コーディエライト結晶を構成するための酸素が不足する。そこで、不足する酸素を焼成雰囲気から補給しようとするが、焼成雰囲気の酸素濃度が低いため、反応過程においてコーディエライト結晶を構成するために必要とされるだけの酸素が十分に供給されず、コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成されることになる。
【0049】
このように、コーディエライト化原料として酸素を含まない化合物を使用した場合において、低酸素濃度雰囲気で焼成する代わりに、1)の方法のように、減圧雰囲気又は還元雰囲気で焼成することもできる。この場合も、反応過程においてコーディエライト結晶を構成するために必要な酸素が十分に供給されないために、コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成される。上記3)の方法では、コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの少なくとも一部を、その元素より価数の小さい元素で置換することにより、酸素欠陥を形成する。この方法によりコーディエライトハニカム構造体を製造する場合は、Si源、Al源、Mg源の一部を、コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの代わりに、これらの元素より価数の小さな元素を含む化合物で置換したコーディエライト化原料を使用する。
【0050】
コーディエライトの構成元素の価数は、それぞれ、Si(4+)、Al(3+)、Mg(2+)であるので、このうち少なくとも1種類について、その一部を該元素より価数の小さな元素を含む化合物とすればよい。これら化合物は、酸化物、水酸化物、窒化物、ハロゲン化物等のいずれを用いてもよく、それ以外のSi源、Al源、Mg源は、通常の原料を用いて、コーディエライト化原料を調製する。これを、同様の方法でハニカム状に成形、脱脂した後、焼成する。焼成雰囲気は、減圧雰囲気、還元雰囲気、大気雰囲気等の酸素含有雰囲気、あるいは酸素非含有雰囲気のいずれの雰囲気としてもよい。コーディエライトの構成に必要な酸素は原料中に含まれ、また、酸素欠陥は元素置換によるため、酸素濃度に影響されず、酸素濃度0〜100%の範囲で酸素欠陥が形成される。
【0051】
コーディエライトの構成元素は、Si(4+)、Al(3+)、Mg(2+)と正の電荷を有する。これらを価数の小さな元素で置換すると、置換した元素との価数の差と置換量に相当する正の電荷が不足し、結晶格子としての電気的中性を維持するため、負の電荷を有するO(2−)を放出する。このように、コーディエライトの構成元素を価数の小さな元素で置換することによっても、コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成される。
【0052】
上記4)の方法では、コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの少なくとも一部を、その元素より価数の大きい元素で置換することにより、格子欠陥を形成する。この方法によりコーディエライトハニカム構造体を製造する場合は、Si源、Al源、Mg源の一部を、コーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの代わりに、これらの元素より価数の大きな元素を含む化合物で置換したコーディエライト化原料を使用する。この場合も、Si、Al、Mgの少なくとも1種類について、その一部を該元素より価数の大きな元素を含む化合物とし、それ以外のSi源、Al源、Mg源は、通常の原料を用いて、コーディエライト化原料を調製する。これを、同様の方法でハニカム状に成形、脱脂した後、焼成する。
【0053】
4)の方法における焼成雰囲気は、大気雰囲気のように、酸素が十分に供給される雰囲気とする必要がある。なお、焼成雰囲気は、大気雰囲気である場合には、焼成中に脱脂が可能であるので、脱脂工程を省略することもできる。逆に、コーディエライトの構成元素を価数の大きい元素で置換すると、置換した元素との価数の差と置換量に相当する正の電荷が過剰となり、結晶格子としての電気的中性を維持するため、負の電荷を有するO(2−)を必要量取り込む。取り込まれた酸素が障害となって、コーディエライト結晶格子が整然と並ぶことができなくなり、格子欠陥が形成される。
【0054】
コーディエライト結晶格子に酸素欠陥が形成される場合、コーディエライトの単位結晶格子に含まれる酸素の量が、酸素欠陥を有しない単位結晶格子よりも少なくなる。また、酸素の抜けた部分がつぶれるように結晶格子が変形するため、コーディエライトの結晶軸のb軸の格子定数が小さくなる。一方、コーディエライト結晶格子に格子欠陥が形成される場合、コーディエライトの単位結晶格子に含まれる酸素の量が、格子欠陥を有しない単位結晶格子よりも多くなり、b軸の格子定数が変化する。具体的には、酸素欠陥が形成されることにより、ハニカム構造体の酸素量が47重量%未満になると、コーディエライト単位結晶格子中に含まれる酸素数は、17.2より少なくなり、コーディエライトの結晶軸のb軸の格子定数は16.99より小さくなる。
【0055】
また、格子欠陥が形成されることにより、ハニカム構造体の酸素量が48重量%を越えると、コーディエライト単位結晶格子中に含まれる酸素数は、17.6より多くなり、結晶軸のb軸の格子定数は16.99より大きく又は小さくなる。以上のように、本発明では、コーディエライト結晶格子に形成される酸素欠陥又は格子欠陥によって、コーディエライトハニカム構造体に必要な量の触媒成分を担持させることが可能となる。なお、これらの欠陥の大きさは数オングストーム以下と考えられるため、窒素分子を用いたBET法のような通常の比表面積の測定方法では、比表面積として測定できない。
