説明

センサカートリッジとこれを用いた血液検査装置

【課題】センサカートリッジの出口が開放されていたため、湿気によってセンサの性能が劣化する。
【解決手段】略直方体形状をしたカートリッジケース12と、このカートリッジケース12内に積層収納されたセンサ13と、このセンサ13の近傍に収納された乾燥剤14と、カートリッジケース12に設けられるとともにセンサ13が搬出される出口12aと、この出口12aからセンサ13を搬出するスライドプレート15とを備え、スライドプレート15による搬出動作に連動して出口12aを開閉するシャッタ18が設けられたものである。これにより、所期の目的を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサカートリッジとこれを用いた血液検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
以下、従来のセンサカートリッジについて説明する。図21は、従来のセンサカートリッジの断面図である。図21において、従来のセンサカートリッジ1は、略直方体形状をしたカートリッジケース2と、このカートリッジケース2内に積層収納された血液センサ(以下センサという)3と、このセンサ3の近傍に収納された乾燥剤4と、カートリッジケース2に設けられるとともにセンサ3が搬出される出口2aと、この出口2aからセンサ3を搬出するスライドプレート5と、このスライドプレート5を駆動する搬送ドラム6とから構成されていた。
【0003】
搬送ドラム6には、スライドプレート5に設けられた凸部5aが嵌入してスライドするとともに螺旋形状をした凹溝6aが形成されていた。そして、この搬送ドラム6を正回転させることにより、一番下に収納されたセンサ3を一枚ずつ、出口2aから搬出するものである。また、搬送ドラム6を逆回転させることにより、スライドプレート5を出口2aと逆方向に移動させ、搬出前の元の位置に戻すものである。
【0004】
このセンサカートリッジ1に乾燥剤4が収納されている理由は、センサ3は湿気で劣化する性質を有しているので、センサ3の湿度による劣化を防止するために収納している。
【0005】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004―4046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこのような従来のセンサカートリッジ1では、湿気を防止するために乾燥剤4が収納されているものの、カートリッジケース2に形成された出口2aは、常時開放されており外気にさらされている。従って、この出口2aから湿気が浸入してセンサ3を劣化させてしまうことが考えられる。
【0007】
本発明は、このような問題を解決したもので、血液センサの劣化を防止するセンサカートリッジを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明のセンサカートリッジは、スライドプレートによる搬出動作に連動して出口を開閉するシャッタが設けられたものである。これにより、所期の目的を達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように本発明のセンサカートリッジは、スライドプレートによる搬出動作に連動して出口を開閉するシャッタが設けられたものであり、スライドプレートにより血液センサを搬出するときのみ出口を開放し、通常はシャッタで出口を封鎖しておくことができる。従って、この出口から浸入する湿気を極めて少なくすることができ、血液センサの劣化を防止することができる。即ち、血液センサの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、センサカートリッジ11の断面図である。図1において、12は略直方体形状をしたカートリッジケースであり樹脂で形成されている。このカートリッジケース12内には、血液センサ(以下センサという)13が積層収納されたセンサ室12bと、乾燥剤14が収納された乾燥剤室12cとが設けられている。また、センサ室12bの下辺12dの角には、センサ13が搬出される出口12aが設けられている。
【0011】
