説明

セルロースの酵素加水分解のための上向流沈殿反応器

前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためのセルロースの酵素加水分解の方法が提供される。該方法は、加水分解反応器の底部で前処理されたセルロース原料の水性スラリーを注入することを含む。非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、混合を避け1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持することにより、反応器中の軸方向分散は制限される。セルラーゼ酵素は、注入の段階の前または該段階中に、水性スラリーに添加される。加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流は、加水分解反応器から除去される。該方法で使用するためセルラーゼ酵素および凝集剤を含む酵素組成物も提供される。さらに、セルラーゼ酵素および凝集剤を含むキットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース原料の転化の方法に関する。さらに具体的には、本発明は、効率性を改善したセルロース原料の酵素転化の方法に関する。
【0002】
発明の背景
燃料エタノールは現在、コーンスターチ、サトウキビおよびサトウダイコンなどの原料から生産される。しかしながらこれらの原料からのエタノールの生産は、それらの穀物の生産に適した農地の限界および人間と動物の食物連鎖の利益の競合により、これ以上大きく拡大することはできない。最終的に、転化過程において二酸化炭素およびその他の生成物の放出を伴う化石燃料の使用は、それらの原料の使用の有害な環境に対する影響である。
【0003】
農業廃棄物、草および林業廃棄物などのセルロースを含む原料からエタノールを生産する可能性は、それらの安価な原料を大量に利用可能であること、セルロース廃棄物の燃焼または埋立てを避けるのが望ましいこと、およびエタノールがガソリンに比較して燃料として清浄であることにより大きく注目されてきた。さらにセルロース転化過程の副産物であるリグニンは、セルロース転化過程を促進する燃料として使用することができ、それにより化石燃料の使用が避けられる。研究は、サイクル全体を考慮すると、セルロースから生産されるエタノールの使用による温室効果ガスの発生がほぼ零であることを示している。
【0004】
エタノール生産のため使用することができるセルロース原料は、(1)トウモロコシ茎葉、コムギわら、オオムギわら、エンバクわら、エンバク殻、カノーラわらおよびダイズ茎葉などの農業廃棄物、(2)スイッチ・グラス(switch grass)、ミスカンサス(miscanthus)、コード・グラス(cord grass)およびクサヨシなどの草、(3)ポプラ木材およびおがくずなどの林業廃棄物、ならびに(4)残渣(バガス)およびビート・パルプなどの砂糖加工の残留物草を含む。
【0005】
セルロースは、セルロース原料の2番目に主要な成分であるヘミセルロースと同様、分解に対し非常に耐性がある結晶構造からなる。セルロース繊維からエタノールへの転化は、以下を必要とする:1)リグニンからセルロースおよびヘミセルロースを遊離させること、またはセルロース原料内のセルロースおよびヘミセルロースのセルラーゼ酵素への接近可能性を増加させること、2)糖を解放するためヘミセルロースおよびセルロース炭水化物ポリマーを解重合すること、ならびに3)混合されたヘキソースおよびペントース糖を発酵させエタノールとすること。
【0006】
セルロースを糖に転化するために使用されるよく知られた方法には、セルロースをグルコースに加水分解するのに十分な温度、酸濃度および時間の長さでの蒸気および酸の使用を伴う酸加水分解法がある(グレスレイン(Grethlein)、1978年、J.Appl.Chem.Biotechnol.28:296−308)。次にグルコースは、酵母を使用して発酵させエタノールとし、エタノールは、蒸留により回収され純化される。
【0007】
セルロース加水分解の代替的な方法は、酸による前加水分解(または前処理)とそれに続く酵素加水分解である。この順序においてセルロース材料はまず、上記で説明した酸加水分解法を使用して、しかしより穏やかな温度、酸濃度および処理時間で前処理される。この前処理方法は、次の酵素転化段階のためのセルロース繊維内のセルロースの接近可能性を増大させるが、セルロースのグルコース自体への転化をほとんどもたらさない。次の段階において、前処理された原料は適切な温度およびpHに調整され、次にセルラーゼ酵素による酵素転化にかけられる。
【0008】
酸によるかセルラーゼ酵素によるかを問わず、セルロースの加水分解の後に糖が発酵によりエタノールとなり、次にエタノールが蒸留により回収される。
【0009】
セルロース材料からの糖へのセルロースの効率的な転化およびそれに続く糖のエタノールへの発酵は、商業的可能性に関して大きな課題に直面している。特に、酸による予備加水分解は、大量の酸を必要とする。洗浄された硬材などの清浄な原料にとって、硫酸の必要量は、原料の乾燥重量の0.5%から1%である;土壌からの高水準の二酸化珪素、塩およびアルカリ・カリウム化合物を含む可能性がある農業繊維にとって、酸必要量は約10倍、原料の5重量%から7重量%に達する可能性がある。このことは、方法に著しい費用を加える。前加水分解法において大量の酸を使用する2つ目の不利益は、セルラーゼ酵素を用いた酵素加水分解の前に、酸性化した原料を約4.5と約5の間のpH(ペーハー)まで中和しなければならないことである。酸性化した原料を中和するために使用される苛性ソーダの量は、原料を酸性化するために使用される酸の量に比例する。従って、高度の酸の使用は高度の苛性ソーダの使用をもたらし、これはさらに、セルロース原料をエタノールに加工する費用を増大させる。さらに、前処理にもかかわらずセルロースは加水分解に対し依然として耐性を有するままであり、このことは必要となる酵素投与量を増大させるため、酵素加水分解の費用は高額である。該必要量の増大は、加水分解の時間(90−200時間)を増大させることにより解消することができるが、今度は非常に大きな反応器を必要とし、これがまた全体の費用に加わる。
【0010】
高水準のセルロース転化を維持しながら酵素投与量を減少させる方法が、同時糖化発酵法(SSF)である。この種類のシステムにおいて、酵素加水分解は、反応容器中のグルコースのエタノールへの酵母発酵と同時に行われる。SSFの間、酵母は、グルコースをエタノールに発酵させることにより反応器からグルコースを除去し、このことは、グルコースによるセルラーゼの阻害を減少させる。しかしながら、セルラーゼ酵素は、なおエタノールにより阻害される。SSFは、通常35−38℃の温度で行われ、これは、セルラーゼにとっての最適条件の50℃と酵母にとっての最適条件の28℃との間の中間である。この中間の温度は、セルラーゼ酵素と酵母の両方による標準以下の性能をもたらす。従って、非能率的な触媒作用は、非常に長い反応時間と非常に巨大な反応容器を必要とし、両方とも高価である。
【0011】
より高い容量生産性のための方法は、アメリカ特許第5,258,293号で開示されている(リンド)。この方法は、反応容器中に継続的に注入される微生物に加えてリグノセルロース原料を利用する。流体は反応容器の底部からも継続的に添加されるが、スラリーの機械的な攪拌は行われない。反応が進行するにつれて、消化されつつあるリグノセルロース原料は、空間的に不均質な層に蓄積する傾向がある一方、エタノール生成物は、最上部の層に上昇し、そこで除去される。不溶性の基質は、底部の層に蓄積し、容器から回収することができる。この配置は、発酵基質の特異な滞留をもたらし、これにより反応容器中の滞留時間の増大の余地がある。
【0012】
U.S.5,837,506(リンド)で開示されたもう1つの方法において、エタノールは、断続的に攪拌され恒常的に原料が供給されるバイオリアクタを使用して生産される。リグノセルローススラリーおよび微生物が、反応器に添加される;混合物は次いで、特定の時間間隔で、機械的な手段または流体再循環のいずれかにより攪拌され、その後沈殿することが可能となる。エタノールは次いで、反応器の最上部から除去され、追加の基質が添加され、循環が継続する。同様の方法において、Kleijntjensおよびその他(1986年、バイオテクノロジー・レターズ、8:667−672)は、C・サーモセラム(C.thermocellum)の存在下でセルロースを含む基質を発酵させるために上向流反応器を利用している。基質スラリーは沈殿し、凝集した繊維の層を形成し、これは、緩慢な機械的攪拌により加速する。基質が定期的に添加される一方で、液体が継続的に反応器に供給される。エタノール生成物は最上部の層に蓄積し、そこで反応器から除去される。U.S.5,837,506、U.S.5,258,293ならびにKleijntjensおよびその他で開示された方法は、反応容器中の原料の滞留時間の増加をもたらす。しかしながら、3つの全ての方法は、SSF法の不利益を被る。
【0013】
U.S.5,348,871;U.S.5,508;183、U.S.5,248,484;およびU.S.5,637,502(スコット)は、攪拌された反応容器と関連した磨砕機の使用により、酵素加水分解における転化効率を改善する方法を教えている。攪拌器は、セルロース原料中の固体粒子の粒経縮小のための高剪断領域を作り出し、これがセルラーゼ酵素のための新しい表面積を継続的に提供する。これにより反応効率が増大し、酵素必要量が減少する。しかしながら、高剪断はしばしば、酵素を不活性化する。さらに、磨砕装置の費用は、酵素投与量の減少による節約額よりもはるかに大きい。
【0014】
U.S.5,888,806およびU.S.5,733,758(グエン(Nguyen))は、交互に混合および非混合の領域からなるタワー型加水分解反応器を使用し、それにより混合の動力消費および費用を減少させる代替的な方法を教えている。スラリーは、反応器を通じて栓流中を上部に移動し、混合領域において断続的に混合され、それにより液体のチャネリングが妨げられ、均一な熱および物質の移動が確保される。U.S.5,888,806およびU.S.5,733,758で開示された方法は剪断および酵素の変性を減少させる一方、混合装置の費用は実質的である。さらに、酵素の動的性能は、バッチ加水分解方式で達成できるのと同程度である。
【0015】
現在のところ、費用の低下を維持しながら高い転化効率を達成するには、多大の技術的な困難が存在する。酵素の投与量を増大させることによる費用の増加を防ぐため加水分解の回数を増やすことは、より大きな反応器を必要とし、これが今度は装置の費用を増大させる。加水分解中の原料の混合および断続的な混合は、酵素の効率を増加させ得るが、装置の費用はさらに増加し、剪断力は酵素の変性をもたらす。他のシステムは、最適な酵素の活性を弱め、酵素の効率を減少させる。
【0016】
発明の要約
本発明は、セルロース原料の生成物への転化の方法に関する。さらに具体的には、本発明は、効率性を改善したセルロース原料の酵素転化の方法に関する。
【0017】
本発明に従って、セルロースの酵素加水分解のための上向流沈殿反応器が提供される。
【0018】
本発明は、前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためのセルロースの酵素加水分解の方法も提供し、該方法は以下からなる:
i)前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中にセルラーゼ酵素を水性スラリーに添加すること;ならびに
