ゼロクロス時間判定装置及び同装置を備えた超音波流量計
【課題】入力信号の振幅が変化したり入力信号がノイズの影響を受けたりしたときでも、精度良く適切にゼロクロス時間を計測可能なゼロクロス時間判定装置を提供する。
【解決手段】本発明の一態様のゼロクロス時間判定装置は、入力信号210における正または負の絶対値が過去における前記正または負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能な最大絶対値更新判定部100と、前記判定結果に基づいて前記入力信号210における前記正または負の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す最大絶対値時間信号350を出力可能な最大絶対値時間判定部400と、前記入力信号210の仮ゼロクロス時間をラッチする仮ゼロクロス時間ラッチ部410と、前記最大絶対値時間信号350及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部170と、を備える。
【解決手段】本発明の一態様のゼロクロス時間判定装置は、入力信号210における正または負の絶対値が過去における前記正または負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能な最大絶対値更新判定部100と、前記判定結果に基づいて前記入力信号210における前記正または負の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す最大絶対値時間信号350を出力可能な最大絶対値時間判定部400と、前記入力信号210の仮ゼロクロス時間をラッチする仮ゼロクロス時間ラッチ部410と、前記最大絶対値時間信号350及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部170と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号のゼロクロス時間を判定可能なゼロクロス時間判定装置である。
【背景技術】
【0002】
流量計のひとつとして、超音波が媒体中を伝搬中に発生する伝搬時間差を利用した超音波流量計がある。超音波流量計には、図9に示すように、流路に超音波送受信機10及び11を配置し、超音波を上流から送信して下流で受信した受信信号12の伝搬時間と、超音波を下流から送信して上流で受信した受信信号13の伝搬時間とに基づいて、流路を流れる気体や液体などの媒体の流速を計測するものがある。
【0003】
この伝搬時間の計測には、数nsまたはサブnsの分解能が要求されることがあるが、超音波流量計で用いられる超音波は、数十kHz〜数MHz程度の周波数である。この周波数を用いた場合、1周期の1/10000以上などの高精度の分解能を要する。一方、超音波の振幅は流路を流れる媒体の流速や流体の状態によって影響を受ける。よって、超音波の到達を、受信信号に対してしきい値を設定することで判断する方法を用いた場合、受信信号の振幅が変化したときに計測される到達時間が変化してしまう。すなわち、図10に示すように、通常の振幅を有する受信信号S1がしきい値th1に達した時間がT1であるのに対して、振幅が小さくなった受信信号S2がしきい値th1に達した時間はT2となってしまう。
【0004】
そこで、受信信号の振幅の変化に影響されない測定方法として、ゼロクロス法がある。ゼロクロス法では、受信信号が正から負に、または負から正に変化するタイミングであるゼロクロス点における時間を計測する方法である。図10に示すように、受信信号S1及びS2のいずれにおいてもゼロクロス点の時間T3は変化しない。このように、ゼロクロス法によれば受信信号の振幅が変化してもゼロクロス点における時間が変化しない。
【0005】
ただし、超音波信号には複数のゼロクロス点が含まれるため、伝搬時間差を計測する基礎となる適切なゼロクロス点を確実に選択することが重要である。例えば、所定のしきい値を設けて超音波信号が該しきい値を超えた次のタイミングで観測されるゼロクロス点を選択する方法を適用することがあった。
【0006】
しかし、この方法では流路を流れる媒体の流量の大小や超音波デバイス特性の経時変化などにより超音波信号の振幅が変化することを考慮しておらず、意図したタイミングのゼロクロス点を選択できない場合があった。例えば、図11に示すようにしきい値th2を設けた場合、通常の振幅を有する受信信号S1ではp1をゼロクロス点と判断するのに対して、振幅が小さくなった受信信号S2ではp2をゼロクロス点と判断してしまう。これに対して、例えば受信した超音波信号のピークホールド信号の微分を波形整形してパルスにし、N番目のパルスの次のゼロクロス点を選択する従来技術などがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表特許WO2004/048902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術においても、波形整形には所定のしきい値を用いており、入力信号の振幅が変化すると、適切なゼロクロス点を検出できないことがあった。
【0009】
そこで、本発明の一形態では、上記課題を解決可能な超音波流量計を提供することを目的のひとつとする。また、本発明の一形態では測定対象媒体の流量などを精度良く適切に計測することなどをも目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、本発明の一態様としてのゼロクロス時間判定装置は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正または負の絶対値が過去における前記正または負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正または負の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方を仮ゼロクロス時間として周期的にラッチするよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、を備える。
【0011】
かかる構成のゼロクロス時間判定装置によれば、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号において、確実に意図したタイミングにおけるゼロクロス点を選択することが可能となる。これにより例えば超音波の伝搬時間差を正確に計測することが可能となり、測定対象媒体の流量などを適切に計測することが可能となる。
【0012】
また、該装置の構成として用いている最大絶対値更新判定部はアナログ回路で構成することが可能である。この場合、入力信号をデジタル信号に変換してデジタル信号処理を行う構成と比較して、簡易な構成にすることができる。
【0013】
また、前記仮ゼロクロス時間ラッチ部は、所定の周波数を有するクロック信号の変化をカウントするカウンタ部と、前記入力信号が前記所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方において、前記カウンタ部の出力信号をラッチして前記仮ゼロクロス時間を出力するよう構成されたカウンタラッチと、を備える構成にすることができる。
【0014】
また、本発明の一態様としてのゼロクロス時間判定装置は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正の絶対値が過去における前記正の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、前記入力信号が所定の値より大きい状態から小さい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、を備える構成としてもよい。
【0015】
または、本発明の一態様としてのゼロクロス時間判定装置は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における負の絶対値が過去における前記負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記負の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、を備える構成としてもよい。
【0016】
また、前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定することが好ましい。
【0017】
入力信号において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点は、入力信号の振幅が最大となった状態におけるゼロクロス点であるため、入力信号の振幅が小さい状態におけるゼロクロス点と比較して、ノイズ等による影響を受けづらい。
【0018】
上記構成にすれば、入力信号において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点における、ゼロクロス時間を計測することが可能となる。よって、ノイズ等の影響を受けない、より正確なゼロクロス時間を計測することが可能となる。ひいては、高い精度で伝搬時間差を計測することができる。
【0019】
また、前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時間より所定の時間前にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する構成としてもよい。
【0020】
また、前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時間より所定の時間後にラッチされた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する構成としてもよい。
【0021】
