説明

センサ装置及び光電センサ装置

【課題】外部環境の変化等によって検出値が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定できるセンサ装置を提供する。
【解決手段】受光部12が検出領域の受光量を検出し、判定部14は、その受光量が閾値以下になると検出領域に検出対象物体が存在すると判定する。電源投入検出部16がセンサ装置10の電源投入を検出すると、閾値設定部18がそのときの受光量に基づいて新たな閾値を算出して更新する。閾値が更新されると、判定部14は更新された閾値を用いて、検出対象物体の存在有無を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電センサ等のセンサ装置に関し、より詳しくは検出した物理量と閾値と比較し、比較結果に基づく動作を行うセンサ装置及び光電センサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサ装置の一種として従来用いられている光電センサでは、検出対象物体に投光した光を受光して、この受光量(検出した物理量)を閾値と比較することにより、検出対象物体の存在有無を検出する判定動作を行う。上述した光電センサの閾値設定方法は様々な手法が知られているが、一般的に、光電センサに設けられた所定のボタンの操作若しくは光電センサに対する所定の入力信号をトリガとして、全受光時の受光量に対して所定の係数を乗じた値、即ち全受光量に対して所定の割合となる値に、オフセットを加えて閾値を算出するオードチューニングが用いられている。しかしながら、このような光電センサにおいて、全受光量は常に一定ではなく、温度変化等の周囲の状況又は光源の劣化等により変動する。これにより、オートチューニング後にこれらの状況が変化した場合には、全受光量に対する閾値の割合がオートチューニング時から変化してしまう。従来は、オートチューニングのトリガとなる操作入力を定期的に実施するか、又は一定周期で自動的にオートチューニングを実施しなおすことによって閾値の再設定を行い、安定した検出を行うことが求められていた。
【0003】
そこで、例えば特許文献1の検出センサは、オートチューニング時に受光量に基づいて上下に第1及び第2の仮閾値を設定しておき、検出動作時に受光量が変化した方向の仮閾値を閾値として選択する。これにより、オートチューニング時と検出時とで状況が変化しても、変化後の全受光量に適した閾値を設定することができる。
また、特許文献2の光電センサは、周期的に取得される受光量列から移動平均値を求め、これにオフセット係数を乗じて閾値を算出する。これにより、受光量が変化しても、安定した検出を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−221623号公報
【特許文献2】特開2003−87107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のセンサ装置は以上のように構成されているので、オートチューニングはボタン操作若しくは入力信号をトリガとして実施されるか、又は一定周期で実施されているが、このタイミングはユーザ側の設計に依存するため、必ずしも安定検出に十分な頻度で実施されていないか、あるいは全く実施されていないという課題があった。
【0006】
また、特許文献1の検出センサの場合、段階的にしか閾値を切り替えられないために、適切な閾値を選択できるとは限らず、特許文献2の光電センサの場合、移動平均値にオフセット係数を乗じて閾値としているために、受光量の急変が生じたときに追従しきれないという課題があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、外部環境の変化等によって検出値が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定できるセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係るセンサ装置は、検出対象の物理量を第一の物理量として検出する第一の検出部と、第一の物理量に関する閾値を記憶する閾値記憶部と、第一の物理量と閾値とを比較して、大小関係を判定する判定部と、本センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、電源投入検出部が電源投入を検出した場合に、第一の物理量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させる閾値設定部とを備えるものである。
【0009】
請求項2の発明に係るセンサ装置は、検出対象の物理量を第一の物理量として検出する第一の検出部と、第一の物理量に関する閾値を記憶する閾値記憶部と、第一の物理量と閾値とを比較して、大小関係を判定する判定部と、第一の検出部とは異なる物理量を第二の物理量として検出する第二の検出部と、第二の検出部が検出する第二の物理量が所定条件を満たす場合に、第一の物理量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させる閾値設定部とを備えるものである。
【0010】