15は、カートリッジケース12の下辺12dをスライドするスライドプレートであり、センサ室12b内のセンサ13を出口12aから搬出するものである。また、16は、下辺12dを水平方向(矢印17a、17b方向)にスライドするスライド部材であり上面と前面側(出口12a側)が開口している。
【0012】
スライドプレート15の下面には、歯15aが形成されており、この歯15aはカートリッジケース12に回転自在に固着された歯車15bと歯合している。また、歯車15bは、スライド部材16の底面に形成された歯16aと歯合している。従って、スライド部材16を出口12a方向(矢印17b方向)へスライドした状態では、スライドプレート15は、スライド部材16とは反対方向にスライドし、センサ13を搬出する状態となる。
【0013】
図2は、センサカートリッジ11の正面図である。カートリッジケース12の下辺12dの角は曲線12eとなっており、この曲線12eに沿うように凹溝12fが形成されている。18aは、弾性を有するローラであり、出口開閉部材18bの一方に回転自在に装着されている。出口開閉部材18bの他方は、スライド部材16の前方近傍に回動自在に装着されている。出口開閉部材18bは、凹溝12fと反対方向に曲がった「へ」の字形状をしており、この「へ」の字形状の折曲がり部には、凸部18cが形成されている。この凸部18cは凹溝12fに嵌入し、この凹溝12fに沿ってスライドする。ローラ18aと出口開閉部材18bと凸部18cと凹溝12fとで、出口12aを開閉するシャッタ18を形成している。スライド部材16を出口12a方向(矢印17b方向)へ移動した状態では、ローラ18aで出口12aを塞ぎ、カートリッジケース12を密閉してセンサ13を湿気から保護している。
【0014】
この状態から、スライド部材16を矢印17a方向へスライドすると、このスライド部材16に形成された歯16aと歯合した歯車15bは矢印17c方向に回転する。歯車15bが矢印17c方向に回転すると、この歯車15bに歯合した歯15aを有するスライドプレート15が矢印17b方向(出口12a方向)へスライドする。スライドプレート15が矢印17b方向へスライドすることにより、図3に示すように、センサ室12bに積層収納されたセンサ13の内一番下に位置するセンサ13が出口12aから外部へ搬出される。
【0015】
また、このとき出口開閉部材18bに設けられた凸部18cは、図4に示すように凹溝12fに沿ってスライドしている。このことにより、シャッタ18を構成するローラ18aは、出口12aから外れて、出口12aは開放されている。
【0016】
出口12aが開放された状態から、スライド部材16を矢印17b方向にスライドすると、スライド部材16に形成された歯16aに歯合した歯車15bは、矢印17d方向に回転する。歯車15bが矢印17d方向に回転すると、この歯車15bに歯合した歯15aを有するスライドプレート15は、図1に示すように元の状態に戻る。また、シャッタ18を構成するローラ18aは図1、図2に示すように出口12aを塞ぎ、カートリッジケース12内を密閉してセンサ13を湿気から保護する。ここで、図2、図4に示した16cは、スライド部材16に植設された凸部であり、この凸部16cはスライド部材16を外部から駆動するものである。
【0017】
図5は、センサカートリッジ11を側面から見た断面図である。カートリッジケース12の下辺12dには、溝12gが水平方向に形成されており、この溝12gはスライド部材16に形成された凸状の土手16dに嵌入する。従って、スライド部材16は、この溝12g上を水平方向にスライドする。
【0018】
スライドプレート15の底面の中央には、歯15aが形成されており、この歯15aはカートリッジケース12に回転自在に設けられた歯車15bと歯合している。また、この歯車15bは、スライド部材16の底面の中央に形成された歯16aと歯合している。また、出口開閉部材18bに植設された凸部18cは、カートリッジケース12に形成された凹溝12fに嵌入してスライドする。
【0019】
以上説明したように、センサ室12bは、出口12a以外は密閉された構造になっており、スライドプレート15によりセンサ13を搬出するとときのみ出口12aが開放され、通常はシャッタ18を構成するローラ18aで出口12aが封鎖されている。従って、この出口12aから浸入する湿気を極めて少なくすることができ、センサ13の劣化を防止することができる。即ち、センサ13の長寿命化を図ることができる。