上記の構成にすると、任意のタイミングのゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能となる。例えば、最大絶対値時間信号が出力された時間より前の時間に、入力信号の振幅が最大となることが予め予測されている場合に、この入力信号が最大となった状態におけるゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能である。
【0022】
また、前記最大絶対値時間判定部は、前記最大絶対値更新判定部において前記最大絶対値が更新されたと判定された時から所定の期間に前記最大絶対値がさらに更新されないときに前記最大絶対値時間信号を出力するよう構成されてもよい。
【0023】
ここで、前記最大絶対値時間判定部において用いられる前記所定の期間は、前記入力信号の1周期乃至1.25周期の間の期間から任意に選択されることが好ましい。
【0024】
これによれば、入力信号において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点におけるゼロクロス時間を、タイミング良く確実に計測することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、上記いずれかのゼロクロス時間判定装置を備えた超音波流量計を含む。これによれば、精度良く流量を計測可能な超音波流量計を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一形態によれば、例えば、超音波の伝搬時間差を計測する基礎となる、入力信号における意図したタイミングのゼロクロス点を確実に選択することが可能となり、精度の高いゼロクロス時間判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例を示す図。
【図2】最大絶対値更新判定部の構成例を示す図。
【図3】ゼロクロス時間判定装置の動作時の波形図。
【図4】ゼロクロス時間判定装置の第2の構成例を示す図。
【図5】ゼロクロス時間判定装置の第3の構成例を示す図。
【図6】ゼロクロス時間判定装置の第3の構成例の動作時の波形図。
【図7】ゼロクロス時間判定装置の第4の構成例を示す図。
【図8】ゼロクロス時間判定装置の第4の構成例の動作時の波形図。
【図9】超音波流量計の構成例を示す図。
【図10】超音波流量計の従来の動作を示す第1の波形図。
【図11】超音波流量計の従来の動作を示す第2の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、各図面において、同一の部品には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.定義
2.実施形態1
(1)ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例
(2)ゼロクロス時間判定装置の動作
(3)まとめ
3.実施形態2
4.実施形態3
5.実施形態4
6.補足
【0029】
<1.定義>
まず、本明細書における用語を以下のとおり定義する。
「ゼロクロス点」:入力信号の波形が所定の電位と交差する点を指す。なお、所定の電圧は零電位であることが多いがこれに限らず、所定の電位は任意に決定可能である。
「Hi」及び「Lo」:二値化された信号における二値をそれぞれ「Hi」及び「Lo」と呼ぶ。「Hi」は二値化された信号が高い電位を示す状態を指し、「Lo」は二値化された信号が低い電位を示す状態を指す。
【0030】
<2.実施形態1>
本発明の一実施形態は、超音波流量計などの流量計であって、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する信号を入力信号とする流量計に用いられるゼロクロス時間判定装置である。このゼロクロス時間判定装置は、既に説明したように、図9に示す流量計における超音波送受信機10及び11の構成の一部として用いることが可能である。以下、図1乃至図3を参照しながら実施形態1について説明する。
【0031】
<(1)ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例>
図1は、ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態1のゼロクロス時間判定装置は、最大絶対値更新判定部100、最大絶対値時間判定部400、仮ゼロクロス時間ラッチ部410、及び出力ラッチ170を備えて構成される。
【0032】
(最大絶対値更新判定部100)
最大絶対値更新判定部100は、入力信号210及びリセット信号200を入力し、最大絶対値更新信号320及び最大絶対値信号310を出力可能に構成される。
【0033】
図2は、最大絶対値更新判定部100の具体的な構成例を示す図である。図2に示すように、最大絶対値更新判定部100は、コンパレータ500、電流源510、スイッチ520、ダイオード530、キャパシタ540、ディスチャージャー550、及びインピーダンス変換器560を含んで構成される。
【0034】
コンパレータ500は、入力信号210と最大絶対値信号310との振幅を比較し、入力信号210の振幅の方が大きい場合にはHiを、入力信号210の振幅の方が小さい場合にはLoを、最大絶対値更新信号320として出力する。スイッチ520は、コンパレータ500から入力された信号がHiであった場合にはオン状態となり、Loであった場合にはオフ状態となる。スイッチ520がオン状態のときは、電流源510から流入する電流がダイオード530を介してキャパシタ540に充電され、インピーダンス変換器560を介して最大絶対値信号310を更新する。また、リセット信号200によって回路のリセットが指示されると、ディスチャージャー550はキャパシタ540に充電された電荷を放電する。
【0035】
なお、本実施形態1においては入力信号210の正の最大値を基準として動作しているが、これは負の最大絶対値である最小値を基準として動作してもよい。つまり、最大絶対値信号310及び最大絶対値更新信号320は、場合によってそれぞれ最大値信号及び最大値更新信号、または最小値信号及び最小値更新信号と呼ぶこともできる。以下についても同様に、「最大絶対値○○」は、場合によって「最大○○」または「最小○○」と呼ぶことができる。
【0036】
すなわち、最大絶対値更新判定部100は、入力信号210が過去における正の最大絶対値よりも大きい場合に、最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成されているものである。
【0037】
(最大絶対値時間判定部400)
最大絶対値時間判定部400は、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ110及びリセットセットフリップフロップ120を含んで構成される。
【0038】
リトリガブルワンショットマルチバイブレータ110は、最初に検知した最大絶対値更新信号320の立ち下がり時に、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340をLoからHiへと変化するよう構成されている。また、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ110は、検知した最大絶対値更新信号320の立ち下がりから所定の期間に最大絶対値更新信号320の立ち上がりが検知されない時に、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340をHiからLoへと変化するよう構成されている。
【0039】
リセットセットフリップフロップ120は、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340の立ち下がりを検知した時に、出力信号である出力ラッチタイミング信号350をLoからHiへと変化するよう構成されている。また、リセットセットフリップフロップ120は、リセット信号240によってリセット可能に構成されている。
【0040】
すなわち、最大絶対値時間判定部400は、最大絶対値更新判定部100における判定結果に基づいて入力信号210における正の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す出力ラッチタイミング信号350を出力可能に構成されているものである。より具体的には、最大絶対値時間判定部400は、最大絶対値更新判定部100において正の最大絶対値が更新されたと判定された時から所定の期間(T)に正の最大絶対値がさらに更新されないときに、出力ラッチタイミング信号350を出力するよう構成されている。なお、出力ラッチタイミング信号350は、最大絶対値時間信号とも呼び、後に説明するように負の絶対値が最大になる時間を出力する構成にしてもよい。
【0041】
(仮ゼロクロス時間ラッチ部410)
仮ゼロクロス時間ラッチ部410は、コンパレータ130、カウンタ140、クロック生成部150、及びカウンタラッチ160を含んで構成される。
【0042】
コンパレータ130は、入力信号210と零電位とを比較し、入力信号210が零電位より高ければHi、低ければLoを二値化信号330として出力するよう構成されている。
【0043】
クロック生成部150は、所定の周波数を有するクロック信号をカウンタ140に供給する。
【0044】
カウンタ140は、スタート・ストップ信号220の指示によってクロック信号を連続的にカウントアップし、カウント信号を出力するよう構成されている。また、カウンタ140はリセット信号230によってリセット可能に構成されている。
【0045】
カウンタラッチ160は、二値化信号330の立ち下がりでカウント信号をラッチし、仮ゼロクロス時間信号360として出力するよう構成される。ここで、カウンタ140がクロック信号を連続的にカウントアップした信号であるカウント信号は時間情報を示すものであり、二値化信号330の立ち下がりは入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点を示す。よって、仮ゼロクロス時間信号360は、入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点における時間を示す信号であるということができる。
