説明

センサノード、センサネットワークシステム及び振動測定方法

【課題】センサの観測値を取得するタイミングを最適な値に設定しながらもセンサノードの電力消費量や通信帯域の制約を満たし、かつ観測対象の異常振動を確実に検知する。
【解決手段】観測対象の物理量を測定するセンサと、前記センサが測定した物理量を所定の周波数でサンプリングして観測値を取得する制御部と、前記制御部が取得した観測値を送信する無線通信部と、を備え、前記制御部は、観測対象の観測値の振動周波数が前記サンプリング周波数と異なることを検知する検知部と、前記サンプリング周波数を前記観測対象の振動周波数に合わせるように変化させる調整部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場やプラントにおける設備等の予防保全を目的にして、配管や機器の振動を観測するセンサノードおよび該センサノードを有するセンサネット予防保全システムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等の配管や、ポンプや回転機等の機器の振動を観測することにより、その障害を検知する、あるいは障害の予兆を検知することにより将来の障害発生時期を予測する予防保全が期待されている。従来、配管等の設備に生じる障害を検知するためには、定期的に人手で目視確認を行っていた。また配管等の設備に生じる障害の予測は、定期点検時に人手で配管系統の複数箇所に振動センサを設置し、配管に発生する振動の観測を行う方法で行っていた。従来方法では人手によるセンサ観測作業のコストが発生し、また常時観測ではないため異常を見逃す可能性がある。そのため、センサを観測ポイントに常設し、常時監視を行うシステムが期待されている。
【0003】
他の分野では、例えば特許文献1のように化学工場などにおける機器や計測装置または計器等の設備の劣化や不調または異常等を監視し、診断するシステムが知られている。一方、センサと無線通信装置及び演算装置を備えて電池で駆動する小型デバイスとしてセンサノードが知られており、このセンサノードと観測値の蓄積と解析及び警報の発行などの各種処理を実行するサーバ間の伝達路を無線で接続することにより、配線を不要にしてセンサの設置コストを削減することができるセンサネットワークシステム(以下、センサネットシステム)が開発されてきている。例えば特許文献2では、扉や窓に設置された加速度センサノードを用いた侵入者監視システムが開示されており、特許文献3には、送電設備に設置された温度センサノードを用いて送電設備の異常を検知するシステムが開示されており、特許文献に4は、車両の車輪に設置されたタイヤ空気圧センサノードを用い、スタンディングウェーブが発生したかどうかを検知する異常検知システムが開示されており、いずれもセンサノードが観測した観測値を無線通信を介してサーバに送信している。
【0004】
センサノードは、所定の周期で休眠を行うことで電池の消耗を抑えることができる。たとえば食品工場の環境モニタリングとして環境温度を10分間隔で計測する場合、センサノードは100ミリ秒程度の観測時間を除き、大部分の時間を休眠することができるため、数年のオーダーで電池交換を行わないようにすることができる。そのため低メンテナンス工数で、長期間の常時観測を実現することができる。
【特許文献1】特開平09−145405号公報
【特許文献2】特開2006−323755号公報
【特許文献3】国際公開WO02/021088号公報
【特許文献4】特開2004−345550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の原子力プラントにおける配管等の設備の予防保全に必要な機能は、配管等が設計値として想定された値以上の振幅で異常振動していることを検知して警報を発する異常検知機能と、振動により配管を支えるサポート部や配管継目に加えられる瞬間応力の時間積分値が、配管サポートや配管継目の疲労限界を越える時期を予測する異常予測機能の二種類の機能に大別できる。
【0006】
原子力プラントにおいては、配管等の設備内を流れる流体の流量はプラントの運転モードによって一定であるため、設備に生じた異常検知や異常予測は、たとえば1時間に1回、サンプリング周波数=400Hzで、5分間毎の観測頻度で観測を行うなどのスケジュールを作成し、このスケジュールでセンサを駆動して異常の検知と、異常の予測を行う。
【0007】
ここで、センサのサンプリング周波数(観測間隔)とサンプリング期間(観測期間)を、どの値に設定するかが問題となる。
【0008】
設備や配管などの異常検知を行うためには、異常を漏れなく検知する網羅性を確保することが必須となる。センサのサンプリング周波数が観測対象の振動周波数より低い場合、サンプリング周期内に発生した異常振幅を検出できない。そのため、センサのサンプリング周波数は観測対象の振動周波数より十分大きな周波数に設定する必要があるが、一般に異常振動の振動数は不明であるため、最適な値の設定が困難となる。また、配管の振動は一様ではなく、比較的長周期でスパイク状の脈動が発生する場合がある。センサのサンプリング期間が該脈動の発生周期よりも短い場合、該脈動を見逃す可能性がある。そのためサンプリング期間は該脈動の発生間隔より十分長時間に設定する必要があるが、一般に脈動の間隔は不明であるため、最適な値の設定が困難となる。
【0009】
従来の、定期点検時に人手で振動を観測する方法では、設備や配管などにセンサを取り付けて、異常を漏れなく検知できると想定される十分高いサンプリング周波数(観測周波数)で、異常を漏れなく検知できると想定される十分長時間のサンプリング期間での観測を行い、その観測値を全て解析アプリケーションに伝達して異常検知や異常予測を行っていた。たとえば配管の破断を引き起こす振動の周波数は、最大200Hz程度とされている。ナイキスト定理により、その周波数の二倍の400Hz以上の観測周波数で観測を行っていた。
【0010】
しかるに、センサネットシステムを利用した配管振動の常時観測システムを構築する場合、電池で駆動するセンサノードの電池寿命の制約と、無線通信の通信帯域の制約を考慮する必要がある。例えば、原子力プラントでは、原子炉が稼動中の期間は上述のような人手によるメンテナンスを行うことができず、1年に1度等の定期点検時にしか電池交換を行えないという制約がある。また原子力プラント内の配管系統全てをカバーするためには、センサノードは100個ないし1、000個が必要となる。多くのセンサノードが使用している無線通信の物理層規格であるIEEE802.15.4では、転送帯域が最大250kbps(31.25kB/s)という制約がある。
【0011】
本発明は前述した問題点に鑑みてなされたものであり、センサの観測値を取得するタイミングを最適な値に設定しながらもセンサノードの電力消費量や通信帯域の制約を満たし、かつ観測対象の異常振動を確実に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、観測対象の物理量を測定するセンサと、前記センサが測定した物理量を所定の周波数でサンプリングして観測値を取得する制御部と、前記制御部が取得した観測値を送信する無線通信部と、を備え、前記制御部は、観測対象の観測値の振動周波数が前記サンプリング周波数と異なることを検知する検知部と、前記サンプリング周波数を前記観測対象の振動周波数に合わせるように変化させる調整部と、を備える。
【0013】
また、前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、前記検知部は、予め設定された観測期間毎に前記最大値および最小値を取得し、前記最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに、前記観測対象が前記サンプリング周波数よりも高周波数の振動を行っていると判定する。
【0014】
また、前記調整部は、前記検知部が予め設定された観測期間内で前記観測対象の振動周波数が前記サンプリング周波数よりも高周波数と判定したときには、前記観測期間を再帰的に縮小する。
【発明の効果】
【0015】
したがって、本発明により、観測対象の異常を観測するのに最適なサンプリング周波数と、観測対象の振動を観測する必要十分な観測期間(サンプリング期間)で観測を行いながらも、センサノードの電力消費量と、無線通信量と、サーバにおける観測値のデータベース格納量及びサーバの要求速度を削減することを可能となる。
【0016】
また、観測対象の振動周波数が不明であっても、観測対象の振動周波数がサンプリング周波数と異なることをセンサノードが検知し、検知した振動周波数に応じてサンプリング周波数を観測対象の振動周期に合わせることにより、観測対象の振動を正しく観測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0018】
<センサネットワークシステムの構成>
図1は、本発明を適用するセンサネットワークシステム(以下、センサネットシステム)の機能の要部を示すブロック図である。
【0019】
センサネットシステムは、センサネットサーバ101と、ゲートウェイ102(図中GW1〜GWx)と、ルータノード103(図中RT1〜RTx)と、センサノード104(図中SS1〜SSx)と、管理計算機105と、クライアント計算機106と、有線センサ107と、RFIDリーダ108及びLAN(Local Area Network)109を備える。