請求項3の発明に係るセンサ装置は、検出対象の物理量を第一の物理量として検出する第一の検出部と、第一の物理量に関する閾値を記憶する閾値記憶部と、第一の物理量と閾値とを比較して、大小関係を判定する判定部と、第一の検出部とは異なる物理量を第二の物理量として検出する第二の検出部と、本センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、第二の検出部が検出する第二の物理量が所定条件を満たしたとき、又は電源投入検出部が電源投入を検出したときの少なくともどちらか一方の場合に、第一の物理量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させる閾値設定部とを備えるものである。
【0011】
請求項4の発明に係るセンサ装置は、第一の検出部を、受光量を検出する受光素子としたものである。
【0012】
請求項5の発明に係るセンサ装置は、第二の検出部を第一の検出部の温度を検出する温度検出部とし、閾値設定部を第二の検出部によって検出された第一の検出部の温度変化が所定変化量以上の場合にのみ、新たな閾値を閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させるようにしたものである。
【0013】
請求項6の発明に係るセンサ装置は、閾値設定部が外部からの指示に従って、第二の検出部の出力を用いて判断する閾値更新動作及び電源投入検出部の出力を用いて判断する閾値更新動作をそれぞれ独立して有効又は無効にするものである。
【0014】
請求項7の発明に係るセンサ装置は、閾値設定部が、新たな閾値と、閾値記憶部に記憶されている閾値との差が、予め設定された所定の許容範囲内である場合にのみ、新たな閾値を閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させるようにしたものである。
【0015】
請求項8の発明に係る光電センサ装置は、投光量を記憶する投光量記憶部と、投光量記憶部に記憶された投光量で、検出対象に投光する投光素子と、検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、電源投入検出部が電源投入を検出した場合に、新たな投光量を算出し、当該新たな投光量を投光量記憶部に記憶させる投光量設定部とを備えるものである。
【0016】
請求項9の発明に係る光電センサ装置は、投光量を記憶する投光量記憶部と、投光量記憶部に記憶された投光量で、検出対象に投光する投光素子と、検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、受光素子の温度を検出する温度検出部と、温度検出部によって検出された受光素子の温度変化が所定変化量以上の場合に、新たな投光量を算出し、当該新たな投光量を投光量記憶部に記憶させる投光量設定部とを備えるものである。
【0017】
請求項10の発明に係る光電センサ装置は、投光量を記憶する投光量記憶部と、投光量記憶部に記憶された投光量で、検出対象に投光する投光素子と、検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、受光素子の温度を検出する温度検出部と、電源投入検出部が電源投入を検出したとき、又は温度検出部によって検出された受光素子の温度変化が所定変化量以上になったときの少なくともどちらか一方の場合に、新たな投光量を算出し、当該新たな投光量を投光量記憶部に記憶させる投光量設定部とを備えるものである。
【0018】
請求項11の発明に係る光電センサ装置は、検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、受光量のゲインを記憶するゲイン記憶部と、ゲイン記憶部に記憶されたゲインで、受光素子によって検出された受光量を調整するゲイン調整部と、本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、電源投入検出部が電源投入を検出した場合に、新たなゲインを算出し、当該新たなゲインをゲイン記憶部に記憶させるゲイン設定部とを備えるものである。
【0019】
請求項12の発明に係る光電センサ装置は、検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、受光量のゲインを記憶するゲイン記憶部と、ゲイン記憶部に記憶されたゲインで、受光素子によって検出された受光量を調整するゲイン調整部と、受光素子の温度を検出する温度検出部と、温度検出部によって検出された受光素子の温度変化が所定変化量以上の場合に、新たなゲインを算出し、当該新たなゲインをゲイン記憶部に記憶させるゲイン設定部とを備えるものである。
【0020】
請求項13の発明に係る光電センサ装置は、検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、受光量のゲインを記憶するゲイン記憶部と、ゲイン記憶部に記憶されたゲインで、受光素子によって検出された受光量を調整するゲイン調整部と、本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、受光素子の温度を検出する温度検出部と、電源投入検出部が電源投入を検出したとき、又は温度検出部によって検出された受光素子の温度変化が所定変化量以上になったときの少なくともどちらか一方の場合に、新たなゲインを算出し、当該新たなゲインをゲイン記憶部に記憶させるゲイン設定部とを備えるものである。
