説明

センサ信号を較正するための方法および装置

測定センサと基準センサとを有するセンサにおいてセンサ信号を較正するための方法が、開示される。この方法は、測定センサおよび基準センサからそれぞれセンサ信号および基準信号を受け取ることを含む。この方法は、さらに、利得特性に基づいて、第1の補償信号をセンサ信号に提供することと、利得特性およびオフセット特性に基づいて、第2の補償信号を基準信号に提供することと、第1の補償信号とセンサ信号とを組み合わせ、かつ、第2の補償信号と基準信号とを組み合わせて、補償されたセンサ信号を生成することと、大きい熱係数を有する成分をセンサに結合することによって、補償された信号を温度影響に対して調節することとを含む。また、装置も、本明細書において説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、センサの較正に関し、より詳細には、センサ信号を較正するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、多くの異なる種類のセンサが存在する。多くの場合、センサは、何らかの異常な影響さもなければ望ましくない影響を除去するために調節または「調整(condition)」されなければならない出力信号を有する。特定の設計を不変的に使用するために、これらのセンサの出力信号はセンサごとにむらのないものであることが望ましい。しかしながら、センサの製造によってもたらされる差異は、センサの動作応答を変動させる。さらに、温度のような外部環境の影響もまた動作応答に影響を及ぼす。
【0003】
典型的には、センサトランスデューサ回路が、出力信号を線形化されかつ温度補償された信号に変換するのに使用される。そして、これらの線形化されかつ温度補償された信号は、オフセット較正プロセスまたはゼロ較正プロセスとして知られている較正プロセスによって、ある特定のヌルレベルに較正される。そして、オフセット較正プロセスからの出力は、スパン較正プロセスまたは利得較正プロセスと呼ばれる較正プロセスによって、ある特定のフルスケール値(full−scale value)に対して較正される。
【0004】
信号調整は、典型的には、デジタル信号プロセッサまたはアナログ信号プロセッサによって実行される。信号調整がデジタル信号プロセッサによって実行される場合、センサ出力信号は、最初に、デジタル信号に変換され、これらのデジタル信号は、アナログ形式のセンサ出力信号をデジタル表現したものである。そして、デジタル信号プロセッサは、1つまたはそれ以上の較正係数を用いて、デジタル信号を処理する。較正係数は、デジタルメモリに記憶される。そして、補正されたデジタル信号は、デジタルシステム(例えば、マイクロプロセッサ)に対する入力信号として使用されてもよい。
【0005】
アナログ信号プロセッサは、2つの大きい種類、すなわち、較正係数のデジタル記憶装置を有するものとこのデジタル記憶装置を有しないものとに分類することができる。較正係数のデジタル記憶装置を有しないアナログ信号プロセッサは、ポテンショメータまたはレーザトリム抵抗のような可変抵抗を使用することによって、センサ信号を較正する。レーザトリミングする際には、レーザが、基板から抵抗材料を削磨するのに使用され、それの抵抗値を増加させる。
【0006】
較正係数のデジタル記憶装置を備えたアナログ信号プロセッサは、デジタル−アナログ変換器(DAC)を含み、デジタル制御ポテンショメータと考えることができる。DACは、典型的には、信号が遭遇する合計抵抗を調節するようにデジタル的に経路設定された抵抗回路網からなる。したがって、一般的には、DACは、信号を較正するための可変抵抗として使用される。
【0007】
センサは、圧力が増加すれば、それに比例して次第に減少する出力利得を有する傾向がある。さらに、すべてのセンサは、温度変化に曝されたときの非再現性に加えて、ゼロがある程度だけシフトすることを有する。さらに、ある種の条件下においては、センサ出力は、温度によって線形に変化せず、二次補正項が、組み込まれなければならない。その結果として、センサは、線形誤差および二次誤差の両方を有することになる。現在の様々なセンサトランスデューサ回路は、信号オフセット(すなわち、期待信号出力からのずれ)、スパン(すなわち、信号出力のスパン)、線形化(すなわち、信号出力の線形性)、温度係数(TC)オフセット(すなわち、TCに基づいたオフセット)、および、TCスパン(すなわち、TCに基づいたスパン)に対する個々の調節を提供する。これらの回路構成は、多くの種類のセンサ信号を取り扱うことができるが、それらは、典型的には、複雑なものである。これらの回路構成の複雑さは、設計コストおよび製造コストの両方を増加させる。