【0020】
ここで、図1に示した12hは、積層収納されたセンサ13を下方に押圧する押さえ板であり、この押さえ板12hは、バネ12jにより下方へ付勢されている。また、この押さえ板12hには、センサ13に設けられた貯留部34と対応する位置に孔12kを設けている。従って、乾燥剤14により乾燥した空気はこの孔12kと積層収納されたセンサ13の貯留部34を通って夫々のセンサ13内の試薬40(図6参照)を湿気から保護している。
【0021】
図6は、センサ室12bに収納されるセンサ13の断面図である。このセンサ13は、基板31と、この基板31の上面に貼り合わされたスペーサ32と、このスペーサ32の上面に貼り合わされたカバー33とで構成されている。
【0022】
34は、血液10(図示せず)の貯留部であり、この貯留部34は、基板31の略中央に形成された基板孔31aと、この基板孔31aに対応してスペーサ32に形成されたスペーサ孔32aと、基板孔31aに対応してカバー33に形成されたカバー孔33aとが連通して形成されている。
【0023】
35は、この貯留部34に一方の端が連結された血液10の供給路であり、貯留部34に溜められた血液10を毛細管現象で一気に検出部37へ導く路である。また、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。貯留部34の容積は0.904μLであり、供給路35の容積は0.144μLとしている。このように少量の血液10で検査可能とし、患者への負担を軽減している。
【0024】
40は、検出部37上に載置された試薬である。この試薬40は、0.01〜2.0wt%CMC水溶液に、PQQ−GDHを0.1〜5.0U/センサ、フェリシアン化カリウムを10〜200mM、マルチトールを1〜50mM、タウリンを20〜200mM添加して融解させて試薬溶液を調整し、これを基板31に形成された検出電極41,43(図7参照)上に滴下し、乾燥させることで形成したものである。この試薬40は吸湿すると性能の劣化が進行する。この劣化を防止するため、センサカートリッジ11内には乾燥剤14が収納されている。
【0025】
基板31の上面には金、白金、パラジウム等を材料として、スパッタリング法或いは蒸着法により導電層を形成し、これをレーザ加工により検出電極41〜45と、この検出電極41〜45から夫々導出された接続電極41a〜45aと識別電極47aが一体的に形成されている。
【0026】
図7は、センサ13の透視平面図であり、一方の端には、接続電極41a〜45aと、識別電極47aが形成されている。接続電極43aと識別電極47aとの間に、導電体パターンで形成された識別部47が形成されている。
【0027】
34は、センサ13の略中央に設けられた血液10の貯留部であり、この貯留部34に一方の端が接続された供給路35が検出電極42に向かって設けられている。そして、この供給路35の他方の端は空気孔38に連結している。この供給路35上には、貯留部34側から順に接続電極44aに接続された検出電極44と、接続電極45aに接続された検出電極45と、接続電極43aに接続された検出電極43と、接続電極41aに接続された検出電極41と、接続電極42aに接続された検出電極42が設けられている。また、検出電極41,43上には、試薬40が載置される。
【0028】
接続電極43aと識別電極47a間の電気的な導通があるか無いかで、センサ13が穿刺部26に装着されたか否かを識別することができる。即ち、このセンサ13を穿刺部26に搬送したとき、接続電極43aと識別電極47a間の電気的な導通を検知することにより、センサ13が確実に穿刺部26に装着されたか否かを検知することができる。
【0029】
また、識別部47の電気抵抗値を変えることにより、使用する検量線の情報を格納したり、製造情報を格納したりすることが可能となる。図8は、長方形状をするとともに板体で形成されたセンサ13の斜視図である。なお、実施の形態4における血液検査装置24では、識別部47の導通・非導通の違いを用いて、穿刺部保護カバー30の開検知センサとしても活用している。
【0030】
(実施の形態2)
