セラミック回路基板およびそれを用いた電子装置
【課題】放熱性の向上されたセラミック回路基板および電子装置を提供すること。
【解決手段】セラミック回路基板は、多層基板と、多層基板の上面または下面にろう材2によって接合された表層金属回路板3と、多層基板の内部に設けられた内層金属回路板4および金属柱5とを含んでいる。多層基板は、複数のセラミック基板1と複数のセラミック基板1の間に設けられた金属板11とを含んでいる。金属板11は、回路貫通孔11aを有している。複数のセラミック基板1および金属板11は、互いにろう材によって接合されている。内層金属回路板4は、回路貫通孔11a内に設けられている。金属柱5は、複数のセラミック基板1に形成された貫通孔1a内に配置されており、内層金属回路板4にろう材によって接合された第1の端部と表層金属回路板3にろう材によって接合された第2の端部とを有している。
【解決手段】セラミック回路基板は、多層基板と、多層基板の上面または下面にろう材2によって接合された表層金属回路板3と、多層基板の内部に設けられた内層金属回路板4および金属柱5とを含んでいる。多層基板は、複数のセラミック基板1と複数のセラミック基板1の間に設けられた金属板11とを含んでいる。金属板11は、回路貫通孔11aを有している。複数のセラミック基板1および金属板11は、互いにろう材によって接合されている。内層金属回路板4は、回路貫通孔11a内に設けられている。金属柱5は、複数のセラミック基板1に形成された貫通孔1a内に配置されており、内層金属回路板4にろう材によって接合された第1の端部と表層金属回路板3にろう材によって接合された第2の端部とを有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板に金属板からなる回路が形成されたセラミック回路基板およびそれを用いた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子が搭載され
、大きな電流が流されるパワーモジュールまたはスイッチングモジュール等の電子装置に用いられる回路基板として、セラミック基板の両面に銅やアルミニウム等の金属板からなる金属回路板を接合したセラミック回路基板が用いられている。
【0003】
このようなセラミック回路基板は、電気自動車の制御装置または熱電変換による発電装置等の用途において需要が高まりつつあり、また、小型化または高密度化が要求されている。セラミック回路基板の回路を高密度化して小型化する方法として、セラミック回路基板の表面だけでなく内部にまで回路導体を形成する方法がある。
【0004】
その方法の1つとして、いわゆるセラミック多層配線基板の内部回路導体をセラミック層1層分の厚みを有しておりセラミック層と同時焼成されたメタライズで形成して、セラミック多層基板の表面に金属回路板を接合したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−31946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のセラミック回路基板において、内部回路導体は複数のセラミック層によって囲まれており、今後さらなる放熱性の向上を図るためには改善が必要なものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様によるセラミック回路基板は、多層基板と、多層基板の上面または下面にろう材によって接合された表層金属回路板と、多層基板の内部に設けられた内層金属回路板および金属柱とを含んでいる。多層基板は、複数のセラミック基板と複数のセラミック基板の間に設けられた金属板とを含んでいる。金属板は、回路貫通孔を有している。複数のセラミック基板および金属板は、互いにろう材によって接合されている。内層金属回路板は、回路貫通孔内に設けられている。金属柱は、複数のセラミック基板に形成された貫通孔内に配置されており、内層金属回路板にろう材によって接合された第1の端部と表層金属回路板にろう材によって接合された第2の端部とを有している。
【0008】
本発明の他の態様によるセラミック回路基板は、複数のセラミック基板のうち金属板上に設けられたセラミック基板が、開口部を有しており、内層金属回路板の一部が、平面視で開口部において露出している。
【0009】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品とを含んでいる。
【0010】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、平面視において開口部内に設けられており、内層金属回路板の開口部から露出する部分に電気的に接続された電子部品とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様によるセラミック回路基板において、多層基板は、複数のセラミック基板および複数のセラミック基板の間に設けられた金属板とを含んでおり、金属板は、回路貫通孔を有している。多層基板の内部に設けられた内層金属回路板は、金属板の回路貫通孔内に設けられている。本発明の一つの態様によるセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、セラミック基板に伝導された熱が金属板を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0012】
本発明の他の態様によるセラミック回路基板は、複数のセラミック基板のうち金属板上に設けられたセラミック基板が、開口部を有しており、内層金属回路板の一部が、平面視で開口部において露出している。本発明の他の態様によるセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、電子部品を載置した電子装置の厚さをより薄くすることができる。また、セラミック基板に伝導された熱が金属板を介して、より効率的に外部へ放散され、放熱性がより向上する。
【0013】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品とを含んでいることによって、例えば電子部品によって発生されてセラミック回路基板のセラミック基板に伝導された熱が金属板を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0014】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、平面視において開口部内に設けられており、内層金属回路板の開口部から露出する部分に電気的に接続された電子部品とを備えている。それによって、電子部品を実装した電子装置の厚みを薄くすることができ、より放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の一つの実施形態における電子装置を示す平面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(b)に示された電子装置のB−B線における横断面図である。
【図2】図1(b)に示された電子装置において符号Cによって示された部分の拡大図である。
【図3】本発明の一つの実施形態における電子装置の他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の一つの実施形態における電子装置のさらに他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の一つの実施形態のセラミック回路基板を製造する工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の一つの実施形態のセラミック回路基板を製造する工程を示す断面図である。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ本発明の一つの実施形態のセラミック回路基板を製造する工程を示す断面図である。
【図8】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図9】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図10】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図11】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図12】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1(a)〜(c)に示されているように、本発明の一つの実施形態における電子装置は、セラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品6とを含んでいる。
【0018】
セラミック回路基板は、多層基板と、多層基板にろう材2によって接合された表層金属回路板3と、多層基板の内部に設けられた内層金属回路板4および金属柱5とを含んでいる。
【0019】
図1に示された例において、多層基板は、2層のセラミック基板1の間に金属板11が設けられており、互いに積層されてろう材2によって接合されている。多層基板の上面には内層金属回路板4に電気的に接続された6つの表層金属回路板3と、電子部品6を搭載するための1つの表層金属回路板3が接合され、多層基板の下面には、内層金属回路板4および金属柱5を介して上面の表層金属回路板3にそれぞれ電気的に接続される6つの表層金属回路板3と、電子部品6において発生された熱を外部回路基板または冷却体へ伝導するための放熱板8が接合されている。セラミック基板1と金属板11によって形成された多層基板の層数は3層よりも多くてもよく、内層回路導体を1層増やすには、内層金属回路板4が内部に配置される回路貫通孔11aを有する金属板11と金属柱5が内部に配置される貫通孔1aを有するセラミック基板1を追加することになる。