【発明の効果】
【0021】
請求項1から請求項3の発明によれば、第二の検出部又は電源投入検出部の出力が条件を満たす場合に、閾値を第一の物理量に基づく値に更新するようにしたので、外部環境の変化等によって第一の物理量が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定するセンサ装置を提供することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、第一の検出部が受光量を検出するようにして、センサ装置を光電センサとして用いるようにしたので、外部環境の変化等によって全受光量(投光を遮る検出対象物体が存在しない場合の受光量)が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、第一の検出部の温度が所定変化量以上の場合に、閾値を第一の物理量に基づく値に更新するようにしたので、温度変化によって第一の物理量が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定することができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、外部からの指示に従って、第二の検出部の出力を用いて判断する閾値更新動作及び電源投入検出部の出力を用いて判断する閾値更新動作をそれぞれ独立して有効又は無効にするようにしたので、必要に応じた条件のもとで閾値を更新させることができ、ユーザは閾値更新タイミングを調整することができる。
【0025】
請求項7の発明によれば、新たな閾値と、閾値記憶部に記憶されている閾値との差が、所定の許容範囲内である場合にのみ閾値を更新するようにしたので、閾値が異常値に更新されることを防ぎ、安定した検出を行うことができる。
【0026】
請求項8から請求項10の発明によれば、電源投入検出部又は温度検出部の出力が条件を満たす場合に、投光素子の投光量を更新するようにしたので、外部環境等によって受光素子の受光量が変動した場合であっても、適切な投光量を自動で設定する光電センサ装置を提供することができる。
【0027】
請求項11から請求項13の発明によれば、電源投入検出部又は温度検出部の出力が条件を満たす場合に、受光量調整のためのゲインを更新するようにしたので、外部環境等によって受光素子の受光量が変動した場合であっても、適切なゲインを自動で設定する光電センサ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明の実施の形態1に係るセンサ装置10の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示すセンサ装置10の各部の出力値を示すグラフであり、図2(a)は電源投入検出部16の出力値、図2(b)は受光部12の受光量、図2(c)は閾値設定部18が算出する閾値である。
【図3】この発明の実施の形態2に係るセンサ装置10の構成を示すブロック図である。
【図4】図3に示すセンサ装置10の各部の出力値を示すグラフであり、図4(a)は温度検出部19が検出する受光部12の温度、図4(b)は受光部12の受光量、図4(c)は閾値設定部18が算出する閾値である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るセンサ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すセンサ装置10は、光電センサであり、検出対象物体のある検出領域に光を投光する投光部11と、検出領域を通過した光を受光し、受光量に応じた電気的出力を行う受光部(第一の検出部)12と、受光部12の電気的出力(受光量、即ち第一の物理量)と比較するための閾値を保持しておく閾値記憶部13と、その閾値を用いて検出対象物体の存在有無を判定する判定部14と、判定結果を出力する出力部15と、センサ装置10の電源投入を検出する電源投入検出部16と、閾値更新のための更新条件を保持しておく更新条件記憶部17と、電源投入検出部16の出力がその更新条件を満たす場合に閾値を更新する閾値設定部18とを備える。なお、図1ではセンサ装置10内部に投光部11と受光部12があるが、投光部11若しくは受光部12のどちらか一方、又は、投光部11と受光部12を一体若しくは別体で、センサ装置10外部に備えるように構成してもよい。
【0030】
投光部11と受光部12とは、検出領域を間に挟んで対向するように配置される。投光部11から投光された光は検出領域を通過して、受光部12で受光される。受光部12は、受光量を判定部14へ出力すると共に、閾値設定部18へ出力する。
【0031】
判定部14は、検出領域に検出対象物体が存在するか否かを判定するために、受光部12から入力した受光量と閾値記憶部13に保持されている閾値とを比較する。閾値の詳細は後述する。判定部14は、閾値より受光量が大きい場合には、検出領域を通過する光が検出対象物体に遮蔽されていないと判断して、検出対象物体が存在しないと判定する。他方、閾値より受光量が小さい場合には、判定部14は、検出領域を通過する光が検出対象物体に遮蔽されていると判断して、検出対象物体が存在すると判定する。判定部14は、判定結果を出力部15へ出力する。