実施の形態2におけるセンサカートリッジ20は、シャッタ21(センサカートリッジ11におけるシャッタ18に該当する)の構造のみ実施の形態1と相違する。従って、この相違点を中心に説明する。なお、実施の形態1と同じものについては、同符号を付して説明を簡略化している。これは、以後の実施の形態についても同様とする。
【0031】
図9、図10において、スライドプレート15の後端には、シャッタ21を構成する屈曲自在な弾性部材21aの一方の端21bが固定されている。この弾性部材21aはカートリッジケース12の下辺12d内を貫通して設けられた孔21cをスライド自在にスライドして、出口12aに設けられた凹部21dに当接可能に形成されている。なお、本実施の形態において、弾性部材21aとして鋼板を用いている。
【0032】
図9は、スライドプレート15がセンサ13を搬出する前の状態であり、スライドプレート15に連結された弾性部材21aの他方の端21eは、凹部21dに嵌入して出口12aを塞いで密封している。即ち、出口12aから侵入する湿気からセンサ13を保護している。
【0033】
図10は、スライドプレート15によりセンサ13を搬出している状態であり、スライドプレート15により、センサ13は、出口12a方向へ搬送される。スライドプレート15の出口12a方向(矢印17b方向)へのスライドにより、スライドプレート15に連結された弾性部材21aの他方の端21eは、凹部21dから離れて出口12aを開放している。この開放された出口12aからセンサ13が搬出される。
【0034】
また、スライドプレート15を出口12aと反対方向(矢印17a)方向へスライドすることにより、図9に示すように、スライドプレート15は、次のセンサ13の搬出可能な元の位置に戻る。また、出口12aは弾性部材21aで閉塞されて密閉される。なお、スライドプレート15は、スライド部材16(図1〜図5)によりスライドされる。
【0035】
(実施の形態3)
実施の形態3におけるセンサカートリッジ22は、シャッタ23(実施の形態1のおけるセンサカートリッジ11のシャッタ18に該当する)の構造のみ実施の形態1と相違する。従って、この相違点を中心に説明する。
【0036】
図11、図12において、出口12aの外側には、シャッタを構成する蓋23aが回動自在に設けられている。この蓋23aは、コイルバネ23bで押圧されて出口12aを塞いでいる。図11は、スライドプレート15がセンサ13を搬出する前の状態であり、蓋23aにより出口12aを塞いで密閉している。即ち、出口12aから侵入する湿気からセンサ13を保護している。
【0037】
図12は、スライドプレート15によりセンサ13を搬出している状態であり、スライドプレート15により、一番下に積層されたセンサ13は、出口12a方向へ搬送される。スライドプレート15の出口12a方向(矢印17b方向)へのスライドにより、コイルバネ23bの付勢力に抗してセンサ13で蓋23aを押し上げて出口12aを開放している。この開放された出口12aからセンサ13が搬出される。
【0038】
また、スライドプレート15を出口12aと反対方向(矢印17b方向)へスライドすることにより、図11に示すように、スライドプレート15は、次のセンサ13の搬出可能な元の位置に戻る。また、出口12aは蓋23aで閉塞されて密閉される。なお、スライドプレート15は、スライド部材16(図1〜図5)によりスライドされる。
【0039】
(実施の形態4)
図13は、実施の形態1におけるセンサカートリッジ11(センサカートリッジ20、22でも同様)を用いた血液検査装置24の透視平面図である。図13において、25は略直方体形状をした筐体であり樹脂で形成されている。この筐体25の下辺の角には穿刺部26が設けられている。この穿刺部26は上ホルダ26a(図示せず)と下ホルダ26b(図示せず)とで構成されおり、この上ホルダ26aと下ホルダ26bの間にセンサ13を挟んで固定する。
【0040】
穿刺部26に対向してレーザ穿刺ユニット27(穿刺手段の一例として用いた)が装着されている。なお、穿刺手段としては、レーザ穿刺ユニット27の他に、穿刺針を用いた針穿刺ユニットを用いることもできる。
【0041】
筐体25の下辺側には、センサカートリッジ11が挿抜自在に挿入されている。このセンサカートリッジ11には、搬送手段を構成するスライドプレート15が設けられており、このスライドプレート15を用いて積層収納されたセンサ13の内、一番下に収納されたセンサ13を穿刺部26へ搬送する。