【0008】
センサ信号を補償するための既存のアプローチの欠点を低コストでかつより簡単な方法で解決することが望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
検出システムが、本明細書において説明され、この検出システムは、温度および非線形性に基づいたセンサ信号の補償に取り組むものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の好ましい一実施形態においては、検出システムは、容量性センサ、基準センサ、クロック発生器、および、積分回路を含む。積分回路は、容量性センサと基準センサとに結合され、利得成分およびオフセット成分を容量性センサおよび基準センサからの出力と選択的に組み合わせて積分された出力を生成するようにクロック発生器によって制御される複数のスイッチを含む。検出システムは、また、積分された出力を受け取って、利得補償をその積分された出力と組み合わせる利得回路を含み、この利得回路は、小さい温度係数特性を有する抵抗を含み、利得回路は、式:
【0011】
Vout=Vdd×(1/β×(Cp−α×Cr)/Cp)
に基づいた出力Voutを提供し、
【0012】
ここで、
【0013】
Cpは、容量性センサからの測定された容量であり、
【0014】
Crは、基準キャパシタからの基準容量であり、
【0015】
αは、オフセット成分であり、
【0016】
βは、利得成分であり、
【0017】
Vddは、供給電圧である。
【0018】
別の好ましい実施形態においては、本発明は、測定センサと基準センサとを有するセンサにおいてセンサ信号を較正するための方法として具体化される。この方法は、測定センサおよび基準センサからそれぞれセンサ信号および基準信号を受け取ることを含む。方法は、さらに、利得特性に基づいて、第1の補償信号をセンサ信号に提供することと、利得特性およびオフセット特性に基づいて、第2の補償信号を基準信号に提供することと、第1の補償信号とセンサ信号とを組み合わせ、かつ、第2の補償信号と基準信号とを組み合わせて、補償されたセンサ信号を生成することと、大きい熱係数を有する成分をセンサに結合することによって、補償された信号を温度影響に対して調節することとを含む。
【0019】
さらに別の好ましい実施形態においては、本発明は、測定センサ信号と基準センサ信号とを含むセンサ信号を較正するための方法として具体化される。この方法は、a)測定センサ信号と基準センサ信号との電荷差を積分した第1の信号を受け取ることと、b)第1の信号に基づいて、測定センサ信号と基準センサ信号との電荷差の配列(シーケンス)を積分した第2の信号を受け取ることと、c)第2の信号と利得特性とを含むフィードバック信号を第1のステージに提供することとを含む。
【0020】
さらに別の好ましい実施形態においては、本発明は、測定センサと基準センサとを含むセンサ信号を較正するためのシステムとして具体化される。このシステムは、測定センサと基準センサとの電荷差を積分した第1の信号を生成するための第1の積分ステージ回路と、第1の信号に基づいて、測定センサ信号と基準センサ信号との電荷差の配列を積分した第2の信号を生成するための第2の積分ステージ回路とを有し、第1の積分ステージ回路は、第2の信号と利得特性とを含むフィードバック信号を受け取る。
【0021】
さらに別の実施形態においては、本発明は、測定センサ信号と基準センサ信号とを備えたセンサ信号を較正するための方法として具体化される。この方法は、a)それぞれの積分された電荷差信号が、測定センサ信号と基準センサ信号との積分された電荷差である、複数の積分された電荷差信号を生成することと、b)複数の積分された電荷差信号を積分することと、c)積分された複数の積分された電荷差信号と利得特性とを備えたフィードバック信号を提供することとを含む。
【0022】
当業者には、その他の目的、特徴、および、利点が、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、例としての実施形態を示しているが、限定するものではない例証として提供されることを理解すべきである。以下の説明の範囲内における多くの変更および修正が、以下の説明の精神から逸脱することなくなされてもよく、そして、以下の説明は、すべてのそのような変形を含むと理解されるべきである。
【0023】
本発明は、添付の図面を参照することによって、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に基づいて構成された一般的なセンサ回路の回路図である。
【図2】本発明の好ましい一実施形態に基づいて構成されたセンサ回路の回路図である。