iv)加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【0019】
本発明は、注入の段階(段階ii)において、水性スラリーが、均一な放射状分布で加水分解反応器の底部に注入される、上記で定義されたセルロースの酵素加水分解の方法に関する。
【0020】
本発明は、添加の段階(段階iii)において、一つまたは複数の凝集剤が、セルラーゼ酵素とは別に、もしくはセルラーゼ酵素とともに、またはそれらの組合せにより水性スラリーに添加される、上記で定義されたセルロースの酵素加水分解の方法を指向する。さらに、一つまたは複数の凝集剤は、注入の段階(段階ii)の前もしくは該段階中に、またはそれらの組合せにより、添加することができる。
【0021】
本発明は、提供の段階(段階i)において、スラリーが約5重量%から約20重量%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が、約25重量%から約70重量%のセルロースを含む、上記で定義されたセルロースの酵素加水分解の方法に関する。
【0022】
本発明は、前処理されたセルロース原料が、コムギわら、エンバクわら、オオムギわら、トウモロコシ茎葉、ダイズ茎葉、カノーラわら、サトウキビ残渣(バガス)、スイッチ・グラス(switch grass)、クサヨシ、コード・グラス(cord grass)、エンバク殻、サトウダイコン・パルプまたはミスカンサス(miscanthus)から得られる、上記で説明した方法を指向する。さらに、前処理されたセルロース原料は、酵素加水分解の前に、約0%から約5%の酸濃度で、約160℃から約280℃で約3秒から約30分間の前処理にかけられていてもよい。酸は、硫酸、亜硫酸および二酸化硫黄からなる群から選択することができる。選択的に、糖を含む液体流は、注入の段階(段階ii)の前に、前処理されたセルロース原料から分離することができる。液体流は、濾過、遠心分離、洗浄などの方法または当技術分野で知られているであろう、その他の適切な方法を使用して、原料から分離することができる。洗浄が分離のために使用される場合、洗浄は、水、再利用されたプロセス流、処理された流出物などの適切な洗浄媒体またはそれらの組合せを使用して行うことができる。
【0023】
本発明は、添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素がセルロース1グラムあたり約1.0から約40.0FPUの投与量で添加される、上記で説明した方法も提供する。
【0024】
さらに本発明は、除去の段階(段階iv)において、少なくとも一部の加水分解生成物の流れが、非混合の加水分解反応器の最上部で浄化器領域を使用することにより非加水分解固体から分離される、上記で説明した方法を提供する。加水分解生成物および非加水分解固体は、別の場所で浄化器領域から除去することができる。代替的に、少なくとも一部の加水分解生成物の流れは、固体−液体分離器を使用して、非加水分解固体から分離される。
【0025】
本発明は、添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素が、グルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを生産するよう選択される、上記で説明した方法を指向する。
【0026】
本発明は、提供の段階(段階i)において、スラリーのpHが約4.0から約6.0、好ましくは約4.5から約5.5に調整される、上記で説明した方法も提供する。さらに温度は、約45℃から約70℃、好ましくは約45℃から約65℃でもよい。
【0027】
本発明は、添加の段階(段階iii)において一つまたは複数の凝集剤が使用される、上記で説明した方法に関する。凝集剤は、カチオン性ポリマー、非イオン・ポリマー、アニオン・ポリマー、両性ポリマー、塩、明礬およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、一つまたは複数の凝集剤は、例えばポリアクリルアミド、だがこれに限定されないカチオン性ポリマーである。凝集剤は、固体1トンあたり約0.1から約4kgの投与量で添加することができる。
【0028】
本発明は、平均スラリー流速が、1時間あたり約0.1と約12フィートの間、より好ましくは1時間あたり約0.1と約4フィートの間である、上記で説明した方法にも関する。
【0029】
本発明は、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物も提供する。好ましくは、セルラーゼ酵素は、アスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルス、テルモビフィダ(Thermobifida)またはそれらの組合せにより生産される。さらに、一つまたは複数の凝集剤は、カチオン性ポリマー、非イオン・ポリマー、アニオン・ポリマー、両性ポリマー、塩、明礬およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、一つまたは複数の凝集剤は、カチオン性ポリマー、例えばポリアクリルアミドである。
【0030】
本発明は、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物の使用も指向する。
【0031】
本発明は、前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するセルロースの酵素加水分解のためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物の使用も指向し、該酵素組成物の使用は、以下からなる:
i)前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中に酵素組成物を水性スラリーに添加すること;ならびに
iv)加水分解された生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【0032】
好ましくは、セルラーゼ酵素は、アスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルス、テルモビフィダ(Thermobifida)またはそれらの組合せにより生産され、一つまたは複数の凝集剤は、カチオン性ポリマー、非イオン・ポリマー、アニオン・ポリマー、両性ポリマー、塩、明礬およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、一つまたは複数の凝集剤は、カチオン性ポリマー、例えばポリアクリルアミドである。
【0033】
本発明では、加水分解は以下により行われる、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物も提供する:
i)前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中に酵素組成物を水性スラリーに添加すること;および
iv)加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【0034】
本発明は、前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためにセルロースを加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤ならびに指示からなるキットを提供し、該指示は以下からなる。
i)前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中にセルラーゼ酵素混合物および一つまたは複数の凝集剤を水性スラリーに添加すること;ならびに、
iv)加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【0035】
本発明は、前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためにセルロースを加水分解するにあたり使用するための酵素組成物を調製する方法も提供し、該方法は、植物、菌または微生物の入手源から一つまたは複数のセルラーゼ酵素を獲得すること、および酵素組成物を生産するためセルラーゼ酵素と一つまたは複数の凝集剤を組み合わせることからなる。
【0036】
本発明は、セルラーゼ酵素が、アスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルスおよびテルモビフィダ(Thermobifida)により生産される、上記で説明した酵素組成物を調製する方法も提供する。
【0037】
本発明は、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するシステムを提供し、該システムは、上向流加水分解反応器への投入と流体連通状態にある原料スラリー供給配管、上向流加水分解反応器と流体連通状態にある固体−液体分離器を含み、また、非加水分解固体を含むスラリーを回収するための第1の排出および加水分解生成物を含む流れを回収するための第2の排出を含み、該加水分解生成物は、グルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含み、該原料供給配管、該上向流加水分解反応器、または該原料供給配管および該上向流加水分解反応器の両方は、セルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物を含む。
【0038】
本発明は、原料供給配管が、使用されるときに、前処理された原料を含む、上記で説明したシステムも提供する。固体−液体分離器は、沈殿タンク、浄化器、浄化器領域、遠心分離機または濾過器でもよい。システムが使用されるとき、セルラーゼ酵素は、前処理された原料のセルロース1グラムあたり、約1.0から約40.0FPUの投与量で存在してもよく、一つまたは複数の凝集剤は、前処理された原料の固体1トンあたり約0.1から約4.0kgの投与量で存在してもよい。
【0039】
本書中で説明するように、上向流沈殿反応器内のセルロースの加水分解の作用は、一つまたは複数の凝集剤の添加により向上させることができる。凝集剤は、セルロース固体の大きさを増大させ、それにより、セルロース固体の沈殿の速度を増大させる。このことは、より長い時間反応器中に固体を保持するのに役立ち、それにより、セルロースの転化の程度を増大させる。さらに、本書中で説明する方法は、加水分解タンク内において回転翼、ポンプまたは同種のものの使用によるスラリーの激しい混合が要求されないという点で混合が不在の加水分解反応器内における原料スラリーの加水分解を提供する。
【0040】
上向流沈殿加水分解反応器の使用は、先行技術の欠点のいくつかに対処する。本発明は、セルロースの酵素加水分解の効率を改善する。このことは、セルロースのグルコースへの転化の程度の向上をもたらす。代替的に、上向流沈殿反応器は、従来の加水分解システムよりも低いセルラーゼ酵素の必要量をもたらす。改善された酵素加水分解は、加水分解反応器内のスラリーの混合の費用なしに、またシステムに激しい剪断を加えることなしに達成される。上向流加水分解反応器の使用に伴う改善は、凝集剤の使用により向上させることができる。
【0041】
図の簡単な説明
本発明のこれらの特徴およびその他の特徴は、添付された図を参照する以下の説明からより一層明らかとなる:
【0042】