【0020】
LAN109は、センサネットサーバ101と、ゲートウェイ102と、管理計算機105と、クライアント計算機106及び有線センサ107を相互に接続する。
【0021】
センサノード104は、当該センサネットシステムに分散されて複数が設置される。図1のセンサネットシステムには、9個のセンサノード104(図中SS1〜SS9)が設置されているが、いくつ設置されてもよい。それぞれのセンサノード104は、ZigBee通信部122、タスクマネージャ124、センサ制御部125及び電源管理部126を備える。
【0022】
ZigBee通信部122は、ZigBeeプロトコルを用いて、ゲートウェイ102又はルータノード103と通信する。タスクマネージャ124は、センサネットサーバ101から発行された要求に従って、当該センサノード104に設定されている情報を変更する。なお、センサネットサーバ101から発行された要求は、センサノード104に対して何らかの処理を依頼するための情報である。例えば、タスクマネージャ124は、センサネットサーバ101から発行された要求に従って、当該センサノード104の起動間隔又は転送モードを変更する。
【0023】
センサ制御部125は、当該センサ制御部125に備わるセンサを用いて、環境情報(例えば、物理量または観測地)を観測する。電源管理部126は、当該センサノード104の電源を制御する。例えば、電源管理部126は、予め設定されている起動間隔(観測頻度)で電力を供給することによって、当該センサノード104を間欠的に起動させる。
【0024】
センサノード104は、当該センサノード104に備わるセンサを用いて、環境情報を観測する。そして、センサノード104は、観測した環境情報を観測イベントとして、PAN(Personal Area Network)等の無線ネットワークを介してセンサネットサーバ101に送信する。なお、観測イベントは、センサノード104又はセンサネットサーバ101によって発行される。また、観測イベントには、当該観測イベントの発行元の状態又は状態変化を示す情報が格納される。
【0025】
本実施の形態では、それぞれのセンサノード104は、振動センサを備える。そして、センサノード104は、設置された場所の環境情報である振動を観測し、観測した振動をセンサネットサーバ101に送信する。ここで、振動センサとしては、後述するようにセンサノード104の周囲の加速度を計測する3軸加速度センサを採用することができる。
【0026】
なお、センサノード104については、図4、図5で詳細を説明する。
【0027】
センサノード104は、更に、RFIDタグを備えていてもよい。この場合、当該センサネットシステムは、RFIDリーダ108を備える。RFIDタグには、当該RFIDタグに固有の識別子が格納されている。RFIDリーダ108は、RFIDタグに格納されている固有の識別子を読み取る。
【0028】
ルータノード103は、ZigBee通信部122及びルーティングマネージャ121を備える。ZigBee通信部122は、ZigBeeプロトコルを用いて、ゲートウェイ102と、センサノード104又は他のルータノード103と通信する。ルーティングマネージャ121は、外部から受信した情報の転送先を判定する。
【0029】
ルータノード103は、センサノード104によって観測された環境情報又はセンサネットサーバ101から発行された要求等を受信し、ゲートウェイ102やセンサノード104又は他のルータノード103に転送する。すなわち、本実施形態の無線ネットワークは、マルチホップの環境で構成される。
【0030】
ゲートウェイ102は、LAN通信部120と、ルーティングマネージャ121と、ZigBee通信部122及びPAN制御部123を備える。LAN通信部120は、LAN109を介して、センサネットサーバ101と通信する。ルーティングマネージャ121は、外部から受信した情報の転送先を判定する。ZigBee通信部122は、ZigBeeプロトコルを用いて、ルータノード103又はセンサノード104と通信する。PAN制御部123は、当該ゲートウェイ102から構成されるPANを制御する。
【0031】
ゲートウェイ102は、センサノード104によって観測された環境情報又はセンサネットサーバ101から発行された要求等を受信し、センサネットサーバ101と、ゲートウェイ102と、ルータノード103又はセンサノード104に転送する。
【0032】
センサネットサーバ101は、LAN通信部120と、履歴データベース116と、管理機能112と、解析機能110及び警報機能111を備える。LAN通信部120は、LAN109を介して、ゲートウェイ102、管理計算機105、クライアント計算機106及び有線センサ107と通信する。
【0033】
管理機能112は、センサノード104によって観測された観測値(センシングデータ)を、履歴データベース116に格納する。履歴データベース116には、センサノード104によって観測された観測値の履歴が記憶される。
【0034】
また、管理機能112は、管理計算機105から発行された要求等に基づいてセンサノード104に対してコマンドを発行し、センサノード104制御を行う。また、管理計算機105から発行された要求等に基づいて履歴データベース116から観測値を取り出す、また、解析機能110を用いて後述するように観測値を解析する。
【0035】
警報機能111は、センサノード104によって観測された観測値や、解析機能110を用いて解析された結果を用いて異常の判定を行い、異常を判定したときには管理計算機105やクライアント計算機106に対し、警報を発行する。
【0036】
管理計算機105は、当該センサネットシステムの管理者によって操作される。管理計算機105は、管理者の操作を契機に、各種要求をセンサネットサーバ101に送信する。
【0037】
クライアント計算機106は、当該センサネットシステムのクライアントによって操作される。クライアント計算機106は、各種アプリケーションを実行する。また、クライアント計算機106は、センサノード104によって観測された観測値や警報情報を、センサネットサーバ101から受信する。クライアント計算機106は、受信した観測値や警報に基づいて、各種処理を行う。
【0038】
有線センサ107は、観測値を観測する。そして、有線センサ107は、観測した環境情報を、LAN109を介してセンサネットサーバ101に送信する。
【0039】
<原子力プラント配管振動予防保全に対する適用例>
図2に本発明のセンサネットシステムを原子力発電プラントの配管系統の監視に適用した場合の建屋の概略図を示す。配管系統は、ポンプ201や弁202、これらを繋ぐ配管203と配管継目206及び配管203を支える配管サポート207から構成される。配管203の障害は次の原因で発生すると考えられる。第一の原因としては、振動により配管継目206に加えられる応力の繰り返し回数が、配管203の疲労限界回数を超えて加えられることにより配管継目206にクラックが発生し、水漏れが発生する。第二の原因としては、配管サポート207に加えられる応力の繰り返し回数が、配管サポート207の疲労限界回数を超えて加えられることにより配管サポート207が破壊され、この破壊により配管203自体に想定外の応力が加わり、配管203の破断が発生し、水漏れが発生する。第三の原因としては、ポンプ201のキャビテーション等の影響により配管203の内部に流体による衝撃が繰り返して加えられ、配管203の内部の肉厚が減じられる。配管203の肉厚が閾値を超えて小さくなった時点で水漏れが発生する。
【0040】
上記のような配管203の障害を抑止するため、配管203にセンサノード104を配置してセンサネットサーバ101で配管203に加わる振動を監視する。センサノード104は、複数の配管203の各所に固定され、原子力発電プラント全体では数百乃至数千のセンサノード104を備える。
【0041】
<装置構成>
<センサネットサーバ>
図3は、本発明の実施の形態のセンサネットサーバ10の構成のブロック図である。
【0042】
センサネットサーバ101は、メモリ303と、外部記憶装置306と、CPU304と、通信装置307と、キーボード301と、ディスプレイ302及びACアダプタ305を備える。
【0043】
メモリ303は、CPU304によって実行されるプログラム及びCPU304によって必要とされる情報等を記憶する。外部記憶装置306は、不揮発性の記憶装置であり、プログラム及び情報を記憶する。例えば、外部記憶装置306は、ハードディスク(HDD)である。具体的には、外部記憶装置306は、履歴データベース116を記憶する。
【0044】
CPU304は、外部記憶装置306に記録されているプログラムをメモリ303に格納して実行することによって、各種処理を行う。具体的には、CPU304は、プログラムを実行することによって、オブジェクトマネージャ110と、PANマネージャ111と、RDBマネージャ113と、イベント発行部114及びLAN通信部112を実現する。
【0045】
通信装置307は、LAN109を介して、ゲートウェイ102、管理計算機105、クライアント計算機106及び有線センサ107と通信する。
【0046】