【0032】
出力部15は、判定結果を外部へ出力する。なお、出力部15は単純に検出対象物体の存在有無を出力するだけでなく、例えばスイッチとして機能するように構成して、検出対象物体の存在有無に応じてオン/オフ出力を切り替えるようにしてもよい。
【0033】
電源投入検出部16は、センサ装置10の不図示の電源部の電源投入を検出する。ここで、電源投入検出部16を、不図示の電源部からセンサ装置10のうち投光部11、受光部12など電源投入検出部16以外の構成とは独立して常時電力供給を受けるよう構成し、当該電源投入検出部16以外の構成に対する電力供給の有無、即ち電源投入を常時監視して検出するよう構成してもよいし、あるいは、電源投入検出部16は、これ以外の構成の一部又は全部に対して電力供給が開始されると同時に不図示の電源部から電力供給を受け、電力供給が停止すると同時に電源投入検出部16への電源供給が停止されるよう構成することによって、電源投入検出部16自体の電力供給状態に基づき電源投入を検出できるようにしてもよい。また、センサ装置10にCPU(Central Processing Unit)が搭載されているのであれば、電源投入の検出にCPUのイニシャライズ信号を利用してもよい。電源投入検出部16は、電源投入を検出すると、その情報を閾値設定部18へ出力する。
【0034】
受光量は検出対象物体の存在有無によって変動する他に、外部環境の変化等によっても変動する。
例えば、電源切断後にセンサ装置10の設置場所を変える等して検出対象物体と投光部11及び受光部12との距離が変わると受光量も変わるため、電源投入後に前回の閾値を使用すると正確に検出が行えなくなる。
そのため、このような外部環境の変化に応じた受光量の変動に対して、適切なタイミングでオートチューニングを行い、閾値を再設定する必要がある。そこで、本実施の形態1では、センサ装置10の電源投入をトリガとし、自動的に閾値を再設定するように構成する。
【0035】
更新条件記憶部17は、電源投入検出部16で電源投入が検出された場合に、電源投入をトリガとしてオートチューニングを実施するという更新条件を保持している。より詳細な更新条件として、電源投入が検出された場合に、投光部11及び受光部12の動作が安定するまで、又は電源電圧が安定するまでの所定時間待ってから、オートチューニングを実施するようにしてもよい。
【0036】
閾値設定部18は、更新条件記憶部17に保持されている更新条件を満たす場合、即ち電源が投入された場合にオートチューニングを実施する。
図2は、実施の形態1に係るセンサ装置10の各部の出力値を示すグラフであり、図2(a)は電源投入検出部16の出力値、図2(b)は受光部12の受光量、図2(c)は閾値設定部18が算出する閾値である。
【0037】
先ず、閾値設定部18の閾値算出について説明する。閾値設定部18は、更新条件記憶部17に保持されている更新条件を満たすと判断すると、そのときの受光部12の受光量に対して所定の係数を乗じて、受光量に対して所定の割合になる値にし、更に、この値にオフセットを加えて閾値とする。なお、閾値を算出する元になる受光部12の受光量は、1回の測定値、複数回の測定の平均値等、適宜設計すればよい。
続いて、閾値設定部18は、閾値記憶部13に保持されている現在設定中の閾値を、新たに算出した閾値に更新する。図2の例では、電源投入検出部16が電源投入を検出すると、閾値設定部18はこの電源投入をトリガとして所定時間待ち、所定時間後に受光部12が受光した受光量に基づいて新たな閾値を算出し、閾値記憶部13へ新たな閾値を再設定する。
図2(b)では、電源切断前に比べて電源投入後の受光量が減少方向に変動しているが、その変動に合わせて閾値が更新されるので、オートチューニング後は、判定部14は閾値記憶部13に保持された新たな閾値と受光部12が出力する受光量とを比較して、検出対象物体の存在有無を判定することができる。
【0038】
以上より、実施の形態1によれば、センサ装置10を、検出領域に投光する投光部11と、検出領域からの受光量を検出する受光部12と、受光量に関する閾値を記憶する閾値記憶部13と、受光量と閾値とを比較して大小関係を判定する判定部14と、本センサ装置10の電源投入を検出する電源投入検出部16と、電源投入検出部16が電源投入を検出した場合に、受光量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を閾値記憶部13に受光量に関する閾値として記憶させる閾値設定部18とを備えるように構成した。このため、外部環境の変化等によって全受光量が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定することができ、安定した検出が可能となる。
【0039】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、受光量の変動要因の一つである電源投入をトリガにしてオートチューニングを実施する構成としたが、本実施の形態2では、同じく受光量の変動要因の一つである温度変化をトリガにしてオートチューニングを実施する構成とする。
【0040】
図3は、実施の形態2に係るセンサ装置10の構成を示すブロック図である。このセンサ装置10は、上記実施の形態1の電源投入検出部16に代えて、温度(第二の物理量)を検出する温度検出部(第二の検出部)19を新たに備える。それ以外の部分については図1と同一のため、同一の符号を付し説明を省略する。