【0046】
すなわち、仮ゼロクロス時間ラッチ部410は、入力信号210が所定の値より大きい状態から小さい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として周期的にラッチし、仮ゼロクロス時間信号360として出力するよう構成されているものである。
【0047】
(出力ラッチ170)
出力ラッチ170は、仮ゼロクロス時間信号360を出力ラッチタイミング信号350の立ち上がりでラッチし、ラッチした仮ゼロクロス時間信号360をゼロクロス時間信号250として出力するよう構成される。
【0048】
ただし、出力ラッチ170において仮ゼロクロス時間信号360をラッチするタイミングは必要に応じて変更することができる。すなわち、出力ラッチ170は、仮ゼロクロス時間信号360を出力ラッチタイミング信号350に基づいて決定される任意のタイミングでラッチして、ゼロクロス時間信号250として出力してもよい。
【0049】
<(2)ゼロクロス時間判定装置の動作例>
図3は、上記ゼロクロス時間判定装置の動作中における各信号の波形図である。各信号は、既に説明したとおり、ゼロクロス時間判定装置の各構成要素から出力される。
【0050】
最大絶対値信号310は、その時までの入力信号210の最大値を示す。最大絶対値更新信号320は、最大絶対値信号310が更新されたことを示し、直前の最大絶対値信号310より入力信号210が大きいときにHiとなる。二値化信号330は、入力信号210を零電位で二値化した信号である。リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340は、最大絶対値更新信号320に基づいて生成され、出力ラッチタイミング信号350の生成に用いられる。出力ラッチタイミング信号350は、仮ゼロクロス信号360をラッチしてゼロクロス時間信号250を決定する際に用いられる。仮ゼロクロス信号360は、入力信号210が正から負へと変化した時間を示し、カウント信号(図示せず)及び二値化信号330に基づいて生成される。以下、特徴的な信号についてより具体的に説明する。
【0051】
リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340は、最初に検知された最大絶対値更新信号320の立ち下がり時(T10)にLoからHiへと変化し、検知された最大絶対値更新信号320の立ち下がりから所定の期間(T)に最大絶対値更新信号320の立ち上がりが検知されない時(T20)に、HiからLoへと変化する。ここで、本実施形態では検知された最大絶対値更新信号320の立ち下がりから、入力信号210の周期の1〜1.25倍の期間に最大絶対値更新信号320の立ち上がりが検知されない時に、HiからLoへと変化する。この所定の期間(T)が仮に入力信号210の1周期よりも短いと、実際には後に最大絶対値が更新され、最大絶対値更新信号320が変化するにもかかわらず意図したゼロクロス点を検知できない場合がある。また、この所定の期間(T)が仮に入力信号210の1.25周期よりも長いと、仮ゼロクロス時間信号360が次の値に変化してしまった後に仮ゼロクロス時間信号360をラッチするようになる。すなわち、入力信号210の振幅が最大となった直後のゼロクロス点Zの時間ではなく、その次のゼロクロス点の時間を計測するようになる。よって、最大絶対値時間判定部400において用いられる所定の期間(T)は、入力信号210の周期の1〜1.25倍の間の期間から任意に選択されるように設計することが好ましい。
【0052】
仮ゼロクロス時間信号360は、カウンタから出力されるカウント信号を、二値化信号330の立ち下がりでラッチした信号である。前述のとおり、カウント信号は時間情報を示す信号であり、二値化信号330の立ち下がりは入力信号210が正から負へと変化したゼロクロス点を示す信号であるので、仮ゼロクロス時間信号360は入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点における時間を示す信号である。図3に示すように、仮ゼロクロス時間信号360は二値化信号330の立ち下がりに同期して、Nn-5、Nn-4、Nn-3、Nn-2、Nn-1、Nn、Nn+1と変化する。
【0053】
出力ラッチタイミング信号350は、前述のとおり、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340の立ち下がりに同期して、LoからHiへと変化する(T20)。
【0054】
ゼロクロス時間信号250は、出力ラッチタイミング信号350の立ち上がりのタイミング(T20)で仮ゼロクロス時間信号360をラッチした信号である。図3に示すように、本実施形態ではNnとなる。すなわち、ゼロクロス時間信号250は、入力信号210の振幅が最大となった次のゼロクロス点に対応するゼロクロス時間として、Nnを示していることがわかる。
【0055】
<(3)まとめ>
以上のように、本実施形態におけるゼロクロス時間判定装置によれば、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号210において、入力信号210の振幅の変化などに影響されることなく、確実に意図したタイミングにおけるゼロクロス点を選択することが可能となる。これにより、ゼロクロス時間判定装置を含む超音波の伝搬時間差を正確に計測することが可能となり、測定対象媒体の流量などを適切に計測することが可能となる。特に本実施形態の構成によれば、入力信号210の振幅が最大となった直後のゼロクロス点における時間としてゼロクロス時間信号250を出力することが可能である。
【0056】
なお、本実施形態では入力信号210の振幅が正の最大値を示した次のゼロクロス点における時間を計測しているが、これに限るものではなく、本実施形態から当業者に理解される範囲の発明は本願に含まれる。例えば、入力信号210の振幅が負の最小値を示した次のゼロクロス点における時間を計測する構成も考えられる。また、入力信号210の振幅が最大となったN個前後のゼロクロス点における時間を計測する構成も考えられる。
【0057】
また、入力信号210の振幅が最大値を示す時間より所定の時間前後における仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定すれば、任意のタイミングでゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能となる。
【0058】
ただし、入力信号210の振幅が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点は、信号の変化量(信号の微分値)が大きいため入力信号210の振幅が小さいタイミングにおけるゼロクロス点と比較して、相対的にノイズの影響を受けづらい。つまり、本実施形態の構成によれば、入力信号210の振幅が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点を用いてゼロクロス時間を計測しているので、ノイズ等の影響を受けない、より正確なゼロクロス時間を計測することが可能となる。ひいては、高い精度で伝搬時間差を計測することができる。
【0059】
また、本実施形態では最大絶対値時間判定部400における出力ラッチタイミング信号350の生成に用いられる所定の期間を、入力信号210の周期の1〜1.25倍の間の期間から任意に選択されるように設計している。これによれば、入力信号210において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点におけるゼロクロス時間を、タイミング良く確実に計測することが可能となるため好ましい。
【0060】
<3.実施形態2>
次に、図4を参照しながら実施形態2について説明する。実施形態1と比較して、実施形態2では入力信号210がゼロクロス時間判定装置に入力された直後に反転器180をさらに備えている点で異なる、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0061】
反転器180は、入力信号210の極性を反転可能に構成される。ここで、反転器180は信号増幅機能を有していてもよい。
【0062】
このように反転器180を備えたゼロクロス時間判定装置では、最大絶対値更新判定部100及びコンパレータ130に入力される反転入力信号211は、入力信号210に対して極性が逆になっている。このため、本実施形態2のゼロクロス時間判定装置においては、入力信号210の最大値の代わりに最小値を基準として動作し、入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点の代わりに入力信号210が負から正へと変化するゼロクロス点を基準に動作する。
【0063】
本実施形態2のゼロクロス時間判定装置によれば、入力信号210の振幅が最小となった次のゼロクロス点における時間として、ゼロクロス時間信号251を出力することが可能となる。
【0064】
<4.実施形態3>
次に、図5及び図6を参照しながら実施形態3について説明する。実施形態1と比較して、実施形態3では最大絶対値時間判定部400と出力ラッチ170との間にD−FF(D−フリップフロップ)180を備える構成となっている点で異なるが、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0065】
D−FF190は、出力ラッチタイミング信号350を入力として二値化信号330の立ち上がりで動作し、遅延出力ラッチタイミング信号380を出力ラッチ170へ出力するよう構成される。つまり、D−FF190は、出力ラッチタイミング信号350を、次の二値化信号330の立ち上がりのタイミングまで遅延させる機能を有する。
【0066】
出力ラッチ170は、仮ゼロクロス時間信号360を遅延出力ラッチタイミング信号380の立ち上がりでラッチし、ラッチした仮ゼロクロス時間信号360をゼロクロス時間信号252として出力するよう構成される。
【0067】