【0056】
次に、上記(2)のアモルファス相と結晶相の少なくとも一方に多数の微細なクラックを有するコーディエライトハニカム構造体について説明する。この微細なクラックは、コーディエライトハニカム構造体に、1)熱衝撃を与える、又は2)衝撃波を与える、ことによってアモルファス相又は結晶相に形成されるもので、これにより形成される多数の細孔に触媒成分を担持できる。触媒成分を担持するには、クラックの幅が触媒成分イオンの直径と同程度以上、通常、0.1nm以上で、深さが触媒成分イオンの直径の1/2以上、通常、0.05nm以上であることが必要とされる。ハニカム構造体の強度を確保するためには、クラックは小さい方が好ましく、通常、幅が100nm程度以下、好ましくは幅が10nm程度ないしそれ以下とする。
【0057】
上記1)の熱衝撃を与える方法としては、コーディエライトハニカム構造体を加熱した後、急冷する方法が用いられる。熱衝撃を与えるのは、コーディエライトハニカム構造体内に、コーディエライト結晶相及びアモルファス相が形成された後であればよく、通常の方法で、Si源、Al源、Mg源を含むコーディエライト化原料を成形、脱脂した後、焼成して得られたコーディエライトハニカム構造体を、所定温度に再加熱し、次いで、急冷する方法、あるいは、焼成して冷却する過程で、所定温度から急冷する方法のいずれを採用することもできる。熱衝撃によるクラックを発生させるには、通常、加熱温度と急冷後の温度の差(熱衝撃温度差)が約80℃以上であればよく、クラックの大きさは熱衝撃温度差が大きくなるのに伴い大きくなる。ただし、クラックが大きくなりすぎると、ハニカム構造体としての形状の維持が困難になるため、熱衝撃温度差は、通常、約900℃以下とすることが好ましい。
【0058】
コーディエライトハニカム構造体において、アモルファス相は結晶相の周りに層状に存在している。コーディエライトハニカム構造体を加熱した後、急冷することにより熱衝撃を与えると、アモルファス相と結晶相では熱膨張係数に差があるために、この熱膨張係数の差と熱衝撃の温度差に相当する熱応力が、アモルファス相と結晶相の界面付近に作用する。この熱応力にアモルファス相、あるいは結晶相が耐えられなくなると、微細なクラックが発生する。また、微細なクラックの発生量は、コーディエライトハニカム構造体中に存在するアモルファス相の量により制御できる。微細なクラックは、アモルファス相と結晶相の境界付近に形成されるため、アモルファス相が多くなれば、それに伴い、形成される微細なクラックも多くなる。
【0059】
コーディエライトハニカム構造体中に存在するアモルファス相は、コーディエライト原料中に微量に含まれるアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素が、ハニカム焼成時にフラックスの働きをしてアモルファス相を形成すると考えられる。そのため、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を添加することによって、アモルファス相の量を増加させて熱衝撃を与えた時の微細なクラックの発生量を増加させることができる。また、この際のアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素の添加量によって、微細なクラックの量を制御することが可能となる。添加による効果を得るには、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を、原料中に不純物として含まれる以上の量、通常、コーディエライトハニカム構造体中にアルカリ金属元素とアルカリ土類金属元素が、合計で、0.05重量%以上含有されるようにするとよい。なお、これらのアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素は、コーディエライト化原料の調製時に、アルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を含む化合物、例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩として添加することができる。
【0060】
熱衝撃の代わりに、上記2)の衝撃波を与える方法によってもアモルファス相又は結晶相に微細なクラックを形成することができる。この場合は、ハニカム構造体内の強度の低い部分が衝撃波のエネルギーに耐えられなくなったときに、微細なクラックが発生する。衝撃波を与える方法としては、超音波や振動等があり、微細なクラックの発生量は、衝撃波のエネルギー等により制御可能である。
【0061】
上記(1)のようにしてコーディエライト結晶格子に酸素欠陥や格子欠陥を形成したハニカム構造体に、更に、(2)のようにしてアモルファス相及び結晶相の少なくとも一方に多数の微細なクラックを形成することもできる。この場合は、上記(1)に示した方法で酸素欠陥や格子欠陥を有する、酸素量が47重量%未満又は48重量%を越え、結晶軸のb軸の格子定数が16.99より大きく又は小さいハニカム構造体を焼成した後、(2)に示した方法で熱衝撃又は衝撃波を与えることにより、酸素欠陥と格子欠陥の少なくとも1種類と、多数の微細なクラックを有するコーディエライトハニカム構造体を得ることができる。必要量の触媒成分を担持するには、酸素欠陥や格子欠陥と微細なクラックが、合計で1×10個/L以上、好ましくは1×10個/L以上となっていればよい。上記2)の衝撃波を与える方法によってもアモルファス相又は結晶相に微細なクラックを形成することができる。