温度変化が受光量に影響を及ぼすのは、投光部11及び受光部12が温度特性を有するためである。そこで、温度検出部19は、投光部11若しくは受光部12の温度、又はこれらと同じように変化する周辺の温度を検出し、閾値設定部18へ出力する。ここでは、温度検出部19が受光部12の温度を検出することとして説明する。
【0041】
また、本実施の形態2では、更新条件記憶部17が、温度検出部19で検出された温度の変化量が所定変化量以上となった場合に、その温度変化をトリガとしてオートチューニングを実施するという更新条件を保持している。
そして、閾値設定部18は、更新条件記憶部17に保持されている更新条件を満たす場合に、即ち受光部12の温度変化量が所定変化量以上の場合にオートチューニングを実施する。オートチューニングについては上記実施の形態1と同様のため、説明を省略する。
【0042】
図4は、実施の形態2に係るセンサ装置10の各部の出力値を示すグラフであり、図4(a)は温度検出部19が検出する受光部12の温度、図4(b)は受光部12の受光量、図4(c)は閾値設定部18が算出する閾値である。図4(b)では、受光部12の温度が下がるにつれて受光部12の受光量も減少方向へ変動しているが、その変動に合わせて閾値が更新されるので、オートチューニング後は、判定部14は閾値記憶部13に保持された新たな閾値と受光部12が出力する受光量とを比較して、検出対象物体の存在有無を判定することができる。
【0043】
以上より、実施の形態2によれば、センサ装置10を、検出領域に投光する投光部11と、検出領域からの受光量を検出する受光部12と、受光量に関する閾値を記憶する閾値記憶部13と、受光量と閾値とを比較して大小関係を判定する判定部14と、受光部12の温度を検出する検出する温度検出部19と、温度検出部19の検出した温度変化が所定変化量以上の場合に、受光量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を閾値記憶部13に受光量に関する閾値として記憶させる閾値設定部18とを備えるように構成した。このため、外部環境の変化、特に温度変化によって全受光量が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定することができ、安定した検出が可能となる。
【0044】
また、温度変化をトリガとした場合、投光部11や受光部12の投光や受光に関する温度特性が低下しても安定した検出を行うことができるため、投光部11や受光部12の温度特性を安定させるために用いていた部品を削減でき、コスト低減が可能となる
【0045】
実施の形態3.
本実施の形態3では、図1及び図3を援用して説明する。
上記実施の形態1,2ではセンサ装置10が電源投入検出部16又は温度検出部19のどちらか一方を備える構成としたが、本実施の形態3では、センサ装置10が電源投入検出部16及び温度検出部19を共に備える構成とする。また、更新条件記憶部17は、電源投入検出部16で電源投入が検出された場合に、電源投入をトリガとしてオートチューニングを実施するという更新条件と、温度検出部19で検出された温度の変化量が所定変化量以上となった場合に、その温度変化をトリガとしてオートチューニングを実施するという更新条件とを共に保持している構成とする。
【0046】
閾値設定部18は、電源投入検出部16で電源投入が検出された場合、及び温度検出部19で検出された温度の変化量が所定変化量以上となった場合のうちの少なくともいずれか一方の更新条件を満たす場合にオートチューニングを実施する。
なお、閾値設定部18が外部からの指示を受け付けて、各更新条件を有効又は無効に設定できるように構成し、オートチューニングを実施しない、電源投入検出時のみオートチューニングを実施する、温度変化時のみオートチューニングを実施する、又は電源投入検出時及び温度変化時のどちらともオートチューニングを実施するようにしてもよい。
【0047】
以上より、実施の形態3によれば、センサ装置10を、検出領域に投光する投光部11と、検出領域からの受光量を検出する受光部12と、受光量に関する閾値を記憶する閾値記憶部13と、受光部12の温度を検出する温度検出部19と、本センサ装置10の電源投入を検出する電源投入検出部16と、受光部12の温度変化が所定変化量以上になったとき、又は電源投入検出部16が電源投入を検出したときの少なくともどちらか一方の場合に、受光量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を閾値記憶部13に受光量に関する閾値として記憶させる閾値設定部18とを備えるように構成した。このため、外部環境の変化等によって全受光量が変動した場合であっても、適切な閾値を自動で設定することができ、より安定した検出が可能となる。
【0048】
また、閾値設定部18を、外部からの指示に従って、電源投入検出部16の出力を用いて判断する閾値更新動作及び温度検出部19の出力を用いて判断する閾値更新動作をそれぞれ独立して有効又は無効に設定できるように構成した。このため、必要に応じた条件のもとで閾値を更新させることができ、ユーザは閾値更新タイミングを調整することができる。
【0049】
実施の形態4.