図6は、本実施形態3のゼロクロス時間判定装置の動作時の各部の波形を示す図である。図6に示すように、D−FF190から出力される遅延出力ラッチタイミング信号380は、出力ラッチタイミング信号350が次の二値化信号330の立ち上がりのタイミングまで遅延させられた信号である。また、出力ラッチ170では遅延出力ラッチタイミング信号380の立ち上がり時に仮ゼロクロス時間信号360をラッチするので、入力信号210が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点Zではなく、その次に入力信号210が負から正へと変化するゼロクロス点における時間を、ゼロクロス時間信号252として出力する。
【0068】
また、本実施形態3ではD−FF190を1つだけ配置したが、D−FF190を複数直列に配置してもよい。D−FF190を複数直列に配置すると、遅延出力ラッチタイミング信号380を所望の期間だけ遅延させることができる。
【0069】
このように最大絶対値時間判定部400と出力ラッチ170との間にD−FF190を配置すれば、入力信号210の振幅が最大値を示す時間より所定の時間後におけるゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能となる。
【0070】
<5.実施形態4>
次に、図7及び図8を参照しながら実施形態4について説明する。実施形態1と比較して、実施形態4ではカウンタラッチ160と出力ラッチ170との間に遅延ラッチ191を備える構成となっている点で異なる。
【0071】
遅延ラッチ191は、仮ゼロクロス時間信号360を入力として二値化信号330の立ち下がりで動作し、遅延仮ゼロクロス時間信号390を出力ラッチ170へ出力するよう構成される。つまり、遅延ラッチ191は、仮ゼロクロス時間信号360を、次の二値化信号330の立ち下がりのタイミングまで遅延させる機能を有する。その結果、仮ゼロクロス時間信号360と遅延仮ゼロクロス時間信号390とを比較すると、出力される値が1つずつ遅れるようになる。出力ラッチ170は、遅延仮ゼロクロス時間信号390を出力ラッチタイミング信号350の立ち上がりでラッチし、ラッチした遅延仮ゼロクロス時間信号390をゼロクロス時間信号253として出力するよう構成される。
【0072】
図8は、本実施形態4のゼロクロス時間判定装置の動作時の各部の波形を示す図である。図8に示すように、遅延ラッチ191から出力される遅延仮ゼロクロス時間信号390は、仮ゼロクロス時間信号360と比較して、出力される値が1つずつ遅れていることが分かる。また、出力ラッチ170では出力ラッチタイミング信号350の立ち上がり時に遅延仮ゼロクロス時間信号390をラッチするので、入力信号210が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点Zではなく、その前に入力信号210が負から正へと変化するゼロクロス点における時間を、ゼロクロス時間信号253として出力する。
【0073】
また、本実施形態4では遅延ラッチ191を1つだけ配置したが、遅延ラッチ191を複数直列に配置してもよい。遅延ラッチ191を複数直列に配置すると、遅延仮ゼロクロス時間信号390を所望の期間だけ遅延させることができる。
【0074】
このようにカウンタラッチ160と出力ラッチ170との間に遅延ラッチ191を配置すれば、入力信号210の振幅が最大値を示す時間より所定の時間前におけるゼロクロス点における時間を計測することが可能となる。
【0075】
<6.補足>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの構成例に限るものではなく、これらの構成例から当業者が考え得る様々な形態をも含むものである。
【0076】
例えば、最大絶対値更新判定部100、最大絶対値時間判定部400、及び仮ゼロクロス時間ラッチ部410の構成は実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、当業者によって考え得る他の構成をも当然に含むものである。また、各構成の動作タイミングについても適宜変更することが可能である。
【0077】
また、本発明のゼロクロス時間判定装置は超音波流量計などの流量計に適用可能であり、本発明はかかる流量計を含む。かかる流量計によれば、流量計に配置された超音波送受信機において伝搬時間差を正確に計測することが可能となり、測定対象媒体の流速などを適切に精度良く計測することなどが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のゼロクロス時間判定装置は、超音波流量計に代表される流量計などに適用可能である。また、流量計と同様の入力信号に基づいてゼロクロス時間を計測する電子機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10・11……超音波送受信機
12・13……受信信号
100……最大絶対値更新判定部
110……リトリガブルワンショットマルチバイブレータ
120……リセットセットフリップフロップ
130……コンパレータ
140……カウンタ
150……クロック生成部
160……カウンタラッチ
170……出力ラッチ(ゼロクロス時間判定部)
180……反転器
190……D−FF(D−フリップフロップ)
191……遅延ラッチ
200……リセット信号
210……入力信号
211……反転入力信号
220……スタート・ストップ信号
230・240……リセット信号
250・251・252・253……ゼロクロス時間信号
310……最大絶対値信号
320……最大絶対値更新信号
330……二値化信号
340……リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号
350……出力ラッチタイミング信号(最大絶対値時間信号)
360……仮ゼロクロス時間信号
380……遅延出力ラッチタイミング信号
390……遅延仮ゼロクロス時間信号
400……最大絶対値時間判定部
410……仮ゼロクロス時間ラッチ部
500……コンパレータ
510……電流源
520……スイッチ
530……ダイオード
540……キャパシタ
550……ディスチャージャー
560……インピーダンス変換器
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号のゼロクロス時間を判定可能なゼロクロス時間判定装置である。
【背景技術】
【0002】
流量計のひとつとして、超音波が媒体中を伝搬中に発生する伝搬時間差を利用した超音波流量計がある。超音波流量計には、図9に示すように、流路に超音波送受信機10及び11を配置し、超音波を上流から送信して下流で受信した受信信号12の伝搬時間と、超音波を下流から送信して上流で受信した受信信号13の伝搬時間とに基づいて、流路を流れる気体や液体などの媒体の流速を計測するものがある。
【0003】
この伝搬時間の計測には、数nsまたはサブnsの分解能が要求されることがあるが、超音波流量計で用いられる超音波は、数十kHz〜数MHz程度の周波数である。この周波数を用いた場合、1周期の1/10000以上などの高精度の分解能を要する。一方、超音波の振幅は流路を流れる媒体の流速や流体の状態によって影響を受ける。よって、超音波の到達を、受信信号に対してしきい値を設定することで判断する方法を用いた場合、受信信号の振幅が変化したときに計測される到達時間が変化してしまう。すなわち、図10に示すように、通常の振幅を有する受信信号S1がしきい値th1に達した時間がT1であるのに対して、振幅が小さくなった受信信号S2がしきい値th1に達した時間はT2となってしまう。
【0004】
そこで、受信信号の振幅の変化に影響されない測定方法として、ゼロクロス法がある。ゼロクロス法では、受信信号が正から負に、または負から正に変化するタイミングであるゼロクロス点における時間を計測する方法である。図10に示すように、受信信号S1及びS2のいずれにおいてもゼロクロス点の時間T3は変化しない。このように、ゼロクロス法によれば受信信号の振幅が変化してもゼロクロス点における時間が変化しない。
【0005】
ただし、超音波信号には複数のゼロクロス点が含まれるため、伝搬時間差を計測する基礎となる適切なゼロクロス点を確実に選択することが重要である。例えば、所定のしきい値を設けて超音波信号が該しきい値を超えた次のタイミングで観測されるゼロクロス点を選択する方法を適用することがあった。
【0006】
しかし、この方法では流路を流れる媒体の流量の大小や超音波デバイス特性の経時変化などにより超音波信号の振幅が変化することを考慮しておらず、意図したタイミングのゼロクロス点を選択できない場合があった。例えば、図11に示すようにしきい値th2を設けた場合、通常の振幅を有する受信信号S1ではp1をゼロクロス点と判断するのに対して、振幅が小さくなった受信信号S2ではp2をゼロクロス点と判断してしまう。これに対して、例えば受信した超音波信号のピークホールド信号の微分を波形整形してパルスにし、N番目のパルスの次のゼロクロス点を選択する従来技術などがあった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】再公表特許WO2004/048902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献1に記載の従来技術においても、波形整形には所定のしきい値を用いており、入力信号の振幅が変化すると、適切なゼロクロス点を検出できないことがあった。
【0009】
そこで、本発明の一形態では、上記課題を解決可能な超音波流量計を提供することを目的のひとつとする。また、本発明の一形態では測定対象媒体の流量などを精度良く適切に計測することなどをも目的のひとつとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために、本発明の一態様としてのゼロクロス時間判定装置は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正または負の絶対値が過去における前記正または負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正または負の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方を仮ゼロクロス時間として周期的にラッチするよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、を備える。