【0062】
次に、上記(3)の液相法によりコーディエライト構成元素や不純物を溶出させて欠損を形成したコーディエライトハニカム構造体について説明する。この欠損は、コーディエライト結晶中のMg、Alといった金属元素、アモルファス相に含まれるアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素、又はアモルファス相自身が、高温高圧水、超臨界流体、あるいはアルカリ溶液等の溶液に溶出することによって形成されるものであり、これらの元素等の欠損により形成される細孔に触媒成分を担持できる。
【0063】
コーディエライトハニカム構造体は、通常の方法で、Si源、Al源、Mg源を含むコーディエライト化原料を成形、脱脂した後、大気中で焼成することにより得られ、このコーディエライトハニカム構造体を、高温高圧水、超臨界流体、あるいはアルカリ溶液に浸漬する。これにより、コーディエライト結晶中のMg、Alといった金属元素、アモルファス相に含まれるアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素、又はアモルファス相自身がこれら溶液に溶出して細孔が形成される。細孔の大きさは、溶液の温度、圧力、溶媒等により制御可能であり、具体的には、10MPa、300℃の高温高圧水、CO等の超臨界流体、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ溶液といった溶液が用いられる。また、上述したように、コーディエライト化原料にアルカリ金属元素やアルカリ土類金属元素を添加することにより、形成されるアモルファス相を調整することができるため、これらの添加量を調整することによっても、細孔の制御が可能である。
【0064】
次に、上記(4)の気相法により化学的ないし物理的に欠損を形成したコーディエライトハニカム構造体について説明する。コーディエライトハニカム構造体をドライエッチング、あるいはスパッタエッチングすることにより細孔が形成される。ドライエッチングの場合、反応ガスを高周波等により放電させて、反応ガスを励起状態にする。この反応ガスとコーディエライト構成元素のSi、Al、Mgとが反応すると揮発性物質を形成し、この物質が揮発して排気されることにより、コーディエライトがエッチングされる。このように、コーディエライトが化学的にエッチングされた欠損部分が細孔となり、触媒担持が可能となる。反応ガスとしてはCF等が用いられ、これがコーディエライト構成元素と反応してSiF等の揮発性物質が形成される。ドライエッチングの程度は、エッチング時間、反応ガス種類、供給エネルギー等により制御できる。
【0065】
スパッタエッチングの場合、高周波等で励起したAr等のプラズマ内にコーディエライトハニカム構造体をおくと、Arイオン等がコーディエライト表面に衝突し、コーディエライト構成元素の単原子、あるいは複数個の原子の塊が吹き飛ばされて、コーディエライトがエッチングされる。このように、コーディエライトが物理的にエッチングされた欠損部分が細孔となり、触媒担持が可能となる。スパッタエッチングの程度は、エッチング時間、励起ガス種類、供給エネルギー等により制御できる。
【0066】
次に、上記(5)の酸素吸蔵能を有する物質を含有させたコーディエライトハニカム構造体について説明する。酸素吸蔵能を有する物質、例えば、CeOは、雰囲気の酸素濃度の変化に伴い、酸素の出し入れをする。つまり、雰囲気の酸素濃度が高い場合にはCeの価数が4+であるが、酸素濃度が低下すると価数が3+となり、価数の変化により電気的中性が崩れるため、酸素を放出又は吸収することにより電気的中性を維持する。このような酸素吸蔵能を有する物質は、従来は三元触媒における助触媒として用いられ、排ガス中の酸素濃度の変動に応じて酸素を出し入れして空燃比を理論空燃比近傍に調整する作用を有している。
【0067】
このように、複数の価数を取り得るCeをコーディエライトの構成元素と置換する形でコーディエライトハニカム構造体に含有させると、上記(1)の場合と同様に、価数の変化を補うために酸素の過不足が生じて、コーディエライトの結晶格子に酸素欠陥又は格子欠陥が形成される。この酸素欠陥又は格子欠陥が細孔となり、触媒担持が可能となると同時に、コーディエライトハニカム構造体に酸素吸蔵能を付与することができる。すなわち、ガンマアルミナをコートすることなく触媒を直接担持でき、しかも、酸素吸蔵能を有する助触媒を別途担持することなく酸素吸蔵能を発現できる。酸素吸蔵能を持たせるには、コーディエライトハニカム構造体中のCeO含有量を0.01重量%以上とすることが望ましい。
【0068】
CeOを含有するコーディエライトハニカム構造体を得るには、Ceをコーディエライトの構成元素であるSi、Al、Mgの内、少なくとも1種類の一部と置換させる。置換方法は、上記(1)の場合と同様であり、Si源、Al源、Mg源の一部を、Si、Al、Mgの代わりにCeを含む化合物で置換したコーディエライト化原料を用いればよい。大気雰囲気では、通常、Ceの価数は4+であるので、これより価数の小さいMg(2+)、Al(3+)と置換した場合に、上記(1)の4)と同様にして格子欠陥が形成されるのはもちろん、Si(4+)と置換しても、通常、Ceの一部は価数が3+となっているため、酸素欠陥による細孔が形成される。
【0069】