図1は、本発明の実施形態に従って使用することができる上向流反応器を含むシステムの概略図を示す。図1Aは、上向流反応器および沈殿タンクを含むシステムを示す。図1Bは、図1Aの上向流反応器を示す。図1Cは、上向流反応器が浄化器領域を含む場合のシステムの一部を示す。
【0043】
図2は、凝集剤の添加がない場合に、加水分解反応器内の様々の高さでサンプリングされた非溶解の固形分を示す。
【0044】
図3は、凝集剤の添加がない場合に、加水分解反応器内の様々の高さでのサンプリングにより測定されたセルロース転化の百分率を示す。
【0045】
図4は、凝集剤がある場合に、加水分解反応器内の様々の高さでサンプリングされた非溶解の固形分を示す。
【0046】
図5は、凝集剤の添加がある場合に、加水分解反応器内の様々の高さでサンプリングされた、転化されたセルロースの量を示す。
【0047】
図6は、凝集剤がない場合と比較して、凝集剤の添加がある場合に、加水分解反応器内から出た生成物におけるセルロース転化の効率の増加を示す。
【0048】
好ましい実施形態の説明
本発明は、セルロース原料の生成物への転化の方法に関する。さらに具体的には、本発明は、セルロース原料の酵素転化のための効率を改善した方法に関する。
【0049】
以下の説明は、実施例のみによる好ましい実施形態に関するものであり、本発明を実施するために必要な特徴の組合せに限定されない。
【0050】
本発明は、セルロースを、例えばグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せ、だがそれらに限定されない生成物に分解するためのセルロースの酵素転化の方法に関する。本発明の1つの態様において、該方法は、非混合の加水分解反応器において上方へセルラーゼとともにセルロース水性スラリーを汲み上げることを含む。スラリーの上昇速度は緩慢であり、その結果固体粒子は、スラリー本体よりも密度が高く、液体よりも緩慢に上方に流れる傾向がある。セルラーゼ酵素が強固かつ選択的にセルロースに結合することは、よく知られている。セルロースを含む固体粒子の緩慢な上昇流は、液体よりも長い時間、セルロースを含む固体および結合したセルラーゼ酵素を反応器中に滞留させる。セルロースおよび結合したセルラーゼの滞留は、生成物、例えばグルコースへのセルロースの転化を増大させる。反応器の最上部の近辺で、含水した生成物すなわち糖の流れおよび非加水分解固体は回収される。生成物がグルコースの場合、含水した糖の流れは、エタノールへの発酵およびその他の追加の処理のため回収される。本書中で説明する方法は、他の方法において液体および固体の栓流に要求されるのと比べて、より小さい反応器内でより長いセルロース加水分解時間を達成する。代替的に、本書中で説明する方法は、他の方法において要求されるのと比べて、より少ないセルラーゼ酵素により、より高水準のセルロース転化を達成する。
【0051】
本発明は、前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためのセルロースの酵素加水分解の方法を提供し、該方法は以下からなる:
i)前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中にセルラーゼ酵素を水性スラリーに添加すること;ならびに
iv)加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【0052】
さらに、添加の段階(段階iii)において、凝集剤は、スラリーに対して直接、またはスラリーに添加されるセルラーゼ酵素とともに、スラリーに添加することもできる。
【0053】
グルコースは次いで、例えばエタノール、だがそれに限定されない関心のある生成物を生産する追加の処理のため使用することができる。
【0054】
上方沈殿反応器、および本書中で説明する方法が、セルロースのグルコースへの酵素転化に適しているにもかかわらず、この反応器および関連する方法は、セロビオース(好ましくは、酵素、[ベータ]―グルコシダーゼ([ベータ]G)がセルラーゼから抜けている場合)およびグルコース・オリゴマー(好ましくは、セロビオハイドロラーゼ(cellobiohydrolases)酵素(CBH)および[ベータ]Gがセルラーゼから抜けている場合)を含むがそれらに限定されないその他の生成物にセルロースを転化するため使用することもできる。本発明をさらに例示するため、セルロースをグルコースに転化する方法を説明する。しかしながら、この方法は、原料の加水分解中に異なるセルラーゼ酵素混合物を組み込むことにより、代替的な生成物の生産のため使用することができると理解すべきである。
【0055】
「セルロース原料」または「セルロース材料」という用語により、非木材植物バイオマス、農業廃棄物および林業残留物ならびに砂糖加工の残留物など、だがそれらに限定されないセルロースを含むあらゆる種類のバイオマスが意味される。例えば、セルロース原料は、スイッチ・グラス(switch grass)、コード・グラス(cord grass)、ホソムギ、ミスカンサス(miscanthus)などの草もしくはそれらの組合せ;サトウキビ残渣(バガス)およびサトウダイコン・パルプなど、だがそれらに限定されない砂糖加工の残留物;ダイズ茎葉、トウモロコシ茎葉、エンバクわら、イネわら、イネ殻、オオムギわら、トウモロコシの穂軸、コムギわら、カノーラわら、エンバク殻およびトウモロコシ繊維など、だがそれらに限定されない農業廃棄物;ならびに、再使用される木材パルプ繊維、おがくず、硬材、軟材またはそれらの組合せなど、だがそれらに限定されない林業廃棄物を含み得るがそれらに限定されない。さらにセルロース原料は、新聞紙、厚紙および同種のものなど、だがそれらに限定されないセルロース廃棄物または林業廃材を含み得る。セルロース原料は、1種類の繊維を含む場合があり、または代替的に、セルロース原料は、異なるセルロース原料に由来する繊維の混合物を含み得る。コムギわら、オオムギわら、トウモロコシ茎葉、ダイズ茎葉、カノーラわら、スイッチ・グラス(switch grass)、クサヨシ、サトウキビ残渣(バガス)、コード・グラス(cord grass)、エンバク殻、サトウダイコン・パルプおよびミスカンサス(miscanthus)は、それらの広い利用可能性および低費用によりセルロース原料として特に有利である。
【0056】
原則として、実質的な量のセルロースを含む材料は、本発明の方法に適している。実際上、セルロース材料は、実質的な量のグルコースを生産するために、約20%(w/w)超の量のセルロースを含む。セルロース材料は、例えば、少なくとも約30%(w/w)、35%(w/w)、40%(w/w)またはそれを超える量のより高いセルロース含有量を有してもよい。従って、セルロース材料は、約20%から約70%(w/w)のセルロース、もしくは約25%から約70%(w/w)のセルロース、もしくは約35%から約70%(w/w)のセルロース、またはそれを超える量、あるいはその間の量、例えば20、22、24、25、26、28、30、32、34、35、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68および70%(w/w)、だがそれらに限定されない量のセルロースを含み得る。
【0057】
本発明は、加工または前処理された天然のセルロース原料またはセルロース材料を用いて実施することができる。加工および前処理の方法は、繊維構造を崩壊させ、セルラーゼ酵素に接近可能な原料の表面積を増大させるよう、機械的および化学的作用の十分な組合せを提供することを意図する。機械的作用は通常、圧力、破砕、粉砕、攪拌、裁断、圧縮/拡張またはその他の種類の機械的作用の使用を含むがそれらに限定されない。化学的作用は、熱(しばしば蒸気)、酸および溶媒の使用を含み得るがそれらに限定されない。いくつかの化学的および機械的な前処理の方法は、当技術分野でよく知られている。
【0058】
原料の前処理の1つの方法は、U.S.4,461,648およびU.S.4,237,226(これらは参照により本明細書の一部に組み込まれる)で説明されたプロセス条件を使用する蒸気爆発である。この方法において、リグノセルロース・バイオマスは、0%から5%(V/V)またはそれらの間の量の硫酸またはその他の適切な酸の存在下でスチーム・ガンに装填される。スチーム・ガンは次いで、約160℃から約280℃、またはその間の量の温度までの蒸気により急速に満たされ、約3秒から約30分の間またはその間の量の加熱時間、高圧に保たれる。容器は次いで、前処理されたバイオマスを放出するため急速に減圧される。例えばフーディーおよびその他(最終報告、蒸気爆発前処理の最適化、米国エネルギー省報告ET230501、1980年4月;これは参照により本明細書の一部に組み込まれる)で説明されたもの、だがそれに限定されない蒸気爆発前処理を実施するための先行技術で知られたあらゆるパラメータも、本発明の方法で使用することができる。蒸気爆発のために選択される条件は、原料の性質および酵素の感受性の望ましい程度に依存する。しかしながら、当技術分野内で知られたその他の方法は、前処理された原料の調製のため必要に応じ使用することができ、例えば、US5,846,787(ラディッシュ(Ladisch))、US5,198,074(ヴィラヴィセンシオ(Villavicencio))、US4,857,145(ヴィラヴィセンシオ(Villavicencio))またはUS4,556,430(コンヴァース(Converse);これは参照により本明細書の一部に組み込まれる)で開示されたもの、アンモニア冷凍爆発(米国特許5,171,592、ホルツァップル(Holtzapple))および濃縮アルカリ処理であるが、それらに限定されない。
【0059】
前処理段階が行われるかどうかにかかわらず、セルロース原料は、酵素加水分解の前に、例えばWO02/070753(グリフィンおよびその他。これは参照により本明細書の一部に組み込まれる)で開示されたように、選択的に、水で洗浄しまたは水で濾しとることができる。前処理されたセルロース原料の洗浄により、溶解した糖、糖分解生成物、溶解したリグニンおよびフェノール化合物、ならびにシステム中のその他の有機化合物などのセルラーゼ酵素の阻害物質を除去することができる。洗浄され前処理された原料内のセルロースの濃度は通常、例えば約50%−70%の水準まで増大する。
【0060】
セルロース材料は、高密度であり、依然汲み上げることができる濃度の液体中でスラリーとされる。例えば、しかし限定的であることを希望せず、液体は、水、再利用されたプロセス流または処理された流出物でもよい。スラリー中のセルロース原料の濃度は材料に依存するが、約3%から約30%(w/w)の非溶解固体、またはその間の濃度、例えば約5%から約20%もしくは約10%から約20%の非溶解固体またはそれらの間の量でもよい。例えば、スラリー中のセルロース原料の濃度は、3、5、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28または30%の非溶解固体(w/w)でもよい。当技術分野でよく知られているように、懸濁または非溶解の固体の濃度は、ガラス・マイクロファイバー濾過紙を使用してスラリーのサンプルを濾過し、濾過ケーキを水で洗浄し、かつ105℃で一晩中ケーキを乾燥させることにより、決定することができる。
【0061】