【図3】本発明の好ましい一実施形態に基づいて構成された図2に示される回路の動作のタイミング図である。
【0025】
類似する符号は、図面を通して、類似する部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(発明の詳細な説明)
多くのセンサは、比較的一定な温度係数(TC)オフセット、TCスパン、および、非線形特性を有する。本発明の好ましい一実施形態においては、固定TCオフセット、TCスパン、および、線形性係数が、オフセットおよびスパンを調節することに結合され、それによって、新しい構成のセンサトランスデューサ回路がもたらされ、ほんの2つの変数、すなわち、それらのオフセットおよびスパンだけが、較正のために残される。これは、最終的に、ハードウェアにおけるコスト削減だけでなく、とりわけ、生産ラインにおける較正コストの削減をもたらす。
【0027】
図1は、本発明の好ましい一実施形態に基づいて構成された一般的なセンサ較正回路100を示し、図示されるように、Sensor_m108からのセンサ測定値出力は、(αM×Vref2−β×Vout)を乗算されることによって、測定値調整信号によって調節され、また、Sensor_r118からのセンサ基準出力は、(αR×Vref1−β×LIN×Vout)を乗算されることによって、基準調整信号によって調節される。ここで、
【0028】
αは、抵抗Ram1(104)、抵抗Ram2(106)、および、可変抵抗Ram102によって規定され、このαは、センサ測定値のオフセット係数である。
【0029】
αは、抵抗Rar1(114)、抵抗Rar2(116)、および、可変抵抗Rar112によって規定され、このαは、センサ基準測定値のオフセット係数である。
【0030】
Vref1(150)は、基準電圧1である。
【0031】
Vref2(152)は、通常、Vref1(150)に等しい。
【0032】
Vref3(154)は、通常、Vref1(150)またはグラウンドに等しい。
【0033】
Vref4(156)は、通常、Vref2(152)またはグラウンドに等しい。
【0034】
βは、抵抗Rbeta1(122)、抵抗Rbeta2(124)、Rlin126、可変抵抗Rbeta128、および、可変抵抗Rlin_ex130によって規定され、このβは、利得係数である。
【0035】
LINは、抵抗Rbeta2(124)、抵抗Rlin126、および、可変抵抗Rlin_ex130によって規定される。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態においては、可変抵抗Rlin_ex130は、随意的なものであり、線形性(‘LIN’)係数のより精度の高い較正が望ましい場合に使用されてもよい。さらに、可変抵抗Ram102、可変抵抗Rar112、可変抵抗Rbeta128、および、可変抵抗Rlin_ex130は、レーザトリム抵抗である。Vref1(150)は、電源電圧の電圧であり、また、Vref2(152)、Vref3(154)、および、Vref4(156)の電圧である。Vref158は、信号調整器の基準電圧である。本発明の好ましい一実施形態として図2に示される実施形態においては、Vref158の等価基準電圧は、供給電圧の0.2倍に設定される(すなわち、Vsupplyが5Vであれば、Vref158は1Vに設定される)。
【0037】
信号調整器110は、Sensor_m108およびSensor_r118の両方の調節された出力を受け取り、かつ、可変抵抗RT120を介して、基準電圧Vref158を受け取る。信号調整器110は、出力Vout160を提供する。多くの利用形態においては、αは、1.0に設定されてもよく、したがって、本発明の好ましい一実施形態においては、抵抗Ram1(104)、抵抗Ram2(106)、および、可変抵抗Ram102は、除去されてもよく、オフセットは、α係数によって較正される。このことは、製造される製品にこれらの抵抗を含める必要性を減少させ、それに加えて、抵抗を形成しかつ可変抵抗(すなわち、可変抵抗Ram102)を調節(トリミング)するのに必要なプロセスステップを減少させる。
【0038】
回路の利得は、β係数によって較正される。可変抵抗Rbeta128は、グラウンドまたは出力電圧Vout160のいずれかに結合されてもよい。可変抵抗Rbeta128が、図面に示されるように、グラウンドに接続されるならば、可変抵抗Rbeta128の抵抗値を増加させることは、利得を減少させる。可変抵抗Rbeta128が、Voutに接続されるならば、可変抵抗Rbeta128の抵抗値を増加させることは、利得を増加させる。
【0039】