このように、置換元素としてCeを用いることで、触媒担持能及び酸素吸蔵能を有するコーディエライトハニカム構造体を得ることができる。助触媒としてのCeOを担体に担持させた場合には、CeOが熱劣化により粒成長して酸素吸蔵能を低下させるおそれがあるが、CeOをコーディエライト構造中に含有させた場合には粒成長が起こらないので、酸素吸蔵能が低下することもない。また、コーディエライトハニカム構造体を焼成した後、上記(2)で示したようにして熱衝撃又は衝撃波を与えることによって、微細なクラックを発生させてもよい。これにより、形成される細孔の数が増加し、触媒担持能の向上させることができる。あるいは、上記(1)で示した方法と組み合わせて、Ce以外の置換元素を用いたり、焼成雰囲気を調整して、形成される酸素欠陥又は格子欠陥の数を調整することもできる。
【0070】
なお、上記(1)〜(4)の方法で触媒担持能を持たせたコーディエライトハニカム構造体に、CeO等の酸素吸蔵能を有する助触媒を担持させて酸素吸蔵能を付与することもできる。この場合、ガンマアルミナをコートすることなく、コーディエライトハニカム構造体が有する細孔を利用して助触媒を担持できるので、触媒担持能に加えて酸素吸蔵能を有するコーディエライトハニカム構造体を容易に得ることができる。酸素吸蔵能を有する助触媒を担持させる場合、イオンや錯体のような助触媒の前段階物質を担持させて熱処理することによって担持してもよい。
【0071】
更に、本発明のセラミック体では、基材セラミックを構成する元素の内、少なくとも1種類又はそれ以上の元素を、構成元素以外の元素と置換することにより、この置換元素に対して触媒成分を直接担持可能である。触媒成分の直接担持により得られるセラミック触媒体は、例えば、自動車用排ガス浄化触媒等として好適に使用される。基材セラミックには、理論組成が、2MgO・2A1・5SiOで表されるコーディエライトを成分として含むセラミックが好適に用いられる。具体的には、コーディエライトを、1容量%以上、好ましくは、5容量%以上含むセラミック体が好適に用いられる。セラミック体の形状は、特に制限されず、例えば、ハニカム状、フォーム状、中空繊維状、繊維状、粉体状又はペレット状等、種々の形状とすることができる。
【0072】
基材セラミックの構成元素(Si、A1、Mg)と置換される元素は、これらの構成元素よりも担持される触媒成分との結合力が大きく、触媒成分を化学的結合により担持可能な元素が用いられる。このような置換元素としては、具体的には、これらの構成元素となる元素で、その電子軌道にd又はf軌道を有する少なくとも1種類又はそれ以上の元素が挙げられ、好ましくは、そのd又はf軌道に空軌道を有している元素、又は酸化状態を2つ以上持つ元素が用いられる。d又はf軌道に空軌道を有する元素は、担持される貴金属触媒等とエネルギー準位が近く、電子の授与が行われやすいため、触媒成分と結合しやすい。また、酸化状態を2つ以上持つ元素も、電子の授与が行われやすく、同様の作用を有する。
【0073】
d又はf軌道に空軌道を有する置換元素の具体例としては、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Lu、Hf、Ta、W、Re、○s、Ir、Pt等が挙げられ、好ましくは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Mo、Ru、Rh、Pd、Ce、W、Os、Ir、Ptから選ばれる少なくとも1種類又はそれ以上の元素が用いられる。なお、上記元素の内、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ce、Pr、Eu、Tb、Ta、W、Re、Os、Ir、Ptは、酸化状態を2つ以上有する元素でもある。
【0074】
また、これら以外の酸化状態を2つ以上持つ元素の具体例としては、Cu、Ga、Ge、As、Se、Br、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Te、I、Yb、Au等が挙げられ、好ましくは、Cu、Ga、Ge、Se、Pd、Ag、Auから選ばれる、少なくとも1種類又はそれ以上の元素が用いられる。本発明のセラミック体の基材である高比表面積コーディエライト多孔体は、針状結晶相のみで構成されており、焼結が進行しにくい構造を取るため、高温での熱処理によっても焼結による比表面積の低下を抑制することができる。このことから、本発明のセラミック体の基材である高温安定・高比表面積コーディエライト多孔体から、直接、触媒担体としてのハニカム構造体を製造することが可能となる。
【0075】
すなわち、本発明のセラミック体の基材である高温安定・高比表面積コーディエライト多孔体から、直接、触媒担体としてのハニカム構造体を製造することにより、従来製造されているハニカム構造体の製造工程において、ガンマアルミナのコーティング等の工程を省略させることが可能となり、触媒担持用ハニカム構造体の製造コストが大幅に低減できる。本発明では、上記高温安定・高比表面積コーディエライト多孔体を、触媒担持用ハニカム構造体として用いることにより、従来問題となっていた長時間使用することによるガンマアルミナコーティング層の剥離に起因する触媒品質の劣化を皆無とすることができる。
【0076】
また、本発明では、上記高温安定・高比表面積コーディエライト多孔体を触媒担持用ハニカム構造体として用いることにより、ハニカム触媒の製造工程を簡略化することが可能となる。本発明のセラミック体の基材の高温安定・高比表面積コーディエライト多孔体は、1ナノメートル以上、0.1ミクロン以下の微細な針状結晶相で構成されるため、Pt、Ph、及びPd等の活性触媒を容易に担持させることが可能となる。
【0077】
すなわち、本発明では、上記高温安定・高比表面積コーディエライト多孔体を触媒担持用ハニカム構造体として用いることにより、貴金属触媒を担持させたハニカム触媒を低コストで製造し、提供することが実現される。本発明のコーディエライト多孔体は、全体が針状結晶相で構成されているため、高温における熱処理でも、焼結による比表面積の低下を抑制することができ、また、比表面積が大きいハニカム構造体として直接製造することができるので、例えば、高温安定・高比表面積触媒担持用コーディエライト多孔体として好適に使用することが可能である。