【0020】
セラミック基板1は絶縁性のセラミック材料からなり、例えば、酸化アルミニウム質セラミックス,ムライト質セラミックス,炭化ケイ素質セラミックス,窒化アルミニウム質セラミックス,窒化ケイ素質セラミックス等のセラミックスからなる。これらの中では熱伝導性(放熱性)の点からは炭化ケイ素質セラミックス,窒化アルミニウム質セラミックス,窒化ケイ素質セラミックスが好ましく、強度の点からは窒化ケイ素質セラミックスや炭化ケイ素質セラミックスが好ましい。また、セラミック基板1が窒化ケイ素質セラミックスのように強度の高いセラミックスであると、より厚みの厚い表層金属回路板3、内層金属回路板4および放熱板8を使用してもセラミック基板1にクラックが入る可能性が低減されているので、小型でもより大電流を流すことができるセラミック回路基板となるので好ましい。厚みは、薄い方が熱伝導性の点ではよいが、セラミック回路基板の大きさや用いる材料の熱伝導率や強度に応じて選択すればよく、0.1mm〜1mm程度である。
【0021】
セラミック基板1は、例えば窒化ケイ素質セラミックスから成る場合であれば、窒化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化イットリウム等の原料粉末に適当な有機バインダー,可塑剤,溶剤を添加混合して泥漿物に従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次にこのセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施して所
定形状となすとともに、必要に応じて複数枚を積層して成形体となし、しかる後、これを窒化雰囲気等の非酸化性雰囲気にて1600〜2000℃の温度で焼成することによって製作される。
【0022】
貫通孔1aは、上記のセラミック基板1の製造工程において、セラミックグリーンシートに金型加工またはレーザー加工によって孔を形成しておくことで形成することができる。あるいは、セラミック基板1を作製した後にレーザー加工やサンドブラスト加工によって形成する。
【0023】
貫通孔1aは、表層金属回路板3と内層金属回路板4または表層金属回路板3とを接続する金属柱5を収容するための貫通孔であり、金属柱5の横断面より一回り大きいものである。具体的には、金属柱5の側面と貫通孔1bの内壁面との間の距離は、金属柱5の横断面の長さ(金属柱5が円柱の場合であれば直径)の1%程度であれば、比較的熱膨張係数の小さい窒化ケイ素質セラミックス(熱膨張係数:約3×10−6/℃)から成るセラミック基板1と、銅とアルミニウムとで熱膨張係数の大きいアルミニウム(熱膨張係数:約23×10−6/℃)から成る金属柱5を用いた場合であっても、セラミック回路基板に搭載した電子部品の発熱、あるいは大電流による金属柱5自身の発熱に起因して、セラミック基板1と金属柱5との熱膨張差によって貫通孔1bの内面に応力が加わることがない。
【0024】
また、セラミック基板1の厚みは、金属柱5の厚みより厚いのが好ましい。セラミック基板1の厚みが金属柱5の厚みより薄いと、セラミック基板1と金属柱5との熱膨張差によって、金属柱5が表層金属回路板3を貫通孔1b内から押さえる力が作用して、表層金属回路板3とセラミック基板1との接合強度および接続信頼性が低下しやすくなるからである。
【0025】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8は、銅またはアルミニウム等の金属から成り、例えば銅のインゴット(塊)に圧延加工法または打ち抜き加工法等の機械的加工やエッチング等の化学的加工のような従来周知の金属加工法を施すことによって、例えば厚さが0.05〜1mmの平板状で、所定パターンに形成される。このとき、表層金属回路板3および内層金属回路板4は、予め所定パターン形状に形成したものを用いてもよいし、後述するように、セラミック基板1と同程度の大きさおよび形状の金属板をセラミック基板1に接合した後にエッチングで所定パターン形状に加工してもよい。
【0026】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8が銅から成る場合は、無酸素銅で形成するのが好ましい。無酸素銅で形成すると、表層金属回路板3または内層金属回路板4と金属柱5との接合やセラミック基板1と表層金属回路板3または内層金属回路板4との接合を行なう際に、銅の表面が銅中に存在する酸素により酸化されることなく、ろう材2との濡れ性が良好となるので、接合が強固となる。
【0027】
金属板11の回路貫通孔11aは内層金属回路板4を収容するための貫通孔であり、図1(c)に示す例のように、内層金属回路板4より一回り大きいものである。具体的には、内層金属回路板4の側面と回路貫通孔1aの内壁面との間の距離は、それぞれ1mm程度あれば、絶縁性を保つのに好ましい。
【0028】
セラミック基板1と金属板11の接合、セラミック基板1と表層金属回路板3または内層金属回路板4あるいは放熱板8との接合、金属柱5と表層金属回路板3または内層金属回路板4との接合は、ろう材2によって行なわれる。ろう材2は、活性金属を含むものであっても、活性金属を含まない通常のものであっても構わない。ろう材2は、上記のすべての接合に活性金属を含むろう材2を用いてもかまわないが、金属柱5と表層金属回路板3
または内層金属回路板4との接合は、活性金属を含まないろう材2を使用すると、ろう材2がセラミック基板1とは接合しないので、流れ出たろう材2が回路貫通孔1aの内面に内層金属回路板4が固着して、熱応力等によって回路貫通孔1aからクラックが発生することがないので好ましい。
【0029】
上記各部材をろう材2で接続するには、各部材の接合面の少なくとも一方にスクリーン印刷等でろう材ペーストを例えば30〜50μmの厚さで所定パターンに印刷塗布するとともに、所定の構造となるように挟んで載置した後、金属板に5〜10kPaの荷重をかけながら真空中または水素ガス雰囲気または水素・窒素ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で780
℃〜900℃、10〜120分間加熱し、ろう材ペーストの有機溶剤および溶媒・分散剤を気体に変えて発散させるとともにろう材2を溶融させることによって行なわれる。
【0030】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8が銅から成る場合は、活性金属を含まない、通常のろう材ペーストは、銀および銅粉末,銀−銅合金粉末,またはこれらの混合粉末から成る銀ろう材(例えば、銀:72質量%−銅:28質量%)粉末に対して適当なバインダーと有機溶剤・溶媒とを添加混合し、混練することによって製作される。活性金属入りのろう材ペーストは、この通常のろう材ペーストに、チタン,ハフニウム,ジルコニウムまたはその水素化物等の活性金属を銀ろう材に対して2〜5質量%添加混合し、混練することによって製作される。
【0031】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8がアルミニウムから成る場合は、銀ろう材に換えてアルミニウムろう材(例えば、アルミニウム:88質量%−シリコン:12質量%)を用いればよい。この場合も同様にしてろう材ペーストおよび活性金属入りろう材ペーストを作製して、同様にして接合すればよい。アルミニウムろう材2を使用した場合には、銅より低温の約600℃で接合することができる。
【0032】
活性金属を含まない、通常のろう材ペーストで表層金属回路板3または内層金属回路板4、金属板11、あるいは放熱板8をセラミック基板1に接合するには、セラミック基板1上にメタライズ層を形成しておき、メタライズ層と表層金属回路板3または内層金属回路板4、金属板11、あるいは放熱板8との間にろう材ペーストを配置すればよい。セラミック基板1上のメタライズ層は、セラミック基板1を作製する際に、セラミックグリーンシート上にメタライズペーストを所定パターン形状に印刷塗布しておき、焼成することによって形成しておくか、セラミック基板1を作製した後に、セラミック基板1上にメタライズペーストを所定パターン形状に印刷塗布して焼き付けることによって形成すればよい。メタライズペーストは、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)またはこれらの混合粉末から成る金属粉末と、適当なバインダーと有機溶剤・溶媒とを添加混合し、混練することによって製作される。
【0033】
また、表層金属回路板3は、セラミック基板1に接合した後に、その表面にニッケルから成る、良導電性で、かつ耐蝕性およびろう材との濡れ性が良好な金属をめっき法により被着させておくと、表層金属回路板3に半導体素子等の電子部品5を半田を介して強固に接着させることができるとともに、表層金属回路板3と外部電気回路との電気的接続を良好なものとすることができる。この場合は、内部に燐を8〜15質量%含有させてニッケル−燐のアモルファス合金としておくと、ニッケルから成るめっき層の表面酸化を良好に防止してろう材との濡れ性等を長く維持することができるので好ましい。ニッケルに対する燐の含有量が8質量%未満となると、あるいは15質量%を超えると、ニッケル−燐のアモルファス合金を形成するのが困難となってめっき層に半田を強固に接着させることが困難となりやすい。このニッケルから成るめっき層は、その厚みが1.5μm未満の場合には、