キーボード301には、管理者から各種情報が入力される。そして、キーボード301は、管理者から入力された情報をCPU304に送信する。なお、センサネットサーバ101は、キーボード301の代わりに、その他の入力装置を備えてもよい。ディスプレイ302は、CPU304から受信した情報を表示する。
【0047】
<センサノード>
図4は、本発明の実施の形態のセンサノード104の構成のブロック図である。
【0048】
センサノード104は、環境情報を観測し、観測した観測情報を観測イベントとして発行する。センサノード104は、メモリ411と、Flash Memory等の不揮発メモリで構成された外部記憶装置412と、マイクロコンピュータ等のCPU413と、アンテナ414と、無線通信装置415と、電池等の電源416と、センサ417と、ピークホールド回路419と、ボタン418と、LED(Light Emitting Diode)420と、リアルタイムクロックRTC424及びA/D変換器421を備える。
【0049】
CPU413にはメモリ411が含まれる。メモリ411は、CPU413によって実行されるプログラム及びCPU413によって必要とされる情報等を記憶する。外部記憶装置412は、不揮発性の記憶装置であり、プログラム及び情報を記憶する。例えば、外部記憶装置412は、フラッシュメモリである。CPU413は、外部記憶装置412に記録されているプログラムをメモリ411に格納して実行することによって、各種処理を行う。
【0050】
アンテナ414は、外部に対してアナログ信号を送受信する。無線通信装置415は、アンテナ414から受信したアナログ信号をデジタル信号に変換する。また、無線通信装置415は、デジタル信号をアナログ信号に変換して、アンテナ414から送信する。これによって、無線通信装置415は、PANを介してセンサネットサーバ10と無線で通信する。
【0051】
センサ417は、環境情報を観測する。センサ417の代表例は、センサ周囲の振動を計測する3軸加速度センサである。なお、3軸は、後述するように直交するX軸、Y軸、Z軸を示す。センサ417の他の例として、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、ボルトの緩みを検知するひずみセンサ、扉の開閉を検知する圧力センサ、人の存在を検知する赤外線センサ、又は脈拍を検知する赤外線センサなどがある。
【0052】
ピークホールド回路419は、一定時間内で、センサ417の信号の最大値を保持する機能(ピークホールド機能)と、最小値を保持する機能(ボトムホールド機能)と、最大値と最小値の差を保持する機能(ピークツーピークホールド機能)のいずれか一つあるいはすべてを有するアナログ回路である。観測対象が3軸加速度の場合、X軸、Y軸、Z軸それぞれの三個の加速度センサ(図示省略)に対し、それぞれピークホールド回路419を用意する。なお、センサ値および最大値、最小値はアナログ/デジタル変換器421によりデジタル信号化され、シリアル通信を経由してCPU413に入力される。
【0053】
電源416は、当該センサノード104に電力を供給する。ボタン418は、作業者によって操作される。LCD419及びLED420は、各種情報を出力する。なお、センサノード104は、LCD419又はLED420のいずれか一方のみを備えてもよい。
【0054】
センサノード104を構成する各部は、通常時に、スリープ状態となっている。そして、CPU413は、リアルタイムクロックRTC424に予め設定された所定の間隔(観測頻度)ごとに起動される。
【0055】
なお、ルータノード103及びゲートウェイ102は、センサノード104と同様の構成である。よって、ルータノード103及びゲートウェイ102の構成については、説明を省略する。
【0056】
<機能ブロック>
図5を用いてセンサノード104の機能ブロック図を説明する。
【0057】
センサノード104の機能構成は、単独観測機能603と、時系列観測機能604と、高周波成分検知機能616と、周波数掃引機能605と、観測期間推定機能619と、静止判定機能617と、観測値蓄積機能611と、観測値取得機能613と、スケジューラ機能607と、タイマ管理機能608と、コマンド処理機能609と、イベント転送機能614と、無線通信機能610および電池残量管理機能618から構成される。またセンサノード104は、内部メモリあるいは不揮発メモリ上にスケジュールテーブル606と、観測値テーブル612を備える。
【0058】
<単独観測機能>
図10を用いて、CPU413が実する図5に示した単独観測機能603の処理の一例について説明する。単独観測機能603は、1回の観測において以下のステップで定義される動作を行う。
[STEP1] センサ417の電源をONにする。
[STEP2] ピークホールド取得モードであるか否かを判定し、ピークホールド取得モードであればSTEP3へ進み、そうでなければSTEP5へ進む。
[STEP3] ピークホールド回路419の電源をONにする。
[STEP4] ピークホールド回路419にクリア信号を投入し、ピークホールド回路419で保持している最大値及び最小値をリセットする。
[STEP5] 観測頻度として予め指定されている所定の期間(例えば、1分)が経過するまで待機する。
【0059】
なお、STEP5の待機状態において、CPU413を休眠(スリープ)させることにより、サンプリング間隔の間のCPU413の電力消費を削減することができる。ただし、センサ417からピークホールド回路419までは電力の供給を継続する。この待機状態においてCPU413を休眠させるためには、タイマ管理機能608を用いてリアルタイムクロックRTC424にCPU413の起動時刻(または起動周期)を設定し、タイマ割り込みによりCPU413を起動させることにより実現することができる。また、リアルタイムクロックRTC424は所定の観測期間の開始時に電源416をピークホールド回路419に電力供給の開始を割り込みなどによって通知し、前記観測期間の終了時にCPU413を起動させる通知を行うようにしても良い。
[STEP6] CPU413がセンサ417からセンサ値(観測値)を所定の観測間隔(サンプリング周波数)で取得する。センサ値はAD変換器421により、デジタル信号として取得される。単独観測機能603は、デジタル信号として取得したセンサ値をメモリ411に格納する。
[STEP7]ピークホールド取得モードであるか否かを判定し、ピークホールド取得モードであればSTEP8へ進み、そうでなければ処理を終了する。
[STEP8]ピークホールド回路419が保持する、観測頻度で指定された期間中のセンサ値の最大値と最小値を取得する。最大値および最小値はAD変換機により、デジタル信号として取得される。単独観測機能603は、デジタル信号として取得された最大値および最小値としてメモリに格納する。
【0060】
ここで、観測頻度は、CPU413が観測を開始する間隔(CPU413を起動する間隔またはピークホールド回路419をリセットする間隔)で、観測開始間隔を示し、観測期間はCPU413がセンサ417の観測を行う期間を示し、観測間隔はサンプリング周期(またはサンプリング周波数)を示す。例えば、センサノード104は、観測頻度(観測開始間隔)を1分とし、観測期間を数秒とし、観測間隔の逆数を200Hz等に設定する。
【0061】
図11を用いて、図5に示した単独観測機能603のタイミングチャートについて説明する。図11は、観測対象1001に対し、観測頻度を変えて複数回単独観測機能603を実行している例である。単独観測機能603は、時刻T6においてセンサ417の電源と、ピークホールド回路419の電源をONにする。
【0062】
観測対象の加速度(観測値、例えば電圧値)の波形1001は、観測期間中、たとえば観測対象振動波形1004に示す値に変化する。図10のSTEP5においてCPU413が休眠している場合は時刻T7においてCPU413の電源がONとなる。これにより、時刻T6から時刻T7の間、CPU413は休眠することができるため、センサノード104の電力消費を削減することができる。図中時刻T6から時刻T7の期間中、センサ信号が観測対象振動1004のように変化する場合、観測期間終了時のT7においてCPU413で取得されるセンサ信号は、観測対象振動1004の時刻T7における観測値Vとなる。またセンサ信号の最大値は、観測期間中にピークホールド回路419が保持した値で、センサ信号が最も大きくなった時刻おける信号値Vmaxとなる。またセンサ信号の最小値は、観測期間中にピークホールド回路419が保持する値のうち、センサ信号が最も小さくなった時刻における信号値Vminとなる。時刻T7において、CPU413はその時点の観測値をVとして取得し、最大値Vmaxをピークホールド電圧1005として取得し、最小値Vminをボトムホールド電圧1006として取得する。
【0063】
以上のように単独観測機能603は、ピークホールド取得モードの場合、観測時刻T(n−1)から観測時刻T(n)までの間(CPU413の起動間隔)は、CPU413を休眠させておき、センサ417とピークホールド回路419を駆動してセンサ417の出力のうち、最大値Vmaxと最小値Vminをピークホールド回路419に保持しておく。そして、観測時刻T(n)になると、CPU413を起動して、この時刻におけるセンサ417の出力を現在値Vとして取得し、さらに、ピークホールド回路419から観測頻度で指定された期間の間に保持した最大値Vmaxと最小値Vminを取得する。CPU413は、最大値Vmaxと最小値Vminを取得した後にピークホールド回路419が保持する値をリセットして、次の観測期間に備える。その後、CPU413は取得したセンサ信号(現在値Vと最大値Vmax及び最小値Vmin)を送信した後に、再び休眠状態に移行することができる。