【0042】
センサカートリッジ11の上方に隣接して測定回路部28が設けられている。この測定回路部28は、上ホルダ26aに設けられたコネクタ49(図示せず)に接続されており、このコネクタ49を介してセンサ13と接続されている。
【0043】
測定回路部28の出力は筐体25の前面上方に装着された表示部29に表示される。この表示部29の裏側には、電池19(図示せず)が挿抜自在に挿入されている。
【0044】
30は、穿刺部26を保護する穿刺部保護カバーであり、この穿刺部保護カバー30は、穿刺部26へセンサ13を装填する働きも兼ねている。この穿刺部保護カバー30には、センサカートリッジ11を構成するスライド部材16に設けられた凸部16cが嵌入する凹部30aが設けられている。従って、穿刺部保護カバー30の水平方向へのスライドに連動してスライド部材16も水平方向にスライドすることになる。
【0045】
即ち、図14(a)に示すように、この穿刺部保護カバー30を、穿刺部26と反対方向(矢印17a方向)に水平にスライドすることにより、センサカートリッジ11のスライド部材16も同方向にスライドし、センサ13を穿刺部26に装填するものである。
【0046】
また、穿刺部保護カバー30を穿刺部26方向(矢印17b方向)へ水平にスライドすることにより、穿刺部保護カバー30が穿刺部26を覆う。このとき、図14(b)に示すように、スライド部材16も穿刺部保護カバー30と同方向(矢印17b方向)にスライドするので、シャッタ18を構成するローラ18aが出口12aを封鎖して、カートリッジケース12を密閉する。このことにより、センサ13は湿気から保護される。
【0047】
図15は、センサ13からの信号に基づいて血液10の性質(血糖値)を測定する測定回路部28とその近傍のブロック図である。図15において、センサ13の接続電極41a〜45a、(図7参照)は、コネクタ49(49a〜49e)を介して切換回路28aに接続されている。この切換回路28aの出力は、電流/電圧変換器28bの入力に接続されている。そして、その出力はアナログ/デジタル変換器(以後、A/D変換器という)28cを介して演算部28dの入力に接続されている。この演算部28dの出力は、液晶で形成された表示部29と送信部28eに接続されている。また、切換回路28aには基準電圧源28fが接続されている。なお、この基準電圧源28fはグランド電位であっても良い。
【0048】
28gは制御部であり、この制御部28gの出力は、レーザ穿刺ユニット27に接続された高電圧発生回路28hと、切換回路28aの制御端子と、演算部28dと、送信部28eに接続されている。また、制御部28gの入力には、穿刺ボタン27aと、タイマ28kと、コネクタ49fが接続されている。
【0049】
以下、測定回路部28の動作を説明する。測定動作は先ず切換回路28aを切換えて、検出電極41を電流/電圧変換器28bに接続する。また、血液10流入を検知するための検知極となる検出電極42を基準電圧源28fに接続する。そして、検出電極41及び検出電極42間に一定の電圧を印加する。この状態において、血液10が流入すると、検出電極41,42間に電流が流れ、血液10が十分に流入したことを検出する。
【0050】
次に、血液成分であるグルコースの測定が行なわれる。グルコース成分量の測定は、制御部28gの指令により、切換回路28aを切換えて、グルコース成分量の測定のための作用極となる検出電極41を電流/電圧変換器28bに接続する。また、グルコース成分量の測定のための対極となる検出電極43を基準電圧源28fに接続する。
【0051】
そして、一定時間(1〜10秒)の経過後に、制御部28gの指令により、検出電極41と43間に一定の電圧(0.2〜0.5V)を印加する。そうすると、検出電極41,43間に電流が流れる。この電流値を基にグルコース成分量に換算する。
【0052】
グルコース成分量の測定後、Hct値の測定のための作用極となる検出電極45を電流/電圧変換器28bに接続する。また、Hct値の測定のための対極となる検出電極41を基準電圧源28fに接続する。
【0053】