表層金属回路板3の表面を完全に被覆することができず、表層金属回路板3の酸化腐蝕を有効に防止することができなくなる傾向がある。また、10μmを超えると、特にセラミッ
ク基板の厚さが300μm未満の薄いものになった場合には、めっき層の内部に内在する内
在応力が大きくなってセラミック基板に反りまたは割れ等が発生しやすくなってしまう。また、放熱板8にも同様のニッケル金属層を形成しておくと、外部回路基板または冷却体への接合が良好になるのでよい。
【0034】
2層のセラミック基板1の間に1層の金属板11を接合させた回路基板を用いて表層金属回路板3、内層金属回路板4および放熱板8をあらかじめ所定パターンに形成して接合する場合は、以下のようにすればよい。まず、所定の位置に貫通孔1bを有するセラミック基板1を2枚と回路貫通孔1aを有する金属板11を1枚準備する。また、金属板をプレス加工またはエッチング加工等を用い、表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属柱5および放熱板8の所定パターン形状に加工する。次にセラミック基板1と金属板11が相対する接合部の少なくとも一方に、接合後にろう材2となる活性金属入りのろう材ペーストを所定形状にスクリーン印刷等で塗布する。金属柱5の上下面には、ろう材2を予め形成しておく。このろう材2は、金属柱5の表裏にスクリーン印刷で同様にろう材ペーストを形成しても良いし、表裏にろう材2をクラッドした所定の厚みの金属板を金属柱5の寸法に打ち抜くことで形成してもよい。各部材を所定の位置に配置し、位置がずれないように治具等を用いて荷重をかけながら真空中でろう材2が溶融する温度まで昇温し各部材を接合することで、セラミック回路基板となる。
【0035】
内層金属回路板4と金属柱5とによる内部回路を形成した多層基板の上面および下面に、セラミック基板1と同程度の大きさおよび形状の金属板をセラミック基板1に接合した後に、金属板をエッチングで表層金属回路板3および放熱板8の所定パターン形状に加工する場合は、例えば以下のようにする。セラミック基板1の上に接合された金属板の表面にエッチングレジストインクをスクリーン印刷法等の技術を採用して所定パターン形状に印刷塗布してレジスト膜を形成した後、例えば金属板が銅板である場合であれば、塩化第2鉄,塩化第2銅溶液等のエッチング液に浸漬したり、エッチング液を吹き付けたりして表層金属回路板3および放熱板8の所定パターン以外の部分を除去し、レジスト膜を除去すればよい。
【0036】
また、セラミック回路基板が、図1〜図3に示す例のような、内層金属回路板4がセラミック基板1に接合されている場合であれば、図5〜図7に示すような工程で内層金属回路板4と金属板11もエッチングによって所定パターン形状に加工することができる。まず、図5(a)に示す例のように、貫通孔1aを有する上層用のセラミック基板1の上面および下面に、セラミック基板1と同程度の大きさの、表層金属回路板3となる金属板3’および内層金属回路板4と金属板11となる金属板4’がそれぞれ接合され、これらが貫通孔1a内の金属柱5で接続されたものを、上記と同様の方法で形成する。次に、図5(b)に示す例のように、金属板3’および金属板4’の表面に、それぞれ表層金属回路板3、内層金属回路板4および金属板11の所定パターン形状のレジスト膜10を形成する。次いで、図5(c)および図5(d)に示す例のように、金属板3’、金属板4’のレジスト膜10に覆われていない不要部分をエッチング液によって溶解し、レジスト膜10を剥離することで、セラミック回路基板の上側だけ(上側回路基板)を作製する。次に、図6(a)に示す例のように、所定の貫通孔1aを有する下層用のセラミック基板1の下面には、セラミック回路基板の下面の表面金属回路板3および放熱板8となる、セラミック基板1と同程度の大きさの金属板3’が接合されたものを作製する。次に、図6(b)に示す例のように、金属板3’の表面に、表層金属回路板3および放熱板8の所定パターン形状のレジスト膜10を形成する。次いで、図6(c)および図6(d)に示す例のように、金属板3’のレジスト膜10に覆われていない不要部分をエッチング液によって溶解し、レジスト膜10を剥離することで、セラミック回路基板の下側だけ(下側回路基板)を作製する。このとき、回路貫通穴1aおよび貫通孔1bにエッチング液が入って、金属柱5または金属板3’の貫通孔1b内に露出する部分がエッチングされることがないように、中間層用の
セラミック基板1の上面の回路貫通孔1aの開口を治具またはフィルム上のレジスト等で塞いでおくとよい。そして、図7(a)に示す例のように、下側回路基板の貫通孔1a内にろう材2を上下面に被着させた金属柱5を配置して、上側回路基板と下側回路基板とを内層金属回路板4と下側回路基板の貫通孔1a内の金属柱5が接続するように重ねて、図7(b)に示す例のように、金属板11と下層用のセラミック基板1および内層金属回路板4と下層用のセラミック基板の金属柱5との間をろう材2で接合することによって、図1に示す例のような、複数のセラミック基板1および複数のセラミック基板1の間に設けられた金属板11が積層された構造の本実施形態のセラミック回路基板を作製することができる。この方法では、表層金属回路板3および内層金属回路板4は、共にセラミック基板1に大きさの大きい金属板3’および金属板4’を接合させてからエッチングで所定パターン形状に加工することができるので、金属板3’および金属板4’が取り扱いによって曲がってしまう可能性が減少するために、柔らかい銅板を使用する場合または薄い金属板を用いる場合には好ましい。また、1つのセラミック基板1上には1枚の金属板3’または金属板4’を配置すればよいので、接合前のセラミック基板1と金属板3’および金属板4’とを重ねて配置するのが容易であり、位置合わせも容易である。
【0037】
内層金属回路板4は、図1および図2に示す例、ならびに製造工程を示す図5〜図7の例では、その上面は上層のセラミック基板1に、下面は下層のセラミック基板1にろう材2で接合されているが、図3に示す例のように内層金属回路板4の上下面のうちの片面だけをセラミック基板1に接合してもよいし、図4に示す例のようにセラミック基板1に接合しなくてもよい。
【0038】
図4に示す例のように、上下のセラミック基板1と内層金属回路板4とが直接接合しない場合は、セラミック基板1と(セラミック基板1に金属柱5および表層金属回路板3を介して接合された)内層金属回路板4との間に発生する熱応力は、セラミック基板1に直接接続されていない内層金属回路板4が変形して緩和されやすくなる。これによって、金属柱5を介して表層金属回路板3に加わる応力も小さいものとなる。また、構造的な理由以外にも、内層金属回路板4が接合時のろう材2からの金属拡散によって硬度が高くなる部分が少ないという理由でも、金属柱5を介して表層金属回路板3に加わる応力が小さくなるので好ましい。
【0039】
また、内層金属回路板4の上下面のうちの片面だけをセラミック基板1に接合する場合、または内層金属回路板4の上下面ともセラミック基板1に接合する場合であっても、図3および図4に示す例のように、内層金属回路板4の上下面の全面でセラミック基板1に接合しないようにすると、内層金属回路板4が変形しやすく、またろう材2からの金属拡散によって硬度が高くなる部分が少なくなるので、応力をより緩和することができる。
【0040】
このように応力を緩和することができると、窒化アルミニウム質セラミックスのように熱伝導率は高いが機械的強度が小さいという材料から成るセラミック基板1を表層のセラミック基板1としても用いることができるようになり、全層窒化アルミニウム質セラミックスで形成することができるので、熱放散性と温度サイクル信頼性の両方の特性を両立させたセラミック回路基板とすることができる。この場合は、特に熱放散性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【0041】
本実施形態の回路基板において、セラミック基板1に加わる熱応力は、金属板11によって圧縮応力が加えられるが、セラミック基板1は圧縮応力に対しては、引っ張り応力の10倍程度の破壊強度を持つため、セラミック基板1が金属板11によって加えられる応力によって破壊する可能性は小さいため、表層金属回路板3、内層金属回路板4および放熱板8とセラミック基板1との熱膨張係数の差によって発生する引っ張り応力がセラミック基板1を破壊する主な原因となるが、この応力は接合しているこれら金属の硬さと、回路基板
と表層金属回路板3(内層金属回路板4)の接合長さに比例して接合している表層金属回路板3(内層金属回路板4)とその外側にあるセラミック基板1との境界部分に加わる。そのため、上述したように、内層金属回路板4は、図4に示す例のようにセラミック基板1に接合しないのが好ましく、接合する場合であっても、図2および図3に示す例のように、内層金属回路板4の上下面の全面でセラミック基板1に接合しないようにすると、ろう材2の拡散によって内層金属回路板4が硬くなることが抑えられるので好ましい。
【0042】
本実施形態のセラミック回路基板において、多層基板は、複数のセラミック基板1と複数のセラミック基板1の間に設けられた金属板11とを含んでおり、金属板11は、回路貫通孔11aを有している。多層基板の内部に設けられた内層金属回路板4は、金属板11の回路貫通孔11a内に設けられている。本実施形態のセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、セラミック基板1に伝導された熱が金属板11を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0043】