【0078】
上述の方法により製作した触媒担持能を有するコーディエライトハニカム構造体は、内燃機関の排ガス浄化用触媒等に用いられるセラミック担体として好適に使用される。このセラミック担体は、例えば、コーディエライトハニカム構造体が有する細孔に、ガンマアルミナのコートなしに、0.1g/L以上の触媒成分を担持することができ、これにより、低熱容量、高耐熱衝撃性、低圧損なセラミック触媒体が得られる。触媒成分としては、触媒能を有する金属、及び触媒能を有する金属の酸化物の少なくとも1種類を用いる。触媒能を有する金属としては、例えば、Pt、Pd、Rh等の貴金属が、触媒能を有する金属の酸化物としては、例えば、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Sn、Pb等の金属のうち少なくとも1つ以上の金属を含む酸物が使用される。また、助触媒として、ランタノイド元素、遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素又はその酸化物複合酸化物の1種又は複数種を同時に使用することができる。
【0079】
触媒成分を担持する方法としては、例えば、触媒成分を溶媒に溶解して、コーディエライトハニカム構造体に含浸させ、欠陥やクラック等の細孔内に触媒成分を担持させる液相法の他、CVD法、PVD法等の気相法、超臨界流体を使用する方法等が使用される。本発明では、コーディエライトハニカム構造体に形成される欠陥やクラック等の細孔であるため、気相法や超臨界流体を使用する方法のように微細な細孔の内部まで入り込みやすい媒体を用いる方法がより望ましい。液相法では、溶媒として水を用いることもできるが、水よりも表面張力の小さな溶媒、例えば、メタノール等のアルコール系溶媒を用いることが好ましい。
【0080】
水よりも表面張力の小さな溶媒を用いることで、細孔内に十分浸透させることができる。この際、振動を与えながら、あるいは真空脱泡しながら浸漬させると、溶媒が細孔内に入り込みやすくなる。また、触媒成分を同一組成又は異なる組成で複数回に分けて、必要な量となるまで担持させるとよい。これらの方法により、細孔をより効果的に活用して、0.5g/L以上の触媒成分を担持することが可能である。このようにして作製される本発明のセラミック触媒体は、セラミック担体表面にガンマアルミナのコート層を形成することなしに、必要量の触媒成分が、直接、且つ狭い間隔で担持された、浄化性能に優れたセラミック触媒体となる。
【発明の効果】
【0081】
本発明により、1)高比表面積を有するコーディエライト針状形状粒子からなる針状セラミック体及び針状セラミック触媒体を提供できる、2)このコーディエライト多孔体は、少なくとも一部が針状結晶相で構成されているため、例えば、1000℃を超える高温に長時間曝されても、焼結による比表面積の低下が抑制される、3)針状形状粒子のアスペクト比が制御できる、4)針状コーディエライト結晶相が多量に生成する、5)コーディエライト焼結体そのものでハニカム体を直接製造することができる、6)この多孔体は、高温で安定な高比表面積を有する触媒担持用コーディエライトハニカム構造体として有用である、7)ハニカム内部にコーティングを施す従来の工程を省略できる、8)低コストで高品質のハニカム体を製造することが可能な新しい製造技術を提供できる、9)従来法による、例えば、コーディエライトハニカム体の内壁にガンマアルミナ等をコートした製品では、1000℃以上の高温で、ガンマアルミナがアルファアルミナに転移し、また、焼結が進行するために高比表面積を維持することが困難であるという問題があったが、本発明の製品では、そのような問題がない、という格別の効果が奏される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0082】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0083】
本実施例では、針状カオリンを配合した原料により、コーディエライトセラミック体を作製した。MgO−Al−SiOの三元系状態図に基づき、出発原料の混合比が定比のコーディエライト組成、すなわち、Al:MgO:SiO=2:2:5になるように、カオリン、タルク、Al(OH)、SiO、B、SrOを所定量秤量した。ここで、カオリンとしては、針状(ニードルライク)の形状を有していた。また、ウィスカー成長の助長、及び結晶化温度の低温化を目的として、SrO及びBを添加した。表1には、その配合比を示す。混合粉末を、エタノールを媒体としてボールミルにて24時間混合し、スプレードライヤーを使って乾燥造粒後、金型内に入れ、一軸プレスにて、直径20ミリ、厚さ5ミリのペレット状試験片を作製した。最高焼成温度は1100℃から1400℃の間で5通りに変化させ、最高温度での保持時間は4時間、昇温速度は3℃/分で一定とした。その結果、針状のコーディエライトを生成させるためには、最高温度を1300℃から1400℃の間で設定することが好適であることが判明した。図1には、焼成温度1350℃として得られた試料の組織を、SEMで観察した例を示す。また、EDS、の分析結果からSi、Mg、Alが検出され、XRDの分析結果と合わせて検討の結果、針状のコーディエライトが生成していることが確認された。
【0084】
【表1】

【実施例2】
【0085】