「利得」は、本明細書において使用される場合、回路に言及するものであり、かつ、出力のスパンを調節するのに使用されることに注意されたい。典型的には、「スパン」は、出力信号に関連して使用され、より詳細には、センサ信号の出力を表現するのに使用される。利得は、典型的には、回路において、信号が調節される率を表現するのに使用される。具体的には、圧力センサのスパンは、センサによって検出可能な圧力範囲(例えば、7〜105kPA)である。本発明の好ましい一実施形態においては、「ヌル」値が、回路のゼロ点調節(α)によって設定されてもよく(例えば、ヌル値は、7kPAに設定されてもよい)、圧力範囲は、利得調節(1/β)によって設定されてもよい。したがって、利得は、センサのスパンを設定するための回路パラメータである。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態においては、線形性補正は、βを乗算される。多くのセンサの要求される線形性補正は、β・LINに関連している。そのようなセンサのために、LIN係数は、固定値に設定されてもよく、利得較正プロセス中、β係数を変更した後にLIN係数を較正する理由はない。もしそうでなければ、LIN係数は、利得と互いに影響し合うので、これにより、較正手順は相当に簡略化される。
【0041】
ここで、本発明の温度補償に関する態様を説明する。温度を変化させることによって発生する2つの主たる誤差が存在する。すなわち、センサおよび関連する電子部品のオフセットの変化、および、センサおよび関連する電子部品の感度の変化である。本出願において使用される場合、TCZ係数は、温度変化によるオフセット変化を補償するのに使用される係数であるように定義される。同様に、温度変化による感度変化を補償するための係数は、ここでは、TCS係数として定義される。
【0042】
本発明の好ましい一実施形態においては、図1に示される可変抵抗RT120は、大きいTC係数を備えた抵抗である。しかしながら、抵抗が、VTピン162を装荷するならば、このVTピン162から入力する信号は、温度に依存したものとなる。このことは、温度補償の様々な方法を提供する。本発明の好ましい一実施形態においては、図1に示される一般的な回路100においてTCZ補償を実現するための2つのアプローチが存在する。すなわち、
【0043】
1)Rar1(114)+Rar2(116)と可変抵抗Rar112との間のTC不整合を選択することにより、あるいは、
【0044】
2)VTピン162と基準電圧との間に抵抗を接続することによるアプローチである。
【0045】
さらにまた、図1に示される一般的な回路100においてTCS補償を実現するための2つのアプローチが存在する。すなわち、
【0046】
1)Rbeta1(122)+Rbeta2(124)とRbeta128との間のTC不整合を選択することにより、
【0047】
2)VTピン162とVout160との間に抵抗を接続することによるアプローチである。
【0048】
好ましくは、上述のTC補償アプローチを組み合わせたものが選択される。きわめて特殊な利用形態のために、温度依存線形性補正を得るために、LIN入力を温度依存回路網に接続することも可能である(抵抗Rlin_ex130だけと比較して)。
【0049】
図2は、本発明の好ましい一実施形態に基づいて構成されたセンサ回路200を示し、このセンサ回路200は、レーザトリム抵抗のようなオフチップ可変抵抗RarおよびRbeta(図示しない)を備えた集積回路として実施されてもよい。センサ回路200は、また、集積化された圧力依存キャパシタ(Cp)232および基準キャパシタ(Cr)234を含む。集積化された圧力依存キャパシタCp232は、図1に示される測定センサであるSensor_m108の好ましい実施形態であり、基準キャパシタ(Cr)234は、図1に示される基準センサであるSensor_r118の好ましい実施形態である。
【0050】
本発明の好ましい一実施形態においては、図1に示される抵抗Rar1(114)、Rar2(116)、Rbeta1(122)、Rbeta2(124)、および、Rlin126は、ここでは、センサ回路200において、オンチップポリシリコン抵抗Rar1(214)、Rar2(216)、Rbeta1(222)、Rbeta2(224)、および、Rlin226として実現され、そのようなものとして、これらの抵抗は比較的小さいTC(約750ppm/K)を有する。また、必要であれば、beta入力256およびlin入力258が、それぞれ、βおよびLINを調節するために提供される。
【0051】