本実施形態の電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品6とを含んでいることによって、例えば電子部品6によって発生されてセラミック回路基板のセラミック基板1に伝導された熱が金属板11を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0044】
また、図8に示す本発明の他の実施形態では、セラミック回路基板の下面の中央部に比較的大きい放熱板8が接合されているが、図1に示す例のように、放熱板8のパターンを複数の小さいものにして放熱板8とセラミック基板1との接合長さを短くすることによって熱応力を小さくするのが好ましい。具体的には、セラミック基板1と表層金属回路板3等の金属板との接合長さが10mmを超えないようにするとよい。
【0045】
図8に示す例では、最上層のセラミック基板1の上面に電子部品6の搭載部および表層金属回路板3を取り囲むような枠体9を設けている。この例では、枠体9は、セラミック基板1の上に、順に金属枠体9b、絶縁枠体9a、金属枠体9bがろう材2を介して接合されて形成されている。上側の金属枠体9bは、蓋を接合するためのものである。この枠体9の上に金属等からなる蓋をろう接、シーム溶接またはYAGレーザー溶接等の溶接によって気密に接合することで、電子部品6を気密封止した電子装置とすることができる。このようにすることによって、電子部品6を気密に封着するとともに、多層セラミック基板の下面の表層金属回路板3を外部端子として外部回路に電気的に接続することができるようになっている。下側の金属枠体9bは、表層金属回路板3と同様の方法で、表層金属回路板3と同時に形成すればよい。下側の金属枠体9bの上には、セラミック基板1と同様のセラミックスから成る絶縁枠体9aとが活性金属で接合され、さらに絶縁枠体9aの上に活性金属で上側の金属枠体9bが接合される。図8に示す例では、このように金属枠体9bと絶縁枠体9aとを積層して接合することによって枠体9を形成することで、セラミック回路基板に搭載される電子部品6より高さの高い枠体9を形成している。枠体9は、図8に示す例に限られるものではなく、例えば、下側の金属枠体9bだけで枠体9を形成して、電子部品6を覆うような箱型の蓋を接合してもよい。
【0046】
図9に示されているように、本発明の他の実施形態の電子装置において、内層金属回路板4は、金属柱5を介して、多層基板の上面のうち枠体9の外側の領域に設けられた表面金属回路板3に電気的に接続されている。すなわち、本発明の他の実施形態の電子装置において、多層基板の上面のうち枠体9の内側に設けられた表面金属回路板3と枠体9の外側に設けられた表面金属回路板3とが、内層金属回路板4および金属柱5を介して電気的に接続されている。図9に示された実施形態の変形例として、金属板11が例えば金属柱のような金属部材によって放熱板8に熱的に結合されていると、例えば電子部品6によって発生された熱の伝導または放散が向上される。
【0047】
上記のような実施形態の回路基板に電子部品6を搭載し、電気的に接続することで本実施形態の電子装置となる。本実施形態の電子装置によれば、上記各構成の本実施形態のセラミック回路基板に電子部品6が搭載されていることから、大電流を流すことができ、信頼性が高く、小型で薄型化の電子装置となる。
【0048】
電子部品6としては、トランジスタ,CPU(Central Processing Unit)用のLSI
(Large Scale Integrated circuit),IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor
)やMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor - Field Effect Transistor)等の半
導体素子が挙げられる。
【0049】
電子部品6は、半田またはAu−Si合金等の金属接合材あるいは導電性樹脂で固定されて回路基板に搭載され、ボンディングワイヤ7により電気的に接続される。図1〜図7に示す例では、上から1層目のセラミック基板1の上面に電子部品6を搭載するための表層金属回路板3を形成しているが、セラミック基板1の上面に直接、または第1のセラミック基板1の上面に形成したメタライズ層の上、もしくは、第1のセラミック基板1の中央部を切り抜き、金属板11上に搭載してもよい。
【0050】
図10(a)〜(c)、図11(a)〜(c)、図12(a)〜(c)に示す例では、複数のセラミック基板1のうち金属板11上に設けられたセラミック基板1が、開口部1bを有しており、内層金属回路板4の一部が、平面視で開口部1bにおいて露出している。このような構成を含んでいることによって、図8の構造に比べて電子部品6と放熱板8の間のセラミック基板1を2枚から1枚にできるため、電子部品6を載置した電子装置の厚さをより薄くすることができる。また、図8の構造に比べて電子部品6と放熱板8の間のセラミック基板1を2枚から1枚にできるため、電子部品6から発生した熱が金属板11を介して、より効率的に外部へ放散され、放熱性がより向上する。
【0051】
上側のセラミック基板1に開口部1bを形成するには、焼成した矩形のセラミック基板に開口部1bが形成されるようにレーザー加工で中央部を切り抜いたり、生シートに金型等で開口部1bを打ち抜いてから焼成する等で形成することができる。開口部1bを形成したセラミック基板1の上面に金属板を活性金属入りのろう材2で接合しエッチングで枠体9を形成することで上側回路基板を作成する。その後、下側のセラミック基板1の上下面に金属板を活性金属入りのろう材2で接合しエッチングすることで下側回路基板を作成する。上側回路基板と下側回路基板で使用した活性金属入りのろう材2より融点の低い活性金属入りのろう材2で上側回路基板と下側回路基板を接合することで図10(a)〜(c)に示す例のように、より放熱性の優れたセラミック回路基板となる。
【0052】
図10(b)を用いて説明すると、内層金属回路板4の片方の端部は金属柱5とろう材2を介して接続されており、他方の端部はセラミック基板1と活性金属入りのろう材2で接続されており、内層金属回路板4の中央部付近には金属柱5およびセラミック基板1と接続していない部分が形成されている。また、内層金属回路板4は上側のセラミック基板1とは接続されていないので、下側のセラミック基板1と内層金属回路板4との間に発生する熱応力は、セラミック基板1に直接接続されていない部分の内層金属回路板4が変形して緩和されやすくなる。
【0053】
また、内層金属回路板4は図11(b)に示す例のように、部分的に2層となっていると、より組み立て易くなるので好ましい。その理由は、前述した上側回路基板と下側回路基板を作製する際、両方のセラミック基板1の上下面に表層金属回路板3と内層金属回路板4が活性金属入りのろう材2で接合していることで、セラミック基板1の片面だけに金属を接合した場合に比べて反りを小さくできるため、ろう材2で上側回路基板と下側回路基
板を接合する場合に位置合わせが容易になるからである。
【0054】
また、図10(a)〜(c)および図11(a)〜(c)に対して図12(a)〜(c)に示す例は、下側のセラミック基板1に貫通孔を形成し、電子部品6が接合される内層金属回路板4と放熱板8とが接合されている。この場合は、下側のセラミック基板1を介することなく、内層金属回路板4と放熱板8とが接合されているので、より熱放散性の高いセラミック回路基板とすることができる。さらに、上記したような電子部品6が接合される内層金属回路板4と放熱板8とを接合することに替えて、図12(b)に示す例のように、内層金属回路板4に相当する凸部を有する放熱板8を電子部品6に接合することが好ましい。この場合は、表面金属回路板3とは異なる材質で、セラミック基板1より熱伝導率が高く、電子部品6の熱膨張係数に近い放熱板8を電子部品6に接合することで、より熱放散性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【0055】
なお、放熱板8は、上側回路基板と下側回路基板を接合する時に同時に接合しても良い。同時に接合することで、工程を短縮することができるとともに、融点が2種類のろう材2でセラミック回路基板を作製できるようになる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・・セラミック基板
1a・・・・貫通孔
1b・・・・開口部
2・・・・・ろう材
3・・・・・表層金属回路板
4・・・・・内層金属回路板
5・・・・・金属柱
6・・・・・電子部品
7・・・・・ボンディングワイヤ
8・・・・・放熱板
9・・・・・枠体
9a・・・・絶縁枠体
9b・・・・金属枠体
11・・・・・金属板
11a・・・・回路貫通孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック基板に金属板からなる回路が形成されたセラミック回路基板およびそれを用いた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子が搭載され
、大きな電流が流されるパワーモジュールまたはスイッチングモジュール等の電子装置に用いられる回路基板として、セラミック基板の両面に銅やアルミニウム等の金属板からなる金属回路板を接合したセラミック回路基板が用いられている。
【0003】
このようなセラミック回路基板は、電気自動車の制御装置または熱電変換による発電装置等の用途において需要が高まりつつあり、また、小型化または高密度化が要求されている。セラミック回路基板の回路を高密度化して小型化する方法として、セラミック回路基板の表面だけでなく内部にまで回路導体を形成する方法がある。
【0004】
