説明

センターベアリングサポート

【課題】部品点数及び組立工数の増加や弾性体13のばね定数の上昇を来たすことなく弾性体13とダストカバー4の干渉を有効に防止したセンターベアリングサポート1を提供する。
【解決手段】車体側に固定される外環11の内周に、センターベアリング3を保持する内環12が軸方向へ凸の屈曲形状をなすゴム状弾性材料からなる弾性体13を介して設けられ、センターベアリング3に支持される回転軸2の外周面に、内環12の端部外周を包囲するダストカバー4が設けられ、内環12に、ダストカバー4とその外周側の弾性体13との間を軸方向へ延びるゴム状弾性材料からなる保護筒体132が設けられ、この保護筒体132によって、弾性体13とダストカバー4の干渉を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のプロペラシャフトをセンターベアリングを介して車体側に回転自在かつ弾性的に支持すると共に振動吸収及び緩衝を行うセンターベアリングサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
センターベアリングサポートは、自動車のプロペラシャフトの外周に装着されるセンターベアリングを車体側に弾性的に支持し、走行中におけるプロペラシャフト側と車体側との間での振動伝達を低減するものである。
【0003】
図4に示すように、この種のセンターベアリングサポート100は、外環101と、その内周に配置されると共に互いに嵌合された内環102と、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)からなり前記外環101と内環102を弾性的に連結するベローズ状屈曲形状の弾性体103とを備え、外環101が、車体側に取り付けられる環状のブラケット(不図示)に嵌着されると共に、内環102が、プロペラシャフト110の軸方向中間部の外周面に装着されるセンターベアリング111のアウターレースに嵌着される。
【0004】
内環102における互いに軸方向反対側の端部102a,102bは、内径側へ屈曲してプロペラシャフト110の外周面と僅かな隙間を介して対向しており、プロペラシャフト110の外周面には、内環102の端部102a,102bの外周側を包囲する一対のダストカバー104,105が装着されている。このため、自動車の走行中に飛来する泥水や塵埃等が、不図示のグリースが充填された内環102の内周空間へ侵入しにくくなっている。
【0005】
しかしながら、従来のセンターベアリングサポート100によれば、プロペラシャフト110に振れ回りが生じることなどによって、外環101と内環102が弾性体103の屈曲変形を伴いながら大きく偏心した場合、プロペラシャフト110と共に回転しているダストカバー104の端縁104aと、これに径方向に対向する弾性体103の一部103aが接触してしまい、弾性体103が破損するおそれがあった。
【0006】
そこで、このような不具合を防止するための手法としては、弾性体103の根元103bの内周に、ダストカバー104側への弾性体103の屈曲変形を抑制する環状のストッパを設けることが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−100695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような構成では、環状のストッパによって弾性体103の根元103bが拘束されることから、そのばね定数が高くなって防振性に悪影響を及ぼすことになり、しかも部品点数及び組立工数が多くなって製造コストの上昇を来たすといった問題が指摘される。
【0009】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題は、部品点数及び組立工数の増加や弾性体のばね定数の上昇を来たすことなく弾性体とダストカバーの干渉を有効に防止したセンターベアリングサポートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係るセンターベアリングサポートは、車体側に固定される外環の内周に、センターベアリングを保持する内環が軸方向へ凸の屈曲形状をなすゴム状弾性材料からなる弾性体を介して設けられ、前記センターベアリングに支持される回転軸の外周面に、前記内環の端部外周を包囲するダストカバーが設けられ、前記内環に、前記ダストカバーとその外周側の弾性体との間を軸方向へ延びるゴム状弾性材料からなる保護筒体が設けられたものである。
【0011】
請求項2の発明に係るセンターベアリングサポートは、請求項1に記載の構成において、保護筒体が弾性体と一体に形成されたものである。
【0012】
請求項3の発明に係るセンターベアリングサポートは、請求項1に記載の構成において、弾性体の内周端部にその内周側から対向する緩衝ストッパが保護筒体と一体に設けられたものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係るセンターベアリングサポートによれば、内環の端部外周を包囲するダストカバーと、その外周側にあって軸方向へ凸の屈曲形状をなす弾性体との間を、内環に設けられたゴム状弾性材料からなる保護筒体が延びているため、外環と内環が弾性体の屈曲変形を伴いながら大きく偏心した時に、弾性体が過大な変形によってダストカバーと干渉して破損するのを防止することができ、この保護筒体は弾性体のばね定数の上昇を来たさないので、良好な振動絶縁性が確保される。しかも、内環の端部外周と、その外周のダストカバーと、さらにその外周の保護筒体によって複雑に屈曲したラビリンスシールが構成されるので、センターベアリングへのダスト等の侵入に対するダストカバーの遮蔽機能を向上させることができる。