【0011】
かかる構成のゼロクロス時間判定装置によれば、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号において、確実に意図したタイミングにおけるゼロクロス点を選択することが可能となる。これにより例えば超音波の伝搬時間差を正確に計測することが可能となり、測定対象媒体の流量などを適切に計測することが可能となる。
【0012】
また、該装置の構成として用いている最大絶対値更新判定部はアナログ回路で構成することが可能である。この場合、入力信号をデジタル信号に変換してデジタル信号処理を行う構成と比較して、簡易な構成にすることができる。
【0013】
また、前記仮ゼロクロス時間ラッチ部は、所定の周波数を有するクロック信号の変化をカウントするカウンタ部と、前記入力信号が前記所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方において、前記カウンタ部の出力信号をラッチして前記仮ゼロクロス時間を出力するよう構成されたカウンタラッチと、を備える構成にすることができる。
【0014】
また、本発明の一態様としてのゼロクロス時間判定装置は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正の絶対値が過去における前記正の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、前記入力信号が所定の値より大きい状態から小さい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、を備える構成としてもよい。
【0015】
または、本発明の一態様としてのゼロクロス時間判定装置は、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における負の絶対値が過去における前記負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記負の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、を備える構成としてもよい。
【0016】
また、前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定することが好ましい。
【0017】
入力信号において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点は、入力信号の振幅が最大となった状態におけるゼロクロス点であるため、入力信号の振幅が小さい状態におけるゼロクロス点と比較して、ノイズ等による影響を受けづらい。
【0018】
上記構成にすれば、入力信号において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点における、ゼロクロス時間を計測することが可能となる。よって、ノイズ等の影響を受けない、より正確なゼロクロス時間を計測することが可能となる。ひいては、高い精度で伝搬時間差を計測することができる。
【0019】
また、前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時間より所定の時間前にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する構成としてもよい。
【0020】
また、前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時間より所定の時間後にラッチされた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する構成としてもよい。
【0021】
上記の構成にすると、任意のタイミングのゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能となる。例えば、最大絶対値時間信号が出力された時間より前の時間に、入力信号の振幅が最大となることが予め予測されている場合に、この入力信号が最大となった状態におけるゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能である。
【0022】
また、前記最大絶対値時間判定部は、前記最大絶対値更新判定部において前記最大絶対値が更新されたと判定された時から所定の期間に前記最大絶対値がさらに更新されないときに前記最大絶対値時間信号を出力するよう構成されてもよい。
【0023】
ここで、前記最大絶対値時間判定部において用いられる前記所定の期間は、前記入力信号の1周期乃至1.25周期の間の期間から任意に選択されることが好ましい。
【0024】
これによれば、入力信号において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点におけるゼロクロス時間を、タイミング良く確実に計測することが可能となる。
【0025】
また、本発明は、上記いずれかのゼロクロス時間判定装置を備えた超音波流量計を含む。これによれば、精度良く流量を計測可能な超音波流量計を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一形態によれば、例えば、超音波の伝搬時間差を計測する基礎となる、入力信号における意図したタイミングのゼロクロス点を確実に選択することが可能となり、精度の高いゼロクロス時間判定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例を示す図。
【図2】最大絶対値更新判定部の構成例を示す図。
【図3】ゼロクロス時間判定装置の動作時の波形図。
【図4】ゼロクロス時間判定装置の第2の構成例を示す図。
【図5】ゼロクロス時間判定装置の第3の構成例を示す図。
【図6】ゼロクロス時間判定装置の第3の構成例の動作時の波形図。
【図7】ゼロクロス時間判定装置の第4の構成例を示す図。
【図8】ゼロクロス時間判定装置の第4の構成例の動作時の波形図。
【図9】超音波流量計の構成例を示す図。
【図10】超音波流量計の従来の動作を示す第1の波形図。
【図11】超音波流量計の従来の動作を示す第2の波形図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明に係る実施形態について、以下の構成に従って、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、以下で説明する実施形態はあくまで本発明の一例に過ぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、各図面において、同一の部品には同一の符号を付しており、その説明を省略する場合がある。
1.定義
2.実施形態1
(1)ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例
(2)ゼロクロス時間判定装置の動作
(3)まとめ
3.実施形態2
4.実施形態3
5.実施形態4
6.補足
【0029】
<1.定義>
まず、本明細書における用語を以下のとおり定義する。
「ゼロクロス点」:入力信号の波形が所定の電位と交差する点を指す。なお、所定の電圧は零電位であることが多いがこれに限らず、所定の電位は任意に決定可能である。
「Hi」及び「Lo」:二値化された信号における二値をそれぞれ「Hi」及び「Lo」と呼ぶ。「Hi」は二値化された信号が高い電位を示す状態を指し、「Lo」は二値化された信号が低い電位を示す状態を指す。
【0030】
<2.実施形態1>
本発明の一実施形態は、超音波流量計などの流量計であって、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する信号を入力信号とする流量計に用いられるゼロクロス時間判定装置である。このゼロクロス時間判定装置は、既に説明したように、図9に示す流量計における超音波送受信機10及び11の構成の一部として用いることが可能である。以下、図1乃至図3を参照しながら実施形態1について説明する。
【0031】
<(1)ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例>
図1は、ゼロクロス時間判定装置の第1の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施形態1のゼロクロス時間判定装置は、最大絶対値更新判定部100、最大絶対値時間判定部400、仮ゼロクロス時間ラッチ部410、及び出力ラッチ170を備えて構成される。
【0032】
(最大絶対値更新判定部100)
最大絶対値更新判定部100は、入力信号210及びリセット信号200を入力し、最大絶対値更新信号320及び最大絶対値信号310を出力可能に構成される。
【0033】
図2は、最大絶対値更新判定部100の具体的な構成例を示す図である。図2に示すように、最大絶対値更新判定部100は、コンパレータ500、電流源510、スイッチ520、ダイオード530、キャパシタ540、ディスチャージャー550、及びインピーダンス変換器560を含んで構成される。
【0034】
コンパレータ500は、入力信号210と最大絶対値信号310との振幅を比較し、入力信号210の振幅の方が大きい場合にはHiを、入力信号210の振幅の方が小さい場合にはLoを、最大絶対値更新信号320として出力する。スイッチ520は、コンパレータ500から入力された信号がHiであった場合にはオン状態となり、Loであった場合にはオフ状態となる。スイッチ520がオン状態のときは、電流源510から流入する電流がダイオード530を介してキャパシタ540に充電され、インピーダンス変換器560を介して最大絶対値信号310を更新する。また、リセット信号200によって回路のリセットが指示されると、ディスチャージャー550はキャパシタ540に充電された電荷を放電する。