次に、制御部28gの指令により、電流/電圧変換器28b及び基準電圧源28fから検出電極45と41間に一定の電圧(2V〜3V)を印加し、このとき流れる電流の値に基づいてHct値に換算する。
【0054】
この測定で得られたHct値とグルコース成分量を用い、予め求めておいた検量線または検量線テーブルを参照して、グルコース成分量をHct値で補正し、その補正された結果を表示部29に表示するとともにメモリに格納する。また、その結果を送信部28eからインスリンを注射する注射装置に向けて送信する。
【0055】
以上、グルコースの測定を例に説明したが、センサ13の試薬40を交換して、グルコースの測定の他に乳酸値やコレステロールの血液成分の測定にも適用できる。
【0056】
次に、図16を用いて血液検査装置24を用いた検査方法を説明する。先ずステップ51では、血液検査装置24の穿刺部保護カバー30を矢印17a(図13参照)へスライドする。即ち、穿刺部26を露出させる。このとき、穿刺部保護カバー30のスライドにより、同時にセンサ13が穿刺部26に装填される。この装填の確認は、センサ13の接続電極43aと識別電極47aの導通を検知することにより行う。
【0057】
そして、センサ13の装填が確認されたらステップ52へ移行する。ステップ52では、高電圧発生回路28hを動作させて穿刺に必要な高電圧を発生させる。高電圧が発生したら表示部29に「穿刺可」の表示をしてステップ53へ移行し、穿刺ボタン27aの押下を待つ。
【0058】
ステップ53において、穿刺ボタン27aが押下されると、レーザ穿刺ユニット27からレーザ光27bが放射され患者の皮膚9を穿刺する。なお、穿刺ボタン27aの押下のタイミングで表示部29に表示した「穿刺可」の表示はオフする。皮膚9の穿刺により、滲出した血液10がセンサ13の貯留部34に取り込まれる。この貯留部34に取り込まれた血液10は、供給路35による毛細管現象により一気に(定まった流速で)検出部37に取り込まれる。そして、ステップ54へ移行して血液10の血糖値が測定される。
【0059】
ステップ54で血糖値が測定されたら、ステップ55に移行し、測定した血糖値を表示部29に表示する。これで、血液10の測定は終了し、ステップ56へ移行する。ステップ56では、穿刺部保護カバー30を矢印17b(図13参照)へスライドする。即ち、穿刺部26を穿刺部保護カバー30で覆うとともに、センサカートリッジ11の出口12aはシャッタ30で封鎖されてカートリッジケース12は密閉される。
【0060】
以上説明したように、ステップ51において、穿刺部保護カバー30を矢印17a方向へスライドするのみで、穿刺部26にはセンサ13が装填される。従って、センサ13の装填作業は格段に簡潔化される。また、穿刺部保護カバー30を矢印17b方向へスライドするとセンサカートリッジ11の出口12aは封鎖されてカートリッジケース12は密閉され、センサ13の長寿命化を図ることができる。
【0061】
(実施の形態5)
実施の形態5における血液検査装置61(実施の形態1における血液検査装置24に該当する)は、穿刺部保護カバー62(実施の形態1における穿刺部保護カバー30に該当する)が筐体25に対して上下方向(矢印17e、17f方向)へスライドする点で、実施の形態4と異なる。従って、実施の形態5では、この異なる点に付いて説明する。
【0062】
図17に示すように、穿刺部保護カバー62の上方には、指9aの挿入孔62aが設けられており、穿刺部保護カバー62を下方(矢印17f方向)へスライドしたとき穿刺部26と対応し、血液検査装置61の正面から裏面までを貫通する挿入孔62aが構成されるようになっている。従って、患者は、この挿入孔62aへ指9aを挿入することにより、指9aを固定した状態で穿刺することができ穿刺時に指9aがずれることはない。また、穿刺部保護カバー62が引き出されることにより、筐体25は実質的に大型化されており操作が容易となる。また、穿刺部保護カバー62を上方(矢印17e方向)へスライドした状態では、穿刺部26は穿刺部保護カバー62で保護されるとともに、小型化され携帯に適した形状となる。
【0063】