本実施の形態4に係るセンサ装置10は、図1に示すセンサ装置10と図面上では同様の構成であるため、以下では図1を援用して説明する。
本実施の形態4において、閾値設定部18は、オートチューニングを実施して閾値を新たに算出した場合に、電源切断前に閾値記憶部13に格納されて電源切断中も保持されていた現在使用中の閾値を、新たに算出した閾値に更新するか否かを判定する。
【0050】
具体的には、閾値設定部18は、新たに算出した閾値と判定部14で現在使用中の閾値との差が所定の許容範囲内であれば、現在使用中の閾値を新たに算出した閾値に更新する。他方、新たに算出した閾値と現在使用中の閾値との差が所定の許容範囲を超えていると、閾値設定部18は、現在使用中の閾値を新たに算出した閾値に更新せず、オートチューニングを終了する。
そのため、閾値設定部18が閾値を更新しない場合には、判定部14は現在使用中の閾値を引き続き使用して検出対象物体の存在有無を判定する。
【0051】
なお、閾値設定部18が閾値を更新しない場合に、更に、ユーザに対して警告を発して、現在使用中の閾値を引き続き使用するか又は許容範囲外と判定した新たな閾値を使用するか、ユーザが選択できるようにしてもよい。あるいは、閾値設定部18から警告を受けたユーザが、センサ装置10を操作して、閾値記憶部13で保持している閾値を直接調整できるようにしてもよい。
また、閾値設定部18は、新たに算出した閾値を、現在使用中の閾値と比較するようにしたが、現在使用中の閾値に代えて、初期設定値等の任意の値と比較するように構成してもよい。
【0052】
以上より、実施の形態4によれば、閾値設定部18は、新たな閾値と、閾値記憶部13に記憶されている閾値との差が、予め設定された所定の許容範囲内である場合にのみ、新たな閾値を閾値記憶部13に受光量に関する閾値として記憶させるよう構成した。このため、閾値が異常値に更新されることを防ぎ、安定した検出を行うことができる。
【0053】
なお、上述した説明では、上記実施の形態1で示した構成に対して上記実施の形態4を適用する場合を示したが、これに限らず、上記実施の形態2,3に上記実施の形態4を適用しても構わない。
【0054】
また、上記実施の形態1〜4では、透過型の光電センサを例に用いてセンサ装置10を説明したが、これに限定されるものではなく、センサ装置10が反射型の光電センサであってもよい。
更に、上記実施の形態1〜4に係るセンサ装置10は光電センサに限定されるものではなく、圧力センサ、温度センサ等、他のセンサであってもよい。その構成の場合には、圧力センサ等を第一の検出部に用いると共に圧力値等を第一の物理量に用い、判定部14は、圧力値等と閾値とを比較して判定結果を出力すればよい。
【0055】
また、上記実施の形態1〜4では、センサ装置10の閾値をオートチューニングする構成を示したが、センサ装置10が光電センサの場合には、閾値の他に投光量(投光部11の発光強度)及びゲイン(受光部12の受光量増幅)のオートチューニングを行う必要があるので、閾値同様にオートチューニングする構成にしてもよい。この構成の場合には、外部環境等によって受光素子の受光量が変動した場合であっても、適切な投光量及びゲインを自動で設定することができる。
【0056】
例えば、投光量のオートチューニングを行う場合、閾値記憶部(投光量記憶部)13が投光量を保持しておき、投光部(投光素子)11が検出領域にその投光量の光を投光する。更新条件記憶部17は、閾値記憶部13が保持する投光量を更新するための更新条件として、電源投入検出部16で電源投入が検出された場合に電源投入をトリガとしてオートチューニングを実施するという条件、及び、温度検出部19で検出された温度の変化量が所定変化量以上となった場合にその温度変化をトリガとしてオートチューニングを実施するという条件のうち、少なくとも一方を保持しておく。閾値設定部(投光量設定部)18は、更新条件記憶部17に保持されている更新条件を満たす場合に、新たな投光量を算出して、閾値記憶部13の保持する投光量を更新する。
【0057】
なお、閾値設定部18による新たな投光量の算出方法としては、投光部11を動作させたときの受光部12による全受光量を取得して、そのときの全受光量が適切な値になるよう投光量を変化させる等の既知の手法を用いて適宜投光量を算出する方法を用いればよい。加えて、例えば温度検出部19で検出した温度と、投光部11又は受光部12の温度特性とを考慮して、投光量を決定するようにしてもよい。更に、日照による外乱が生じうる環境において本センサ装置10を用いる場合であれば、温度が高いほど日照(ノイズ)の強度も高いと仮定して、投光部11の投光量を高めるよう決定してもよい。
【0058】