【0064】
このように、単独観測機能603では、センサノード104が1つの観測期間内で、最大値Vmaxと最小値Vmin及び観測期間の終了時点のセンサ417の観測値Vの3つのデータを取得して、センサネットサーバ101へ向けて送信する。したがって、単独観測機能603によってセンサノード104が送信するデータ量は、観測期間の長さにかかわらず1つの観測期間で3つのデータを送信するだけでよいので、1つのセンサノード104が必要とする無線ネットワークの帯域は極めて狭い帯域でよい。これにより、前記従来例のように、ひとつのセンサノードが継続的に観測値を送信する場合に比して、無線ネットワークに対する負荷を大幅に低減できる。そして、センサノード104は、観測値Vの取得とピークホールド回路419の値を読み込んでこれらの観測結果を送信する間だけCPU413を起動させていればよいので、センサノード104の内で消費電力の大きいCPU413の起動期間を短くすることで、電源416の消耗を抑制して長期間の測定を可能にするのである。
【0065】
<高周波成分検知機能>
図12を用いて、図5に示した高周波成分検知機能616について詳細に説明する。高周波成分検知機能616は、検知したい振幅の最低の大きさである振幅閾値ΔDを引数として入力し、単独観測機能603から最大値Vmax、最小値Vminを入力し、センサノード104に設定されている観測間隔(サンプリング周波数)よりも高周波成分が存在するかどうかの真偽値を出力する。高周波成分検知機能616は、以下の(1)式が真の場合、高周波成分が発生したことを示す真値を返し、それ以外の時は偽の値を返す。
【0066】
(Vmax − Vmin) > ΔD ………(1)
図12のCASE1は、観測周期(またはサンプリング周期)の開始時刻T6から終了時刻T7の間に、振幅閾値ΔDよりも大きな周期が少なくとも1組以上存在する場合である。この場合、振幅極大値Vmaxおよび振幅極小値Vminがそれぞれ最大値および最小値となる。そして、最大値と最小値の差分(Vmax−Vmin)が振幅閾値ΔDより大きな値となるため、高周波成分が存在すると判定される。高周波成分検知機能616は、この判定結果に応じて真の値を出力する。CASE1が適用される境界条件は、観測周期が観測対象の振動周期の半波長になる場合である。ナイキストの定理により、観測対象の振動周期を観測することのできる最大の周期は、該振動周期の半分となる。そのため本方法を用いれば、観測対象の振動周期を観測することができる最大周期を保障できる。
【0067】
図12のCASE2は、観測周期の開始時刻T6から終了時刻T7の間、振幅の小さな高周波成分のノイズが存在するが、振幅閾値ΔDよりも大きな振幅が存在しない場合である。開始時刻T6から終了時刻T7において、最小値Vminと最大値Vmaxが存在する。振幅閾値ΔDが該高周波成分よりも大きければ、該ノイズは無視され、高周波成分が存在しないと判定される。CASE2は最大値と最小値の差分(Vmax−Vmin)が振幅閾値ΔDより小さな値となるため、高周波成分が存在しないと判定される。高周波成分検知機能616は、この判定結果に応じて真の値を出力する。
【0068】
以上の処理によって、高周波成分検知機能616は観測周期内に高周波成分の有無を判定する。なお、上記ではピークホールド回路419が保持した最大値と最小値を用いたが、センサ417からの観測値を予め設定された回数の測定期間で取得し、これら複数回の測定期間で取得した観測値の符号が正負逆転した回数が0よりも大きいときに、観測対象の振動周波数がセンサノード104のサンプリング周波数よりも高周波数の振動を行っていると判定してもよい。
【0069】
<静止判定機能>
図5に示した静止判定機能617について詳細に説明する。静止判定機能は、観測対象が振動しているかどうかを判定することを目的とする機能である。原子力発電プラント等では安全のため、3系統のシステムを取る。主システムが作動しているとき、残りの2つのサブシステムは停止している。主システムに異常が発生した時、サブシステムに切り替える。サブシステム切替時の異常をモニタするため、3システム全てに振動センサを備えたセンサノード104を設置する。この時、使用していない2つのシステムでは配管振動がないため、計測する必要はなく、無駄な計測でリソース(電池など)を消耗したくない。静止判定機能617を使用することにより、使用していない、したがって振動していないシステムは、振動確認ステップのみで処理を終了するようにすることができるためリソースを無駄に使用しない。
【0070】
静止判定機能617は、観測値Vを入力し、静止しているかどうかを示す真偽値を返す。静止判定機能は、下記(2)式が真のときに静止していることを示す真値を返す。
sqrt((Vx−Vx0)^2+(Vy−Vy0)^2+(Vz−Vz0)^2)<ε
………(2)
ここで、(Vx、Vy、Vz)は各軸の観測値Vであり、(Vx0、Vy0、Vz0)は重力加速度を考慮した静止状態の加速度であり、εは十分小さい固定値である。(Vx0、Vy0、Vz0)およびεは固定値として予め静止判定機能617に登録しておく数値である。
【0071】
静止判定機能617は、メモリ411上に前回の状態として、静止しているかどうかを示す真偽値を保持する。静止判定機能617が判定した真偽値が、前回の状態と異なる場合、静止判定機能617は、イベント転送機能614を呼び出し、図16に示すstatusChangedイベント1502を発行する。なおstatusChangedイベント1502の引数statusの値は、静止状態に変化した場合はSTOPPED、振動状態に変化した場合はSTARTEDを設定する。
【0072】
<周波数掃引機能>
図13を用いて、図5に示した周波数掃引機能605の処理の一例について説明する。周波数掃引機能605は、観測間隔(サンプリング周波数)の初期値T0と、検知振幅閾値εを引数とし、図5の単独観測機能601と、高周波成分検知機能616を使用し、観測対象の振動周波数を測定するために必要十分な観測周波数(サンプリング周波数)を算出する。周波数掃引機能605は、CPU413が以下のステップで定義される処理を行うことにより観測対象の周波数(サンプリング周期の逆数)を特定する。
[STEP11] 引数として与えられる観測間隔の初期値T0を観測間隔Tとして設定する。
[STEP12] 観測間隔Tと振幅閾値ΔDを引数として、単独観測機能601を実行し、その応答として観測値V、最大値Vmax、最小値Vminを取得する。CPU413は、取得した観測値V、最大値Vmax、最小値Vminを観測期間(観測回数)毎にメモリ411へ格納する。
[STEP13] 上記[STEP12]を予め設定された回数まで繰り返し、その後STEP14へ進む。
[STEP14] 上記STEP12で取得した最大値Vmaxと、最小値Vminを引数として、高周波成分検知機能616を実行し、その応答として高周波成分が存在するかを判定する真偽値を取得する。なお、STEP14では、観測期間毎の最大値と最小値の中から最も大きい値を最大値Vmaxとし、最も小さい値を最小値として扱う。
[STEP15] 高周波成分が存在しないと判定された場合には、上記静止判定機能617を実行する。静止判定機能617が静止していると判定すると、静止していると出力して処理を終了する(1203)。一方、静止判定機能617で静止していないと判定された場合、STEP12で使用した観測間隔を出力する。
[STEP16] 上記STEP14の判定において、高周波成分が存在すると判定された場合、観測間隔の縮小を行う。観測間隔の縮小は所定比率で行うことができ、たとえば前回の観測間隔の半分の値を新たな観測間隔(サンプリング周波数の逆数)として設定する。
[STEP17] 観測間隔が、センサ417に固有の観測限界より短いかどうかを判定する。観測間隔がセンサの観測限界より短い場合、観測間隔の特定に失敗したという情報と、STEP12で使用した観測間隔(縮小される以前の観測間隔)を出力して処理を終了する。一方、縮小後の観測間隔が、センサ417の観測限界より長い場合には、STEP12へ戻ってSTEP12〜16の処理を繰り返し、高周波成分が検出できなくなるか、観測間隔がセンサ417の観測限界より短くなるまでこれらの処理を繰り返す。
【0073】
以上の処理によって、センサノード104の周波数掃引機能605は、観測対象の振動周波数がサンプリング周波数と異なることを検知すると、サンプリング周波数を観測対象の振動周波数に合わせるようにサンプリング周波数を変化させることが可能となる。これにより、観測対象の振動周波数がセンサ417の観測間隔の限界を超過する場合にも、該高周波成分を含む信号が存在することを検知することができる。したがって、高周波成分の検出性能が低い安価な加速度センサでもピークホールドが可能であれば採用することが可能となって、センサネットシステムを構築する際のコストを低減することが可能となる。
【0074】
<観測期間推定機能>