その方法の1つとして、いわゆるセラミック多層配線基板の内部回路導体をセラミック層1層分の厚みを有しておりセラミック層と同時焼成されたメタライズで形成して、セラミック多層基板の表面に金属回路板を接合したものがある(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−31946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のセラミック回路基板において、内部回路導体は複数のセラミック層によって囲まれており、今後さらなる放熱性の向上を図るためには改善が必要なものであった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様によるセラミック回路基板は、多層基板と、多層基板の上面または下面にろう材によって接合された表層金属回路板と、多層基板の内部に設けられた内層金属回路板および金属柱とを含んでいる。多層基板は、複数のセラミック基板と複数のセラミック基板の間に設けられた金属板とを含んでいる。金属板は、回路貫通孔を有している。複数のセラミック基板および金属板は、互いにろう材によって接合されている。内層金属回路板は、回路貫通孔内に設けられている。金属柱は、複数のセラミック基板に形成された貫通孔内に配置されており、内層金属回路板にろう材によって接合された第1の端部と表層金属回路板にろう材によって接合された第2の端部とを有している。
【0008】
本発明の他の態様によるセラミック回路基板は、複数のセラミック基板のうち金属板上に設けられたセラミック基板が、開口部を有しており、内層金属回路板の一部が、平面視で開口部において露出している。
【0009】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品とを含んでいる。
【0010】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、平面視において開口部内に設けられており、内層金属回路板の開口部から露出する部分に電気的に接続された電子部品とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様によるセラミック回路基板において、多層基板は、複数のセラミック基板および複数のセラミック基板の間に設けられた金属板とを含んでおり、金属板は、回路貫通孔を有している。多層基板の内部に設けられた内層金属回路板は、金属板の回路貫通孔内に設けられている。本発明の一つの態様によるセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、セラミック基板に伝導された熱が金属板を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0012】
本発明の他の態様によるセラミック回路基板は、複数のセラミック基板のうち金属板上に設けられたセラミック基板が、開口部を有しており、内層金属回路板の一部が、平面視で開口部において露出している。本発明の他の態様によるセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、電子部品を載置した電子装置の厚さをより薄くすることができる。また、セラミック基板に伝導された熱が金属板を介して、より効率的に外部へ放散され、放熱性がより向上する。
【0013】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品とを含んでいることによって、例えば電子部品によって発生されてセラミック回路基板のセラミック基板に伝導された熱が金属板を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0014】
本発明の他の態様による電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、平面視において開口部内に設けられており、内層金属回路板の開口部から露出する部分に電気的に接続された電子部品とを備えている。それによって、電子部品を実装した電子装置の厚みを薄くすることができ、より放熱性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は本発明の一つの実施形態における電子装置を示す平面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(b)に示された電子装置のB−B線における横断面図である。
【図2】図1(b)に示された電子装置において符号Cによって示された部分の拡大図である。
【図3】本発明の一つの実施形態における電子装置の他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図4】本発明の一つの実施形態における電子装置のさらに他の例の要部を拡大して示す断面図である。
【図5】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の一つの実施形態のセラミック回路基板を製造する工程を示す断面図である。
【図6】(a)〜(d)は、それぞれ本発明の一つの実施形態のセラミック回路基板を製造する工程を示す断面図である。
【図7】(a)および(b)は、それぞれ本発明の一つの実施形態のセラミック回路基板を製造する工程を示す断面図である。
【図8】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図9】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図10】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図11】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【図12】(a)は本発明の他の実施形態における電子装置を示す上面図であり、(b)は(a)に示された電子装置のA−A線における縦断面図であり、(c)は(a)に示された電子装置の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明のいくつかの例示的な実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
図1(a)〜(c)に示されているように、本発明の一つの実施形態における電子装置は、セラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品6とを含んでいる。
【0018】
セラミック回路基板は、多層基板と、多層基板にろう材2によって接合された表層金属回路板3と、多層基板の内部に設けられた内層金属回路板4および金属柱5とを含んでいる。
【0019】
図1に示された例において、多層基板は、2層のセラミック基板1の間に金属板11が設けられており、互いに積層されてろう材2によって接合されている。多層基板の上面には内層金属回路板4に電気的に接続された6つの表層金属回路板3と、電子部品6を搭載するための1つの表層金属回路板3が接合され、多層基板の下面には、内層金属回路板4および金属柱5を介して上面の表層金属回路板3にそれぞれ電気的に接続される6つの表層金属回路板3と、電子部品6において発生された熱を外部回路基板または冷却体へ伝導するための放熱板8が接合されている。セラミック基板1と金属板11によって形成された多層基板の層数は3層よりも多くてもよく、内層回路導体を1層増やすには、内層金属回路板4が内部に配置される回路貫通孔11aを有する金属板11と金属柱5が内部に配置される貫通孔1aを有するセラミック基板1を追加することになる。
【0020】
セラミック基板1は絶縁性のセラミック材料からなり、例えば、酸化アルミニウム質セラミックス,ムライト質セラミックス,炭化ケイ素質セラミックス,窒化アルミニウム質セラミックス,窒化ケイ素質セラミックス等のセラミックスからなる。これらの中では熱伝導性(放熱性)の点からは炭化ケイ素質セラミックス,窒化アルミニウム質セラミックス,窒化ケイ素質セラミックスが好ましく、強度の点からは窒化ケイ素質セラミックスや炭化ケイ素質セラミックスが好ましい。また、セラミック基板1が窒化ケイ素質セラミックスのように強度の高いセラミックスであると、より厚みの厚い表層金属回路板3、内層金属回路板4および放熱板8を使用してもセラミック基板1にクラックが入る可能性が低減されているので、小型でもより大電流を流すことができるセラミック回路基板となるので好ましい。厚みは、薄い方が熱伝導性の点ではよいが、セラミック回路基板の大きさや用いる材料の熱伝導率や強度に応じて選択すればよく、0.1mm〜1mm程度である。
【0021】
セラミック基板1は、例えば窒化ケイ素質セラミックスから成る場合であれば、窒化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化マグネシウム,酸化イットリウム等の原料粉末に適当な有機バインダー,可塑剤,溶剤を添加混合して泥漿物に従来周知のドクターブレード法またはカレンダーロール法を採用することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を形成し、次にこのセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施して所
定形状となすとともに、必要に応じて複数枚を積層して成形体となし、しかる後、これを窒化雰囲気等の非酸化性雰囲気にて1600〜2000℃の温度で焼成することによって製作される。
【0022】