【0035】
なお、本実施形態1においては入力信号210の正の最大値を基準として動作しているが、これは負の最大絶対値である最小値を基準として動作してもよい。つまり、最大絶対値信号310及び最大絶対値更新信号320は、場合によってそれぞれ最大値信号及び最大値更新信号、または最小値信号及び最小値更新信号と呼ぶこともできる。以下についても同様に、「最大絶対値○○」は、場合によって「最大○○」または「最小○○」と呼ぶことができる。
【0036】
すなわち、最大絶対値更新判定部100は、入力信号210が過去における正の最大絶対値よりも大きい場合に、最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成されているものである。
【0037】
(最大絶対値時間判定部400)
最大絶対値時間判定部400は、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ110及びリセットセットフリップフロップ120を含んで構成される。
【0038】
リトリガブルワンショットマルチバイブレータ110は、最初に検知した最大絶対値更新信号320の立ち下がり時に、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340をLoからHiへと変化するよう構成されている。また、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ110は、検知した最大絶対値更新信号320の立ち下がりから所定の期間に最大絶対値更新信号320の立ち上がりが検知されない時に、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340をHiからLoへと変化するよう構成されている。
【0039】
リセットセットフリップフロップ120は、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340の立ち下がりを検知した時に、出力信号である出力ラッチタイミング信号350をLoからHiへと変化するよう構成されている。また、リセットセットフリップフロップ120は、リセット信号240によってリセット可能に構成されている。
【0040】
すなわち、最大絶対値時間判定部400は、最大絶対値更新判定部100における判定結果に基づいて入力信号210における正の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す出力ラッチタイミング信号350を出力可能に構成されているものである。より具体的には、最大絶対値時間判定部400は、最大絶対値更新判定部100において正の最大絶対値が更新されたと判定された時から所定の期間(T)に正の最大絶対値がさらに更新されないときに、出力ラッチタイミング信号350を出力するよう構成されている。なお、出力ラッチタイミング信号350は、最大絶対値時間信号とも呼び、後に説明するように負の絶対値が最大になる時間を出力する構成にしてもよい。
【0041】
(仮ゼロクロス時間ラッチ部410)
仮ゼロクロス時間ラッチ部410は、コンパレータ130、カウンタ140、クロック生成部150、及びカウンタラッチ160を含んで構成される。
【0042】
コンパレータ130は、入力信号210と零電位とを比較し、入力信号210が零電位より高ければHi、低ければLoを二値化信号330として出力するよう構成されている。
【0043】
クロック生成部150は、所定の周波数を有するクロック信号をカウンタ140に供給する。
【0044】
カウンタ140は、スタート・ストップ信号220の指示によってクロック信号を連続的にカウントアップし、カウント信号を出力するよう構成されている。また、カウンタ140はリセット信号230によってリセット可能に構成されている。
【0045】
カウンタラッチ160は、二値化信号330の立ち下がりでカウント信号をラッチし、仮ゼロクロス時間信号360として出力するよう構成される。ここで、カウンタ140がクロック信号を連続的にカウントアップした信号であるカウント信号は時間情報を示すものであり、二値化信号330の立ち下がりは入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点を示す。よって、仮ゼロクロス時間信号360は、入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点における時間を示す信号であるということができる。
【0046】
すなわち、仮ゼロクロス時間ラッチ部410は、入力信号210が所定の値より大きい状態から小さい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として周期的にラッチし、仮ゼロクロス時間信号360として出力するよう構成されているものである。
【0047】
(出力ラッチ170)
出力ラッチ170は、仮ゼロクロス時間信号360を出力ラッチタイミング信号350の立ち上がりでラッチし、ラッチした仮ゼロクロス時間信号360をゼロクロス時間信号250として出力するよう構成される。
【0048】
ただし、出力ラッチ170において仮ゼロクロス時間信号360をラッチするタイミングは必要に応じて変更することができる。すなわち、出力ラッチ170は、仮ゼロクロス時間信号360を出力ラッチタイミング信号350に基づいて決定される任意のタイミングでラッチして、ゼロクロス時間信号250として出力してもよい。
【0049】
<(2)ゼロクロス時間判定装置の動作例>
図3は、上記ゼロクロス時間判定装置の動作中における各信号の波形図である。各信号は、既に説明したとおり、ゼロクロス時間判定装置の各構成要素から出力される。
【0050】
最大絶対値信号310は、その時までの入力信号210の最大値を示す。最大絶対値更新信号320は、最大絶対値信号310が更新されたことを示し、直前の最大絶対値信号310より入力信号210が大きいときにHiとなる。二値化信号330は、入力信号210を零電位で二値化した信号である。リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340は、最大絶対値更新信号320に基づいて生成され、出力ラッチタイミング信号350の生成に用いられる。出力ラッチタイミング信号350は、仮ゼロクロス信号360をラッチしてゼロクロス時間信号250を決定する際に用いられる。仮ゼロクロス信号360は、入力信号210が正から負へと変化した時間を示し、カウント信号(図示せず)及び二値化信号330に基づいて生成される。以下、特徴的な信号についてより具体的に説明する。
【0051】
リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340は、最初に検知された最大絶対値更新信号320の立ち下がり時(T10)にLoからHiへと変化し、検知された最大絶対値更新信号320の立ち下がりから所定の期間(T)に最大絶対値更新信号320の立ち上がりが検知されない時(T20)に、HiからLoへと変化する。ここで、本実施形態では検知された最大絶対値更新信号320の立ち下がりから、入力信号210の周期の1〜1.25倍の期間に最大絶対値更新信号320の立ち上がりが検知されない時に、HiからLoへと変化する。この所定の期間(T)が仮に入力信号210の1周期よりも短いと、実際には後に最大絶対値が更新され、最大絶対値更新信号320が変化するにもかかわらず意図したゼロクロス点を検知できない場合がある。また、この所定の期間(T)が仮に入力信号210の1.25周期よりも長いと、仮ゼロクロス時間信号360が次の値に変化してしまった後に仮ゼロクロス時間信号360をラッチするようになる。すなわち、入力信号210の振幅が最大となった直後のゼロクロス点Zの時間ではなく、その次のゼロクロス点の時間を計測するようになる。よって、最大絶対値時間判定部400において用いられる所定の期間(T)は、入力信号210の周期の1〜1.25倍の間の期間から任意に選択されるように設計することが好ましい。
【0052】
仮ゼロクロス時間信号360は、カウンタから出力されるカウント信号を、二値化信号330の立ち下がりでラッチした信号である。前述のとおり、カウント信号は時間情報を示す信号であり、二値化信号330の立ち下がりは入力信号210が正から負へと変化したゼロクロス点を示す信号であるので、仮ゼロクロス時間信号360は入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点における時間を示す信号である。図3に示すように、仮ゼロクロス時間信号360は二値化信号330の立ち下がりに同期して、Nn-5、Nn-4、Nn-3、Nn-2、Nn-1、Nn、Nn+1と変化する。
【0053】
出力ラッチタイミング信号350は、前述のとおり、リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号340の立ち下がりに同期して、LoからHiへと変化する(T20)。
【0054】
ゼロクロス時間信号250は、出力ラッチタイミング信号350の立ち上がりのタイミング(T20)で仮ゼロクロス時間信号360をラッチした信号である。図3に示すように、本実施形態ではNnとなる。すなわち、ゼロクロス時間信号250は、入力信号210の振幅が最大となった次のゼロクロス点に対応するゼロクロス時間として、Nnを示していることがわかる。
【0055】
<(3)まとめ>
以上のように、本実施形態におけるゼロクロス時間判定装置によれば、周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号210において、入力信号210の振幅の変化などに影響されることなく、確実に意図したタイミングにおけるゼロクロス点を選択することが可能となる。これにより、ゼロクロス時間判定装置を含む超音波の伝搬時間差を正確に計測することが可能となり、測定対象媒体の流量などを適切に計測することが可能となる。特に本実施形態の構成によれば、入力信号210の振幅が最大となった直後のゼロクロス点における時間としてゼロクロス時間信号250を出力することが可能である。