また、例えばゲインのオートチューニングを行う場合、閾値記憶部(投光量記憶部)13がゲインを保持しておき、判定部(ゲイン調整部)14が受光部(受光素子)12で受光した受光量をそのゲインに調整して、検出領域に検出対象物体が存在するか否かを判定する。更新条件記憶部17は、閾値記憶部13が保持するゲインを更新するための更新条件として、電源投入検出部16で電源投入が検出された場合に電源投入をトリガとしてオートチューニングを実施するという条件、及び、温度検出部19で検出された温度の変化量が所定変化量以上となった場合にその温度変化をトリガとしてオートチューニングを実施するという条件のうち、少なくとも一方を保持しておく。閾値設定部(ゲイン設定部)18は、更新条件記憶部17に保持されている更新条件を満たす場合に、新たなゲインを算出して、閾値記憶部13の保持するゲインを更新する。なお、新たなゲインの算出方法については、先に述べた投光量の算出方法に準じればよいため、説明を省略する。
【0059】
なお、光電センサ装置を、閾値のオートチューニング、投光量のオートチューニング、及びゲインのオートチューニングを適宜組み合わせて実施するように構成してもよい。また、閾値設定部18が外部からの指示を受け付けて、各オートチューニングを実施する/しない、電源投入検出時のみいずれかのオートチューニングを実施する/しない、温度変化時のみいずれかのオートチューニングを実施する/しない、又は電源投入検出時及び温度変化時のどちらともいずれかのオートチューニングを実施する/しないように選択できる構成にしてもよい。
また、上述した各実施の形態1〜4において、電源投入検出時に各種更新を行う場合にあっては、必ずしも電源投入検出の直後に各種更新を行う必要はなく、例えばタイマを用いて、電源投入から所定時間経過後に各種更新を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 センサ装置
11 投光部
12 受光部(第一の検出部)
13 閾値記憶部
14 判定部
15 出力部
16 電源投入検出部
17 更新条件記憶部
18 閾値設定部
19 温度検出部(第二の検出部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の物理量を第一の物理量として検出する第一の検出部と、
前記第一の物理量に関する閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記第一の物理量と前記閾値とを比較して、大小関係を判定する判定部と、
本センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、
前記電源投入検出部が電源投入を検出した場合に、前記第一の物理量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を前記閾値記憶部に前記第一の物理量に関する閾値として記憶させる閾値設定部とを備えるセンサ装置。
【請求項2】
検出対象の物理量を第一の物理量として検出する第一の検出部と、
前記第一の物理量に関する閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記第一の物理量と前記閾値とを比較して、大小関係を判定する判定部と、
前記第一の検出部とは異なる物理量を第二の物理量として検出する第二の検出部と、
前記第二の検出部が検出する前記第二の物理量が所定条件を満たす場合に、前記第一の物理量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を前記閾値記憶部に前記第一の物理量に関する閾値として記憶させる閾値設定部とを備えるセンサ装置。
【請求項3】
検出対象の物理量を第一の物理量として検出する第一の検出部と、
前記第一の物理量に関する閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記第一の物理量と閾値とを比較して、大小関係を判定する判定部と、
前記第一の検出部とは異なる物理量を第二の物理量として検出する第二の検出部と、
本センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、
前記第二の検出部が検出する前記第二の物理量が所定条件を満たしたとき、又は前記電源投入検出部が電源投入を検出したときの少なくともどちらか一方の場合に、前記第一の物理量に基づいて新たな閾値を算出し、当該新たな閾値を前記閾値記憶部に前記第一の物理量に関する閾値として記憶させる閾値設定部とを備えるセンサ装置。
【請求項4】
第一の検出部は、受光量を検出する受光素子であることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のセンサ装置。
【請求項5】
第二の検出部は、第一の検出部の温度を検出する温度検出部であり、
閾値設定部は、前記第二の検出部によって検出された前記第一の検出部の温度変化が所定変化量以上の場合にのみ、新たな閾値を閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させるよう構成されていることを特徴とする請求項2又は請求項3記載のセンサ装置。