第1の演算増幅器(OP1)210の周囲に存在する回路は、スイッチドキャパシタ利得ステージである。図3は、スイッチシーケンス論理のタイミングシーケンスを示す。本発明の好ましい一実施形態においては、タイミングシーケンスは、センサ回路200が利得ステージ(第2のステージ282)の符号だけでなく積分ステージ(第1のステージ280)の符号も交番させることを示しており、オフセット、クロックフィードスルーによって発生するオフセット、低周波数ノイズ、電子部品の長期ドリフト、などのような多くの非理想的な影響をキャンセルする。一般的には、2つのクロックフェーズ、すなわち、ph1およびph2が存在する。フェーズph1中、リセットスイッチSrst270は閉じられる。本発明の好ましい一実施形態においては、フェーズph2中、Cp232およびCr234からの電荷が、C1(236)へ転送される。この電荷は、次の式に等しい。
【0052】
ΔQ=Cr・(β・LIN・Vout−α・Vdd)+Cp(α・vdd−β・Vout)
【0053】
この電荷がゼロに等しくなければ、OP1(210)の出力において電圧ステップを発生させる。図2に示されるセンサ回路200の第2のステージ282は、スイッチドキャパシタ積分器であり、これは、第1のステージ280の電圧ステップを積分する。これらの電圧ステップがゼロに等しいならば、回路は、いわゆる「電荷平衡(charge balance)」状態にある(すなわち、ΔQ=0)。この場合、
【0054】
Cr・(β・LIN・Vout−α・Vdd)+Cp(α・vdd−β・Vout)=0
【0055】
したがって、
【0056】
Vout=Vdd・(α・Cp−α・Cr)/(β・Cp−β・LIN・Cr)
【0057】
α=1かつLIN=0であれば、
【0058】
Vout/Vdd=1/β・(Cp−α・Cr)/Cp
【0059】
これは、オフセット調節(α)および利得調節(1/β)を備えた一般的に使用される式(Cp−Cr)/Cpである。
【0060】
重なり合わないスイッチングエッジ(すなわち、タイミング図におけるそれぞれのチックマーク(tick mark)間の間隔)は、幅が約50ナノ秒(ns)であり、4つのフェーズph1N、ph2N、ph1P、および、ph2Pは、それぞれ、約2.5マイクロ秒(μs)である。タイミング図における論理「HIGH」は、スイッチ制御信号がスイッチを閉じることを意味している。例えば、フェーズph1N中、スイッチ信号sp2、srst、および、s22rは、HIGHであり、そのために、スイッチSP2(286)、SR2(288)、Srst270、および、S22r(294)は、閉じられている。
【0061】
第1のステージ280は、フェーズph1Nおよびフェーズph1P中にスイッチSrst270が閉じているときにリセットされている積分器ステージであり、その期間、電圧Vop1(ph1N)は、Voff1に等しく、これは、(VR10+OP1(210)のオフセット電圧)である。電圧Vop1は、フェーズph1P中、不変であり、そのために、Vop1(ph1P)は、Vop1(ph1N)に等しい。
【0062】
フェーズph2N中、リセットスイッチSrst270が開かれ、ノード「ncp」は、β・VoutからVddにスイッチングされ、ノード「ncr」は、α・Vddからβ・LIN・Voutにスイッチングされる。これは、電圧Vop1を次式に等しくする。
【0063】
Vop1(ph2N)=Cp/C1・(+β・Vout−Vdd)+Cr/C1・(+αR・Vdd−β・LIN・Vout)+Voff1
【0064】
フェーズph2P中、リセットスイッチSrst270が開かれ、ノード「ncp」は、Vddからβ・Voutにスイッチングされ、ノード「ncr」は、β・LIN・VoutからαR・Vddにスイッチングされる。これは、電圧Vop1を次式に等しくする。
【0065】
Vop1(ph2P)=Cp/C1・(−β・Vout+Vdd)+Cr/C1・(−αR・Vdd+β・LIN・Vout)+Voff1
【0066】
フェーズph1Nの開始時点において、スイッチS22r(294)が開かれ、その後、S22i(292)が閉じられる。これは、Vout250において、C2i/Cint2・(VT_trim−VR10)であるステップを発生させる。VT_trimピン252への負荷が存在しなければ、VT_trimからVR10を減算した値は、OP2(220)のオフセット電圧に等しい。VT_trimとグラウンド(または、Vdd)との間に抵抗を接続することは、システムのオフセット(ゼロ)調節にTC影響をもたらし(TCオフセット補償)、VT_trimとVoutとの間に抵抗を接続することは、システムのスパンにTC影響をもたらす(TCスパン補償)。
【0067】