貫通孔1aは、上記のセラミック基板1の製造工程において、セラミックグリーンシートに金型加工またはレーザー加工によって孔を形成しておくことで形成することができる。あるいは、セラミック基板1を作製した後にレーザー加工やサンドブラスト加工によって形成する。
【0023】
貫通孔1aは、表層金属回路板3と内層金属回路板4または表層金属回路板3とを接続する金属柱5を収容するための貫通孔であり、金属柱5の横断面より一回り大きいものである。具体的には、金属柱5の側面と貫通孔1bの内壁面との間の距離は、金属柱5の横断面の長さ(金属柱5が円柱の場合であれば直径)の1%程度であれば、比較的熱膨張係数の小さい窒化ケイ素質セラミックス(熱膨張係数:約3×10−6/℃)から成るセラミック基板1と、銅とアルミニウムとで熱膨張係数の大きいアルミニウム(熱膨張係数:約23×10−6/℃)から成る金属柱5を用いた場合であっても、セラミック回路基板に搭載した電子部品の発熱、あるいは大電流による金属柱5自身の発熱に起因して、セラミック基板1と金属柱5との熱膨張差によって貫通孔1bの内面に応力が加わることがない。
【0024】
また、セラミック基板1の厚みは、金属柱5の厚みより厚いのが好ましい。セラミック基板1の厚みが金属柱5の厚みより薄いと、セラミック基板1と金属柱5との熱膨張差によって、金属柱5が表層金属回路板3を貫通孔1b内から押さえる力が作用して、表層金属回路板3とセラミック基板1との接合強度および接続信頼性が低下しやすくなるからである。
【0025】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8は、銅またはアルミニウム等の金属から成り、例えば銅のインゴット(塊)に圧延加工法または打ち抜き加工法等の機械的加工やエッチング等の化学的加工のような従来周知の金属加工法を施すことによって、例えば厚さが0.05〜1mmの平板状で、所定パターンに形成される。このとき、表層金属回路板3および内層金属回路板4は、予め所定パターン形状に形成したものを用いてもよいし、後述するように、セラミック基板1と同程度の大きさおよび形状の金属板をセラミック基板1に接合した後にエッチングで所定パターン形状に加工してもよい。
【0026】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8が銅から成る場合は、無酸素銅で形成するのが好ましい。無酸素銅で形成すると、表層金属回路板3または内層金属回路板4と金属柱5との接合やセラミック基板1と表層金属回路板3または内層金属回路板4との接合を行なう際に、銅の表面が銅中に存在する酸素により酸化されることなく、ろう材2との濡れ性が良好となるので、接合が強固となる。
【0027】
金属板11の回路貫通孔11aは内層金属回路板4を収容するための貫通孔であり、図1(c)に示す例のように、内層金属回路板4より一回り大きいものである。具体的には、内層金属回路板4の側面と回路貫通孔1aの内壁面との間の距離は、それぞれ1mm程度あれば、絶縁性を保つのに好ましい。
【0028】
セラミック基板1と金属板11の接合、セラミック基板1と表層金属回路板3または内層金属回路板4あるいは放熱板8との接合、金属柱5と表層金属回路板3または内層金属回路板4との接合は、ろう材2によって行なわれる。ろう材2は、活性金属を含むものであっても、活性金属を含まない通常のものであっても構わない。ろう材2は、上記のすべての接合に活性金属を含むろう材2を用いてもかまわないが、金属柱5と表層金属回路板3
または内層金属回路板4との接合は、活性金属を含まないろう材2を使用すると、ろう材2がセラミック基板1とは接合しないので、流れ出たろう材2が回路貫通孔1aの内面に内層金属回路板4が固着して、熱応力等によって回路貫通孔1aからクラックが発生することがないので好ましい。
【0029】
上記各部材をろう材2で接続するには、各部材の接合面の少なくとも一方にスクリーン印刷等でろう材ペーストを例えば30〜50μmの厚さで所定パターンに印刷塗布するとともに、所定の構造となるように挟んで載置した後、金属板に5〜10kPaの荷重をかけながら真空中または水素ガス雰囲気または水素・窒素ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気中で780
℃〜900℃、10〜120分間加熱し、ろう材ペーストの有機溶剤および溶媒・分散剤を気体に変えて発散させるとともにろう材2を溶融させることによって行なわれる。
【0030】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8が銅から成る場合は、活性金属を含まない、通常のろう材ペーストは、銀および銅粉末,銀−銅合金粉末,またはこれらの混合粉末から成る銀ろう材(例えば、銀:72質量%−銅:28質量%)粉末に対して適当なバインダーと有機溶剤・溶媒とを添加混合し、混練することによって製作される。活性金属入りのろう材ペーストは、この通常のろう材ペーストに、チタン,ハフニウム,ジルコニウムまたはその水素化物等の活性金属を銀ろう材に対して2〜5質量%添加混合し、混練することによって製作される。
【0031】
表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属板11、金属柱5および放熱板8がアルミニウムから成る場合は、銀ろう材に換えてアルミニウムろう材(例えば、アルミニウム:88質量%−シリコン:12質量%)を用いればよい。この場合も同様にしてろう材ペーストおよび活性金属入りろう材ペーストを作製して、同様にして接合すればよい。アルミニウムろう材2を使用した場合には、銅より低温の約600℃で接合することができる。
【0032】
活性金属を含まない、通常のろう材ペーストで表層金属回路板3または内層金属回路板4、金属板11、あるいは放熱板8をセラミック基板1に接合するには、セラミック基板1上にメタライズ層を形成しておき、メタライズ層と表層金属回路板3または内層金属回路板4、金属板11、あるいは放熱板8との間にろう材ペーストを配置すればよい。セラミック基板1上のメタライズ層は、セラミック基板1を作製する際に、セラミックグリーンシート上にメタライズペーストを所定パターン形状に印刷塗布しておき、焼成することによって形成しておくか、セラミック基板1を作製した後に、セラミック基板1上にメタライズペーストを所定パターン形状に印刷塗布して焼き付けることによって形成すればよい。メタライズペーストは、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn)またはこれらの混合粉末から成る金属粉末と、適当なバインダーと有機溶剤・溶媒とを添加混合し、混練することによって製作される。
【0033】
また、表層金属回路板3は、セラミック基板1に接合した後に、その表面にニッケルから成る、良導電性で、かつ耐蝕性およびろう材との濡れ性が良好な金属をめっき法により被着させておくと、表層金属回路板3に半導体素子等の電子部品5を半田を介して強固に接着させることができるとともに、表層金属回路板3と外部電気回路との電気的接続を良好なものとすることができる。この場合は、内部に燐を8〜15質量%含有させてニッケル−燐のアモルファス合金としておくと、ニッケルから成るめっき層の表面酸化を良好に防止してろう材との濡れ性等を長く維持することができるので好ましい。ニッケルに対する燐の含有量が8質量%未満となると、あるいは15質量%を超えると、ニッケル−燐のアモルファス合金を形成するのが困難となってめっき層に半田を強固に接着させることが困難となりやすい。このニッケルから成るめっき層は、その厚みが1.5μm未満の場合には、
表層金属回路板3の表面を完全に被覆することができず、表層金属回路板3の酸化腐蝕を有効に防止することができなくなる傾向がある。また、10μmを超えると、特にセラミッ
ク基板の厚さが300μm未満の薄いものになった場合には、めっき層の内部に内在する内
在応力が大きくなってセラミック基板に反りまたは割れ等が発生しやすくなってしまう。また、放熱板8にも同様のニッケル金属層を形成しておくと、外部回路基板または冷却体への接合が良好になるのでよい。
【0034】
2層のセラミック基板1の間に1層の金属板11を接合させた回路基板を用いて表層金属回路板3、内層金属回路板4および放熱板8をあらかじめ所定パターンに形成して接合する場合は、以下のようにすればよい。まず、所定の位置に貫通孔1bを有するセラミック基板1を2枚と回路貫通孔1aを有する金属板11を1枚準備する。また、金属板をプレス加工またはエッチング加工等を用い、表層金属回路板3、内層金属回路板4、金属柱5および放熱板8の所定パターン形状に加工する。次にセラミック基板1と金属板11が相対する接合部の少なくとも一方に、接合後にろう材2となる活性金属入りのろう材ペーストを所定形状にスクリーン印刷等で塗布する。金属柱5の上下面には、ろう材2を予め形成しておく。このろう材2は、金属柱5の表裏にスクリーン印刷で同様にろう材ペーストを形成しても良いし、表裏にろう材2をクラッドした所定の厚みの金属板を金属柱5の寸法に打ち抜くことで形成してもよい。各部材を所定の位置に配置し、位置がずれないように治具等を用いて荷重をかけながら真空中でろう材2が溶融する温度まで昇温し各部材を接合することで、セラミック回路基板となる。
【0035】
内層金属回路板4と金属柱5とによる内部回路を形成した多層基板の上面および下面に、セラミック基板1と同程度の大きさおよび形状の金属板をセラミック基板1に接合した後に、金属板をエッチングで表層金属回路板3および放熱板8の所定パターン形状に加工する場合は、例えば以下のようにする。セラミック基板1の上に接合された金属板の表面にエッチングレジストインクをスクリーン印刷法等の技術を採用して所定パターン形状に印刷塗布してレジスト膜を形成した後、例えば金属板が銅板である場合であれば、塩化第2鉄,塩化第2銅溶液等のエッチング液に浸漬したり、エッチング液を吹き付けたりして表層金属回路板3および放熱板8の所定パターン以外の部分を除去し、レジスト膜を除去すればよい。