図8を用いて、図5に示した観測期間推定機能619について説明する。観測期間推定機能619は、図6に示すように、観測対象振動1004(センサ信号)の時系列から定期的に発生する異常振動(衝撃)を検出し、検出した異常振動の継続時間を算出し、この継続時間から観測期間を自動計算する機能である。そして、計算結果を単独観測機能603の観測期間に反映させることで、検知した異常振動の出現パターンに応じた観測期間を設定することが可能となる。図8の例では、指定した振幅閾値ΔDを超える異常振動は、異常8009、8010、8011、8012、8013、8014の6件存在する。
【0075】
はじめに、初期の観測頻度(例えば1分毎)で、上記単独観測機能601を起動する(観測8001)。その後、センサ信号の最大値の絶対値と、最小値の絶対値と、双方の値の内で大きい方の値が、振幅閾値ΔDを超過するかを判定する。図8の例では、判定の結果、最大値ないし最小値の絶対値が振幅閾値ΔDを超過した観測期間について「T」と記述している。そして観測期間を再帰的に縮小していく。図中観測8001から8008へ向かうにつれて観測期間は所定値(例えば、1/2)ずつ小さくなり、図中連続した「T」と記述した観測期間を結合した間隔が、異常継続時間の候補となる。該再帰処理において、異常継続期間がほぼ変化しないことをもって、異常継続間隔とみなすことができる。すなわち、図中観測8001〜8008の観測期間では、観測8007の観測期間で異常8010と8011を含む観測期間で「T」が連続しなくなった観測期間8008を異常継続期間とみなす。
【0076】
図9は、本処理を正常振動に適用した例を示す。図9は、図8において、振幅閾値ΔDを小さい値にとり、ほぼ全ての観測対象振動1004の絶対値が振幅閾値ΔDより大きくなる例である。本発明を正常振動に適用した場合、観測対象振動1004から異常振動を抽出することができず、異常継続時間が初期の観測期間から縮まらない場合がある。この場合、正常振動の場合の観測期間の最大値を予め指定しておき、異常継続時間が該観測期間の最大値よりも大きくなる場合、観測期間の最大値を使用することで、正常振動も正しく取得できる。
【0077】
上記図6の例では、異常振動の開始時刻Tstartと、異常振動の継続時間ΔTと、異常振動の観測期間Δdを算出できる。同様に、図7は、振幅閾値ΔDを指定して正常振動の抽出を行う例である。振動観測を開始するように利用者が指定した時刻Tstartから期間ΔTの間、算出した正常振動の観測期間Δdで観測を行う。従来は、正常と異常の区別なく、固定期間(5分等)で、固定サンプリング周波数(200Hz等)での観測を行っていたが、本発明により、異常を観測する必要十分な観測期間と、観測対象の振動を観測するのに必要十分なサンプリング期間で観測を行うことにより、センサノード104の電力消費量と、無線通信量と、センサネットサーバ101における履歴データベース116の格納量と、センサネットサーバ101の要求速度を削減することを可能とし、これにより複数のセンサノード104が配管や機器等の異常を常時監視する振動監視システムの実現を可能とする。これにより、異常の発生をすみやかに発見し、また配管や機器等の寿命を精度よく予測する予防保全システムの実現を可能とする。
【0078】
また、本発明によれば、高周波成分が観測できない安価なセンサ417では観測できない観測ポイントのみ、高周波成分が観測できる高価なセンサと置換することにより、安価なセンサと高価なセンサの混在する振動監視システムを構築することができ、これによりシステム導入コストを削減することができる。
【0079】
<時系列独観測機能>
時系列観測機能604は、図19で示すように、予め設定された観測頻度でCPU413を起動し、予め設定された観測期間でCPU413がセンサ417の出力を観測し、この観測期間中では、CPU413は予め設定された観測間隔(サンプリング周期)センサ417の出力を観測値として取得し、メモリ411に格納する。観測期間が終了すると、CPU413は観測期間の最大値と最小値をピークホールド回路419から取得し、メモリ411に格納した観測値とともにセンサネットサーバ101へ向けて送信する。送信が完了すると、CPU413はピークホールド回路419をリセットした後、次の観測開始まで休眠する。
【0080】
<残電池管理機能>
図5の電池残量管理機能618について詳しく説明する。本発明のセンサネットシステムは、振動の異常を確実に検知することが重要となる。そのため電源416の残量を管理し、ノードの電池交換を実施するのに十分猶予があるタイミングにおいて電池残量が少なくなったことを管理者に提示する必要がある。本発明のセンサノード104は、スケジュールに応じて観測頻度が変更され、また観測対象の振動状況に応じて観測間隔を変更するため、電源416が消耗する間隔はセンサノード104により異なり、単純に電池交換時期からの経過時間で予測することはできない。電池残電圧を計測して電池残量を予測する方法も、電池の残電圧を精度よく取得することができず、電源416の残電圧曲線が急激に低下する部分を検知し、警報を発行しても、電池交換が間に合わない場合が発生する。
【0081】
本発明のセンサノード104における電池残量管理機能618の好適な実装は、センサノード104が起動している間を時間積分することによる。具体的には、観測回数を蓄積するメモリ領域をメモリ411上に有し、単独観測機能603において観測を行う時に該メモリ領域に格納された観測回数を増加させる機能と、定期的に該観測回数を図16のbatteryLeftイベント1503を用いてセンサネットサーバ101に送信する機能を有する。batteryLeftイベントは、引数として、イベント発行時刻(timestamp)と、観測回数observedCountを有する。センサネットサーバ101は、batteryLeftイベントを受信する度に、該当するセンサノード104の観測回数を更新し、該観測回数が閾値を超過したときに警報を発することにより、電池消耗により該センサノード104が停止するリスクを低下させることが可能となる。
【0082】
<無線通信機能>
図14を用いて、図5に示した無線通信機能610について説明する。無線通信機能610は、無線モジュール415とメッセージを送受信する。具体的には、センサネットサーバ101からセンサノード104に対し無線通信経由で伝達されるメッセージをアンテナ414から無線モジュール415が受信し、無線モジュール415は無線通信機能610にメッセージを伝達する。また無線通信機能610はメッセージを無線モジュール415に伝達し、無線モジュール415はアンテナ414から無線通信経由でメッセージをセンサネットサーバ101に送信する。図14は無線通信機能610が使用する通信メッセージのデータ構造である。メッセージには、送信元ないし送信先のノードを示す識別番号であるNodeID1301と、通信メッセージ自体を識別するシーケンス番号であるSequenceNumber1302と、メッセージがコマンドか、コマンドの応答か、観測イベントかを識別するMessageType1303と、メッセージの種類を識別するMessageID1304と、可変長で構成されてMessageIDで一意に決定されるパラメータ部であるParameters1305が存在する。
【0083】
受信したメッセージのMessageType1303がコマンドを識別する値である場合、該メッセージはコマンドとみなされ、コマンド処理機能609に該コマンドの処理を依頼する。コマンド処理機能609は処理結果をコマンド応答として無線通信機能610に返信する。無線通信機能610はMessageType1303にコマンド応答と識別される値を記述したメッセージを生成し、無線モジュール415に渡す。また、センサノード104は、観測値などを自発的に観測イベントとしてセンサネットサーバ101に送信する。この場合、無線通信機能610はMessageType1303に観測イベントと識別される値を記述したメッセージを生成し、無線モジュール415に渡す。
【0084】
<コマンド処理機能>
図15を用いて、図5に示したコマンド処理機能609について説明する。コマンド処理機能609は、無線通信機能615から渡されたメッセージをコマンドとして解釈し、MessageID1304で区別されるコマンド処理ロジックを実行する。コマンドの要求時および応答時のパラメータ1305をExtended Bacus−Naur Form(EBNF)記法にて記載する。
【0085】
図中scanFrequencyコマンド1401は、周波数掃引機能605を使用し、観測対象の現在の振動を測定するための観測周期を探索するコマンドである。scanFrequencyコマンドの要求パラメータは、振幅閾値thresholdおよび探索開始周波数startFrequencyを取る。ここで振幅閾値thresholdは、図12の振幅閾値ΔDであり、高周波成分検知機能616が(1)式において使用する。また探索開始周波数startFreaquencyは、図13のSTEP11で使用される初期の観測間隔(サンプリング周期)の逆数である。scanFrequencyコマンドの応答パラメータは、観測周波数frequency、状態statusである。ここで観測周波数frequencyは、図13のSTEP11で登録された初期観測間隔が、STEP16にて間隔を縮小された結果である最終観測間隔の逆数である。状態statusは、図13の終了条件となり、周波数の特定が成功した場合(図13の1201)は、successを、特定失敗した場合(1202)は、rangeExceededを、観測対象が静止していると判定された場合(1203)、noFrequencyを応答する。