スラリーのpHは一般的に、使用されるセルラーゼ酵素のための最適pH(ペーハー)の範囲内に調整される。一般的にスラリーのpHは、約3.0から約7.0もしくは約4.0から約6.0またはそれらの間のpHの範囲内、好ましくは約4.5から約5.5の範囲内に調整される。例えばpHは、約3.0、3.5、4.0、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、6.0、6.5または7.0でもよい。スラリーのpHは、当技術分野で知られている適切な酸または塩基を使用して調整することができる。例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムもしくはその他の適切な塩基(スラリーが酸性の場合)、または硫酸もしくはその他の適切な酸(スラリーがアルカリ性の場合)を使用することができる。しかしながら、スラリーのpHは、使用されるセルラーゼ酵素が好アルカリ性または好酸性である場合それぞれ、約4.5から約5.5より高くまたは低くすることができる。スラリーのpHは、使用される酵素のための最適pHの範囲内に調整すべきである。
【0062】
スラリーの温度は、セルラーゼ酵素の活性にとって最適な範囲内にある点まで調整される。一般的に、約45℃から約70℃もしくは約45℃から約65℃の温度またはそれらの間の温度は、ほとんどのセルラーゼ酵素に適している。例えばスラリーの温度は、約45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69または70℃に調整することができる。しかしながら、スラリーの温度は、好熱性のセルラーゼ酵素について、より高くすることができる。
【0063】
セルラーゼ酵素は次いで、スラリーに添加される。「セルラーゼ酵素」、「セルラーゼ」または「酵素」という用語により、セルロースの加水分解に触媒作用を起こし、グルコース、セロビオースおよびその他のセロオリゴ糖などの生成物を作る酵素が意味される。セルラーゼは、多くの植物および微生物により生産され得るエクソ−セロビオハイドロラーゼ(exo−cellobiohydrolases)(CBH)、エンドグルカナーゼ(endoglucanases)(EG)および[ベータ]―グルコシダーゼ([ベータ]G)を含む多酵素混合物を表す一般名である。本発明の方法は、それらの入手源にかかわらず、いかなる種類のセルラーゼ酵素によっても行うことができる;しかしながら、微生物のセルラーゼは一般的に、植物のものより低費用で入手可能である。最も広く研究され、特徴付けられ、かつ商業的に生産されているセルラーゼの中には、アスペルギルス、フミコーラおよびトリコデルマ属の菌ならびにバチルスおよびテルモビフィダ(Thermobifida)属の細菌から得られるものがある。糸状体菌トリコデルマ・ロンギブラキアタム(Trichoderma longibrachiatum)から生産されるセルラーゼは、CBHIおよびCBHIIと名付けられた少なくとも2個のセロビオハイドロラーゼ(cellobiohydrolases)ならびに少なくとも4個のEG酵素を含む。
【0064】
セルラーゼ酵素は、相乗的に作用してセルロースをグルコースに分解する。CBHIおよびCBHIIは一般的に、セロビオースを遊離させるセルロース・ミクロフィブリル中のグルコース・ポリマーの末端で作用する(テレマン(Teleman)およびその他、1995年、European J.Biochem 231:250−258)一方、エンドグルカナーゼ(endoglucanases)は、セルロース上の任意の場所で作用する。これらとともに、酵素は、セルロースをセロビオースなどのより小さいセロオリゴ糖に加水分解する。セロビオースは、[ベータ]―グルコシダーゼによりグルコースに加水分解される。
【0065】
スラリーに添加されるセルラーゼ酵素の投与量は、過剰投与なしに、十分に高い水準のセルロース転化を達成するよう選択される。例えば、適切なセルラーゼ投与量は、セルロース1グラムあたり約1.0から約40.0FPUまたはそれらの間の量でもよい。例えば、セルラーゼ投与量は、1グラムあたり約1.0、3.0、5.0、8.0、10.0、12.0、15.0、18.0、20.0、22.0、25.0、28.0、30.0、32.0、35.0、38.0もしくは40.0FPUまたはそれらの間の量でもよい。FPU(濾紙単位)は、当業者によく知られた標準の測定法であり、ゴーセ(1987年、Pure and Appl.Chem.59:257−268)に従い定義および測定される。グルコースへの完全な転化のため、セルラーゼが適切な量のβ―グルコシダーゼ(セロビオース)活性を含むことが好ましい。β―グルコシダーゼの投与量水準は、セルロース1グラムあたり約5から約600β―グルコシダーゼ単位またはそれらの間の量である。β―グルコシダーゼの通常の投与量水準は、セルロース1グラムあたり約10から約400β―グルコシダーゼ単位またはそれらの間の量である;例えば投与量は、セルロース1グラムあたり10、12、15、17、20、22、25、27、30、32、35、37、40、42、45、47、50、52、55、57、60、62、65、67、70、72、75、77、80、82、85、87、90、92、95、97、100、120、140、160、180、200、220、240、260、280、300、320、340、360、380および400β―グルコシダーゼ単位またはそれらの間の量でもよい。β―グルコシダーゼ単位は、ゴーセの方法(1987年、Pure and Appl.Chem. 59:257−268)に従い測定される。
【0066】
セルラーゼ酵素は、粉末または顆粒として水溶液中で取り扱うことができる。酵素は、反応容器(加水分解塔または加水分解反応器ともいう;110または110’、図1)へのスラリーの投入の前の時点でスラリーに添加することができる。例えば、しかし限定的であることを希望せず、セルラーゼ酵素は、加水分解タワーに入る直前にスラリーに添加することができる。酵素は、当業者によく知られている混合装置を使用してスラリー中に混合することができる。非限定的な実施例において、主要な加水分解反応器(110または110’)の上流に位置する小さな補給タンク(90、図1A)は、酵素をスラリーに添加し、pHを調整し、かつスラリーの望ましい温度を達成するために使用することができる。
【0067】
図1Aを参照して、原料10は、上記で説明したとおり前処理される。この流れは、生成物の流れ30またはその他の適切な流体に接触して交換する熱交換器20を使用して冷やされる。スラリー40は次いで、熱交換器50において、2番目の流体、例えば冷水45を使用して、さらに冷やされる。スラリーは次いで、pHを調整するため、セルラーゼ酵素70および水酸化アンモニウム80とともに、加水分解補給タンク90の中に汲み入れることができる。この実施例において、加水分解補給タンク90の内容物は、混合され、補給タンク90から、配管100に沿って、加水分解タンク110へ汲み入れられる。しかしながら、セルラーゼ酵素は、他の場所、例えば190、195または197、あるいは配管10、40もしくは100またはそれらの組合せを含むがそれらに限定されない加水分解反応器に原料を供給する配管内で、原料と混合することができる。
【0068】
「加水分解塔」、「上向流加水分解反応器」、「加水分解反応器」、「加水分解タンク」または「上向流沈殿反応器」という用語により、セルラーゼ酵素によりセルローススラリーの加水分解を促進する適切な構造の反応容器(タワー)、例えば110(図1B)または110’(図1C)が意味される。加水分解タンクは、望ましい温度を維持するため、絶縁体、蒸気、温水、電気的な熱追跡、またはその他の熱源を用いて保温することができる。本出願において、加水分解反応器は、反応器の内容物の混合が加水分解反応中に起こらないという意味で、非混合加水分解反応器である。以下に示すとおり、反応器の内容物の一定の少ない量の局所的な混合が、システムからの固体および液体の添加および回収に伴う少量の動力投入により起こり得る。スラリーおよびセルラーゼ混合物は、底部で直接に上向流沈殿反応器に入り、加水分解タワー中で上方へと汲み上げられ得る;代替的に、スラリーは、反応器の中央(例えば105)に配置された配管を通じて下方へ汲み出され、反応器の底部で現れ配管を囲み上方へと流れ得る。後者の配置は、スラリーからの熱を加水分解反応器において捉えることができるという点で有利である。一旦スラリーが加水分解タンク110または110’の底部に到達すると、スラリーは上方に移動し、加水分解タンクの幅を横切って分散する;軸方向の分散(すなわち、タンクの高さに沿った分散)は、混合を避けることにより最小化される。スラリーの流速は、スラリーの液体成分が非溶解固体の速度より速い速度で上方に流れるよう選択される。加水分解タワーは、スラリーの内容物が特定の高さにおいて半径方向で比較的均一であるように設計される。均一な分配は、分配器(例えば120)または当技術分野においてよく知られているその他の装置を使用して達成することができる。これは、フラクタル分配器(例えば、アマルガメイテッド・リサーチ・インク(Amalgamated ResearchInc.)が製造するローン・ハース・アドバンスド・アマーパック(Rohn Haas Advanced Amerpack)(登録商標))または回転ワンドを含み得る。例えば、図1Bにおいて、垂直の制御軸は、反応器110の底部における1対の一端が飛び出たトラス・アームおよび反応器の最上部における別の1対を支える。アームは、容器の底部で生成物を分配し、最上部で生成物を回収するためのノズルの付いたヘッダー・システムを組み込む。2個の出入口のある回転継手が、中央軸からの原料投入および排出のために使用される。加水分解タンク内のスラリーの分配は、回転翼またはポンプによる激しい混合なしに達成される。
【0069】
図1Cは、タンクの最上部に配置された浄化器領域135を含む代替的な加水分解タワー110’を示す。以下でより詳細に説明するとおり、固体の大部分は、領域130の最上部で回収される。過剰の、浄化された液体は、領域135で上方に流れ続け、透明な液体として回収される。
【0070】
加水分解反応器110または110’は、説明したように反応器を横切って比較的均一なスラリー濃度を維持するいかなる寸法でもよい。限定的であることを希望せず、加水分解タワーは、約10フィートから約130フィート(3から40m)の間またはそれらの間の量の直径を有してもよい;例えば反応器の直径は、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125もしくは130フィートまたはそれらの間の量でもよい。加水分解反応器の高さは、反応器が本書中で説明した目的を達成することを条件として、いかなる高さでもよい。限定的であることを希望せず、反応器の高さは、約5から約75フィートもしくは約5から約65フィート(1.5から23m)またはそれらの間の量、好ましくは約20から約65フィートでもよい;例えば反応器の高さは、約5、7.5、10、12.5、15、17.5、20、22.5、25、27.5、30、32.5、35、37.5、40、42.5、45、47.5、50、52.5、55、57.5、60、62.5または65フィートでもよい。加水分解反応器の高さと直径の比率は、約0.5から約10の間またはそれらの間の比率でよい;好ましくは、高さと直径の比率は、約0.5から約3である。反応器の全体の寸法は、反応器が水で満たされたときに、反応器を支える土台上に過度の負荷をかけることを避けるよう選択すべきである。限定されない実施例において、110フィートの直径および65フィートの高さを有する加水分解反応器は、4.60百万ガロンの容量を有するだろう。
【0071】