【0056】
なお、本実施形態では入力信号210の振幅が正の最大値を示した次のゼロクロス点における時間を計測しているが、これに限るものではなく、本実施形態から当業者に理解される範囲の発明は本願に含まれる。例えば、入力信号210の振幅が負の最小値を示した次のゼロクロス点における時間を計測する構成も考えられる。また、入力信号210の振幅が最大となったN個前後のゼロクロス点における時間を計測する構成も考えられる。
【0057】
また、入力信号210の振幅が最大値を示す時間より所定の時間前後における仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定すれば、任意のタイミングでゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能となる。
【0058】
ただし、入力信号210の振幅が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点は、信号の変化量(信号の微分値)が大きいため入力信号210の振幅が小さいタイミングにおけるゼロクロス点と比較して、相対的にノイズの影響を受けづらい。つまり、本実施形態の構成によれば、入力信号210の振幅が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点を用いてゼロクロス時間を計測しているので、ノイズ等の影響を受けない、より正確なゼロクロス時間を計測することが可能となる。ひいては、高い精度で伝搬時間差を計測することができる。
【0059】
また、本実施形態では最大絶対値時間判定部400における出力ラッチタイミング信号350の生成に用いられる所定の期間を、入力信号210の周期の1〜1.25倍の間の期間から任意に選択されるように設計している。これによれば、入力信号210において最大絶対値が更新されたタイミングの直後のゼロクロス点におけるゼロクロス時間を、タイミング良く確実に計測することが可能となるため好ましい。
【0060】
<3.実施形態2>
次に、図4を参照しながら実施形態2について説明する。実施形態1と比較して、実施形態2では入力信号210がゼロクロス時間判定装置に入力された直後に反転器180をさらに備えている点で異なる、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0061】
反転器180は、入力信号210の極性を反転可能に構成される。ここで、反転器180は信号増幅機能を有していてもよい。
【0062】
このように反転器180を備えたゼロクロス時間判定装置では、最大絶対値更新判定部100及びコンパレータ130に入力される反転入力信号211は、入力信号210に対して極性が逆になっている。このため、本実施形態2のゼロクロス時間判定装置においては、入力信号210の最大値の代わりに最小値を基準として動作し、入力信号210が正から負へと変化するゼロクロス点の代わりに入力信号210が負から正へと変化するゼロクロス点を基準に動作する。
【0063】
本実施形態2のゼロクロス時間判定装置によれば、入力信号210の振幅が最小となった次のゼロクロス点における時間として、ゼロクロス時間信号251を出力することが可能となる。
【0064】
<4.実施形態3>
次に、図5及び図6を参照しながら実施形態3について説明する。実施形態1と比較して、実施形態3では最大絶対値時間判定部400と出力ラッチ170との間にD−FF(D−フリップフロップ)180を備える構成となっている点で異なるが、その他の構成は実施形態1と同様である。
【0065】
D−FF190は、出力ラッチタイミング信号350を入力として二値化信号330の立ち上がりで動作し、遅延出力ラッチタイミング信号380を出力ラッチ170へ出力するよう構成される。つまり、D−FF190は、出力ラッチタイミング信号350を、次の二値化信号330の立ち上がりのタイミングまで遅延させる機能を有する。
【0066】
出力ラッチ170は、仮ゼロクロス時間信号360を遅延出力ラッチタイミング信号380の立ち上がりでラッチし、ラッチした仮ゼロクロス時間信号360をゼロクロス時間信号252として出力するよう構成される。
【0067】
図6は、本実施形態3のゼロクロス時間判定装置の動作時の各部の波形を示す図である。図6に示すように、D−FF190から出力される遅延出力ラッチタイミング信号380は、出力ラッチタイミング信号350が次の二値化信号330の立ち上がりのタイミングまで遅延させられた信号である。また、出力ラッチ170では遅延出力ラッチタイミング信号380の立ち上がり時に仮ゼロクロス時間信号360をラッチするので、入力信号210が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点Zではなく、その次に入力信号210が負から正へと変化するゼロクロス点における時間を、ゼロクロス時間信号252として出力する。
【0068】
また、本実施形態3ではD−FF190を1つだけ配置したが、D−FF190を複数直列に配置してもよい。D−FF190を複数直列に配置すると、遅延出力ラッチタイミング信号380を所望の期間だけ遅延させることができる。
【0069】
このように最大絶対値時間判定部400と出力ラッチ170との間にD−FF190を配置すれば、入力信号210の振幅が最大値を示す時間より所定の時間後におけるゼロクロス点におけるゼロクロス時間を計測することが可能となる。
【0070】
<5.実施形態4>
次に、図7及び図8を参照しながら実施形態4について説明する。実施形態1と比較して、実施形態4ではカウンタラッチ160と出力ラッチ170との間に遅延ラッチ191を備える構成となっている点で異なる。
【0071】
遅延ラッチ191は、仮ゼロクロス時間信号360を入力として二値化信号330の立ち下がりで動作し、遅延仮ゼロクロス時間信号390を出力ラッチ170へ出力するよう構成される。つまり、遅延ラッチ191は、仮ゼロクロス時間信号360を、次の二値化信号330の立ち下がりのタイミングまで遅延させる機能を有する。その結果、仮ゼロクロス時間信号360と遅延仮ゼロクロス時間信号390とを比較すると、出力される値が1つずつ遅れるようになる。出力ラッチ170は、遅延仮ゼロクロス時間信号390を出力ラッチタイミング信号350の立ち上がりでラッチし、ラッチした遅延仮ゼロクロス時間信号390をゼロクロス時間信号253として出力するよう構成される。
【0072】
図8は、本実施形態4のゼロクロス時間判定装置の動作時の各部の波形を示す図である。図8に示すように、遅延ラッチ191から出力される遅延仮ゼロクロス時間信号390は、仮ゼロクロス時間信号360と比較して、出力される値が1つずつ遅れていることが分かる。また、出力ラッチ170では出力ラッチタイミング信号350の立ち上がり時に遅延仮ゼロクロス時間信号390をラッチするので、入力信号210が最大となったタイミングの直後のゼロクロス点Zではなく、その前に入力信号210が負から正へと変化するゼロクロス点における時間を、ゼロクロス時間信号253として出力する。
【0073】
また、本実施形態4では遅延ラッチ191を1つだけ配置したが、遅延ラッチ191を複数直列に配置してもよい。遅延ラッチ191を複数直列に配置すると、遅延仮ゼロクロス時間信号390を所望の期間だけ遅延させることができる。
【0074】
このようにカウンタラッチ160と出力ラッチ170との間に遅延ラッチ191を配置すれば、入力信号210の振幅が最大値を示す時間より所定の時間前におけるゼロクロス点における時間を計測することが可能となる。
【0075】
<6.補足>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの構成例に限るものではなく、これらの構成例から当業者が考え得る様々な形態をも含むものである。
【0076】
例えば、最大絶対値更新判定部100、最大絶対値時間判定部400、及び仮ゼロクロス時間ラッチ部410の構成は実施形態で説明した構成に限定されるものではなく、当業者によって考え得る他の構成をも当然に含むものである。また、各構成の動作タイミングについても適宜変更することが可能である。
【0077】
また、本発明のゼロクロス時間判定装置は超音波流量計などの流量計に適用可能であり、本発明はかかる流量計を含む。かかる流量計によれば、流量計に配置された超音波送受信機において伝搬時間差を正確に計測することが可能となり、測定対象媒体の流速などを適切に精度良く計測することなどが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のゼロクロス時間判定装置は、超音波流量計に代表される流量計などに適用可能である。また、流量計と同様の入力信号に基づいてゼロクロス時間を計測する電子機器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
10・11……超音波送受信機
12・13……受信信号
100……最大絶対値更新判定部
110……リトリガブルワンショットマルチバイブレータ
120……リセットセットフリップフロップ
130……コンパレータ
140……カウンタ
150……クロック生成部
160……カウンタラッチ
170……出力ラッチ(ゼロクロス時間判定部)
180……反転器
190……D−FF(D−フリップフロップ)
191……遅延ラッチ
200……リセット信号
210……入力信号
211……反転入力信号
220……スタート・ストップ信号
230・240……リセット信号
250・251・252・253……ゼロクロス時間信号
310……最大絶対値信号
320……最大絶対値更新信号
330……二値化信号
340……リトリガブルワンショットマルチバイブレータ出力信号
350……出力ラッチタイミング信号(最大絶対値時間信号)
360……仮ゼロクロス時間信号
380……遅延出力ラッチタイミング信号
390……遅延仮ゼロクロス時間信号
400……最大絶対値時間判定部