穿刺部保護カバー62を矢印17f方向にスライドすると、センサカートリッジ11は以下のような動作をする。即ち、穿刺部保護カバー62には、図18に示すように、スライド部材16に設けられた凸部16cが嵌入される凹溝62bが、下方から右上(図18において)に向かって斜めに形成されている。従って、穿刺部保護カバー62の下方(矢印17f方向)へスライドに連動してスライド部材16は矢印17j方向にスライドすることになる。
【0064】
即ち、図18(a)に示すように、この穿刺部保護カバー62を、下方(矢印17f方向)にスライドすることにより、スライド部材16に設けられた凸部16cは、穿刺部保護カバー62に形成された凹溝62bに沿って、右方向(矢印17j方向)へスライドする。即ち、スライド部材16が矢印17j方向にスライドしセンサ13を穿刺部26に装填する。
【0065】
逆に、穿刺部保護カバー62を上方(矢印17e方向)にスライドして穿刺部26を覆と、図18(b)に示すように、凸部16cは凹溝62bを左下へスライドして、スライド部材16は矢印17b方向へスライドする。スライド部材16が矢印17b方向へスライドされると、シャッタ18を構成するローラ18aが出口12aを封鎖して、カートリッジケース12を密閉する。このことにより、センサ13は湿気から保護される。
【0066】
(実施の形態6)
実施の形態6における血液検査装置65(実施の形態1における血液検査装置24に該当する)は、穿刺部保護カバー66(実施の形態1における穿刺部保護カバー30に該当する)が筐体25に対して支点66aを中心として自在に回動(矢印17g、17h方向)する点で、実施の形態4と異なる。従って、実施の形態6では、この異なる点に付いて説明する。
【0067】
図19に示すように、穿刺部保護カバー66は、支点66aを中心に回動する。穿刺部保護カバー66を開方向(矢印17g方向)に回動すると、穿刺部26が現れ穿刺が可能となる。これに対して、穿刺部保護カバー66を閉方向(矢印17h方向)に回動すると、穿刺部26が覆われ、穿刺部26が保護される。
【0068】
また、穿刺部保護カバー66には、図20に示すように、スライド部材16に設けられた凸部16cが嵌入される凹溝66aが設けられており、この凹溝66aは図20(b)において示すように、下方から右上に向かって斜めに形成されている。従って、穿刺部保護カバー66の開方向(矢印17g方向)へ回動すると、図20(a)に示すように、スライド部材16は矢印17j方向にスライドすることになる。
【0069】
即ち、この穿刺部保護カバー66を、開方向(矢印17g方向)に開けることにより、スライド部材16に設けられた凸部16cは、穿刺部保護カバー66に形成された凹溝66aに導かれて右方へスライドすることになる。即ち、スライド部材16を矢印17j方向へスライドし、センサ13を穿刺部26に装填する。
【0070】
また逆に、図20(b)に示すように、穿刺部保護カバー66を開方向(矢印17h方向)に回動すると、凸部16cは凹溝66aに導かれて左方にスライドし、スライド部材16は矢印17k方向にスライドする。スライド部材16が矢印17k方向へスライドすると、シャッタ18を構成するローラ18aが出口12aを封鎖して、カートリッジケース12を密閉する。このことにより、センサ13は湿気から保護される。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明にかかるセンサカートリッジは、内蔵された血液センサが湿気による劣化から保護されるので、血液検査装置等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1におけるセンサカートリッジの正面から見た第1の状態の断面図
【図2】同正面図
【図3】同正面から見た第2の状態の断面図
【図4】同正面図
【図5】同側面から見た断面図
【図6】同血液検査装置に用いるセンサの断面図
【図7】同センサの透視平面図
【図8】同センサの斜視図
【図9】同実施の形態2におけるセンサカートリッジの正面から見た第1の状態の要部断面図
【図10】同第2の状態の要部断面図
【図11】同実施の形態3におけるセンサカートリッジの正面から見た第1の状態の要部断面図
【図12】同第2の状態の要部断面図
【図13】同本発明のセンサカートリッジを用いた実施の形態4における血液検査装置の透視平面図
【図14】同要部断面図、(a)は同第1の状態における要部正面図、(b)は同第2の状態における要部正面図
【図15】同測定回路部とその近傍のブロック図