【請求項6】
閾値設定部は、外部からの指示に従って、第二の検出部の出力を用いて判断する閾値更新動作及び電源投入検出部の出力を用いて判断する閾値更新動作をそれぞれ独立して有効又は無効に設定できるよう構成されていることを特徴とする請求項3記載のセンサ装置。
【請求項7】
閾値設定部は、新たな閾値と、閾値記憶部に記憶されている閾値との差が、予め設定された所定の許容範囲内である場合にのみ、前記新たな閾値を前記閾値記憶部に第一の物理量に関する閾値として記憶させるよう構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載のセンサ装置。
【請求項8】
投光量を記憶する投光量記憶部と、
前記投光量記憶部に記憶された投光量で、検出対象に投光する投光素子と、
前記検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、
本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、
前記電源投入検出部が電源投入を検出した場合に、新たな投光量を算出し、当該新たな投光量を前記投光量記憶部に記憶させる投光量設定部とを備える光電センサ装置。
【請求項9】
投光量を記憶する投光量記憶部と、
前記投光量記憶部に記憶された投光量で、検出対象に投光する投光素子と、
前記検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、
前記受光素子の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された前記受光素子の温度変化が所定変化量以上の場合に、新たな投光量を算出し、当該新たな投光量を前記投光量記憶部に記憶させる投光量設定部とを備える光電センサ装置。
【請求項10】
投光量を記憶する投光量記憶部と、
前記投光量記憶部に記憶された投光量で、検出対象に投光する投光素子と、
前記検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、
本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、
前記受光素子の温度を検出する温度検出部と、
前記電源投入検出部が電源投入を検出したとき、又は前記温度検出部によって検出された前記受光素子の温度変化が所定変化量以上になったときの少なくともどちらか一方の場合に、新たな投光量を算出し、当該新たな投光量を前記投光量記憶部に記憶させる投光量設定部とを備える光電センサ装置。
【請求項11】
検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、
前記受光量のゲインを記憶するゲイン記憶部と、
前記ゲイン記憶部に記憶されたゲインで、前記受光素子によって検出された受光量を調整するゲイン調整部と、
本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、
前記電源投入検出部が電源投入を検出した場合に、新たなゲインを算出し、当該新たなゲインを前記ゲイン記憶部に記憶させるゲイン設定部とを備える光電センサ装置。
【請求項12】
検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、
前記受光量のゲインを記憶するゲイン記憶部と、
前記ゲイン記憶部に記憶されたゲインで、前記受光素子によって検出された受光量を調整するゲイン調整部と、
前記受光素子の温度を検出する温度検出部と、
前記温度検出部によって検出された前記受光素子の温度変化が所定変化量以上の場合に、新たなゲインを算出し、当該新たなゲインを前記ゲイン記憶部に記憶させるゲイン設定部とを備える光電センサ装置。
【請求項13】
検出対象に投光された光を受光量として検出する受光素子と、
前記受光量のゲインを記憶するゲイン記憶部と、
前記ゲイン記憶部に記憶されたゲインで、前記受光素子によって検出された受光量を調整するゲイン調整部と、
本光電センサ装置の電源投入を検出する電源投入検出部と、
前記受光素子の温度を検出する温度検出部と、
前記電源投入検出部が電源投入を検出したとき、又は前記温度検出部によって検出された前記受光素子の温度変化が所定変化量以上になったときの少なくともどちらか一方の場合に、新たなゲインを算出し、当該新たなゲインを前記ゲイン記憶部に記憶させるゲイン設定部とを備える光電センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−114566(P2011−114566A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268898(P2009−268898)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】