本実施例では、焼成過程で消失する物質(造孔材)としてカーボンを配合し、コーディエライトセラミック体を作製した。表1に示す混合粉末に対して、平均粒径0・02μmのカーボンを10重量%添加した。カーボンは造孔材である。この混合粉末に、エタノールを媒体として、ボールミルにて24時間混合し、スプレードライヤーを使って乾燥造粒後、金型内に入れ、一軸プレスにて、直径20ミリ、厚さ5ミリのペレット状試験片を作製した。最高焼成温度は、1350℃、最高温度での保持時間は4時間、昇温速度は5℃/分とした。実施例1で得られた針状体の生成量よりも多量の針状体の生成が確認された。EDSの分析結果から、Si、Mg、Alが検出された。XRDの分析結果と合わせて検討した結果、カーボンの添加により針状体の生成量は無添加材に比べて増加していることがわかった。その理由としては、焼結し緻密化する前段階において、カーボン添加により成長空間が形成され、結晶構造に起因した異方成長がしやすくなったためと考えられる。
【実施例3】
【0086】
実施例2と同様の成分を使用し、押し出し成形によってハニカムを作製した。得られたコーディエライトハニカムから試験片を切り出し、SEMで観察した結果。ペレットを使用した場合と同様に、表面に針状体が生成しており、これを、EDSで分析した結果、Si、Mg、Alが検出され、針状のコーディエライトが生成していることが確認された。
【実施例4】
【0087】
本実施例では、ハニカムの表面を、カオリンを含むスラリーでコーティングし、ハニカムの表面に針状コーディエライトを形成した。コーティングスラリーの出発原料として、カオリン(Kyoritsu Materials、 Japan)、 水酸化アルミニウム(Al(OH)、(Koujyundo Chemicals、 Japan)、シリカ(silica quartz、 d50〜0.8μm、 Koujyundo Chemicals、 Japan)を用いた。先ず、出発原料の水系スラリーを調整した。分散剤としてpolyelectrolyte(ammonium polyacrylate、 Toa Gohsei、 ALON A-6114)を1〜2重量%添加した。スラリーの化学組成を表2に示す。スラリーをビーカーに移し、空気を吹き込みながら1時間以上脱気を行なった。脱気したスラリーに含まれる固体成分の充填率は20〜30%に保った。高さ1.5cm、直径5.0cmのコーディエライトハニカム担体にスラリーを被覆した。ハニカム担体を少なくとも2回スラリー中に浸漬してスラリーを被覆した。ハニカム担体に浸透した過剰のスラリーは完全に排除し、均質なコート層を得る目的でエアガンを用いて細孔内の過剰なスラリーを吹き飛ばした。スラリーをコートしたハニカム担体は、室温で24時間乾燥させ、引き続き真空乾燥機を用いて70℃で24時間乾燥させた。
【0088】
焼結は、管状炉を用い、空気気流中1300℃で4時間行なった。焼成パターンは以下に示す条件を用いた。600℃まで1℃/minで昇温、600℃で1時間保持、1300度まで3℃/minで昇温、1300℃で4時間保持、1000℃まで2℃/minで降温、室温まで急速降温した。試料の微細構造はFE−SEMを用いて評価した。図2にその結果を示す。1350℃で4時間以上焼結させたハニカム担体の微細構造観察より、コーディエライトウィスカーがコーティング層上に成長することが判った。コート層の微細構造を観察(図2)すると、VLSメカニズムによるウィスカー成長は認められず、ニードルライクのウィスカーのみ確認された。この場合、ニードルライクのウィスカーは溶解−析出のメカニズムにより生成したものであった。
【0089】
【表2】

【実施例5】
【0090】
本実施例は、実施例3に示す工程によって得られたハニカムをエッチング処理した。表面に生成した過剰のシリカを除去する目的でHFによりエッチング処理を行なった。HFによるエッチング処理を行なった試料と、エッチング処理を行なっていない試料の微細構造を、FE−SEMを用いて評価した。図3は、HFによるエッチングを施した試料の微細構造である。図3より判るように、HFによるエッチングで過剰のシリカが除去され、過剰のシリカに埋まっていたウィスカーが観察される。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明により、例えば、針状あるいは柱状形状を有する原料粒子、又は焼成過程で消失する物質(造孔材)を、原料中に配合することにより、制御された高アスペクト比の針状形状粒子を多量に含有するセラミック体を作製し、また、焼結体の表面に針状のセラミック体を成長させることにより、ナノオーダーの針状結晶相を析出させた構造を有する高比表面積のコーディエライト多孔体を製造し、提供することができる。この場合、原料の種類、形状、スラリー濃度、処理条件等により、生成する針状形状粒子の形状、特性を制御することが可能となる。本発明では、セラミック体の基材のコーディエライト多孔体全体が針状結晶相で構成されているため、高温における加熱処理でも、焼結による比表面積の低下を劇的に抑制することが可能となる。このことから、触媒担持用コーディエライトハニカム構造体の製造において、ハニカム内壁へのガンマアルミナのコーティング等の工程を省略することができる。高温で安定な高比表面積を有するコーディエライトハニカムを作製する技術を提供できる。また、本発明は、高比表面積コーディエライト多孔体からなる針状セラミック体、その製造方法及びその製品としての針状セラミック触媒体を提供するものであり、当技術分野におけるこれらの新技術を提供するものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】針状カオリンを使用して、焼成温度1350℃で得られたセラミック試料の組織の走査型顕微鏡写真を示す。