【0086】
observeコマンド1402は、観測周期(観測間隔)と観測期間を外部から設定し、観測対象の振動を観測するコマンドである。observeコマンドの要求パラメータは、観測周波数frequency、観測期間timeLengthである。observeコマンドの応答パラメータは、観測が成功したことを示す真偽値booleanである。
【0087】
scanAndObserveコマンド1403は、scanFrequencyコマンド1401を実行した後、探索した観測周期を用いてobserveコマンド1402を実行する。scanAndObserveコマンドの要求パラメータは、振幅閾値threshold、探索開始周波数startFrequency、観測期間timeLengthを取る。scanAndObserveコマンドの返戻パラメータは、観測が成功したことを示す真偽値booleanである。
【0088】
addScheduleコマンド1404は、スケジューラ機能607に対し、スケジュールを予約するコマンドである。要求パラメータとして、実行間隔(観測頻度)periodと、実行するコマンド名commandNameと、該コマンドの引数commandParameterを持つ。addScheduleコマンドの応答パラメータは、予約されたスケジュールを一意に識別する番号であるscheduleIdである。
【0089】
dropScheduleコマンド1405は、予約されたスケジュールを解除するコマンドである。要求パラメータとして、予約されたスケジュールを一意に識別する番号であるscheduleIdを取る。応答パラメータは、成功・失敗を示す真偽値であるbooleanである。
【0090】
<イベント転送機能>
図16を用いて、図5のイベント転送機能614について説明する。イベント転送機能614は、他の機能ブロックからの要求に応じ、メッセージを無線通信機能615に引き渡す。観測イベントのパラメータ1305をExtended Bacus−Naur Form(EBNF)記法にて記載する。
【0091】
observedイベント1501は時系列観測機能604が発行する観測イベントである。observedイベント1501は引数として、観測時刻timestampと、観測周波数samplingFrequencyと、観測値個数numberと、numberで示す値で繰り返される観測値accelerationを持つ。
【0092】
statusChangedイベント1502は観測対象の振動状態が変化したことを示す観測イベントである。statusChangedイベント1502は引数として、当該観測イベントを発行した時刻のtimestampと、状態statusを持つ。
【0093】
batteryLeftイベント1503は、電池残量管理機能618が発行する、電池残量を推測するための情報を含む観測イベントである。batteryLeftイベント1503は、引数として、イベント発行時刻timestampと、単独観測機能603が観測を行った回数observedCountを有する。
【0094】
<スケジューラ機能>
図18および図19を用いて、図5のスケジューラ機能607について説明する。
【0095】
図18は、スケジューラ機能607が管理するスケジュールテーブル606である。スケジュールテーブル606は、実行するコマンドの名称1705と、コマンドの引数1706、コマンドの実行頻度1704から構成される。スケジューラ機能607は、図15のaddScheduleコマンド1404でスケジュールを予約し、dropScheduleコマンド1405でスケジュールを予約解除する。スケジュールで登録されるコマンドの例は、たとえばscanFrequencyコマンド1401、observeコマンド1402、scanAndObserveコマンド1403である。また、図19は、スケジューラ機能607によりスケジュールされた三種類の観測計画を実行するタイミングチャートを示したものである。
【0096】
図18のスケジュール1701は、近い将来配管の破断につながる緊急性の高い配管203の異常振動をリアルタイムに検知することを目的とする。scanAndObserveコマンドは、周波数掃引機能605において観測間隔1806を決定した後、時系列観測機能604において振動を観測する。検知する振幅閾値thresholdは配管203の破断につながる大きな振幅となる。その結果、図12のCASE3およびCASE4で示したとおり、大きな振幅閾値ΔDを指定した場合、図19の観測間隔1806は大きな値を取る。また、観測頻度1803は実行頻度1704で指定したものであり、異常振動を迅速に捕捉するため、たとえば1分の高頻度で実行する。観測期間1809は引数timeLengthで指定したものであり、たとえば10秒間実行する。
【0097】
図18のスケジュール1702は、配管サポート207の寿命を予測することを目的とした検査である。検知する振幅閾値thresholdは配管サポート207の疲労にかかわる応力を与える最低の振幅となる。振幅閾値は、スケジュール1701の異常振動検知よりも小さいものとなり、その結果、図19の観測間隔1805も観測間隔1806と比較して小さな値をとる。観測頻度1802はたとえば1時間おきなど、スケジュール1701よりも少ない頻度で行う。
【0098】
図18のスケジュール1703は、配管203の減肉を予測することを目的とした検査である。検知する振幅閾値thresholdは配管203内の減肉に影響する流体の衝撃を推測する最低の振幅となる。振幅閾値thresholdは、スケジュール1701の異常振動検知やスケジュール1702の配管サポート207の寿命予測よりもさらに小さいものとなり、その結果、図19の観測間隔1804も観測間隔1806及び観測間隔1805と比較して小さな値をとる。観測頻度1801はたとえば1日おきなど、スケジュール1701、スケジュール1702よりも少ない頻度で行う。
【0099】
スケジューラ機能607を用いることにより、ひとつのセンサノード104に複数の観測パターンを設定して実行することができる。スケジューラ機能607が存在せず、観測パターンが1種類しか設定できない場合、たとえば、ある検査では1日おきに100Hzの観測を1分間行う必要があり、別の検査では1時間おきに400Hzの観測を10秒行う必要がある場合、検査観測パターンの両方を満足するために1時間おきに400Hzで1分の観測を行う必要がある。スケジューラ機能607によりこれらの観測を別々のタイミングで実行することが可能となるため、観測を1種類の観測頻度、観測期間、観測間隔で実行するよりも観測回数を削減することができ、これによりセンサノード104の電池寿命と通信帯域と、センサネットサーバ101におけるデータベースサイズとセンサネットサーバ101の処理速度を削減することができる。
【0100】
<配管・配管サポート交換時期予測方法>
図2で示したように配管継目206や配管サポート207の破壊(または異常)を予測するためには、配管系統の複数箇所にセンサノード104を設置して、配管に加わる振動の観測を定期的に行い、これにより配管系統全体の応力解析を行い、配管継目206ないし配管サポート207に加えられる応力を計算する。この応力が加えられる回数が配管継目206ないし配管サポート207の疲労限界回数を超える時点で配管継目ないし配管サポート207の破壊が生じると推測することができる。それ以前の時点で配管203の交換、配管継目206の補強、配管サポート207の交換ないし補強を行う必要がある。
【0101】
配管継目206や配管サポート207が破壊される時間は、配管継目206ないし配管サポート207に加えられる瞬間応力と、該応力が繰り返された回数の積で計算される。従来は、定期点検時に人手で測定した観測ポイントの振動から、配管系統全体の応力分布を計算し、配管継目206ないし配管サポート207に加えられる応力を算出し、該応力に対し原子力発電プラントの運転時間を乗じることにより近似的に計算していた。しかし実際は、配管系統に加えられる応力は、運転の状況に応じて変化する。
【0102】
本発明のセンサノード104によれば、図5における静止判定機能617を使用することにより配管の稼働時間が取得できる。また、時系列観測機能604を使用することにより、配管203や配管サポート207の振動を取得することができる。図17に示すとおり、本発明1602では、配管系統に加わる繰り返し応力を、原子力発電プラントの稼動中の詳細な稼働時間における応力の総和として計算することができる。従来例1601では、繰り返し応力を定期点検時に観測した瞬間応力と、プラント稼働時間との積で算出する手法である。本発明は従来例に比してより高い精度で繰り返し応力の評価ができるため、配管継目206および配管サポート207の寿命をより正確に予測することができる。
【0103】
本発明は、特に使用頻度の低い配管203の予防保全を行うのに有効となる。例えば、原子力発電プラントに配置される復水機のミニマムフロー配管では、原子炉の起動時ないし停止時の数時間のみの、復水ポンプが安定稼動を行うまでの過渡状態でのみ流体が流れ、振動が発生する。このような配管の振動を常時観測するのは、センサノード104の電源416を無駄に消費してしまう。そこで、所定の起動間隔毎に現在値Vを取得し、静止判定機能617によって観測対象の配管203に振動が加わっている稼動状態であるか否かを判定し、稼動状態であれば観測を行うようにすることで、センサノード104の消費電力を低減して電源416の消耗を抑制することができる。