スラリーは、液体が反応器の上部へ均一に流れることを可能とする平均スラリー流速で反応器110または110’内に上方へと汲み上げられる一方、セルロースを含む粒子は、液体よりも高密度であり、液体よりも緩慢に反応器の上部へ流れ、沈殿し、原料固体の濃度よりも高い一定の固体濃度で固まる。スラリーの「平均流速」または「スラリー流速」は、反応器の容量および反応器へのスラリー流速に基づく、名目的なスラリーの滞留時間で除した加水分解反応器の高さである。例えば、30フィートの高さである120,000ガロンの加水分解反応器への1時間あたり10,000ガロンのスラリー投入速度は、120,000ガロン/(10,000ガロン/時間)=12時間の名目的なスラリー滞留時間および30フィート/12時間=2.5フィート/時間の平均スラリー流速を有する。平均流速は、固体が平均スラリー流速よりも緩慢な速度で上方に流れることが可能となるよう選択される。このことは、固体が名目スラリー滞留時間よりも長い加水分解反応器中の平均滞留時間を有することを可能とする。これは、反応器中の液体と固体の流速および滞留時間が実質的に同一であるスラリー栓流反応器とは異なる。これが達成される流速は、原料およびスラリー中の固体粒子の大きさ、ならびに添加される凝集剤の存在に依存する。凝集剤の使用は、より高い平均流速の使用を可能とし得る。一般的に、平均流速は、1時間あたり約0.1から約20フィートまたはそれらの間の速度である。好ましくは、平均流速は、1時間あたり約0.1から約12フィートの間またはそれらの間の量である。より好ましくは、平均流速は、1時間あたり約0.1から約4.0フィートの間またはそれらの間の量である。例えば、平均スラリー流速は、1時間あたり約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0、13.5、14.0、14.5、15.0、15.5、16.0、16.5、17.0、17.5、18.0、18.5、19.0、19.5または20.0フィートでよい。加水分解反応器中の名目的なスラリー滞留時間は、通常4−120時間、好ましくは12−100時間、最も好ましくは20−100時間である。
【0072】
本発明の方法を使用して、スラリーの性質は、セルロースの加水分解が進行するにつれ変化する。理論に拘束されることを希望せず、加水分解反応の間、セルラーゼ酵素はセルロースに結合し、これにより、スラリー中のセルロースを含む固体粒子に結合したままである。スラリーの平均上昇速度は緩慢であり、その結果固体粒子は、スラリー全体よりも高密度であり、液体よりも緩慢に上方に流れる傾向がある。セルロースを含む固体粒子の緩慢な上昇流は、液体よりも長い時間、セルロースを含む固体および結合したセルラーゼ酵素を反応器中に滞留させる。結合した酵素がセルロースを消化しグルコースを溶液中に放出するにつれ、セルロースの量および固体粒子の密度は変化する。変化した密度により、より小さい粒子は、液体とともに上方に流れるか、または反応器の底部に沈殿する。セルロースを含む粒子の液体と比較して特異な滞留により、セルロースの濃度は、加水分解反応器の底部から最上部へと減少する一方、グルコースの濃度は、反応器の底部から上部へと増大する。セルロースの濃度の減少およびグルコースの濃度の増大は、加水分解反応器110(図1Aおよび1Bを参照)の「加水分解領域」130で起こる。含水した糖の流れ、非加水分解固体および近接するセルロースを含む粒子は、反応器110の加水分解領域の最上部140の付近150で回収される。固体の少なくとも一部は次いで、例えば固体―液体分離器を使用してグルコースの流れから分離され、例えば、沈殿タンク160および生成物の流れ30は、エタノールへの発酵およびその他の追加の処理(170)のために送られる。加水分解タワー内のセルロースのより長い滞留は、セルロースからグルコースへの転化の程度を増大させ、それにより、混合反応器内で達成される場合よりも、より小さな反応器内でより長いセルロース加水分解時間を達成する。代替的に、より高度のセルロース転化は、その他の場合に要求されるよりも低い酵素投与量で達成される。
【0073】
「非加水分解固体」、「非転化固体」という用語により、セルラーゼ酵素により消化されないセルロース、ならびに原料中に存在するセルラーゼに対して不活性の非セルロースまたはその他の材料が意味される。例えば、しかしいかなる形でも限定的となることを希望せず、非転化固体は、リグニン、二酸化珪素またはその他の固体材料を含み得る。原料中のセルロースが加水分解されるにつれ、セルロースを含む固体粒子内の非転化固体の濃度は増大する。密度および粒経により、非転化固体は、150で生成物とともに除去されるか、または底部で沈殿物もしくはスラッジ180中に沈殿し得る。非常に重い粒子によりスラッジ層が反応器の底部で形成されるとき、当技術分野で知られるいかなる方法も、スラッジまたは沈殿物を除去するために用いることができる。非限定的な実施例において、スラッジを除去するためにスクレーパーを使用することができる。追加の実施例において、反応器の底部は、最も重い固体が沈殿し、除去され(例えば配管167)、リグニン処理165のために送ることができる通路を提供するため、先細とすることができる。
【0074】
加水分解反応器110の最上部140の付近に認められる含水グルコース、非転化固体およびその他の粒子は、流れ150として除去することができる。反応器の最上部からの回収に続いて、非転化固体の少なくとも一部は、可溶性の糖の流れから分離することができる。非転化固体の除去は、固体−液体分離器を使用して、例えば、濾過(例えば、フィルタープレス、ベルト・フィルター、ドラム・フィルター、真空フィルターまたは膜フィルター)、遠心分離、沈殿、例えば、沈殿タンク160、傾斜のある沈殿器(例えば、クヌートセン(Knutsen)およびデイヴィス、2002年、Appl,Biochem.Biotech、98−100:1161−1172、ならびにムーアおよびその他、2001年、Appl.Biochem.Biotech.、91−93:297−309。両者は、参照により本明細書の一部に組み込まれる。)、浄化器、または当技術分野において知られているであろう、その他の適切な方法により、達成することができる。浄化器は、固体と液体との分離を促進する多数の傾いた板、または固体−液体分離の技術分野において知られているその他の特徴を含み得る。本質的に非溶解固体を含まない可溶性のグルコースは、そのときエタノールへの発酵(170)に適している。非転化固体は主にリグニンであり、これは工場の燃料として燃焼および使用することができる。
【0075】
代替的に、含水グルコースの流れは、非転化固体の回収から離れた場所で回収される。グルコースから非転化固体を分離する代替的な方法は、加水分解タワーの底部から上方に約65%から約85%の高さまで延びる加水分解領域130および加水分解領域の真上の「浄化器領域」135を有する、図1C中の反応器110’を使用することである。加水分解の流れは、加水分解領域130の最上部から浄化器領域135内へ汲み上げられる。固体の大部分は、加水分解領域130の最上部で回収される。例えば、しかしいかなる形でも限定的となることを希望せず、ノズルを有する水平ワンドは、ある時間間隔で反応器の最上部を横切って前後に通過し、固体を多く含む流れは、ワンド中へ回収され、反応器から汲み上げられる(162)。過剰の、浄化された液体は、浄化器領域135内へと上方に流れ続ける。浄化器領域135において、固体は一般的にワンドの高さで沈殿する一方、本質的に固体を含まない含水した糖の流れは、最上部から除去される(30)。浄化器領域は、固体と液体との分離を促進する多数の傾いた板、および固体−液体分離の技術分野において知られているその他の特徴を含み得る。非転化固体(または非加水分解固体)は、非加水分解固体から加水分解生成物の少なくとも一部を分離するため、固体−液体分離器に運ぶことができる。
【0076】
それが望ましい場合、グルコースの流れからの分離により得られるセルロースを含む固体は、グルコースへの追加の転化のために投入される原料とともに、上方沈殿反応器または加水分解領域中に再使用のため戻すことができる。
【0077】
反応器の内容物の一定の少ない量の局所的な混合が、システムからの固体および液体の添加および回収に伴う少量の動力投入により、起こり得ると理解されたい。例えば、局所的な混合は、加水分解反応器中にスラリーを投入する分配器120、ワンドまたはポンプの作用により起こり得る。最善の操作のため、加水分解反応器の操作に関連した固体および液体の添加および回収を行うために必要となる動力は、0.1HP/1000ガロンを超えない。これらの上向流反応器の機能に関連した動力は、0.001と0.1HP/1000ガロンの間またはそれらの間の範囲でよい。例えば、これらの上向流反応器の機能に関連した動力は、0.001、0.003、0.008、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09または0.1HP/1000ガロンでもよい。スラリーを混合するため特に設計された、反応器中の回転翼、攪拌器、排出装置またはその他の装置は存在しない。
【0078】
複数の加水分解反応器が使用される場合、反応器は、一連の2個以上の反応器において作動し、この場合、第1の反応器の出口が第2の反応器の入口に原料を供給する。代替的に、反応器は、並行して作動させることができる。さらに、連続する反応器のいくつかを連続して作動させることができる一方で、他のものを並行して作動させることができる。
【0079】
上向流反応器に追加して一つまたは複数の他の反応器の種類、例えば一つまたは複数のバッチまたは連続的な攪拌される反応器などを利用することができるとも理解されたい。非限定的な実施例において、連続的な攪拌される反応器の出口は、上向流反応器の入口に原料を供給する。当業者にとって明白なように、反応器の種類の他の組合せを本発明において使用することができる。
【0080】
本発明の代替的な態様において、凝集剤は、本発明の能率を高めるためスラリーに添加することができる。凝集剤は通常、カチオン性、非イオン性、アニオン性もしくは両性(荷電群の混合物を含む)であるポリマー、または明礬などの塩である。理論に拘束されることを希望せず、凝集剤は、酵素混合物に対する一層完全な曝露を確実とするため、加水分解反応器内で固体を凝集させるのに役立つ。
【0081】
本発明を実施するにあたり、1個の凝集剤または複数の凝集剤を含む混合物を使用することができる。凝集剤は、スラリーへの添加に適したあらゆる形態で提供することができる;例えば、凝集剤は、粉末、液体または分散液でもよい;例えば、分散液は、油または水溶液中で懸濁された凝集剤でもよい。適切な凝集剤の非限定的な実施例は、カチオン性ポリマー、より具体的にはポリアクリルアミドである。該凝集剤は、CA4500(フランス、SNFフロエルジェ(Floerger)(登録商標))およびゼタック(Zetag)(登録商標)7651(カナダ、チバ(登録商標)・スペシャリティー・ケミカルズ)を含むがそれらに限定されない。
【0082】
使用される凝集剤の量は、上向流反応器中で固体を凝集させるのに必要な量により決定される。当業者は、方法全体に望ましくない費用を加えることなく固体の凝集に役立つであろう、添加する凝集剤の量を決定することができるだろう。例えば、しかし限定的であることを希望せず、添加される凝集剤の量は、固体1トンあたり約0.1から4.0kgの範囲の量もしくはそれらの間の量、または固体1トンあたり約0.5から約2.0kgもしくはそれらの間の量でもよい。例えば、添加される凝集剤の量は、固体1トンあたり約0.1、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、1.75、2.0、2.5、3.0、3.5または4.0kgでもよい。