【図16】同検査方法のフローチャート
【図17】同本発明のセンサカートリッジを用いた実施の形態5における血液検査装置の透視平面図
【図18】同要部断面図、(a)は同第1の状態における要部正面図、(b)は同第2の状態における要部正面図
【図19】同本発明のセンサカートリッジを用いた実施の形態6における血液検査装置の透視平面図
【図20】同要部断面図、(a)は同第1の状態における要部正面図、(b)は同、第2の状態における要部正面図
【図21】従来のセンサカートリッジの断面図
【符号の説明】
【0073】
11 センサカートリッジ
12 カートリッジケース
12a 出口
13 センサ
14 乾燥剤
15 スライドプレート
18 シャッタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略直方体形状をしたカートリッジケースと、このカートリッジケース内に積層収納された血液センサと、この血液センサの近傍に収納された乾燥剤と、前記カートリッジケースに設けられるとともに前記血液センサが搬出される出口と、この出口から前記血液センサを搬出するスライドプレートとを備え、前記スライドプレートによる搬出動作に連動して前記出口を開閉するシャッタが設けられたセンサカートリッジ。
【請求項2】
カートリッジケースの下辺側に沿って水平方向にスライドするとともに、歯車でスライドプレートと連結されたスライド部材を設け、このスライド部材を出口と反対方向にスライドさせることにより、シャッタで前記出口は開放されるとともに前記スライドプレートで血液センサを前記出口から搬出し、前記スライド部材を前記出口方向にスライドさせることにより、前記出口は前記シャッタで閉塞されるとともに前記スライドプレートは前記血液センサの搬出前の位置に戻る請求項1に記載のセンサカートリッジ。
【請求項3】
積層収納された血液センサを下方へ押圧する押さえ板を設けるとともに、この押さえ板には、前記血液センサの貯留部と対応する位置に孔が設けられた請求項1に記載のセンサカートリッジ。
【請求項4】
スライド部材には、シャッタを構成する出口開閉部材とローラが連結された請求項2に記載のセンサカートリッジ。
【請求項5】
スライドプレートには、シャッタを構成する弾性部材が連結された請求項1に記載のセンサカートリッジ。
【請求項6】
出口には、シャッタを構成する蓋とこの蓋をスライドプレート側へ押圧するバネが装着された請求項1に記載のセンサカートリッジ。
【請求項7】
穿刺部を有するとともに略直方体形状をした筐体と、この筐体内に設けられるとともに前記穿刺部に対向して設けられた穿刺手段と、請求項2に記載のセンサカートリッジと、このセンサカートリッジから前記穿刺部へ搬送された血液センサと電気的に接続される測定回路部とを備え、前記穿刺部を保護するとともに開閉自在な穿刺部保護カバーを設け、この穿刺部保護カバーの開に連動して前記センサカートリッジを構成するスライド部材をスライドさせ、前記血液センサを前記穿刺部に装填する血液検査装置。
【請求項8】
スライド部材に凸部を設けるとともに、この凸部が嵌入する凹部を穿刺部保護カバーに設け、この穿刺部保護カバーを水平方向にスライドさせることにより、穿刺部を開にするとともに血液センサを前記穿刺部に装填する請求項7に記載の血液検査装置。
【請求項9】
スライド部材に凸部を設けるとともに、この凸部がスライドする凹溝を穿刺部保護カバーに設け、この穿刺部保護カバーを垂直方向にスライドさせることにより、穿刺部を開にするとともに血液センサを前記穿刺部に装填する請求項7に記載の血液検査装置。
【請求項10】
スライド部材に凸部を設けるとともに、この凸部がスライドする凹溝を穿刺部保護カバーに設け、この穿刺部保護カバーを回動させることにより、穿刺部を開にするとともに血液センサを前記穿刺部に装填する請求項7に記載の血液検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−94402(P2010−94402A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269439(P2008−269439)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】