【0104】
さらに、センサノード104は静止判定機能617を備えるので、正常な状態では流体が流れない配管203にセンサノード104を設置すれば、弁やポンプの故障など不測の事態により計画以外の期間で流体が流れることを検知して観測値をセンサネットサーバ101へ送信することができるのである。
【0105】
<配管肉厚推定方法>
配管漏水の原因として、前述したように流体の衝撃による配管の減肉が知られている。ある。従来、配管肉厚の観測については、定期点検時に人手で配管系統の複数箇所及び複数方向に超音波センサを設置し、超音波を配管の直径方向に発信し、その反射の応答時間を用いて配管断面における金属部分の量を計測し、それによって配管肉厚の推測を行う手法が取られていた。
【0106】
配管減肉は、流体の衝撃によるものであり、流体の衝撃は配管振動に影響する。そのため配管サポート207の破壊時期予測と同様に配管振動を計測することにより、配管減肉を予測することができる。ただし配管減肉を予測するために必要とする振幅閾値ΔDは、配管サポート207の破壊を予測するために必要な振幅閾値よりも小さな値となり、その結果、観測間隔(サンプリング周期)をより小さくする必要がある。これは具体的には、図18においてスケジューラ機能607の説明を下通り、振幅閾値が異なる複数の観測計画をスケジュールすることにより実現することができる。
【0107】
<定期検査方法>
本発明のセンサノード104およびセンサネットシステムは、センサノード104が自己判断により観測対象を観測するために必要な観測間隔を決定し、該観測間隔に合わせた観測を行う。しかしこのような自律的な観測条件の変更は、周波数掃引機能605が失敗した場合に正しい観測結果が取得できないというリスクが存在する。また、センサノード104間で観測間隔が異なり、複数のセンサノード104の観測データを使用して応力解析など全体の解析を行う場合に不都合が発生する。そのため、定期的に周波数掃引機能605を使用しない構成を可能とする。具体的には、スケジューラ機能607に対し、図15のobserveコマンド1402を発行することにより実現できる。
【0108】
<過渡状態モニタ方法>
原子炉の起動時、および停止時には、配管を流れる流体の流量が動的に変化する。配管203は定常状態では共振が派生しないように設計されているが、上記のような状況では想定外の共振が発生する可能性があるため、より詳細な観測を行う必要がある。これは具体的には、スケジューラ機能607に対し、図15のscanAncObserveコマンド1403を高頻度に実行するよう予約することにより実現できる。
【0109】
<異常時モニタ>
地震発生時等において、配管203の歪みなどによる配管の破断や漏水発生など、二次災害を防止するためには、配管系統全体の、地震発生後の振動状況の現況を把握する必要がある。従来と比較してパワースペクトルが変化した配管203を検知することができれば、障害が発生した配管203として優先的に検査あるいは使用停止し、二次災害を防止することができる。これは具体的には、図15のscanFrequencyコマンドを全てのセンサに発行し、周波数掃引機能605を使用して観測周期を収集し、センサネットサーバ101において取得した観測値が過去の観測値と比較して変化した配管203を障害が発生した配管とみなすことにより実現できる。
【0110】
<まとめ>
以上のように本発明のセンサノード104では、単独観測機能603により測定期間内の最大値と最小値を取得してから観測値を取得し、これら3つのデータを送信することで無線ネットワークの負荷を低減し、多数のセンサノード104が存在するセンサネットシステムを構築可能とする。
【0111】
そして、センサノード104は、周波数掃引機能605によって観測間隔毎にセンサ信号の最大値と最小値を取得して、最大値と最小値の値が近傍にないことから観測対象がセンサノード104のサンプリング周波数よりも高周波数で振動していることを判定できる。これにより、安価な加速度センサを用いても高周波成分の異常を検出することができる。
【0112】
さらに、観測対象がセンサノード104のサンプリング周波数よりも高周波数で振動していることを判定したときには、観測間隔を再帰的に縮小することで観測対象を監視するのに必要な観測間隔を設定することができる。これにより、観測対象の振動周波数特性に応じてサンプリング周波数を最適化することが可能となり、高精度な観測を行いながらも、データ量が過大になるのを防ぐことができる。
【0113】
つまり、センサノード104は、観測対象の振動周波数が低い場合にはサンプリング周波数を低く設定して、単位時間当たりの観測値の量(データ量)を抑制することができる。そして、観測対象の振動周波数が低い高い場合にはサンプリング周波数を高く設定して、高精度で観測を実現することが可能となる。
【0114】
また、本発明によれば、高周波成分が観測できない安価なセンサでは観測できない観測ポイントのみ、高周波成分が観測できる高価なセンサと置換することにより、安価なセンサと高価なセンサの混在する振動監視システムを構築することができ、これによりシステム導入コストを削減することができる。本発明のセンサネットシステムは、安価なセンサを設置した観測ポイントの振動周期がシステム運用中に高周期に変化した場合でも、該振動の存在を検知し、警報を発することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明を適用するセンサネットワークシステムのブロック図である。
【図2】本発明が観測対象とする配管系統の模式図である。
【図3】本発明の実施の形態のセンサネットサーバの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態のセンサノードの構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態のセンサノードの機能を示すブロック図である。
【図6】異常振動を取得する処理を説明するグラフである。
【図7】正常振動を取得する処理を説明する図である。
【図8】異常振動の観測期間を取得する処理を説明する図である。
【図9】正常振動の観測期間を取得する処理を説明する図である。
【図10】センサノードで実行される単独観測機能の処理を説明するフローチャートである。
【図11】単独観測機能の処理を説明するタイミングチャートである。
【図12】所定の測定間隔における観測対象の振動波形と、観測値と、ピークホールド値及びボトムホールド値の関係を説明するグラフである。
【図13】センサノードで行われる周波数掃引機能の処理を説明するフローチャートである。
【図14】本発明のセンサノードとセンサネットサーバ間の無線通信メッセージの構造を説明する図である。
【図15】本発明のセンサノードが受け付けるコマンドおよび応答の種類と引数の内容を示す図である。
【図16】本発明のセンサノードが発行するイベントの種類と引数の内容を示す図である。
【図17】従来例と本発明の繰り返し応力を算出する精度の違いを説明するグラフである。
【図18】スケジュールテーブルの構造を示す図である。
【図19】3種類のスケジュールを実行するセンサノードのタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0116】
101 センサネットサーバ
102 ゲートウェイ
104 センサノード
411 メモリ
413 CPU
415 無線モジュール
416 電池
417 センサ
419 ピークホールド回路
603 単独観測機能
605 周波数掃引機能
607 スケジューラ機能
616 高周波成分検知機能
617 静止判定機能
619 観測期間推定機能

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測対象の物理量を測定するセンサと、
前記センサが測定した物理量を所定の周波数でサンプリングして観測値を取得する制御部と、
前記制御部が取得した観測値を送信する無線通信部と、を備え、
前記制御部は、
観測対象の観測値の振動周波数が前記サンプリング周波数と異なることを検知する検知部と、
前記サンプリング周波数を前記観測対象の振動周波数に合わせるように変化させる調整部と、
を備えたことを特徴とするセンサノード。
【請求項2】
請求項1に記載のセンサノードであって、
前記検知部は、
前記観測対象の振動周波数を特定し、当該振動周波数と前記サンプリング周波数が異なることを判定し、
前記調整部は、前記振動周波数とサンプリング周波数が異なるときには、前記特定した振動周波数以上に前記サンプリング周波数を変更することを特徴とするセンサノード。
【請求項3】
請求項1に記載のセンサノードであって、
前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、
前記検知部は、
予め設定された観測期間毎に前記最大値および最小値を取得し、前記最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに、前記観測対象が前記サンプリング周波数よりも高周波数の振動を行っていると判定することを特徴とするセンサノード。