【0083】
凝集剤は、スラリーに直接添加し、またはスラリーへの添加の前に水中で分散および希釈することができる。凝集剤は、スラリーへの添加の前にセルラーゼ酵素と混合することもできる。凝集剤の分散は、システム中の凝集剤の均一な適用を確実とするのに役立つ場合がある。本発明の非限定的な実施例において、凝集剤は、約0.01重量%から約25重量%またはそれらの間の量の濃度で水中で分散させることができる;例えば、凝集剤の濃度は、0.01、0.02、0.04、0.06、0.08、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、0.45、0.5、1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、7.0、10.0、12.0、14.0、16.0、18.0、20.0、22.0もしくは25.0重量%でもよい。凝集剤は、適切な時間、例えば約1分から約1時間、混合によりこの濃度で分散させることができる。分散した凝集剤は次いで、セルローススラリーに直接添加し、または加水分解反応器への添加の前に、約0.01重量%から約1.0重量%もしくはそれらの間の量の濃度まで、水中でさらに希釈することができる。例えば、さらに希釈した凝集剤の濃度は、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1.0重量%でもよい。
【0084】
従って本発明は、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するシステムを提供し、該システムは、向流加水分解反応器(例えば、110または110’)への投入と流体連通状態にある原料スラリー供給配管(例えば10、40、100)、向流加水分解反応器と流体連通状態にある固体−液体分離器(例えば160または135)を含み、また、非加水分解固体を含むスラリーを回収するための第1の排出および加水分解生成物を含む流れを回収するための第2の排出を含み、該加水分解生成物は、グルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含み、該原料供給配管、該向流加水分解反応器、または該原料供給配管および該向流加水分解反応器の両方は、セルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物を含む。好ましくは、原料供給配管は、上記で概略を述べたとおり調製された、前処理された原料を含む。さらに、システム内のセルラーゼ酵素は、前処理された原料のセルロース1グラムあたり、約1.0から約40.0FPUの投与量で存在し、一つまたは複数の凝集剤は、前処理された原料の固体1トンあたり約0.1から約4.0kgの投与量で存在する。
【0085】
本発明は、本書中で説明するように、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物の使用にも関する。このシステムが約60から約98%のセルロースからグルコースへの転化をもたらすので、グルコースは、エタノールの生産に使用することができる。好ましくは、セルラーゼ酵素は、アスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルス、テルモビフィダ(Thermobifida)またはそれらの組合せにより生産される。一つまたは複数の凝集剤は、カチオン性ポリマー、非イオン・ポリマー、アニオン・ポリマー、両性ポリマー、塩、明礬およびそれらの組合せからなる群から選択することができる。好ましくは、一つまたは複数の凝集剤は、カチオン性ポリマー、例えばポリアクリルアミドである。本書中で説明するセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤は、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するための酵素組成物の調製にも使用することができる。従って本発明は、エタノールの生産のため、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物の使用も提供する。
【0086】
凝集剤または希釈した凝集剤は、スラリーへの酵素添加の地点の前(195;図1A)、酵素添加の地点(190)、酵素添加の地点の後(197)、またはこれらの場所の組合せにおいて、添加することができる。さらに凝集剤は、加水分解反応器(192;図1A、1Bおよび1C)の底部もしくはその付近、加水分解反応器の中間部(191)、反応器の最上部(193)、反応器の外部の場所(195、197)、またはこれらの場所の組合せにおいて、スラリーに添加することができる。非限定的な実施例として、凝集剤は、反応器の底部(192)およびその中間部(191)で添加することができる。凝集剤が酵素の活性を阻害し、または酵素の活性に消極的な影響を与える場合、凝集剤は、スラリーまたは加水分解タンクへの添加の前に酵素に有害となる可能性がある方法で、酵素に直接接触すべきではない。
【0087】
凝集剤は、一連のバルブおよび肘継手を通じて、汲上げにより添加することができる。該配置は、凝集剤とスラリーとの混合を改善し、システムへの混合物の逆流を防ぐことができる。代替的な実施例において、凝集剤に乱流を与えそれにより分散を向上させるため、直列の混合装置を使用することができる。代替的に、凝集剤は、補給タンク90においてスラリーに添加され(例えば190で)、次いで、スラリーおよびセルラーゼ酵素40とともに加水分解反応器110または110’に汲み上げることができる。
【0088】
一旦加水分解反応器110または110’に入ると、凝集剤は、固体粒子と結合し始め、加水分解領域130における凝集に役立つ。理論に拘束されることを希望せず、このことは、反応器中にセルロースを含む粒子を懸濁させておくことにより、該粒子が、反応器の最上部から除去され、スラッジ層に沈殿し、またはそれらの組合せの状態になることを防ぐのに役立つ。固体粒子を結合させることは、加水分解領域(130)内のセルロースを含む粒子により一層長い滞留時間を許容し、酵素によるセルロースのより完全で効率的な消化をもたらす。上向流反応器140の最上部において、凝集剤は、主として非転化固体に結合し、粒子とともに反応器から出る(150;図1A)。
【0089】
配管30を通じて反応器110または110’から出る前処理された原料からのセルロースの加水分解により生産されるグルコースは、発酵してエタノールとなる(170)と予想される。グルコースおよびその他の糖のエタノールへの発酵は、当業者に知られた従来の方法により行うことができ、例えば、WO95/13362、WO97/42307またはセルロース・バイオマスからのアルコール生産:アイオジェン(Iogen)・プロセス(所収:アルコール・テキストブック、ノッティンガム大学新聞、2000年;これは参照により本明細書の一部に組み込まれる)で説明されたもの、だがそれらに限定されない、酵母および細菌を含む多様な微生物または遺伝子組換えが行われた微生物により実施することができる。エタノールの生産および回収は、アルコール産業の技術者に知られた十分に確立した方法を使用して行われる。
【0090】
前記で示したとおり、上向流沈殿反応器は、セルロースのグルコースへの酵素転化に適している。しかしながら、この種類のシステムは、セロビオース(好ましくは、βGがセルラーゼから抜けている場合)およびグルコース・オリゴマー(好ましくは、CBHおよびβGがセルラーゼから抜けている場合)を含む、その他の生成物にセルロースを転化するために使用することができる。
【0091】
本発明の方法は、固体が反応器中に存在する時間の長さを増大させ、このことは、酵素がセルロースに結合し続けるため、セルラーゼ酵素とセルロースとの間の接触時間を増大させる。このことは次に、所定の寸法の加水分解反応器で得られるセルロース転化の程度を増大させることにより、加水分解過程の効率を増大させる。従って、酵素加水分解の費用は最小化される。さらに上向流沈殿法は、反応器内の攪拌を必要とせず、混合に伴う動力および装置の費用を節約する。
【0092】
上記の説明は、いかなる形でも、請求される発明を限定することを意図しない。さらに、論じられた特徴の組合せは、発明の説明にとって不可欠でないかもしれない。本発明は、以下の実施例でさらに説明される。しかしながら、これらの実施例は説明のみを目的とし、いかなる形でも本発明の範囲を限定するために使用すべきでないと理解されるべきである。
【実施例1】
【0093】
大型上向流加水分解反応器
前処理されたコムギわらは、US4,461,648(フーディー、参照により本明細書の一部に組み込まれる)の方法を使用して調製される。前処理された材料は、7.8%の非溶解固体、70℃の温度、および553t/時間の質量流速の水性スラリーである。この水性スラリーは、生成物の流れ(30)に接触して、熱交換器(20)で60℃まで冷やされる。60℃のスラリーは次いで、熱交換器中の冷水(45)により最終温度の50℃まで冷やされる。スラリーは、pH(ペーハー)を4.5から5.0に調整するため、セルラーゼ酵素(70;5FPU/gセルロース)およびアンモニア(80;湿式スラリー1トンあたり1200グラム)とともに、加水分解補給タンク(90;容量86,000ガロン)中に汲み入れられる。加水分解補給タンクの内容物は、40分の滞留時間中に混合され、次いで結合流(100)は、補給タンクから加水分解タンク(110)の中央(105)を通じる配管を下って汲み出される。加水分解タンクは、50℃に維持するため使用される15psigの蒸気で保温されている。加水分解タンクの底部で、スラリーは、上方に汲み上げられ、加水分解タンクの幅を横切って分散する(120)。
【0094】
加水分解タンクは、4.6百万ガロンの容量を有する。液体は、固体より速く加水分解タンク中を上方へ流れ、固体は、タンク全域で約10%の濃度まで沈殿する。セルロースは、188時間タンク中に維持され、これは、92%のセルロースをグルコースに転化するのに十分な長さである。含水した糖の流れおよび非加水分解固体(150)は、タンクの最上部から流れ出し、沈殿タンク(160)に汲み入れられる。1.12百万ガロンの容量を有した沈殿タンクにおいて、固体は、10%の濃度まで底部に沈殿し、圧搾および洗浄により固体から糖を回収するため、配管162を経由してリグニン・フィルタープレス165へ汲み出される。この流れからの糖は、沈殿器の最上部からの糖の流れと結合し、これは次いで、エタノールへの発酵(170)のため送られる。
【実施例2】
【0095】
トリコデルマ・セルラーゼ酵素を用いた上向流加水分解
コムギわらは、US4,461,648(フーディー、参照により本明細書の一部に組み込まれる)の方法を使用して前処理された。前処理された原料は、3.7%非溶解固体の濃度により水中でスラリーとされ、pH(ペーハー)は、30%水酸化ナトリウムを用いて5.5に調整された。非溶解固体は、55%がセルロースであった。スラリーは、垂直の加水分解反応器(110;図1C)の底部へ毎分40リットルの速度で汲み入れられた。これは、0.7フィート/時間の上昇流速に相当する。タワーの容量は144,700リットルであり、このうち加水分解領域(130)は下方の115,000リットル(34.4フィートの高さ)であり、最上部の29,700リットルは浄化器(135)であった。タワーの直径は、3.8メートルであり、高さは13.5メートル(44.3フィート)であった。スラリーの温度は、反応器の入口で55℃であり、反応器の最上部付近で約50℃まで徐々に低下した。トリコデルマ(オタワ、アイオジェン(Iogen)・バイオプロダクツから入手可能)から得られたセルラーゼ酵素は、セルロース1グラムあたり36FPUの投与量で加水分解補給タンク(90;図1A)中のスラリーに添加され、実施例1と同様にタワーに投入される前に配管に添加された。