スイッチS22iが閉じられた直後、フェーズph1Nの開始時点において、スイッチSrst270は、まだ、閉じられており、Vop1(ph2P)とVop1(ph1N)との差は、第2のステージ282によって積分される。フェーズph2N中、スイッチS22i(292)は、閉じられたままであり、ここで、Vop1(ph1N)とVop1(ph2N)との差が積分される。全体として、スイッチS22i(292)が閉じられた時点におけるVop1値であるVop1(ph2P)とスイッチS22i(292)が開かれた時点におけるVop1値であるVop1(ph2N)との差が積分される。したがって、Voutにおける電圧変化は、次式となる。
【0068】
ΔVout=C2i/Cint2・(Vop1(ph2N)−Vop1(ph2P))
【0069】
=2・C2i/Cint2・(Cp/C1・(+β・Vout−Vdd)+Cr/C1・(+αR・Vdd−β・LIN・Vout))
【0070】
Voff1項がキャンセルされ、このことは、回路が、オフセット電圧、OP1(210)の低周波数ノイズ、ドリフト、などに感応しないことを意味することに注意されたい。Voutがターゲット値に等しいならば、Vop1における電圧ステップは、ゼロとなる。そのために、実際には、Vop1は、誤差信号であり、また、OP1(210)が比較的小さい利得を有するならば、誤差信号は少し小さすぎるものとなる。したがって、限られたOP1(210)利得の影響は、Voutのセトリング(settling)がいくぶん遅くなることだけである。本発明の好ましい一実施形態においては、簡単な単一ステージ演算増幅器が、OP1(210)を実施する要件を満たす。さらに、ΔVout=0であるとき、上述の式は、ΔQ=0であるときのその他の式と同じ結果を有する。そのために、回路がセトリングしてしまえば、これはΔVout=0である場合であるが、上述の式は、書き換えられてもよい。
【0071】
(Cp+Cr)/C1およびC2i/Cint2は、積分器定数である(Cpは、定数ではなく、圧力に依存するものであるが)。本発明の好ましい一実施形態においては、Cp232とCr234との組み合わせられた値は、C1(236)よりも小さく、C2i(230)の値は、Cint2(238)の15%よりも小さい。これは、Vout250において、大きすぎる電圧ステップを回避することができ、ノイズのような誤差影響の良好な平均化を提供する。
【0072】
本発明の好ましい一実施形態においては、Voutは約1Vから開始し、そして、それのターゲット値にセトリングする。Voutがターゲット値により近づくとき、Vop1の大きさは、その値が減少することに注意されたい。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態においては、0.2・Vddである内部基準電圧が、一対の抵抗Rref1(240)およびRref2(242)を用いて生成される。この基準電圧は、Vref158の基準電圧である。本発明の好ましい一実施形態においては、抵抗RT228は、P型ウェル(または、N型ウェル)層にCMOSプロセスを用いて形成される。このようにして形成された抵抗は、典型的には、比較的大きいTC値を有し、抵抗は、温度変化によって大きい影響を受ける。VTピンにおける負荷を備えないならば、この抵抗は、影響を有することはない。しかしながら、比較的小さいTCを有するオフチップ抵抗が、VTピンに結合されるならば、そのオフチップ抵抗は、図1に関して上で説明したように、TC特性に影響を与える。
【0074】
図2を再び参照すると、センサおよび電子部品の典型的な特性に関する値が、示される。ヌルスケール圧力P(0)は7kPaであり、フルスケール圧力P(1)は110kPaである。較正されたシステムは、温度変化に感応してはならず、かつ、Voutは、圧力に線形に比例しなければならない。したがって、Vout(P=7kPa)=0.24Vであり、かつ、Vout(P=110kPa)=4.667Vである。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態においては、「スタンドアロン」チップは、オフチップレーザトリム抵抗Rar112およびRbeta128を備えない回路である。α、β、および、LINのオンチップ定数は、検出素子特性のあらゆる種類の許容誤差が、オフチップRar112およびRbeta128の実際の値によって較正され得るような形で、選択される。「(トリミングされない)設計ターゲット」として図2に列挙された数値は、Rar112およびRbeta128が無限大である場合のいくつかの主たるパラメータを示す。「(トリミングされた)設計ターゲット」として、αおよびβが本発明の好ましい一実施形態に基づいてレーザトリム抵抗によって較正された後のパラメータが示される。
【0076】