【図2】コーディエライトハニカム担体にスラリーを被覆して作製した試料の微細構造の走査型顕微鏡写真を示す。
【図3】コーディエライトハニカム担体にスラリーを被覆して作製した試料に、更に、HFによるエッチングを施した試料の微細構造の走査型顕微鏡写真を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有することを特徴とするセラミック体。
【請求項2】
セラミック体の表面の一部又は全部に、コート層として、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有することを特徴とするセラミック体。
【請求項3】
セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有し、セラミック体のセラミック粒子表面に、触媒成分を直接担持可能な細孔及び元素の少なくとも一方を有していることを特徴とするセラミック体。
【請求項4】
セラミック体の表面の一部又は全部に、コート層として、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状又は柱状形状を有する原料粒子から生成した針状形状粒子を有し、セラミック体のセラミック粒子表面に、触媒成分を直接担持可能な細孔及び元素の少なくとも一方を有していることを特徴とするセラミック体。
【請求項5】
上記セラミック粒子に、Sr及び/又はBが含有されている請求項1から4のいずれかに記載のセラミック体。
【請求項6】
上記細孔が、セラミック粒子結晶格子中の欠陥、セラミック粒子表面の微細なクラック、及びセラミック粒子を構成する元素の欠損の内、少なくとも1種類からなる請求項3又は4に記載のセラミック体。
【請求項7】
上記微細なクラックの幅が、100nm以下である請求項6に記載のセラミック体。
【請求項8】
上記細孔が、担持する触媒イオンの直径の1000倍以下の直径あるいは幅を有し、この細孔の数が、1×1011個/L以上である請求項6に記載のセラミック体。
【請求項9】
上記細孔が、セラミック粒子の構成元素の一部を価数の異なる金属元素で置換することにより形成される欠陥からなる請求項6に記載のセラミック体。
【請求項10】
上記欠陥は、酸素欠陥及び格子欠陥の少なくとも1種類からなり、上記針状形状粒子の単位結晶格子に欠陥を1個以上有するセラミック結晶を、4×10−6%以上含有する請求項9に記載のセラミック体。
【請求項11】
上記置換元素上に上記触媒成分が化学的結合により担持される請求項3又は4に記載のセラミック体。
【請求項12】
上記置換元素は、その電子軌道にd又はf軌道を有する少なくとも1種類又はそれ以上の元素である請求項11に記載のセラミック体。
【請求項13】
上記針状形状粒子が、Si、Al、Mgと、少なくともSr、Ceの内の1種類以上を含む請求項1から4のいずれかに記載のセラミック体。
【請求項14】
上記針状形状粒子が、コーディエライトである請求項1から4のいずれかに記載のセラミック体。
【請求項15】
上記針状形状粒子の表面から少なくとも単位結晶格子5個分以上が、コーディエライトである請求項14に記載のセラミック体。
【請求項16】
上記針状形状粒子のアスペクト比が、5以上である請求項1から4のいずれかに記載のセラミック体。
【請求項17】
上記セラミック体の形状が、粉末、ペレット、不織布、又はハニカム形状である請求項1から4のいずれかに記載のセラミック体。
【請求項18】
上記セラミック体の比表面積が、1m/g以上である請求項1から4のいずれかに記載のセラミック体。
【請求項19】
気孔率が、10%以上のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項20】
気孔率が、30%以上のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項21】
流路方向の熱膨張係数が、2×10−6/℃以下のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項22】
流路方向の熱膨張係数が、1×10−6/℃以下のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項23】
流路方向の圧壊強度が、5MPa以上のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項24】
流路方向の圧壊強度が、10MPa以上のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項25】
セル壁厚が、400μm以下のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項26】
セル壁厚が、100μm以下のセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項27】
細孔分布の分布幅が狭いセラミックハニカム体からなる請求項17に記載のセラミック体。
【請求項28】
上記分布幅が、平均細孔径の値の±1/2内に含まれる細孔容積が50%以上である請求項27に記載のセラミック体。
【請求項29】
請求項1から28のいずれかに記載のセラミック体に触媒成分を担持したことを特徴とするセラミック触媒体。
【請求項30】
上記触媒成分が、貴金属である請求項29に記載のセラミック触媒体。
【請求項31】
上記触媒成分の担持量が、0.1g/L以上である請求項30に記載のセラミック触媒体。
【請求項32】