【0096】
前処理された固体およびセルラーゼを含むスラリーは、タワー105の底部に汲み入れられ、スラリーがタワーの上方に流れるにつれ加水分解が起きた。タワーの容量の79%である加水分解領域の最上部において、スラリーは浄化器領域135に移された。沈殿した固体を含む流れは、加水分解領域および浄化器領域の接触面で回収された(162;図1C)。非溶解固体のほとんどない水相にあるグルコースを含む第2の流れ30は、浄化器領域の最上部で回収された。
【0097】
運転の過程を通じた反応器中の固体の分析結果を図2に示す。底部の上1フィートの高さで、非溶解固体は、8重量%から14重量%の濃度まで沈殿した。これは、3.7%の非溶解固体の原料濃度に比べて著しく濃度が高い。これより高い地点において、固体濃度はより低い。
【0098】
セルロース転化の分析結果を図3に示す。セルロース転化の程度は、15フィートおよび24フィートの高さにおいて、運転の初期に73%から83%であり、終了までに95%であった。上向流反応器から流れ出る流れの中のグルコース濃度は、25g/Lであった。これは、反応器の混合、剪断の提供、またはタワーの上方に緩慢に汲み上げる以外に原料を他の方法で移動させることなしに、良好な水準のセルロース転化およびグルコース生産が得られたことを示す。
【実施例3】
【0099】
凝集剤の存在下でトリコデルマ・セルラーゼ酵素を用いた上向流加水分解
前処理されたコムギわらの加水分解が、4.4%の非溶解固体を用いて実施例2で説明したとおり行われた。但し、凝集剤が固体の沈殿を改善するために添加された。カチオン性ポリマー、CA4500(フランス、SNFフロエルジェ(Floerger)(登録商標))が非溶解固体1トンあたり2kgの投与量で添加され、スラリーへの酵素添加の地点後の添加と同時に、インラインで分散された。
【0100】
運転の過程を通じた反応器中の固体の分析結果を図4に示す。底部の上1フィートの高さで、非溶解固体は、実施例2で観察されたのと同様に、6重量%から10重量%の濃度まで沈殿し、4.4%の非溶解固体の原料濃度に比べ、著しく濃度が高かった。反応器内のこれより高い地点において、固体濃度は、5.5%から8%であった。これは、凝集剤が固体を凝集させ沈殿させるのに効果的であることを示した。
【0101】
セルロース転化の分析結果を図5に示す。セルロース転化の程度は、15フィートおよび24フィートの高さにおいて、運転の初期に65%から85%であり、終了までに85%から92%であった。反応器から流れ出る流れの中のグルコース濃度は、27g/Lであった。これは、反応器の混合、剪断の提供、またはタワーの上方に緩慢に汲み上げる以外に原料を他の方法で移動させることなしに、良好な水準のセルロース転化が得られたことを示す。
【実施例4】
【0102】
凝集剤の存在下および不在下における様々の酵素水準でのセルロース転化
実施例2および3で説明した加水分解反応は、同様の最終的なグルコース濃度を示したが、これは、酵素の過剰の存在による可能性がある。加水分解の効率に対する凝集剤の効果を決定するため、加水分解が、様々の酵素投与量において凝集剤の存在および不在下で行われた。
【0103】
前処理されたコムギわらの加水分解が、実施例2および3で説明したとおり行われた。但し、添加されるセルラーゼ酵素の量は、変更された。8、12、16、20、24、28、32および36FPUの酵素による加水分解が、48時間、凝集剤の存在および不在下で行われた。セルロース転化(単位:%)が測定され、これを図6に示す。
【0104】
図6に示すように、より低い酵素投与量において、凝集剤の使用は、セルロース転化の増大をもたらす。このことは、セルロース転化の費用の全体的な節約を示す。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1A】本発明の実施形態に従って使用することができる上向流反応器を含むシステムの概略図で上向流反応器および沈殿タンクを含むシステムを示す。
【図1B】本発明の実施形態に従って使用することができる上向流反応器を含むシステムの概略図で図1Aの上向流反応器を示す。
【図1C】本発明の実施形態に従って使用することができる上向流反応器を含むシステムの概略図で上向流反応器が浄化器領域を含む場合のシステムの一部を示す。
【図2】凝集剤の添加がない場合に、加水分解反応器内の様々の高さでサンプリングされた非溶解の固形分を示す。
【図3】凝集剤の添加がない場合に、加水分解反応器内の様々の高さでのサンプリングにより測定されたセルロース転化の百分率を示す。
【図4】凝集剤がある場合に、加水分解反応器内の様々の高さでサンプリングされた非溶解の固形分を示す。
【図5】凝集剤の添加がある場合に、加水分解反応器内の様々の高さでサンプリングされた、転化されたセルロースの量を示す。
【図6】凝集剤がない場合と比較して、凝集剤の添加がある場合に、加水分解反応器内から出た生成物におけるセルロース転化の効率の増加を示す。
【符号の説明】
【0106】
10 配管
20 熱交換器
30 生成物の流れ
40 配管
45 冷水
50 熱交換器
70 セルラーゼ酵素
80 水酸化アンモニウム
90 加水分解補給タンク
110、110’ 加水分解タンク
120 分配器
130 加水分解領域
135 加水分解領域
140 加水分解領域
150 沈殿タンク
162 配管
170 エタノールへの発酵
191 加水分解反応器の中間部
192 反応器の底部
193 反応器の最上部
195,197 反応器の外部の場所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる、前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためのセルロースの酵素加水分解の方法:
i) 前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii) 非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii) 注入の段階(段階ii)の前または該段階中に、またはその組合せにより、セルラーゼ酵素を水性スラリーに添加すること;および
iv) 加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【請求項2】
注入の段階(段階ii)において、水性スラリーが、均一な放射状分布で加水分解反応器の底部に注入される、請求項1に従う方法。
【請求項3】
添加の段階(段階iii)において、一つまたは複数の凝集剤が、セルラーゼ酵素とは別に、もしくはセルラーゼ酵素とともに、またはそれらの組合せにより、水性スラリーに添加される、請求項1に従う方法。
【請求項4】
一つまたは複数の凝集剤が、注入の段階(段階ii)の前もしくは該段階中に、またはそれらの組合せにより添加される、請求項3に従う方法。
【請求項5】
前処理されたセルロース原料が、コムギわら、エンバクわら、オオムギわら、トウモロコシ茎葉、ダイズ茎葉、カノーラわら、サトウキビ残渣(バガス)、スイッチ・グラス(switch grass)、クサヨシ、コード・グラス(cord grass)、エンバク殻、サトウダイコン・パルプまたはミスカンサス(miscanthus)から得られる、請求項1に従う方法。
【請求項6】
前処理されたセルロース原料が、コムギわら、エンバクわら、オオムギわら、トウモロコシ茎葉、ダイズ茎葉、カノーラわら、サトウキビ残渣(バガス)、スイッチ・グラス(switch grass)、クサヨシ、コード・グラス(cord grass)、エンバク殻、サトウダイコン・パルプまたはミスカンサス(miscanthus)から得られる、請求項2に従う方法。
【請求項7】
前処理されたセルロース原料が、コムギわら、エンバクわら、オオムギわら、トウモロコシ茎葉、ダイズ茎葉、カノーラわら、サトウキビ残渣(バガス)、スイッチ・グラス(switch grass)、クサヨシ、コード・グラス(cord grass)、エンバク殻、サトウダイコン・パルプまたはミスカンサス(miscanthus)から得られる、請求項4に従う方法。
【請求項8】
前処理されたセルロース原料が、酵素加水分解の前に、約0%から約5%の硫酸濃度で、約160℃から約280℃で、約3秒から約30分間の前処理にかけられている、請求項1に従う方法。
【請求項9】
前処理されたセルロース原料が、酵素加水分解の前に、約0%から約5%の硫酸濃度で、約160℃から約280℃で、約3秒から約30分間の前処理にかけられている、請求項6に従う方法。
【請求項10】
前処理されたセルロース原料が、酵素加水分解の前に、約0%から約5%の硫酸濃度で、約160℃から約280℃で、約3秒から約30分間の前処理にかけられている、請求項7に従う方法。
【請求項11】
添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素がセルロース1グラムあたり約1.0から約40.0FPUの投与量で添加される、請求項1に従う方法。
【請求項12】
添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素がセルロース1グラムあたり約1.0から約40.0FPUの投与量で添加される、請求項9に従う方法。
【請求項13】
添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素がセルロース1グラムあたり約1.0から約40.0FPUの投与量で添加され、一つまたは複数の凝集剤が固体1トンあたり約0.1から約4.0kgの投与量で添加される、請求項10に従う方法。
【請求項14】
除去の段階(段階iv)の前に、少なくとも一部の加水分解生成物が、加水分解反応器の最上部で浄化器領域を使用することにより非加水分解固体から分離される、請求項1に従う方法。
【請求項15】
除去の段階(段階iv)の前に、少なくとも一部の加水分解生成物が、加水分解反応器の最上部で浄化器領域を使用することにより非加水分解固体から分離される、請求項12に従う方法。
【請求項16】
除去の段階(段階iv)の前に、少なくとも一部の加水分解生成物が、加水分解反応器の最上部で浄化器領域を使用することにより非加水分解固体から分離される、請求項13に従う方法。
【請求項17】
除去の段階(段階iv)において、加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流が、非加水分解固体から少なくとも一部の加水分解生成物を分離するため、固体−液体分離器に移される、請求項1に従う方法。
【請求項18】
除去の段階(段階iv)において、非加水分解固体を含む流れが、非加水分解固体から少なくとも一部の加水分解生成物を分離するため、固体−液体分離器に移される、請求項14に従う方法。
【請求項19】
除去の段階(段階iv)において、非加水分解固体を含む流れが、非加水分解固体から少なくとも一部の加水分解生成物を分離するため、固体−液体分離器に移される、請求項16に従う方法。
【請求項20】
加水分解生成物および非加水分解固体が別の場所で浄化器領域から除去される、請求項14に従う方法。