「トリミングされない」システムおよび「トリミングされた」システムの両方は、一定の線形性を有すること、それと同時に、LIN係数は、まったく変化しないこと(例えば、LIN=0.07)に注意されたい。このことは、本発明に基づいて構成された回路のきわめて重要な特性である。
【0077】
較正された後の回路の性能は、複雑で高性能の圧力システムの性能にたやすく匹敵することが可能である。しかしながら、この結果は、本発明に基づいて構成された簡単な低コストのシステムによって実現される。
【0078】
これまでに説明された実施形態は、例としての実施形態である。ここで、当業者は、本明細書において開示された発明の概念から逸脱することなく、上述した実施形態を様々に利用し、また、様々に発展させてもよい。当業者は、これらの実施形態への様々な変更を容易に考えだすことができ、そして、本明細書において規定された基本的原理は、本明細書において説明された新規の態様の精神または範囲から逸脱することなく、その他の実施形態に適用されてもよい。したがって、本発明の範囲は、本明細書において示された実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書において開示された原理および新しい特徴に合致する最も広い範囲を与えられるべきである。「例としての」という用語は、本明細書においては、「例、実例、または、例証として役に立つ」ことを意味するのに使用される。「例としての」として本明細書において説明された実施形態は、必ずしも、その他の実施形態と比較して最も好ましいまたは最も有利であると解釈されるべきではない。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定センサおよび基準センサを有するセンサにおいてセンサ信号を較正するための方法であって、
前記測定センサおよび前記基準センサからそれぞれセンサ信号および基準信号を受け取ることと、
利得特性に基づいて、第1の補償信号を前記センサ信号に提供することと、
前記利得特性およびオフセット特性に基づいて、第2の補償信号を前記基準信号に提供することと、
前記第1の補償信号と前記センサ信号とを組み合わせ、かつ、前記第2の補償信号と前記基準信号とを組み合わせて、補償されたセンサ信号を生成することと、
大きい熱係数を有する成分を前記センサに結合することによって、前記補償された信号を温度影響に対して調節することと、
を備えた方法。
【請求項2】
前記第2の補償信号を前記基準信号に提供することが、さらに、線形性特性に基づくものである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の補償信号と前記センサ信号とを組み合わせ、かつ、前記第2の補償信号と前記基準信号とを組み合わせて前記補償されたセンサ信号を生成することが、温度特性を前記補償されたセンサ信号と組み合わせることをさらに備えた請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記補償されたセンサ信号に基づいて、前記利得特性を調節することをさらに備えた請求項1に記載の方法。
【請求項5】
温度影響を補償するためのフィードバック信号として、前記補償された信号を使用することをさらに備えた請求項1に記載の方法。
【請求項6】
検出システムであって、
容量性センサと、
基準センサと、
クロック発生器と、
前記容量性センサと前記基準センサとに結合された積分回路であり、前記積分回路が、利得成分およびオフセット成分を前記容量性センサおよび前記基準センサからの出力と選択的に組み合わせて積分された出力を生成するように前記クロック発生器によって制御される複数のスイッチを備えた、前記積分回路と、
前記積分された出力を受け取って、利得補償を前記積分された出力と組み合わせる利得回路であり、前記利得回路が、小さい温度係数特性を有する抵抗を含む、前記利得回路と、
を備え、
前記利得回路が、式:

Vout=Vdd×(1/β×(Cp−α×Cr)/Cp)

に基づいた出力Voutを提供し、ここで、
Cpは、前記容量性センサからの測定された容量であり、
Crは、前記基準キャパシタからの基準容量であり、
αは、前記オフセット成分であり、
βは、前記利得成分であり、
Vddは、供給電圧である、
検出システム。
【請求項7】
前記利得回路が、前記利得回路に結合された小さい温度係数を有する成分をさらに含む請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項8】
前記積分回路と前記利得回路との間に結合されたキャパシタをさらに備えた請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項9】