410……仮ゼロクロス時間ラッチ部
500……コンパレータ
510……電流源
520……スイッチ
530……ダイオード
540……キャパシタ
550……ディスチャージャー
560……インピーダンス変換器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正または負の絶対値が過去における前記正または負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、
前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正または負の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、
前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方を仮ゼロクロス時間として周期的にラッチするよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、
前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、
を備えたゼロクロス時間判定装置。
【請求項2】
前記仮ゼロクロス時間ラッチ部は、
所定の周波数を有するクロック信号の変化をカウントするカウンタ部と、
前記入力信号が前記所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方において、前記カウンタ部の出力信号をラッチして前記仮ゼロクロス時間を出力するよう構成されたカウンタラッチと、を備える
請求項1に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項3】
周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正の絶対値が過去における前記正の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、
前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、
前記入力信号が所定の値より大きい状態から小さい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、
前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、
を備えたゼロクロス時間判定装置。
【請求項4】
周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における負の絶対値が過去における前記負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、
前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記負の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、
前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、
前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、
を備えたゼロクロス時間判定装置。
【請求項5】
前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項6】
前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時より所定の時間前にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項7】
前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時より所定の時間後にラッチされた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項8】
前記最大絶対値時間判定部は、前記最大絶対値更新判定部において前記最大絶対値が更新されたと判定された時から所定の期間に前記最大絶対値がさらに更新されないときに前記最大絶対値時間信号を出力するよう構成されている
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項9】
前記最大絶対値時間判定部において用いられる前記所定の期間は、前記入力信号の1周期乃至1.25周期の間の期間から任意に選択される
請求項8に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置を備えた超音波流量計。
【請求項1】
周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正または負の絶対値が過去における前記正または負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、
前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正または負の絶対値が最大になる最大絶対値時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、
前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方を仮ゼロクロス時間として周期的にラッチするよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、
前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、
を備えたゼロクロス時間判定装置。
【請求項2】
前記仮ゼロクロス時間ラッチ部は、
所定の周波数を有するクロック信号の変化をカウントするカウンタ部と、
前記入力信号が前記所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時及び大きい状態から小さい状態へと変化した時の少なくとも一方において、前記カウンタ部の出力信号をラッチして前記仮ゼロクロス時間を出力するよう構成されたカウンタラッチと、を備える
請求項1に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項3】
周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における正の絶対値が過去における前記正の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、
前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記正の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、
前記入力信号が所定の値より大きい状態から小さい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、
前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、
を備えたゼロクロス時間判定装置。
【請求項4】
周期的に変化しかつ振幅の絶対値が変化する入力信号における負の絶対値が過去における前記負の最大絶対値よりも大きい場合に該最大絶対値が更新されたことを判定可能に構成された最大絶対値更新判定部と、
前記最大絶対値更新判定部における判定結果に基づいて前記入力信号における前記負の絶対値が最大になる時間を示す最大絶対値時間信号を出力可能に構成された最大絶対値時間判定部と、
前記入力信号が所定の値より小さい状態から大きい状態へと変化した時を仮ゼロクロス時間として出力するよう構成された仮ゼロクロス時間ラッチ部と、
前記最大絶対値時間信号及び前記仮ゼロクロス時間に基づいてゼロクロス時間を判定するゼロクロス時間判定部と、
を備えたゼロクロス時間判定装置。
【請求項5】
前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項6】
前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時より所定の時間前にラッチされていた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項7】
前記ゼロクロス時間判定部は、前記最大絶対値時間信号が出力された時より所定の時間後にラッチされた前記仮ゼロクロス時間をゼロクロス時間と判定する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項8】
前記最大絶対値時間判定部は、前記最大絶対値更新判定部において前記最大絶対値が更新されたと判定された時から所定の期間に前記最大絶対値がさらに更新されないときに前記最大絶対値時間信号を出力するよう構成されている
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項9】
前記最大絶対値時間判定部において用いられる前記所定の期間は、前記入力信号の1周期乃至1.25周期の間の期間から任意に選択される
請求項8に記載のゼロクロス時間判定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のゼロクロス時間判定装置を備えた超音波流量計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−180076(P2011−180076A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46680(P2010−46680)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】
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