【請求項4】
請求項1に記載のセンサノードであって、
前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、
前記検知部は、
予め設定された観測期間毎に前記最大値および最小値を取得し、前記観測期間を予め設定された回数まで繰り返して観測期間毎の前記最大値および最小値を取得し記憶部に格納し、前記記憶部に格納された最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに前記観測対象がサンプリング周波数よりも高周波数で振動を行っていると判定することを特徴とするセンサノード。
【請求項5】
請求項1に記載のセンサノードであって、
前記検知部は、
前記観測値を予め設定された回数取得し、当該観測値の符号が逆転した回数が0よりも大きいときに、前記観測対象がサンプリング周波数よりも高周波数で振動を行っていると判定することを特徴とするセンサノード。
【請求項6】
請求項2に記載のセンサノードであって、
前記センサは加速度を測定する加速度センサで構成され、
前記検知部は、予め設定された観測期間内で、前記観測対象の振動周波数がサンプリング周波数よりも高周波数のときには、前記観測対象に衝撃が発生したと判定することにより、前記観測期間より短時間で発生して終了する衝撃を検知することを特徴とするセンサノード。
【請求項7】
請求項1に記載のセンサノードであって、
前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部と、
前記センサと制御部及び前記ピークホールド部に電力を供給する電源と、
予め設定した観測期間を通知するタイマと、をさらに備え、
前記電源は、前記観測期間の開始時にセンサ及びピークホールド部へ電力を投入し、前記観測期間の終了時に前記制御部へ電力を投入し、前記制御部が観測値とピークホールド部が保持する最大値と最小値を取得して、当該観測値と最大値及び最小値を送信した後には、前記制御部とセンサ及びピークホールド部の電源を遮断することを特徴とするセンサノード。
【請求項8】
請求項2に記載のセンサノードであって、
前記調整部は、
前記検知部が予め設定された観測期間内で前記観測対象の振動周波数が前記サンプリング周波数よりも高周波数と判定したときには、前記観測期間を再帰的に縮小することを特徴とするセンサノード。
【請求項9】
請求項2に記載のセンサノードであって、
前記検知部は、
前記観測値が所定の静止状態を示す値を示し、さらに前記観測対象の振動周波数がサンプリング周波数よりも高周波数でないと判定したときには、前記観測対象が静止していると判断することを特徴とするセンサノード。
【請求項10】
観測対象の物理量を測定するセンサを備えて、前記センサが測定した物理量を所定の周波数でサンプリングして観測値を取得し、前記観測値を送信するセンサノードを複数備え、
前記センサノードからの観測値を中継するゲートウェイと、
前記ゲートウェイから前記観測値を受信するサーバと、を備えたセンサネットワークシステムであって、
前記センサノードは、
前記センサが測定した物理量を所定の周波数でサンプリングして観測値を取得する制御部と、
前記制御部が取得した観測値を送信する無線通信部と、を備え、
前記制御部は、
観測対象の観測値の振動周波数が前記サンプリング周波数と異なることを検知する検知部と、
前記サンプリング周波数を前記観測対象の振動周波数に合わせるように変化させる調整部と、
を備えたことを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のセンサネットワークシステムであって、
前記検知部は、
前記観測対象の振動周波数を特定し、当該振動周波数と前記サンプリング周波数が異なることを判定し、
前記調整部は、前記振動周波数とサンプリング周波数が異なるときには、前記特定した振動周波数以上に前記サンプリング周波数を変更することを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項12】
請求項10に記載のセンサネットワークシステムであって、
前記センサノードは、前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、
前記検知部は、
予め設定された観測期間毎に前記最大値および最小値を取得し、前記最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに、前記観測対象が前記サンプリング周波数よりも高周波数の振動を行っていると判定することを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項13】
請求項10に記載のセンサネットワークシステムであって、
前記センサノードは、前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、
前記検知部は、
予め設定された観測期間毎に前記最大値および最小値を取得し、前記観測期間を予め設定された回数まで繰り返して観測期間毎の前記最大値および最小値を取得し記憶部に格納し、前記記憶部に格納された最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに前記観測対象がサンプリング周波数よりも高周波数で振動を行っていると判定することを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項14】
請求項10に記載のセンサネットワークシステムであって、
前記検知部は、
前記観測値を予め設定された回数取得し、当該観測値の符号が逆転した回数が0よりも大きいときに、前記観測対象がサンプリング周波数よりも高周波数で振動を行っていると判定することを特徴とするセンサネットワークシステム。
【請求項15】
観測対象の物理量を測定するセンサと、前記センサが測定した物理量を所定の周波数でサンプリングして観測値を取得する制御部と、前記制御部が取得した観測値を送信する無線通信部と、を備えたセンサノードで観測対象の振動を測定する方法であって、
観測対象の物理量の振動周波数を特定するステップと、
前記振動周波数と前記サンプリング周波数を比較して、前記振動周波数がサンプリング周波数と異なることを判定するステップと、
前記振動周波数がサンプリング周波数と異なるときには、前記サンプリング周波数を前記観測対象の振動周波数に合わせるように変化させるステップと、
を含むことを特徴とする振動測定方法。
【請求項16】
請求項15に記載の振動測定方法であって、
前記振動周波数がサンプリング周波数と異なることを判定するステップは、
前記観測対象の振動周波数を特定し、当該振動周波数と前記サンプリング周波数が異なることを判定し、
前記サンプリング周波数を前記観測対象の振動周波数に合わせるように変化させるステップは、
前記振動周波数とサンプリング周波数が異なるときには、前記特定した振動周波数以上に前記サンプリング周波数を変更することを特徴とする振動測定方法。
【請求項17】
請求項15に記載の振動測定方法であって、
前記センサノードは、前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、
前記振動周波数がサンプリング周波数と異なることを判定するステップは、
予め設定された観測期間毎に前記ピークホールド部から前記最大値および最小値を取得し、前記最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに、前記観測対象が前記サンプリング周波数よりも高周波数の振動を行っていると判定することを特徴とする振動測定方法。
【請求項18】
請求項15に記載の振動測定方法であって、
前記センサノードは、前記センサが測定した物理量の最大値と最小値を保持するピークホールド部をさらに備え、
前記振動周波数がサンプリング周波数と異なることを判定するステップは、
予め設定された観測期間毎に前記最大値および最小値を取得し、前記観測期間を予め設定された回数まで繰り返して観測期間毎の前記最大値および最小値を取得し記憶部に格納し、前記記憶部に格納された最大値と最小値の差分が予め設定された振幅よりも大きいときに前記観測対象がサンプリング周波数よりも高周波数で振動を行っていると判定することを特徴とする振動測定方法。
【請求項19】
請求項15に記載の振動測定方法であって、
前記振動周波数がサンプリング周波数と異なることを判定するステップは、
前記観測値を予め設定された回数取得し、当該観測値の符号が逆転した回数が0よりも大きいときに、前記観測対象がサンプリング周波数よりも高周波数で振動を行っていると判定することを特徴とする振動測定方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図10】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−180648(P2009−180648A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−20914(P2008−20914)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】