【0036】
また、セラミック回路基板が、図1〜図3に示す例のような、内層金属回路板4がセラミック基板1に接合されている場合であれば、図5〜図7に示すような工程で内層金属回路板4と金属板11もエッチングによって所定パターン形状に加工することができる。まず、図5(a)に示す例のように、貫通孔1aを有する上層用のセラミック基板1の上面および下面に、セラミック基板1と同程度の大きさの、表層金属回路板3となる金属板3’および内層金属回路板4と金属板11となる金属板4’がそれぞれ接合され、これらが貫通孔1a内の金属柱5で接続されたものを、上記と同様の方法で形成する。次に、図5(b)に示す例のように、金属板3’および金属板4’の表面に、それぞれ表層金属回路板3、内層金属回路板4および金属板11の所定パターン形状のレジスト膜10を形成する。次いで、図5(c)および図5(d)に示す例のように、金属板3’、金属板4’のレジスト膜10に覆われていない不要部分をエッチング液によって溶解し、レジスト膜10を剥離することで、セラミック回路基板の上側だけ(上側回路基板)を作製する。次に、図6(a)に示す例のように、所定の貫通孔1aを有する下層用のセラミック基板1の下面には、セラミック回路基板の下面の表面金属回路板3および放熱板8となる、セラミック基板1と同程度の大きさの金属板3’が接合されたものを作製する。次に、図6(b)に示す例のように、金属板3’の表面に、表層金属回路板3および放熱板8の所定パターン形状のレジスト膜10を形成する。次いで、図6(c)および図6(d)に示す例のように、金属板3’のレジスト膜10に覆われていない不要部分をエッチング液によって溶解し、レジスト膜10を剥離することで、セラミック回路基板の下側だけ(下側回路基板)を作製する。このとき、回路貫通穴1aおよび貫通孔1bにエッチング液が入って、金属柱5または金属板3’の貫通孔1b内に露出する部分がエッチングされることがないように、中間層用の
セラミック基板1の上面の回路貫通孔1aの開口を治具またはフィルム上のレジスト等で塞いでおくとよい。そして、図7(a)に示す例のように、下側回路基板の貫通孔1a内にろう材2を上下面に被着させた金属柱5を配置して、上側回路基板と下側回路基板とを内層金属回路板4と下側回路基板の貫通孔1a内の金属柱5が接続するように重ねて、図7(b)に示す例のように、金属板11と下層用のセラミック基板1および内層金属回路板4と下層用のセラミック基板の金属柱5との間をろう材2で接合することによって、図1に示す例のような、複数のセラミック基板1および複数のセラミック基板1の間に設けられた金属板11が積層された構造の本実施形態のセラミック回路基板を作製することができる。この方法では、表層金属回路板3および内層金属回路板4は、共にセラミック基板1に大きさの大きい金属板3’および金属板4’を接合させてからエッチングで所定パターン形状に加工することができるので、金属板3’および金属板4’が取り扱いによって曲がってしまう可能性が減少するために、柔らかい銅板を使用する場合または薄い金属板を用いる場合には好ましい。また、1つのセラミック基板1上には1枚の金属板3’または金属板4’を配置すればよいので、接合前のセラミック基板1と金属板3’および金属板4’とを重ねて配置するのが容易であり、位置合わせも容易である。
【0037】
内層金属回路板4は、図1および図2に示す例、ならびに製造工程を示す図5〜図7の例では、その上面は上層のセラミック基板1に、下面は下層のセラミック基板1にろう材2で接合されているが、図3に示す例のように内層金属回路板4の上下面のうちの片面だけをセラミック基板1に接合してもよいし、図4に示す例のようにセラミック基板1に接合しなくてもよい。
【0038】
図4に示す例のように、上下のセラミック基板1と内層金属回路板4とが直接接合しない場合は、セラミック基板1と(セラミック基板1に金属柱5および表層金属回路板3を介して接合された)内層金属回路板4との間に発生する熱応力は、セラミック基板1に直接接続されていない内層金属回路板4が変形して緩和されやすくなる。これによって、金属柱5を介して表層金属回路板3に加わる応力も小さいものとなる。また、構造的な理由以外にも、内層金属回路板4が接合時のろう材2からの金属拡散によって硬度が高くなる部分が少ないという理由でも、金属柱5を介して表層金属回路板3に加わる応力が小さくなるので好ましい。
【0039】
また、内層金属回路板4の上下面のうちの片面だけをセラミック基板1に接合する場合、または内層金属回路板4の上下面ともセラミック基板1に接合する場合であっても、図3および図4に示す例のように、内層金属回路板4の上下面の全面でセラミック基板1に接合しないようにすると、内層金属回路板4が変形しやすく、またろう材2からの金属拡散によって硬度が高くなる部分が少なくなるので、応力をより緩和することができる。
【0040】
このように応力を緩和することができると、窒化アルミニウム質セラミックスのように熱伝導率は高いが機械的強度が小さいという材料から成るセラミック基板1を表層のセラミック基板1としても用いることができるようになり、全層窒化アルミニウム質セラミックスで形成することができるので、熱放散性と温度サイクル信頼性の両方の特性を両立させたセラミック回路基板とすることができる。この場合は、特に熱放散性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【0041】
本実施形態の回路基板において、セラミック基板1に加わる熱応力は、金属板11によって圧縮応力が加えられるが、セラミック基板1は圧縮応力に対しては、引っ張り応力の10倍程度の破壊強度を持つため、セラミック基板1が金属板11によって加えられる応力によって破壊する可能性は小さいため、表層金属回路板3、内層金属回路板4および放熱板8とセラミック基板1との熱膨張係数の差によって発生する引っ張り応力がセラミック基板1を破壊する主な原因となるが、この応力は接合しているこれら金属の硬さと、回路基板
と表層金属回路板3(内層金属回路板4)の接合長さに比例して接合している表層金属回路板3(内層金属回路板4)とその外側にあるセラミック基板1との境界部分に加わる。そのため、上述したように、内層金属回路板4は、図4に示す例のようにセラミック基板1に接合しないのが好ましく、接合する場合であっても、図2および図3に示す例のように、内層金属回路板4の上下面の全面でセラミック基板1に接合しないようにすると、ろう材2の拡散によって内層金属回路板4が硬くなることが抑えられるので好ましい。
【0042】
本実施形態のセラミック回路基板において、多層基板は、複数のセラミック基板1と複数のセラミック基板1の間に設けられた金属板11とを含んでおり、金属板11は、回路貫通孔11aを有している。多層基板の内部に設けられた内層金属回路板4は、金属板11の回路貫通孔11a内に設けられている。本実施形態のセラミック回路基板は、このような構成を含んでいることによって、セラミック基板1に伝導された熱が金属板11を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0043】
本実施形態の電子装置は、上記構成のセラミック回路基板と、セラミック回路基板に搭載された電子部品6とを含んでいることによって、例えば電子部品6によって発生されてセラミック回路基板のセラミック基板1に伝導された熱が金属板11を介して外部へ放散され、放熱性に関して向上されている。
【0044】
また、図8に示す本発明の他の実施形態では、セラミック回路基板の下面の中央部に比較的大きい放熱板8が接合されているが、図1に示す例のように、放熱板8のパターンを複数の小さいものにして放熱板8とセラミック基板1との接合長さを短くすることによって熱応力を小さくするのが好ましい。具体的には、セラミック基板1と表層金属回路板3等の金属板との接合長さが10mmを超えないようにするとよい。
【0045】
図8に示す例では、最上層のセラミック基板1の上面に電子部品6の搭載部および表層金属回路板3を取り囲むような枠体9を設けている。この例では、枠体9は、セラミック基板1の上に、順に金属枠体9b、絶縁枠体9a、金属枠体9bがろう材2を介して接合されて形成されている。上側の金属枠体9bは、蓋を接合するためのものである。この枠体9の上に金属等からなる蓋をろう接、シーム溶接またはYAGレーザー溶接等の溶接によって気密に接合することで、電子部品6を気密封止した電子装置とすることができる。このようにすることによって、電子部品6を気密に封着するとともに、多層セラミック基板の下面の表層金属回路板3を外部端子として外部回路に電気的に接続することができるようになっている。下側の金属枠体9bは、表層金属回路板3と同様の方法で、表層金属回路板3と同時に形成すればよい。下側の金属枠体9bの上には、セラミック基板1と同様のセラミックスから成る絶縁枠体9aとが活性金属で接合され、さらに絶縁枠体9aの上に活性金属で上側の金属枠体9bが接合される。図8に示す例では、このように金属枠体9bと絶縁枠体9aとを積層して接合することによって枠体9を形成することで、セラミック回路基板に搭載される電子部品6より高さの高い枠体9を形成している。枠体9は、図8に示す例に限られるものではなく、例えば、下側の金属枠体9bだけで枠体9を形成して、電子部品6を覆うような箱型の蓋を接合してもよい。
【0046】