【0014】
請求項2の発明に係るセンターベアリングサポートによれば、請求項1による効果に加え、保護筒体が弾性体と一体であるため、部品点数及び組立工数の増加を来たさないといった効果が得られる。
【0015】
請求項3の発明に係るセンターベアリングサポートによれば、請求項1による効果に加え、外環と内環が弾性体の屈曲変形を伴いながら大きく偏心した時に、保護筒体と一体に設けられた緩衝ストッパに弾性体の内周端部が当接することによって、弾性体の過大な変形が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係るセンターベアリングサポートの好ましい実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す断面斜視図である。
【図2】図1のセンターベアリングサポートを、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【図3】図1のセンターベアリングサポートの外環と内環が弾性体の屈曲変形を伴いながら大きく偏心した状態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。
【図4】従来技術に係るセンターベアリングサポートを、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るセンターベアリングサポートを、図面を参照しながら詳細に説明する。まず図1は、本発明に係るセンターベアリングサポートの好ましい実施の形態を、軸心を通る平面で切断して示す断面斜視図、図2は、図1のセンターベアリングサポートを、軸心を通る平面で切断して示す断面図である。
【0018】
すなわち図1及び図2に示されるセンターベアリングサポート1は、マウント等を介して車体側に固定される環状のブラケット(不図示)の内周面に圧入嵌着される外環11と、この外環11の内周に配置され、プロペラシャフト2を回転自在に支持するセンターベアリング3のアウターレース31に嵌合された内環12と、前記外環11と内環12の間を弾性的に連結する弾性体13とからなる。なお、プロペラシャフト2は請求項1に記載された回転軸に相当するものである。
【0019】
詳しくは、外環11及び内環12は、鋼材等の金属からなるものであって、このうち内環12は、外径部同士が互いに嵌着一体化された第一の金属環121と第二の金属環122からなり、両金属環121,122間に、支持対象のプロペラシャフト2の外周面に装着されるセンターベアリング3を嵌合保持するようになっている。
【0020】
弾性体13は、ゴム状弾性材料(ゴム材料又はゴム状弾性を有する合成樹脂材料)で成形されたものであって、その外周端部13aが外環11に一体的に加硫接着され、内周端部13bが、内環12における第一の金属環121の外周面に一体的に加硫接着され、軸方向へ凸の略U字形に屈曲した断面形状を呈する。
【0021】
センターベアリング3は、互いに同心配置されたアウターレース31及びインナーレース32と、その間に円周方向等間隔で回転自在に保持された多数の鋼球33とからなる既知の構造を有するボールベアリングであり、鋼球33とアウターレース31及びインナーレース32との間は、不図示のグリースにより潤滑されている。このセンターベアリング3は、アウターレース31が、内環12における第一の金属環121の軸方向中間部の内周面に圧入されると共に、第一の金属環121と第二の金属環122で軸方向両側から挟み込まれ、インナーレース32が、プロペラシャフト2の外周面に形成された段差部に嵌合されると共に、プロペラシャフト2の外周面に取り付けられたカラー21により軸方向に対して位置決め固定されている。
【0022】
内環12における第一及び第二の金属環121,122の内径部は、センターベアリング3のアウターレース31を軸方向両側から挟み込んだ部分からセンターベアリング3の軸方向両側へ円筒状に延びており、その端部121a,122aは内径側へ屈曲してそれぞれプロペラシャフト2の外周面及びカラー21の外周面に近接対向している。
【0023】
プロペラシャフト2の外周には、内環12の軸方向両側に位置して、鋼材等の金属からなる一対のダストカバー4,5が装着されている。このダストカバー4,5は、それぞれプロペラシャフト2の外周面及びカラー21の外周面に圧入固定される固定筒部41,51と、この固定筒部41,51から内環12における第一及び第二の金属環121,122の端部121a,122aの外周側を包囲するように、先端側が大径となる円錐筒状に延びるカバー本体部42,52とを有する。
【0024】
弾性体13の内周端部13bからは、ゴム状弾性材料からなる緩衝ストッパ131及び保護筒体132が連続して形成されている。
【0025】
詳しくは、緩衝ストッパ131は、弾性体13の内周端部13bの内周側に環状溝13cを介して形成され、内環12における第一の金属環121の外周面に一体的に加硫接着されている。この緩衝ストッパ131は、車体側とプロペラシャフト2との相対的な大振幅の振動変位入力の際に、弾性体13の内周端部13bと当接することによって、弾性体13の過大な屈曲変形を抑制するものであって、外径がダストカバー4のカバー本体部42より大径に形成されている。また、保護筒体132は、緩衝ストッパ131の外径部から、ダストカバー4のカバー本体部42とその外周側の弾性体13との間を円筒状に延びている。
【0026】