【請求項21】
加水分解生成物および非加水分解固体が別の場所で浄化器領域から除去される、請求項15に従う方法。
【請求項22】
加水分解生成物および非加水分解固体が別の場所で浄化器領域から除去される、請求項16に従う方法。
【請求項23】
加水分解生成物がグルコースを含む、請求項1に従う方法。
【請求項24】
加水分解生成物がグルコースを含む、請求項12に従う方法。
【請求項25】
加水分解生成物がグルコースを含む、請求項13に従う方法。
【請求項26】
加水分解生成物がグルコースおよびセロビオースを含む、請求項1に従う方法。
【請求項27】
加水分解生成物がグルコースおよびセロビオースを含む、請求項12に従う方法。
【請求項28】
加水分解生成物がグルコースおよびセロビオースを含む、請求項13に従う方法。
【請求項29】
提供の段階(段階i)においてスラリーのpHが約4.0から約6.0である、請求項1に従う方法。
【請求項30】
スラリーのpHが約4.5から約5.5である、請求項29に従う方法。
【請求項31】
提供の段階(段階i)において温度が約45℃から約70℃である、請求項1に従う方法。
【請求項32】
温度が約45℃から約65℃である、請求項31に従う方法。
【請求項33】
添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素がアスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルス、テルモビフィダ(Thermobifida)またはそれらの組合せにより生産される、請求項1に従う方法。
【請求項34】
一つまたは複数の凝集剤が、カチオン性ポリマー、非イオン・ポリマー、アニオン・ポリマー、両性ポリマー、塩、明礬およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に従う方法。
【請求項35】
一つまたは複数の凝集剤がカチオン性ポリマーである、請求項34に従う方法。
【請求項36】
カチオン性ポリマーがポリアクリルアミドである、請求項35に従う方法。
【請求項37】
セルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤が同時にスラリーに添加される、請求項4に従う方法。
【請求項38】
セルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤が別々にスラリーに添加される、請求項4に従う方法。
【請求項39】
提供の段階(段階i)においてスラリーのpHが約4.0から約6.0である、請求項3に従う方法。
【請求項40】
スラリーのpHが約4.5から約5.5である、請求項39に従う方法。
【請求項41】
提供の段階(段階i)において温度が約45℃から約70℃である、請求項3に従う方法。
【請求項42】
スラリーの温度が約45℃から約65℃である、請求項41に従う方法。
【請求項43】
添加の段階(段階iii)において、セルラーゼ酵素がアスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルス、テルモビフィダ(Thermobifida)またはそれらの組合せにより生産される、請求項3に従う方法。
【請求項44】
提供の段階(段階i)において、スラリーが約5重量%から約20重量%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が、約25重量%から約70重量%のセルロースを含む、請求項1に従う方法。
【請求項45】
糖を含む液体流が、注入の段階(段階ii)の前に、段階iの前処理されたセルロース原料から分離される、請求項1に従う方法。
【請求項46】
洗浄段階が原料からの液体流の分離の間に使用される、請求項45に従う方法。
【請求項47】
水、再利用されたプロセス流、処理された流出物およびそれらの組合せからなる群から選択される洗浄媒体が洗浄段階中に使用される、請求項46に従う方法。
【請求項48】
平均スラリー流速が1時間あたり約0.1と約12フィートの間である、請求項1に従う方法。
【請求項49】
平均スラリー流速が1時間あたり約0.1と約4フィートの間である、請求項1に従う方法。
【請求項50】
加水分解が以下により行われる、セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物:
i) 前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより反応器中の軸方向分散を制限し、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速を維持すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中に酵素組成物を水性スラリーに添加すること;ならびに
iv)加水分解生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【請求項51】
セルラーゼ酵素が、アスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルス、テルモビフィダ(Thermobifida)またはそれらの組合せにより生産される、請求項50の酵素組成物。
【請求項52】
一つまたは複数の凝集剤が、カチオン性ポリマー、非イオン・ポリマー、アニオン・ポリマー、両性ポリマー、塩、明礬およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項50の酵素組成物。
【請求項53】
一つまたは複数の凝集剤がカチオン性ポリマーである、請求項52の酵素組成物。
【請求項54】
カチオン性ポリマーがポリアクリルアミドである、請求項53の酵素組成物。
【請求項55】
セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物の使用。
【請求項56】
前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するセルロースの酵素加水分解のためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物の使用であって、該酵素組成物の使用が以下からなるもの:
i)前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii)非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速で、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより軸方向分散を制限すること;
iii)注入の段階(段階ii)の前または該段階中に酵素組成物を水性スラリーに添加すること;ならびに
iv)加水分解された生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【請求項57】
前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためセルロースを加水分解するためのセルラーゼ酵素、一つまたは複数の凝集剤および指示からなるキットであって、該指示が以下からなるもの:
i) 前処理されたセルロース原料の水性スラリーを提供し、該スラリーが液体中に約3%から約30%の非溶解固体を含み、該非溶解固体が少なくとも約20%のセルロースを含むこと;
ii) 非溶解固体が液体の速度よりも緩慢な速度で上方に流れるよう、1時間あたり約0.1から約20フィートの平均スラリー流速で、加水分解反応器の底部に水性スラリーを注入し、混合を避けることにより軸方向分散を制限すること;
iii) 注入の段階(段階ii)の前または該段階中にセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を水性スラリーに添加すること;ならびに
iv) 加水分解された生成物および非加水分解固体を含む水流を加水分解反応器から除去し、該加水分解生成物がグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含むこと。
【請求項58】
セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するシステムであって、該システムが、上向流加水分解反応器への投入と流体連通状態にある原料スラリー供給配管、上向流加水分解反応器と流体連通状態にある固−液分離器を含み、また、非加水分解固体を含むスラリーを回収するための第1の排出および加水分解生成物を含む流れを回収するための第2の排出を含み、該加水分解生成物が、グルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せを含み、該原料供給配管、該上向流加水分解反応器、または該原料供給配管および該上向流加水分解反応器の両方が、セルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物を含むもの。
【請求項59】
原料供給配管が前処理された原料を含む、請求項58のシステム。
【請求項60】
固体−液体分離器が沈殿タンク、浄化器、浄化器領域、遠心分離器および濾過器からなる群から選択される、請求項58のシステム。
【請求項61】
固体−液体分離器が沈殿タンクである、請求項60のシステム。
【請求項62】
固体−液体分離器が浄化器領域である、請求項60のシステム。
【請求項63】
固体−液体分離器が濾過器である、請求項60のシステム。
【請求項64】
セルラーゼ酵素が、前処理された原料のセルロース1グラムあたり約1.0から約40.0FPUの投与量で存在する、請求項58のシステム。
【請求項65】
一つまたは複数の凝集剤が、前処理された原料の固体1トンあたり約0.1から約4.0kgの投与量で存在する、請求項58のシステム。
【請求項66】
前処理されたセルロース原料から加水分解生成物を生産するためセルロースを加水分解するにあたり使用するための酵素組成物を調製する方法であって、該方法が、植物、菌または微生物の入手源からセルラーゼ酵素を獲得すること、および酵素組成物を生産するためセルラーゼ酵素を一つまたは複数の凝集剤と組み合わせることからなるもの。
【請求項67】
セルラーゼ酵素が、アスペルギルス、フミコーラ、トリコデルマ、バチルスおよびテルモビフィダ(Thermobifida)により生産される、請求項66に従う方法
【請求項68】
セルロースをグルコース、セロビオース、グルコース・オリゴマーまたはそれらの組合せに加水分解するためのセルラーゼ酵素および一つまたは複数の凝集剤を含む酵素組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−523788(P2008−523788A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545803(P2007−545803)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001922
【国際公開番号】WO2006/063467
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(506343173)アイオゲン エナジー コーポレイション (3)
【氏名又は名称原語表記】IOGEN ENERGY CORPORATION
【Fターム(参考)】