図9に示されているように、本発明の他の実施形態の電子装置において、内層金属回路板4は、金属柱5を介して、多層基板の上面のうち枠体9の外側の領域に設けられた表面金属回路板3に電気的に接続されている。すなわち、本発明の他の実施形態の電子装置において、多層基板の上面のうち枠体9の内側に設けられた表面金属回路板3と枠体9の外側に設けられた表面金属回路板3とが、内層金属回路板4および金属柱5を介して電気的に接続されている。図9に示された実施形態の変形例として、金属板11が例えば金属柱のような金属部材によって放熱板8に熱的に結合されていると、例えば電子部品6によって発生された熱の伝導または放散が向上される。
【0047】
上記のような実施形態の回路基板に電子部品6を搭載し、電気的に接続することで本実施形態の電子装置となる。本実施形態の電子装置によれば、上記各構成の本実施形態のセラミック回路基板に電子部品6が搭載されていることから、大電流を流すことができ、信頼性が高く、小型で薄型化の電子装置となる。
【0048】
電子部品6としては、トランジスタ,CPU(Central Processing Unit)用のLSI
(Large Scale Integrated circuit),IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor
)やMOS−FET(Metal Oxide Semiconductor - Field Effect Transistor)等の半
導体素子が挙げられる。
【0049】
電子部品6は、半田またはAu−Si合金等の金属接合材あるいは導電性樹脂で固定されて回路基板に搭載され、ボンディングワイヤ7により電気的に接続される。図1〜図7に示す例では、上から1層目のセラミック基板1の上面に電子部品6を搭載するための表層金属回路板3を形成しているが、セラミック基板1の上面に直接、または第1のセラミック基板1の上面に形成したメタライズ層の上、もしくは、第1のセラミック基板1の中央部を切り抜き、金属板11上に搭載してもよい。
【0050】
図10(a)〜(c)、図11(a)〜(c)、図12(a)〜(c)に示す例では、複数のセラミック基板1のうち金属板11上に設けられたセラミック基板1が、開口部1bを有しており、内層金属回路板4の一部が、平面視で開口部1bにおいて露出している。このような構成を含んでいることによって、図8の構造に比べて電子部品6と放熱板8の間のセラミック基板1を2枚から1枚にできるため、電子部品6を載置した電子装置の厚さをより薄くすることができる。また、図8の構造に比べて電子部品6と放熱板8の間のセラミック基板1を2枚から1枚にできるため、電子部品6から発生した熱が金属板11を介して、より効率的に外部へ放散され、放熱性がより向上する。
【0051】
上側のセラミック基板1に開口部1bを形成するには、焼成した矩形のセラミック基板に開口部1bが形成されるようにレーザー加工で中央部を切り抜いたり、生シートに金型等で開口部1bを打ち抜いてから焼成する等で形成することができる。開口部1bを形成したセラミック基板1の上面に金属板を活性金属入りのろう材2で接合しエッチングで枠体9を形成することで上側回路基板を作成する。その後、下側のセラミック基板1の上下面に金属板を活性金属入りのろう材2で接合しエッチングすることで下側回路基板を作成する。上側回路基板と下側回路基板で使用した活性金属入りのろう材2より融点の低い活性金属入りのろう材2で上側回路基板と下側回路基板を接合することで図10(a)〜(c)に示す例のように、より放熱性の優れたセラミック回路基板となる。
【0052】
図10(b)を用いて説明すると、内層金属回路板4の片方の端部は金属柱5とろう材2を介して接続されており、他方の端部はセラミック基板1と活性金属入りのろう材2で接続されており、内層金属回路板4の中央部付近には金属柱5およびセラミック基板1と接続していない部分が形成されている。また、内層金属回路板4は上側のセラミック基板1とは接続されていないので、下側のセラミック基板1と内層金属回路板4との間に発生する熱応力は、セラミック基板1に直接接続されていない部分の内層金属回路板4が変形して緩和されやすくなる。
【0053】
また、内層金属回路板4は図11(b)に示す例のように、部分的に2層となっていると、より組み立て易くなるので好ましい。その理由は、前述した上側回路基板と下側回路基板を作製する際、両方のセラミック基板1の上下面に表層金属回路板3と内層金属回路板4が活性金属入りのろう材2で接合していることで、セラミック基板1の片面だけに金属を接合した場合に比べて反りを小さくできるため、ろう材2で上側回路基板と下側回路基
板を接合する場合に位置合わせが容易になるからである。
【0054】
また、図10(a)〜(c)および図11(a)〜(c)に対して図12(a)〜(c)に示す例は、下側のセラミック基板1に貫通孔を形成し、電子部品6が接合される内層金属回路板4と放熱板8とが接合されている。この場合は、下側のセラミック基板1を介することなく、内層金属回路板4と放熱板8とが接合されているので、より熱放散性の高いセラミック回路基板とすることができる。さらに、上記したような電子部品6が接合される内層金属回路板4と放熱板8とを接合することに替えて、図12(b)に示す例のように、内層金属回路板4に相当する凸部を有する放熱板8を電子部品6に接合することが好ましい。この場合は、表面金属回路板3とは異なる材質で、セラミック基板1より熱伝導率が高く、電子部品6の熱膨張係数に近い放熱板8を電子部品6に接合することで、より熱放散性の高いセラミック回路基板とすることができる。
【0055】
なお、放熱板8は、上側回路基板と下側回路基板を接合する時に同時に接合しても良い。同時に接合することで、工程を短縮することができるとともに、融点が2種類のろう材2でセラミック回路基板を作製できるようになる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・・・セラミック基板
1a・・・・貫通孔
1b・・・・開口部
2・・・・・ろう材
3・・・・・表層金属回路板
4・・・・・内層金属回路板
5・・・・・金属柱
6・・・・・電子部品
7・・・・・ボンディングワイヤ
8・・・・・放熱板
9・・・・・枠体
9a・・・・絶縁枠体
9b・・・・金属枠体
11・・・・・金属板
11a・・・・回路貫通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセラミック基板および該複数のセラミック基板の間に設けられた金属板を含んでおり、該金属板が回路貫通孔を有しており、前記複数のセラミック基板および前記金属板が互いにろう材によって接合された多層基板と、
該多層基板の上面または下面にろう材によって接合された表層金属回路板と、前記回路貫通孔内に設けられた内層金属回路板と、
前記複数のセラミック基板に形成された貫通孔内に配置されており、前記内層金属回路板にろう材によって接合された第1の端部と前記表層金属回路板にろう材によって接合された第2の端部とを有している金属柱とを備えていることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項2】
前記複数のセラミック基板のうち前記金属板上に設けられたセラミック基板が、開口部を有しており、
前記内層金属回路板の一部が、平面視で前記開口部において露出していることを特徴とする請求項1記載のセラミック回路基板。
【請求項3】
請求項1に記載されたセラミック回路基板と、
該セラミック回路基板に搭載された電子部品とを備えていることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項2に記載されたセラミック回路基板と、
平面視において前記開口部内に設けられており、前記内層金属回路板の前記開口部から露出する部分に電気的に接続された電子部品とを備えていることを特徴とする電子装置。
【請求項1】
複数のセラミック基板および該複数のセラミック基板の間に設けられた金属板を含んでおり、該金属板が回路貫通孔を有しており、前記複数のセラミック基板および前記金属板が互いにろう材によって接合された多層基板と、
該多層基板の上面または下面にろう材によって接合された表層金属回路板と、前記回路貫通孔内に設けられた内層金属回路板と、
前記複数のセラミック基板に形成された貫通孔内に配置されており、前記内層金属回路板にろう材によって接合された第1の端部と前記表層金属回路板にろう材によって接合された第2の端部とを有している金属柱とを備えていることを特徴とするセラミック回路基板。
【請求項2】
前記複数のセラミック基板のうち前記金属板上に設けられたセラミック基板が、開口部を有しており、
前記内層金属回路板の一部が、平面視で前記開口部において露出していることを特徴とする請求項1記載のセラミック回路基板。
【請求項3】
請求項1に記載されたセラミック回路基板と、
該セラミック回路基板に搭載された電子部品とを備えていることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
請求項2に記載されたセラミック回路基板と、
平面視において前記開口部内に設けられており、前記内層金属回路板の前記開口部から露出する部分に電気的に接続された電子部品とを備えていることを特徴とする電子装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−51401(P2013−51401A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145739(P2012−145739)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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