なお、弾性体13、緩衝ストッパ131及び保護筒体132と外環11及び第一の金属環121からなる一体成形品は、所定のゴム加硫成形用金型(不図示)内に、外環11及びその内周側の第一の金属環121を位置決めセットして型締めし、前記金型とこれら外環11及び第一の金属環121との間に画成された成形用キャビティ内に未加硫ゴム材料を充填し、加熱・加圧することによって、弾性体13、緩衝ストッパ131及び保護筒体132の加硫成形と、外環11及び第一の金属環121への加硫接着を同時に行うことにより製作することができる。
【0027】
そして、ダストカバー4におけるカバー本体部42の先端は、内環12における第一の金属環121の端部121aの外周と保護筒体132の間にあって緩衝ストッパ131と軸方向に近接対向しており、先に説明したように、内環12における第一の金属環121の端部121aは、内径側へ屈曲してプロペラシャフト2の外周面に近接対向しているため、これら第一の金属環121の端部121a、緩衝ストッパ131及び保護筒体132とダストカバー4及びプロペラシャフト2との間には、ジグザグに屈曲した隙間からなるラビリンスシールL1が形成される。
【0028】
一方、ダストカバー5におけるカバー本体部52の先端は、内環12における第二の金属環122の端部122aの外周と第一及び第二の金属環121,122の嵌合部12aとの間に遊嵌されており、先に説明したように、第二の金属環122の端部122aは、内径側へ屈曲してカラー21の外周面に近接対向しているため、これら第二の金属環122とダストカバー5及びカラー21との間には、ジグザグに屈曲した隙間からなるラビリンスシールL2が形成されている。
【0029】
以上の構成を備えるセンターベアリングサポート1は、センターベアリング3を介して、プロペラシャフト2を車体側に弾性的にかつ回転自在に支持するもので、回転するプロペラシャフト2に振動を発生した場合、このプロペラシャフト2側の内環12と車体側の外環11との相対偏心運動に伴って、弾性体13が反復的に屈伸し、前記車体側への振動伝達を有効に絶縁することができる。
【0030】
ここで外環11と内環12の偏心量が所定の大きさになると、図3に示されるように、円周方向1箇所(外環11と内環12が互いに接近する側)で環状溝13cがつぶれ、弾性体13の内周端部13bと緩衝ストッパ131が互いに当接する。このため、弾性体13の変位は緩衝ストッパ131によって抑制されることになる。
【0031】
そして、弾性体13の内周端部13bと緩衝ストッパ131が当接した後も、外環11と内環12の偏心が継続されることによって弾性体13に更なる変形力が作用しても、この弾性体13とその内周側にあるダストカバー4との間には緩衝ストッパ131から延在された保護筒体132が存在しており、この保護筒体132がダストカバー4への弾性体13の接触を阻止する。このため、弾性体13が過大な変形によってダストカバー4のカバー本体部42の端縁と干渉して破損するのを防止することができる。
【0032】
また、緩衝ストッパ131及び保護筒体132は、内環12における第一の金属環121に一体成形され、一度の成形工程で弾性体13と共に加硫接着されるため、部品点数及び組立工数の増加を来たさない。
【0033】
しかも、緩衝ストッパ131及び保護筒体132は、外環11と内環12の偏心に伴って屈曲変形される弾性体13とは一体に連続しているものではあるが、力学的には、環状溝13cによって弾性体13とは独立しており、すなわち弾性体13と共に変形されるものではない。このため、弾性体13のばね定数の上昇を来たさないので、良好な振動絶縁性が確保される。
【0034】
また、外部からセンターベアリング3へ侵入しようとする泥水や塵埃等は、ジグザグに屈曲したラビリンスシールL1,L2を通らなければならないため、きわめて浸入しにくいものとなっている。しかもダストカバー4,5は、カバー本体部42,52が先端側で大径となる円錐筒状に形成されているので、プロペラシャフト2と共に回転することによって振り切り作用を発生し、これも泥水や塵埃等の浸入に対する有効な阻止力となる。したがって、センターベアリング3を潤滑するグリースに泥や塵埃が混入して、このセンターベアリング3が損傷したり劣化したりするのを有効に防止することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 センターベアリングサポート
11 外環
12 内環
121a,122a 端部
13 弾性体
13b 内周端部
131 緩衝ストッパ
132 保護筒体
2 プロペラシャフト
3 センターベアリング
4,5 ダストカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側に固定される外環の内周に、センターベアリングを保持する内環が軸方向へ凸の屈曲形状をなすゴム状弾性材料からなる弾性体を介して設けられ、前記センターベアリングに支持される回転軸の外周面に、前記内環の端部外周を包囲するダストカバーが設けられ、前記内環に、前記ダストカバーとその外周側の弾性体との間を軸方向へ延びるゴム状弾性材料からなる保護筒体が設けられたことを特徴とするセンターベアリングサポート。
【請求項2】
保護筒体が弾性体と一体に形成されたことを特徴とする請求項1に記載のセンターベアリングサポート。
【請求項3】
弾性体の内周端部にその内周側から対向する緩衝ストッパが保護筒体と一体に設けられたことを特徴とする請求項1に記載のセンターベアリングサポート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−269716(P2010−269716A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123983(P2009−123983)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】