請求項1から28のいずれかに記載のセラミック体、及び/又は請求項29から31のいずれかに記載のセラミック触媒体に、助触媒成分を含有することを特徴とするセラミック触媒体。
【請求項33】
上記助触媒成分が、ランタノイド元素、遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素又はその酸化物、複合酸化物の1種類又は複数種類である請求項32に記載のセラミック触媒体。
【請求項34】
上記助触媒成分の含有量が、6g/L以上である請求項33に記載のセラミック触媒体。
【請求項35】
Si源としてSiOとAlの化合物からなる原料を使用して、セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状であるセラミック体において、針状化のために、針状又は柱状形状を有する原料粒子を用いてセラミック体を製造することを特徴とするセラミック体の製造方法。
【請求項36】
針状化のための添加剤を添加する請求項35に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項37】
上記針状化のための添加剤が、ランタノイド元素、遷移金属元素、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素から選ばれる少なくとも1種類である請求項36に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項38】
上記針状又は柱状形状を有する原料粒子が、カオリンである請求項35に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項39】
焼結体の表面にカオリンを含むスラリーを被覆し、乾燥後、焼成し、前記カオリンを原料の一部として針状のセラミック体を成長させることにより、セラミック粒子の内、一部又は全部の粒子が、少なくともSi、Al、Mgを含み、その形状が針状である針状形状粒子から成るウィスカー成長した針状結晶相を有するセラミック体を製造することを特徴とするセラミック体の製造方法。
【請求項40】
上記スラリーの出発原料が、カオリン、水酸化アルミニウム、シリカからなる請求項39に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項41】
上記カオリンが、針状又は柱状である請求項39に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項42】
請求項35から41のいずれかに記載の方法で作製したセラミック体に、酸処理、アルカリ処理、又はドライエッチングを施すことにより、針状形状粒子を発現させることを特徴とする針状形状粒子を有するセラミック体の製造方法。
【請求項43】
上記酸処理として、弱酸による処理を施すことにより、針状形状粒子を発現させる請求項42に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項44】
上記弱酸が、0.001規定から2規定の弱酸である請求項43記載のセラミック体の製造方法。
【請求項45】
上記弱酸が、カルボキシル基(−COOH)を有する酸、リン酸、硫化水素の内、少なくとも1種類の酸を用いる請求項43又は44に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項46】
針状形状粒子を所望の形状に成形し、焼成することで針状形状粒子を成長させる請求項35又は39に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項47】
針状形状粒子を形成させるための原料を所望の形状に成形し、焼成することで針状形状粒子を成長させる請求項35又は39に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項48】
焼成過程において、焼結が完了する前に、針状結晶粒子を成長させる請求項35又は39に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項49】
焼結の完了を遅延させ、針状セラミック体を成長させるための空間を設けるために、焼成過程で消失する物質を原料の一部として配合し、焼成過程で該消失する物質を焼き飛ばす請求項35又は39に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項50】
上記焼成過程で消失する物質がカーボンである請求項49に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項51】
請求項1から28のいずれかに記載のセラミック体に、触媒成分を担持させることを特徴とするセラミック触媒体の製造方法。
【請求項52】
請求項1から28のいずれかに記載のセラミック体、及び/又は請求項29から34のいずれかに記載のセラミック触媒体に、助触媒成分を担持することを特徴とするセラミック触媒体の製造方法。
【請求項53】
請求項1から28のいずれかに記載のセラミック体、及び/又は請求項29から34のいずれかに記載のセラミック触媒体のセラミック原料に、助触媒成分を混合させておく請求項52に記載のセラミック触媒体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−206390(P2006−206390A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−21516(P2005−21516)
【出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】