前記積分回路が、さらに、線形性成分を前記容量性センサおよび前記基準センサからの出力と組み合わせる請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項10】
前記積分回路が、前記利得成分および前記オフセット成分を前記供給電圧Vddから選択的に減算して、前記積分された出力を生成する請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項11】
前記利得回路が、温度を補償するための入力をさらに含む請求項6に記載のセンサシステム。
【請求項12】
測定センサ信号および基準センサ信号とを備えたセンサ信号を較正するための方法であって、
a)前記測定センサ信号と前記基準センサ信号との電荷差を積分した第1の信号を受け取ることと、
b)前記第1の信号に基づいて、前記測定センサ信号と前記基準センサ信号との電荷差の配列を積分した第2の信号を受け取ることと、
c)前記第2の信号と利得特性とを含む前記フィードバック信号を前記第1のステージに提供することと、
を備えた方法。
【請求項13】
オフセット特性を前記第1のステージに導入することをさらに備えた請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記フィードバック信号が、線形性特性をさらに備えた請求項12に記載の方法。
【請求項15】
温度補償を前記第2のステージに導入することをさらに備えた請求項12に記載の方法。
【請求項16】
測定センサおよび基準センサを備えたセンサ信号を較正するためのシステムであって、
前記測定センサと前記基準センサとの電荷差を積分した第1の信号を生成するための第1の積分ステージ回路と、
前記第1の信号に基づいて、前記測定センサ信号と前記基準センサ信号との電荷差の配列を積分した第2の信号を生成するための第2の積分ステージ回路と、
を備え、
前記第1の積分ステージ回路が、前記第2の信号と利得特性とを備えたフィードバック信号を受け取る、
システム。
【請求項17】
前記第1の積分ステージ回路が、オフセット特性を備えた請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記フィードバック信号が、線形性特性をさらに備えた請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2の積分ステージ回路が、温度依存要素をさらに含む請求項16に記載のシステム。
【請求項20】
前記温度依存要素が、大きい熱係数成分である請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
測定センサ信号と基準センサ信号とを備えたセンサ信号を較正するための方法であって、
a)それぞれの積分された電荷差信号が、前記測定センサ信号と前記基準センサ信号との積分された電荷差である、複数の前記積分された電荷差信号を生成することと、
b)前記複数の積分された電荷差信号を積分することと、
c)前記積分された複数の積分された電荷差信号と利得特性とを備えたフィードバック信号を提供することと、
を備えた方法。
【請求項22】
前記複数の積分された電荷差信号が、オフセット特性を備える請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記フィードバック信号が、線形性特性をさらに備えた請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記複数の積分された電荷差信号を積分することが、温度補償信号を積分することを備えた請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記温度補償信号を積分することが、前記測定センサ信号に対する温度影響を検出することを備えた請求項24に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529433(P2010−529433A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510471(P2010−510471)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/065006
【国際公開番号】WO2008/150813
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(507296861)カスタム センサーズ アンド テクノロジーズ インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】